JPH07228568A - 硫黄化合物の製造方法 - Google Patents

硫黄化合物の製造方法

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JPH07228568A
JPH07228568A JP6318612A JP31861294A JPH07228568A JP H07228568 A JPH07228568 A JP H07228568A JP 6318612 A JP6318612 A JP 6318612A JP 31861294 A JP31861294 A JP 31861294A JP H07228568 A JPH07228568 A JP H07228568A
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carboxylic acid
reaction
hydrogen sulfide
catalyst
solvent
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JP6318612A
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Yoichi Hino
洋一 日野
Norihiro Wakao
典弘 若尾
Koichi Ito
広一 伊藤
Ryuichi Ishikawa
▲隆▼一 石川
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Nippon Shokubai Co Ltd
Original Assignee
Nippon Shokubai Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【構成】 水および/または反応系に不活性なアミド化
合物および/またはエーテル化合物および/またはケト
ン化合物を溶媒として用い、触媒として陰イオン交換樹
脂を用い、オレフィン性2重結合を有する不飽和カルボ
ン酸と硫化水素とを反応させて、硫黄化合物であるメル
カプト基を有するカルボン酸やスルフィド基を有するカ
ルボン酸を製造する方法。 【効果】 反応圧力を低圧(大気圧〜27 atm)とするこ
とができ、また、触媒と反応溶液との分離が容易とな
る。工業的に有利となる硫化水素と不飽和カルボン酸と
のモル比(H2 S/不飽和カルボン酸)が小さい条件下
(0.45〜3)で反応させることができ、しかも、不飽和
カルボン酸から高選択的でかつ収率良く、メルカプト基
を有するカルボン酸やスルフィド基を有するカルボン酸
を長期間にわたって安定的に製造することができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、オレフィン性2重結合
を有する不飽和カルボン酸と硫化水素とを反応させて、
メルカプト基を有するカルボン酸および/またはスルフ
ィド基を有するカルボン酸を製造する硫黄化合物の製造
方法に関するものである。
【0002】上記の硫黄化合物は、医薬品、農薬、各種
工業化学品の製造原料として広範囲に用いられる有用な
化合物である。
【0003】
【従来の技術】従来より、オレフィン性2重結合を有す
る不飽和カルボン酸と硫化水素とを反応させて、硫黄化
合物であるメルカプト基を有するカルボン酸および/ま
たはスルフィド基を有するカルボン酸を得る方法が種々
知られている。例えば、不飽和カルボン酸がアクリル酸
である場合に、アクリル酸と硫化水素とを反応させて、
硫黄化合物である3−メルカプトプロピオン酸や3,3'−
チオジプロピオン酸を得る方法としては、以下に示すよ
うな種々の製造方法が知られている。
【0004】即ち、特公昭40-15170号公報に、例えばト
リメチルベンジルアンモニウムヒドロキシドや水酸化ナ
トリウム等のアルカリ性触媒を上記反応系における触媒
として用いる方法が開示されている。しかしながら、こ
の方法においては、アルカリ性触媒のモル数をアクリル
酸のモル数の1.05倍以上用いなければならない。従っ
て、工業的な見地から見て、大量のアルカリ性触媒を反
応後に回収する場合には、労力および費用が嵩む一方、
例えばアルカリ性触媒を中和し、廃棄物として処理する
場合には、反応後の処理工程が煩雑となると共に、環境
に悪影響を及ぼすという欠点がある。
【0005】一方、米国特許第 3517058号に、有機アミ
ンを上記反応系における触媒として用いる方法が開示さ
れている。しかしながら、この方法においても、アルカ
リ性触媒のモル数をアクリル酸のモル数よりも多く用い
なければならない。また、この方法では、反応溶液から
均一触媒である有機アミンを分離する際に、例えば有機
アミンの蒸留を行うと、有機アミンにより生成物の分解
等が促進されて、生成物の収率および純度の低下が生じ
るため好ましくなく、蒸留による分離が困難となる。ま
た、例えば酸性溶液により有機アミンを中和し、塩にし
て除去すると、大量に発生する廃液の処理方法が複雑と
なる。従って、この方法においては、反応後の有機アミ
ンの取り扱いが困難であるという問題点を有している。
【0006】さらに、特開昭62-63526号公報に、陰イオ
ン交換樹脂を上記反応系における触媒として用いる方法
が開示されている。この方法は、反応溶液に不溶の陰イ
オン交換樹脂を用いるため、反応溶液から陰イオン交換
樹脂を分離することが容易となる。しかしながら、この
方法においては、反応圧力として27.6Kg/cm2(ゲージ
圧)以上の高圧を必要とするため、反応装置の耐圧構造
を強固なものとしなければならず、装置の大型化を招く
等の不利を生じる。そして、同公開特許公報に記載され
ているように、硫化水素とアクリル酸(以下、AAと略
