JPH07118264A - ピロリンカルボン酸誘導体の金属錯体及びその用途 - Google Patents

ピロリンカルボン酸誘導体の金属錯体及びその用途

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JPH07118264A
JPH07118264A JP26512893A JP26512893A JPH07118264A JP H07118264 A JPH07118264 A JP H07118264A JP 26512893 A JP26512893 A JP 26512893A JP 26512893 A JP26512893 A JP 26512893A JP H07118264 A JPH07118264 A JP H07118264A
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JP26512893A
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Hisami Matsunaga
久美 松永
Yukio Kimura
行男 木村
Chisako Itami
千佐子 伊丹
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OSAKA GOSEI YUKI KAGAKU KENKYU
OSAKA GOSEI YUKI KAGAKU KENKYUSHO KK
Original Assignee
OSAKA GOSEI YUKI KAGAKU KENKYU
OSAKA GOSEI YUKI KAGAKU KENKYUSHO KK
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【構成】 2−(2−ピリジル)−1−ピロリン−5−
カルボン酸又はそのエステルもしくはそれらの塩と遷移
金属塩(但し、2価鉄の塩を除く)との反応生成物から
なるピロリンカルボン酸誘導体の金属錯体、及び2−
(2−ピリジル)−1−ピロリン−5−カルボン酸又は
そのエステルもしくはそれらの塩と遷移金属塩との反応
生成物からなるピロリンカルボン酸誘導体の金属錯体を
有効成分として含有してなるスーパーオキシドジスムタ
ーゼ様作用組成物。 【効果】 本発明の金属錯体は、水に溶けやすく、強力
なSOD様活性を有する。従って、取り扱いが容易であ
り、活性酸素が関与すると考えられる各種疾患の予防又
は治療に有用である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ピロリンカルボン酸誘
導体の金属錯体及びその用途に関する。より詳細には、
本発明は、強力なスーパーオキシドジスムターゼ様活性
を有する2−(2−ピリジル)−1−ピロリン−5−カ
ルボン酸又はそのエステルと遷移金属イオンとの金属錯
体に関する。
【0002】
【従来の技術】L−2−(2−ピリジル)−1−ピロリ
ン−5−カルボン酸は、シマン(Shiman)とニーランズ(N
eilands)によってピリミンと命名された公知の化合物で
あり、この化合物は、ハイルブキング(Heilbking) とヴ
ィスコンチニ(Viscontini)がプロフェロロサミンと命名
したものや、ファイスナー(Feistner)らがプロフェロロ
サミンAと命名したものと同一の化合物である。
【0003】また、2価鉄に3モルのピリミンが配位し
て形成された金属錯体は、赤紫色色素として公知であ
る。2価鉄に3モルのD−2−(2−ピリジル)−1−
ピロリン−5−カルボン酸が配位して形成された金属錯
体も、ネオプルプラチンという名称で公知の赤紫色色素
である。ネオプルプラチンに関しては、食用色素として
の基礎的諸性質(例えば、溶解性、pH安定性、熱安定
