JPH0578907A - 耐湿熱性と耐熱老化性に優れたポリビニルアルコール系繊維およびその製造法 - Google Patents

耐湿熱性と耐熱老化性に優れたポリビニルアルコール系繊維およびその製造法

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JPH0578907A
JPH0578907A JP26909291A JP26909291A JPH0578907A JP H0578907 A JPH0578907 A JP H0578907A JP 26909291 A JP26909291 A JP 26909291A JP 26909291 A JP26909291 A JP 26909291A JP H0578907 A JPH0578907 A JP H0578907A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 高温、高湿で長時間使用されるタイヤコー
ド、自動車ホース(ラジエーターホース、オイルブレー
キホース)、FRCの補強材やロープテントなどの産業
資材に適した、耐湿熱性、耐乾熱老化性に優れたポリビ
ニルアルコール系繊維と、その容易で安定した製造法を
得ること。 【構成】 重合度3,000以上のポリビニルアルコー
ルからなる紡糸原糸を、酸化防止剤を添加した該紡糸原
糸の溶媒抽出浴に導き、繊維の内部および表面に該酸化
防止剤0.2〜3重量%付着させ、次いで乾燥前から乾
熱延伸直前までの間に、架橋剤を該糸条の付着した後、
総延伸倍率16倍以上延伸することを特徴とする。 【効果】 タイヤや自動車ホースなどのゴム補強材やプ
ラスチック補強材、セメントの補強材あるいはロープ、
テントなどの産業資材において、長時間使用時の強力低
下が少なく、寿命の長いポリビニルアルコール系繊維で
あり、利用価値が高い。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は高温で長時間使用される
タイヤ、ホース、コンベアベルトなどのゴム資材や、プ
ラスチック、セメントなどの補強材さらにはロープ、帆
布、テントなどの産業資材に適した耐湿熱性と耐熱老化
性の優れた高強力ポリビニルアルコール(以下PVAと
略記)系繊維とその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来PVA系繊維はポリアミド、ポリエ
ステル、ポリアクリロニトリル系繊維に比べて強度、弾
性率が高く、その主用途である産業資材用繊維として使
用されている。さらにそれ以外にも、ゴム、プラスチッ
ク、セメントなどの補強繊維としても利用されてい来て
いる。最近の技術では、架橋により耐湿熱性を高めよう
とする事が特開平1−156517号、特開平1−20
7435号、特開平2−84587、特開平2−133
605などで例示されている。そこでは、重合度5,0
00以下のPVA繊維に、エポキシ化合物、イソシアネ
ート化合物、有機過酸化物、カルボン酸、リン酸、塩酸
などの架橋剤を付与し架橋させ、耐熱水性を高めると共
に耐ゴム疲労性も向上させることが記載されている。し
かし十分な強度を保持することは出来ず、且つ乾熱老化
性が悪い問題を有していた。
【0003】一方乾熱延伸時や、乾熱放置時の着色防止
や強力低下を抑えようとする試みは古くから行われ、特
公昭35−1669号、特公昭45−7691、特公昭
47−27048号などで公知である。しかしながらこ
れらの方法を用いても、最近の高重合度で高強力なPV
A繊維では、乾熱老化性を十分向上させる事は出来なか
った。それは、高重合度で高強力なPVA繊維を得るに
は、高温で高倍率に延伸する必要があり、延伸性を阻害
する添加物や付着物は使用出来ないからである。さら
に、機械的、熱的な分子鎖の切断が延伸時に起こり、ラ
ジカルが発生しPVAの分解が進むと共に、その後の実
用途において長時間使用すると、さらに分解が促進され
強力低下を起こしたからである。従って、高重合度なP
VAを用いる場合ほど乾熱老化性が悪い結果となってい
るのである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】従って本発明は、ゴ
ム、セメントの補強材やロープ、あるいは帆布、土木シ
ートなどの産業資材の用途に適した、耐湿熱性と耐乾熱
老化性に優れたPVA繊維を得ようとしたものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、耐湿熱性と耐
乾熱老化性を同時に満足させる点につき追及し、繊維
に、特にその内部に酸化防止剤を付与し、さらに表面だ
けをある範囲の架橋密度(ゲル弾性率)で架橋させるこ
とにより、目的の繊維が得られることを見い出したもの
である。すなわち本発明は、「1.粘度平均重合度が
3,000以上のポリビニルアルコール系ポリマーから
なる繊維において、ゲル弾性率が0.1×10-2〜1.
