JPH07121244A - ファジー温度制御システム - Google Patents

ファジー温度制御システム

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JPH07121244A
JPH07121244A JP26868093A JP26868093A JPH07121244A JP H07121244 A JPH07121244 A JP H07121244A JP 26868093 A JP26868093 A JP 26868093A JP 26868093 A JP26868093 A JP 26868093A JP H07121244 A JPH07121244 A JP H07121244A
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寿明 河野
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晴彦 畑野
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Abstract

(57)【要約】 【目的】冷却時の応答を速めることにより、制御精度を
高める。 【構成】ファジールールを偏差−変化速度平面に予め展
開したルックアップテーブル10を参照しつつ加熱と冷
却とを行う温度制御システムに適用し、積分部7によっ
て、目標温度と制御対象の実測温度との偏差を積分す
る。また2種の係数a,bがa<bなる関係にあると
き、積分項演算部8において、実測温度が目標温度より
高いときには、係数aと偏差積分値との積を演算し、そ
の他のときには係数bと偏差積分値との積を演算する。
そして制御値演算部12において、ルックアップテーブ
ル10を参照することにより得られたファジー推論値と
積分項演算部8の出力とを加算し、加算結果を制御値と
する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ファジールールを偏差
−変化速度平面に予め展開したルックアップテーブルと
制御対象の実測温度に基づく偏差およびその変化速度と
を、設定されたパラメータを介して対応付けることによ
り、制御対象の温度を制御する温度制御システムに関す
る。
【0002】
【従来の技術】ファジー温度制御システムの従来技術で
は、目標温度に対する偏差と、偏差の変化速度とに基づ
くファジールールを、偏差−変化速度平面のルックアッ
プテーブルとして予め展開している。そして、目標温度
と制御対象の実測温度との偏差および偏差の変化速度
を、オートチューニング等の方法により得られたパラメ
ータを介してルックアップテーブルに対応付けている。
そして、偏差と変化速度とが得られたとき、これらの値
に対応するファジー推論値をルックアップテーブルから
読み出し、読み出した値に基づく温度制御を行ってい
る。
【0003】またファジー推論値は速度制御値であり、
速度制御方式に伴う誤差の蓄積(定常偏差)が生じるこ
とから、この蓄積を補正するため、偏差の積分値に係数
を乗じることにより得られた値をルックアップテーブル
から読み出した値に加算し、加算結果を制御のための値
としている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら制御対象
の加熱と冷却とにおいては、冷却能力が加熱能力より高
く、図6に示したように、冷却速度の方が加熱速度より
速い。その結果、目標温度>実測温度の関係の成立する
期間が、目標温度<実測温度の成立する期間より長くな
る。つまり上記構成を用いた場合では、偏差積分値は加
熱を強める値側に偏ることとなり、ファジー推論値が冷
却を指示する値となる場合でも、制御値は加熱を示す値
となり、冷却時の応答が遅くなるという問題を生じてい
た。
【0005】また冷却を指示するファジー推論値を直接
に偏差積分値(係数との積)に加算する場合、制御対象
に生じる無駄時間と冷却能力の高さとから、冷却出力が
過多となる(図7において符号92は無駄時間の無い制
御対象の温度変化を示し、符号91は無駄時間を有する
制御対象の温度変化を示している)。そのためハンチン
グの値が増大し、制御精度が低下するという問題を生じ
ていた。
【0006】また制御対象の温度制御には、偏差のパラ