性等)及び安全性等が検討されており、マウスの雄性に
よる急性毒性試験を経口及び静脈内投与で行った結果
は、7日間判定で経口の場合のLD50値は10g/kg以
上、静脈内投与の場合のLD50値は3.141mg/kgであり、
突然変異誘発性試験を行った結果は、エイムス試験にお
いて突然変異誘発を認めず、S−9添加による代謝活性
化試験においても陰性であったと報告されている(「微
生物の産生する赤紫色物質ネオプルプラチンの食用色素
としての評価」日本食品工業学会誌30巻、5号、270〜2
75頁、1983年参照)。
【0004】しかしながら、ネオプルプラチンがスーパ
ーオキシド様活性を有することに関する報告はなされて
いない。活性酸素とは、大気中の通常の酸素よりも活性
な状態にある酸素種のことをいい、酸素分子にさらに1
個の電子が入ったスーパーオキシドアニオン(O2 -)、
酸素分子の2個の不対電子が対をなして一方の酸素原子
のπ軌道に入り、他方の軌道が空になった一重項酸素(
12)、ヒドロキシルラジカル(・OH)、過酸化水素
(H22)及び種々の酸素ラジカルがある。
【0005】生体は、これらの活性酸素により生じる障
害に対して、極めて優れた防御システムを構築して自ら
を守っている。これらの防御システムの1つとして、生
体内において何らかの酸化反応や酸素添加反応によって
生じたこれらの活性酸素は、細胞内外に存在する低分子
・高分子ラジカルスカベンジャーにより消去される。こ
のような生体内ラジカルスカベンジャーには、例えばス
ーパーオキシドジスムターゼ(以下、SODと略す)、
α−トコフェロール、カタラーゼ、グルタチオン−ペル
オキシダーゼ及びグルタチオンS−トランスフェラーゼ
等がある。
【0006】しかしながら、虚血−再灌流あるいは炎症
等により浸潤した白血球の呼吸爆発等によって大量の活
性酸素が発生した場合、生体内の活性酸素消去能では処
理できなくなり、その結果蓄積した活性酸素は、生体膜
及び組織を攻撃して種々の反応を起こしてそれらを傷害
し、病的状態を引き起こすものと考えられている。攻撃
されるものは一般に脂質、糖、蛋白質及び核酸であり、
脂質及び糖の過酸化、蛋白質の変性、酵素の不活性化、
DNA鎖の切断、及び核酸塩基の修飾等が起こる。一
方、活性酸素は殺菌及び制ガン的にも働き、生体に有益
な一面も有している。このように、活性酸素は種々の疾
患の発症・進展に深く関わっていることが知られてい
る。
【0007】そこで、過剰の活性酸素の攻撃から生体を
守るために、ラジカルスカベンジャーを医薬として用い
ることが考えられており、ラジカルスカベンジャーとし
て作用する(即ち、SOD様活性を有する)低分子化合
物や高分子化合物の研究・開発が進められている。SO
D様活性を有する低分子化合物としては、例えば脳及び
心臓の虚血性疾患領域で開発中のエブセレン;脳代謝改
善作用を有し、脳代謝・精神症状改善剤として臨床使用
されているイデベノン;アスコルビン酸誘導体;及び動
脈硬化症及び高脂質血症等の治療剤として臨床使用され
ているプロブコール等が知られている。また、種々の非
ステロイド性抗炎症剤(例えば、ピロキシカム及びケト
プロフェン等)がヒト末梢血好中球でのスーパーオキシ
ド産生を抑制することが報告されている。最近では、抗
リウマチ剤として臨床使用されているスルファサラジン
においても、抗リウマチ作用の1つとして抗酸化作用が
提唱されている。
【0008】更に、SOD様活性を有する低分子化合物
として、近年、デスフェリオキサミン(Desferrioxamin
e) −マンガン錯体〔フリドビィチ(Fridovich)ら、Ach
iv. of Biochem. and Biophys., 271, 149-156, 1989
〕、テトラキス−N,N,N’,N’−(2−ピリジ
ルメチル)エチレンジアミン(TPEN)−鉄(II)錯