5×10-2g/d、熱水溶断温度が150℃以上、ヤー
ン強度が15g/d以上であり、かつ160℃、24時
間乾熱処理後の強力保持率が50%以上であるポリビニ
ルアルコール系繊維。2.粘度平均重合度が3,000
以上のポリビニルアルコール系ポリマーを溶媒に溶解
し、得られた溶液をノズルから吐出して糸条を形成し、
そのま該溶媒を乾燥除去するか、あるいは抽出浴で該溶
媒を抽出除去してから乾燥し、その後、乾燥後の糸状を
総延伸倍率が16倍以上であるように、乾熱延伸するポ
リビニルアルコール系繊維の製造方法において、(1)
乾燥までの工程で酸化防止剤を付与し、乾燥した糸条の
内部および表面に酸化防止剤を0.2〜3重量%保持さ
せると共に、(2)第2溶媒の乾燥工程前から、乾熱延
伸直前までの間の糸条表面に架橋剤を付与し、熱延伸す
ることを特徴とする、ポリビニルアルコール系繊維の製
造法」に関するものである。本発明の如く、酸化防止剤
の付与量を規制し、かつそれを少なくとも繊維内部に含
有せしめた後、架橋剤を繊維表層部に付着させ、ヤーン
強度や酸化防止剤の効果を大きく減少させないで繊維表
層部を架橋させた繊維およびその製造方法は未だ知られ
ていない。
【0006】以下本発明の内容をさらに詳細に説明す
る。本発明で用いるPVAは、その繊維が産業資材に適
した、より高強度のものとするために、粘度平均重合度
が3,000以上、好ましくは6,000以上、さらに
好ましくは10,000以上のものであり、ケン化度が
98.5モル%以上、好ましくは99.5モル%以上で
分岐度の低い直鎖状のものである。
【0007】本発明の繊維は、その目的からヤーン強度
が15g/d以上のものを対象とするものであるが、そ
の内でも、ゲル弾性率と熱水溶断温度並びに乾熱処理後
の強力保持率が前記の如く、同時に高い値を満足するも
のであることが特徴である。以後の説明で理解されるよ
うに酸化防止剤のみの処理では、ゲル弾性率も熱水溶断
温度も、さらにまた乾熱処理後の強力保持率も、本発明
で規定するが如き高い値を満足し得ず、また架橋剤のみ
の処理でもゲル弾性率や熱水溶断温度の点で本発明の規
定を満足しても乾熱処理後の強力保持率の点で満足のゆ
くものとならないのである。ところが、その両処理を組
合わせることによって、しかもその両処理を巧妙に制御
して組合わせることによって、上記特性を全て同時に満
足するものとなるのである。
【0008】PVA系ポリマーの溶剤には制限がなく、
例えばグリセリン、エチレングリコール、ジエチレング
リコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコ
ール、ブタンジオールなどの多価アルコールや、ジメチ
ルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジエチレント
リアミン、水、およびこれら2種以上の混合溶剤などが
挙げられる。
【0009】PVAを溶剤に溶解する際、ホウ酸、顔
料、界面活性剤などを添加しても支障はないが、本発明
に言う湿熱性と熱老化性やヤーン強度を低下させるもの
は好ましくない。
【0010】紡糸は湿式、乾式、乾湿式いずれの紡糸法
によっても良い。凝固浴はアルコール、アセトン、アル
カリ水溶液、アルカリ金属水溶液など何でも良いが、均
一ゲル繊維の生成し易いアルコール/溶剤混合系が好ま
しい。均一ゲル化を起こすには凝固浴中に10重量%以
