JPH07194966A - 等方性ピッチの製造法 - Google Patents

等方性ピッチの製造法

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JPH07194966A
JPH07194966A JP18021794A JP18021794A JPH07194966A JP H07194966 A JPH07194966 A JP H07194966A JP 18021794 A JP18021794 A JP 18021794A JP 18021794 A JP18021794 A JP 18021794A JP H07194966 A JPH07194966 A JP H07194966A
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雄次 松村
Shigeji Mizutori
重司 水取
Teruyuki Kurimoto
照之 栗本
Keiji Sakai
啓二 堺
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Abstract

(57)【要約】 【目的】紡糸性、不融化性などに優れ、炭素繊維の製造
コストを低減しうる高軟化点の等方性ピッチの新たな製
造方法を提供することを主な目的とする。 【構成】一次QI分を除去した重質油またはピッチに酸
素またはオゾンを含有する気体を酸素またはオゾンとし
て重質油またはピッチ1kg当たり0.2〜5l/分の
割合で吹き込みつつ、300〜400℃で熱処理するこ
とにより軟化点200℃以上、等方性QI成分含有量5
〜60%のピッチを得ることを特徴とする等方性ピッチ
の製造法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、等方性ピッチの新しい
製造方法に関する。
【0002】本願明細書において使用する用語を以下の
様に定義する。
【0003】重質油…石油系および石炭系重質油を総称
し、石油蒸留残渣、ナフサ熱分解残渣、エチレンボトム
油、石炭液化油、コールタールなどが例示される。
【0004】ピッチ…上記重質油を蒸留することにより
沸点200℃未満の低沸点成分を除去したものをいう。
【0005】等方性…偏光顕微鏡において、光学的に等
方性を示すことを意味する。
【0006】異方性…偏光顕微鏡において、光学的に異
方性を示すことを意味する。
【0007】炭素繊維…紡糸後不融化処理した繊維を、
(イ)炭化処理したもの、(ロ)賦活処理したものおよ
び(ハ)炭化処理および賦活処理したものを包含する。
このうち、(ロ)および(ハ)は、賦活処理により多孔
質化したものである。
【0008】
【従来技術とその問題点】従来、等方性ピッチは、キノ
リン不溶解分(QI成分)が実質的に0であるピッチを
意味するものと解されている(例えば、大谷杉郎他、
「炭素繊維」、近代評論社(昭和58年)、第151頁
の第3行乃至第4行、同頁表2.15のNo.1〜3の
物性、第150頁第17行乃至第18行の記載などを参
照)。そして、等方性ピッチにおいて、QI成分を発生
させる場合には、ピッチの紡糸性が阻害されるので、そ
の生成を抑制する必要があると考えられてきた(特開昭
57−159885号公報第2頁右上欄第4行乃至第8
行参照)。
【0009】従って、炭素繊維材料としての光学的に等
方性のピッチは、不融且つ不溶であるため紡糸時の曳糸
性を阻害する異方性のQI成分を含まず、且つ紡糸後の
不融化処理を円滑に行うために、高軟化点を有すること
が必要であるというのが、当業者間での常識であった。
【0010】そこで、原料として重質油またはピッチか
らQI成分を濾過などの手段により除去した後、下記の
様な処理に供することが行われてきた。
【0011】1)特開昭55−5954号公報に開示さ
れた方法では、石油系ピッチを減圧下で不活性ガスと接
触させて、低沸点成分を除去し、高軟化点のピッチを得
