JPH07219538A - ピッチシフト装置 - Google Patents

ピッチシフト装置

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JPH07219538A
JPH07219538A JP6013634A JP1363494A JPH07219538A JP H07219538 A JPH07219538 A JP H07219538A JP 6013634 A JP6013634 A JP 6013634A JP 1363494 A JP1363494 A JP 1363494A JP H07219538 A JPH07219538 A JP H07219538A
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JP
Japan
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pitch
tone signal
musical tone
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inputted
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Withdrawn
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JP6013634A
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English (en)
Inventor
Hidekata Togai
秀方 栂井
Yasuyuki Watanabe
靖之 渡辺
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Roland Corp
Original Assignee
Roland Corp
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【目的】本発明は、入力された楽音信号のピッチをシフ
トして出力するピッチシフト装置に関し、楽音信号が出
力されるまでの時間を遅らせることなく、かつ人間の感
覚に適合した速度でピッチが時間的に順次上昇あるいは
下降する楽音信号を得る。 【構成】帰還路にディレイ(遅延手段)11を備えた。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、入力された楽音信号の
ピッチ(音高)をシフトして出力するピッチシフト装置
に関する。
【0002】
【従来の技術】楽音信号を入力して、その入力された楽
音信号のピッチを変換して出力するピッチシフト装置が
従来より用いられている。例えば、このピッチシフト装
置を用い、入力された楽音信号のピッチを変換し、ピッ
チ変換前後の楽音信号をミキシングして楽音として放音
することにより、1人の演奏にも拘らず重奏しているか
のような効果を得ることができる。また、ピッチシフト
装置でピッチを少しだけ変更して、ピッチ変更前後の楽
音信号を加算するとコーラス効果のような効果を得るこ
とができる。このピッチシフト装置では、ディジタルの
楽音信号を順次、例えばRAMに書き込むとともに、そ
のRAMに書き込まれた楽音信号を、書込みのタイミン
グよりも遅れたタイミングで、かつ書き込みの周期より
も短い周期もしくは長い周期で順次読み出すことによ
り、楽音信号のピッチ変換が行われる(例えば特開昭6
1−118797号公報)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】入力された楽音信号の
ピッチと異なるピッチの楽音信号を得るだけでなく、そ
のピッチを時間的に順次上昇させ或は順次下降させるこ
とにより新たな効果を得ることが要望されている。この
場合に、上記ピッチシフト装置を用いて、上記ピッチシ
フト装置で生成されたピッチの異なる楽音信号を、再度
そのピッチシフト装置に入力させるという操作を繰返
し、これによりピッチが時間的に順次上昇しあるいは下
降した楽音信号を得ることが考えられる。
【0004】しかし、従来のピッチシフト装置は、信号
入力から信号出力までの遅延時間ができるだけ小さくな
るよう構成されており、したがってそのピッチシフト装
置から出力された楽音信号を帰還させて再度そのピッチ
シフト装置に入力すると、楽音信号のピッチが極めて急
激に上昇し、あるいは急激に下降してしまい、人間の聴
覚に適合した速度で楽音のピッチが時間的に順次上昇
し、あるいは順次下降するという効果を得ることはでき
ない。これを解決するために、RAMへの楽音信号の書