メータ、偏差の変化速度のパラメータ、および偏差積分
値に乗じられる係数との3種の値が使用される。そのた
め制御対象の応答速度を変更しようとする場合、その変
更の度合いに対応してこれら3種の値を変更する必要が
ある。しかしながら、この変更を行うには、各値の意味
を理解している必要があり、現場の操作者では変更が困
難であるという問題を生じていた。
【0007】本発明は上記課題を解決するため創案され
たものであり、請求項1記載の発明の目的は、目標温度
と実測温度との関係に応じて、偏差積分値に乗じられる
係数を変更し、冷却時の応答を速めることによって、制
御精度を高めることのできるファジー温度制御システム
を提供することにある。
【0008】また請求項2記載の発明の目的は、冷却用
のファジー推論値に圧縮操作を加えて冷却時の出力過多
を防止することにより、ハンチングを少なくして、制御
精度を高めることのできるファジー温度制御システムを
提供することにある。
【0009】また請求項3記載の発明の目的は、予め設
定された値による応答速度を基準として、その変更の方
向と度合いとが入力されると、予め設定された値を入力
に応じた値に自動変更することにより、制御対象の応答
速度の変更を容易にすることのできるファジー温度制御
システムを提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
請求項1記載の発明のファジー温度制御システムは、フ
ァジールールを偏差−変化速度平面に予め展開したルッ
クアップテーブルを参照しつつ加熱と冷却とを行う温度
制御システムに適用しており、目標温度と制御対象の実
測温度との偏差を積分する積分部と、予め設定された2
種の係数をa,b(a<b)とするとき、実測温度が目
標温度より高いときには、係数aと積分部の出力との積
の演算を行い、その他のときには係数bと積分部の出力
との積の演算を行う積分項演算部と、ルックアップテー
ブルを参照することにより得られたファジー推論値と積
分項演算部の出力とを加算し、加算結果を制御値として
出力する制御値演算部とを備えた構成としている。
【0011】また請求項2記載の発明のファジー温度制
御システムは、ファジールールを偏差−変化速度平面に
予め展開したルックアップテーブルを参照しつつ加熱と
冷却とを行う温度制御システムに適用しており、ルック
アップテーブルを参照することにより得られた冷却用の
ファジー推論値に対し、そのファジー推論値の絶対値の
小ささに対応して率が増加する圧縮率でもってファジー
推論値を圧縮する推論値圧縮部と、目標温度と制御対象
の実測温度との偏差を積分する積分部と、この積分部の
出力と予め設定された係数との積を演算する積分項演算
部と、推論値圧縮部の出力と積分項演算部の出力とを加
算し、加算結果を制御値として出力する制御値演算部と
を備えた構成としている。
【0012】また請求項3記載の発明のファジー温度制
御システムは、ファジールールを偏差−変化速度平面に
予め展開したルックアップテーブルと、目標温度と制御
対象の実測温度との偏差およびその変化速度とを、予め
設定されたパラメータを介して対応付けることにより得
られるファジー推論値に、偏差の積分値と係数との積を
加算した値を制御値として、制御対象の温度を制御する
温度制御システムに適用しており、パラメータと係数と
を用いて制御対象を制御したときの制御対象の応答速度
を基準として、応答速度の変更の方向および度合いを示
す記号を表示する表示部と、この表示部に表示にされた
記号を指定する変更入力部と、パラメータおよび係数の
値を、変更入力部により指定された記号に対応した値に
変更する値変更部とを備えた構成としている。
【0013】
【作用】請求項1記載の発明の作用を以下に示す。
【0014】加熱能力に比して冷却能力の側が大きい
と、実測温度が目標温度より低い時間が多く、積分値と
係数との積はかなりの加熱を指示する値となる。そのた
め冷却が開始されるためには、ルックアップテーブルか
ら送出される冷却用の出力値が、加熱を指示する積の値
より大きくなる必要がある。
【0015】このため実測温度が目標温度より高くなる
場合には、積分値に乗じられる係数を、値bより小なる
値aとすると、積分値と係数との積(加熱を指示する
値)はその値を減じることとなる。つまり冷却用のファ
ジー推論値が小さな値の場合でも、制御値は冷却を指示
