JP3658665B2 - 波形発生装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、音源として使用する信号波形を発生する波形発生装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
音源に使用するPCM音を時間的になめらかに変化させるモーフィングの技術が従来より行われている。例えば、ある楽音をフェードアウトさせる間に別の楽音をフェードインさせるクロスフェードの場合には、フェードアウトする楽音の振幅成分をなめらかに減少させるとともに、フェードインする楽音の振幅成分をなめらかに増加させる。この場合において、PCM音をフーリエ変換した後、特定の周波数のスペクトル成分の中の振幅成分をクロスフェードさせるという提案もある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、振幅成分のみをクロスフェードした場合には、モーフィングの効果が少なく音楽的な面白みに欠けるという問題があった。これはフーリエ変換した場合も同様である。
この発明の課題は、モーフィングの効果を高めるような楽音波形を発生することである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、それぞれ音源として使用する複数種類のデジタル信号をフーリエ変換するフーリエ変換手段と、フーリエ変換された前記複数種類のデジタル信号のそれぞれの振幅スペクトルと位相スペクトルとを検出するスペクトル検出手段と、複数種類のデジタル信号の検出された振幅スペクトルを設定された態様で合成する振幅スペクトル合成手段と、複数種類のデジタル信号の検出された位相スペクトルを前記振幅スペクトル合成手段における態様とは異なる態様で合成する位相スペクトル合成手段と、合成された振幅スペクトル及び合成された位相スペクトルを統合して1つのデジタル信号を発生するスペクトル統合手段と、を備えた構成になっている。
本発明によれば、複数の種類のデジタル信号をフーリエ変換し、各デジタル信号ごとに振幅スペクトルと位相スペクトルを検出し、検出した振幅スペクトル同士を振幅成分用の態様によって合成するとともに、検出した位相スペクトル同士を位相成分用の態様によって合成し、合成した振幅スペクトル及び位相スペクトルを統合して1つのデジタル信号を発生する。
【0005】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の波形発生装置の第1〜第6実施形態について説明する。
図1は、第1実施形態の構成を示すブロック図の一部である。なお、図1における波形発生装置には、装置全体を制御する制御手段であるCPU、CPUのプログラムを記憶しているROM、CPUによって処理されるデータを一時的に記憶するRAM、キーボード等からなる操作部があるが、説明を簡便にするために省略している。他の実施形態の構成のブロック図においても、CPU、ROM、RAM及び操作部は図示されていない。
【0006】
図1において、波形記憶手段としての波形メモリ1は、サンプリングされた少なくとも2種類のPCM音で音高が同じで音色が異なる1周期の波形データを記憶しており、CPUからの波形読出指令及び指定されたアドレスに応じて、2種類の波形データA及び波形データBを出力する。フーリエ変換部2は、波形メモリ1から出力された波形データA及び波形データBをそれぞれフーリエ変換するとともに、これらのスペクトルの振幅成分(振幅スペクトル)と位相成分(位相スペクトル)を検出して出力する。すなわち、このフーリエ変換部2及びCPUは、フーリエ変換手段及びスペクトル検出手段を構成する。
【0007】
波形データAの振幅成分A及び波形データBの振幅成分Bは、振幅クロスフェード部3に入力され、波形データAの位相成分A及び波形データBの位相成分Bは、位相クロスフェード部4に入力される。すなわち、振幅クロスフェード部3及びCPUは、振幅スペクトル合成手段を構成し、位相クロスフェード部4及びCPUは、位相スペクトル合成手段を構成する。
【0008】
一般に、整数n、Nについて、1≦n≦Nとするとき、PCM音の波形データx(n)をフーリエ変換すると、
【数1】
の式で表される。ただし、kは、1≦k≦Nの整数である。また、θ=ωt=2πftである。この式の位相成分は、
【数2】
となるので、信号のリアル成分R(k)及びイマジナリ成分I(k)は、
【数3】
で表される。したがって、フーリエ変換された振幅成分|X(k)|及び位相成分P(k)は、
【数4】
の式で表される。
【0009】
すなわち、図1において、振幅クロスフェード部3に入力される振幅成分A及び振幅成分Bは、
【数5】
の式で表される。また、位相クロスフェード部4に入力される位相成分A及び位相成分Bは、
【数6】
の式で表される。したがって、振幅クロスフェード部3及び位相クロスフェード部4においては、CPUの指示に応じて振幅成分及び位相成分のクロスフェード処理を行う。
