JPH0718527A

JPH0718527A - 紡機用リングおよびその製造方法

Info

Publication number: JPH0718527A
Application number: JP15661693A
Authority: JP
Inventors: Naoyuki Morimoto; 直之森本
Original assignee: Individual
Current assignee: Individual
Priority date: 1993-06-28
Filing date: 1993-06-28
Publication date: 1995-01-20

Abstract

(57)【要約】【目的】リングフランジ部の内径歪が少なく、形状精
度が良好で、トラベラとのなじみ性に優れ、かつ長寿命
な紡機用リングを提供する。【構成】Ｃが0.６％〜1.２％、Ｃｒが1.３％〜1.６
％、Ｐb が0.１％〜0.５％を含有する合金鋼より形成し
てなることを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、紡績の精紡に使用さ
れ、特になじみ性において優れた性能を発揮し、かつ耐
摩耗性が良好で、歪の少ない紡機用リングおよびその製
造方法に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】従来の紡機用リングは、一般に低炭素鋼
が用いられ、表面硬化処理として浸炭焼入処理が行なわ
れている。然るに上記従来のリングでは、スピンドル回
転数が１4,５００r.p.m.以上となると、リングとトラベ
ラ間の摩耗抵抗の増大と、摩擦熱の急激な上昇のため、
トラベラが早期に焼き付いたり、リングのなじみ運転に
長時間かかるという問題点があった。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記従来技
術の問題点を解決せんとしてなされたものであり、その
目的とするところは、リングのなじみ性を向上すると共
に、リングフランジ上を走行するトラベラの摩耗も減少
させ、かつ長寿命で、長期間にわたって安定操業できる
紡機用リングおよびその製造方法を提供することにあ
る。

【０００４】

【課題を解決するための手段】本発明は、上記問題点を
除去するためになされたものであり、Ｃを0.６％〜1.２
％、Ｃｒを1.３％〜1.６％、Ｐb を0.１％〜0.５％含有
する合金鋼を所定のリング形状に旋削成形し、次いで熱
処理を施して紡機用リングを形成するものである。

【０００５】

【作用】本発明の紡機用リングは、リングフランジ部が
Ｃ：0.６％〜1.２％、Ｃｒ：1.３％〜1.６％、Ｐb ：0.
１％〜0.５％を含有する合金鋼で形成されているため、
Ｐb が鋼中に微粒となって均一に介在すると共に、Ｐb
粒子がリング面に露出し、トラベラが上記リングフラン
ジ上を走行することにより、リング表面に、露出したＰ
b 粒子がリング表面上に引き延ばされ、Ｐb の潤滑性皮
膜を形成する。そのため、リングフランジの表面は潤滑
性に優れ、トラベラに対する初期なじみ性が良好とな
り、トラベラとリング間のなじみ運転期間が短縮され、
運転初期より高速操業に移行できるものである。

【０００６】なお、Ｃは焼入れ硬度を高め、リングの耐
摩耗性を向上するが、Ｃの含有量が0.６％未満では、十
分な焼入れ硬度が得られず、1.２％を超えると、巨大炭
化物の周辺にフェライトが出現するなどの異状組織が生
じ易くなる。また、Ｃｒは炭化物形成元素であり、微細
な炭化物を均一に形成し、耐摩耗性を高めると共に、焼
入れ性、耐熱性を向上するが、Ｃｒの含有量が1.３％未
満では、十分な耐摩耗性が得られず、1.６％を超えると
炭化物が粗大化したり、加工性が低下する等の問題が生
じる。さらに、Ｐb の含有率が0.１％未満では潤滑性能
が劣り、なじみ性の改善が不十分となり、0.５％を超え
ると耐疲労性が劣化するため好ましくない。なお、なじ
み性からＰb の含有率は0.１％〜0.３５％が最適であ
る。また、分散したＰb は切削性を改善し、バイトの持
ちを良くすると共にフランジの形状精度を向上し、リン
グのバラツキが少なくなると共に、紡出張力の安定した
紡出が可能となる。