体(長野ら、J. Biol. Chem., 244, 6049-6055, 1989)
、及びセイレン(Salen) −マンガン錯体〔ブドリ−(Bu
dry)ら、Biochem. Biophys. Res. Comun., 192, 964-9
68, 1993 〕が報告されている。
【0009】SOD様活性を有する高分子化合物として
は、ヒトあるいはウシ由来の種々のSOD製剤が開発さ
れている。これらのSOD製剤は、心虚血性疾患、リウ
マチ及び膝の変形性関節症の治療剤として用いられてい
る。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、SOD
製剤には、SODが蛋白であるために、そのままでは経
口投与できず、静脈内投与した場合においては、その分
子量(16000×2)が小さいために腎で糸球体濾過されて
血中濃度が速やかに低下し(半減期が数分)、生体内で
有効な抗酸化作用を発現できない等の問題点がある。
【0011】そこで、SOD製剤を局所投与したり、血
中半減期を延長すべくSODを化学修飾すること等が試
みられているが、それによって活性が低下したり、絶体
的な化学構造が不明になる等の問題点が残されている。
また、SOD製剤には、それが例えばウシ由来のような
ヒトと異種のものに由来するときアレルギー発現の可能
性を完全には否定できず、高分子に由来する副作用があ
ることや、ヒト由来のSODにおいては薬効が弱い等の
問題点もある。
【0012】一方、SOD様活性を有する公知の低分子
化合物においては、何れも水にやや難溶性であり、その
モル当たりのSOD様活性も天然のSODに比べると低
い等の問題点がある。SOD様活性を有する化合物は、
活性酸素が関与していると考えられる各種疾患の予防又
は治療に有用であるために、モル当たりのSOD様活性
がより強く、水に易溶である化合物の開発が望まれてい
る。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記問題
点を鑑み鋭意研究を重ねた結果、優れたSOD様活性を
有し、かつ水に易溶性である、2−(2−ピリジル)−
1−ピロリン−5−カルボン酸又はそのエステルと遷移
金属イオンとの金属錯体を見い出し、本発明を完成する
に至った。
【0014】本発明によれば、2−(2−ピリジル)−
1−ピロリン−5−カルボン酸又はそのエステルもしく
はそれらの塩と遷移金属塩(但し、2価鉄の塩を除く)
との反応生成物からなるピロリンカルボン酸誘導体の金
属錯体が提供される。また、本発明によれば、2−(2
−ピリジル)−1−ピロリン−5−カルボン酸又はその
エステルもしくはそれらの塩と遷移金属塩との反応生成
物からなるピロリンカルボン酸誘導体の金属錯体を有効
成分として含有してなるスーパーオキシドジスムターゼ
様作用組成物が提供される。
【0015】2−(2−ピリジル)−1−ピロリン−5
−カルボン酸(以下、PPCと略す)又はそのエステル
にはD型及びL型の2種の光学活性体が存在し、本発明
には、これらの光学活性体やラセミ混合物と遷移金属イ
オンとの金属錯体も包含される。本発明の金属錯体は、
遷移金属イオンに対する2−(2−ピリジル)−1−ピ
ロリン−5−カルボン酸又はそのエステルの配位数が異
なる2種以上の金属錯体の混合物であってもよく、遷移
金属イオンが異なる2種以上の金属錯体の混合物であっ
てもよい。
【0016】本発明の2−(2−ピリジル)−1−ピロ
リン−5−カルボン酸のエステルの好ましい例として
は、酸素原子が介在していてもよい脂肪族炭化水素ある
いは芳香族炭化水素の水素原子を水酸基で置換したアル
コールから誘導されるエステルが挙げられる。本発明に
おけるPPC又はそのエステルの塩としては、例えばア
ルカリ金属塩(例えばリチウム、カリウム、ナトリウム
