JPH0718489Y2 - ボールエンドミル - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 ［産業上の利用分野］ この考案は、略半球状をなすエンドミル本体の先端部外
周に複数のスローアウェイチツプが装着されたボールエ
ンドミルに関するものである。

［従来の技術］ 第12図〜第14図は、実開昭61−134812号公報に見られる
従来のこの種のボールエンドミルを示すものである。

このボールエンドミルは、板状をなし、両側面に1/4円
周以下の略円弧状の切刃１とこれと連続する直線状稜線
２が形成されるとともに、円弧状切刃１と直線状稜線２
とが交差する端部に側面からすくい面にかけて凸状切刃
３が形成された主チツプ４と、円形の概略四半分を曲線
状切刃５とし、これと直線状切刃６を連続させた補助チ
ツプ７とをエンドミル本体８の端部所定部位に、主チツ
プ４は凸状切刃３と円弧状切刃１が、補助チツプ７は曲
線状切刃５と直線状切刃６が切削に関与するようにし
て、いずれも正のアキシヤルレーキ角を付して着脱自在
に装着したものである。

上記従来のボールエンドミルによれば、切削時に主チツ
プ４において、先ず凸状切刃３が被削材（図示せず）に
喰い付き、次いでエンドミル本体８の回転に伴って漸次
円弧状切刃１の全体が切削を行うようになるため、衝撃
的な切削荷重が作用することがないといった利点が得ら
れる。

［考案が解決しようとする問題点］ しかしながら、上記従来のボールエンドミルにあって
は、主チツプ４の円弧状切刃１と直線状稜線２との交差
部における切刃先端角θが鋭角であるため、切刃の欠損
を生じ易いという問題があった。さらに、上記凸状切刃
３と上面との間に形成された立壁９が切屑の排出の妨げ
となるという問題があった。

また、この種のボールエンドミルにあっては、特に切刃
長さが長く、かつ正のアキシヤルレーキ角を付して装着
しているので、切削時にエンドミル本体１にこれをホル
ダーから引き抜こうとするスラスト力が作用する。この
ため、エンドミル本体１の保持が不安定となり、軸線方
向の振動を惹起して仕上げ精度の低下を招いてしまうと
いう問題もあった。

この考案は、このような問題点を解決することを目的と
するものである。

［問題点を解決するための手段］ この考案のボールエンドミルは、エンドミル本体の先端
側に、円弧状の切刃の先端にこれと鈍角に交わる小切刃
が形成され、かつ小切刃と切刃の先端部とに沿うすくい
面の全体が小切刃側に向けて漸次着座面側に近付く凸状
面によって形成されたチツプを正のアキシヤルレーキ角
を付して装着するとともに、その基端側に直線状の切刃
を有するチツプを、エンドミル本体の軸線回りの回転軌
跡において上記先端側のチツプと切刃を連続させて０°
又は負のアキシヤルレーキ角を付して装着したものであ
る。

［作用］ 上記構成のボールエンドミルにあっては、装着している
チツプのエンドミル本体の先端側に位置する切刃が円弧
状をなしているため、喰い付き時に衝撃的な切削荷重が
作用することがない。

また、切刃と小切刃とが鈍角をなして交差するため当該
部分における切刃強度が高く、切刃の欠損が防止され
る。さらに、従来のもののように切刃の近傍に切屑の排
出の妨げとなるような立壁がないため、切屑の排出が円
滑に行なわれる。

さらに、先端側のチツプを正のアキシヤルレーキ角を付
して、他方基端側にチツプを０又は負のアキシヤルレー
キ角を付してそれぞれエンドミル本体に装着しているた
め、切削時にエンドミル本体に相反する方向のスラスト
力が作用してこれらが互いに相殺し合う。この結果、振
動の少ない安定した切削が可能となる。

［実施例］ 第１図〜第11図は、この考案のボールエンドミルの一例
を示すものである。

第１図〜第５図において、図中符号10は、エンドミル本
体を示すものである。このエンドミル本体10は概観略円
柱状のもので、その先端部は略半球状に形成されてい
る。この先端部の軸線と対称となる位置には、それぞれ
略1/4円周が削り取られてなるチツプポケツト11、11が
形成されており、これらチツプポケツト11、11の回転方
向に面する壁面には、それぞれチツプ取付座12、12が形
成されている。そして、これらチツプ取付座12、12に、
第１のチツプ20および第２のチツプ30が装着されてい
る。

