JPH07125782A - 果実用トレー - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 果実用トレーとして、収納される桃、梨、リ
ンゴ等の果実の直径や形状の少々のバラツキに容易に対
応でき、果実を無理なくかつ遊動のおそれなく安定性よ
く収納保持できるようにし、その保護を確実にする。 【構成】 多数の収納凹部１を有するトレーで、内側を
柔軟層２、その外側を比較的保形性のある樹脂層３との
２層構造とし、内側の柔軟層２と、外側の樹脂層３と
を、収納凹部２の開口部５から側壁上部にかけて両層間
に空隙７を保有するように、少くとも収納凹部１の底部
４で接合し、柔軟層２を空隙７の範囲内で弾性変形可能
にし、これによって果実の直径差を吸収して、少々径小
の果実でも安定性よく保持できるようにする。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、多数の収納凹部を有す
る果実用トレーに関するものである。

【０００２】

【従来の技術と発明が解決しようとする課題】近年、
桃、梨、リンゴ等の果実類の出荷に使用する包装用トレ
ーとして、パルプモールドによるトレーや非発泡樹脂の
シートよりなるトレーでは、果実の表面を傷つけるおそ
れがあることから、比較的保形性のある樹脂シートより
なる外層と、果実との当触感のよい柔軟な発泡シート等
よりなる内層との２層構造のトレーが多くなっている
（例えば実開平２−１３５４２１号公報）。

【０００３】ところが、通常の２層構造のトレーは、樹
脂シートよりなる外層と、柔軟な発泡シート等の内層と
が全面にわたって接合された積層シートからなるもの
で、収納凹部においても両層が完全に密着状態に形成さ
れており、柔軟な内層の厚みによる弾力性以外の緩衝性
は期待できないものである。

【０００４】そのため、この種の２層構造のトレーにお
いて、収納凹部において内外両層間に空隙を設けて緩衝
性を向上させる提案がなされている。例えば実開昭６２
−２２９０６号公報には、収納凹部において内層の底部
を外層から浮かせて空隙を保有するようにしたものが示
されている。また実開平４−５０６８７号公報には、収
納凹部の底部外周部から側壁部にかけて内層を外層から
離して空隙を形成するようにしたものが示されている。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記い
ずれの場合も、収納凹部の下部あるいは底部での緩衝性
は高くなるものの、開口部の内周の側壁上部には殆ど空
隙を有さず、内外層が密着した状態であるため、この開
口部内周部分では充分な緩衝性が期待できないものであ
る。その上、特に前者の場合には、柔軟な内層が収納凹
部で吊り下げ状態になって、輸送時の振動によって上下
に揺動し易く、収納された果実類が収納凹部内で動き易
い欠点もある。

【０００６】また、前記のように開口部内周部分に空隙
を有さないために、収納される果実の形状や直径、大き
さのバラツキに対する対応性に乏しく、例えば開口径に
比して果実の直径が大きくなると果実表面が圧迫されて
傷みが生じ易くなり、また開口径に比して果実の直径が
小さいと、開口部の内周部分に隙間が生じて、収納され
た果実が不安定になり易い。

【０００７】特に、桃、梨、リンゴ等の果実の出荷にお
いては、段ボール箱等のケース１箱分の基準重量が規格
で定められており、その規格重量に応じて選果される略
同一重量、大きさの果実を収納するように、果実用トレ
ーの収納凹部の個数および開口径が設定されているが、
果実は略同一重量のものであっても、形状や直径は一定
ではなく、また果実の種類によってもその直径は異な
る。そのため、上記のように内側に柔軟な素材を用いた
複層のトレー、あるいは収納凹部の底部側に空隙を設け
たトレーであっても、開口部ではその直径差等を吸収で
きない場合があった。