上の該溶剤を含有させゆっくりと凝固させるのが好まし
い。さらに凝固温度を20℃以下にして急冷させるのも
均一ゲル繊維を得るのに好ましい。
【0011】溶剤を含んだ状態での湿延伸は繊維間の膠
着を少なくし、生成した微結晶を壊して非晶化し、その
後の乾熱延伸を容易にする点で3倍以上に行うのが望ま
しい。
【0012】次いで溶剤の抽出を行うが、抽出剤として
はメタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコ
ール類や、アセトン、エーテル、水などいずれでも良
い。但し本発明で、抽出工程に酸化防止剤を添加する場
合、酸化防止剤が沈澱したり大径のエマルジョン粒子を
生成するような抽出剤は使えない。
【0013】本発明に言う酸化防止剤としては、熱、光
安定剤のホスファイト系、チオエーテル系、ベンゾトリ
アゾール系、ヒンダードアミン系など用いても良いが、
好ましくはフェノール系酸化防止剤が良い。フェノール
系酸化防止剤としては、アルキルエステル系、イオウ
系、リン系、酸アミド系あるいはアミン系のモノフェノ
ールあるいはジフェノール化合物などがある。
【0014】付与方法は、PVAの紡糸原液に該酸化防
止剤を直接添加するか、あるいPVAの原液溶媒を抽出
する浴に添加し、繊維の内部および表面、特に内部に含
有させることがポイントである。
【0015】酸化防止剤の保持量は繊維に対して0.2
〜3.0重量%が良く、好ましくは0.5〜1.5重量
%である。0.2重量%未満では架橋処理後の熱老化を
十分に抑えることは出来ない。3.0重量%を越える
と、延伸性を阻害したり、架橋密度をコントロールする
のが難しく好ましくない。
【0016】PVAの紡糸原液から抽出浴までの間で酸
化防止剤を含有させると共に、乾熱延伸性を向上させる
ため油剤浴で油剤処理を施し、しかる後、抽出浴の第2
溶媒の乾燥前から延伸直前までの間で架橋剤を付与す
る。
【0017】本発明に言う架橋剤は、リン酸モノアルキ
ル、リン酸ジアルキル、あるいはそれらのアンモニウム
塩やアルキルアミン塩、リン酸1〜3アンモニウム、リ
ン酸尿素、ポリリン酸などのリン化合物、硫酸チタン、
硫酸アルキル、硫酸アンモニウム、硫酸水素アンモニウ
ムなどのイオウ化合物、さらにはオキシ塩化ジルコニウ
ム、硝酸ジルコニウムなどが挙げられるが、これに限定
されるものではない。
【0018】付与方法は紡糸抽出後の、乾燥前から延伸
直前までの間で、デイップ方式、ローラータッチ方式、
ギヤポンプオイリング方式などにより付着可能である
が、繊維の表層部のみを架橋するように設定することが
肝要である。
【0019】付与量は架橋剤の種類によって異なるが、
PVA繊維に対して0.01〜5重量%である。
【0020】架橋の密度および分布は架橋剤、付与量の
他に、乾熱延伸の温度、時間、倍率など多数のファクタ
ーが関与するが、本発明では、結果的に、得られた繊維
のゲル弾性率が0.1×10-2〜1.5×10-2g/d
となるように、比較的軽く、即ち前述の如く繊維の表面
層のみが架橋できるように条件設定することが必要であ
る。ゲル弾性率は架橋度を示すパラメーターであるが
0.1×10-2g/d未満では架橋が少なく、耐湿熱性
の向上が低下し産業資材として寿命の短いものとなり好
ましくない。一方1.5×10-2g/dを越えると耐湿
熱性は若干増加するが、強度低下が起こりかつ耐熱老化
性が悪化する問題が生じる。好ましいゲル弾性率は0.
