JPH07145359A - 装飾用粘着シート - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 製造後の収縮が起こり難い、カレンダー成形
して得られる軟質塩化ビニルシートを基材とする装飾用
粘着シートを提供する。 【構成】塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂、非移行性ステ
アリン酸バリウム／亜鉛系安定剤およびポリエステル系
高分子可塑剤からなる組成物をカレンダー成形して得ら
れる軟質塩化ビニルシートの一面に、カルボン酸基を含
有するアクリル系粘着剤からなる粘着剤層が積層されて
なる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、製造後の収縮が起こり
難い、カレンダー成形して得られる軟質塩化ビニルシー
トを基材とする装飾用粘着シートに関する。

【０００２】

【従来の技術】従来より、顔料が含まれた不透明、透明
または半透明の軟質塩化ビニルシートなどの基材の一面
に粘着剤層が積層されてなる装飾用粘着シートが知られ
ている。この装飾用粘着シートは、装飾を施したい材料
に粘着剤層を利用して貼り付け、表面側の軟質塩化ビニ
ルシートの色や模様などにより装飾効果を発揮させるも
のであり、近年、塗装に代わり、ラベルやステッカー
類、広告や看板などのディスプレー分野、車両の装飾な
どのフリートマーキング分野などに使われている（例え
ば、特開昭６３−５４４８３号公報、特開平２−８４４
７６号公報）。

【０００３】このような装飾用粘着シートの一つとし
て、カレンダー成形して得られる軟質塩化ビニルシート
の一面に、カルボン酸基を含有するアクリル系粘着剤か
らなる粘着剤層が積層されてなるものがある。この軟質
塩化ビニルシートは、塩化ビニル樹脂、エポキシ化大豆
油、ステアリン酸バリウム−亜鉛系安定剤およびエステ
ル系可塑剤（例えば、ジオクチルフタレート）からなる
組成物をカレンダー成形して得られるシートであった。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】上記の装飾用粘着シー
トは、粘着剤層面に離型紙を積層させた状態で流通や保
存されるが、軟質塩化ビニルシートが製造後徐々に収縮
し、その結果、離型紙がシートの幅方向および長手方向
にはみ出したような形状になり、商品価値を低下させる
という問題点があった。

【０００５】本発明は、上記問題点を解決するものであ
り、その目的は、製造後の収縮が起こり難い、カレンダ
ー成形して得られる軟質塩化ビニルシートを基材とする
装飾用粘着シートを提供することにある。

【０００６】

【課題を解決するための手段】本発明の装飾用粘着シー
トは、塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂、非移行性ステア
リン酸バリウム−亜鉛系安定剤およびポリエステル系高
分子可塑剤からなる組成物をカレンダー成形して得られ
る軟質塩化ビニルシートの一面に、カルボン酸基を含有
するアクリル系粘着剤からなる粘着剤層が積層されてな
ることを特徴とする。

【０００７】本発明で使用される塩化ビニル樹脂は、カ
レンダー成形によりシートに成形できるものであれば、
特に限定されないが、重合度１０００〜１５００程度の
ものが賞用される。

【０００８】本発明で使用されるエポキシ樹脂は、エポ
キシ化合物とビスフェノール類または多価アルコールと
の反応により得られるもの、不飽和基を過酸によりエポ
キシ化して得られる樹脂等いずれも使用可能であり、こ
のようなエポキシ樹脂としては、例えば、シェル化学社
製、商品名「エピコート８２８」が挙げられる。エポキ
シ樹脂は、塩化ビニル樹脂１００重量部に対して、２〜
１０重量部の割合で使用されるのが好ましい。エポキシ
樹脂の割合が多くなると、塩化ビニルシートの表面外観
が悪くなり、少なくなると、塩化ビニルシートの耐候性
が悪くなる。