す)とのモル比(H2 S/AA)が 5.4程度の、硫化水
素が大過剰の条件下では、3−メルカプトプロピオン酸
への選択性が良好となっている。ところが、本願発明者
等の検討によれば、過剰の硫化水素が少ない条件下、即
ち、工業的に有利となるH2 S/AAが小さい条件下で
は、3−メルカプトプロピオン酸への選択性が充分でな
く、従って、工業的な観点から満足の得られる方法では
ないことが判明した。
【0007】その上、同公開特許公報には、溶媒として
低級アルコール、飽和脂肪族炭化水素、飽和脂環式炭化
水素、芳香族炭化水素等の使用が記載されている。しか
しながら、本願発明者等の検討によれば、アクリル酸と
硫化水素との反応に溶媒として低級アルコールを用いる
と、アクリル酸のエステル化反応やアクリル酸のオレフ
ィン部分へのアルコール付加反応等の副反応が起こり、
また、溶媒として上記炭化水素を用いると、3−メルカ
プトプロピオン酸への選択性が工業的な条件下では充分
でないことが判明した。
【0008】尚、特公昭57-48155号公報に、アクリル酸
エステルと硫化水素との反応において、触媒として陰イ
オン交換樹脂を用いる方法が開示されている。ところ
が、この方法は、溶媒として反応生成物である硫黄化合
物を使用することが特徴であるが、上記反応系を、アク
リル酸と硫化水素との反応に適用し、反応生成物である
3,3'−チオジプロピオン酸を用いようとする場合は、3,
3'−チオジプロピオン酸が常温で固体であるため、溶媒
として使用することは困難となる。
【0009】さらに、特公昭63-35621号公報に、アクリ
ル酸エステルと硫化水素との反応において、溶媒として
アミド化合物を用いる方法が開示されている。ところ
が、この方法は、触媒として有機アミンを使用するた
め、上記反応系を本願発明のアクリル酸と硫化水素との
反応に適用すると、反応生成物である硫黄化合物が有機
アミンと塩を形成する。従って、生成物である3−メル
カプトプロピオン酸や3,3'−チオジプロピオン酸を触媒
である有機アミンと容易に分離することができないとい
う問題点を有している。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、前述
した問題点を解決し、オレフィン性2重結合を有する不
飽和カルボン酸から高選択的でかつ収率良く、硫黄化合
物であるメルカプト基を有するカルボン酸および/また
はスルフィド基を有するカルボン酸を製造する新規な方
法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】本願発明者等は、オレフ
ィン性2重結合を有する不飽和カルボン酸と硫化水素と
を反応させて、硫黄化合物であるメルカプト基を有する
カルボン酸および/またはスルフィド基を有するカルボ
ン酸を製造する方法について鋭意検討を重ねた結果、上
記不飽和カルボン酸と硫化水素とを、水および/または
上記反応系に不活性なアミド化合物および/またはエー
テル化合物および/またはケトン化合物を溶媒として用
い、陰イオン交換樹脂の存在下で反応させることによ
り、工業的に有利となる硫化水素と不飽和カルボン酸と
のモル比(H2 S/不飽和カルボン酸)が小さく、か
つ、低圧の条件下で、上記硫黄化合物が高選択的、かつ
高収率で得られることを見出すと共に、触媒である陰イ
オン交換樹脂が反応溶液に不溶であるため、反応溶液か
ら容易に分離可能であり、しかも耐久性に優れ、長期間
にわたって使用可能な活性を有することを確認して、本
発明を完成させるに至った。
【0012】即ち、請求項1記載の発明の硫黄化合物の
製造方法は、上記の課題を解決するために、一般式
(1)
【0013】
【化7】
【0014】(式中、R1 、R2 はそれぞれ独立して水
素原子または炭素数1〜4の炭化水素残基を表し、Xは
水素原子、−CONR3 4 基または−COOR5 基を
表し、かつ、上記R3 、R4 はそれぞれ独立して水素原
子または炭素数1〜4の炭化水素残基を表し、R5 は水
素原子または炭素数1〜8の炭化水素残基を表す)で示
される不飽和カルボン酸と硫化水素とを反応させて、一
般式(2)
【0015】
【化8】
【0016】(式中、R1 、R2 、Xは前記と同一)お
よび/または一般式(3)
【0017】
【化9】
【0018】(式中、R1 、R2 、Xは前記と同一)で
示されるメルカプト基を有するカルボン酸、および/ま
たは、一般式(4)
【0019】
【化10】
【0020】(式中、R1 、R2 、Xは前記と同一)お
よび/または一般式(5)
【0021】
【化11】
【0022】(式中、R1 、R2 、Xは前記と同一)お
よび/または一般式(6)
【0023】
【化12】
【0024】(式中、R1 、R2 、Xは前記と同一)で
示されるスルフィド基を有するカルボン酸を製造する硫
黄化合物の製造方法において、溶媒として水および/ま
たは上記反応系に不活性なアミド化合物および/または
エーテル化合物および/またはケトン化合物を用い、触
媒として陰イオン交換樹脂を用いることを特徴としてい
る。
【0025】請求項2記載の発明の硫黄化合物の製造方
法は、上記の課題を解決するために、請求項1記載の硫
黄化合物の製造方法において、反応圧力が大気圧以上、
27 atm以下であることを特徴としている。
【0026】請求項3記載の発明の硫黄化合物の製造方
法は、上記の課題を解決するために、請求項1または2
記載の硫黄化合物の製造方法において、上記不飽和カル
ボン酸と硫化水素とのモル比(不飽和カルボン酸:硫化
水素)が、1:0.4 以上、1:6以下であることを特徴
としている。
【0027】以下に本発明を詳しく説明する。本発明に
より製造されるメルカプト基を有するカルボン酸および