等)、アルカリ土類金属塩(例えばマグネシウム、カル
シウム等)、無機塩(例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、硫
酸塩、硝酸塩、リン酸塩等)、及び有機塩(例えば酢酸
塩、酒石酸塩、クエン酸塩、フマール酸塩、マレイン酸
塩、トルエンスルホン酸塩、メタンスルホン酸塩等)が
挙げられる。
【0017】本発明における遷移金属塩としては、PP
C又はそのエステルと錯体を形成しうる遷移金属の塩
で、かつ水性媒体中で所望の遷移金属イオンを放出しう
る塩であれば、特に限定されない。遷移金属塩の好まし
い例としては、例えば硫酸鉄(FeSO4)、塩化第二
鉄(FeCl3)、硫酸銅(CuSO4)、塩化第一銅
(CuCl)、塩化マンガン(MnCl2)、塩化コバ
ルト(CoCl2)、硫酸ニッケル(NiSO4)、塩化
亜鉛(ZnCl2)等が挙げられる。これらの遷移金属
塩は、無水物であってもよく、水和物であってもよい。
【0018】本発明の金属錯体は、一般には、下記一般
式(I)
【0019】
【化2】 〔式中、Rは水素原子、又は酸素原子が介在していても
よい脂肪族炭化水素残基あるいは芳香族炭化水素残基
を、Meは遷移金属イオン(但し、2価鉄の塩を除く)
を、nは1〜4の整数を、mは2〜6の整数を示す〕で
表わされる金属錯体からなる。
【0020】一般式(I)の各定義において、詳細は次
の通りである。まず、Rの定義を詳細に説明する。「酸
素原子が介在していてもよい脂肪族炭化水素残基」にお
ける脂肪族炭化水素残基の好ましい例としては、アルキ
ル基、アルケニル基及びシクロアルキル基等が挙げられ
る。また、これらの脂肪族炭化水素残基は、酸素原子が
介在していてもよい。酸素原子が介在している脂肪族炭
化水素残基の好ましい例としては、アルキルオキシアル
キル基、アシルオキシアルキル基等が挙げられる。
【0021】上記「アルキル基」の好ましい例として
は、直鎖状もしくは分枝鎖状の炭素数1〜8を有するア
ルキル基が挙げられ、具体的には、メチル、エチル、プ
ロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチ
ル、tert−ブチル、n−アミル、イソアミル、ヘキシ
ル、ヘプチル、オクチル等が挙げられる。上記「アルケ
ニル基」の好ましい例としては、1個の二重結合を含有
する直鎖状もしくは分枝鎖状の炭素数2〜8を有するア
ルケニル基が挙げられ、具体的には、ビニル、プロペニ
ル(例えばアリル等)、ブテニル、メチルプロペニル、
ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル等が
挙げられる。
【0022】上記「シクロアルキル基」の好ましい例と
しては、炭素数3〜8を有するシクロアルキル基が挙げ
られ、具体的には、シクロプロピル、シクロブチル、シ
クロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シク
ロオクチル等が挙げられる。上記「アルキルオキシアル
キル基」の好ましい例としては、例えばメトキシエチ
ル、エトキシメチル、プロピルオキシメチル、ブチルオ
キシメチル、ペンチルオキシメチル、ヘキシルオキシメ
チル等が挙げられる。
【0023】上記「アシルオキシアルキル基」の好まし
い例としては、例えばピバロイルオキシメチル、アセト
キシメチル等が挙げられる。「芳香族炭化水素残基」の
好ましい例としては、炭素数6〜12を有するアリール基
及びアラルキル基等が挙げられる。上記「アリール基」
の好ましい例としては、例えばフェニル、トリル、キシ
リル、クメニル、メシチル、ビフェニリル、ナフチル等
が挙げられる。
【0024】上記「アラルキル基」の好ましい例として
は、例えばベンジル、フェネチル等が挙げられる。これ