上記第１のチツプ20は、第６図〜第８図に示すように、
上面21がすくい面とされかつ平坦な下面22が着座面とさ
れた板状のものである。これら上下面21、22間には、そ
れぞれ上面21に対して鋭角で交差する短い長さの２つの
平面状の側面23と、この平面状の側面より長くかつ略1/
4円周を描く２つの円弧状の側面24とが鈍角を間に挟ん
で周方向に交互にかつこのチツプ20の中心に対して点対
称となるように形成されている。ここで、上記円弧状の
側面24の両端部には、それぞれ所定の長さ接線方向に延
びる平坦な側面25、25が形成されている。

そして、各円弧状の側面24および平坦な側面25と上面21
との間の稜線部に、切刃26が形成されている。また上記
平面上の側面23と上面21との間の稜線部に、切刃26と鈍
角をなして交差する小切刃27が形成されている。

さらに、小切刃27および切刃26の先端部に沿う上面21
は、その全体が小切刃27側に向けて漸次着座面とされる
下面22側に傾く凸状面28によって形成されている。な
お、図中符号29は、この第１のチツプ20の取付孔を示す
ものである。

他方、上記第２のチツプ30は、第９図〜第11図に示すよ
うに上記第１のチツプ20と略同形状のもので、それぞれ
すくい面もしくは着座面とされる上下面31、32間に、短
い長さの平面状の側面33と一端部がこの側面33と鈍角を
挟んで連続する円弧状の側面34と、この側面34の他端部
から稜線方向に延びて隣接する側面33と略直角に交差す
る平坦な側面35とが、周方向に交互にかつ中心に対して
点対称となるように形成されたものである。そして、各
円弧状の側面34および平坦な側面35と上面31との間の稜
線部には、切刃36が形成され、また上記平面状の側面33
と上面31との間の稜線部には、切刃36と鈍角をなして交
差する小切刃37が形成されている。

この第２のチツプ30においても、小切刃37および切刃36
の先端部に沿う上面31は、その全体が上記小切刃37側に
向けて漸次下面32側に傾く凸状面38によって形成されて
いる。また、図中符号39取付孔である。

そして、上記第１のチツプ20は、第１図〜第５図に示す
ように、エンドミル本体10のチツプ取付座12にその平坦
な側面25、25が位置決め面とされ、かつ正のアキシヤル
レーキ角αを付されて取付孔29内に挿入された取付ボル
ト15により着座自在の装着されている。ここで、上記第
１のチツプ20は、その切刃26の先端をエンドミル本体10
の軸線Ｏの近傍に位置させ、かつその小切刃27を軸線Ｏ
を横切らせてエンドミル本体10の基端側に後退するよう
に位置させて取り付けられている。

また、上記第２のチツプ30は、その一方の平面状の側面
33および平坦な側面35が位置決め面とされ、かつ正のア
キシヤルレーキ角αを付されて取り付けられている。そ
して、この第２のチツプ30は、小切刃37が形成された切
刃36の先端を上記第１のチツプ20よりも軸線Ｏから外周
側に離間させ、かつ切刃36をエンドミル本体10の先端部
から外周側に向けて位置させて、取付孔39内に挿入され
た取付ボルトにより着脱自在に装着されている。

ここで、これらチツプ20、30のアキシヤルレーキ角αは
３°〜10°の範囲であることが望ましい。上記アキシヤ
ルレーキ角αが３°に満たないと切削抵抗が過大とな
り、他方10°を超えるとチツプ取付座12基端部における
バツクメタル量Ｈが少なくなり過ぎて工具剛性が著しく
低下してしまい、不都合だからである。

このように装着された結果、第１および第２のチツプ2
0、30は、第３図および第５図に示す底面視においてそ
れぞれの切刃26、27、36、37が全体として略Ｓ字状をな
すように装着されている。

さらに、このエンドミル本体10の、上記第１および第２
のチツプ20、30の軸線方向基端側には、それぞれ概観略
正方形の板状をなすチツプ40、41が装着されている。こ
れらチツプ40、41は、それぞれの直線状の切刃42、43を
上記軸線回りの回転軌跡において上記切刃26、36と軸線
方向に連続するように外周側に位置させ、かつ０又は負
のアキシヤルレーキ角βを付されて着脱自在に装着され
ている。

ここで、上記アキシヤルレーキ角βは、０°〜−10°の
範囲であることが望ましい。上記アキシヤルレーキ角β
が０°を超えると切削時に発生するスラスト力の相殺効
果が得られず、他方−10°に満たないとこれらチツプ4
0、41における切削抵抗が過大となって切れ味の低下を
招いてしまい、不都合だからである。

以上の構成からなるボールエンドミルにあっては、装着
している第１および第２のチツプ20、30の軸線Ｏ側に位
置する切刃26、36の先端が、それぞれ上記凸曲面28、38
により円弧状をなしているため、喰い付き時に衝撃的な
切削荷重が作用することがなく、よってその欠損を防止
することができる。