スルフィド基を有するカルボン酸は、工業原料として重
要である。例えば、不飽和カルボン酸がアクリル酸であ
る場合に、該アクリル酸から製造される3−メルカプト
プロピオン酸および3,3'−チオジプロピオン酸は、重合
調整剤、酸化防止剤等の原料として用いられる。また、
不飽和カルボン酸がマレイン酸またはフマル酸である場
合に、該マレイン酸またはフマル酸から製造されるチオ
リンゴ酸およびチオジコハク酸は、塩化ビニル樹脂の安
定剤、酸化防止剤等の原料として用いられる。
【0028】本発明で原料として使用される前記一般式
(1)で示される不飽和カルボン酸としては、オレフィ
ン性2重結合を有する化合物であれば、特に限定される
ものではないが、具体的には、例えば、アクリル酸、メ
タクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、α−
メチルマレイン酸、マレイン酸モノアミド、フマル酸モ
ノアミド、α−ブチルマレイン酸等が挙げられる。これ
ら不飽和カルボン酸は、一種類のみを用いてもよく、ま
た、二種類以上を適宜混合して用いてもよい。
【0029】本発明の方法によれば、これら不飽和カル
ボン酸から、相当する硫黄化合物、即ち、前記一般式
(2)および/または前記一般式(3)で示されるメル
カプト基を有するカルボン酸、および/または、前記一
般式(4)および/または前記一般式(5)および/ま
たは前記一般式(6)で示されるスルフィド基を有する
カルボン酸が得られる。例えば、不飽和カルボン酸がア
クリル酸である場合には、3−メルカプトプロピオン酸
および/または3,3'−チオジプロピオン酸が得られる。
また、不飽和カルボン酸がマレイン酸またはフマル酸で
ある場合には、チオリンゴ酸および/またはチオジコハ
ク酸が得られる。
【0030】本発明で触媒として使用される陰イオン交
換樹脂としては、例えば、官能基として3級アミン、或
いは4級アンモニウムヒドロキシドを有する陰イオン交
換樹脂等、種々のタイプのものが使用可能であり、特
に、塩の形になっていない弱塩基性陰イオン交換樹脂が
使用上好適である。上記陰イオン交換樹脂の基礎となる
合成樹脂としては、架橋によって不溶化されたものであ
れば特に限定されるものではない。例えば、ポリスチレ
ン、ポリアクリルアミド、エポキシ樹脂等が挙げられ
る。具体的には、アンバーリストA、アンバーライトI
RA(何れもローム&ハース社製商品)、ダウエックス
陰イオン交換樹脂(ダウ・ケミカル株式会社製商品)、
デュオライトA(住友化学工業株式会社製商品)等を例
示することができる。また、陰イオン交換樹脂は、それ
ぞれ単独で用いてもよく、また、二種類以上を組み合わ
せて用いてもよい。尚、上記不飽和カルボン酸に対する
触媒の使用量は、本発明を回分方式または半回分方式を
採用して反応させる場合において、1重量%〜 100重量
%、好ましくは2重量%〜50重量%である。
【0031】本発明において原料となる硫化水素として
は、通常市販されている精製硫化水素を使用できるのは
言うに及ばず、例えば、不純物として二酸化炭素や水等
を含む工業用硫化水素も使用可能である。勿論、反応終
了後に回収される過剰の硫化水素は、繰り返し使用する
ことができる。尚、上記工業用硫化水素は、例えば石油
精製における脱硫プロセス等から工業的に容易かつ安価
に入手することができる。
【0032】また、本発明において使用される硫化水素
の使用量は、上記不飽和カルボン酸1モルに対して、
0.4モル〜6モル(即ち、モル比:H2 S/不飽和カル
ボン酸= 0.4〜6)、好ましくは0.45モル〜3モル(モ
ル比:H2 S/不飽和カルボン酸=0.45〜3)である。
特に、上記メルカプト基を有するカルボン酸(以下、メ
ルカプト基含有カルボン酸と称する)の選択性を高める
場合、即ち、反応生成物としてメルカプト基含有カルボ
ン酸を多く製造する場合には、1モル〜6モル(即ち、
モル比:H2 S/不飽和カルボン酸=1〜6)、好まし
くは1モル〜3モル(モル比:H2 S/不飽和カルボン
酸=1〜3)とすればよく、一方、上記スルフィド基を
有するカルボン酸(以下、スルフィド基含有カルボン酸
と称する)の選択性を高める場合、即ち、反応生成物と
してスルフィド基含有カルボン酸を多く製造する場合に
は、 0.4モル〜1モル(即ち、モル比:H2 S/不飽和
カルボン酸= 0.4〜1)、好ましくは0.45モル〜 0.9モ
ル(モル比:H2 S/不飽和カルボン酸=0.45〜 0.9)
とすればよい。
【0033】不飽和カルボン酸に対して硫化水素を過剰
に使用すると、不飽和カルボン酸からメルカプト基含有
カルボン酸への選択性が高くなるが、不飽和カルボン酸
1モルに対して硫化水素を6モル以上使用しても上記の
選択性の向上は少なく、反応後に回収する未反応の硫化
水素量が多くなるため、好ましくない。逆に、不飽和カ
ルボン酸1モルに対して硫化水素を 0.4モル以下しか使
用しない場合は、未反応の不飽和カルボン酸が多くなる
ため、不飽和カルボン酸の重合等の副反応が起こると共
に、反応後に回収する未反応の不飽和カルボン酸量が多
くなるため、好ましくない。
【0034】また、本発明において使用される溶媒は、
水、上記反応系に不活性なアミド化合物および/または
エーテル化合物および/またはケトン化合物、水と上記
アミド化合物および/またはエーテル化合物および/ま
たはケトン化合物との混合物が好適である。上記アミド
化合物、エーテル化合物およびケトン化合物は、例えば
酸素、硫黄、窒素等と結合している水素(例えば−O
H、−COOH、−SH、−NH2 等)、即ち、上記反
応系に対して活性な活性水素を有しない化合物であれ
ば、特に限定されるものではない。具体的には、アミド
化合物としては、例えば、ジメチルホルムアミド(DM