【０００８】本発明は、上記に鑑みてなしたものであ
り、収納される果実の形状や直径に少々のバラツキがあ
っても、無理なくかつ開口部内周部分に隙間を生じさせ
ることなく収納でき、輸送中においても遊動のおそれな
く安定性よく保持でき、しかも緩衝性に優れる果実用ト
レーを提供しようとするものである。

【０００９】

【課題を解決するための手段】上記の課題を解決する本
発明は、多数の収納凹部を有するトレーであって、内側
が柔軟層、その外側が比較的保形性のある樹脂層からな
り、内側の柔軟層は少なくとも収納凹部の底部で外側の
樹脂層と接合されて、収納凹部の開口部から側壁上部に
かけて両層間に空隙が設けられてなることを特徴とす
る。

【００１０】前記において、収納される果実が接触する
内側の柔軟層としては、果実よりも軟らかくて果実を傷
つけることがなく、かつ衝撃吸収性のある軟質の合成樹
脂発泡シートが用いられる。中でも架橋タイプのポリエ
チレン発泡体、架橋もしくは無架橋のポリプロピレン発
泡体等のポリオレフィン系樹脂の発泡体を好適に用いる
ことができる。このポリオレフィン系樹脂の発泡体の場
合、架橋タイプのほうがシートからの熱成形性がよく好
ましい。また前記のほか、ポリウレタン系樹脂発泡体等
の他の比較的軟質の樹脂の発泡体を使用することもでき
る。さらに、熱可塑性繊維による不織布等の成形可能な
適度に弾力性のあるシートを用いることもできる。

【００１１】この柔軟層の厚みは、例えば発泡シートの
場合、その弾性変形および圧縮変形によって、上記した
桃、梨、リンゴ等の収納対象の果実類の直径のバラツキ
や果実の種類による直径差を吸収する目的を有すること
から、１．０〜６．０ｍｍ、好ましくは１．０〜４．０
ｍｍである。すなわち、この厚みが前記より小さくなる
と充分な緩衝性が得られず、また厚みが前記より大きい
と、包装用ケースに対応した一定の平面寸法内に必要個
数の収納凹部を形成するのが難しくなる。

【００１２】また前記の柔軟層に用いる発泡シートの密
度は、その使用素材によっても異なるが、０．０２５〜
０．０５ｇ／ｃｍ³ 、好ましくは０．０２７〜０．０４
５ｇ／ｃｍ³ で、比較的高発泡のものが使用される。す
なわち、この密度が前記より大きくなると、弾力性に乏
しく緩衝性にも劣ることになる。また前記密度より小さ
くなると、強度が弱くなり破れが生じ易くなる。

【００１３】また外側の樹脂層については、輸送途中の
果実の移動を防ぐこと、耐圧強度や保形性の点から、比
較的硬質の適度に腰のある合成樹脂材、例えばポリスチ
レン系樹脂の発泡シートや非発泡シート、ポリ塩化ビニ
ル樹脂の非発泡シート、ポリプロピレン系樹脂の比較低
発泡のシートや非発泡シートが好適に用いられる。

【００１４】この樹脂層の厚みは、素材によっても異な
るが、０．５〜４．０ｍｍ、好ましくは０．５〜２．５
ｍｍ程度が好適である。すなわち、この厚みが余り小さ
くなると、保形強度や耐圧強度が得られず、自動選果場
での取扱い上好ましくなく、段ボール箱内での積み重ね
収容した場合の安定性も劣る。

【００１５】

【作用】本発明の果実用トレーは、桃、梨、リンゴ等の
果実類を収納凹部に収納して使用する。

【００１６】この際、収納凹部の開口部から側壁上部に
かけて内外両層間に空隙が設けられているため、内側の
柔軟層がその空隙の範囲で弾力的に変形可能であり、そ
れゆえ収納する果実の直径に少々のバラツキがあって
も、そのバラツキを吸収して問題なく収納できる。