ている。しかしながら、この方法で得られる熱処理ピッ
チの軟化点は、高温度での不融化処理における紡糸繊維
の融着を完全に防止する程度には改善され得ないという
問題点がある。
【0012】2)重質油またはピッチを異方性QI成分
および異方性成分が生成しない条件下に熱処理すること
により、高軟化点のピッチを得る方法が、提案されてい
る(日本複合材料学会誌第8巻第3号(1982))。
しかしながら、この方法においても、異方性QI成分お
よび異方性成分の生成を抑制するという条件を厳守する
限り、生成熱処理ピッチの軟化点は、通常175℃程度
であり、紡糸繊維の融着を防止するに必要な250℃程
度の高軟化点を有するピッチは得られない。
【0013】3)重質油またはピッチにニトロ化合物、
キノン、ポリカルボン酸無水物などの軟化点上昇剤を添
加する方法がある(特開昭55−98914号公報)。
しかしながら、この方法で得られる生成ピッチの軟化点
は、165℃程度であり、250℃程度の高軟化点を有
するピッチは、やはり得られない。
【0014】さらに、下記に示すように、QI成分を含
有しない原料を使用したり、原料の熱処理後にQI成分
を濾過処理する技術も提案されている。
【0015】4)特公昭53−12607号公報は、2
00〜600℃で留出する炭化水素留出物に元素状酸素
を含有するガスを吹き込んで250〜420℃で熱処理
し、軟化点200℃以下の等方性ピッチを得る方法を開
示している。しかしながら、この文献は、酸素を使用し
て重合反応を行わせる場合には、反応が非常に早いの
で、酸素が過剰であれば、カーボンが析出し易いのに対
し、酸素が不足であれば、異方性のQI成分が生成する
ことを明らかにしている。従って、原料として、QI成
分が生成し難い軽い留分を使用するとともに、カーボン
の生成を少なくするために、酸素量を限定している。そ
の結果、生成する熱処理ピッチ中のQI成分は、抑制さ
れてはいるが、それでも、熱処理ピッチの軟化点は、2
00℃以下にとどまっている。
【0016】5)特開昭56−26009号公報は、高
軟化点の等方性ピッチの製造方法を開示しているが、こ
の方法においても、ピッチ中のQI成分が殆ど0となる
ように調整しており、その軟化点も200〜250℃程
度である。
【0017】以上に示したように、従来の等方性ピッチ
の製造技術は、ピッチの紡糸性を阻害する成分として、
QI成分の生成を抑制しているので、250℃を上回る
高軟化点のピッチを得ることが出来なかった。
【0018】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明は、紡
糸性、不融化性などに優れ、炭素繊維の製造コストを低
減しうる高軟化点の等方性ピッチの新たな製造方法を提
供することを主な目的とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】本発明者は、上記の様な
技術の現状に鑑みて、等方性ピッチの軟化点をより高め
るべく種々研究を重ねた結果、一次QI成分を除去した
重質油またはピッチに酸素またはオゾンを含む気体を吹
き込みつつ、これを特定の温度で熱処理する場合には、
軟化点200℃以上の等方性ピッチが得られること、こ
のピッチは紡糸性に優れており、得られた紡糸繊維は高
温度で短時間内に不融化処理可能であることなどを見出
した。
【0020】即ち、本発明は、下記の等方性ピッチの製
造法を提供する;「一次QI分を除去した重質油または
ピッチに酸素またはオゾンを含有する気体を酸素または
オゾンとして重質油またはピッチ1kg当たり0.2〜
5l/分の割合で吹き込みつつ、300〜400℃で熱
処理することにより軟化点200℃以上、等方性QI成
分含有量5〜60%のピッチを得ることを特徴とする等
方性ピッチの製造法。」 本発明により得られる熱処理ピッチ中のQI成分が等方
性であること(従来等方性ピッチのQI成分は全て異方
性と考えられていた)、この様な等方性QI成分を5〜