2〜1.0×10-2g/dである。160℃、24時間
乾熱処理後の強力保持率が50%未満では寿命が短く実
用が難しい。
【0021】なお、架橋によりPVAの分解ラジカルが
同時に発生し、繊維強度を低下させかつその後の乾熱老
化性も悪くなると思われる。酸化防止剤は分解ラジカル
を抑える効果がありうるが、架橋度が高くなるにつれ
て、その効果が減少する。従って耐湿熱性と高強度で耐
熱老化性を満足させるには、本発明の如く酸化防止剤を
繊維内部に入れて、分解ラジカルを抑えながら繊維表面
を架橋する方法が最も好ましいのである。
【0022】乾熱延伸は、少なくともヤーン強度で15
g/d以上の繊維とするために、前記の湿延伸倍率をも
含めて総延伸倍率が16倍以上となるように延伸する。
延伸温度はPVAの重合度によっても異なるが、230
〜260℃が望ましい。
【0023】
【実施例】以下実施例により本発明を具体的に説明する
が、本発明は実施例のみに限定されるものではない。な
お以下に述べる実施例中における各種物性値は、以下の
方法で測定されたものである。
【0024】 1)PVAの粘度平均重合度(バーPAと記す) JIS K−6726に基づき30℃におけるPVA希
薄水溶液の比粘度ηspを5点測定し、下記数式1より極
限粘度[η]を求め、さらに下記数式2より粘度平均重
合度バーPAを算出した。
【0025】
【数1】
【0026】
【数2】
【0027】2)酸化防止剤の付与量 乾燥後の未延伸糸を100〜130℃の熱水に溶解せし
め、NMRによりPVAのCH2基ピークに対する酸化
防止剤のピーク比を算出し、予め作成した検量線より付
与量を求めた。
【0028】3)架橋剤の付与量 架橋剤を付着した延伸前の未架橋糸を熱水に溶解させ、
NMRや蛍光X線で架橋剤の帰属ピークや特定元素のピ
ークを測定し、検量線より求めた。またリン酸化合物は
未架橋糸を塩酸に溶解し、比色法にて求めた。
【0029】3)ヤーンの引張強伸度、弾性率 JIS L−1013に準じ予め調湿されたヤーンを、
試長20cmで0.25g/dの初期荷重および50%
分の引張速度にて破断伸度および初期弾性率を求め、1
0点以上の平均値を採用した。デニールは重量法により
求めた。
【0030】4)ゲル弾性率(E) 架橋された試料ヤーンに1gの初期荷重をかけ、50
℃、50%ZnCl2水溶液の中に2〜5分間入れて未
架橋部を溶出させる。次いでZnCl2水溶液中、十分
に収縮が起こったところで、試料長L1を読む。読み取
った荷重と試料長の点をグラフにプロットし、L1に対
する100%伸長(2L1)時の荷重Wgを読み取り、
それを処理前ヤーンデニールで除して求めた値で、下記
数式3で計算される。
【0031】
【数3】
【0032】5)熱水溶断温度(WTb) 単繊維25本にデニール当り200mgの荷重をかけ、
水を満たしたガラス製円筒状密閉容器の中間に吊し、周
囲より水を1〜2℃/分の速度で加熱昇温させていき、
繊維が溶断したときの温度を示す。
【0033】 6)乾熱老化性(乾熱処理後の強力保持率) ヤーンをフリーの状態で熱風炉に入れ、160℃、24
時間乾熱処理した後ヤーン強力を測定し、乾熱処理前の
ヤーン強力に対する強力保持率(%)を算出した。
【0034】実施例1:粘度平均重合度8,800のP
VAを濃度7重量%以上になるように、ジメチルスルホ
キシドに80℃に溶解し、次いで該溶液を500ホール
のノズルより、メタノール/ジメチルスルホキシド=7
/3(重量比)、温度5℃の凝固浴で湿式紡糸した。得
られた原糸は、さらに40℃のメタノール浴中で4倍に
湿延伸した後、3つのメタノール浴槽で該溶剤をほとん
ど全部除去した。3槽目のメタノール抽出浴には、下記
の化学式1で示されるフェノール系酸化防止剤である
4,4−チオビス−(6−tブチル−3−メチルフェノ
ール)が0.4重量%/浴になるように添加され、均一
溶液としてあり、原糸をこの浴に3分間滞留させ、繊維
の内部および表面に前記酸化防止剤を付着させた。次い
で油剤を付与し、90℃にて乾燥してメタノールを除去
した。得られた原糸の酸化防止剤付着量は1.0重量%
であった。
【0035】
【化1】
【0036】得られた原糸を乾熱延伸前に、架橋剤が繊
維の表面に付着するようローラータッチ方式で、リン酸
を付着させ、170℃と250℃の熱風炉で、各2.4
倍及び1.875倍に延伸し、総延伸倍率18.0倍に
した。未延伸糸の架橋剤の付着量は0.14重量%であ