する値となり、速やかに冷却が開始されることとなる。
【0016】請求項2記載の発明の作用を以下に示す。
【0017】冷却能力が高い場合、ファジー推論値が緩
やかな冷却を指示する値(絶対値の小さな値)であって
も、冷却はやや急速であり、制御対象の温度が急速に低
下する。
【0018】しかしファジー推論値を推論値圧縮部を用
いて圧縮した場合、緩やかな冷却を指示するファジー推
論値(絶対値が小さな値)は、より小さくなる方向に圧
縮され、極めて緩やかな冷却を指示する値となる。その
ため制御対象の温度低下は緩やかとなる。また冷却用の
ファジー推論値が急速な冷却を指示する値(絶対値が大
きい)の場合では、圧縮率が小さくなるため、冷却能力
の最大値は損なわれない。
【0019】請求項3記載の発明の作用を以下に示す。
【0020】応答速度を変更するに際して、表示部で
は、予め設定された値を用いた場合の制御対象の応答速
度を基準として、応答速度の変更の方向と度合いとを示
す記号が表示される。この表示は、応答がより速い方が
望ましいのか、あるいは少し遅くするのが望ましいのか
といった、現場における感覚に対応した記号の表示とな
る。そしてこの表示部に表示された記号から、望ましい
変更を示す記号を変更入力部を用いて入力すると、値変
更部は、パラメータおよび係数の値を、変更の方向と度
合いとに対応する値に変更する。そのため制御対象の応
答速度は、指示された応答速度となる。つまり応答速度
の変更に際し、現場の操作者にとっては、パラメータの
変更、あるいは積分値に乗じられる係数の変更という、
制御の専門的知識を必要とするデータの変更が不要とな
る。
【0021】
【実施例】以下に、本発明の一実施例について図面を参
照しつつ説明する。
【0022】図1は、本発明のファジー温度制御システ
ムの一実施例の電気的構成を示すブロック線図である。
【0023】図において、設定値記憶部3は、オートチ
ューニングにより得られた出力13により与えられるパ
ラメータ、あるいは変更入力部2において入力されたパ
ラメータと係数(加熱時の偏差を示すパラメータEh、
変化速度を示すΔEh、積分値に乗じられる2種の係数
a,b、冷却時のパラメータEc、変化速度を示すパラ
メータΔEc)を記憶するブロックとなっている。
【0024】設定値記憶部3からの出力が導かれた表示
部1は、図5にその画面構成を示すように、設定された
パラメータおよび係数を用いた制御時の応答速度を基準
として、応答速度の変更の方向および度合いを示す記号
を表示するブロックである。そして、この表示において
は、記号である数値『3』は、基準の応答速度でもって
の制御となることを示す。また記号としての数値が小さ
くなるのに対応して応答速度がより遅くなり、数値が増
加すると応答速度がより速くなることを示す。また画面
の切り換えを行った場合では、各種パラメータと係数と
の各値、および温度制御に必要なその他の数値等の表示
が行われる。
【0025】変更入力部2は、キーボードからなる入力
手段であり、表示部1に表示された応答速度の変更の方
向、およびその度合いの指示が入力されると共に、パラ
メータ等の数値の入力に使用されるブロックであり、そ
の出力を設定値記憶部3と値変更部4とに送出する。
【0026】設定値記憶部3と双方向に接続された値変
更部4は、変更入力部2により指定された記号に対応し
て、設定値記憶部3に記憶されたパラメータおよび係数
の値を対応する数値に変更するブロックである。
【0027】制御対象9の温度を検出する温度検出器5
は、熱電対をセンサとする検出器であり、検出値を実測
温度として温度処理部6に送出する。
【0028】設定値記憶部3からの出力が導かれた温度
処理部6は、設定値記憶部3に記憶された目標温度と実
測温度との偏差の演算、および偏差の変化速度の演算を
行うブロックである。また温度処理部6は、これらの演
算結果を、パラメータを用いて処理し、ルックアップテ
ーブル10に送出する。また偏差については、積分部7
と積分項演算部8とに送出する。
【0029】積分部7は、温度処理部6から送出される
偏差の積分を行うブロックとなっており、積分値を積分
項演算部8に送出する。
【0030】積分項演算部8は、設定値記憶部3に記憶
された2種の係数a,bがa<bなる関係にあるとき、
偏差の符号に従い、実測温度が目標温度より高いとき
