JPH07197182A - 希土類−鉄−ボロン系合金薄板、合金粉末及び永久磁石材料の製造方法 - Google Patents

希土類−鉄−ボロン系合金薄板、合金粉末及び永久磁石材料の製造方法

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JPH07197182A
JPH07197182A JP6158193A JP15819394A JPH07197182A JP H07197182 A JPH07197182 A JP H07197182A JP 6158193 A JP6158193 A JP 6158193A JP 15819394 A JP15819394 A JP 15819394A JP H07197182 A JPH07197182 A JP H07197182A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】本発明は、磁気特性の高い磁性材料、特に永久
磁石の原料となるR−Fe−B系又はCo置換R−Fe
−Co−B系合金薄板、合金粉末及び永久磁石材料の製
造方法を提供する。 【構成】R、Fe及びB又はR、Fe、Co及びBを主
成分とする溶湯を溶湯急冷法で板厚を0.05〜3mmとし、
主相を成すR2Fe14B型結晶の柱状晶の均質な組織を
有する薄板に急冷鋳造し、さらに粉砕し、さらに粉末冶
金法を用いる希土類−鉄−ボロン系又はCo置換希土類
−鉄−ボロン系合金薄板、合金粉末及び永久磁石材料の
製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、R(ただし、RはNd
またはPrの少なくとも1種を含むYおよび希土類元
素)、Fe、B、又はR、Fe、Co、Bを主成分とす
る磁性材料において、特に薄板(鋳片)の組織を改善
し、高い磁気特性が得られるR−Fe−B系及びCo置
換R−Fe−Co−B系の合金薄板、合金粉末及び永久
磁石材料の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】永久磁石材料は一般の家電製品から大型
コンピューターの周辺端末機まで幅広い分野で使われる
極めて重要な電気・電子材料の一つである。近年、電気
・電子機器の小型化、軽量化、高効率化に伴い永久磁石
はますます高性能化が要求されるようになった。
【0003】最近、R−Fe−B系合金(R−Fe−C
o−B系合金)が新しい高性能永久磁石として注目され
ている。その成分はFe100-a-bab、又は(Fe1-X
CoX100-a-bab(ただし、0<X≦20at%であ
り、RはNdまたはPrの少なくとも1種を含むYおよ
び希土類元素から成る成分、a、bは含有率でそれぞれ
a:10〜20at%、b:4〜10at%)[特公昭61−34242
号公報、IEEE Trans. Magn. MAG-20, 1584 (1984)]が
知られている。
【0004】さらに、希土類−鉄−ボロン系永久磁石合
金としては、上記R−Fe−B系、及びFeをCo置換
したR−Fe−Co−B系を基本系とする合金に、残留
磁化、保磁力若しくは最大エネルギ積の向上、残留磁化
若しくは保磁力の温度特性の向上、又は耐食性の向上等
を目的として種々の添加元素を加えたり、あるいは希土
類R、鉄、及びBを夫々、他の希土類元素、遷移金属、
半金属(C、Si等)で置換することが公知であり、ま
た工業上不可避に混入する不純物を上記基本系(磁気異
方性正方晶化合物)を主相とする範囲で許容することが
公知である。
【0005】例えば、特開昭59-46008号公報には、R−
Fe−B系永久磁石合金が記載されており、特にNd、
Prの一種以上を主体とする(少なくとも50%以上)こ
とが好ましく、加えてRとして軽希土類、重希土類及び
ミッシュメタル、ジジムが使用でき、Feの一部をC
o、Niで置換することによりキュリ−点の上昇がで
き、BをC、N、Si、Pで置換でき、R−Fe−Bの
基本系にAl、Ti、V、Cr、Zn、Zr、Nb、M
o、Ta、W、Sn、Bi、Sbの一種以上を添加する
ことにより高保磁力化が可能なことが記載されている。
【0006】特開昭60-32306号公報には、R−Fe−B
系において、RがR1(Nd、Prを主体、80%以上)
