JPH07236470A - アルカリセルラーゼを産生する微生物 - Google Patents

アルカリセルラーゼを産生する微生物

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JPH07236470A
JPH07236470A JP23579994A JP23579994A JPH07236470A JP H07236470 A JPH07236470 A JP H07236470A JP 23579994 A JP23579994 A JP 23579994A JP 23579994 A JP23579994 A JP 23579994A JP H07236470 A JPH07236470 A JP H07236470A
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Abstract

(57)【要約】 【構成】 アルカリセルラーゼ K−522を産生する
能力を有し、微工研菌寄第9370号として寄託された
バチルス エスピー(Bacillus sp.) KS
M−522。 【効果】 本発明の菌株、バチルス エスピー KSM
−522は中性で生育する菌株であるので、好アルカリ
性細菌と比べ容易にアルカリセルラーゼを工業的に生産
することができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は新規なアルカリセルラー
ゼを産生する微生物に関する。
【0002】
【従来の技術】繊維素分解酵素セルラーゼの開発は、従
来、バイオマス資源、特にセルロース資源の有効利用を
一大目標として進められてきた。セルラーゼ生産菌とし
て分離されてきた菌株は多種類にわたり、アスペルギル
ス属、ペニシリウム属、トリコデルマ属、フザリウム
属、フミコーラ属、アクレモニウム属等の糸状菌を中心
に、シュウドモナス属、セルロモナス属、ルミノコッカ
ス属、バチルス属等の細菌、更に、ストレプトマイセス
属、サーモアクチノマイセス属等の放線菌でも報告され
ている。しかしながら、現時点では、バイオマス用セル
ラーゼの工業的規模での利用は、多くはない。
【0003】一方、セルラーゼの新規な産業的用途とし
て、衣料用洗浄剤の配合成分としての利用が検討され注
目を集めている(特公昭59−49279号公報、特公
昭60−23158号公報、特公昭60−36240号
公報)。しかし、自然界に於いて、微生物の産生するセ
ルラーゼのほとんどが、中性乃至酸性領域に於いて最大
且つ安定な酵素活性を示す、所謂中性若しくは酸性セル
ラーゼに分類されるものであって、衣料用洗浄剤組成物
中に配合するための条件を有するセルラーゼ、即ち、ア
ルカリ領域で最大活性を示すか、あるいはアルカリ耐性
を有する、所謂アルカリセルラーゼ及びアルカリ耐性セ
ルラーゼの存在は極めて少ないのが実情である。ここで
アルカリセルラーゼとは、至適pHがアルカリ領域にある
ものをいい、アルカリ耐性セルラーゼとは、至適pHは中
性から酸性領域にあるが、アルカリ領域に於いても至適
pHに於ける活性に比較して十分に活性を有しかつ安定性
を保持するものをいう。また、中性とはpH6〜8の範囲
をいい、アルカリ性とはこれより高いpH範囲を言う。
【0004】即ち、従来、衣料用洗浄剤組成物に於いて
使用し得るアルカリセルラーゼ及びアルカリ耐性セルラ
ーゼの生産方法としては、好アルカリ性バチルス属細菌
の培養によりセルラーゼAを採取する方法(特公昭50
−28515号公報)、セルロモナス属に属する好アル
カリ性細菌を培養してアルカリセルラーゼ301−Aを
生産する方法(特開昭58−224686号公報)、好
アルカリ性バチルスNo.1139を培養してカルボキ
シメチルセルラーゼを生産する方法(Fukumor
i,F.,Kudo,T.and Hroikosh
i,K.,J.Gen Microbiol.,13
1,3339(1985))及びストレプトマイセス属
の一種を用いてアルカリセルラーゼを生産する方法(特
開昭61−19483号公報)が報告されているに過ぎ
ず、しかもいずれも工業的発酵生産に適うものでは無か
った。
【0005】ところが最近、本発明者らは好アルカリ性
細菌の一種であるバチルス エスピー KSM−635
(Bacillus sp.KSM−635)(FER
MP−8872)が衣料用洗浄剤配合成分として適した
