JPH07123994A - 高純度マルチトールの製造方法 - Google Patents

高純度マルチトールの製造方法

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JPH07123994A
JPH07123994A JP29597393A JP29597393A JPH07123994A JP H07123994 A JPH07123994 A JP H07123994A JP 29597393 A JP29597393 A JP 29597393A JP 29597393 A JP29597393 A JP 29597393A JP H07123994 A JPH07123994 A JP H07123994A
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琴音 田中
Kazuaki Kato
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Abstract

(57)【要約】 【構成】 高純度マルチトールを製造するにあたり、
イ)マルトース純度が80重量%以上の澱粉糖化物に水
素添加する第1工程、ロ)第1工程で得られた水素添加
物にグルコアミラーゼを作用させるか、またはグルコア
ミラーゼ及び枝切り酵素を作用させて重合度3以上の糖
アルコールを加水分解する第2工程、ハ)第2工程で得
られた加水分解物に酵母を作用させる第3工程、上記三
工程を逐次的に経由し、純度90重量%以上のマルチト
ールを得る。 【効果】 本発明を実施することにより、経済的に有利
な高い濃度で糖化処理され、市販されているマルトース
純度80〜90%程度の安価な原料を用いて、クロマト
分離操作を経由しないので濃度を大幅に下げず、且つ経
済的にマルチトール純度を向上することが可能になり、
その結果、本発明によって得られた高純度マルチトール
からそれ自体は公知の方法で無水結晶マルチトールやマ
ルチトール含密結晶を調製することが出来る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
【0002】本発明は、高純度マルチトールの製造方法
に関する。
【0003】
【従来の技術】
【0004】マルチトールは二糖類であるマルトースに
水素添加することにより得られる糖アルコールであり、
砂糖に類似した様々な優れた性質を持っているので、各
種食品や飲料、医薬品などの用途に用いられている。
【0005】マルチトールの製造方法は数多く提案され
ているが、それらの中で、結晶や含蜜結晶が得られるよ
うな高い純度のマルチトールを製造する方法は、以下の
3種に大別される。
【0006】 即ち、第一の従来方法は、例えば特公
昭63−2439号公報に紹介されているように、α−
アミラーゼで低濃度の澱粉を低DE(デキストロース当
量)に液化した澱粉液化液にβ−アミラーゼ及びイソア
ミラーゼを作用させ、マルトース純度が95〜98%の
マルトース高含有糖化液を得たうえで、これに水素添加
して高純度マルチトールを得るという内容である。
【0007】 また、第二の従来方法は、特公昭63
−64200号公報、特公昭62−51120号公報、
特公平05−9080号公報などに紹介されているよう
に、糖化液をクロマト分離して高純度のマルトースを得
た後、これに水素添加する方法、つまり、マルトース純
度が75〜85%程度の糖化液をイオン交換樹脂等の吸
着材でクロマト分離し、例えば純度93%以上のマルト
ース画分を得て、ラネーニッケル等の触媒を用い、それ
自体は公知の方法で水素添加するという内容である。
【0008】 更に、第三の従来方法は、特開昭61
−180795号公報に紹介されているように、25〜
45%の高い濃度を有する澱粉乳を液化した後、糖化条
件を選択してマルトース純度50〜80%以上の糖化液
を得て、これに水素添加して、相当するマルチトール水
溶液とし、更にクロマト分離によってマルチトール純度
87〜97.5%の液を調製し、濃縮及び晶析を経て高
純度のマルチトールを得るという内容である。
【0009】 また、第三の従来方法に類似した方法
として、特開平1−93597号公報には糖化液に水素