き込みのタイミングに対するそのRAMからの楽音信号
の読み出しのタイミングを大幅に遅らせることが考えら
れる。この場合時間的にゆっくりとピッチを上昇あるい
は下降させることはできるが、そのピッチシフト装置に
最初に楽音信号を入力してからそのピッチシフト装置か
ら最初に楽音信号が出力されるまでにかなりの時間遅れ
を伴うことになり、楽音発生のタイミングが遅れてしま
い実用的ではない。
【0005】本発明は、上記事情に鑑み、楽音信号を出
力するまでの時間を遅らせることなく、人間の感覚に適
合した速度で、ピッチが時間的に順次上昇しあるいは順
次下降する楽音信号を得ることのできるピッチシフト装
置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成する本発
明のピッチシフト装置は、 (1)楽音波形をあらわすディジタルの楽音信号のピッ
チを変換して出力するピッチ変換手段 (2)上記ピッチ変換手段から出力された楽音信号をそ
のピッチ変換手段の入力側へ帰還させる帰還路に配置さ
れた、上記ピッチ変換手段から出力された楽音信号を遅
延させる遅延手段 (3)外部から入力された楽音信号を上記ピッチ変換手
段に伝達する入力路に配置された、外部から入力された
楽音信号と帰還路を経由して帰還されてきた楽音信号と
を加算する加算器を備えたことを特徴とする。
【0007】ここで、上記本発明のピッチシフト装置
が、上記帰還路、もしくは上記加算器と上記ピッチ変換
手段との間に配置された、楽音信号の直流成分を除去す
る高域通過フィルタを備えることが好ましく、また、上
記帰還路、もしくは上記加算器と上記ピッチ変換手段と
の間に、上記ピッチ変換手段通過後の楽音信号への折り
返り雑音の混入を防止する低域通過フィルタを備えるこ
とも好ましい態様である。
【0008】また、上記ピッチシフト装置を構成する上
記遅延手段は、その遅延量が可変なものであることが好
ましい。
【0009】
【作用】本発明のピッチシフト装置は、帰還路に遅延手
段を備えたものであるため、楽音信号がそのピッチシフ
ト装置に入力されてからピッチが変換された楽音信号が
そのピッチシフト装置から出力される迄の時間が遅れる
ことなく、かつ、人間の感覚に適合した速度で、時間的
に順次、楽音のピッチを上昇させ、あるいは下降させる
ことができる。
【0010】また、本発明のピッチシフト装置におい
て、上記高域通過フィルタを備えると、入力された楽音
信号に含まれていた直流成分が多数回帰還するうちに増
大してしまうことが防止され、またこのピッチシフト装
置が楽音のピッチを下げるよう設定されている場合に、
直流近傍にまでピッチが下がり過ぎてしまうことが防止
される。
【0011】また、本発明のピッチシフト装置におい
て、上記低域通過フィルタを備えると、このピッチシフ
ト装置が楽音のピッチを上げるように設定されている場
合に、ピッチが、その楽音信号のサンプリング周波数f
s の1/2以上の成分を含むところまで上昇して折り返
しノイズが発生してしまうことが防止され、楽音のノイ
ズの混入が防止される。
【0012】また、上記遅延手段として遅延量可変なも
のを備え、時間経過に従って遅延量を変化させると、ピ
ッチを所定の割合で単純に上昇、下降させるだけでな
く、複雑な特性で上昇、下降を行うことができ、より多
彩な効果を得ることができる。
【0013】
【実施例】以下、本発明の実施例について説明する。図
1は、本発明のピッチシフト装置のブロック図である。
このピッチシフト装置は、図示のように、A/D変換器
1、ディジタルシグナルプロセッサ(Digital
Signal Processor;以下「DSP」と
称する)2、RAM3、D/A変換器4、制御手段5、
操作子手段6、外部操作子手段7、および加算器8a,
8bにより構成されている。
【0014】A/D変換器1は、入力されたアナログの
楽音信号を所定のサンプリング周波数fs でサンプリン
グしてディジタルの楽音信号に変換するものであり、こ
のディジタルの楽音信号はDSP2に入力される。DS
P2では入力されたディジタルの楽音信号に、設定に応
じた種々の信号処理を施す。その際RAM3が作業領域
として使用される。
【0015】DSP2からは、ステレオ用の2つの楽音
信号が出力される。これらの楽音信号は、D/A変換器
4に入力されてそれぞれアナログの楽音信号に変換さ
れ、加算器8a,8bによりそれぞれ入力信号と加算さ
れ、左右のスピーカ(図示せず)に送るための2つの出
力信号が出力される。操作子手段6は、DSP2で各種
信号処理を行うための複数のアルゴリズムの中から任意
の1つを選択する操作子や、その選択したアルゴリズム
のパラメータ、例えばピッチ変化量、遅延時間、フィー