アルカリセルラーゼKを収率良く生産すること及び更に
培養条件を選択することにより、より生産性が高まり、
アルカリセルラーゼの工業的発酵生産が可能となること
を見出した。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記バ
チルス エスピー KSM−635の培養条件は、必ず
しも工業的に有利なものといえない。すなわち、好アル
カリ性菌株は培養中、pHをアルカリ性に保ち続ける必要
があるが、現在までのところ、好アルカリ性菌株を用い
る所謂アルカリ性発酵法の歴史は浅く、通常の中性微生
物と比較するとこれら好アルカリ性微生物の生理、生化
学についての知見は十分に蓄積されておらず、工業的発
酵生産を行うにあたっての培地調製、培養方法が操作上
の難点となっていた。更に、前述した報告例のうち、至
適pHがアルカリ領域にある本来のアルカリセルラーゼと
しては、バチルス N1菌株、N2菌株、N3菌株(特
公昭50−28515号公報)の生産する、至適pHがそ
れぞれ8〜9、9、8〜9の酵素、バチルス No.1
139の生産する至適pH9のもの及びバチルス エスピ
ー KSM−635の産生する至適pH10のアルカリセ
ルラーゼK(特願昭61−257776号公報)が存在
するが、更に洗浄剤組成物に配合し用いることのできる
至適pHがアルカリ側にあり、かつその作用pH範囲の広い
アルカリセルラーゼの提供が求められていた。
【0007】
【課題を解決するための手段】斯かる実情において本発
明者らは中性培地で生育し、しかも作用の優れたアルカ
リセルラーゼを産生することのできる菌株を得べく種々
研究を行った。
【0008】斯かる問題点を解決するには、中性領域で
生育する菌株を宿主として、該当するセルラーゼ遺伝子
をクローニングする、所謂遺伝子組換えの手法を取るこ
とも可能であるが、アルカリ領域に至適pHを有するアル
カリセルラーゼを生産する中性微生物を自然界に探索
し、これを分離することがより有効である。しかして、
本発明者らは上記微生物を自然界に求めた結果、一群の
バチルス属に属する微生物は中性培地に於いて生育する
にもかかわらず、一定のアルカリセルラーゼを産生する
ことを見出した。
【0009】本発明のアルカリセルラーゼを産生する微
生物は、本発明者が栃木県日光市の土壌より分離し、工
業技術院微生物工業技術研究所へ寄託した、バチルス・
エスピー KSM−522(FERM P−9370)
である。
【0010】この菌株は、下に示すような菌学的性質を
示す。なお、菌株の分類には、次に示す1〜22の培地
を用いた(表示は、重量%)。
【0011】培地1.肉エキス,1.0;バクトペプト
ン,1.0;NaCl,0.5;バクト寒天,1.5
(pH7.2) 培地2.肉エキス,1.0;バクトペプトン,1.0;
NaCl,0.5(pH7.2) 培地3.肉エキス,1.0;バクトペプトン,1.0;
NaCl,0.5,ゼラチン,1.0(pH7.2) 培地4.バクトリトマスミルク,10.0 培地5.バクトプペトン,1.0;KNO3 ,0.1 培地6.バクトペプトン,1.0;NaNO3 ,0.1 培地7.バクトペプトン,0.7;NaCl,0.5;
ブドウ糖,0.5(pH7.0) 培地8.バクトペプトン,1.0 培地9.TSI寒天(栄研化学社製):指示量 培地10.肉エキス,1.0;バクトペプトン,1.0;
NaCl,0.5;可溶性澱粉,0.2;寒天,1.5
【0012】培地11.NaNH4HPO4・4H2O,
0.15;KH2PO4,0.1;MgSO4・7H2O,
0.02;クエン酸ナトリウム,0.25(pH6.8) 培地12.クリステンセン(Christensen)培
地(栄研化学社製):指示量 培地13.ブドウ糖,1.0;KH2PO4,0.1;Mg
SO4・7H2O,0.05;KCl,0.02;窒素
源,0.1(pH7.2) 窒素源は、硝酸ナトリウム及び硫酸アンモニウムを用い
た。 培地14.キングA培地“栄研”(栄研化学社製):指示
量 培地15.キングB培地“栄研”(栄研化学社製):指示
量 培地16.尿素培地“栄研”(栄研化学社製):指示量 培地17.チトクローム・オキシダーゼ試験用濾紙(日水
製薬社製) 培地18.3%過酸化水素水 培地19.OF基礎培地(Difco社製):指示量 培地20.(NH42HPO4,0.1;KCl,0.0
2;MgSO4・7H2O,0.02;酵母エキス,0.