【０００９】本発明で使用される非移行性ステアリン酸
バリウム／亜鉛系安定剤は、全脂肪酸中のステアリン酸
（Ｃ₁₈）の割合が８０重量％以上をしめるものである。
なお、従来使用されてきたステアリン酸バリウム／亜鉛
系安定剤は、ステアリン酸（Ｃ₁₈）の他に、パルミチン
酸（Ｃ₁₆）、ラウリン酸（Ｃ₁₂）などを多量に含むもの
であり、このようなものは、移行性が大きいため本発明
には使用できない。非移行性ステアリン酸バリウム／亜
鉛系安定剤は、塩化ビニル樹脂１００重量部に対して、
３〜８重量部の割合で使用されるのが好ましい。非移行
性ステアリン酸バリウム／亜鉛系安定剤の割合が少なく
なると、塩化ビニル樹脂の熱安定性が低下して成形性が
悪くなる。また、多量に配合しても熱安定性の効果は飽
和してしまい逆にコストアップとなる。

【００１０】本発明で使用されるポリエステル系高分子
可塑剤は、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸などの２
塩基酸と１，２−プロピレングリコールなどのグリコー
ルとのポリエステル化により、合成されるものであり、
分子量としては１０００〜２０００のものが好ましい。
ポリエステル系高分子可塑剤の例としては、アデカアー
ガス化学社製、商品名「ＡＤＫ ＣＩＺＥＲ ＰＮ２６
０」（分子量１８００）が挙げられる。ポリエステル系
高分子可塑剤は、塩化ビニル樹脂１００重量部に対し
て、１８〜２５重量部の割合で使用されるのが好まし
い。ポリエステル系高分子可塑剤の割合が多くなると、
シートが柔らかくなりすぎ、少なくなると、逆に柔軟性
が低下する。

【００１１】本発明で使用される軟質塩化ビニルシート
は、上記、塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂、非移行性ス
テアリン酸バリウム／亜鉛系安定剤およびポリエステル
系高分子可塑剤を混練後、カレンダー成形して得られる
ものである。なお、軟質塩化ビニルシートの製造に際し
て、従来のフタル酸エステル系可塑剤も塩化ビニル樹脂
１００重量部に対して、１５重量部以下であれば併用し
てもよい。この軟質塩化ビニルシートの厚みは、使い易
さの点で３０〜２００μｍが好ましい。

【００１２】本発明で使用されるカルボン酸基を含有す
るアクリル系粘着剤としては、例えば、アルキル基の炭
素数が４〜１２からなる（メタ）アクリル酸アルキルエ
ステルとカルボン酸基を有するビニル化合物とを共重合
させて得られる共重合体からなるアクリル系粘着剤が挙
げられる。

【００１３】上記（メタ）アクリル酸アルキルエステル
としては、メチル（メタ）アクリレート、エチルアクリ
レート、イソプロピルアクリレート、ブチル（メタ）ア
クリレート、イソブチル（メタ）アクリレート、ヘキシ
ルアクリレート、２−エチルヘキシル（メタ）アクリレ
ート、オクチルアクリレート、ノニルアクリレート、ラ
ウリル（メタ）アクリレートなどが挙げられる。これら
のモノマーは２種以上混合して使用してもよい。さら
に、２−ヒドロキシエチル（メタ）アクリレート、２−
ヒドロキシプロピルメタクリレート、２−ヒドロキシブ
チルメタクリレートなどの水酸基含有（メタ）アクリル
モノマー、スチレン、α−メチルスチレン、酢酸ビニ
ル、プロピオン酸ビニルなどのビニル化合物を共重合さ
せることも可能である。アルキル基の炭素数が４〜１２
からなる（メタ）アクリル酸アルキルエステルの含有割
合は、アクリル系共重合体を構成するモノマー全体の５
０〜９５重量％が好ましい。

【００１４】上記カルボン酸基を有するビニル化合物と
しては、（メタ）アクリル酸、イタコン酸、クロトン
酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸などのカル
ボン酸基含有モノマーなどが挙げられる。これらは、２
種以上混合して使用してもよい。カルボン酸基を有する
ビニル化合物の含有割合は、アクリル系共重合体を構成
するモノマー全体の０．５〜２０重量％が好ましい。