【0010】
図1において、クロスフェードされた振幅成分は振幅クロスフェード部3から出力されて、逆フーリエ変換部5に入力される。また、クロスフェードされた位相成分は位相クロスフェード部4から出力されて、逆フーリエ変換部5に入力される。逆フーリエ変換部5は、振幅成分と位相成分とを統合して逆フーリエ変換して、波形メモリ1に記憶させる。すなわち、逆フーリエ変換部5及びCPUは、スペクトル統合手段を構成する。
【0011】
このクロスフェード処理の一連の動作を、図2〜図4に示すCPUのフローチャートを参照して説明する。図2は、メインルーチンのフローであり、第1〜第6実施形態に共通するフローである。このメインルーチンにおいては、所定のイニシャライズ処理(ステップA1)の後、波形合成処理(ステップA2)、その他の処理(ステップA3)を繰り返すループを実行する。
【0012】
図3は、図2のステップA2における波形合成処理のフローである。この処理では、操作部からの指示やプログラムのデータに応じて、波形指定選択を行い(ステップB1)、クロスフェードカーブ選択処理を行う(ステップB2)。ROM内には、複数の種類のクロスフェードカーブが記憶されており、操作部からの指示やプログラムのデータに応じて、振幅成分用及び位相成分用のクロスフェードカーブを選択して振幅クロスフェード部3及び位相クロスフェード部4に入力する。
【0013】
図5に選択されたクロスフェードカーブの例を示す。波形始端から波形終端までの区間をクロスフェードするクロスフェードカーブである。振幅成分については、T1の区間は振幅成分Aのみを出力し、T2及びT3の区間は振幅成分Aが次第に減少するとともに、振幅成分Bが次第に増加する。そして、T4及びT5の区間は振幅成分Bのみを出力する。一方、位相成分については、T1及びT2の区間は位相成分Aのみを出力し、T3及びT4の区間は位相成分Aが次第に減少するとともに、位相成分Bが次第に増加する。そして、T5の区間は位相成分Bのみを出力する。すなわち、振幅成分と位相成分とでは、互いに異なる態様(タイミング)でクロスフェード処理がなされている。
【0014】
図6(1)〜(6)に、様々な種類の振幅成分クロスフェードカーブ及び位相成分クロスフェードカーブの例を示す。これらの図から明らかなように、振幅成分クロスフェードカーブと位相成分クロスフェードカーブとはそれぞれ異なる独立したカーブになっている。図6(1)、(2)、(4)、(5)は、振幅成分と位相成分とを同じ区間かつ同じタイミングでクロスフェード処理を行うが、クロスフェードの比率が異なっている。図6(3)は、振幅成分と位相成分とを同じ比率でクロスフェード処理を行うが、クロスフェードの区間が異なっている。図6(6)は、振幅成分と位相成分とではクロスフェードのタイミングが異なっている。
【0015】
図3において、ステップB2のクロスフェードカーブ選択処理の後は、波形クロスフェード処理を行い(ステップB3)、記憶保存処理を行う(ステップB4)。ステップB3の波形クロスフェード処理では、図4に示すように、波形メモリ1から出力された波形データをフーリエ変換する(ステップC1)。次に、フーリエ変換の結果から振幅成分と位相成分を検出する(ステップC2)。そして、振幅成分同士を振幅成分用のクロスフェードカーブに応じて合成する(ステップC3)。また、位相成分同士を位相成分用のクロスフェードカーブに応じて合成する(ステップC4)。
【0016】
次に、合成した振幅成分と位相成分とを統合して逆フーリエ変換する(ステップC5)。そして、逆フーリエ変換された波形データを波形メモリ1の所定のエリアに一時的に記憶する(ステップC6)。次に、波形メモリ1に記憶されている全波形の処理が全て終了したか否かを判別する(ステップC7)。全波形の処理が終了していない場合には、ステップC1に移行して、上記の各処理を実行する。ステップC7において全波形の処理が終了した場合には、波形クロスフェード処理を終了する。
【0017】
このように、上記第1実施形態によれば、フーリエ変換部2は、波形メモリ1から読み出された2種類のデジタル信号をフーリエ変換し、各デジタル信号ごとに振幅スペクトルと位相スペクトルとを検出する。振幅クロスフェード部3は、検出された振幅スペクトル同士を振幅成分用のクロスフェードカーブによって合成する。位相クロスフェード部4は、検出された位相スペクトル同士を位相成分用のクロスフェードカーブによって合成する。逆フーリエ変換部5は、合成された振幅スペクトル及び位相スペクトルを統合して、逆フーリエ変換を行って、1つのデジタル信号を発生する。したがって、振幅クロスフェード処理とは異なる態様(タイミング、区間、比率)で、位相クロスフェードを行うことにより、変化に富んだクロスフェード処理が可能になるので、モーフィングの効果を高めるような楽音波形を発生することができる。
【0018】
