JPH07189120A - 洗濯耐久性および風合良好な消臭性繊維 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 家庭環境や工場などから発生する悪臭を分解
除去し、しかも半永久的に使用出来て風合良好な消臭機
能を持つ繊維製品を提供することである。 【構成】酸化物状態でＳｉＯ₂ −ＺｎＯ−Ａｌ₂ Ｏ₃ で
あり、ミクロポアを有する多孔質脱臭触媒をバインダー
樹脂で繊維表面に被覆させた消臭性繊維。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、繊維製品に被覆処理す
る事により家庭環境や工場などから発生する悪臭を分解
除去し、しかも半永久的に使用出来て風合良好な消臭機
能を持つ繊維製品に関する。

【０００２】

【従来の技術】生活環境の都市化、多様化に伴い身の回
りの匂いに対する関心が強くなり、特に悪臭に対する批
判の目が厳しくなってきている。従来、繊維に消臭機能
を付与する方法として、ポリマーの改質、無機化合物や
有機化合物の混合紡糸、原糸段階で固着処理あるいは後
加工で消臭剤をバインダーで固着する方法等が行われて
いる。ポリマーを改質する方法は中和による消臭である
ため特定の悪臭に対してのみ有効でありオールマイティ
ーな消臭繊維が得られていない。ポリマー中に練り込み
混合紡糸する方法は耐久性の点で良好であるが、溶融紡
糸に耐えられる耐熱性を持つことが必須条件である事、
繊維太さから練り込まれる粒径が限定される事等のため
消臭剤が限定されしたがって消臭効果も限定される事、
繊維中に均一に消臭剤が分散するため繊維ポリマーの持
つガスバリヤー性により消臭性能が十分に発揮されない
という問題点がある。原糸段階や後加工で固着処理する
方法においては、表面に付着処理されているため風合を
損ねることや耐久性、特に洗濯耐久性が悪いという問題
点がある。また、いずれも消臭性能が悪臭に対してオー
ルマイティーでなく物理吸着や中和といった機能により
効果の持続性の点で限度があり、いわゆる消臭性能レベ
ルの低い物であった。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】本発明は各種悪臭に対
して優れた消臭効果を示し、しかも触媒効果により半永
久的消臭効果を持ち、洗濯による耐久性も合せ持ちさら
に実用上欠くことの出来ない風合を損なわないという画
期的な消臭加工方法を提供するものである。

【０００４】

【課題を解決するための手段】本発明者らは種々検討を
重ねた結果、空気中に含有する臭気成分を酸素の存在下
で室温下で酸化分解する触媒であって、鉄の酸化物、Ｓ
ｉＯ₂ 、Ａｌ₂ Ｏ₃ 、ＮｉＯ、Ｃｏ₃ Ｏ₄ 、ＭｎＯ₂ 、
ＣｕＯ、ＣｅＯ₂ 、ＰｔＯ、ＺｎＯおよびＰｄＯから選
ばれた一種以上の酸化物の混合酸化物および／又は化合
物の形態を有し、且つミクロポアを有する多孔体の脱臭
触媒を繊維に被覆させ、各種悪臭に対して優れた消臭効
果を有し、洗濯耐久性に優れ風合を損なわない加工方法
を見出し本発明の完成に至った。

【０００５】上記目的を達成するために、本発明では空
気中に含有する臭気成分を酸素の存在下で室温以下で酸
化分解するための触媒であって、鉄の酸化物、Ｓｉ
Ｏ₂ 、Ａｌ₂ Ｏ₃ 、ＮｉＯ、Ｃｏ₃ Ｏ₄ 、ＭｎＯ₂ 、Ｃ
ｕＯ、ＣｅＯ₂ 、ＰｔＯ、ＺｎＯおよびＰｄＯから選ば
れた一種以上の酸化物との混合酸化物および／又は化合
物の形態であれば良い。

【０００６】本発明に用いられる脱臭触媒（消臭剤）の
嵩比重は０．１〜１．５ｇ／ｃｍ^{2 で}あり、特に０．２
〜１．０ｇ／ｃｍ² が望ましい。この値が小さすぎる場
合にはバインダー加工剤へ添加した時増粘が著しく分散
性が悪くなりまた、高すぎる場合には表面積が小さくな
るため消臭効果が低下する。また消臭剤の粒径は、０．
１〜２００μｍが好ましく、特に１〜１５０μｍが好ま
しい。この値が低すぎる場合にはバインダー加工剤への
分散性が悪く、大きい場合には、繊維表面にザラツキを
与え風合を粗硬にする。本発明における繊維は天然繊
維、合成繊維、半合成繊維のいずれでも問題無く加工で
きる。