【００１５】上記共重合体は、これらのモノマーを、例
えばベンゼン、トルエン、酢酸エチル、酢酸ブチルなど
の有機溶剤に溶解して溶液重合することにより得られ
る。

【００１６】上記カルボン酸基を含有するアクリル系粘
着剤は、架橋剤を添加して２液硬化型として使用するの
が好ましい。

【００１７】上記、架橋剤としては、通常、アクリル系
粘着剤に使用されるイソシアネート系架橋剤、エポキシ
基含有のポリグリシジルアミン系架橋剤などが挙げられ
る。

【００１８】本発明における粘着剤層の厚みは、被着体
に対する粘着力、使い易さの点で２０〜５０μｍが好ま
しい。

【００１９】本発明の装飾用粘着シートの製造法の一例
を挙げると、カルボン酸基を含有するアクリル系粘着剤
および架橋剤を、例えば、トルエン、キシレン、酢酸エ
チルなどの汎用、工業的に使用される有機溶剤中に溶
解、分散させることにより粘着剤溶液とし、これから得
られる粘着層を前記のカレンダー成形して得られた軟質
塩化ビニルシートに積層して装飾用粘着シートを得る。
塗布方式としては軟質塩化ビニルシートに直接粘着剤溶
液を塗布、乾燥する方式、または一旦離型紙に粘着剤溶
液を塗布、乾燥することにより粘着剤層を形成させて軟
質塩化ビニルシートと貼り合わせることによる転写方式
など、適宜選択できる。また、上記粘着剤層を積層させ
るのに使用できる塗工機としては、通常の粘着剤溶液塗
布に使用されるものであれば特に限定されるものではな
いが、好ましくは、精度良く厚みを調整出来、かつ生産
性よく塗工出来るナイフコーター、コンマコーター、ロ
ールコーターが挙げられる。

【００２０】このようにして製造された装飾用粘着シー
トは、通常、粘着剤層面に剥離シートを貼り合わせた積
層体として保管され、使用する際に剥離シートを粘着剤
層面から剥がして使用する。

【００２１】

【作用】従来の、カレンダー成形して得られる軟質塩化
ビニルシートの一面に、カルボン酸基を含有するアクリ
ル系粘着剤からなる粘着剤層が積層されてなる装飾用粘
着シートが収縮する原因としては、以下のことが考えら
れる。 軟質塩化ビニルシートがカレンダー成形して得られ
たものであり、歪みが残っている。 安定剤として配合されたエポキシ化大豆油が粘着剤
層中に移行し、粘着剤層中のカルボン酸基と反応し架橋
を促進し、またステアリン酸バリウム−亜鉛系安定剤も
粘着剤層中に移行し、カルボン酸基とイオン架橋を起こ
す。粘着剤層の架橋が進むと、エステル系可塑剤が粘着
剤層中を自由に移動し易くなり、可塑剤が粘着剤層と離
型紙の界面に多量に堆積し、粘着剤層と離型紙の粘着力
を低下させ、軟質塩化ビニルシートの収縮を抑制できな
くなる。 上記の可塑剤の移行に伴う軟質塩化ビニルシートの
体積収縮が発生する。

【００２２】本発明の装飾用粘着シートによると、従来
技術のエポキシ化大豆油の代わりにエポキシ樹脂を、ス
テアリン酸バリウム−亜鉛系安定剤の代わりに非移行性
ステアリン酸バリウム／亜鉛系安定剤を、低分子量のエ
ステル系可塑剤の代わりにポリエステル系高分子可塑剤
を使用しているので、それぞれの移行性が少ないので上
記の原因のおよびを回避でき、粘着剤層と離型紙の
粘着力が低下しないので、カレンダー成形して得られた
軟質塩化ビニルシートに歪みが残っていても該シートが
収縮しないものと考えられる。

【００２３】

【実施例】

実施例１ 軟質塩化ビニルシートの製造 重合度１３００の塩化ビニル樹脂１００重量部、炭酸カ
ルシウム１０重量部、エポキシ樹脂（シェル化学社製、
商品名：エピコート８２８）５重量部、非移行性ステア
リン酸バリウム／亜鉛系安定剤（Ｃ₁₈含有量８０重量％
以上、粉末状）８重量部、アジピン酸系ポリエステル可
塑剤（アデカアーガス化学社製、商品名：ＡＤＫ ＣＩ
ＺＥＲ ＰＮ２６０）１５重量部およびフタル酸エステ
ル系可塑剤（ジオクチルフタレート）１２重量部を配合
したものをカレンダー法により７０μｍの厚さに成形し
て軟質塩化ビニルシートを得た。