(図4の期間t1により示す)には、係数aと積分部7
の出力との積の演算を行い、その他のときには係数bと
積分部7の出力との積の演算を行うブロックである。そ
して、その演算結果を制御値演算部12に送出する。
【0031】つまり期間t1において制御値演算部12
に送出される値は、符号52により示すように、加熱を
示す値とはなっているが、その値は小さく、冷却用のフ
ァジー推論値が制御に効果的に現れるようにする値とな
っている(同図の符号51により示す値は、積分値に乗
じる値を係数bのみとした場合の期間t1の積を示して
いる)。
【0032】制御値演算部12の出力が導かれた制御対
象9は、無駄時間+二次遅れ系の制御対象であるパイプ
の押出成形機の金型であり、原料の樹脂を溶融するため
の加熱装置と、溶融した樹脂の発熱に対応するための冷
却装置とを備えたブロックとなっている。
【0033】温度処理部6の出力が導かれたルックアッ
プテーブル10は、目標温度と実測温度との偏差、およ
びその変化速度とに基づくファジールールを、偏差−変
化速度平面に予め展開したデータテーブルであり、その
ファジー推論値は−1〜1の範囲にある。
【0034】積分項演算部8の出力と推論値圧縮部11
の出力とが導かれた制御値演算部12は、推論値圧縮部
11より与えられる演算値Bと積分項演算部8から送出
される値とを加算し、加算結果を制御値として制御対象
9に送出するブロックとなっている。
【0035】ルックアップテーブル10の出力が導かれ
た推論値圧縮部11は、ルックアップテーブル10から
出力される冷却用のファジー推論値に対し、そのファジ
ー推論値の絶対値の小ささに対応して率が増加する圧縮
率でもってファジー推論値を圧縮するブロックである
(ただし、加熱用のファジー推論値については圧縮を行
わない)。
【0036】図3は、推論値圧縮部11における圧縮率
の変化を示す説明図となっており、同図を参照しつつ、
より詳細に説明する。
【0037】推論値圧縮部11は、横軸により示される
ファジー推論値が与えられると、与えられたファジー推
論値を、二次曲線61を介して縦軸に投映し、投映され
た縦軸における値を圧縮値として送出する。つまりファ
ジー推論値の絶対値をAにより示すと、B=−A2 なる
演算を行う。そして演算結果Bを制御値演算部12に送
出する。
【0038】いま、例えば、ルックアップテーブル10
から送出されるファジー推論値が50%の冷却(ファジ
ー推論値=−0.5)を指示する値であるとすると、圧
縮結果は−0.25となり、25%の冷却を指示する値
に圧縮される。
【0039】以上の構成からなる本発明の一実施例につ
いて、以下に動作を説明する。
【0040】まず表示部1の表示を、図2(a)に示す
コンディション画面として、温度制御であることを設定
する(温調セット)と共に、目標温度を設定する。また
パラメータの設定にはオートチューニングを用いること
を指示する。
【0041】次いで表示を図2(b)に示す制御パラメ
ータ画面とし、オートチューニング時における仮の目標
温度と実際の目標温度との差異を設定する(ATバイヤ
ス値)。またオートチューニングを行わない場合には、
各種パラメータと係数とを設定する。また冷却ゲインを
設定する。そして表示を図2(c)に示す制御周期画面
として、加熱と冷却とのそれぞれにおける各周期を設定
する。
【0042】以上の設定とオートチューニングとによ
り、設定値記憶部3には、加熱時の偏差のパラメータE
h、変化速度のパラメータΔEh、2種の係数a,b
(但しa<b)、冷却時の偏差のパラメータEc、変化
速度のパラメータΔEcの各値、および制御に必要なそ
の他の値が記憶される。
【0043】上記記憶が完了すると温度制御の動作が開
始され、温度処理部6は、温度検出器5が検出した実測
温度から、偏差と、偏差の変化速度とを演算し、偏差に
ついては、これを積分部7と積分項演算部8とに送出す
る。
【0044】また設定値記憶部3に記憶されたパラメー
タ(EhあるいはEc)と偏差との演算、パラメータ
(ΔEhあるいはΔEc)と変化速度との演算を行い、
演算結果をルックアップテーブル10に送出する。その
ためルックアップテーブル10は、この演算結果に従っ
たファジー推論値を推論値圧縮部11に送出する。
【0045】いまルックアップテーブル10から送出さ
れるファジー推論値が、50%の加熱を示す値(0.