60%含有するピッチの軟化点が200℃以上となるこ
と、この様なピッチは実質的に不融・不溶成分を含まな
いこと、紡糸性に優れていること、得られた紡糸繊維は
短時間で不融化処理を完了しうることなどは、前記の従
来の当業者常識からは、全く予想外のことであった。
【0021】すなわち、前記の如く、元来「等方性のQ
I成分」という概念が存在しなかった等方性ピッチにつ
いて、QI成分は不融且つ不溶であって紡糸性を阻害す
るという当業者常識からすれば、上記のようにして生成
した熱処理ピッチ中のQI成分も当然同様の阻害要因と
なるものと予測されたからである。しかるに、本発明者
の研究によれば、酸素またはオゾンの存在下に行われる
熱処理により生成する等方性QI成分は、酸素分子によ
り架橋した三次元構造を有する高分子であり、可融且つ
可溶であることが判明した。すなわち、これらの等方性
QI自体は、高分子であるにもかかわらず、QI以外の
成分(QS成分)と互いに溶解する性質(相溶性)を有
するため、両者は分離することなく、均一の流体である
かの如き挙動を示す。従って、本発明熱処理ピッチを加
熱紡糸する際には、等方性QI成分は紡糸に対する障害
とはならない。しかも、熱処理ピッチの軟化点も高いの
で、紡糸繊維の不融化も容易に行われる。
【0022】本発明においては、出発原料たる重質油ま
たはピッチから、濾過などの手段により一次QI成分な
どの固形分を除去した後、該重質油またはピッチを酸素
またはオゾンを含有する気体の吹き込み下に300〜4
00℃程度で熱処理する。酸素またはオゾン含有気体と
しては、空気、酸素富化空気、酸素などが例示される。
酸素などの使用量は、熱処理温度および時間などにより
異なるが、通常重質油またはピッチ1kg当たり酸素ま
たはオゾンとして0.2〜5l/分程度、より好ましく
は0.5〜3l/分程度であり、空気を使用する場合に
はこれらの値の約4倍量とする。
【0023】熱処理温度が300℃を下回る場合には、
重合反応速度が低下するので、好ましくないのに対し、
400℃を上回る場合には、発火、爆発などの危険性が
あり、また過度の重合を生じて、不融或いは不溶の成分
を生成する。
【0024】紡糸用原料として使用する熱処理ピッチの
等方性QI成分含有量は、5〜60%とし、軟化点は2
00℃以上とする。QI成分の含有量が5%未満である
場合には、ピッチの軟化点が低くなるので、紡糸温度を
低くする必要があり、また紡糸繊維の不融化処理に要す
る時間も増加するので、好ましくない。一方、QI成分
が60%を上回る場合には、ピッチ成分の一部の重合が
進み過ぎて熱に対して不溶性の固形分が形成されてお
り、紡糸ノズルの目詰まり、糸切れなどを生じやすく、
紡糸操作を不安定とする。熱処理ピッチの紡糸操作は、
公知の溶融押し出した後、ドラムに巻き取る紡糸法、メ
ルトブローン紡糸法、スパンボンド紡糸法、遠心紡糸法
などと同様にして行えばよい。例えば、溶融押し出し紡
糸法を行う場合には、上記の熱処理ピッチを紡糸器に供
給し、300〜400℃に加熱した状態で不活性ガスに
よる加圧下にノズルから押し出し、紡糸ピッチ繊維とす
ればよい。
【0025】紡糸ピッチ繊維の不融化処理は、常法に従
って行うことが出来る。すなわち、例えば、酸化性雰囲
気中で温度200〜400℃程度、保持時間1〜3時間
程度の条件が一般的であるが、これ以外の条件を採用す
ることも可能である。酸化性雰囲気としては、酸素、酸
素富化空気、空気などが例示され、また作業環境の悪化
および機器類の腐食などに対する対策が講じられている
場合には、さらに塩素ガス、NOガス、NO2ガスなど
を添加しても良い。なお、酸化性雰囲気の圧力を0.2
kg/cm2・G以上、より好ましくは1.0kg/c
2・G以上の加圧状態とすることにより、不融化処理
時間を大幅に短縮することが出来る。この場合、熱処理
ピッチの性状、紡糸ピッチ繊維の太さなどによっても異
なるが、最適条件下においては、例えば、1分間程度の
極めて短時間内に不融化処理を完了することも可能であ