らの基は、生体内で無毒性であるのが好ましい。一般式
(I)の定義中、Rとしては、水素原子及び低級アルキ
ル基(炭素数1〜8を有するアルキル基)が好ましく、
それらのなかで、水素原子及びメチル基が特に好まし
い。
【0025】次に、一般式(I)のMeで示される遷移
金属イオンの好ましい例としては、1価の銅イオン、2
価の銅イオン、2価のマンガンイオン、4価のマンガン
イオン、2価のニッケルイオン、2価のコバルトイオ
ン、2価の亜鉛イオン及び3価の鉄イオン等が挙げられ
る。これらの遷移金属イオンうち、1価の銅イオン、2
価の銅イオン、3価の鉄イオンが特に好ましい。
【0026】本発明における金属錯体は、以下のように
して形成さすことができる。まず、PPCは、公知の方
法、例えばシマンらの方法(Biochemistry,4, 2233-223
6,1965)に従って、ピコリン酸メチルとN−トリチル−
L−グルタミン酸メチルをクライゼン縮合する方法等に
よって化学的に合成することができる。また、PPC
は、ピリミンの金属錯体を生産する公知の菌株(例え
ば、Biosci. Biotech. Biochem., 57, 495-496, 1993及
びPeptide Chemistry 1992 ,589-592 ,1993参照)から
得ることもできる。
【0027】PPCのエステル体は、例えばブレンナー
(Brenner) とフッバー(Hubber)の方法(M. Brenner及び
W. Hubber、Helv. Chim. Acta., 36, 1109, 1953)に
従って、PPCを、そのエステル体を形成さすのに用い
るアルコールに懸濁し、その懸濁液に塩化チオニルを添
加する方法等によって合成することができる。このよう
にして合成されたPPCのエステル体は、例えば逆相高
速液体クロマトグラフィー〔カラム:YMC-Pack ODS SH-
343、移動相:メタノール/水(90/10)〕によって精製
することができる。上記のようにして合成されたPPC
又はそのエステルは、所望により、当該分野で一般的に
用いられている常法に従って、その塩に変換することが
できる。
【0028】この発明の金属錯体は、PPC又はそのエ
ステルもしくはそれらの塩と遷移金属塩とを、水性媒体
中で混合することによって形成さすことができる。具体
的には、例えば水性媒体中に予めPPC又はそのエステ
ルもしくはそれらの塩を溶解させて、その溶液に固体の
遷移金属塩又は固体の遷移金属塩を水性媒体に溶解させ
た溶液を加えて混合する方法や、あるいは上記のような
固体の遷移金属塩又は固体の遷移金属塩を水性媒体に溶
解させた溶液に、PPC又はそのエステルもしくはそれ
らの塩を水性媒体に溶解させた溶液を加えて混合する方
法等がある。
【0029】水性媒体としては、例えば水、pH2〜8
の緩衝液、水と水溶性有機溶媒との混合液等が挙げられ
る。使用する水溶性有機溶媒としては、PPCのエステ
ルを溶解することができる水溶性有機溶媒であれば特に
限定されない。水溶性有機溶媒の好ましい例としてはア
ルコールが挙げられ、アルコールの好ましい例として
は、メタノール、エタノール、プロパノール等が挙げら
れる。また、水と混合する水溶性有機溶媒の量は、混合
液の総容量に対して約5〜50%(V/V)が適切であ
り、約10%(V/V)が好ましい。
【0030】使用するpH2〜8の緩衝液の好ましい例
としては、例えばリン酸塩緩衝液、クエン酸塩緩衝液、
トリス塩酸塩緩衝液等が挙げらる。PPC又はそのエス
テルもしくはそれらの塩が水に難溶性である場合には、
予め少量の水溶性有機溶媒に溶解させ、それを水又はp
H2〜8の緩衝液等に加えるのが好ましい。
【0031】また、遷移金属塩が水性媒体に難溶性の場
合には、固体の遷移金属塩を直接PPC又はそのエステ