った。得られた延伸糸のゲル弾性率は0.5×10-2
/d、熱水溶断温度は170℃と高く、かつヤーン強度
は17.8g/dであった。次いで該延伸糸を160
℃、24時間乾熱処理した後、強力保持率を測定したと
ころ、78%であり、従来のPVA繊維より数段優れた
高性能PVA繊維となった。この繊維はゴム補強材とし
て適している。
【0037】比較例1:実施例1で前記フェノール系酸
化防止剤および架橋剤を原糸に対して、0.05重量
%、0.005重量%付与させるように処理した以外は
全く同じ条件で繊維を製造した。得られた延伸糸のヤー
ン強度は、実施例1と同程度であったが、熱水溶断温度
145℃、ゲル弾性率0×10-2g/dと低く、また1
60℃、24時間の乾熱処理後の強力保持率は45%と
低く激しく着色した。
【0038】実施例2:平均重合度17,000のPV
Aを濃度5重量%になるように、180℃でグリセリン
に溶解し、次いで150ホールのノズルより吐出させ乾
湿式紡糸を行った。凝固浴はメタノール/グリセリン=
8/2(重量比)、温度−10℃であり、透明なゲル繊
維が得られた。該原糸はその後40℃メタノール浴で4
倍湿延伸した。次いでメタノール抽出浴に導き、ここで
グリセリンの抽出を行うと同時に、繊維の内部および表
面に次の酸化防止剤を付着させた。即ち、メタノール抽
出浴はメタノール/エタノール=95/5(重量比)か
らなり、さらに該浴にはフェノール系酸化防止剤である
N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tブチル
−4ヒドロキシ−ヒドロミンナマミド)が0.6重量%
/浴添加し、均一溶液にしてある。その後油剤を付着し
て乾燥したが、得られた乾燥原糸の酸化紡糸剤付着量
は、1.2重量%であった。得られた原糸を乾熱延伸前
に、架橋剤が繊維の表面に付着するようローラータッチ
方式で、C11〜C15モノ及びアルキルホスヘートを0.
2重量%付着させ、170℃、200℃、256℃の3
段熱風炉で総延伸倍率19.0倍に延伸した。未延伸糸
の架橋剤の付着量は0.2重量%であった。得られた延
伸糸のゲル弾性率は0.8×10-2g/d、熱水溶断温
度は180℃と高く、かつヤーン強度は20.0g/d
であった。次いで該延伸糸を160℃、24時間乾熱処
理した後、強力保持率を測定したところ、70%であっ
た。この繊維は、FRP、コンベアベルト、オイルブレ
ーキホース、タイヤコードなどの高温長時間使用にも可
能であることが判明した。
【0039】比較例2:実施例2において、該フェノー
ル系酸化防止剤を抽出浴には入れず、油剤浴のみに添加
して繊維表面に1.0重量%付着させた。さらに乾燥原
糸に乾熱延伸前に、該架橋剤をローラータッチ方式で
0.2重量%付着させた。しかしながら乾燥原糸の段階
で、原糸の表面に付着した酸化防止剤の粉末が、延伸時
にガイド、ローラーに脱落し、さらに延伸前の架橋剤付
着時に該酸化防止剤が洗い落とされ、架橋剤も付着しず
らく問題であった。総延伸倍率20.0倍、ヤーン強度
21.2g/dとほぼ実施例2と同程度であったが、酸
化防止剤0.1重量%に減少し、架橋剤の効果もなくゲ
ル弾性率は0×10-2g/d、熱水溶断温度148℃と
低かった。次いで160℃、24時間で乾熱老化性をみ
たところ、強力保持率は42%と低かった。酸化防止剤
は繊維の内部に含有させ、架橋剤を表層部に付着させ架
橋させなければ効果がないことが判明した。
【0040】実施例3:粘度平均重合度が4,200の
PVAを濃度11重量%になるように170℃のエチレ
ングリコールに溶解し、100ホールのノズルより乾湿
式法にて紡糸した。凝固浴は、エタノール/エチレング
リコール=9/1.0℃として、急冷ゲル化させ湿延伸
を3.5倍施した。次いでエタノール浴に導き、ここで
エチレングリコールの抽出を行うと同時に、繊維の内部
および表面に次の酸化防止剤を付着させた。即ち、エタ
ノール浴には、フェノール系酸化防止剤である4,4−
チオビス−(6−tブチル−3−メチルフェノール)が
1.0重量%/浴に添加されている。その後油剤を付着
して乾燥したが、得られた乾燥原糸の酸化紡糸剤付着量
は、1.9重量%であった。得られた原糸を乾熱延伸前
に、架橋剤が繊維の表面に付着するようローラータッチ
方式で、C11〜C15ホスヘートアミンを2.0重量%付
着させ、170℃と245℃の熱風炉で総延伸倍率1
8.0倍に延伸した。未延伸糸の架橋剤の付着量は1.