【０００７】加工方法としては、バインダーと消臭剤を
混合してコーティング、プリント、スプレー法およびパ
ディング法で繊維表面に処理する方法や前処理として繊
維表面をプラスに帯電することにより消臭剤に対する親
和性を与え通常の浸染と同じ方法で低温短時間染色する
事も可能で、加工対象、工程および加工剤の種類等に合
わせて使用すれば良い。

【０００８】バインダーとしては、アクリル系樹脂、メ
ラミン系樹脂、ウレタン系樹脂やエポキシ系樹脂等から
選択できるが、風合および耐久性の点でアクリル系およ
びウレタン系が特に好ましい。また浸染処理の市販品の
方法としては、明成化学社製アロマフィックスＰＴで前
処理した後、消臭剤を染色処理しパディングにてバイン
ダーで固着処理するような方法が利用出来る。

【０００９】繊維への処理は、前記加工方法において原
綿、紡績糸、および布帛のいずれのものに対しても加工
する事が可能である。原綿や紡績糸に対してはスプレー
法、パディング法や浸染法が利用でき、布帛に対しては
前記いずれの加工方法とも適用できる。繊維に対する消
臭剤の処理量は、０．３〜１０％が望ましく、好ましく
は０．５〜７％であり。消臭剤量が少ないと消臭性能が
十分に発揮できない。多い場合には風合が粗硬となり発
色性を低下させる場合がある。

【００１０】バインダーの付着量は、加工対象物や使用
樹脂の種類によって選択すれば良いがパディング、プリ
ントおよびスプレー法であれば乾燥後付着で１〜１０％
が望ましく、好ましくは１〜５％である。浸染法であれ
ば付着量０．５〜５％が望ましく、好ましくは１〜３％
である。加工に伴う熱処理条件は、バインダー性能を発
揮させるに必要な熱処理条件を取れば良く、消臭剤に限
定されない。

【００１１】

【発明の効果】本発明の消臭性繊維によれば、各種布帛
に対して優れた消臭能力を発揮し効果の持続性や、洗濯
耐久性があり風合が良好である。また、繊維表面に処理
するため繊維内部に練り込むよりも消臭効果が発揮され
易く少量の消臭剤で低コストに加工が可能である。この
ため風合も損ねない。したがって、人体、屋内、生活環
境、産業施設などで発生する悪臭には各種悪臭成分が混
在するが本発明の消臭性繊維はこれら悪臭を速やかに消
臭し、且つ半永久的に消臭効果を発揮するため広範囲に
利用出来る。さらに本発明の消臭性繊維は原綿、紡績糸
から織物、編み物、不織布への加工が可能であるため、
一般衣料、スポーツ衣料、住居、公共施設、病院等にお
ける衣料品、カーペット、カーテン、壁紙、寝具等多方
面に利用出来る。

【００１２】

【作用】本発明の消臭性繊維によれば、空気中の臭気成
分は活性化された触媒表面により吸着、酸化分解され無
臭化される。合わせて少量の消臭剤で消臭効果が発揮さ
れるため使用量が少なくて良く、バインダーの量も減少
できて風合および洗濯耐久性に優れた性能を発揮する。

【００１３】

【実施例】以下に本発明を実施例により具体的に説明す
るが、本発明はこれら実施例に何等限定されるものでは
ない。

【００１４】実施例１ ミニチュア染色機を用いて、ポリエステル短繊維８ｄ×
１２７ｍをアロマフィクスＰＴ（明成化学製）６％ｏｗ
ｆ、浴比１：２０、７０℃×１０分処理した後、流水洗
を十分行って再び染色機にて、触媒として酸化物状態で
ＳｉＯ₂ −ＺｎＯ−Ａｌ₂ Ｏ₃ である脱臭触媒（嵩比重
０．４〜０．８ｇ／７ｃｍ² 、粒径１０〜１５０μｍ）
を３％ｏｗｆ、浴比１：２０、７０℃×１５分処理し流
水洗にて過多に付着した消臭剤をソーピングした。この
ときの消臭剤付着量は２．７％であった。

【００１５】さらにミニチュア染色機にてメイバインダ
ーＰＤ（アクリル系樹脂；明成化学製）１％ｓｏｌ、浴
比１：２０ ４０℃×１０分処理後搾液し乾燥１００℃
×５分、熱処理１５０℃×５分間熱処理した。この繊維
をガーゼに包んで洗濯機（ＪＩＳ Ｌ１０４２ １０２
法）で洗濯を１０回実施した。次に内容量３ｌ瓶に前記
処理されたポリエステル短繊維を解繊した後１ｇ入れ、
初期ガス濃度４５００ｐｐｍになるようにアンモニアガ
スを入れて密栓し、３０分経過後検知管で残存アンモニ
ア濃度を測定した。同様な方法で硫化水素初期ガス濃度
１００ｐｐｍについても測定した。この結果を第１表に
示す。