【０００７】

【実施例】以下、本発明の一実施例を図面に基づいて説
明する。図１に示すように、重量％でＣを1.０％、Ｃｒ
を1.５％、Ｐb を0.２％含有する合金鋼を素材として所
定のリング形状に切削加工した後、８００℃〜８５０℃
で加熱し油焼入れし、次いで１５０℃〜２００℃で３０
分〜６０分焼戻し処理を施して紡機用リング１を形成す
る。

【０００８】上記のように形成された紡機用リング１の
リングフランジ部２における断面金属組織は、図２に示
すように、マルテンサイト基地３中に球状の硬い炭化物
４が均一で微細に分布し、この炭化物４がトラベラ走行
時にリングフランジ部２がトラベラ接触表面で有効に働
いて減摩特性を発揮する。また、微粒となったＰb ５が
均一に分散すると共に、リングフランジ部２の表面に露
出しており、このＰb ５がトラベラの走行により、リン
グフランジ表面に引き延ばされ、Ｐb の潤滑性皮膜がリ
ング表面に形成され、なじみ性の向上に寄与する。

【０００９】次に、下記の条件で紡出を行ない、本発明
のリングと従来のリングとの初期の糸切れについて比較
した。紡出条件糸：綿４０番手リング：ＫＳ９₂ ４５×５7.５トラベラ：Ｈｉ−ＮｉＯＳ 5/0 スピンドル回転数：１4,５００r.p.m. 図３に運転開始後５００時間までの糸切れ数の変化を示
す。本発明品Ａのリングは初期の糸切れの多い部分が約
５０時間であるのに対し、従来品Ｂのリングでは約２０
０時間である。このことはリングの初期なじみが本発明
品では５０時間しか掛らないのに、従来品では２００時
間を要することがわかる。また、初期なじみが付いた後
の糸切れレベルにおいても本発明品Ａの方が従来品Ｂに
比べ少なくなっている。

【００１０】図４はリング素材を所定形状（ＫＳ９₂４
５×５7.５）に旋削した後のリング内径部の歪の分布状
態（ｎ数＝５０個）を示す。本発明品Ａは切削性が良い
ため、切削時の加工歪が小さく、しかも熱処理時の歪が
小さいため、リングフランジの内径歪が少なく、リング
の必要とする形状精度をよくすることができる。また、
切粉の搬出も良好で、むしれも少ないので、リングの表
面状態を良好にできる。

【００１１】

【発明の効果】本発明の紡機用リングは上記のように構
成されているので、トラベラとリングの摩擦摺動部にＰ
b の潤滑層が介在し、トラベラのリングに対する初期な
じみ時間を大巾に短縮させると共に、糸切れ本数が少な
く安定する。

【００１２】また、分散したＰb は切削性を改善し、バ
イトの持ちを良くすると共に、フランジの形状精度を上
げ、リングの内径歪を小さくすると共に、バラツキを少
なくする。このため、糸の紡出張力が一定し、安定した
紡出が可能となり、高速紡出においても良好な紡出がで
きる。

【００１３】さらに球状化炭化物の分散した組織として
いるので、耐摩耗性に優れ、長寿命が得られるという優
れた効果を有する発明である。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の紡機用リングの一実施例を示す一部破
断断面図である。

【図２】本発明の紡機用リングの一実施例を示すリング
フランジ部の断面金属組織図である。

【図３】運転開始後５００時間までの糸切れ数の変化を
示す曲線図である。

【図４】歪み量の分布状態を示す曲線図である。

【符号の説明】

１紡機用リング２リングフランジ部３マルテンサイト基地４球状炭化物５Ｐb

Claims

【特許請求の範囲】

【請求項１】Ｃを0.６％〜1.２％、Ｃｒを1.３％〜1.
６％、Ｐb を0.１％〜0.５％含有する合金鋼より形成し
たことを特徴とする紡機用リング。
【請求項２】Ｃを0.６％〜1.２％、Ｃｒを1.３％〜1.
６％、Ｐb を0.１％〜0.５％含有する合金鋼より所要の
リング形状に成形し、次いで熱処理を施してなることを
特徴とする紡機用リングの製造方法。