F)、ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、
N−メチルピロリドンやジメチルイミダゾリジノン等の
アミド等を使用することができ、このうち、ジメチルホ
ルムアミドがメルカプト基含有カルボン酸の収率が高く
なる点で好ましい。また、エーテル化合物としては、例
えば、ジオキサンやジオキソラン等の環状エーテル、ジ
エチレングリコールジメチルエーテル等を使用すること
ができ、このうち、ジオキサンがメルカプト基含有カル
ボン酸の収率が高くなる点で好ましい。また、ケトン化
合物としては、例えば、アセトン、ジエチルケトン、メ
チルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等を使用す
ることができる。これらアミド化合物、エーテル化合物
およびケトン化合物は、単独で使用してもよく、また、
二種類以上を混合して使用してもよい。また、本反応は
発熱反応であり、上記の溶媒は、反応時に触媒表面で発
生する反応熱を速やかに除去するための希釈剤としても
機能する。
【0035】特に、メルカプト基含有カルボン酸の選択
性を高める場合、即ち、反応生成物としてメルカプト基
含有カルボン酸を多く製造する場合には、溶媒である上
記水、アミド化合物、エーテル化合物、およびケトン化
合物のなかでも、ジオキサンを使用することが、メルカ
プト基含有カルボン酸の収率が高く、生成物と溶媒との
蒸留分離が容易である点で好ましい。さらに不飽和カル
ボン酸と硫化水素とのモル比を前記の範囲にすることに
より、メルカプト基含有カルボン酸の収率を向上させる
ことが可能である。
【0036】また、スルフィド基含有カルボン酸の選択
性を高める場合、即ち、反応生成物としてスルフィド基
含有カルボン酸を多く製造する場合には、溶媒として、
水単独、または水と上記アミド化合物および/またはエ
ーテル化合物および/またはケトン化合物との混合物、
特に、水を単独に使用することが、スルフィド基含有カ
ルボン酸の収率が高く、生成したスルフィド基含有カル
ボン酸と水との分離精製が容易である点で好ましい。さ
らに不飽和カルボン酸と硫化水素とのモル比を前記の範
囲にすることにより、スルフィド基含有カルボン酸の収
率を向上させることが可能である。
【0037】尚、水と上記アミド化合物および/または
エーテル化合物および/またはケトン化合物との混合比
率、或いは、アミド化合物とエーテル化合物とケトン化
合物との混合比率は、特に限定されるものではない。ま
た、上記の説明から明らかなように、本発明において
は、水の存在下で不飽和カルボン酸と硫化水素とを反応
させることができるので、上述のように不純物として水
等を含む工業用硫化水素が使用可能である。
【0038】そして、本発明において上記の溶媒を使用
することにより、次のような効果が得られる。即ち、
溶媒に硫化水素を吸収させることによって、反応圧力を
低圧とすることができる、工業的に有利となる硫化水
素と不飽和カルボン酸とのモル比(H2 S/不飽和カル
ボン酸)が小さい条件下においても、メルカプト基含有
カルボン酸および/またはスルフィド基含有カルボン酸
を高選択的でかつ収率良く製造することができる、反
応時に触媒表面で発生する反応熱を速やかに除去するこ
とによって、触媒の熱的劣化を抑制し、触媒の耐久性を
向上させることができる、等が挙げられる。尚、本発明
において上記の溶媒が、不飽和カルボン酸からメルカプ
ト基含有カルボン酸やスルフィド基含有カルボン酸を合
成する反応に、優れた溶媒効果を示す詳細な理由は明ら
かではないが、上記の反応においては、溶媒と硫化水素
との間に何らかの相互作用が生じているものと推定され
る。
【0039】不飽和カルボン酸に対する溶媒の使用量
は、本発明を回分方式または半回分方式を採用して反応
させる場合において、 0.2重量倍〜10重量倍、好ましく
は 0.5重量倍〜4重量倍である。不飽和カルボン酸に対
して溶媒を 0.2重量倍以下しか使用しない場合は、溶媒
に硫化水素が充分に吸収されないので反応圧力が高圧と
なり、また、硫黄化合物を高選択的でかつ収率良く製造
することができなくなる等、上述した各効果が得難くな
るため、好ましくない。逆に、不飽和カルボン酸に対し
て溶媒を10重量倍以上使用しても上記各効果のより一層
の向上は望めず、生産性が低下すると共に、反応装置の
大型化を招く等の不利を生じるため、好ましくない。
【0040】尚、溶媒として、活性水素を有する化合
物、例えばエチルアルコール等の低級アルコールを使用
すると、反応時に不飽和カルボン酸とこれら低級アルコ
ールとの間でエステル化等の副反応が生じる。従って、
活性水素を有する化合物は、上記反応系の溶媒としては
使用に適さない。また、溶媒として、例えばペンタン、
ヘキサン、シクロヘキサン等の飽和脂肪族炭化水素、ベ
ンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等を使
用すると、硫化水素と不飽和カルボン酸とのモル比が小
さい条件下で、メルカプト基含有カルボン酸を高選択的
でかつ収率良く製造することができなくなると共に、こ
れら炭化水素へのスルフィド基含有カルボン酸の溶解度
が小さいので、スルフィド基含有カルボン酸が析出して
触媒との分離が困難となる。従って、例えば特開昭62-6
3526号公報に開示されているような希釈剤は、本発明の
反応系の溶媒としては使用に適さない。
【0041】反応温度は、陰イオン交換樹脂の耐熱温度
以下の温度であれば、任意に設定可能であるが、20℃〜
100 ℃が好適である。反応温度が20℃以下の場合には、
反応速度が遅くなり、反応に時間が掛かるため経済的で
なく、また、反応温度が 100℃以上の場合には、例えば