添加後、酵素処理してから再度水素添加し、それをクロ
マト分離するという方法も提案されている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】しかし、従来の製造方法には課題が残され
ており、高純度のマルチトールを製造するうえで、経済
性の面からは十分な方法とは言い難いものだったのであ
る。
【0012】例えば、第一の従来方法には、経済的な濃
度で酵素反応を行った場合にはマルトースの純度が85
〜90%程度になってしまうという課題があった。
【0013】つまり、マルチトール無水結晶やマルチト
ール含蜜結晶のような高い純度の製品を製造するには、
特公昭63−2439号公報の実施例1に紹介されてい
るように、10%程度の低い濃度で酵素反応を実施して
マルトース純度を95%以上にする必要があるので濃縮
費用が多くかかり、しかもその工程には高価なイソアミ
ラーゼなどの酵素を比較的多く使用する必要があるとい
う経済的な課題があったのである。
【0014】また、第二の従来方法には、糖化液の濃度
はせいぜい10〜20%程度なので40〜70%程度ま
で濃縮してからクロマト分離する必要が有り、更に、ク
ロマト分離後には10〜30%程度まで濃度が低下して
しまうので再度経済的な取り扱い濃度である50〜70
%程度まで濃縮してから水素添加反応する必要があり、
水素添加及び脱イオン、脱色の後には濃度が35〜45
%程度に低下してしまうので製品にする前に更にまた濃
縮が必要になるという課題、つまり、何度も濃縮工程が
必要でそのために多くの費用がかかる不経済な工程であ
るという課題があった。
【0015】更に、第二の従来方法には、少しでも経済
性を高めるために、クロマト分離によって得られたマル
トース含有低純度画分を廃棄せず、何等かの方法で経済
的に処理して有効利用する必要があるという課題も残さ
れていたのである。
【0016】また、第三の従来方法にも前記第二の従来
方法と同様に濃縮に費用が嵩むという課題や、クロマト
分離によって得られたマルチトール含有低純度画分を経
済的に且つ有効に処理する必要があるという課題が残さ
れていたのである。
【0017】更に、第三の従来方法に類似した特開平1
−93597号の方法には、水素添加反応を2度経由す
るという繁雑さの他に、クロマト分離工程が必要で液濃
度が下がってしまい、濃縮費用が嵩むという課題が残さ
れていた。
【0018】つまり、以上を要するに、無水結晶マルチ
トールやマルチトール含蜜結晶を製造するための高純度
マルチトールを得る方法としては、特殊な酵素を用いた
工程では反応の濃度を低くする必要があることと酵素の
費用が高いことから、経済的に不利であるという課題が
あり、安価な汎用原料を用いるとクロマト分離工程の採
用が要求されるので、液の濃度が低下して濃縮費用が高
くなるという課題があったのである。
【0019】従って、マルトース純度が80重量%以
上、とりわけ80〜90重量%程度の安価な原料から純
度90重量%以上、とりわけ純度95重量%以上の高純
度マルチトールが経済的に製造できるような方法があれ
ばその方法が最も有利であると予想されていたにも拘わ
らず、技術的な困難さの故に有利に実現可能な方法が存
在しなかったので、特殊な酵素を用いる工程やクロマト
分離工程等を経ることなく経済的に有利に高純度マルチ
トールを製造できる方法の開発が望まれていたのであ
る。
【0020】
【課題を解決するための手段】
【0021】本発明者等は前記課題を解決するべく鋭意
研究重ねた結果、マルトース純度が80重量%以上の安
価な澱粉糖化物に水素添加した後、グルコアミラーゼや
酵母を作用させることによって、経済的な方法で、且
つ、大幅にマルチトール純度を向上させることに成功
し、本発明を完成するに至った。
【0022】第1に、高純度マルチトールを製造するに
あたり、イ)マルトース純度が80重量%以上の澱粉糖
化物に水素添加する第1工程、ロ)第1工程で得られた
水素添加物にグルコアミラーゼを作用させるか、または
グルコアミラーゼ及び枝切り酵素を作用させて重合度3
以上の糖アルコールを加水分解する第2工程、ハ)第2
工程で得られた加水分解物に酵母を作用させる第3工
程、上記三工程を逐次的に経由し、純度90重量%以上
のマルチトールを得ることを特徴とする、高純度マルチ