ドバック係数、入力係数等のパラメータを設定する操作
子を有している。制御手段5には、ROM(図示せず)
が備えられており、各アルゴリズムを実現するプログラ
ムが格納されている。操作子手段6によりアルゴリズム
が選択されると、制御手段5では、そのアルゴリズムを
実現するプログラムがDSP2に転送される。操作子手
段6で設定されたパラメータも、制御手段5を経由して
DSP2に転送される。
【0016】さらに、外部操作子手段7は、例えばペダ
ル操作子等リアルタイム操作が可能な操作子であって、
この外部操作子手段7によってもパラメータの一部が設
定され、その設定されたパラメータは制御手段5を経由
してDSP2に入力される。DSP2では、その外部操
作子手段7の操作に応じてその処理がリアルタイムに変
更される。
【0017】図2は、ピッチシフト効果を与えるアルゴ
リズムの一例を示す図である。このアルゴリズムは、L
PF(ローパスフィルタ)8、ピッチシフタ(ピッチ変
換手段)9、HPF(ハイパスフィルタ)10、ディレ
イ(遅延手段)11、フィードバック係数(乗算手段)
12、及び入力係数(乗算手段)13からなる。ピッチ
シフタ9およびディレイ11では、後述するようにRA
M3(図1参照)の各一部を用いて実現されている。
【0018】DSP2(図1参照)に入力されてきた楽
音信号には、入力係数13が乗算され、加算器14を経
由して、LPF8に入力される。LPF8では、ピッチ
シフタ9によるピッチシフトにより、ピッチが上昇した
場合であっても、楽音信号の最高周波数成分がサンプリ
ング周波数fs の1/2に達しない程度に楽音信号の高
域成分が除去され、これにより折り返しノイズの発生が
防止される。LPF8で高域成分が除去された楽音信号
は、ピッチシフタ9に入力される。このピッチシフタ9
の動作については後述する。ピッチシフタ9からピッチ
がシフトされて出力された楽音信号は、図1に示すD/
A変換器4に入力されるとともに、帰還路に配置された
HPF10に入力される。このHPF10は、楽音信号
に含まれる直流成分がフィードバックにより増大してし
まうことを防止し、また、ピッチシフタ9でピッチが下
げられた場合に、そのピッチが直流分にまで下がってし
まうのを防止するためのものである。このHPF10を
経由した楽音信号はディレイ11に入力されて所定時間
遅延され、フィードバック係数12が乗算されて、入力
信号とともに再度LPF8,ピッチシフタ9に入力され
る。
【0019】ここで、図1に示す制御手段5からDSP
2に向けて効果停止の命令が出力された場合、DSP2
では、図2に示す入力係数13が0に変更される。これ
により入力信号は遮断されるものの、効果停止命令を受
けた後も、フィードバックループは生きており、それま
でに入力されていた信号による効果は持続する。これ
は、効果停止の命令を受けてDSP2の出力をいきなり
ゼロにすると、効果が途中で中断されたような印象を与
えるため、これを防止し、効果を自然に低減させるため
の措置である。
【0020】尚、フィードバック係数12(図2参照)
が非常に大きな値に設定されていると、効果停止命令を
受けて入力係数13を0に変換した後も長時間にわたり
効果音が出力されてしまうため、このような場合は、効
果停止命令を受けて入力係数13を0に変更するととも
に、フィードバック係数12もある小さな値に強制的に
変更し、効果音が長時間に亘って持続するのを防止する
ことが好ましい。
【0021】図3は、図1にブロックで示す操作子手段
6に備えられた、ピッチシフト量を設定するつまみを表
わした図である。このつまみ61は、図示の0°〜30
0°まで回転し、0°〜10°の範囲では、ピッチシフ
タ9に入力された楽音信号が2オクターブだけピッチが
下げられて出力され、10°〜20°では1オクターブ
下げられ、20°〜145°では、そのつまみ61の回
転角度に応じて1オクターブ以内でピッチが下げられ、
145°〜155°ではピッチは変更されず、155°
〜280°では、つまみ61の回転角度に応じて1オク
ターブ以内でピッチが上げられ、280〜290°では
1オクターブ上げられ、290°〜300°では2オク
ターブ上げられる。こうすることにより、頻繁に使用さ
れる±2オクターブ,±1オクターブ,シフト量0につ
いてはつまみ61が各所定範囲内にあることをもってそ
れらのピッチシフト量が得られるため、設定が容易とな
る。さらに、前述の20°〜145°及び155°〜2
80°の区間でのピッチの変化量の変化が、クロマチッ
ク(半音単位)で変化するようにしておけば、ピッチの
変化量の設定が一層容易となり操作性が向上する。また
図3では、使用頻度の少ない±1オクターブと±2オク