ルもしくはそれらの塩の溶液(以下、PPC溶液と略
す)に加えることができ、混合後、完全に遷移金属塩が
溶解するまで攪拌することが必要である。遷移金属塩が
水性媒体に溶けやすい場合には、固体の遷移金属塩を直
接PPC溶液に加えてもよく、遷移金属塩を水性媒体に
溶解させた溶液をPPC溶液に加えてもよい。
【0032】上記反応における反応温度としては、約5
〜50℃が適切であり、約20〜30℃が好ましい。反
応時間としては、約2時間以上が適切であり、約15〜
20時間が好ましい。使用する遷移金属塩としては、前
述のように、錯体を形成させる遷移金属の塩であれば特
に限定されない。水性媒体中におけるPPC又はそのエ
ステルの濃度としては、約50mM以上が適切であり、
約100〜200mMが好ましい。また、水性媒体中に
おける遷移金属塩の濃度としては約50〜300mMが
適切であり、約100〜200mMが好ましい。
【0033】水性媒体中におけるPPC又はそのエステ
ルと遷移金属塩との混合割合は、一般的には形成させる
金属錯体のモル比であり、遷移金属塩を過剰量混合して
もよい。金属錯体の形成は、例えば色、紫外吸収スペク
トル及び逆相高速液体クロマトグラフィー〔カラム:YM
C-Pack ODS AM-312、移動相:メタノール/水(5/95)〕
等によって確認することができる。即ち、例えば2価又
は3価の鉄イオンにおいては、錯体が形成されると無色
の混合液がその錯体固有の赤紫色に着色するので、その
呈色によって金属錯体の形成を確認することができる。
また、一般に金属イオンは紫外領域にほとんど吸収を持
たないので、PPCの紫外吸収スペクトルのパターンと
異なる紫外吸収スペクトルのパターンが得られることに
よって、金属錯体の形成を確認することができる。更に
は、高速液体クロマトグラフィーで分析して、その保持
時間が、PPCの保持時間と異なること(一般的に、金
属錯体が形成されると、その保持時間は短くなる)によ
って確認することができる。
【0034】形成された金属錯体は、例えば、反応液を
そのまま凍結乾燥し、逆相高速液体クロマトグラフィー
〔カラム:YMC-Pack ODS SH-343、移動相:メタノール
/水(0.5/99.5)、波長:210nm〕に負荷することによ
って主成分を分取し、さらにそれを凍結乾燥する方法等
によって、非結晶性粉末状の金属錯体として得ることが
できる。
【0035】このようにして形成された金属錯体は、遷
移金属イオンに対するPPC又はそのエステルの配位数
が異なる2種以上の金属錯体の混合物である場合もあ
る。本発明の金属錯体は、水に溶けやすく、強力なSO
D様活性を有し、活性酸素が関与する各種疾患の予防又
は治療に有効である。また、本発明者らは、2−(2−
ピリジル)−1−ピロリン−5−カルボン酸又はそのエ
ステルと2価の鉄イオンとの金属錯体が強力なSOD様
活性を有することを見い出しており、これも本発明にお
けるSOD様作用組成物の有効成分として好ましい活性
化合物の1つである。
【0036】本発明の金属錯体を有効成分として含有し
てなるSOD様作用組成物は、ヒト等の哺乳動物に経口
的又は非経口的に投与することができる。経口投与する
場合の剤形の例としては、例えばS錠剤(糖衣錠、フィ
ルムコーティング錠を含む)、丸剤、顆粒剤、散剤、カ
プセル剤(ソフトカプセル剤を含む)、シロップ剤、乳
剤、懸濁剤等が挙げられる。また、非経口投与する場合
の剤形の例としては、例えば注射剤、注入剤、点滴剤、
坐剤等が挙げられる。
【0037】本発明の金属錯体を上記の剤形に製造する
方法としては、当該分野で一般的に用いられている公知
の製造方法を適用することができる。また、上記の剤形
に製造する場合には、必要に応じて、その剤形に製する
際に製剤分野において通常用いられる賦形剤、結合剤、