トールの製造方法。
【0023】第2に、高純度マルチトールを製造するに
あたり、イ)マルトース純度が80重量%以上の澱粉糖
化物に水素添加する第1工程、ロ)第1工程で得られた
水素添加物にグルコアミラーゼ及び酵母を作用させる
か、またはグルコアミラーゼ、枝切り酵素並びに酵母を
作用させて、重合度3以上の糖アルコールを加水分解・
醗酵させる第2工程、上記二工程を逐次的に経由し、純
度90重量%以上のマルチトールを得ることを特徴とす
る、高純度マルチトールの製造方法。
【0024】第3に、第1工程で得られた水素添加物の
還元糖含有率が0.01重量%以上で且つ2重量%未満
である、上記第1または第2の何れかに記載の高純度マ
ルチトールの製造方法。
【0025】第4に、酵母が、パン酵母、アルコール酵
母、清酒酵母から成る群より選ばれる1種または2種以
上である、上記第1〜第3の何れか一つに記載の高純度
マルチトールの製造方法。
【0026】ここで用いる澱粉糖化物は、マルトース純
度が80重量%以上であることが要求されるが、それ
は、純度が80重量%未満の場合には、得られたマルチ
トールの純度が90%重量を超えないことがあるためで
ある。
【0027】なお、純度が90重量%未満のマルチトー
ルを用いた場合には、無水結晶マルチトールやマルチト
ール含蜜結晶を製造できないことが多い。
【0028】しかし、マルトースの純度が80重量%以
上であることの他は、製造法や原料の由来、製造方法や
液状か固体かの別等に特別の制約が無く、単に酵素で糖
化しただけの液であっても構わないし、糖液にクロマト
分離や膜分離、結晶化操作などを加えた後のものであっ
てもよく、市販の安価なマルトースが有利に採用できる
が、マルトース以外の成分としてマルトトリオースやそ
れ以上の大きさの成分が多く存在したもののほうが、本
発明の効果が顕著に発揮される傾向があるので、一層有
利に採用できる。
【0029】このマルトース純度が80重量%以上であ
ることの他は特別な制約が無いということは、実質的に
は濃度20〜40%もの経済的な糖化濃度を採用して大
量に製造されている市販のマルトースが採用できるとい
うことであり、従来の方法に比べて極めて大きな経済的
進歩性を備えたものといえる。
【0030】本発明では、澱粉糖化物、即ち純度80重
量%以上のマルトース水溶液に水素添加するが、糖液が
不必要に分解せず、水素添加反応が進行する条件であれ
ば、糖液の濃度、触媒の種類、触媒の量、触媒の添加時
期、反応温度、反応時間、水素の圧力、水素添加反応の
方式などの水素添加条件に特別な制約は無い。
【0031】しかし、一般に、経済的に水素添加を実施
するには、マルトース水溶液の濃度は40〜70%程度
が適切であり、反応温度としては100〜160℃程度
が、水素圧力としては50〜200kg/cm2 程度が
それぞれ有利な条件であり、水素添加触媒としてはラネ
ーニッケルや各種貴金属触媒などが採用される場合が多
い。
【0032】このように条件を吟味して得られた水素添
加物は、殆ど熱とか酸による分解や加水分解等が起こら
ずに、元の糖がそれぞれ相当する糖アルコールに成る
が、第2工程又は第2、第3工程において収率を下げな
いためには、あまり極端に未還元成分が含まれないもの
が好ましく、好ましい未還元成分の含有範囲は0.01
〜5重量%程度、更に好ましくは、水素添加反応条件の
温和さも加味すると0.05〜2重量%である。
【0033】本発明の第1工程で得られた水素添加物を
本発明の第2工程又は第2、第3工程に供する前に、活
性炭で脱色、脱臭を、イオン交換樹脂で脱イオン、脱色
をそれぞれ行うことによって本発明の第2工程又は第
2、第3工程を円滑に実行することができるが、本発明
の大きな特徴の一つは、この活性炭やイオン交換樹脂に
よる精製操作を必ずしも必要としないことであり、精製
操作を経由しない場合であっても、この後の操作に格別
の不都合は無い。
【0034】本発明で用いるグルコアミラーゼは、通常
の酵素反応環境、即ち温度25〜60℃程度で、pHが
4〜7、基質濃度、つまり、水素添加物の濃度が20〜
60%のときに、水素添加物中の水素添加オリゴ糖分子
や水素添加多糖分子のエキソ(Exo)側から作用して
α1−6結合及びα1−4結合を加水分解する性能を有