とR2(Dy、Tb、Gd、Ho、Er、Tm、Yb)
からなり、即ちRをDy等の重希土類で置換した保磁力
の改善された(R1、R2)−Fe−B系永久磁石合金が
記載されている。
【0007】特開昭59-64733号公報には、残留磁化の温
度特性が優れたR−Fe−Co−B系永久磁石合金が記
載されており、加えてRとして軽希土類、重希土類及び
ミッシュメタル、ジジムが使用でき、Feの一部をNi
で置換することにより耐食性の向上ができ、BをC、
N、Si、P等で置換でき、R−Fe−Co−Bの基本
系にAl、Ti、V、Cr、Mn、Cu、Ni、Zn、
Ge、Hf、Zr、Nb、Mo、Ta、W、Sn、B
i、Sbの一種以上を添加することにより高保磁力化が
可能なことが記載されている。
【0008】特開昭60-34005号公報には、R−Fe−C
o−B系において、RがR1(Nd、Pr)とR2(D
y、Tb、Gd、Ho、Er、Tm、Yb)からなり、
即ちRをDy等の重希土類で置換した保磁力の改善され
た(R1、R2)−Fe−Co−B系永久磁石合金が記載
されている。
【0009】特開昭59-89401号公報には、R−Fe−B
系にM元素を単独又は複合添加した保磁力増大の効果を
示すR−Fe−B−M系永久磁石合金が記載されてい
る。M元素としてはTi、Ni、Bi、V、Nb、T
a、Cr、Mo、W、Mn、Al、Sb、Ge、Sn、
Zr、Hfが記載されている。
【0010】特開昭59-132104号公報には、R−Fe−
Co−B系にM元素を単独又は複合添加した保磁力増大
の効果を示すR−Fe−Co−B−M系永久磁石合金が
記載されている。M元素としてはTi、Ni、Bi、
V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Al、Sb、
Ge、Sn、Zr、Hfが記載されている。R−Fe−
Co−B系にM元素(金属元素、半金属元素等)を添加
した永久磁石合金が記載されている。
【0011】希土類−鉄−ボロン系合金からなる永久磁
石材料の製造方法として、大別して粉末冶金法とメルト
スピン法(液体超急冷法)の二つが知られている。
【0012】粉末冶金法は溶湯を鋳型に鋳込んだインゴ
ットを出発素材とし、そのインゴットをスタンプミル、
ジョークラッシャーなどで粗粉砕し、さらにディスクミ
ル、ボールミル、アトライターミル、ジェットミルなど
を用いて平均粒径が3〜5μmの粉末に微粉砕した後、
磁場中プレスによって成形体を作成し、それを1000〜11
50℃の温度範囲で焼結する。その後、必要に応じ400〜9
00℃の温度範囲で時効処理することにより保磁力を増大
させる焼結永久磁石の製造方法である。
【0013】希土類−鉄−ボロン系永久磁石は、磁気特
性、特に、残留磁束密度を向上させるために、以下Rが
Ndの場合で述べるが、NdあるいはBの含有率を減少
させる必要がある。ただし、少なくとも化学量論的にN
2Fe14Bを形成し、かつ、過剰のFeが存在しない
だけのNdあるいはBが必要である。(なお、一般的に
は、このNdをRで代表させて同様な議論ができる。)
【0014】しかし、NdあるいはBを減少させていく
と、Nd≦15at%あるいはB≦8at%の範囲においてイ
ンゴットの冷却過程で初晶としてγFeの析出が起こ
り、それが冷却後αFeとしてインゴット中に偏析す
る。この残留αFeは本系合金を磁石にした場合に磁気
特性を低下させる相である。
【0015】そこでインゴットを1000〜1150℃の範囲で
均質化焼き鈍しすることによって、残留αFeを減少さ
せる方法が考えられる(特開昭61-143553号公報参
照)。
【0016】しかし、この焼き鈍しによって主相(Nd
2Fe14B)が粗大化し磁気特性を低下させる原因とな
る。現在、採用されている水冷銅鋳型(特公昭61−3424
2号公報)へ鋳込む程度の冷却速度では不十分であり残
留αFeは抑制されず結晶粒が粗大化し不均質なインゴ
ットとなる。そのため粉砕効率が低かった。Nd>15at
%あるいはB>8at%の範囲においては、残留αFeは
ほとんど存在しないが、水冷銅鋳型へ鋳込む方法では結
晶粒が粗大化し偏析が多く磁気特性を低下させる原因と
なる。
【0017】一方、溶湯を急冷し直接薄帯にする方法
(特開昭61−15943号公報、特開昭61−15944号公報)が