5)であるとすると、推論値圧縮部11は、その値に対
して圧縮を行うことなく制御値演算部12に送出する。
一方、ルックアップテーブル10からのファジー推論値
が、50%の冷却を示す値(−0.5)であるとする
と、図3に示した方法でもってファジー推論値の圧縮を
行い、圧縮結果である−0.25を制御値演算部12に
送出する。
【0046】また積分部7は、温度処理部6より与えら
れる偏差の積分を行い、積分結果を積分項演算部8に送
出する。そのため積分項演算部8は、温度処理部6から
与えられる偏差が正の値であるときには、実測温度<目
標温度であるとして、積分値と係数bとの積を演算し、
制御値演算部12に送出する。また偏差が負の値である
ときには、実測温度>目標温度であり、冷却が行われる
として、積分値と係数aとの積を演算し、演算結果を制
御値演算部12に送出する。
【0047】制御値演算部12は、積分項演算部8にお
いて演算された積と推論値圧縮部11の出力とを加算
し、加算結果を制御値として制御対象9に送出すること
により、金型の温度を制御する。
【0048】以上の動作による温度制御において、その
制御が適切でなく、応答速度を変更する必要が生じたと
きには、表示部1における画面表示を、図5に示す表示
に切り換える。
【0049】このとき、応答速度を示すカーソル51
は、設定された値に従った制御(基準値による制御)と
なっていることを示すため、数値『3』を示している。
この状態において変更入力部2を操作することにより、
望ましい応答速度を示す数値にカーソルを移動させる。
そして入力キーを押す。この動作により、値変更部4に
は、応答速度の変更を示す段階値が送出される。
【0050】表示された数値『1』〜数値『5』のそれ
ぞれは、段階値1〜5に対応しており、各段階値1〜5
は、値変更部4では、(0.5)(0.75)(1)
(1.5)(2)の各値に対応している。そのため値変
更部4は、設定値記憶部3からパラメータを読み出し、
読み出した値と段階値に対応する数値とを乗じる演算を
行う。また係数を読み出し、読み出した係数を段階値に
対応する値でもって除する演算を行う。そしてその演算
結果を、実使用すべきパラメータ値および係数値とし
て、設定値記憶部3に送出し、記憶させる。
【0051】例えば、ラインC1の加熱側応答に対応す
る記号として数値『1』が指定されたとすると、設定値
記憶部3にラインC1における加熱の偏差のパラメータ
Eh、変化速度のパラメータΔEhの各値に0.5を乗
じ、加熱時の係数bを0.5で除する。そして各演算結
果を設定値記憶部3に送出し、記憶させる。
【0052】また冷却側応答の記号である数値『4』が
指定された場合では、冷却の偏差のパラメータEc、変
化速度のパラメータΔEcの各値に1.5を乗じる演算
を行うと共に、係数aを1.5で除する演算を行う。そ
して演算結果を設定値記憶部3に送出し、記憶させる。
【0053】上記動作によりパラメータと係数とが変更
されると、この時以後、設定値記憶部3は、値の変更さ
れたパラメータについては、これを温度処理部6に送出
し、係数については、これを積分項演算部8に送出す
る。また変更以前の初期の設定値については、これを内
部に保持する。
【0054】上記動作の結果、以後における温度制御
は、変更されたパラメータと係数とに基づく制御とな
る。
【0055】つまり図5に示す画面において、遅くなる
数値(『1』または『2』)を指定するのみで、応答速
度が遅くなる温度制御が実行されることとなり、速くな
る数値(『4』または『5』)を指定するのみで、応答
速度が速くなる制御が行われる。つまり応答速度の変更
に際し、現場の操作者にとっては、パラメータの変更、
あるいは積分値に乗じられる係数の変更という、制御の
専門的知識を必要とするデータの変更が不要となる。
【0056】なお本発明は、上記実施例に限定されず、
推論値圧縮部11については、ファジー推論値の絶対値
を2乗することにより、ファジー推論値を圧縮する構成
とした場合について説明したが、本実施例では、この圧
縮率を変更することが可能となっており、制御パラメー
タ画面における冷却ゲインの項目にて、数値『3』が入
力された場合、その圧縮率は絶対値を3乗する圧縮率と
なる。また数値『1.5』が入力された場合、その圧縮
率は絶対値を1.5乗する圧縮率となり、圧縮率が低い
ものとなる。
【0057】
【発明の効果】請求項1記載の発明に係るファジー温度
制御システムは、積分部によって、目標温度と制御対象
の実測温度との偏差を積分している。また2種の係数
a,bがa<bなる関係にあるとき、積分項演算部にお
いて、実測温度が目標温度より高いときには、係数aと
偏差積分値との積を演算し、その他のときには係数bと
偏差積分値との積を演算している。そしてルックアップ
テーブルを参照することにより得られたファジー推論値
と積分項演算部の出力とを加算し、加算結果を制御値と
している。そのため目標温度と実測温度との関係に応じ
て、偏差積分値に乗じられる係数が変更され、この結果
として冷却時の応答が速められることになるので、制御