するものであれば、その他の制約は特に無いが、中でも
リゾプス属(Rhizopus)やアスペルジルス属
(Aspergillus)などのカビ由来のものが入
手しやすいなどの理由から有利に採用可能である。
【0035】本発明でグルコアミラーゼを単独で又は枝
切り酵素と共に用いる場合には、水素添加物の固形分1
gあたり、グルコアミラーゼの活性として4単位(u)
〜40u程度が使用量として有利であり、4u未満の場
合には大分子の成分が減少しない他に、酵素反応に要す
る時間が長くなりがちで製造効率の側面から好ましくな
く、40uを超えて使用した場合は酵素量の増加に見合
ったマルチトール純度の向上効果が得られないことが多
く経済的な側面から好ましくない。
【0036】本発明で用いる枝切り酵素は、グルコアミ
ラーゼの場合と同様の環境下で、水素添加物中の水素添
加オリゴ糖分子や水素添加多糖分子α1−6結合を加水
分解する性能を有するものであれば、その他の制約は特
に無いが、該分子のエンド(Endo)側から作用して
α1−6結合を加水分解する性能を有するものとして、
アエロバクター属(Aerobactor)などの細菌
由来イソアミラーゼや細菌由来のプルラナーゼがある。
【0037】本発明で枝切り酵素を用いる場合には、グ
ルコアミラーゼと併用することによって水素添加オリゴ
糖や水素添加多糖からマルチトール分子を多く遊離させ
ることができるので好ましく、その場合の枝切り酵素の
使用量は、水素添加物の固形分1gあたり、プルラナー
ゼの活性として0.4u〜4u程度が適切であり、0.
4u未満の場合には分枝構造が減少しないことの他に、
酵素反応に長い時間を要することから好ましくなく、4
uを超えて使用した場合には酵素量に見合った分枝構造
の減少が観測されないので不経済である。
【0038】また、枝切り酵素としてイソアミラーゼを
用いた場合も同程度の酵素使用量で良いが、プルラナー
ゼの場合よりもやや多くの酵素活性を要求される場合が
多い。
【0039】本発明で用いる酵母は、通常の醗酵条件、
即ち、基質濃度20〜60%、温度25〜40℃、程度
の条件で前記酵素反応の結果放出されるブドウ糖などの
糖類を醗酵させ、アルコールと二酸化炭素を生ずる働き
を有するものであればブドウ酒酵母などでもよいが、そ
れらの中でもサッカロミセス・セレビシエ(Sacch
aromyces cerevisiae)に属する各
株が本発明の効果を十分に発揮すること等の理由から有
利に採用可能であり、取り分け、パン酵母、アルコール
酵母、清酒酵母、ビール酵母が有利である。
【0040】本発明に用いる酵母の使用量は、被醗酵反
応物の固形分1gあたり、乾燥酵母重量として0.1〜
1重量%が好ましいが、0.1重量%未満の場合にはマ
ルチトール製品中に未還元糖が残存することがあった
り、十分に醗酵するまでに長い時間を要することがある
などの理由から好ましくなく、1重量%を超えて用いた
場合には、未還元糖を資化するに必要な以上の酵母を消
費することになり、経済的に意味が無いので好ましくな
い。
【0041】本発明を実施するうえで、第2工程におい
て酵素反応と同時に酵母を作用させることも可能で、そ
の場合には酵母を作用させる時間を節約することができ
るし、工程が一つ減少することにより、手間も省ける
が、酵母の活性を損なわないように、酵素反応の温度を
25〜40℃程度に抑制する必要があるので、第3工程
で酵母を作用させる場合よりも、グルコアミラーゼや枝
切り酵素の使用量をやや多めにすることが望ましい。
【0042】尚、本発明に係る酵素反応や、酵母による
資化反応は、回分式で実施することは勿論、酵素や酵母
を担体に付着させて固定床方式で連続的に実施すること
も可能であり、その場合には、高い生産効率や操作の省
力化等が実現できる。
【0043】以上のように、工程に実施上の困難さの無
い本発明を実施することによって、従来クロマト分離法
を採用することによって余儀なくされた濃度低下が殆ど
無しに、本発明の効果である、顕著なマルチトール純度
の向上が経済的に有利に得られるが、例えば、市販の純
度90重量%のマルトースを用いた場合には純度96〜
98重量%程度のマルチトールが、市販の純度95重量
%のマルトースを用いた場合には純度97.5〜98.