しかも、これら第１および第２のチツプ20、30において
小切刃27、37と交差する切刃26、36の先端角θ_１が鈍角
であるため、大きな切削荷重が作用する当該部分の切刃
強度を大幅に向上させることができる。さらに、従来の
もののように小切刃27、38側の平面状の側面23、33に切
屑の排出の妨げとなるような立壁が形成されていないた
め、優れた切屑の排出性能も得ることができる。

また、先端側のチツプ20、30を正のアキシヤルレーキ角
αを付して、他方基端側のチツプ40、41を０°又は負の
アキシヤルレーキ角βを付してそれぞれエンドミル本体
10に装着しているため、切削時にエンドミル本体10に相
反する方向のスラスト力が作用してこれらが互いに相殺
し合う。この結果、振動の少ない安定した切削が可能と
なり、よって仕上げ面精度を大幅に向上させることがで
きる。

［考案の効果］ 以上説明したようにこの考案のボールエンドミルは、エ
ンドミル本体の先端側に、円弧状の切刃の先端にこれと
鈍角に交わる小切刃が形成され、かつ小切刃と切刃の先
端部とに沿うすくい面の全体が小切刃側に向けて漸次着
座面側に近付く凸状面によって形成されたチツプを正の
アキシヤルレーキ角を付して装着するとともに、その基
端側に直線状の切刃を有するチツプを、エンドミル本体
の軸線回りの回転軌跡において上記先端側のチツプと切
刃を連続させて０°又は負のアキシヤルレーキ角を付し
て装着したものである。

したがってこのボールエンドミルによれば、喰い付き時
に先端側のチツプに衝撃的な切削荷重が作用することが
なく、さらにこれらチツプの切刃強度が高いため、切刃
の欠損を防止することができるとともに、これら切刃お
よび小切刃の近傍に切屑の排出の妨げとなるような立壁
が形成されていないため、優れた切屑の排出性能を得る
ことができる。しかも、切削時にエンドミル本体に相反
する方向のスラスト力が作用してこれらが互いに相殺し
合うため、振動の少ない安定した切削を行うことができ
る。

【図面の簡単な説明】

第１図〜第５図はこの考案のボールエンドミルの一実施
例を示すもので、第１図は正面図、第２図は側面図、第
３図は底面図、第４図は第１図の“A"部拡大図、第５図
は第３図の“B"部拡大図、第６図〜第11図は上記ボール
エンドミルに装着されているチツプを示すもので、それ
ぞれ第６図および第９図は正面図、第７図および第10図
は側面図、第８図は第６図のVIII−VIII線視図、第11図
は第９図のXI−XI線視図、 第12図〜第14図は従来のボールエンドミルを示すもの
で、第12図は正面図、第13図は装着されているチツプの
正面図、第14図は同側面図である。 10……エンドミル本体、20,30,40,41……チツプ、26,3
6,42,43……切刃、27,37……小切刃、28,38……凸曲
面、α，β……アキシヤルレーキ角。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)考案者 大川 昌之 東京都品川区西品川１丁目27番20号 三菱 金属株式会社東京製作所内 (56)参考文献 特開 昭55−37208（ＪＰ，Ａ) 特開 昭57−156111（ＪＰ，Ａ) 特開 昭56−39809（ＪＰ，Ａ)

Claims (2)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】軸線回りに回転されるエンドミル本体の先
   端部外周に、円弧状の切刃を有するスローアウェイチッ
   プが上記円弧状の切刃を上記エンドミル本体の外周側か
   ら先端側に位置させて装着されるとともに、この先端側
   のスローアウェイチップの基端側には、直線状の切刃を
   有するスローアウェイチップが、上記軸線回りの回転軌
   跡において上記直線状の切刃を上記円弧状の切刃の軸線
   方向基端側に連続させて装着されてなるボールエンドミ
   ルにおいて、 上記エンドミル本体の先端側に位置する上記スローアウ
   ェイチップは、上記円弧状の切刃の先端にこれと鈍角に
   交わる小切刃が形成され、かつ上記小切刃と円弧状の切
   刃の先端部とに沿うすくい面全体が上記小切刃側に向け
   て漸次着座面側に近付く凸状面によって形成されている
   とともに、該先端側のスローアウェイチップは正のアキ
   シャルレーキ角を付され、かつ他の基端側の上記スロー
   アウェイチップは０°又は負のアキシャルレーキ角を付
   されてそれぞれ装着されていることを特徴とするボール
   エンドミル。
2. 【請求項２】上記先端側のスローアウェイチップのアキ
   シャルレーキ角は３°〜10°の範囲であり、かつ上記基
   端側のスローアウェイチップのアキシャルレーキ角は０
   °〜−10°の範囲であることを特徴とする実用新案登録
   請求の範囲第１項記載のボールエンドミル。