【００１６】

【表１】

【００１７】この結果に示すようにアンモニアおよび硫
化水素の消臭性に優れ洗濯耐久性を持つ良好な結果が得
られた。

【００１８】実施例２ ポリエステル繊維１００％よりなるカーテン地（目付２
７０ｇ／ｍ² ）に、アクリル樹脂系糊剤（大日精化製；
セイカペーストＧ−６０）９２％、架橋剤（大日精化
製；エマフィクスＨＭ−１００）３％に、実施例１と同
様の消臭剤５％を添加した加工剤（粘度２５０００ｃ
ｐ）をシルクスクリーン８０メッシュを用いてプリント
した。乾燥１００℃×５分した後熱処理１５０℃×３分
を行いこの時の塗工量は乾燥後消臭剤に換算して３．５
％ｏｗｆであった。この布帛について実施例１と同様の
洗濯を行い、実施例１と同様に消臭性能をおよび風合
（ＪＩＳ Ｌ１０７９ カンチレバー法）を評価した。
この結果を第１表に示す。この結果に示すようにアンモ
ニアおよび硫化水素の消臭性に優れ洗濯耐久性を合せ持
ち、風合も損ねない良好な結果が得られた。

【００１９】実施例３ 実施例２と同様の布帛を用いて、ウレタン系樹脂（スー
パーフレックスＥ−２０００；第一工業製薬製）２０％
ｓｏｌ．、増粘剤（Ｍ−２００５；第一工業製薬製）３
％ｓｏｌ．に実施例１と同様の消臭剤５％ｓｏｌ．を添
加（粘度３６０００ｃｐ）した加工剤を、ナイフコータ
ーにて塗工し１００℃×５分乾燥処理した。このときの
消臭剤に換算した塗工量は３．５％ｏｗｆであった。

【００２０】この布帛について実施例１と同様の洗濯を
行い、実施例１と同様に消臭性能および風合を測定し
た。この結果に示すようにアンモニアおよび硫化水素の
消臭性に優れ、洗濯耐久性を持ち、風合も損ねない良好
な結果が得られた。

【００２１】比較例１ ポリエステルチップに前記消臭剤を５％添加して２８０
℃で溶融紡糸して通常の延伸工程を経て６ｄ×５１ｍｍ
の短繊維を得た。この繊維について実施例１と同様に消
臭性能を評価した。この結果を第１表に示す。

【００２２】比較例２ 実施例２と同様の布帛、加工剤、加工方法にて、活性炭
（粒径６０μｍ、添加量５％）を加工した。出来たもの
は黒色で染色によるカラー化は不可能であるが消臭性能
について評価した。この結果を第１表に示す。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.⁶ 識別記号 庁内整理番号 ＦＩ 技術表示箇所 Ｂ０１Ｊ 23/06 Ｍ 23/34 Ｍ 23/63 23/72 Ｍ 23/745 23/75 23/755 35/06 Ａ Ｍ Ｄ０６Ｍ 11/44 11/45 23/08 // Ｄ０６Ｍ 101:32 Ｂ０１Ｊ 23/56 Ｍ 23/74 ３０１ Ｍ ３１１ Ｍ ３２１ Ｍ (72)発明者 秋田 智 倉敷市玉島乙島7471番地 株式会社クラレ 内

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 空気中に含有する臭気成分を酸素の存在
   下で室温下で酸化分解する触媒であって、鉄の酸化物、
   ＳｉＯ₂ 、Ａｌ₂ Ｏ₃ 、ＮｉＯ、ＣＯ₃ Ｏ_{4 、}ＭｎＯ₂ 、
   ＣｕＯ、ＣｅＯ₂ 、ＰｔＯ、ＺｎＯおよびＰｄＯから選
   ばれた一種以上の酸化物の混合酸化物および／又は化合
   物の形態を有し、且つミクロポアを有する多孔体の脱臭
   触媒を繊維に被覆させた事を特徴とする消臭性繊維。
2. 【請求項２】 脱臭触媒の嵩比重が０．１〜１．５ｇ／
   ｃｍ² の範囲内にあることを特徴とする請求項１の消臭
   性繊維。
3. 【請求項３】 脱臭触媒の粒径が０．１〜２００μｍの
   範囲であることを特徴とする請求項１の消臭性繊維。