02;バクト寒天,2.0;BCP(0.2%溶液),
0.4
【0013】培地21.バクト・サブロー・デキストロー
ス寒天培地(Difco社製):指示量 培地22.スキムミルク,5.0; バクト寒天,1.5
【0014】(菌学的性質) (a)顕微鏡的観察結果 菌体の大きさは、0.5〜0.8μm ×1.0〜2.0
μm の桿菌であり、菌体の中央準端に卵円形又は円柱系
の内生胞子(0.5〜0.8μm ×1.0〜1.2μm
)を作る。周鞭毛を有し運動性がある。グラム染色は
陽性。抗酸性はない。
【0015】(b)各種培地に於ける生育状態 1.肉汁寒天平板培養(培地1) 良く生育する。集落の形状は円形であり、表面は粗造、
周縁は円滑又は波状である。また、集落の色調は淡黄色
半透明で、硬度は脂状である。 2.肉汁寒天斜面培養(培地1) 生育する。その状態は拡布状で光沢が有り、乳白色又は
淡黄色で半透明である。 3.肉汁液体培養(培地2) 生育し混濁する。 4.肉汁ゼラチン穿刺培養(培地3) 上層部に生育し、ゼラチンの液化が認められる。 5.リトマスマルク培地(培地4) ミルクの液化が認められるがリトマスの変色は認められ
ない。
【0016】(c)生理学的性質 1.硝酸塩の還元及び脱窒反応(培地5,6) ともに陰性。 2.MRテスト(培地7) 陽性。 3.VPテスト(培地7) 陽性。 4.インドールの生成(培地8) 陰性。 5.硫化水素の生成(培地9) 陰性。
【0017】6.澱粉の加水分解(培地10) 陰性。 7.クエン酸の利用(培地11,12) クリステンセン培地で陽性、コーサ培地では陰性か陽性
か特定できない。 8.無機窒素源の利用(培地13) 硝酸塩、アンモニウム塩とも陰性。 9.色素の生成(培地14,15) キングB培地で水溶性の黄色色素を生成する。 10.ウレアーゼ(培地16) 陰性。
【0018】11.オキシダーゼ(培地17) 陰性、陽性ははっきりせず。 12.カタラーゼ(培地18) 陽性。 13.生育の範囲(培地2) 生育の温度範囲は10〜50℃で、生育最適温度範囲は
20〜40℃である。生育のpH範囲は5〜10で、生育
最適pH範囲はpH6〜10である。
【0019】14.酸素に対する態度 好気性 15.O−Fテスト(培地19) 酸化。 16.糖類からの酸及びガスの生成(培地20) (+:生成、−:生成せず)
【0020】
【表1】 酸の生成 ガスの生成 1.L−アラビノール + − 2.D−キシロース + − 3.D−グルコース + − 4.D−マンノール + − 5.フラクトース + − 6.D−ガラクトース + − 7.麦芽糖 − − 8.ショ糖 + − 9.乳糖 − − 10.トレハロース + − 11.D−ソルビット − − 12.D−マンニット + − 13.イノシット − − 14.グリセリン + − 15.デンプン − −
【0021】17.VP培地に於けるpH(培地7) pH5.0〜5.2(7日目)。 18.食塩含有培地に於ける生育(培地1を改変) 5%,7%及び10%NaCl存在中でいずれも生育す
る。 19. pH5.7に於ける生育(培地21) 生育する。 20.カゼインの分解(培地22) 陽性。
【0022】以上の分類学的考察から判断して、KSM
−522株は容易に有胞子桿菌であるバチルス(Bac