【００１７】例えば、選果されたうちの径の大きい果実
は、開口部の内周部分において内外両層間の空隙を利用
して内側の柔軟層を弾力的に拡径変形させるようにし
て、内側の柔軟層が果実に弾力的に密着した状態に収納
できる。また選果されたうちの径小の果実は、開口部の
内周部分において内側の柔軟層が果実の周表面に対し間
隙を存することなく沿い、該内側の柔軟層によって該果
実を抱持した状態になり、収納凹部内での遊動のおそれ
なく収納できる。

【００１８】しかも、内側の柔軟層は収納凹部の底部で
外側の樹脂層と接合されているために、該柔軟層の底部
の収納凹部内での動きが規制され、輸送中の振動等によ
る果実の遊動を防止できる。

【００１９】

【実施例】次に本発明の実施例を図面に基いて説明す
る。

【００２０】図１は本発明に係る果実用トレー（Ａ）の
１実施例の斜視図を示し、図２は同上の平面図、図３は
一部の拡大断面図を示している。

【００２１】このトレー（Ａ）は、内外の２層構造をな
しており、プレス成形や真空成形等の成形加工による多
数の収納凹部（１）を有し、果実（Ｂ）が接触する内側
が柔軟な合成樹脂の発泡シート等よりなる柔軟層
（２）、外側が比較的保形性のある樹脂層（３）よりな
る。

【００２２】内側の柔軟層（２）と外側の樹脂層（３）
とは、収納凹部（１）の開口部（５）から側壁（６）の
上部（６ａ）にかけて両層間に空隙（７）を保有するよ
うに、少なくとも収納凹部（１）の底部（４）の一部で
接着手段等により接合されている。

【００２３】図示する実施例の場合、柔軟層（２）と樹
脂層（３）とは、トレー上面と収納凹部（１）の底部
（４）において接合されて、収納凹部（１）の開口部
（５）の上面側から側壁上部（６ａ）にわたって空隙
（７）が設けられている。

【００２４】トレー上面においては、図のように収納凹
部（１）の開口部（５）の周辺部分を含む略全面におい
て両層を接合するほか、前記開口部（５）の周辺部分や
トレー周縁等を一部的に接合することもできる。またト
レー上面では接合しないでおくこともできるが、少なく
ともトレー周縁部分を接合しておくのが、トレー（Ａ）
の取扱い上好ましく、また保形性も良好になる。

【００２５】特に柔軟層（２）が図のようにトレー上面
でも樹脂層（３）に接合されていると、該柔軟層（２）
の空隙（７）部分での弾力性が増し、また該柔軟層
（２）の動きが収納凹部（１）の上下で規制でき、収納
された果実を安定性よく保持できる。また柔軟層（２）
がトレー上面で樹脂層（３）に接合されていない場合
は、収納凹部（１）の開口部（５）の果実寸法のバラツ
キに対する対応性がさらに良好になる。

【００２６】収納凹部（１）の側壁下部（６ｂ）におい
ては、図のように柔軟層（２）と樹脂層（３）との両者
を単に接触させるほか、この側壁下部（６ｂ）において
も両層間に空隙を保有させることが可能である。この場
合、側壁下部（６ｂ）での緩衝性もさらに良好になる。

【００２７】前記の収納凹部（１）の形状は、果実を収
納するのに適する凹部形状をなすものであればどのよう
な形状であってよいが、図においては、図３および図４
に拡大して示すように、外側の樹脂層（３）の収納凹部
（３１）は、側壁（６）の上部（６ａ）が湾曲状に形成
され、これに続く下部（６ｂ）を直線状をなして底部
（４）に連続するテーパ状に形成されており、内側の柔
軟層（２）の収納凹部（２１）も、その開口径が樹脂層
（３）の開口径よりやや径小で略対応した形状をなし、
前述のように両層間に空隙（７）を保有するように形成
されている。