なお、上記第1実施形態においては、2つのデジタル信号をクロスフェードする構成になっているが、3つ以上の複数のデジタル信号をクロスフェードするようにしてもよい。この場合にも、振幅クロスフェード処理とは異なる態様(タイミング、区間、比率)で、位相クロスフェードを行うことにより、より一層、変化に富んだクロスフェード処理が可能になる。
【0019】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。図7は、第2実施形態における波形発生装置の構成を示すブロック図である。この図において、図1に示した第1実施形態における構成と同じ構成のものは、同一の符号で示すとともに、その説明は省略する。図7においては、図1の振幅クロスフェード部3及び位相クロスフェード部4に代わって、振幅ミックス部6及び位相ミックス部7が設けられている。
【0020】
図7において、フーリエ変換部2でフーリエ変換されて、さらに検出された振幅成分A及び振幅成分Bが振幅ミックス部6に入力される。また、演奏データであるタッチ信号(演奏操作の強弱を示す信号)が振幅ミックス部6に入力される。振幅ミックス部6では、このタッチ信号に応じた比率で2つの振幅成分が混合されて、逆フーリエ変換部5に入力される。また、フーリエ変換部2でフーリエ変換されて、さらに検出された位相成分A及び位相成分Bが位相ミックス部7に入力される。位相ミックス部7では、タッチ信号に応じた比率で2つの位相成分が混合されて、逆フーリエ変換部5に入力される。逆フーリエ変換部5は、振幅成分と位相成分とを統合して逆フーリエ変換して、1つのデジタル信号を発生して波形メモリ1に記憶させる。すなわち、振幅ミックス部6及び(図示しない)CPUは、振幅スペクトル合成手段を構成し、位相ミックス部7及びCPUは、位相スペクトル合成手段を構成する。
【0021】
このミックス処理の一連の動作を、図8及び図9に示すCPUのフローチャートを参照してさらに説明する。図8は、図2に示したメインフローのステップA2における波形合成処理のフローである。この処理では、操作部からの指示やプログラムのデータに応じて、波形指定選択を行い(ステップD1)、ミックステーブル選択処理を行う(ステップD2)。ROM内には、複数の種類のミックステーブルが記憶されており、操作部からの指示やプログラムのデータに応じて、振幅成分用及び位相成分用のミックステーブルを選択して振幅ミックス部6及び位相ミックス部7に入力する。したがって、タッチの強弱に応じて波形データA及び波形データBの混合の比率が決定する。
【0022】
図10にミックステーブルの例を示す。図10(1)は波形データA用のミックステーブルであり、図10(2)は波形データB用のミックステーブルである。図に示すように、タッチが最小値(vmin)以下では、波形データAと波形データBとの混合比は0.9対0.1である。また、タッチが最大値(vmax)以上では、波形データAと波形データBとの混合比は0.1対0.9である。
【0023】
例えば、タッチの強さが図のv1である場合には、混合される振幅成分Aと振幅成分Bとの比率は、0.4対0.6すなわち2対3であり、位相成分Aと位相成分Bとの比率は、0.8対0.2すなわち4対1になる。すなわち、振幅成分と位相成分とでは、互いに異なる態様(比率)で合成する。なお、クロスフェードカーブの場合と同様に、図10のミックステーブル以外でも、様々なミックステーブルが考えられる。また、混合の比率を決定するパラメータも、タッチの強弱に限らず、他の演奏データのパラメータによって決定してもよい。
【0024】
図8において、ステップD2のミックステーブル選択処理の後は、タッチ検出があったか否かを判別する(ステップD3)。タッチ検出がない場合には、ただちに、波形ミックス処理を終了する。タッチ検出があった場合には、波形ミックス処理を行い(ステップD4)、記憶保存処理を行う(ステップD5)。ステップD4の波形ミックス処理では、図9に示すように、波形メモリ1から出力された波形データをフーリエ変換する(ステップE1)。そして、フーリエ変換の結果から振幅成分と位相成分を検出する(ステップE2)。次に、選択されたミックステーブルから、タッチ検出値に応じて、振幅成分用及び位相成分用の乗算値を読み出す(ステップE3)。そして、振幅成分と位相成分の夫々に対して乗算値を掛ける(ステップE4)。
【0025】
次に、振幅成分と位相成分とを統合して逆フーリエ変換する(ステップE5)。そして、逆フーリエ変換された波形データを波形メモリ1の所定のエリアに一時的に記憶する(ステップE6)。次に、全波形の処理が全て終了したか否かを判別する(ステップE7)。全波形の処理が終了していない場合には、ステップE1に移行して、上記の各処理を実行する。ステップE7において全波形の処理が終了した場合には、波形ミックス処理を終了する。
【0026】