発明されているが、これらは薄帯の状態で永久磁石とし
て使用することが特徴であり、粉末冶金法を用いて製造
する素材にはなり得ない。
【0018】また、特開昭60−89546号公報には、溶湯
急冷法により5μm以下の微細な粒状結晶からなる複合
組織より構成され、主相が正方晶化合物であるリボン状
細片が記載されているが、このリボン状細片において結
晶粒が5μm以下、特に3μm以下になると、単磁区結晶
粒子にすることが技術上困難であり、粉末冶金法の場合
配向性が劣化し磁気異方性を活かした高磁気特性が得ら
れない。さらに、粉砕によって微細粒化しようとすると
酸化の危険が増大する。
【0019】
【発明が解決しようとする課題】上述の如く、従来の知
見によれば、粉末冶金法を用いて製造する焼結磁石用イ
ンゴットを水冷銅鋳型を用いて製造する場合、結晶粒の
粗大化、αFeの残留・偏析、さらに粉砕効率が低いと
言う問題があった。しかしながら、それ以外の方法で
は、高性能の特に磁気異方性焼結永久磁石を製造するた
めの粉末冶金法用いる上で有用なR−Fe−B系ないし
Co置換R−Fe−B系の合金片を得ることは困難であ
り、さらに改善が望まれていた。
【0020】本発明は、従来法の上記問題点を解決し、
磁気特性の高い磁性材料、特に永久磁石の原料となるR
−Fe−B系又はCo置換R−Fe−Co−B系合金か
らなる薄板、粉末、及び永久磁石材料の製造方法を提供
しようとするものである。
【0021】
【課題を解決するための手段】すなわち、上記問題点を
解決するために本発明の手段は以下の通りである。
【0022】第1の視点においては、R、Fe及びB
(ただし、RはNdまたはPrの少なくとも1種を含む
Yおよび希土類元素から成る成分)を主成分とする合金
の溶湯を、溶湯急冷法で板厚を0.05〜3mmとし、主相を
成すR2Fe14B型結晶の柱状晶の均質な組織を有する
薄板に急冷鋳造することを特徴とする希土類−鉄−ボロ
ン系合金薄板の製造方法である。
【0023】第2の視点においては、R、Fe及びB
(ただし、RはNdまたはPrの少なくとも1種を含む
Yおよび希土類元素から成る成分)を主成分とする合金
の溶湯を、溶湯急冷法で板厚を0.05〜3mmとし、主相を
成すR2Fe14B型結晶の柱状晶の均質な組織を有する
薄板に急冷鋳造し、引続き、該薄板を粉砕しR2Fe14
B系化合物を主相とする合金粉末を得ることを特徴とす
る希土類−鉄−ボロン系合金粉末の製造方法である。
【0024】第3の視点においては、R、Fe及びB
(ただし、RはNdまたはPrの少なくとも1種を含む
Yおよび希土類元素から成る成分)を主成分とする合金
の溶湯を、溶湯急冷法で板厚を0.05〜3mmとし、主相を
成すR2Fe14B型結晶の柱状晶の均質な組織を有する
薄板に急冷鋳造し、引続き、該薄板を粉砕しR2Fe14
B系化合物を主相とする合金粉末を得た後、粉末冶金法
でR2Fe14B系化合物を主相とする永久磁石材料を製
造することを特徴とする希土類−鉄−ボロン系永久磁石
材料の製造方法である。
【0025】第4の視点においては、R、Fe、Co及
びB(ただし、RはNdまたはPrの少なくとも1種を
含むYおよび希土類元素から成る成分)を主成分とする
合金の溶湯を、溶湯急冷法で板厚を0.05〜3mmとし、主
相を成すCo置換R2Fe14B型結晶の柱状晶の均質な
組織を有する薄板に急冷鋳造することを特徴とするCo
置換希土類−鉄−ボロン系合金薄板の製造方法である。
【0026】第5の視点においては、R、Fe、Co及
びB(ただし、RはNdまたはPrの少なくとも1種を
含むYおよび希土類元素から成る成分)を主成分とする
合金の溶湯を、溶湯急冷法で板厚を0.05〜3mmとし、主
相を成すCo置換R2Fe14B型結晶の柱状晶の均質な
組織を有する薄板に急冷鋳造し、引続き、該薄板を粉砕
しCo置換R2Fe14B系化合物を主相とする合金粉末
を得ることを特徴とするCo置換希土類−鉄−ボロン系
合金粉末の製造方法である。
【0027】第6の視点においては、R、Fe、Co及
びB(ただし、RはNdまたはPrの少なくとも1種を
含むYおよび希土類元素から成る成分)を主成分とする
合金の溶湯を、溶湯急冷法で板厚を0.05〜3mmとし、主
相を成すCo置換R2Fe14B型結晶の柱状晶の均質な
組織を有する薄板に急冷鋳造し、引続き、該薄板を粉砕