陰イオン交換樹脂の熱的劣化による活性の低下が起こ
り、陰イオン交換樹脂の寿命が短くなるため、好ましく
ない。
【0042】反応圧力は、反応系に存在する硫化水素の
量、反応温度、溶媒の量等にもよるが、大気圧〜50 at
m、好ましくは大気圧〜27 atm、さらに好ましくは、メ
ルカプト基含有カルボン酸を選択的に製造する場合には
5 atm〜27 atm、特に7 atm〜25 atmであり、スルフィ
ド基含有カルボン酸を選択的に製造する場合には大気圧
〜10 atm、特に1 atm〜7 atmである。反応圧力は、高
圧の方が硫化水素の反応溶液への溶解量が多くなり、反
応が進み易くなる反面、反応装置の耐圧構造をより強固
なものとしなければならず、装置の大型化や設備費の増
加を招く等の不利を生じる。従って、反応圧力は、上記
両者のバランスを考慮に入れて設定すればよい。尚、反
応圧力を50 atm以上としても、反応促進の効果は小さ
く、逆に装置の大型化を招くため、好ましくない。
【0043】本発明においては、上述のように硫化水素
と不飽和カルボン酸とのモル比(H2 S/不飽和カルボ
ン酸)、および、反応圧力を適宜設定することにより、
メルカプト基含有カルボン酸およびスルフィド基含有カ
ルボン酸の何れか一方を選択的に製造することが可能と
なっている。
【0044】本発明は、回分方式、半回分方式、連続方
式の何れの方式を採用して行ってもよい。回分方式およ
び半回分方式を採用して反応させる場合には、不飽和カ
ルボン酸および硫化水素を供給する供給方法は、特に限
定されるものではなく、種々の方法が可能であり、例え
ば、不飽和カルボン酸と触媒と溶媒とを予め混合した
後、硫化水素を供給してもよく、また、溶媒と触媒とを
予め混合し、硫化水素を溶媒に飽和溶解させた後、不飽
和カルボン酸と硫化水素を同時に供給してもよい。
【0045】触媒を反応溶液中に懸濁させて反応し、反
応終了後、例えば濾過等の簡単な分離操作を行うことに
より、反応溶液から触媒を分離し、その後、反応溶液を
蒸留する等して目的物であるメルカプト基含有カルボン
酸、および、スルフィド基含有カルボン酸を単離するこ
とができる。
【0046】また、連続方式のうち、槽型流通方式を採
用して反応させる場合には、例えば濾過等の簡単な分離
操作を行うことにより、反応溶液から触媒を分離するこ
とができる。さらに、連続方式のうち、充填方式を採用
して反応させる場合には、触媒と反応溶液との分離操作
が不要となるので、例えば触媒を充填した反応器の出口
から流出する反応溶液を、直接、蒸留もしくは晶析する
等してメルカプト基含有カルボン酸、および、スルフィ
ド基含有カルボン酸を単離することができる。
【0047】尚、上記の連続方式を採用する場合には、
反応温度等にもよるが、触媒を充填した反応器内を通過
させる反応溶液の液空間速度(LHSV)を 0.2hr-1
20hr-1、好ましくは 0.5hr-1〜10hr-1とすればよい。
【0048】
【作用】上記の方法によれば、陰イオン交換樹脂が不均
一触媒であるので、触媒と反応溶液との分離が容易であ
り、従来の方法において均一触媒として使用されている
水酸化ナトリウム、有機アミン等とは異なり、触媒除去
のための蒸留工程や中和工程等が不要である。即ち、従
来の方法とは異なり、触媒と硫化水素とが反応して塩を
生成する虞れはなく、また、触媒を中和等する必要もな
いので廃棄物処理の問題等も発生しない。
【0049】そして、溶媒に硫化水素を吸収させること
によって、反応圧力を大気圧〜50 atm、好ましくは大気
圧〜27 atmの低圧とすることができる。さらに、工業的
に有利となる硫化水素と不飽和カルボン酸とのモル比
(H2 S/不飽和カルボン酸)が小さい条件下において
も、硫黄化合物を高選択的でかつ収率良く製造すること
ができる。その上、溶媒の使用により反応時に触媒表面
で発生する反応熱を速やかに除去することによって、触
媒の熱的劣化が抑制されるので、触媒の耐久性を向上さ
せることができ、触媒を長期間にわたって使用すること
ができる。
【0050】以下、実施例および比較例により、本発明
をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらにより何
ら限定されるものではない。尚、不飽和カルボン酸の転
化率、および、メルカプト基含有カルボン酸の収率およ
び選択率は、次の定義に従うものとする。
【0051】不飽和カルボン酸の転化率(%)=(消費
された不飽和カルボン酸のモル数/供給した不飽和カル
ボン酸のモル数)× 100 メルカプト基含有カルボン酸の収率(%)=(メルカプ
ト基含有カルボン酸に転化した不飽和カルボン酸のモル
数/供給した不飽和カルボン酸のモル数)× 100 メルカプト基含有カルボン酸の選択率(%)=(メルカ
プト基含有カルボン酸に転化した不飽和カルボン酸のモ
ル数/消費された不飽和カルボン酸のモル数)× 100 また、スルフィド基含有カルボン酸の収率および選択率
も、上記と同様の定義に従うものとする。
【0052】
【実施例】
〔実施例1〕反応容器として 300mlオートクレーブを用
い、このオートクレーブに溶媒としてのジメチルホルム
アミド(以下、DMFと略す)を 100g、触媒としての
陰イオン交換樹脂(ローム&ハース社製:商品名 アン
バーライトIRA−93)を10.0g仕込み、窒素置換し
た後密閉し、撹拌しながら60℃まで昇温した。次いで、
容器内の圧力が5 atmになるまで硫化水素を供給した
後、硫化水素と、不飽和カルボン酸としてのアクリル酸
(以下、AAと略す)とを同時に供給し、供給終了後、
60℃で熟成した。硫化水素の供給量は47.3g、AAの供
給量は50.0g(即ち、仕込みモル比:H2 S/AA=2.