崩壊剤、滑沢剤、甘味剤、界面活性剤、懸濁化剤、乳化
剤等を含有させて製造することができる。更に、本発明
の金属錯体を上記の剤形に製造する場合には、所望によ
り、製剤分野において通常用いられる着色剤、保存剤、
芳香剤、矯味剤、安定剤、粘稠剤等を添加することがで
きる。
【0038】本発明の金属錯体は、安定かつ低毒性で安
全に使用することができる。その一日の投与量は患者の
状態や体重、遷移金属錯体の種類、投与経路等によって
異なるが、例えば経口投与の場合には、成人1日当たり
の投与量は約 0.1〜2mgが適切であり、約 0.5〜0.6mg
が好ましい。また、静脈注射する場合には、成人1日当
たりの投与量は約0.02〜0.4mg が適切であり、約 0.1〜
0.2mg が好ましい。上記の投与量の範囲では、毒性は見
られない。
【0039】以下実施例、試験例を示して、本発明をよ
り具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるも
のではないことはいうまでもない。
【0040】
【実施例】
実施例1PPCの合成 シマンらの方法に従って、以下のようにしてPPCを合
成した。 L−グルタミン酸ジメチルエステルの合成 ブレンナーとフッバーの方法に従い、冷却したメタノー
ル(85ml)中に塩化チオニル(20ml)を加えてよく混和
後、L−グルタミン酸(5.9g)を加え、室温で15時間撹
拌した。反応液を濃縮後エーテルを滴下し、結晶化し
た。さらにアセトンで再結晶し、L−グルタミン酸ジメ
チルエステル(7.6g)を得た(収率:89.9%)。 L−グルタミン酸ジメチルエステルのトリチル化 ゼルバス(Zelvas)とセオドロポーラス(Theodoropoul
ous)の方法に従い、L−グルタミン酸ジメチルエステル
(6.3g)を乾燥クロロホルム(50ml)に溶解し、トリエ
チルアミン(7.9g)及び塩化トリチル(10.0g)を加え、
室温で6時間振とうした。反応液は水で2回洗浄し乾燥
した。メタノールで再結晶し、N−トリチル−L−グル
タミン酸ジメチルエステル(9.8g)を得た(収率:66.2
%)。 PPCの合成 ピコリン酸メチルエステル(12.5g)、乾燥ブチルエーテ
ル(3.6ml)及び水素化ナトリウム(3.6g)を加え、窒素
ガス存在中100℃で撹拌した。N−トリチル−L−グル
タミン酸ジメチルエステル(9.8g)は、乾燥ブチルエー
テル(30ml)に溶解して徐々に滴下後、1時間撹拌し
た。反応終了後、沈澱はブチルエーテルに溶解し、氷水
を加えて水素化ナトリウムを分解し、さらにブチルエー
テルを加えて副反応物を除き、水層を6N塩酸でpH7
に調整後、クロロホルムで抽出し、このクロロホルム溶
液に3N塩酸を加え、2時間還流を続けた。反応液は同
量のベンジルアルコールで副反応物を抽出除去し、水層
を濃縮した。塩酸を加えてアセトンにより結晶化を行
い、粗製PPC(1.0g)を得た(収率:20%)。 PPCの精製 粗製PPCは、陽イオン交換樹脂クロマトグラフィー
(カラム:バイオラド、AG 50W-X4、移動相:水→3N
塩酸)及び逆相クロマトグラフィー(カラム:YMC-Pack
AM-324-10、移動相:0.01 N 塩酸含有5%メタノー
ル)により分離、精製した。
【0041】金属錯体混合物の合成 上記の方法を繰り返して十分な量のPPCを合成し、P
PCを塩酸塩に変換した。得られたPPCの塩酸塩と表
1に示される各種の金属塩を用いて、金属錯体混合物を
形成した。まず、表1に示された量のPPC塩酸塩を水
2mlに溶解し、その水溶液に、金属塩としてCuClを
用いる場合にはCuClの粉末を加え、他の金属塩を用
いる場合にはその水溶液を加えて混合した。これに、さ
らに水7mlを加えて室温で2時間放置した。金属塩の使
用量は表1に示された通りであり、金属塩の水溶液を加