illus)属の一種であると認められる。そして更
に、菌学的性質について、バージーズ・マニュアル・オ
ブ・ディタミネイティブ・バクテリオロジー(Berg
ey’s Mannual of Determina
tive Bacteriology)第8版及びザ・
ジーナス・バチルス(“The Genus Baci
llus”Ruth,E.Gordon Agricu
lture Hand−book No.427,Ag
ricultural Research Servi
ce,U.S.Department of Agri
culture Washington D.C.,
(1973))を参照し比較、検索すると、この菌株
は、最近、掘越と秋葉(“Alkaolphilic
Microorganisms”,Japan Sci
entific Society Press(Tok
yo),1982年刊)の主張している、所謂好アルカ
リ性(Alkalophilic)微生物、即ちpH8以
上のアルカリ培地に於いて生育し、これ以下の中性pH領
域で生育出来ない微生物に属するものでなく、弱酸性領
域からアルカリ領域(pH5〜10)に於いて生育可能
な、一般的な中性で生育するバチルス属微生物と判断で
きる。
【0023】更にこの菌株を他の公知のバチルス属の菌
株と比較すると、最も類縁の種としてバチルス・プミル
ス(Bacillus pumilus)が挙げられ
る。しかしながら、公知のバチルス・プミルスに属する
菌株は、少なくともアルカリセルラーゼを産生しないの
で、本菌株は新菌株と判断し、バチルス エスピー K
SM−522と命名して工業技術院微生物工業技術研究
所に寄託した(FERMP−9370)。本発明の菌株
を用いてアルカリセルラーゼを得るには、培地に菌株を
接種し、常法に従って培養すれば良い。培地中には、資
化し得る炭素源及び窒素源を適当量含有せしめておくこ
とが好ましい。この炭素源及び窒素源については特に制
限はないが、その例としては、窒素源としてコーングル
テンミール、大豆粉、コーンスチープリカー、カザミノ
酸、酵母エキス、ファーマメディア、イワシミール、肉
エキス、ペプトン、ハイプロ、アジパワー、コーンソイ
ビーンミール、コーヒー粕、綿実油粕、カルチベータ、
アミフレックス及びアジプロン、ゼスト、アジックスな
どが挙げられる。また、炭素源としては、籾殻、麩、濾
紙、一般紙類、おが屑等の植物繊維質、廃糖蜜、転化
糖、CMC、アビセル、セルロース綿、キシラン、ペク
チンに加え、資化し得る炭素源、例えばアラビノース、
キシロース、グルコース、マンノース、フラクトース、
ガラクトース、ショ糖、トレハロース、マンニット、グ
リセリンや資化し得る有機酸、例えば、クエン酸や酢酸
などが挙げられる。また、その他、リン酸、Mg2+,C
2+,Mn2+,Zn2+,Co2+,Na+,K+等の無機塩
や、必要であれば、無機、有機微量栄養源を培地中に適
宜添加することもできる。
【0024】斯して得られた培養物中からの目的物質で
あるアルカリセルラーゼの採取及び精製は、一般の酵素
の採取及び精製の手段に準じて行うことができる。即
ち、遠心分離又は濾過等の通常の固液分離手段により菌
体を培養液から除去して粗酵素液を得ることができる。