精度を高めることが可能となっている。
【0058】また請求項2記載の発明のファジー温度制
御システムは、推論値圧縮部において、ルックアップテ
ーブルを参照することにより得られた冷却用のファジー
推論値に対し、そのファジー推論値の絶対値の小ささに
対応して率が増加する圧縮率でもって圧縮を施してい
る。そして制御値演算部において、偏差積分値と係数と
の積と、圧縮されたファジー推論値とを加算し、加算結
果を冷却時の制御値としている。そのため微少冷却時の
出力過多が防止されることとなり、制御精度を高めるこ
とが可能となっている。
【0059】また請求項3記載の発明のファジー温度制
御システムは、表示部において、予め設定されたパラメ
ータおよび係数を用いた場合の制御対象の応答速度を基
準として、応答速度の変更の方向および度合いを示す記
号を表示している。またこの表示部に表示にされた記号
を指定する変更入力部を設けている。そして値変更部に
おいて、変更入力部により指定された記号に対応して、
パラメータおよび係数の値を変更している。そのため応
答速度の変更に必要となるパラメータと係数との変更
が、応答速度の変更方向とその度合いとの指定のみで自
動変更されることから、制御対象の応答速度の変更を容
易にすることが可能となっている。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のファジー温度制御システムの一実施例
の電気的構成を示すブロック線図である。
【図2】初期値設定のための各画面を示す説明図であ
る。
【図3】推論値圧縮部におけるファジー推論値の圧縮の
様子を示す説明図である。
【図4】偏差積分値に乗じられる係数を変化させたとき
の偏差積分値と係数との積の変化を示す説明図である。
【図5】応答速度を変更するとき、表示部に表示される
画面を示す説明図である。
【図6】従来技術における実測温度と偏差積分値との関
係を示す説明図である。
【図7】無駄時間を有する制御対象と無駄時間の無い制
御対象との温度変化の相違を示す説明図である。
【符号の説明】
1 表示部 2 変更入力部 3 設定値記憶部 4 値変更部 6 温度処理部 7 積分部 8 積分項演算部 9 制御対象 10 ルックアップテーブル 11 推論値圧縮部 12 制御値演算部

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ファジールールを偏差−変化速度平面に
    予め展開したルックアップテーブルを参照しつつ加熱と
    冷却とを行う温度制御システムにおいて、 目標温度と制御対象の実測温度との偏差を積分する積分
    部と、 予め設定された2種の係数をa,b(a<b)とすると
    き、前記実測温度が前記目標温度より高いときには、係
    数aと前記積分部の出力との積の演算を行い、その他の
    ときには係数bと前記積分部の出力との積の演算を行う
    積分項演算部と、 前記ルックアップテーブルを参照することにより得られ
    たファジー推論値と前記積分項演算部の出力とを加算
    し、加算結果を制御値として出力する制御値演算部とを
    備えたことを特徴とするファジー温度制御システム。
  2. 【請求項2】 ファジールールを偏差−変化速度平面に
    予め展開したルックアップテーブルを参照しつつ加熱と
    冷却とを行う温度制御システムにおいて、 前記ルックアップテーブルを参照することにより得られ
    た冷却用のファジー推論値に対し、そのファジー推論値
    の絶対値の小ささに対応して率が増加する圧縮率でもっ
    て前記ファジー推論値を圧縮する推論値圧縮部と、 目標温度と制御対象の実測温度との偏差を積分する積分
    部と、 この積分部の出力と予め設定された係数との積を演算す
    る積分項演算部と、 前記推論値圧縮部の出力と前記積分項演算部の出力とを
    加算し、加算結果を制御値として出力する制御値演算部
    とを備えたことを特徴とするファジー温度制御システ
    ム。
  3. 【請求項3】 ファジールールを偏差−変化速度平面に
    予め展開したルックアップテーブルと、目標温度と制御
    対象の実測温度との偏差およびその変化速度とを、予め
    設定されたパラメータを介して対応付けることにより得
    られるファジー推論値に、前記偏差の積分値と係数との
    積を加算した値を制御値として、制御対象の温度を制御
    する温度制御システムにおいて、 前記パラメータと前記係数とを用いて前記制御対象を制
    御したときの制御対象の応答速度を基準として、前記応
    答速度の変更の方向および度合いを示す記号を表示する
    表示部と、 この表示部に表示にされた記号を指定する変更入力部
    と、 前記パラメータおよび前記係数の値を、前記変更入力部
    により指定された記号に対応した値に変更する値変更部
    とを備えたことを特徴とするファジー温度制御システ
    ム。
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