0 )であった。また、供給時間と熟成時間とを合わせた
反応時間は5時間であり、反応期間中の最大圧力は10 a
tmであった。
【0053】この反応溶液を濾過し、濾液をガスクロマ
トグラフィーおよび液体クロマトグラフィーにより分析
した結果、AAの転化率は98.5%、メルカプト基含有カ
ルボン酸としての3−メルカプトプロピオン酸(以下、
MPAと略す)の収率は81.5%、選択率は82.7%であっ
た。また、反応条件および結果を表1にも記載した。
【0054】また、後述する比較例1・2との比較から
明らかなように、従来の方法である無極性溶媒を用いる
反応や、溶媒を用いない反応よりも高い収率および選択
率でMPAが得られた。
【0055】〔実施例2〕実施例1における溶媒として
のDMFの量を75.0gとし、触媒としての陰イオン交換
樹脂(ローム&ハース社製:商品名 アンバーライトI
RA−94)を10.0g用い、硫化水素とAAとのモル比
(H2 S/AA)が 3.0となるように硫化水素を70.9
g、AAを50.0g供給した以外は実施例1と同様の反
応、分析を行った。反応条件および得られた結果を表1
に合わせて記載した。
【0056】〔実施例3〕実施例1における溶媒として
のDMFの量を52.5gとし、触媒としての上記陰イオン
交換樹脂(アンバーライトIRA−94)を10.5g用
い、硫化水素とAAとのモル比(H2 S/AA)が 6.0
となるように硫化水素を99.3g、AAを35.0g供給した
以外は実施例1と同様の反応、分析を行った。反応条件
および得られた結果を表1に合わせて記載した。
【0057】〔実施例4〕実施例1における溶媒として
のDMFに代えて、ジメチルイミダゾリジノン 100gを
溶媒として用い、触媒としての上記陰イオン交換樹脂
(アンバーライトIRA−94)を10.0g用い、硫化水
素とAAとのモル比(H2 S/AA)が 2.0となるよう
に硫化水素を47.3g、AAを50.0g供給した以外は実施
例1と同様の反応、分析を行った。反応条件および得ら
れた結果を表1に合わせて記載した。この結果から明ら
かなように、ジメチルイミダゾリジノンを溶媒として用
いた場合においても、実施例1と同様に高い収率および
選択率でMPAが得られた。
【0058】〔実施例5〕実施例1における溶媒として
のDMFに代えて、1,4-ジオキサン80.0gを溶媒として
用い、触媒としての上記陰イオン交換樹脂(アンバーラ
イトIRA−93)を 4.0g用い、硫化水素とAAとの
モル比(H2 S/AA)が 2.7となるように硫化水素を
51.1g、AAを40.0g供給した以外は実施例1と同様の
反応、分析を行った。反応条件および得られた結果を表
1に合わせて記載した。
【0059】〔実施例6〕実施例1における溶媒として
のDMFに代えて、1,4-ジオキサン60.0gを溶媒として
用い、触媒としての上記陰イオン交換樹脂(アンバーラ
イトIRA−93)を 9.0g用い、硫化水素とAAとの
モル比(H2 S/AA)が 6.0となるように硫化水素を
85.1g、AAを30.0g供給した以外は実施例1と同様の
反応、分析を行った。反応条件および得られた結果を表
1に合わせて記載した。
【0060】〔実施例7〕実施例1における溶媒として
のDMFに代えて、1,4-ジオキサン70.0gを溶媒として
用い、触媒としての上記陰イオン交換樹脂(アンバーラ
イトIRA−94)を14.0g用い、硫化水素とAAとの
モル比(H2 S/AA)が 1.4となるように硫化水素を
46.3g、AAを70.0g供給した以外は実施例1と同様の
反応、分析を行った。反応条件および得られた結果を表
1に合わせて記載した。
【0061】実施例5〜7の結果から明らかなように、
1,4-ジオキサンを溶媒として用いた場合においても、実
施例1と同様に高い収率および選択率でMPAが得られ
た。
【0062】〔実施例8〕実施例1における溶媒として
のDMFに代えて、 1,3−ジオキソラン60.0gを溶媒と
して用い、触媒としての上記陰イオン交換樹脂(アンバ
ーライトIRA−93)を18.0g用い、硫化水素とAA
とのモル比(H2 S/AA)が 2.0となるように硫化水
素を56.8g、AAを60.0g供給した以外は実施例1と同
様の反応、分析を行った。反応条件および得られた結果
を表1に合わせて記載した。この結果から明らかなよう
に、 1,3−ジオキソランを溶媒として用いた場合におい
ても、実施例1と同様に高い収率および選択率でMPA
が得られた。
【0063】〔実施例9〕実施例1における溶媒として
のDMFに代えて、ジエチレングリコールジメチルエー
テル60.0gを溶媒として用い、触媒としての上記陰イオ
ン交換樹脂(アンバーライトIRA−93)を18.0g用
い、硫化水素とAAとのモル比(H2 S/AA)が 2.0
となるように硫化水素を56.8g、AAを60.0g供給した
以外は実施例1と同様の反応、分析を行った。反応条件
および得られた結果を表1に合わせて記載した。この結
果から明らかなように、ジエチレングリコールジメチル
エーテルを溶媒として用いた場合においても、実施例1
と同様に高い収率および選択率でMPAが得られた。
【0064】〔実施例10〕実施例1における溶媒とし
てのDMFに代えて、水 150gを溶媒として用い、触媒
としての上記陰イオン交換樹脂(アンバーライトIRA
−93)を 7.5g用い、硫化水素とAAとのモル比(H
2 S/AA)が 2.0となるように硫化水素を14.2g、A
Aを15.0g供給した以外は実施例1と同様の反応、分析
を行った。反応条件および得られた結果を表1に合わせ
て記載した。この結果から明らかなように、水を溶媒と
して用いた場合においても、実施例1と同様に高い収率
および選択率でMPAが得られた。
【0065】〔実施例11〕実施例1における溶媒とし
てのDMFに代えて、DMF45gと水45gとの混合物を
溶媒として用い、触媒としての上記陰イオン交換樹脂
(アンバーライトIRA−93)を13.5g用い、硫化水
素とAAとのモル比(H2 S/AA)が 2.5となるよう
に硫化水素を53.2g、AAを45.0g供給した以外は実施
例1と同様の反応、分析を行った。反応条件および得ら
れた結果を表1に合わせて記載した。この結果から明ら
かなように、アミド化合物であるDMFと水との混合物
を溶媒として用いた場合においても、実施例1と同様に
高い収率および選択率でMPAが得られた。
【0066】〔実施例12〕実施例1における溶媒とし
てのDMFに代えて、DMF17.5gと1,4-ジオキサン5