しCo置換R2Fe14B系化合物を主相とする合金粉末
を得た後、粉末冶金法でCo置換R2Fe14B系化合物
を主相とする永久磁石材料を製造することを特徴とする
Co置換希土類−鉄−ボロン系永久磁石材料の製造方法
である。
【0028】
【好適な手段】上記第1〜第6の視点において、好適な
手段は、薄板の板厚が0.5〜2.5mmとするものであり、あ
るいは急冷鋳造の冷却速度が102〜104℃/sのオーダと
するものである。
【0029】さらに、上記第1〜第3の視点において、
好適な手段は、Fe100-a-bab(ただし、RはNd
またはPrの少なくとも1種を含むYおよび希土類元素
から成る成分、a、bは含有率でそれぞれa:10〜20at
%、b:4〜10at%)なる合金の溶湯である。
【0030】また、上記第4〜第6の視点において、好
適な手段は、(Fe1-XCoX100- a-bab(ただ
し、0<X≦20at%であり、RはNdまたはPrの少な
くとも1種を含むYおよび希土類元素から成る成分、
a、bは含有率でそれぞれa:10〜20at%、b:4〜10
at%)なる合金の溶湯である。
【0031】
【作用】本発明の溶湯急冷法(薄板鋳造法)によるR−
Fe−B系又はCo置換R−Fe−Co−B系磁気異方
性正方晶化合物合金を主相とする微細な柱状結晶粒子か
ら成る均質な微細柱状組織の薄板、それから得られる粉
末、永久磁石材料の製造方法を用いることによって、α
Feの偏析が実質的に生じていず、主相を成すR2Fe
14B型結晶の柱状晶組織の均質化がなされている上記薄
板、粉末、永久磁石材料が提供できるので、結晶粒径の
微細化かつ均質化が可能であり、永久磁石の高性能化、
特に、保磁力を顕著に増加させることがを可能になり、
さらに、αFeの偏析を十分抑止できるので薄板(鋳
片)の均質化焼き鈍しが不要となり、薄板(鋳片)から
粉末への粉砕効率も向上し、特に微粉砕の際に酸化を抑
制できるから工業的価値が高い。
【0032】また、さらに組成、製造条件等を定めれ
ば、本発明の製造方法によって本系永久磁石の一層の高
性能化の可能性が大である。
【0033】上記構成のもと、本発明で用いる合金の好
ましい成分組成について述べるが、本発明の製造方法に
用いられる溶湯の成分組成を必ずしも限定するものでは
ない。
【0034】成分組成はFeをベースとし、Rは本発明
の高性能磁石を得るために不可欠の希土類元素であり、
通常一種をもって足りるが実用上は二種以上の混合物を
用いることができる。
【0035】本発明の好ましい態様として、主としてN
dまたはPrの少なくとも1種を用いるのは、その磁気
特性が特に優れているからである。しかし、Rが10at%
に満たないと充分な保磁力が得られず、一方、20at%を
超えて添加すると残留磁束密度が低下し磁気特性が低下
する。以上の理由からRを10〜20at%の範囲が好まし
い。Nd、Prの一種以上は全Rの50at%以上が好まし
く、より好ましくは80at%以上であり、Rは実質的にN
d、Prの1種以上のみであっても差し支えない。
【0036】Bは主相であるNd2Fe14B相(R2Fe
14B相)の生成を安定させるが4at%未満ではその生成
が不安定で、10at%を超えると残留磁束密度が低下する
ので4〜10at%の範囲が好ましい。
【0037】CoはR−Fe−B型合金、化合物のキュ
ーリー温度を上昇させ、耐温度特性を向上させるのでF
eに対して20at%まで置換させてもよいが、それ以上置
換すると他の磁気特性が低下するので好ましくない。
【0038】なお、本発明の製造方法に係る薄板、粉末
及び永久磁石材料をなす合金においては、本発明の特徴
とする組織を有する範囲で、公知の所定元素の置換、添
加を行なうことができるし、また工業上不可避の不純物
を含むことがある。
【0039】次に本発明のポイントである好ましくは上
記成分を有する合金系の溶湯を急冷する方法について説
明する。
【0040】溶湯急冷法(薄板鋳造法)としては、特開
昭60-89546号公報等で公知のロール法(単ロール法及び
双ロール法)、回転ディスク法等を用いることができ
る。
【0041】本発明において、急冷する方法としては、
双ロール法を用いることが望ましく、実用的である。
【0042】冷却速度については、下記に述べるように
本発明の所定の均質な結晶組織を得るために適宜制御さ