ターブの間は設定範囲から除いているため、他の設定範
囲を広くとることができ、その分操作性が向上してい
る。尚、つまみ61の回転範囲とシフト量との対応づけ
を複数用意し、モードにより切換えるようにしてもよ
い。
【0022】また、図1に示す外部操作子手段7につい
ても同様であり、例えば操作子手段6に備えられている
操作子の操作により、ピッチシフト量の最大値,最小値
を与え、外部操作子手段7を操作することにより、それ
らの最大値と最小値の間で連続的にあるいは段階的にピ
ッチシフト量を設定するように構成してもよい。図4
は、図2に示すピッチシフタ9の基本動作例を説明する
ための模式図である。
【0023】ディジタルの楽音信号を、RAM3(図1
参照)に順次格納しながら一方ではその格納された楽音
信号を順次読み出すことを考える。図4のリングバッフ
ァ17がRAMのメモリ領域、およびそのメモリ領域
に、楽音信号が循環的に書き込まれ、また読み出される
ことを表わしている。このリングバッファ17に楽音信
号を順次書き込みながら、このリングバッファ17か
ら、書き込み速度とは異なる速度で順次読み出すことに
より、ピッチ(音高)の異なる楽音信号を得ることがで
きる。
【0024】ここでは、説明の都合上、リングバッファ
17が、反時計まわり、即ち図示の矢印A方向に回転し
ているものと考え、書き込みアドレス(アドレスW)の
位置の方が固定されているものと考える。すなわちアド
レスWで書き込まれた楽音信号は、1サンプル書き込む
毎に1アドレスずつ矢印方向に移動していくものと考え
る。
【0025】このとき、読み出しアドレス(アドレス
R)の位置を固定して、そのリングバッファ17に書き
込まれた楽音信号を読み出せばその楽音のピッチは変化
せずに、 遅延時間T=(アドレスR−アドレスW)/fs ……(1) 但し、fs はディジタル楽音信号のサンプリング周波数
を表わす。だけ遅れた楽音信号が出力されることにな
る。この遅延時間Tをかなり大きく取り、上記のように
ピッチが変換されないように読み出すことにより、図2
に示すディレイ11が実現する。ディレイ11は遅延時
間Tが可変であることが好ましく、その場合、ピッチの
変化特性として種々の特性を得ることができ、ピッチシ
フトに関し、より多彩な効果を得ることができる。
【0026】次にアドレスRを1サンプル毎にアドレス
Wの方向(時計周り)に移動させながら読み出すことを
考える。このとき、アドレスRとサンプル点17aとが
一致する必要はなく、ずれていてもよい。このときはア
ドレスRは、小数点以下の数値を伴ったアドレスとな
る。この場合具体的には、そのアドレスRの周囲の、小
数点を伴わないアドレスの複数の楽音信号を読み出し、
それら複数の楽音信号から、補間演算により、その小数
点を伴ったアドレスRに対応する楽音信号が求められ
る。以下では、説明の煩わしさを避けるため、補間演算
を含めて、「読み出す」と表現することとする。アドレ
スRがアドレスWに近づくということは、読出しアドレ
ス側にとっては、リングバッファ17の回転速度が早く
なったことに等しく、その結果として、ピッチの高い楽
音信号が得られる。
【0027】逆に、アドレスRを、アドレスWから離れ
る方向(反時計周り)に移動させながら読み出すことを
考える。ただし、楽音信号を1サンプル書き込む毎のア
ドレスRの移動距離は1アドレス未満であるとする。こ
れは、書き込まれた楽音信号のピッチが下がった信号を
得るための条件である。アドレスRがアドレスWから離
れていくということは、読出しアドレス側にとってはリ
ングバッファ17の回転速度が遅くなったことに等し
く、結果として、ピッチの下がった楽音信号が得られる
ことになる。
【0028】さらに、アドレスRの、反時計周りの移動
速度を上げて、楽音信号を1サンプル書き込む毎に、ア
ドレスRが、例えばちょうど2アドレス移動する場合を
考える。リングバッファ17が1サンプルに1アドレス
反時計周りに移動する間にアドレスRが2倍のアドレス
だけ同じ方向に移動するということは、リングバッファ
17が同じ速さで逆にまわっていることに等しい。した
がってこのように読み出すと、逆再生音が出力される。
このように、アドレスRを1サンプル毎に1アドレスよ
りも大きく変化させると、逆再生が実現することにな
る。
【0029】ピッチシフタ9では、上記の3つの読み出
し方法により、ピッチを上げる効果とピッチを下げる効
果と、さらに逆再生の効果を得ることが出来る。尚、図
4を用いて説明した方法を実行する場合、アドレスRが
リングバッファ17の最大アドレス(アドレスWの1ア
ドレス分左のアドレス)から最小アドレス(アドレス
W)にスキップするところで波形の不連続点を生じるこ