このように、上記第2実施形態によれば、フーリエ変換部2は、波形メモリ1から読み出された2種類のデジタル信号をフーリエ変換し、各デジタル信号ごとに振幅スペクトルと位相スペクトルを検出する。振幅ミックス部6は、検出された振幅スペクトル同士を振幅成分用のミックステーブルによって合成する。位相ミックス部7は、検出された位相スペクトル同士を位相成分用のミックステーブルによって合成する。逆フーリエ変換部5は、合成された振幅スペクトル及び位相スペクトルを統合して、逆フーリエ変換して、1つのデジタル信号を発生する。したがって、振幅ミックス処理とは異なる態様(比率)で位相ミックスを行うことにより、変化に富んだミックス処理が可能になるので、モーフィングの効果を高めるような楽音波形を発生することができる。
【0027】
なお、上記第2実施形態においては、2つのデジタル信号をミックスする構成になっているが、3つ以上の複数のデジタル信号をミックスするようにしてもよい。この場合、振幅ミックス処理とは異なる態様で、位相ミックスを行うことができる。例えば、互いに異なるタイミングでミックスしたり、互いに異なる区間でミックスすることもできる。したがって、より一層、変化に富んだミックス処理が可能になる。
【0028】
次に、本発明の第3実施形態について説明する。図11は、第3実施形態における波形発生装置の構成を示すブロック図である。この図において、図1に示した第1実施形態の構成と同じ構成のものは、同一の符号で示している。この実施形態の特徴は、区間設定部8及び出力切換部9が設けられていることである。
【0029】
例えば、第1実施形態のように、波形メモリ1に記憶されている2種類のサンプリング波形データが、音高が同じで音色が異なる1周期の波形データである場合には、区間を指定することなく、全波形についてクロスフェード処理を行う。ところが、波形メモリ1に記憶されている波形データが複数の周期にわたっている場合には、かならずしも全区間でなくてもよく、少なくとも1周期だけをフーリエ変換して、クロスフェード処理をすることができる。
【0030】
図12(1)に示すように、波形メモリ1に記憶されている波形データA及び波形データBのクロスフェード区間が、一部の区間であるとする。例えば、図12(2)に示すように、波形データAが正弦波で波形データBが三角波であり、ゼロクロスのタイミングが一致している場合には、1周期の区間以上であればその区間を指定してフーリエ変換し、振幅成分と位相成分を検出して、それぞれクロスフェードすることができる。すなわち、図12(3)に示すように、ハッチングで表す各波形データの1周期において、振幅成分用のクロスフェードカーブ及び位相成分用のクロスフェードカーブをそれぞれ独立して選択し、クロスフェード処理を行うことができる。
【0031】
あるいは、図13(1)に示すように、波形データAと波形データBとが、音高が異なるとともに、ゼロクロスのタイミングも一致していない場合には、波形データに応じて区間を指定する必要がある。したがって、図13(2)に示すように、指定した区間に応じて、波形データA及びBそれぞれにおける振幅成分用のクロスフェードカーブ、並びに波形データA及びBそれぞれにおける位相成分用のクロスフェードカーブを選択することになる。
【0032】
すなわち、図11における区間設定部8は、波形メモリ1から出力される波形データA及びBを、フーリエ変換部2に出力する経路と、フーリエ変換することなく出力切換部9に直接出力する経路と分けている。また、図には示していないが、CPUから各部に対して、区間を指定するためのタイミング制御信号が与えられている。
【0033】
次に、この第3実施形態におけるクロスフェード処理の動作について、図14及び図15のフローを参照して説明する。図14は、メインルーチンにおける波形合成処理のフローである。この処理では、操作部からの指示やプログラムのデータに応じて、波形指定選択を行い(ステップF1)、クロスフェードカーブ選択処理を行う(ステップF2)。次に、クロスフェード区間であるか否かを判別する(ステップF3)。クロスフェード区間である場合には、波形データA及び波形データBをフーリエ変換部2に出力して、波形クロスフェード処理を行い(ステップF4)、記憶保存処理を行う(ステップF5)。一方、クロスフェード区間でない場合には、ステップF4及びF5の処理を行うことなく、このフローを終了する。この場合には、波形データA及び波形データBを出力切換部9に出力する。出力切換部9においては、CPUからの出力切換信号に応じて、クロスフェード処理で合成された波形データ、又は波形データA若しくは波形データBを択一的に出力する。
【0034】
ステップF4の波形クロスフェード処理では、図15に示すように、選択されたクロスフェード区間の波形データのアドレスを指定してフーリエ変換する(ステップG1)。そして、フーリエ変換の結果から振幅成分と位相成分とを検出する(ステップG2)。次に、振幅成分同士を振幅成分用のクロスフェードカーブに応じて合成する(ステップG3)。また、位相成分同士を位相成分用のクロスフェードカーブに応じて合成する(ステップG4)。