この粗酵素液は、そのまま使用することもできるが、必
要に応じて塩析法、沈澱法、限外濾過法等の分離手段に
より粗酵素を得、更に公知の方法により精製結晶化し
て、精製酵素として使用することも可能である。
【0025】斯くして得られた本発明のアルカリセルラ
ーゼ K−522は、以下に示す酵素学的性質を有す
る。なお、酵素活性の測定は、以下の方法に従って行
い、次の緩衝液を用いた。
【0026】pH3〜8 マクルベイン緩衝液 pH8〜11 グリシン−水酸化ナトリウム緩衝液 pH12〜13 塩化カルシウム−水酸化ナトリウム緩衝
【0027】酵素活性測定法: (1)CMCアーゼ活性 10mgCMC(A−01L,山陽国策パルプ社製)、1
00μmol 各種緩衝液(マクルベイン、リン酸、グリシ
ン−NaOH等)を含む基質溶液0.9mlに0.1mlの
酵素溶液を加え、30℃、20分反応した。反応後、
3,5−ジニトロ−サリチル酸(3.5−dinitr
o−salicylic acid(DNS))法にて
還元糖の定量を行った。すなわち、反応液1.0mlにD
NS試薬1.0mlを加え、5分間、100℃で加熱発色
させ、冷却後、4.0mlの脱イオン水を加えて希釈し
た。これを波長535nmで比色定量した。酵素力価は、
上記の条件下で1分間に1μmol のグルコースに相当す
る還元糖を生成する酵素量を1単位とした。
【0028】 (2)p−ニトロフェニルセロビオシド分解活性 0.1μmol p−ニトロフェニルセロビオシド(シグマ
社製)と、50μmolリン酸緩衝液(pH7.0)又は1
00μmol グリシン−NaOH緩衝液(pH9.0)とを
含む反応液1.0ml中に適当量の酵素液を30℃で作用
させた後、1MNa2CO3を0.3ml、脱イオン水を
1.7ml順次加え、遊離するp−ニトロフェノールを4
00nmで比色定量した。酵素力価は上記の条件下で1分
間に1μmol のp−ニトロフェノールを遊離させる酵素
量を1単位とした。
【0029】(3)アビセル、セルロース粉末、リン酸
膨潤セルロース、アルカリ膨潤セルロース及び濾紙分解
活性 15mgアビセル(メルク社製)、150μmol グリシン
−NaOH緩衝液(pH9.0)を含む反応液1.5ml中
に適当量の酵素液を加え、30℃、280rpmで振とう
しながら作用させた。反応後、冷却遠心分離(5℃、3
000rpm 、20分)を行い、その上清1.0mlを3,
5−ジニトロ−サリチル酸(3,5−dinitro−
salicylic acid(DNS))法にて還元
糖の定量を行った。セルロース粉末分解活性はセルロー
ス粉末(東洋濾紙社製)をリン酸膨潤セルロース分解活
性、アルカリ膨潤セルロース分解活性はトミタらの方法
(Tomita,Y.et al:J.Fermen
t.Technol.;52,235,1974)によ
り処理したセルロースを、濾紙分解活性は濾紙(セルラ
ーゼ活性度検定用濾紙、東洋No.51−特)をそれぞ
れ用い、アビセラーゼ活性の時と同様に行った。酵素力
価は、上記の条件下で1分間に1μmol のグルコースに
相当する還元糖を生成する酵素量を1単位とした。
【0030】(4)セロビアーゼ活性 10mgセロビオース(関東化学社製)、100μmol グ
リシン−NaOH緩衝液(pH9.0)を含む反応液1.