れ、ロール周速を調節することにより生成薄板の結晶組
織、さらには結晶粒径の状態から実験的に最適化される
ものであるが、102℃/s〜104℃/sのオーダが好まし
く、おおよそ103℃/s〜104℃/s程度のオーダがさら
に好ましい。
【0043】次に板厚の限定理由と短軸方向の結晶粒径
とについて述べる。なお、短軸方向の結晶粒径とは、主
相を成すR2Fe14B型結晶の急冷によって成長する柱
状晶の成長方向に垂直な方向の粒径である。
【0044】板厚が0.05mmより薄くなると急冷効果が過
大になり短軸方向の平均結晶粒径が3μmより小さくな
る確率が高くなり磁気特性が低下するので板厚を0.05mm
以上とした。逆に、板厚が3mmより厚くなると冷却速度
が遅くなり柱状晶の組織が不均質な組織となり、αFe
が残留し磁気特性が低下するので板厚を3mm以下とし
た。なお、その場合短軸方向の平均結晶粒径が20μmを
越える傾向がある。また、板厚が 0.5〜2.5mmで、短軸
方向の平均結晶粒径が20μm以下、さらに好ましくは10
〜15μmであることで一層保磁力が上昇し好ましい。
【0045】さらに、短軸方向の平均結晶粒径について
は、3μmより小さくなると、薄板(鋳片)を単結晶ま
で粉砕する場合(磁場中プレスによる磁場配向度を高め
るため薄板(鋳片)を結晶粒径以下の単結晶サイズまで
粉砕する必要がある)、酸化が非常に大きくなるため磁
気特性が低下する。逆に短軸方向の平均結晶粒径が20μ
mより大きくなると結晶の粒径分布が不均一となり、そ
れらを粉砕した後の粒子の粒径分布も不均一となる傾向
があり、磁気特性が低下のおそれがある。従って、短軸
方向の平均結晶粒径は3〜20μmの範囲が好ましいが、
所定の均質な組織が得られる限り例えば40μm程度でも
よい。
【0046】さらに、板厚を0.5〜2.5mmとして冷却速度
を制御し結晶粒径の微細化及び組織の均質化がされるこ
とにより、あるいは短軸方向の平均結晶粒径を10〜15μ
mの一層均質な組織にすると、微粉砕後の粉末粒子の粒
径分布が狭くなり磁気特性がさらに向上し好ましい。ま
た、柱状晶組織の均質化及び結晶粒径の微細化により、
例えばジェットミルを用いた場合で、水冷銅鋳型のイン
ゴットからに比べて粉末への粉砕効率が少なくとも2、
3倍程度向上する。
【0047】本発明により製造した板厚0.05〜3mmの薄
板(鋳片)を粉砕し、磁場中プレス、焼結、熱処理を行
なって製造した永久磁石の保磁力は、水冷銅鋳型に鋳造
したインゴットを用いて同一方法で製造した永久磁石の
保磁力に比べて顕著に増加する。これは本発明によって
結晶粒径が微細化され、特に残留αFeが抑制されて均
質な柱状晶組織が得られ鋳片組織が均質化されたためで
あると考えられる。なお、焼結時に補助成分を含むこと
ができ(例、焼結助材)、その他公知の物質を含むこと
ができる。
【0048】また、さらに組成、製造条件等を定めれ
ば、本発明は永久磁石にした場合一層の高性能化の可能
性が大であり、希土類−鉄−ボロン系永久磁石の磁気性
能の理論的最大値に迫る期待がある。
【0049】以下、実施例を示す。
【0050】
【実施例】
(実施例1)出発原料として、純度99.9wt%の電解鉄、
99.9wt%のNd、および、99.9wt%のBをNd12.3Fe
79.78になるように所定量配合して高周波誘導加熱に
より溶解し、直径300mmの銅製ロール2本を併設した双
ロール式薄板製造装置を用いて溶湯急冷法(薄板鋳造
法)により板厚1.1mmの薄板鋳造材を得た。ただし、す
べてAr雰囲気中で行った。
【0051】この鋳片を48メッシュ以下まで粗粉砕し
た。この段階で、粗粉砕粉に本系磁石の焼結性を高める
ために、予め水冷銅鋳型に鋳込んで作成したNd−Fe
−B三元共晶成分(Nd69.8Fe23.56.7)の48メッ
シュ以下の粗粉砕粉を焼結助材として4.8wt%添加し充
分混合した。
【0052】さらに、この混合粉をジェットミルによっ
て微粉砕し平均粒径3.5μmの合金粉末を得た。この合金
粉末を16kOeの磁場中で配向させ1.5ton/cm2の圧力で
加圧し幅10mm×高さ10mm×長さ20mmの成形体を得た。こ
の成形体を1080℃×1h、真空中で焼結し、続いて600℃
×1hAr中で時効処理し永久磁石を得た。なお、粉砕