【0035】
次に、合成した振幅成分と位相成分とを統合して逆フーリエ変換する(ステップG5)。そして、波形メモリ1に一時的に記憶する(ステップG6)。次に、指定された区間内のクロスフェード処理が全て終了したか否かを判別し(ステップG7)、終了していない場合には、ステップG1に移行して、上記の各処理を実行する。ステップG7において全区間のクロスフェード処理が終了した場合には、この波形クロスフェード処理を終了する。
【0036】
このように、上記第3実施形態によれば、2種類のデジタル信号を指定された区間においてフーリエ変換し、各デジタル信号ごとに振幅スペクトルと位相スペクトルを検出し、検出した振幅スペクトル同士を振幅成分用のクロスフェードカーブによって合成するとともに、検出した位相スペクトル同士を位相成分用のクロスフェードカーブによって合成し、合成した振幅スペクトル及び位相スペクトルを統合して1つのデジタル信号を発生する。この場合に、振幅成分と位相成分とは異なる態様で合成する。したがって、第1実施形態の場合と同様に、モーフィングの効果を高めるような楽音波形を発生することができる。
【0037】
さらに、上記第3実施形態によれば、波形メモリ1に記憶されている波形データが複数の周期にわたっている場合にでも、かならずしも全区間にかぎらず、少なくとも1周期を含む任意の区間についてフーリエ変換して、クロスフェード処理をすることができる。
【0038】
次に、本発明の第4実施形態について説明する。図16は、第4実施形態における波形発生装置の構成を示すブロック図である。この図において、図7に示した第2実施形態の構成と同じ構成のものは、同一の符号で示す。また、図11に示した第3実施形態の区間設定部8及び出力切換部9と同じ構成のものについても、同一の符号で表している。
【0039】
すなわち、図16の構成は、区間を指定した場合のミックス処理の実施形態である。波形メモリ1から出力された波形データA及び波形データBは、指定された区間内においては、区間設定部8を経てフーリエ変換部2に出力される。フーリエ変換部2では、波形データA及び波形データBをフーリエ変換した後、振幅成分及び位相成分を検出する。そして、振幅ミックス部6において振幅成分同士を合成する。また、位相ミックス部7において位相成分同士を合成する。この場合における混合の比率も、第2実施形態の場合と同様に、タッチの強弱に応じたミックステーブルによって決定される。
【0040】
さらに、逆フーリエ変換部5において、合成された振幅成分及び位相成分が統合されて逆フーリエ変換され、1つのデジタル信号として出力切換部9に出力される。一方、指定された区間でない場合には、波形メモリ1から出力された波形データA及び波形データBは、直接に出力切換部9に出力される。
【0041】
このように、上記第4実施形態によれば、2種類のデジタル信号を指定された区間においてフーリエ変換し、各デジタル信号ごとに振幅スペクトルと位相スペクトルを検出し、検出した振幅スペクトル同士を振幅成分用のミックステーブルによって合成するとともに、検出した位相スペクトル同士を位相成分用のミックステーブルによって合成し、合成した振幅スペクトル及び位相スペクトルを統合して1つのデジタル信号を発生する。この場合に、振幅成分と位相成分とは異なる態様で合成する。したがって、第2実施形態の場合と同様に、モーフィングの効果を高めるような楽音波形を発生することができる。
【0042】
さらに、上記第4実施形態によれば、波形メモリ1に記憶されている波形データが複数の周期にわたっている場合にでも、かならずしも全区間にかぎらず、少なくとも1周期を含む任意の区間についてフーリエ変換して、ミックス処理をすることができる。
【0043】
次に、本発明の第5実施形態について説明する。図17は、第5実施形態におおける波形発生装置の構成を示すブロック図である。この図において、図11に示した第3実施形態の構成と同じ構成のものは、同一の符号で表している。図17において、CPUからの波形読出指示に応じて波形メモリ1から出力される波形データA及び波形データBは、まずエンベロープ検出部10に入力される。エンベロープ検出部10は、波形データA及び波形データBのそれぞれからエンベロープデータを検出して、波形データA及びB並びにエンベロープデータA及びBを区間設定部8に入力する。すなわち、エンベロープ検出部10及び(図示しない)CPUは、エンベロープ検出手段を構成する。
【0044】
区間設定部8は、これら入力されたデータを、指定された区間前、区間内、区間後に応じて別の経路に出力する。すなわち、区間内の波形データA及びBについてはフーリエ変換部2に入力し、区間前の波形データA及び区間後の波形データBについては出力切換部11に入力する。また、区間内のエンベロープデータA及びBについてはエンベロープクロスフェード部12に入力し、区間前のエンベロープデータA及び区間後のエンベロープデータBについては出力切換部13に入力する。この場合、エンベロープクロスフェード部12及びCPUは、エンベロープ合成手段を構成する。