【００２８】上記の収納凹部（１）の開口径は、収納対
象の果実（Ｂ）の基準重量での直径の略平均径に合せて
設定し、また桃、梨、リンゴの３種のトレーとして使用
する場合は、それぞれの略平均径に合せるように設定す
る。

【００２９】さらに、収納凹部（１）の配列や個数は、
収納する果実の重量と径によって、図２のほか、例えば
図５の（ａ）（ｂ）（ｃ）に例示するもの、その他種々
の実施が可能である。通常、１箱（２段重ね）の基準重
量（１０ｋｇ以上）にするため、大きさ（直径）の異な
る収納凹部（１）を、同じ平面内に例えば８個詰めから
２６個詰め程度まで、その配列、個数を変更して製作す
ることができる。

【００３０】例えば、２３個詰めの場合、図１および図
２のように、４個列を５列と３個列の１列とを平面略方
形のトレー長手方向に配設した配列とし、収納凹部
（１）の開口径を大きくとるのが望ましい。

【００３１】すなわち、この種の果実用トレーは、段ボ
ール箱等の包装ケースの内側寸法に応じた規格があり、
一般に縦横寸法は、桃梨用３００×４６０ｍｍ、鳥取県
の梨用３４０×４７０ｍｍ、リンゴ用３６０×４３０ｍ
ｍである。ところで、最近の包装形態の合理化に伴うシ
ートパレチゼーションに応じて、その縦横寸法が全て３
３０×４７０ｍｍに近いものに統一することが検討され
ている。この一定の面積内に２３個の収納凹部（１）を
形成する場合、従来の配列では収納凹部（１）の開口径
は最大で８０ｍｍ程度のものしかできないとされていた
が、図示の配列にすると、８２ｍｍ程度の果物を収納で
きる開口径にでき、それだけ余裕を持った収納が可能に
なる。

【００３２】また二つの収納凹部（１）（１）間の境界
部は、３個以上の収納凹部（１）によって囲まれる部分
（８）を残存させるように僅かに落し込み形成してい
る。この落し込み部（９）の落し込み寸法が大きくなる
と、隣接する収納凹部（１）に収納された果実同士が当
接するおそれがあるので、図のように落し込み寸法をあ
まり大きくしないほうがよい。この境界部の落し込みは
必ずしも必要なものではないが、内側の柔軟層（２）の
成形時における延び切れを防止する上では、図のように
落し込み形成しておくのが望ましい。

【００３３】内側の柔軟層（２）と外側の樹脂層（３）
とを、上記のように空隙（７）を保有するように接合す
る手段としては、例えば柔軟層（２）および樹脂層
（３）の両層を、それぞれ収納凹部（２１）（３１）を
有する形態に別個に成形しておいて、この両者を嵌め合
せて両層間に空隙（７）を残すように少なくとも底部
（４）において熱融着手段や接着手段により接合するこ
とができる。

【００３４】また内側の柔軟層（２）と外側の樹脂層
（３）とを、両層を重ね合せた状態で収納凹部（１）の
開口部（５）から側壁上部（６ａ）にかけて両層間に空
隙（７）を残すように、真空成形あるいはプレス成形等
の成形すると同時に、少なくとも底部において接合する
こともできる。

【００３５】上記のように形成された果実用トレー
（Ａ）によれば、リンゴ等の果実（Ｂ）を収納する際、
規格の重量等に応じて選果されたものの中の比較的径の
大きい果実（Ｂ）は、図６に示すように収納凹部（１）
の開口部（５）の内周部分の空隙（７）を利用して内側
の柔軟層（２）を弾力的に拡径変形させるようにして湾
曲状の側壁上部（６ａ）に嵌合して安定性よく保持され
る。

【００３６】また選果されたものの中の比較的径小の果
実（Ｂ）は、図７のようにテーパ状の側壁下部（６ｂ）
に嵌合して収納状態に保持される。特にこの際、開口部
（５）の内周部分では内側の柔軟層（２）が果実（Ｂ）
に対しフィットして隙間なく弾力的に抱持した状態に収
納でき、これにより輸送中の動きが規制され、安定性よ
く保持される。