とになるが、極簡潔な構成でピッチシフト効果を得るこ
とができる。
【0030】図5は、前記のような不連続点によって生
じるノイズを取り除くことが出来るピッチシフト方式
(前掲の、特開昭61−118797号公報参照)を説
明するための模式図、図6は、書き込みアドレスに対す
る相対的な読み出しアドレス(アドレスWから反時計回
り方向へのアドレスの差)の時間変化、および、読み出
された楽音信号に重畳される窓関数の時間的変化を示し
た図である。なお、本明細書では動作説明を統一するた
め、図5は図4と同様に、リングバッファ17は矢印A
方向に回転し、書込みアドレスWの位置は固定されてい
るものとして説明する。
【0031】図5に示すように、ここでは読み出しアド
レスとして、アドレスR−1,アドレスR−2の2つが
設定されている。それら2つの読出しアドレスR−1,
R−2の、書込み用のアドレスWとの相対的なアドレス
幅は、図6に示すように、鋸刃状に変化するとともに、
その変化の位相は互いに180°異なっている。リング
バッファ17の、このように変化するアドレスR−1,
アドレスR−2からそれぞれ楽音信号が読み出され、そ
の読み出された2つの楽音信号に、それぞれ、図6に示
す各窓関数(VCA−1,VCA−2)が重畳され、互
いに加算される。なお、図6の相対アドレスの変化はピ
ッチを上げる場合の変化を示している。
【0032】図7は、この楽音信号の読出し処理を模式
的に示した図である。各相対アドレスR−1,R−2か
らそれぞれ楽音信号が読み出される。この読み出された
楽音信号には、相対アドレスR−1,R−2をあらわす
鋸状波の切り立った部分で相対アドレスR−1,R−2
が大きくスキップするため、その部分に不連続点が発生
する。このままでは、この不連続点の存在が楽音のノイ
ズとして作用する。そこで、このようにして読み出され
た、不連続点を有する各楽音信号に、各窓関数VCA−
1,VCA−2が重畳される。これらの窓関数VCA−
1,VCA−2は、対応する楽音信号の不連続点の部分
のゲインが0となるような関数であり、読み出された楽
音信号にそれらの窓関数VCA−1,VCA−2が重畳
されることにより、不連続点が消去された楽音信号が生
成される。このようにして生成された楽音信号はエンベ
ロープが大きく変化するため互いに加算され、エンベロ
ープに多少の凹凸はあるものの、不連続点のないピッチ
の変化した楽音信号が生成される。
【0033】ここで、上述したように、ピッチシフタ9
で遅れが生じることは好ましくないが、書込みアドレス
Wと読み出しアドレスRとに差がある以上、基本的に
(1)式に示す遅れが生じる。移動させるアドレス幅
(図7に示す相対アドレスR−1,R−2の鋸状波の高
さ)を小さくすると遅れを小さくすることができるが、
その場合、窓関数VCA−1,VCA−2として周期の
短い窓関数を用いる必要があり、最終的に生成された楽
音信号のエンベロープの凹凸の周期が小さくなり、その
場合エンベロープの凹凸の聴感に与える影響が大きくな
る傾向がある。そこでピッチシフタ9は、好ましくは、
リングバッファ17の大きさが適宜変更され、移動させ
るアドレス幅の大きいモードや小さいモードがいくつか
用意され、状況に応じて最適な楽音波形を生成するよう
に構成される。
【0034】図8は、図1に示すDSP2で実現される
他のアルゴリズムを示した図である。このアルゴリズム
は、複数のピッチシフト効果を与えるアルゴリズムであ
る。A/D変換器1(図1参照)から出力されDSP2
に入力されてきた楽音信号は、入力係数13が乗算さ
れ、LPF8、ピッチシフタ9を経由し、2系統の楽音
信号として出力され、それぞれ出力係数10,11,1
2が乗算され、出力係数10,11が乗算された楽音信
号は加算器13で互いに加算された後出力され、出力係
数12が乗算された楽音信号はそのまま単独で出力され
る。
【0035】ここで、ピッチシフタ9は、図5に示すよ
うに読み出しアドレスを2つ設けたピッチシフタを2組
設けたような動作をするもので、1つのリングバッファ
と1つの書込みアドレスに対して、図5の2つの読み出
しアドレスに相当するものを2組(合計4つの読み出し
アドレス)を設けて構成したものである。これら読み出
しアドレスの組数によって複数のピッチシフトした信号
を取り出すことができる。
【0036】このような構成ではリングバッファは1つ
で複数のピッチシフト信号を得ることができるピッチシ
フタを構成することができ、リングバッファを節約した
ことになる。以下2つのピッチシフト効果を得る場合に
ついて説明する。ピッチシフタ9からピッチシフトされ
た信号SHIFT1、SHIFT2には、図8に示すよ
うに、それぞれ出力係数10〜12が乗算されて、D/