時、水冷銅鋳型のインゴットからに比べて粉末への粉砕
効率が2、3倍以上高かった。
【0053】本発明の実施例による双ロール鋳造鋳片
(薄板)の組織写真を第1図に、および磁気特性値を第
1表(a)にそれぞれ示した。第1図において鋳片組織中
に残留αFeはほとんど認められず、主相を成すR2
14B型結晶の急冷によって、本実施例(第1図参照)
では基本的に板厚方向に成長している柱状晶の成長方向
に垂直な方向である短軸方向の平均結晶粒径が9μm程度
であり、短軸方向の結晶粒径の分布の幅は3〜20数μm
の狭い範囲にあり、即ち均質な組織となっている。保磁
力(iHc)11.0kOe、残留磁束密度(Br)12.8kG、最
大エネルギー積(BH)max37.0MGOeの磁気特性値が得ら
れた。なお、結晶粒径は、図中板厚方向に等間隔に(但
し両側を除く)4本、板長さ方向に伸長する基準線を引
き、各々の基準線と交差する結晶の交差点を基準とし
て、その結晶幅の最短距離を測定することによって得
た。
【0054】次に、比較のために同一成分の合金を水冷
銅鋳型へ鋳造し、以下同一方法で永久磁石を得た。イン
ゴットの組織写真を第2図に、および磁気特性値を第1
表(b)にそれぞれ示した。第2図において、水冷銅鋳型
に接していない領域で残留αFeが多く認められ、柱状
の結晶成長は認められるものの短軸方向の結晶粒径が50
μmを超えた不均質な組織となっている。保磁力7.3kO
e、残留磁束密度12.8kG、最大エネルギー積36.0MGOe
の磁気特性値が得られた。
【0055】
【表1】
【0056】双ロール鋳造材と比較材を比較すると双ロ
ール鋳造材を用いた方が保磁力が顕著に増加した。
【0057】(実施例2)Nd15.5Fe76.38.2の双
ロール鋳造材を実施例1と同一の方法で製造した。この
鋳造材を48メッシュ以下まで粗粉砕し、さらに、ジェッ
トミルによって微粉砕し平均粒径3.5μmの合金粉末を得
た。この合金粉末を16kOeの磁界中で配向させ、1.5ton
/cm2の圧力で加圧し、幅10mm×高さ10mm×長さ20mmの
成形体を得た。この成形体を1080℃×1h、真空中で焼
結し、続いて600℃×1hAr中で時効処理し永久磁石を得
た。この時の磁気特性値を第2表(a)に示した。保磁力1
3.5kOe、残留磁束密度12.2kG、最大エネルギー積34.0
MGOeの磁気特性値が得られる。
【0058】次に比較のために同一成分の合金を水冷銅
鋳型へ鋳造し、以下同一方法で永久磁石を得た。
【0059】この時の磁気特性値を第2表(b)に示し
た。保磁力9.5kOe、残留磁束密度12.2kG、最大エネル
ギー積33.0MGOeの磁気特性値が得られた。双ロール鋳
造材と比較材を比較すると両材料とも組成上の根拠から
Rが多いため残留αFeが認められなかったにもかかわ
らず、双ロール鋳造材の方が短軸方向の結晶粒径の分布
幅が狭くなって細かく均質化し、その結果として永久磁
石の保磁力が顕著に増加した。
【0060】
【表2】
【0061】(実施例3)板厚が2、3、4mmの双ロー
ル鋳造材を実施例1と同一の方法で製造し、さらに、こ
れらの鋳造材から実施例1と同一方法で永久磁石を得
た。板厚と短軸方向の平均結晶粒径および保磁力の関係
を第3表に示す。第3表から板厚を2mm(平均結晶粒径
13μm)および3mm(平均結晶粒径18μm)に制御した鋳
片(薄板)を用いて得られる永久磁石の保磁力は板厚4
mm(平均結晶粒径40μm)の鋳片を用いて得られる永久
磁石の保磁力よりも顕著に増加した。また、いずれの双
ロール鋳造材とも、実施例1及び2中の比較材(水冷銅
鋳型からのインゴット)に比べて粉砕効率が高かった。
【0062】
【表3】
【0063】(実施例4)出発原料として、純度99.9wt
%の電解鉄、99.9wt%のNd、99.9wt%のBおよび99.9
wt%のCoを、Nd12.4Fe75.6Co4.08になるよう
に所定量配合して高周波誘導加熱により溶解し、以下50
0℃×1hAr中で時効処理する以外実施例1と同様にし
て永久磁石を得た。
【0064】その際得られた合金鋳造薄板には残留αF
eは認められず、その主相を成すCo置換R2Fe14
型結晶の短軸方向の平均結晶粒径は3〜20μmの範囲
にある均質な組織が得られた。
【0065】そこで、第4表(a)に示す保磁力(iHc)10.