る。
【0026】得られた不融化ピッチ繊維は、必要に応じ
て、(イ)炭化処理、(ロ)賦活処理または(ハ)炭化
処理および賦活処理に供される。
【0027】炭化処理を行う場合には、常法に従って、
不融化ピッチ繊維を例えば窒素ガスなどの不活性ガスの
存在下に20〜50℃/分程度の速度で900〜120
0℃程度まで昇温し、同温度に10〜30分間程度保持
すればよい。この場合には、狭義の炭素繊維が得られ
る。
【0028】賦活処理を行なう場合には、常法に従っ
て、不融化ピッチ繊維を例えば空気中400〜700℃
程度で、好ましくは500〜600℃程度で3〜10分
間程度保持するか、或いは水蒸気中600〜1000℃
程度で、好ましくは700〜900℃程度で5〜120
分間程度保持すれば良い。この場合には、500〜20
00m2/g程度の比表面積を有する多孔質のピッチ繊
維が得られる。
【0029】炭化および賦活を行う場合には、上記と同
様の条件下に常法に従って不融化ピッチ繊維を炭化処理
した後、賦活処理すれば良い。この場合には、500〜
2000m2/g程度の比表面積を有する多孔質の炭素
繊維が得られる。
【0030】本発明による熱処理ピッチは、上記の様な
特異な性状を備えているので、炭素繊維製造原料以外に
も、炭素複合材料の含浸用ピッチ、各種のバインダー用
ピッチなどとして有用である。
【0031】
【発明の効果】本発明によれば、光学的に等方性の重質
油またはピッチに酸素またはオゾンを含有する気体を吹
き込みつつ熱処理を行うことにより、可融性のQI成分
を含有するという特異な等方性ピッチが得られる。この
様なピッチを紡糸および不融化する場合には、紡糸時の
ノズルの目詰まり、糸切れなどが防止されるとともに、
紡糸ピッチ繊維の不融化処理を高温で融着を生ずること
なく且つ短時間で行うことが出来るので、経済的に極め
て有利である。
【0032】
【実施例】以下に実施例を示し、本発明の特徴とすると
ころをより一層明確にする。以下において、“%”とあ
るのは、全て“重量%”を意味する。
【0033】実施例1 (1)コールタールを150℃に加温し、濾紙を使用し
て加圧濾過を行い、コールタール中の一次QI成分を除
去した後、該精製タールを減圧蒸留(常圧換算500
℃)して、低沸点成分を除去した。得られたピッチの性
状は、軟化点(メトラー法)=125℃、QI成分=0
%、BI成分=27.5%、固定炭素=51.3%であ
った。
【0034】次いで、上記で得たピッチ500gを1l
オートクレーブに仕込み、5l/分の空気を吹き込みつ
つ、撹拌下350℃で2時間熱処理した。得られた熱処
理ピッチの性状は、軟化点(メトラー法)=296.3
℃、QI成分=38.4%、BI成分=79.6%であ
った。また、QI成分は、常温での偏光顕微鏡観察によ
り、等方性であることが確認された。
【0035】(2)上記で得た熱処理ピッチ150gと
テトラヒドロキノリン350gとを1lオートクレーブ
に仕込み、20kg/cm2・Gの窒素雰囲気中450
℃で10分間加熱し、該ピッチの水素化処理を行った
後、処理物を蒸留フラスコに移し、フラスコ内液温20
5℃、減圧度10mmHgでテロラヒドロキノリンを除
去して、軟化点(メトラー法)=131.0℃、QI成
分=0.2%、BI成分=30.8%の水素化ピッチを
得た。
【0036】この結果から、上記(1)で得られた熱処
理ピッチ中のQI成分は、フリーカーボンなどの固形分
ではなく、架橋結合による立体的な構造を有し、容易に
水素化される高分子物質であることが確認された。
【0037】(3)また、2μmの網目を有する5層か
らなる金属フィルターを使用して、上記(1)で得られ
た熱処理ピッチ5gを窒素雰囲気中370℃で加圧濾過
に供した後、キノリン500mlを金属フィルターに注
下してフィルターに付着したキノリン可溶分を溶解除去
した。次いで、該金属フィルターに付着したキノリンを
アセトンにより洗い流し、フィルターを乾燥した後、秤