0ml内に適当量の酵素液を30℃で作用させた後、10
0℃、5分間処理して酵素を失活させた後、生成グルコ
ース量をムタロターゼ・GOD法(Glucose C
−Test、和光純薬工業社製)で測定した。酵素力価
は、上記の条件下で1分間に2μmol のグルコースを生
成する酵素量を1単位とした。
【0031】(酵素学的性質) (1)作用 CMC、セルロース粉末、濾紙、アビセル等の繊維素に
よく作用し、これらを溶解せしめ、グルコース等の還元
糖を生成する。
【0032】(2)基質特異性 本酵素は、CMCのほかにも、セルロース粉末、リン酸
膨潤セルロース、アルカリ膨潤セルロース、アビセル、
濾紙及びp−ニトロフェニルセロビオシドに対する活性
を有していた。
【0033】(3)作用pH及び至適pH 作用pH範囲は、3〜12.5と極めて広範囲であった。
至適pHは、7〜10と幅広く、pH4.5〜10.5の範
囲に於いても至適pHに於ける活性の50%以上の相対活
性を有しており、従って過去に研究されたアルカリセル
ラーゼの中でも最もアルカリ側で十分活性が発揮される
酵素といえる(図1)。
【0034】(4)pH安定性 各々のpHで30℃、1時間保持した後の残存活性を測定
し、pH安定性を調べた。その結果、pH5〜12で極めて
安定で失活せず、pH4.5〜12.5に於いても、約5
0%以上の活性を維持していた。本酵素は、このように
高アルカリ領域に於いても十分に安定である(図2)。
【0035】(5)最適温度 作用温度は、15〜80℃の広範囲にわたり、その至適
温度は60℃であった。また、45〜65℃の範囲に於
いても、至適温度での活性の50%以上を有していた
(図3)。
【0036】(6)温度安定性 至適pHに於いて、30分間各温度で処理した後、残存活
性を測定した結果、40℃では安定しており、55℃に
於いても約50%の残存活性を有していた(図4)。
【0037】(7)分子量 本酵素をバイオゲルP−150(バイオラッドラボラト
リーズ社製)によるゲル濾過法に基づき分子量を測定し
たところ、約3.5万であった。
【0038】(8)金属イオンの影響 本酵素について、各種金属イオン(Al3+,Fe3+,B
2+,Ca2+,Cd2+,Co2+,Cr2+,Cu2+,Fe
2+,Hg2+,Mn2+,Mo2+,Ni2+,Pb2+,Z
2+,Li+,K+,Na+)を活性測定時に共存させ
て、その影響を検討した(K+,Na+については濃度を
50mMとし、他のイオンについては、1mMとした)。そ
の結果、Hg2+で阻害が認められた。
【0039】(9)界面活性剤の影響 各種界面活性剤(例えば、LAS、AS、ES、AO
S、α−SFE、SAS、石鹸、ポリオキシエチレンセ
カンダリアルキルエーテル)の酵素活性に及ぼす影響を
調べた。本酵素を界面活性剤0.05%溶液で30℃、
15分間処理後、活性測定を行った。その結果、何れの
界面活性剤によってもほとんど阻害を受けなかった。強
力なデタージエントであるソデイウム・ドデシルサルフ
ェートによっても活性の阻害は認められなかった。
【0040】(10)プロテアーゼ耐性 洗剤用プロテアーゼ、例えばAPI−21(昭和電工社
製)、マクサターゼ(ギスト社製)及びアルカラーゼ
(ノボ社製)を、活性測定時に共存(0.1mg/ml)さ
せてその影響を調べたところ、何れのプロテアーゼに対
しても強い耐性を有することがわかった。
【0041】(11)キレート剤の影響 キレート剤であるEDTA、EGTA、トリポリリン酸
ソーダ、ゼオライト、クエン酸を活性測定時に共存さ
せ、その影響を検討したが、ほとんど阻害が認められな
かった。
【0042】
【発明の効果】本発明の微生物により得られるアルカリ
セルラーゼは、従来のアルカリセルラーゼに比較して高
アルカリ側(pH10)に至適pHを有している。その上、
pH7.0〜10の範囲に於いて、至適pHを有しており、
更に広い範囲に於いて極めて安定である。また、界面活
性剤、プロテアーゼ、キレート剤等の洗浄剤配合成分に