0.0gとの混合物を溶媒として用い、触媒としての陰イ
オン交換樹脂(ローム&ハース社製:商品名 アンバー
ライトIRA−900)を13.5g用い、硫化水素とAA
とのモル比(H2 S/AA)が 3.0となるように硫化水
素を63.8g、AAを45.0g供給した以外は実施例1と同
様の反応、分析を行った。反応条件および得られた結果
を表1に合わせて記載した。この結果から明らかなよう
に、アミド化合物であるDMFとエーテル化合物である
1,4-ジオキサンとの混合物を溶媒として用いた場合にお
いても、実施例1と同様に高い収率および選択率でMP
Aが得られた。
【0067】〔実施例13〕反応容器として 300mlオー
トクレーブを用い、このオートクレーブにAAを50.0
g、触媒としての上記陰イオン交換樹脂(アンバーライ
トIRA−900)を10.0g、溶媒としての水を 100g
仕込み、窒素置換した後密閉し、撹拌しながら60℃まで
昇温した。その後、硫化水素とAAとのモル比(H2
/AA)が0.45となるように硫化水素を10.6g供給し、
反応を開始した。反応時間は24時間であり、反応期間中
の最大圧力は10 atmであった。
【0068】この反応溶液を実施例1と同様にして分析
した結果、AAの転化率は88.0%、スルフィド基含有カ
ルボン酸としての3,3'−チオジプロピオン酸(以下、T
DPと略す)の収率は87.2%、選択率は99.1%であっ
た。また、反応条件および結果を表1にも記載した。
【0069】〔実施例14〕実施例1における溶媒とし
てのDMFの量を55.0gとし、触媒としての陰イオン交
換樹脂(ローム&ハース社製:商品名 アンバーライト
IRA−45)を33.0g用い、硫化水素とAAとのモル
比(H2 S/AA)が0.40となるように硫化水素を20.8
g、AAを 110g供給した以外は実施例1と同様の反
応、分析を行った。その結果、AAの転化率は79.1%、
TDPの収率は78.2%、選択率は98.9%であった。ま
た、反応条件および結果を表1にも記載した。
【0070】〔実施例15〕実施例1における溶媒とし
てのDMFに代えて、水50.0gと1,4-ジオキサン20.0g
との混合物を溶媒として用い、触媒としての上記陰イオ
ン交換樹脂(アンバーライトIRA−94)を35.0g用
い、硫化水素とAAとのモル比(H2 S/AA)が0.50
となるように硫化水素を16.6g、AAを70.0g供給した
以外は実施例1と同様の反応、分析を行った。その結
果、AAの転化率は97.7%、TDPの収率は94.3%、選
択率は96.5%であった。また、反応条件および結果を表
1にも記載した。
【0071】〔実施例16〕実施例13における溶媒と
しての水に代えて、ジメチルアセトアミド80.0gを溶媒
として用い、触媒としての陰イオン交換樹脂(ローム&
ハース社製:商品名アンバーライトIRA−35)を1
6.0g用い、硫化水素とAAとのモル比(H2 S/A
A)が0.50となるように硫化水素を18.9g供給し、AA
を80.0g仕込んだ以外は実施例13と同様の反応、分析
を行った。その結果、AAの転化率は98.3%、TDPの
収率は96.1%、選択率は97.8%であった。また、反応条
件および結果を表1にも記載した。
【0072】実施例13〜16の結果から明らかなよう
に、硫化水素とAAとのモル比(H2 S/AA)が小さ
い条件下においては、MPAのかわりに、TDPが高い
収率および選択率で得られた。
【0073】〔実施例17〕実施例1における溶媒とし
てのDMFに代えて、アセトン60.0gを溶媒として用
い、触媒としての上記陰イオン交換樹脂(アンバーライ
トIRA−94)を18.0g用い、硫化水素とAAとのモ
ル比(H2 S/AA)が 2.0となるように硫化水素を5
6.5g、AAを60.0g供給した以外は実施例1と同様の
反応、分析を行った。その結果、AAの転化率は99.3
%、MPAの収率は70.9%、選択率は71.4%であった。
また、反応条件および結果を表1にも記載した。この結
果から明らかなように、ケトン化合物であるアセトンを
溶媒として用いた場合においても、実施例1と同様に高
い収率および選択率でMPAが得られた。
【0074】〔実施例18〕実施例1における溶媒とし
てのDMFに代えて、1,4-ジオキサン60.0gを溶媒とし
て用い、触媒としての上記陰イオン交換樹脂(アンバー
ライトIRA−93)を20.0g用い、不飽和カルボン酸
としてのAAに代えて、メタクリル酸を用い、硫化水素
とメタクリル酸とのモル比(H2 S/メタクリル酸)が
3.0となるように硫化水素を71.2g、メタクリル酸を6
0.0g供給した以外は実施例1と同様の反応、分析を行
った。その結果、メタクリル酸の転化率は99.0%、メル
カプト基含有カルボン酸としての3−メルカプト−2−
メチル−プロピオン酸の収率は83.3%、選択率は84.1%
であった。また、反応条件および結果を表2にも記載し
た。この結果から明らかなように、不飽和カルボン酸と
してメタクリル酸を用いた場合においても、実施例1と
同様に高い収率および選択率でメルカプト基含有カルボ
ン酸としての3−メルカプト−2−メチル−プロピオン
酸が得られた。
【0075】〔実施例19〕実施例13における溶媒と
しての水の量を 150gとし、触媒としての上記陰イオン
交換樹脂(アンバーライトIRA−94)を20.0g用
い、不飽和カルボン酸としてのAAに代えて、マレイン
酸を用い、硫化水素とマレイン酸とのモル比(H2 S/
マレイン酸)が 3.0となるように硫化水素を17.6g供給
し、マレイン酸を20.0g仕込んだ以外は実施例13と同
様の反応、分析を行った。その結果、マレイン酸の転化
率は98.7%、メルカプト基含有カルボン酸としてのチオ
リンゴ酸の収率は79.4%、選択率は80.4%であった。ま
た、反応条件および結果を表2にも記載した。この結果
から明らかなように、不飽和カルボン酸としてマレイン
酸を用いた場合においても、実施例13と同様に高い収
率および選択率でメルカプト基含有カルボン酸としての
チオリンゴ酸が得られた。
【0076】〔実施例20〕実施例13における溶媒と
しての水の量を 150gとし、触媒としての上記陰イオン
交換樹脂(アンバーライトIRA−94)を10.0g用
い、不飽和カルボン酸としてのAAに代えて、マレイン
酸を用い、硫化水素とマレイン酸とのモル比(H2 S/
マレイン酸)が 0.5となるように硫化水素を 5.9g供給
し、マレイン酸を40.0g仕込んだ以外は実施例13と同