量したところ、フィルター上の残存物は、当初熱処理ピ
ッチ重量(5g)のわずか0.6%であった。
【0038】上記の(1)、(2)および(3)に示す
結果から、得られた熱処理ピッチ中のQI成分は、等方
性であり、可融性の高分子物質であって、不融性の固形
分ではないことが確認された。
【0039】実施例2 上記実施例1の(1)と同様にして得られた熱処理ピッ
チを溶融温度360℃で径0.3mmのノズルから巻き
取り速度600m/分で連続紡糸して、ピッチ繊維を得
た。
【0040】該ピッチ繊維を空気中3℃/分の速度で3
00℃まで昇温させた後、同温度に2時間保持して不融
化処理した。得られた不融化ピッチ繊維の酸素含有率
は、8.2%であった。
【0041】上記で得られた不融化ピッチ繊維を窒素雰
囲気中50℃/分の速度で昇温し、1200℃で3分間
保持して炭素繊維を得た。
【0042】本実施例において不融化処理に要した時間
は212分であり、炭化処理に要した時間は21分であ
り、その合計は233分であった。
【0043】得られた炭素繊維15本につき測定した各
種性状の平均値は、以下の通りであった。
【0044】径:10μm、引張強度:134kg/m
2、弾性率:5.2ton/mm2、伸度:2.6%。
【0045】実施例3 コールタールを300℃に加温し、濾紙を使用して加圧
濾過を行い、コールタール中の一次QI成分を除去した
後、その500gを1lオートクレーブに仕込み、5l
/分の空気を吹き込みつつ、撹拌下300℃で1時間3
0分熱処理した。得られた熱処理ピッチの性状は、軟化
点(メトラー法)=273.2℃、QI成分=28.6
%、BI成分=66.8%であった。
【0046】かくして得られた熱処理ピッチを実施例2
と同様の手法により、紡糸、不融化および炭化の各工程
に順次供して、炭素繊維を得た。
【0047】本実施例において、不融化処理に要した時
間は、212分であり、炭化処理に要した時間は、21
分であり、その合計は、233分であった。
【0048】得られた炭素繊維15本につき測定した各
種性状の平均値は、以下の通りであった。
【0049】径:11μm、引張強度:127kg/m
2、弾性率:5.3ton/mm2、伸度:2.4%。
【0050】実施例4 実施例2と同様にして得たピッチ繊維を空気中3℃/分
の速度で300℃まで昇温させた後、同温度に4時間保
持して不融化処理した。得られた不融化ピッチ繊維の酸
素含有率は、12.3%であった。
【0051】次いで、得られた不融化ピッチ繊維を実施
例2と同様にして炭化処理して炭素繊維とした後、水蒸
気により800℃で1時間賦活処理して、多孔質の炭素
繊維を得た。この際、炭化処理に要した時間は、21分
であり、賦活処理に要した時間は、60分であり、その
合計は、81分であった。
【0052】得られた多孔質炭素繊維の比表面積は12
30m2/gであり、引張強度は52kg/mm2であっ
た。
【0053】実施例5 実施例4と同様にして得た不融化ピッチ繊維を水蒸気に
より800℃で1時間賦活処理して、多孔質のピッチ繊
維を得た。
【0054】得られた多孔質ピッチ繊維の比表面積は、
1480m2/gであり、引張強度は、28kg/mm2
であった。
【0055】実施例6 第1表に示す性状のエチレンボトム油を20kg/cm
2の窒素雰囲気中410℃で6時間熱処理した後、濾紙
を使用して濾過を行い、二次QI成分を主とする固形分
0.9%を除去した。次いで、濾過後の熱処理生成物を
蒸留して350℃以下の低沸点成分を除去し、第2表に
示す性状の熱処理ピッチを得た。
【0056】 第 1 表 QI(%) トレース BI(%) トレース 固定炭素(%) 12.1 比重(15℃/4℃) 1.070 第 2 表 軟化点(℃/メトラー法) 129.2 QI(%) 0.0 BI(%) 18.1 固定炭素(%) 53.0 次いで、第2表に示す性状の熱処理ピッチ500gを1
lオートクレーブに仕込み、5l/分の空気を吹き込み