8重量%であった。得られた延伸糸のゲル弾性率は0.
3×10-2g/d、熱水溶断温度は167℃と高く、か
つヤーン強度は17.5g/dであった。次いで該延伸
糸を160℃、24時間乾熱処理した後、強力保持率を
測定したところ、80%であり従来にない高温長時間に
耐え得るPVA繊維となった。
【0041】比較例3:実施例3で前記フェノール系の
酸化防止剤を紡糸原液に1.0重量%/PVA添加し紡
糸した。その後油剤を付着して乾燥したが、得られた乾
燥原糸の酸化防止剤の付着量は0重量%となり、エタノ
ール浴で脱落した。得られた原糸を実施例3と同様に架
橋剤を付着し、乾熱延伸したところ、総延伸倍率17.
0倍、ヤーン強度17.3g/d、ゲル弾性率1.5×
10-2g/d、熱水溶断温度178℃となった。次いで
該延伸糸を160℃、24時間乾燥処理した後、強力保
持率を測定したところ、25%と低いものであった。こ
れにより酸化防止剤を原液に添加する場合は、脱落に注
意する必要がある。完全に脱落した状態で、架橋だけを
施せば耐熱水性は満足しても、架橋が多くなり、強度低
下や乾熱老化性の低下を招くことが判明した。
【0042】比較例4:実施例3で前記フェノール系酸
化防止剤が表面に付着するよう乾熱延伸前に、ローラー
タッチ方式で5.0重量%付着させ、170℃と245
℃の熱風炉で総延伸倍率18.0倍に延伸した。未延伸
糸のフェノール系酸化防止剤の付着量は1.5重量%で
あった。得られた延伸糸のゲル弾性率は0×10-2g/
d、熱水溶断温度は143℃と低く、ヤーン強度は1
7.5g/dであった。次いで該延伸糸を160℃、2
4時間乾熱処理した後、強力保持率を測定したところ、
40%と低いものであった。 これにより酸化防止剤を
表面に付着させただけで、架橋剤なしでは耐熱水性、乾
熱老化性ともに満足しないことが判明した。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 粘度平均重合度が3,000以上のポリ
    ビニルアルコール系ポリマーからなる繊維において、ゲ
    ル弾性率が0.1×10-2〜1.5×10-2g/d、熱
    水溶断温度が150℃以上、ヤーン強度が15g/d以
    上であり、かつ160℃、24時間乾熱処理後の強力保
    持率が50%以上であるポリビニルアルコール系繊維。
  2. 【請求項2】 粘度平均重合度が3,000以上のポリ
    ビニルアルコール系ポリマーを溶媒に溶解し、得られた
    溶液をノズルから吐出して糸条を形成し、そのまま該溶
    媒を乾燥除去するか、あるいは抽出浴で該溶媒を抽出除
    去してから乾燥し、その後、乾燥後の糸条を総延伸倍率
    が16倍以上であるように、乾熱延伸するポリビニルア
    ルコール系繊維の製造方法において、(1)乾燥までの
    工程で酸化防止剤を付与し、乾燥した糸条の内部および
    表面に酸化防止剤を0.2〜3重量%保持させると共
    に、(2)乾燥工程前から、乾熱延伸直前までの間の糸
    条表面に架橋剤を付与し、熱延伸することを特徴とす
    る、ポリビニルアルコール系繊維の製造法。
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