【００３７】したがって、前記の空隙（７）と、その空
隙範囲内での内側の柔軟層（２）の弾力的な拡収変形に
よって、果実（Ｂ）の直径の少々のバラツキを吸収で
き、果実の形状の違いにも容易に対応できる。

【００３８】しかも、内側の柔軟層（２）は、少なくと
も収納凹部（１）の底部（４）において樹脂層（３）に
接合されているいるために、開口部（５）の内周部分に
空隙（７）を保有するにも拘らず、収納凹部（１）での
柔軟層（２）の底部側での動きが規制されて、輸送中の
振動によって収納された果実（Ｂ）が上下に遊動したり
することがない。特に図の場合は、柔軟層（２）がトレ
ー上面でも樹脂層（３）に接合されているため、その動
きが収納凹部の上下で防止され、果実（Ｂ）を一層安定
性よく保持できる。

【００３９】また、段ボール箱等の包装ケース（Ｃ）内
に積み重ね収容する場合、外側の保形性のある樹脂シー
トによる樹脂層（３）によって、充分な耐圧性を確保で
き、果実を安定性よく保持できる。特に中仕切を省略し
て直接積み重ね収容でき、この場合、保形性のある樹脂
層（３）の外表面を平滑面にしておけば下段の果実
（Ｂ）との間の滑りがよくなる。

【００４０】もちろん、この樹脂層（３）の外側に発泡
シート等の柔軟層を設けた３層構造の積層構造にして実
施することもできる。

【００４１】

【発明の効果】上記のように本発明の果実用トレーによ
れば、内側の柔軟層の持つ弾力性に加えて、開口部から
側壁上部にわたる空隙範囲内での柔軟層の弾性変形によ
って、果実の直径や形状等の少々のバラツキを吸収で
き、選果されたものの中の径の大きい果実を無理なく弾
力的に収納できるとともに、比較的径小の果実も、開口
部の内周部分において隙間を生じさせることなく柔軟層
で弾力的に抱持した状態に収納保持でき、優れた緩衝保
護効果を発揮できる。

【００４２】さらに外側保形層との間に空隙を保有する
ように設けられる内側の柔軟層は、少なくとも収納凹部
の底部で外側の保形層と接合されているために、その動
きが規制されて収納された果実を安定性よく保持でき、
輸送中の振動等によっても妄りに遊動することがない。

【００４３】また、収納凹部の開口部から側壁上部にか
けて両層間に空隙を設けたことで果実の直径差を吸収で
きるため、同一重量でも直径差の異なる桃、梨、リンゴ
等のトレーとして共通に使用することも可能になる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の１実施例を示す斜視図である。

【図２】同上の一部の平面図である。

【図３】同上の一部の拡大断面図である。

【図４】同上の外側樹脂層の内面形状の説明図である。

【図５】（ａ）（ｂ）（ｃ）のそれぞれ収納凹部の配列
形態の他の例を示す略示平面図である。

【図６】やや径の大きい果実の収納状態を例示する断面
図である。

【図７】やや径の小さい果実の収納状態を例示する断面
図である。

【符号の説明】

（Ａ） 果実用トレー （Ｂ） 果実 （１） 収納凹部 （２） 発泡シート等の柔軟層 （３） 保形性のある樹脂層 （４） 底部 （５） 開口部 （６） 側壁 （６ａ） 側壁上部 （６ｂ） 側壁下部 （７） 空隙

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】多数の収納凹部を有するトレーであって、
   内側が柔軟層、その外側が比較的保形性のある樹脂層か
   らなり、内側の柔軟層は少なくとも収納凹部の底部で外
   側の樹脂層と接合されて、収納凹部の開口部から側壁上
   部にかけて両層間に空隙が設けられてなることを特徴と
   する果実用トレー。