5重量%程度のマルチトールがそれぞれ得られる。
【0044】従って、この後、それ自体は公知の、混
和、混捏、浸漬、浸透、散布、噴霧、乾燥、塗布、被
覆、注入、晶出、固化などの工程を経由することによっ
て各種飲食物、飼料、化粧品、医薬品、成形物などにそ
の製品が完成するまでの工程で適用して本発明によって
得られた高純度マルチトールを含有させることができ、
それ自体は公知の工程を経由することによって無水結晶
マルチトール又はマルチトール含蜜結晶を製造すること
もできる。
【0045】
【実施例1】
【0046】マルトースが90.7重量%(以下、単に
%と表示する)、ブドウ糖が0.5%、3糖以上のオリ
ゴ糖が8.8%の糖組成を有する市販のマルトース70
%水溶液[日本食品化工(株)製]1.55kgと水20
0gの混合液にラネーニッケル触媒40gを加え、水酸
化ナトリウム水溶液でpHを7に調整した後、容積2.
4リットルの電磁撹拌式パドル型撹拌翼付きステンレス
製オートクレーブに入れ、水素圧150kg/cm2
撹拌速度700rpm、温度130℃で50分間第1工
程である水素添加反応を行った。
【0047】反応終了後、冷却して内容物を取り出し、
触媒をろ去して水素化液を得た後、液体クロマトグラフ
ィーにて組成を測定したところ、ソルビトールが1.0
%、マルチトールが90.4%、重合度3以上の糖アル
コールが8.6%であり、未還元糖を測定したところ
0.02%であった。
【0048】次に、この水素化液の濃度を40%に調整
し、そのうちの500gを1リットルの三つ口フラスコ
に入れ、市販のグルコアミラーゼ[長瀬産業(株)製、シ
ルバラーゼ]0.8ml[グルコアミラーゼとして26
40単位(u)及びプルラナーゼとして240uの混合
物]を加えてpHを6に調整し、55℃にて24時間酵
素を作用させて第2工程を行い、その後液を95℃まで
加熱して酵素を失活させた後に得られた酵素反応液の糖
組成を測定した結果、ソルビトール1.5%、マルチト
ール93.4%、重合度3以上の糖アルコールが0.8
%であり、ブドウ糖が4.3%であった。
【0049】更に、酵素反応液を36℃に保ち、パン酵
母1.2gを加えて、撹拌しながら、24時間酵母を作
用させて第3工程を行った後、粉末活性炭[武田薬品工
業(株)製、しらさぎ]4gを加えて50℃に加熱して3
0分間撹拌し、ろ過して得られたろ液をイオン交換樹脂
で脱塩処理し、70%まで濃縮して257gの本発明の
高純度マルチトールを得た。
【0050】該マルチトールの組成は、ソルビトールが
1.5%、マルチトールが97.6%、重合度3以上の
糖アルコールが0.9%であった。
【0051】
【実施例2】
【0052】実施例1と同様に処理して濃度40%の水
素化液を調製し、そのうちの500gを容積1リットル
の三口フラスコに入れ、市販のグルコアミラーゼ[天野
製薬(株)製、グルコザイム]0.8ml(グルコアミラ
ーゼとして3520u)を加え、pHを6.0に調整し
て55℃で24時間酵素を作用させた結果、ソルビトー
ルが1.6%、マルチトールが92.6%、重合度3以
上の糖アルコールが1.9%で、ブドウ糖が3.9%の
組成を有する酵素反応液を得た。
【0053】次いで、酵素反応液を95℃まで加熱して
酵素活性を失わせ、36℃に保ちながら市販のパン酵母
1.2gを加えて24時間酵母を作用させた後、粉末活
性炭4g[武田薬品工業(株)製、しらさぎ]を加えて5