A変換器4(図1参照)へ出力される。
【0037】例えばステレオ出力で左右異なったピッチ
シフト効果を出力させたい場合には、出力係数11を0
にし、出力係数10及び出力係数12をある値に設定す
ることにより可能になる。またモノラル出力の場合に
は、出力係数12を0にし出力係数10及び出力係数1
1をある値にすることにより可能になる。さらに出力係
数10〜12を適当な値で選ぶことにより、ピッチシフ
トされた信号SHIFT1、SHIFT2とスルー(ピ
ッチシフトされていない信号;図1参照)とのバランス
を変えることも可能である。
【0038】尚、図8に破線で示されているように、楽
音信号SHIFT1、SHIFT2を遅延する遅延手段
を備えたフィードバック・ループを追加することによ
り、複数チャンネルによる本発明の効果を得ることが可
能となる。また、図8では楽音信号SHIFT1、SH
IFT2用にリングバッファを一つしか用意していない
が、それぞれ別にリングバッファを設けた独立したピッ
チシフタを複数設けることも可能である。
【0039】ピッチシフタをそれぞれ別に設けることに
より各楽音信号SHIFT1、SHIFT2の双方をフ
ィードバックするフィードバックループを設けてもフィ
ードバック信号が混ざり合うことが無くなり、より効果
的である。以上の構成により複数のピッチシフト効果を
得ることのできるピッチシフト・アルゴリズムが実現す
る。
【0040】以上、本明細書実施例のピッチシフタ9は
ピッチシフタ、音程変換装置、周波数変換装置等として
知られている、入力信号のピッチを変換して出力するも
のであればよく、本明細書書中で示されたピッチシフタ
に限定されるものではない。
【0041】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
信号が遅れて出力されることなく、かつ所望の上昇速度
ないし下降速度でピッチが変化するピッチシフト装置が
実現する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のピッチシフト装置のブロック図であ
る。
【図2】ピッチシフト効果を与えるアルゴリズムの一例
を示す図である。
【図3】図1にブロックで示す操作子手段に備えられ
た、ピッチシフト量を設定するつまみを表わした図であ
る。
【図4】図2に示すピッチシフタの基本動作例を説明す
るための模式図である。
【図5】さらに高度なピッチシフト方式を説明するため
の模式図である。
【図6】書き込みアドレスに対する相対的な読み出しア
ドレスの時間変化、および、読み出された楽音信号に重
畳される窓関数の時間的変化を示した図である。
【図7】楽音信号の読出し処理を模式的に示した図であ
る。
【図8】図1に示すDSPで実現される他のアルゴリズ
ムを示した図である。
【符号の説明】
2 ディジタルシグナルプロセッサ(DSP) 8 低域通過フィルタ(LPF) 9 ピッチシフタ 10 高域通過フィルタ(HPF) 11 ディレイ(遅延手段) 12 フィードバック係数(乗算手段) 13 入力係数(乗算手段) 14 加算器

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 楽音波形をあらわすディジタルの楽音信
    号のピッチを変換して出力するピッチ変換手段と、 前記ピッチ変換手段から出力された楽音信号を該ピッチ
    変換手段の入力側へ帰還させる帰還路に配置された、前
    記ピッチ変換手段から出力された楽音信号を遅延させる
    遅延手段と、 外部から入力された楽音信号を前記ピッチ変換手段に伝
    達する入力路に配置された、外部から入力された楽音信
    号と前記帰還路を経由して帰還されてきた楽音信号とを
    加算する加算器とを備えたことを特徴とするピッチシフ
    ト装置。
  2. 【請求項2】 前記帰還路、もしくは前記加算器と前記
    ピッチ変換手段との間に配置された、楽音信号の直流成
    分を除去する高域通過フィルタを備えたことを特徴とす
    る請求項1記載のピッチシフト装置。
  3. 【請求項3】 前記帰還路、もしくは前記加算器と前記
    ピッチ変換手段との間に配置された、前記ピッチ変換手
    段通過後の楽音信号への折り返り雑音の混入を防止する
    低域通過フィルタを備えたことを特徴とする請求項1記
    載のピッチシフト装置。
  4. 【請求項4】 前記遅延手段が、遅延量可変な遅延手段
    であることを特徴とする請求項1記載のピッチシフト装
    置。
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