【0045】
フーリエ変換部2は、区間内の波形データA及びBをフーリエ変換するとともに、各波形データそれぞれの振幅成分及び位相成分を検出する。そして、振幅成分A及びBについては振幅クロスフェード部3に入力し、位相成分A及びBにつついては位相クロスフェード部4に入力する。振幅クロスフェード部3においてクロスフェード処理された振幅成分、及び位相クロスフェード部4においてクロスフェード処理された位相成分は、逆フーリエ変換部5に入力される。逆フーリエ変換部5は、振幅成分及び位相成分を統合して、逆フーリエ変換して、1つのデジタル信号を生成し、出力切換部11に入力する。
【0046】
出力切換部11は、区間前の波形データA、区間内の統合された波形データ、区間後の波形データBのいずれかを、図示しないCPUからのタイミング制御信号に応じて択一的にエンベロープ合成部14に入力する。
【0047】
一方、エンベロープクロスフェード部12に入力された区間内のエンベロープデータA及びBは、クロスフェード処理されて、出力切換部13に入力される。出力切換部13は、区間前のエンベロープデータA、区間内のクロスフェード処理で合成されたエンベロープデータ、区間後のエンベロープデータBのいずれかを、タイミング制御信号に応じて択一的にエンベロープ合成部14に入力する。
【0048】
エンベロープ合成部は、出力切換部11から入力された波形データと、出力不切換部13から入力されたエンベロープデータを合成して、波形メモリ1の所定エリアに記憶させる。
【0049】
次に、第5実施形態の波形合成処理について、図18〜図20を参照してさらに説明する。
図18において、まず、波形指定選択処理を行う(ステップH1)。例えば、図20(1)に示すような周波数(音高)及びエンベロープが異なる2種類の元波形データA及びBを選択する。次に、エンベロープ検出部10において、エンベロープ検出処理を行う(ステップH2)。図20(2)に元波形データA及びBから検出された振幅エンベロープデータA及びBを示す。次に、クロスフェードカーブを選択する(ステップH3)。図20(3)に選択されたクロスフェードカーブを示す。
【0050】
そして、エンベロープクロスフェード処理を行う(ステップH4)。この処理では、図19に示すように、選択されたクロスフェードカーブに応じた区間及び態様でエンベロープデータ同士をクロスフェードする(ステップJ1)。図20(4)はクロスフェードカーブに応じたエンベロープデータA及びBのそれぞれのクロスフェード処理の途中の波形であり、図20(5)はクロスフェード処理が完了して合成されたエンベロープデータの波形である。この合成されたエンベロープデータを一時的に記憶して(ステップJ2)、図18のフローに戻る。
【0051】
図18においては、ステップH4のエンベロープクロスフェードの後、波形のクロスフェード処理を行う(ステップH5)。このクロスフェード処理は、図15のフローと同じである。次に、波形データとエンベロープデータとをエンベロープ合成部14で合成して(ステップH6)、波形メモリ1に記憶させる記憶保存処理を行う(ステップH7)。
【0052】
このように上記第5実施形態によれば、2種類のデジタル信号からエンベロープデータを検出して、指定された区間内、区間前、区間後に応じた経路に出力する。区間内のデジタル信号はフーリエ変換して、各デジタル信号ごとに振幅スペクトルと位相スペクトルを検出し、検出した振幅スペクトル同士を振幅成分用のクロスフェードカーブによって合成するとともに、検出した位相スペクトル同士を位相成分用のクロスフェードカーブによって合成し、合成した振幅スペクトル及び位相スペクトルを統合する。また、検出したエンベロープデータについても、区間内のエンベロープデータはエンベロープ用のクロスフェードカーブによって合成する。そして、区間内及び区間前後のデジタル信号と区間内及び区間前後のエンベロープデータとを合成して、1つのデジタル信号を発生する。この場合に、振幅成分、位相成分、エンベロープ成分のそれぞれを異なる態様で合成する。したがって、第1及び第3実施形態と同様に、モーフィングの効果を高めるような楽音波形を発生することができる。
【0053】
次に、本発明の第6実施形態について説明する。図21は、第6実施形態における波形発生装置の構成を示すブロック図である。この図において、図16に示した第4実施形態の構成と同じ構成のものは、同一の符号で示す。また、図17に示した第5実施形態の出力切換部11及び13と同じ構成のものについても、同一の符号で表している。
【0054】
すなわち、図21の構成は、エンベロープデータを検出した場合における区間を指定したミックス処理の実施形態である。したがって、2つの波形データA及びBから検出したエンベロープデータを混合するためのエンベロープミックス部15が設けられている。すなわち、エンベロープミックス部15及びCPUは、エンベロープ合成手段を構成する。エンベロープミックス部15で混合されたエンベロープデータは、出力切換部13に入力される。