【００２４】 粘着剤の製造 ブチルアクリレート７０重量部、２−エチルヘキシルア
クリレート３０重量部、アクリル酸３重量部およびヒド
ロキシエチルメタアクリレート０．３重量部からなる重
量平均分子量９０万のアクリル系共重合体１００重量部
と酢酸エチル２００重量部とからなる溶液に、イソシア
ネート系架橋剤（日本ポリウレタン社製、商品名：コロ
ネートＬ−５５Ｅ）２．５重量部を添加し、混合し、粘
着剤溶液を得た。

【００２５】 装飾用粘着シートの製造 両面ポリエチレン（厚み２０μｍ）ラミネート紙にシリ
コーン加工した離型紙（全厚み１２８μｍ）上に、工程
で得られた粘着剤を乾燥後の厚みが２５μｍとなるよ
うに塗工後、乾燥して粘着剤層を製造した。得られた粘
着剤層に工程で得られた軟質塩化ビニルシートを貼り
合わせ、この軟質塩化ビニルシート／粘着剤層／離型紙
からなる積層体を巻芯の直径が３インチのロールに巻回
した。これを、幅４６０ｍｍ×長さ１０ｍにスリット
し、装飾用粘着シートを得た。

【００２６】比較例１〜３ 実施例１の工程（軟質塩化ビニルシート製造）の組成
物の配合を表１のように変えたこと以外は、実施例１と
同様にして装飾用粘着シートを得た。

【００２７】

【表１】

【００２８】なお、表１における、エピコート８２８と
は、上記実施例１に記載したエポキシ樹脂を表し、エポ
キシ化大豆油とは、アデカアーガス化学社製、商品名：
Ｏ−１３０Ｐを表し、ＰＮ２６０とは、上記実施例１に
記載したアジピン酸系ポリエステル可塑剤を表し、ＤＯ
Ｐとは、上記実施例１に記載したジオクチルフタレート
を表し、粉末安定剤とは、上記実施例１に記載した非移
行性ステアリン酸バリウム／亜鉛系安定剤を表し、液状
安定剤とは、従来よりある脂肪酸塩でＣ₁₀、Ｃ ₁₂、Ｃ₁₆
などの低分子量成分を多量に含む安定剤を表す。

【００２９】（性能評価）実施例１および比較例１〜３
で得られた装飾用粘着シートについて、以下のようにし
て性能を評価し、結果を表２に示した。 （１） 収縮性 得られた幅４６０ｍｍ×長さ１０ｍのロール品につい
て、製造直後のもの、および、５０℃、相対湿度４０％
の条件下に１週間、１ケ月および３ケ月保存したものに
つき、それぞれ、次のようにして収縮性を評価した。幅
４６０ｍｍ×長さ１０ｍのロール品を、２ｍだけ巻きも
どした状態で２３℃、相対湿度６５％で５時間保存後、
軟質塩化ビニルシートの収縮によって生じた該シートの
端部と離型紙の端部とのズレの長さを、該シートの長手
方向および幅方向について測定した。 （２） 対ＳＵＳ板粘着力 ＪＩＳ Ｚ ０２３７に準拠して行った。すなわち、上
記（１）の測定をした装飾用粘着シートを幅１５ｍｍに
カットし、離型紙を引き剥がした後、ＳＵＳ板に貼付
し、貼付されたシートを１８０度方向に剥離速度３００
ｍｍ／ｍｉｎで剥離し、剥離時の荷重を求め、対ＳＵＳ
板粘着力とした。

【００３０】

【表２】

【００３１】

【発明の効果】本発明の装飾用粘着シートの構成は前記
した通りであり、製造後の収縮が起こり難いので、該シ
ートの流通や保存に際して商品価値が低下しない。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂、非移行
   性ステアリン酸バリウム／亜鉛系安定剤およびポリエス
   テル系高分子可塑剤からなる組成物をカレンダー成形し
   て得られる軟質塩化ビニルシートの一面に、カルボン酸
   基を含有するアクリル系粘着剤からなる粘着剤層が積層
   されてなることを特徴とする装飾用粘着シート。