よってもほとんど阻害を受けない。従って、本酵素は洗
浄剤組成物の配合成分として有利に使用することができ
るものである。
【0043】更に、本発明の微生物は中性で生育するの
で、好アルカリ性菌株と比べ容易にアルカリセルラーゼ
を工業的に生産することができる。
【0044】
【実施例】以下、実施例を挙げ、本発明を更に詳しく説
明する。
【0045】実施例1 栃木県日光市の土壌を薬匙一杯(約0.5g)取り、こ
れを滅菌生理食塩水に懸濁し、80℃で10分間熱処理
した。この熱処理液の上清を適当に希釈して、分離用寒
天培地(培地1)に塗布した。次いで、これを30℃に
て3日間培養し、集落を形成させた。集落の周囲にCM
Cの溶解に基づく透明帯を形成するものを選出し、CM
Cアーゼ生産菌を取得した。更に、取得菌を液体培地
(培地2)に接種し、30℃で3日間振とう培養した。
培養後、遠心分離した上清液についてCMCアーゼ活性
を、pH3〜13にて測定し、アルカリセルラーゼ生産菌
をスクリーニングした。上述の方法により、本発明のK
SM−522株(FERM P−9370)を取得する
ことができた。
【0046】
【表2】 培地1. CMC 2% ポリペプトン 0.5% 酵母エキス 0.05% KH2PO4 0.1% Na2HPO4・12H2O 0.25% MgSO4・7H2O 0.02% 寒天 0.75% pH6.8
【0047】
【表3】 培地2. CMC 1% ポリペプトン 1% 酵母エキス 0.5% KH2PO4 0.1% Na2HPO4・12H2O 0.25% MgSO4・7H2O 0.02% pH6.8
【0048】参考例1 実施例1で得たバチルス エスピー KSM−522株
を同実施例の液体培地2に接種し、30℃で3日間振と
う培養した。培養後、菌体を遠心分離して除き、粗酵素
液を得た。この粗酵素液1リットルに対してドライアイ
ス−エタノール中で、3リットルのエタノールを加え、
生じた沈澱を遠心分離し、更に凍結乾燥を行い、乾燥粉
末として、アルカリセルラーゼ K−522(比活性*
23単位/g)8gを得た。 *酵素活性はpH9に於ける測定値である(以下同じ)。
【0049】参考例2 CMCを1%ショ糖に代え、ポリペプトンを7%CSL
に代える以外は実施例1の液体培地2と同じ組成の培地
にKSM−522株を接種し、30℃で2日間振とう培
養した。この培養物を遠心分離し、得られた上清のCM
Cアーゼ活性を測定したところ150単位/lであっ
た。
【図面の簡単な説明】
【図1】アルカリセルラーゼ K−522の酵素反応pH
と相対活性の関係を示す図面である。
【図2】同酵素の処理pHと相対活性の関係を示す図面で
ある。
【図3】同酵素の反応温度と相対活性の関係を示す図面
である。
【図4】同酵素の処理温度と相対活性の関係を示す図面
である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C12R 1:07) (72)発明者 伊藤 進 栃木県宇都宮市東峰町3441−64 (72)発明者 岡本 暉公彦 埼玉県越谷市七左町1−229−8

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 アルカリセルラーゼ K−522を生産
    する能力を有し、微工研菌寄第9370号として寄託さ
    れたバチルス エスピー(Bacillussp.) K
    SM−522。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN115851546A (zh) * 2022-12-22 2023-03-28 山东隆科特酶制剂有限公司 一株产碱性纤维素酶的短小芽孢杆菌
CN115851676A (zh) * 2022-12-22 2023-03-28 山东隆科特酶制剂有限公司 一种短小芽孢杆菌生产纤维素酶的方法

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