様の反応、分析を行った。その結果、マレイン酸の転化
率は97.1%、スルフィド基含有カルボン酸としてのチオ
ジコハク酸の収率は92.2%、選択率は95.0%であった。
また、反応条件および結果を表2にも記載した。この結
果から明らかなように、不飽和カルボン酸としてマレイ
ン酸を用いた場合においても、実施例13と同様に高い
収率および選択率でスルフィド基含有カルボン酸として
のチオジコハク酸が得られた。
【0077】〔実施例21〕実施例13における溶媒と
しての水に代えて、DMF 100gを溶媒として用い、触
媒としての上記陰イオン交換樹脂(アンバーライトIR
A−94)を10.0g用い、不飽和カルボン酸としてのA
Aに代えて、マレイン酸モノアミドを用い、硫化水素と
マレイン酸モノアミドとのモル比(H2 S/マレイン酸
モノアミド)が 0.5となるように硫化水素を 8.9g供給
し、マレイン酸モノアミドを60.0g仕込んだ以外は実施
例13と同様の反応、分析を行った。その結果、マレイ
ン酸モノアミドの転化率は96.5%、スルフィド基含有カ
ルボン酸としてのチオジコハク酸モノアミド類の収率は
90.8%、選択率は94.1%であった。また、反応条件およ
び結果を表2にも記載した。この結果から明らかなよう
に、不飽和カルボン酸としてマレイン酸モノアミドを用
いた場合においても、実施例13と同様に高い収率およ
び選択率でスルフィド基含有カルボン酸としてのチオジ
コハク酸モノアミド類が得られた。
【0078】〔比較例1〕実施例1における本発明の溶
媒としてのDMFに代えて、炭化水素系溶媒の一種であ
るトルエンを 100g用いた以外は実施例1と同様の反
応、分析を行った。分析の結果、AAの転化率は99.1
%、MPAの収率は63.3%、選択率は63.9%であった。
また、反応条件および結果を表2にも記載した。この結
果から明らかなように、MPAは、実施例1よりも低い
収率および選択率でしか得られなかった。
【0079】〔比較例2〕反応容器として 100mlオート
クレーブを用い、このオートクレーブにAAを35.0g、
触媒としての上記陰イオン交換樹脂(アンバーライトI
RA−93)を 7.0g仕込み、窒素置換した後密閉し、
氷温下で撹拌しながら硫化水素を33.1g(即ち、仕込み
モル比:H2 S/AA=2.0 )供給した。硫化水素の供
給後、反応系を速やかに60℃まで昇温して反応を開始
し、この温度で6時間反応させた後、冷却した。このと
き、反応開始時の容器内の圧力は45 atmであり、反応終
了時の圧力は45 atmであった。
【0080】この反応溶液を実施例1と同様にして分析
した結果、AAの転化率は99.0%、MPAの収率は67.8
%、選択率は68.5%であった。また、反応条件および結
果を表2にも記載した。この結果から明らかなように、
本発明の溶媒を使用しない場合には、MPAは、実施例
1よりも低い収率および選択率でしか得られなかった。
【0081】
【表1】
【0082】
【表2】
【0083】
【発明の効果】本発明の硫黄化合物の製造方法によれ
ば、溶媒として水および/または反応系に不活性なアミ
ド化合物および/またはエーテル化合物および/または
ケトン化合物を用い、触媒として陰イオン交換樹脂を用
いて反応させるので、溶媒に硫化水素を吸収させること
によって、反応圧力を大気圧〜50 atm、好ましくは大気
圧〜27 atmの低圧とすることができ、また、反応後にお
いて、触媒と反応溶液との分離が容易となる。そして、
過剰の硫化水素が少ない条件下、即ち、工業的に有利と
なる硫化水素と不飽和カルボン酸とのモル比(H2 S/
不飽和カルボン酸)が小さい条件下においても、オレフ
ィン性2重結合を有する不飽和カルボン酸から高選択的
でかつ収率良く、硫黄化合物であるメルカプト基を有す
るカルボン酸および/またはスルフィド基を有するカル
ボン酸を製造することができる。その上、溶媒の使用に
より反応時に触媒表面で発生する反応熱を速やかに除去
することによって、触媒の熱的劣化が抑制されるので、
触媒の耐久性を向上させることができ、触媒を長期間に
わたって使用することができる。従って、上記の方法
は、硫黄化合物の製造方法として好適に使用されるとい
う効果を奏する。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 石川 ▲隆▼一 大阪府吹田市西御旅町5番8号 株式会社 日本触媒中央研究所内

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】一般式(1) 【化1】 (式中、R1 、R2 はそれぞれ独立して水素原子または
    炭素数1〜4の炭化水素残基を表し、Xは水素原子、−
    CONR3 4 基または−COOR5 基を表し、かつ、
    上記R3 、R4 はそれぞれ独立して水素原子または炭素
    数1〜4の炭化水素残基を表し、R5 は水素原子または
    炭素数1〜8の炭化水素残基を表す)で示される不飽和
    カルボン酸と硫化水素とを反応させて、一般式(2) 【化2】 (式中、R1 、R2 、Xは前記と同一)および/または
    一般式(3) 【化3】 (式中、R1 、R2 、Xは前記と同一)で示されるメル
    カプト基を有するカルボン酸、および/または、一般式
    (4) 【化4】 (式中、R1 、R2 、Xは前記と同一)および/または
    一般式(5) 【化5】 (式中、R1 、R2 、Xは前記と同一)および/または
    一般式(6) 【化6】 (式中、R1 、R2 、Xは前記と同一)で示されるスル
    フィド基を有するカルボン酸を製造する硫黄化合物の製
    造方法において、溶媒として水および/または上記反応
    系に不活性なアミド化合物および/またはエーテル化合
    物および/またはケトン化合物を用い、触媒として陰イ
    オン交換樹脂を用いることを特徴とする硫黄化合物の製
    造方法。
  2. 【請求項2】反応圧力が大気圧以上、27 atm以下である
    ことを特徴とする請求項1記載の硫黄化合物の製造方
    法。
  3. 【請求項3】上記不飽和カルボン酸と硫化水素とのモル
    比(不飽和カルボン酸:硫化水素)が、1:0.4 以上、
    1:6以下であることを特徴とする請求項1または2記
    載の硫黄化合物の製造方法。
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