0℃にて30分間撹拌し、その後活性炭をろ去してイオ
ン交換樹脂で脱塩し、70%まで濃縮して260gの本
発明の高純度マルチトールを得た。
【0054】該マルチトールの組成は、ソルビトールが
1.7%、マルチトールが96.3%、重合度3以上の
糖アルコールが2.0%であった。
【0055】
【実施例3】
【0056】実施例1と同様にして調製した濃度40%
の水素化液に市販のグルコアミラーゼ[長瀬産業(株)
製、シルバラーゼ]2ml及び市販のパン酵母1.2g
を加え、pHを6.0に調整しながら36℃で24時間
撹拌して酵素と酵母を作用させ、次に、95℃で5分間
加熱撹拌した後、冷却して組成を測定した結果、得られ
た本発明の高純度マルチトールの組成は、ソルビトール
が1.4%、マルチトールが97.1%、重合度3以上
の糖アルコールが1.5%であった。
【0057】
【実施例4】
【0058】水素化反応の温度が120℃、水素圧力1
00kg/cm2 、ラネーニッケル触媒の量が30g、
反応時間が60分である他は実施例1と同様にして、ソ
ルビトール1.0%、マルチトール89.3%、重合度
3以上の糖アルコールが8.5%であり、未還元糖が
1.2%の水素化反応液を得た。
【0059】第2工程及び第3工程を実施例1と同様に
行い、濃度70%の本発明の高純度マルチトール254
gを得たが、その組成は、ソルビトールが1.9%、マ
ルチトールが97.1%、重合度3以上の糖アルコール
が1.0%であった。
【0060】
【実施例5】
【0061】パン酵母を日本酒酵母[オリエンタル酵母
(株)製、水分50%]4.0gに代えた他は実施例1と
同様に各工程を実施した結果、濃度70%で259gの
本発明の高純度マルチトールを得たが、その組成は、ソ
ルビトールが1.4%、マルチトールが97.7%、重
合度3以上の糖アルコールが0.9%であった。
【0062】
【実施例6】
【0063】原料としてマルトースが86.2%、ブド
ウ糖が1.6%、3糖以上のオリゴ糖が12.2%の糖
組成を有する市販のマルトース70%水溶液を用いた他
は全て実施例1と同様に第1工程を経由させた結果、ソ
ルビトールが1.7%、マルチトールが86.1%、重
合度3以上の糖アルコールが12.2%であった。
【0064】次に、グルコアミラーゼとしてシルバラー
ゼ1.2mlを用いた以外は実施例1と同様にして第2
工程を実施し、ソルビトールが1.8%、マルチトール
が85.8%、重合度3以上の糖アルコールが4.3%
で、ブドウ糖が8.1%の組成を有する酵素反応液を得
た。
【0065】更に、撹拌時間を48時間とした他は実施
例1と同様に第3工程を実施して、濃度70%の本発明
の高純度マルチトール水溶液を得たが、その組成は、ソ
ルビトールが2.0%、マルチトールが93.3%、重
合度3以上の糖アルコールが4.7%であった。
【0066】次いで、該高純度マルチトールを60℃ま
で加温し、純度96.5%のマルチトール含蜜結晶[東
和化成工業(株)製、アマルティMR100]1gを添加
して穏やかに撹拌しながら48時間かけて30℃まで冷
却して晶析し、マルチトールマスキットを得た。
【0067】該マスキットをバスケット型遠心分離器で
ろ過し、減圧下に80℃で乾燥し、61.5gの無水結
晶マルチトールを得た。
【0068】得られた無水結晶マルチトールの組成を測
定した結果、ソルビトール0.5%、マルチトール9