6kOe、残留磁束密度12.9kG、最大エネルギー積((BH)
max)37.6MGOeの磁気特性値が得られた。
【0066】次に、比較のために同一成分の合金を水冷
銅鋳型へ鋳造し、以下同一方法で永久磁石を得た。
【0067】
【表4】
【0068】双ロール鋳造材と比較材を比較すると双ロ
ール鋳造材を用いた方が保磁力が顕著に増加した。
【0069】(実施例5)Nd15.5Fe74.3Co4.0
6.2の双ロール鋳造材を実施例1と同一の方法で製造し
た。以下500℃×1hAr中で時効処理する以外は実施例2
と同一方法で永久磁石を得た。
【0070】この時の磁気特性値を第5表(a)に示し
た。保磁力13.1kOe、残留磁束密度12.3kG、最大エネ
ルギー積34.2MGOeの磁気特性値が得られる。
【0071】次に比較のために同一成分の合金を水冷銅
鋳型へ鋳造し、以下同一方法で永久磁石を得た。
【0072】この時の磁気特性値を第5表(b)に示し
た。保磁力8.8kOe、残留磁束密度12.3kOe、最大エネ
ルギー積32.9MGOeの磁気特性値が得られた。双ロール
鋳造材と比較材を比較すると両材料とも組成上の根拠か
らRが多いため残留αFeが認められなかったにもかか
わらず、双ロール鋳造材の方が柱状晶の短軸方向の結晶
粒径の分布幅が狭くなって細かく均質化し、その結果と
して永久磁石の保磁力が顕著に増加した。
【0073】
【表5】
【0074】
【発明の効果】以上述べたように、本発明の溶湯急冷法
によるR−Fe−B系又はCo置換R−Fe−Co−B
系磁気異方性正方晶化合物合金を主相とする微細な柱状
結晶粒子から成る均質な微細柱状組織の薄板、それから
得られる粉末、永久磁石材料の製造方法を用いることに
よって、αFeの偏析が実質的に生じていず、主相を成
すR2Fe14B型結晶の柱状組織の均質化がなされてい
る上記薄板、粉末、永久磁石材料が提供できるので、結
晶粒径の微細化かつ均質化が可能であり永久磁石の高性
能化、特に、保磁力を顕著に増加させることがを可能に
なり、さらに、αFeの偏析を十分抑止できるので薄板
(鋳片)の均質化焼き鈍しが不要となり、薄板(鋳片)
から粉末への粉砕効率も向上し、特に微粉砕の際に酸化
を抑制できるから工業的価値が高い。
【0075】また、さらに組成、製造条件等を定めれ
ば、本発明の製造方法によって本系永久磁石の一層の高
性能化の可能性が大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1による双ロール鋳造鋳片の金
属組織を示した金属顕微鏡による金属組織写真である。
【図2】比較材としてのインゴット材の金属組織を示し
た金属顕微鏡による金属組織写真である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C22C 1/02 501 E 33/02 J 38/00 303 D H01F 1/053 (72)発明者 溝口 利明 神奈川県川崎市中原区井田1618番地 新日 本製鐵株式会社第1技術研究所内

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】R、Fe及びB(ただし、RはNdまたは
    Prの少なくとも1種を含むYおよび希土類元素から成
    る成分)を主成分とする合金の溶湯を、 溶湯急冷法で板厚を0.05〜3mmとし、主相を成すR2
    14B型結晶の柱状晶の均質な組織を有する薄板に急冷
    鋳造することを特徴とする希土類−鉄−ボロン系合金薄
    板の製造方法。
  2. 【請求項2】前記板厚が0.5〜2.5mmであることを特徴と
    する特許請求の範囲第1項記載の希土類−鉄−ボロン系
    合金薄板の製造方法。
  3. 【請求項3】前記急冷鋳造の冷却速度を102〜104℃/s
    のオーダにすることを特徴とする特許請求の範囲第1項