つつ、撹拌下350℃で2時間熱処理して、第3表に示
す性状の熱処理ピッチを得た。
【0057】 第 3 表 軟化点(℃/メトラー法) 283.1 QI(%) 24.6 BI(%) 63.4 得られた熱処理ピッチを溶融温度350℃で径0.3m
mのノズルから巻き取り速度500m/分で連続紡糸し
て、ピッチ繊維を得た。
【0058】該ピッチ繊維を空気中3℃/分の速度で3
00℃まで昇温させた後、同温度に3時間保持して不融
化ピッチ繊維を得た。得られた不融化ピッチ繊維の酸素
含有率は、9.4%であった。
【0059】上記で得られた不融化ピッチ繊維を窒素雰
囲気中50℃/分の速度で昇温し、1200℃で3分間
保持して炭素繊維を得た。
【0060】得られた炭素繊維15本につき測定した各
種性状の平均値は、以下の通りであった。
【0061】径:13μm、引張強度:116kg/m
2、弾性率:5.0ton/mm2、伸度:2.3%。
【0062】比較例1 実施例1の(1)と同様にして一次QI成分を除去した
コールタールを蒸留して沸点550℃以下の低沸点成分
を除去し、第4表に示す性状のピッチを得た。
【0063】 第 4 表 軟化点(℃/メトラー法) 198.2 QI(%) 3.3 BI(%) 54.1 該ピッチを溶融温度240℃で径0.3mmのノズルか
ら巻き取り速度300m/分で連続紡糸して、ピッチ繊
維を得た。但し、不融固形分によるノズルの目詰まりが
激しいので、ノズル手前に金属フィルターを設置して紡
糸を行った。
【0064】得られたピッチ繊維を実施例2と同一条件
で、すなわち空気中3℃/分の速度で300℃まで昇温
させた後、同温度に2時間保持して不融化処理したとこ
ろ、繊維は溶融して、塊となった。
【0065】従って、上記のピッチ繊維を空気中3℃/
分の速度で200℃まで昇温させた後、同温度に3時間
保持し、さらに3℃/分の速度で300℃まで昇温させ
た後、同温度に4時間保持して、ようやく不融化処理を
終了することが出来た。
【0066】次いで、得られた不融化ピッチ繊維を窒素
雰囲気中50℃/分の速度で昇温し、1200℃で3分
間保持して炭素繊維を得たが、部分的に融着を生じてお
り、引張強度などの測定は不可能であった。
【0067】比較例2 比較例1と同様にして得たピッチ繊維を空気中3℃/分
の速度で200℃まで昇温させた後、同温度に3時間保
持し、さらに3℃/分の速度で300℃まで昇温させた
後、同温度に6時間保持して、不融化ピッチ繊維を得
た。
【0068】次いで、得られた不融化ピッチ繊維を窒素
雰囲気中50℃/分の速度で昇温し、1200℃で3分
間保持して炭素繊維を得た。
【0069】得られた炭素繊維15本につき測定した各
種性状の平均値は、以下の通りであった。
【0070】径:11μm、引張強度:73kg/mm
2、弾性率:3.8ton/mm2、伸度:1.9%。
【0071】本比較例においてピッチ繊維の不融化処理
に要した時間は、632分であり、ピッチ繊維から炭素
繊維が得られるまでの合計時間は、655分にも達し
た。これに対して、実施例2および3においては、同様
の合計時間は、約1/3に過ぎなかった。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 堺 啓二 大阪府大阪市東区平野町5丁目1番地 大 阪瓦斯株式会社内

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】一次QI分を除去した重質油またはピッチ
    に酸素またはオゾンを含有する気体を酸素またはオゾン
    として重質油またはピッチ1kg当たり0.2〜5l/
    分の割合で吹き込みつつ、300〜400℃で熱処理す
    ることにより軟化点200℃以上、等方性QI成分含有
    量5〜60%のピッチを得ることを特徴とする等方性ピ
    ッチの製造法。
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