【0055】
次に、第6実施形態における波形合成処理について、図22及び図23のフローを参照して説明する。
図22において、波形指定処理を行い(ステップK1)、エンベロープ検出部10において、エンベロープデータ検出処理を行う(ステップK2)。次に、ミックステーブル選択処理を行う(ステップK3)。そして、タッチが検出されたか否かを判別する(ステップK4)。タッチが検出されない場合は、このフローを終了するが、タッチが検出された場合には、エンベロープミックス処理を行う(ステップK5)。
【0056】
このエンベロープミックス処理は、図23に示すように、選択されたミックステーブルからタッチ検出値に応じたエンベロープ用の乗算値を読み出す(ステップL1)。そして、検出されたエンベロープデータに対して、乗算値を掛ける。そして、その値を一時的に記憶して(ステップL2)、図22のフローに戻る。
【0057】
図22においては、ステップK5のエンベロープミックス処理の後、波形ミックス処理を行う(ステップK6)。この波形ミックス処理は、図24に示すように、選択された区間の波形データを指定して、波形メモリ1から出力された波形データをフーリエ変換する(ステップM1)。そして、フーリエ変換の結果から振幅成分と位相成分を検出する(ステップM2)。次に、選択されたミックステーブルから、タッチ検出値に応じて、振幅成分用及び位相成分用の乗算値を読み出す(ステップM3)。そして、振幅成分と位相成分の夫々に対して乗算値を掛ける(ステップM4)。
【0058】
次に、振幅成分と位相成分とを統合して逆フーリエ変換する(ステップM5)。そして、逆フーリエ変換された波形データを波形メモリ1の所定のエリアに一時的に記憶する(ステップM6)。次に、区間内の処理が全て終了したか否かを判別する(ステップM7)。区間内の処理が全て終了していない場合には、ステップM1に移行して、上記の各処理を実行する。ステップM7において区間内の処理が全て終了した場合には、この波形ミックス処理を終了して、図22のフローに戻る。
【0059】
図22においては、ステップK6の波形ミックス処理の後、波形データ及びエンベロープデータの合成処理を行う(ステップK7)。次に、記憶保存処理を行い(ステップK8)、この波形ミックス処理のフローを終了する。
【0060】
このように、上記第6実施形態によれば、複数の種類のデジタル信号からエンベロープデータを検出して、指定された区間内、区間前、区間後に応じた経路に出力する。区間内のデジタル信号はフーリエ変換して、各デジタル信号ごとに振幅スペクトルと位相スペクトルを検出し、検出した振幅スペクトル同士を振幅成分用のミックステーブルによって合成するとともに、検出した位相スペクトル同士を位相成分用のミックステーブルによって合成し、合成した振幅スペクトル及び位相スペクトルを統合する。また、検出したエンベロープデータについても、区間内のエンベロープデータはエンベロープ用のミックステーブルによって合成する。そして、区間内及び区間前後のデジタル信号と区間内及び区間前後のエンベロープデータとを合成して、1つのデジタル信号を発生する。この場合に、振幅成分、位相成分、エンベロープ成分のそれぞれを異なる態様で合成する。したがって、第2及び第4実施形態と同様に、モーフィングの効果を高めるような楽音波形を発生することができる。
【0061】
なお、上記各実施形態においては、クロスフェード処理とミックス処理とは独立した構成によって実行される別の処理としたが、クロスフェード処理及びミックス処理の両方の処理が可能な構成にしてもよい。この場合には、ユーザの設定によりクロスフェード処理又はミックス処理のいずれかの処理を選択することになる。
【0062】
【発明の効果】
本発明によれば、複数の種類のデジタル信号をフーリエ変換し、各デジタル信号ごとに振幅スペクトルと位相スペクトルを検出し、検出した振幅スペクトル同士を振幅成分用の態様によって合成するとともに、検出した位相スペクトル同士を位相成分用の態様によって合成し、合成した振幅スペクトル及び位相スペクトルを統合して1つのデジタル信号を発生する。この場合に、振幅成分と位相成分とを互いに異なる態様で合成する。したがって、モーフィングの効果を高めるような楽音波形を発生することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態における構成を示すブロック図。
【図2】第1〜第6実施形態に共通するCPUのメインルーチンのフローチャート。
【図3】第1実施形態における波形合成処理のフローチャート。
【図4】図3のステップB3における波形クロスフェード処理のフローチャート。
【図5】第1実施形態におけるクロスフェードカーブを示す図。
【図6】第1実施形態における様々なクロスフェードカーブを示す図。