    又は第2項記載の希土類−鉄−ボロン系合金薄板の製造
    方法。
  4. 【請求項4】Fe100-a-bab(ただし、RはNdま
    たはPrの少なくとも1種を含むYおよび希土類元素か
    ら成る成分、a、bは含有率でそれぞれa:10〜20at
    %、b:4〜10at%)なる合金の溶湯であることを特徴
    とする特許請求の範囲第1〜3項の一に記載の希土類−
    鉄−ボロン系合金薄板の製造方法。
  5. 【請求項5】R、Fe及びB(ただし、RはNdまたは
    Prの少なくとも1種を含むYおよび希土類元素から成
    る成分)を主成分とする合金の溶湯を、 溶湯急冷法で板厚を0.05〜3mmとし、主相を成すR2
    14B型結晶の柱状晶の均質な組織を有する薄板に急冷
    鋳造し、引続き、 該薄板を粉砕しR2Fe14B系化合物を主相とする合金
    粉末を得ることを特徴とする希土類−鉄−ボロン系合金
    粉末の製造方法。
  6. 【請求項6】R、Fe及びB(ただし、RはNdまたは
    Prの少なくとも1種を含むYおよび希土類元素から成
    る成分)を主成分とする合金の溶湯を、 溶湯急冷法で板厚を0.05〜3mmとし、主相を成すR2
    14B型結晶の柱状晶の均質な組織を有する薄板に急冷
    鋳造し、引続き、 該薄板を粉砕しR2Fe14B系化合物を主相とする合金
    粉末を得た後、 粉末冶金法でR2Fe14B系化合物を主相とする永久磁
    石材料を製造することを特徴とする希土類−鉄−ボロン
    系永久磁石材料の製造方法。
  7. 【請求項7】R、Fe、Co及びB(ただし、RはNd
    またはPrの少なくとも1種を含むYおよび希土類元素
    から成る成分)を主成分とする合金の溶湯を、 溶湯急冷法で板厚を0.05〜3mmとし、主相を成すCo置
    換R2Fe14B型結晶の柱状晶の均質な組織を有する薄
    板に急冷鋳造することを特徴とするCo置換希土類−鉄
    −ボロン系合金薄板の製造方法。
  8. 【請求項8】(Fe1-XCoX100-a-bab(ただ
    し、0<X≦20at%であり、RはNdまたはPrの少な
    くとも1種を含むYおよび希土類元素から成る成分、
    a、bは含有率でそれぞれa:10〜20at%、b:4〜10
    at%)なる合金の溶湯であることを特徴とする特許請求
    の範囲第7項記載のCo置換希土類−鉄−ボロン系合金
    薄板の製造方法。
  9. 【請求項9】R、Fe、Co及びB(ただし、RはNd
    またはPrの少なくとも1種を含むYおよび希土類元素
    から成る成分)を主成分とする合金の溶湯を、 溶湯急冷法で板厚を0.05〜3mmとし、主相を成すCo置
    換R2Fe14B型結晶の柱状晶の均質な組織を有する薄
    板に急冷鋳造し、引続き、 該薄板を粉砕しCo置換R2Fe14B系化合物を主相と
    する合金粉末を得ることを特徴とするCo置換希土類−
    鉄−ボロン系合金粉末の製造方法。
  10. 【請求項10】R、Fe、Co及びB(ただし、RはN
    dまたはPrの少なくとも1種を含むYおよび希土類元
    素から成る成分)を主成分とする合金の溶湯を、 溶湯急冷法で板厚を0.05〜3mmとし、主相を成すCo置
    換R2Fe14B型結晶の柱状晶の均質な組織を有する薄
    板に急冷鋳造し、引続き、 該薄板を粉砕しCo置換R2Fe14B系化合物を主相と
    する合金粉末を得た後、 粉末冶金法でCo置換R2
    14B系化合物を主相とする永久磁石材料を製造するこ
    とを特徴とするCo置換希土類−鉄−ボロン系永久磁石
    材料の製造方法。
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