8.2%、重合度3以上の糖アルコール1.3%であっ
た。
【0069】
【実施例7】
【0070】実施例1と同一操作を繰り返して得た濃度
70%の高純度マルチトール水溶液257gを60℃ま
で加温し、純度99.9%の無水結晶マルチトール1g
を種結晶として添加し、穏やかに撹拌しながら36時間
かけて30℃まで冷却して晶析し、マルチトールマスキ
ットを生成させ、次いで、遠心分離器でろ過し、減圧下
に80℃で乾燥して98.3gの無水結晶マルチトール
を得た。
【0071】この無水結晶マルチトールの純度を測定し
た結果、99.95%であった。
【0072】
【比較例1】
【0073】水を3重量部とした他は特公昭63−24
39号公報の実施例2に記載の方法に準じて加熱糊化し
ようとしたが、粘度が極めて高いため、DE5〜10程
度まで液化しなければ取扱うことができず、DEが抑え
られなかったために、その後の工程で高い純度のマルト
ースを生成させることが不可能であった。
【0074】
【発明の効果】
【0075】以上に説明したように、本発明を実施する
ことにより、経済的に有利な高い濃度で糖化処理され、
市販されているマルトース純度80〜90%程度の安価
な原料を用いて、クロマト分離操作を経由しないので濃
度を大幅に下げず、且つ経済的にマルチトール純度を向
上することが可能になり、その結果、本発明によって得
られた高純度マルチトールからそれ自体は公知の方法で
無水結晶マルチトールやマルチトール含密結晶を調製す
ることが出来る。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 高純度マルチトールを製造するにあた
    り、 イ)マルトース純度が80重量%以上の澱粉糖化物に水
    素添加する第1工程、 ロ)第1工程で得られた水素添加物にグルコアミラーゼ
    を作用させるか、またはグルコアミラーゼ及び枝切り酵
    素を作用させて重合度3以上の糖アルコールを加水分解
    する第2工程、 ハ)第2工程で得られた加水分解物に酵母を作用させる
    第3工程、 上記三工程を逐次的に経由し、純度90重量%以上のマ
    ルチトールを得ることを特徴とする、高純度マルチトー
    ルの製造方法。
  2. 【請求項2】 高純度マルチトールを製造するにあた
    り、 イ)マルトース純度が80重量%以上の澱粉糖化物に水
    素添加する第1工程、 ロ)第1工程で得られた水素添加物にグルコアミラーゼ
    及び酵母を作用させるか、またはグルコアミラーゼ、枝
    切り酵素並びに酵母を作用させて、重合度3以上の糖ア
    ルコールを加水分解・醗酵させる第2工程、 上記二工程を逐次的に経由し、純度90重量%以上のマ
    ルチトールを得ることを特徴とする、高純度マルチトー
    ルの製造方法。
  3. 【請求項3】 第1工程で得られた水素添加物の還元糖
    含有率が0.01重量%以上で且つ2重量%未満であ
    る、請求項1または2の何れかに記載の高純度マルチト
    ールの製造方法。
  4. 【請求項4】 酵母が、パン酵母、アルコール酵母、清
    酒酵母から成る群より選ばれる1種または2種以上であ
    る、請求項1〜3の何れか一つに記載の高純度マルチト
    ールの製造方法。
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