【図7】本発明の第2実施形態における構成を示すブロック図。
【図8】第2実施形態における波形合成処理のフローチャート。
【図9】図8のステップD3における波形ミックス処理のフローチャート。
【図10】第2実施形態におけるミックステーブルの内容を示す図。
【図11】本発明の第3実施形態における構成を示すブロック図。
【図12】第3実施形態におけるクロスフェード区間を説明する図。
【図13】第3実施形態におけるクロスフェード区間を説明する図。
【図14】第3実施形態における波形合成処理のフローチャート。
【図15】図14のステップF4における波形クロスフェード処理のフローチャート。
【図16】本発明の第4実施形態における構成を示すブロック図。
【図17】本発明の第5実施形態における構成を示すブロック図。
【図18】第5実施形態における波形合成処理のフローチャート。
【図19】図18のステップH4におけるエンベロープクロスフェード処理のフローチャート。
【図20】第5実施形態におけるクロスフェード処理の例を示す図。
【図21】本発明の第6実施形態における構成を示すブロック図。
【図22】第6実施形態における波形合成処理のフローチャート。
【図23】図22のステップK5におけるエンベロープミックス処理のフローチャート。
【図24】図22のステップK6における波形ミックス処理のフローチャート。
【符号の説明】
1 波形メモリ
2 フーリエ変換部
3 振幅クロスフェード部
4 位相クロスフェード部
5 逆フーリエ変換部
Claims (10)
- それぞれ音源として使用する複数種類のデジタル信号をフーリエ変換するフーリエ変換手段と、
フーリエ変換された前記複数種類のデジタル信号のそれぞれの振幅スペクトルと位相スペクトルとを検出するスペクトル検出手段と、
前記複数種類のデジタル信号の検出された振幅スペクトルを、設定された態様で合成する振幅スペクトル合成手段と、
前記複数種類のデジタル信号の検出された位相スペクトルを、前記振幅スペクトル合成手段における態様とは異なる態様で合成する位相スペクトル合成手段と、
前記合成された振幅スペクトル及び合成された位相スペクトルを統合して1つのデジタル信号を発生するスペクトル統合手段と、
を備えたことを特徴とする波形発生装置。 - 前記振幅スペクトル合成手段及び前記位相スペクトル合成手段は、少なくとも1つの種類のデジタル信号のフェードアウトと少なくとも1つの他の種類のデジタル信号のフェードインとが重複するクロスフェード処理によって、前記振幅スペクトル及び前記位相スペクトルを合成することを特徴とする請求項1に記載の波形発生装置。
- 前記振幅スペクトル合成手段及び前記位相スペクトル合成手段は、前記複数の種類のデジタル信号が混合するミックス処理によって前記振幅スペクトル及び前記位相スペクトルを合成することを特徴とする請求項1に記載の波形発生装置。
- 前記振幅スペクトル合成手段及び前記位相スペクトル合成手段は、少なくとも1つの種類のデジタル信号のフェードアウトと少なくとも1つの他の種類のデジタル信号のフェードインとが重複するクロスフェード処理、又は、前記複数の種類のデジタル信号が混合するミックス処理のいずれかの処理を、設定に応じて実行し、前記振幅スペクトル及び前記位相スペクトルを合成することを特徴とする請求項1に記載の波形発生装置。
- 請求項1〜4のいずれかにおいて、前記複数のデジタル信号のそれぞれの振幅エンベロープを検出するエンベロープ検出手段と、検出されたそれぞれの振幅エンベロープを前記振幅スペクトル合成手段及び前記位相スペクトル合成手段における態様とは異なる態様で合成するエンベロープ合成手段と、を更に有することを特徴とする波形発生装置。
- 前記振幅スペクトル合成手段、前記位相スペクトル合成手段、又は前記エンベロープ合成手段における合成の態様とは、タイミングであることを特徴とする請求項1又は5に記載の波形発生装置。
- 前記振幅スペクトル合成手段、前記位相スペクトル合成手段、又は前記エンベロープ合成手段における合成の態様とは、区間であることを特徴とする請求項1又は5に記載の波形発生装置。
- 前記振幅スペクトル合成手段、前記位相スペクトル合成手段、又は前記エンベロープ合成手段における合成の態様とは、比率であることを特徴とする請求項1又は5に記載の波形発生装置。
- 前記振幅スペクトル合成手段、前記位相スペクトル合成手段、又は前記エンベロープ合成手段における合成の態様は、入力される演奏データに応じて変化することを特徴とする請求項6〜8のいずれかに記載の波形発生装置。
- 前記スペクトル統合手段は、発生した前記1つのデジタル信号を新たな音源として使用するために所定の波形記憶手段に記憶させることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の波形発生装置。
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