える場合には、表1に示された量の金属塩を水1mlに溶
解した水溶液を加えた。CuClの粉末は、PPC水溶
液に添加した後直ちに溶解した。FeSO4・7H2Oを
用いたときには混合後瞬時に混合液の色が赤紫色とな
り、FeCl3・6H2Oを用いたときには、混合後約1
0分後から次第に混合液の色が赤紫色に変わり、2時間
の放置後、着色は一定となった。CuSO4・5H2O及
びCuClを用いたときには、混合液の色が薄青色に呈
色した。2時間の放置後、各混合液の紫外吸収スペクト
ルを測定し、その結果を図2〜9に示す。
【0042】図2は、PPCとFeSO4・7H2Oとか
ら形成された金属錯体の紫外吸収スペクトルを示す。図
3は、PPCとCuClとから形成された金属錯体の紫
外吸収スペクトルを示す。図4は、PPCとMnSO4
・5H2Oとから形成された金属錯体の紫外吸収スペク
トルを示す。
【0043】図5は、PPCとCoCl2・6H2Oとか
ら形成された金属錯体の紫外吸収スペクトルを示す。図
6は、PPCとNiSO4・6H2Oとから形成された金
属錯体の紫外吸収スペクトルを示す。図7は、PPCと
ZnCl2とから形成された金属錯体の紫外吸収スペク
トルを示す。
【0044】図8は、PPCとCuSO4・5H2Oとか
ら形成された金属錯体の紫外吸収スペクトルを示す。図
9は、PPCとFeCl3・6H2Oとから形成された金
属錯体の紫外吸収スペクトルを示す(過剰のFeCl3
・6H2O)。また、対照として、PPC水溶液の紫外
吸収スペクトルを測定し、図1にその結果を示す。な
お、使用した金属塩は、紫外領域にほとんど吸収を持た
ない。
【0045】
【表1】
【0046】図1〜9から、PPC塩酸塩と各金属塩と
を混合した後の混合液の紫外吸収スペクトルは、PPC
水溶液の紫外吸収スペクトルと異なる吸収パターンを示
すことが明らかである。従って、そのスペクトルの形状
の変化によって、金属錯体が形成されたことが確認され
た。また、鉄イオン又は銅イオンのように、錯体を形成
することによって着色するものに関しては、その着色に
よっても錯体の形成が確認された。
【0047】また、PPC塩酸塩とFeSO4・7H2
とを混合した混合液を高速液体クロマトグラフィー〔カ
ラム:Asahipak HIKARISIL-C18、移動相:2%メタノー
ル、波長:278nm、流速:0.5ml/min〕で分析し、その結
果を図11に示す。対照として、PPC水溶液を同様に
高速液体クロマトグラフィーで分析し、図10にその結
果を示す。
【0048】図10及び11から、PPCよりも保持時
間の短いPPC−鉄(II)錯体の形成が確認された。次
に、各混合液を凍結乾燥し、500μlの水に溶解して高
速液体クロマトグラフィー〔カラム:YMC-Pack ODS SH-
343、移動相:メタノール/水(0.5/99.5)〕に負荷して
主成分を分取し、これを凍結乾燥した。得られた粉末状
の金属錯体の収量は、表1に示された通りである。得ら
れたPPC−鉄(II)及びPPC−鉄(III)の粉末は赤
紫色で、PPC−銅(I)及びPPC−銅(II)の粉末
は微青色であった。
【0049】各粉末状の金属錯体の一定量を水に溶解し
て陽イオン交換樹脂〔バイオラド、AG 50W-X4 (3×280m
m)〕のH型に負荷し、1Mの塩酸及び3Mの塩酸で溶出
することによって、遷移金属イオンとPPCを分離し
た。分離したPPCをニンヒドリン比色法で、また分離
した遷移金属イオンを以下に示す方法でそれぞれ定量
し、PPCと金属イオンのモル比を算出した。その結果
は、表1に示された通りである。
【0050】鉄イオン:ヒドロキシルアミン−o−フェ
ナンスロリン法 銅イオン:ヒドロキシルアミン−ネオクプロイン法 マンガンイオン:ジフェニルチオカルバゾン法 コバルトイオン:ジフェニルチオカルバゾン法 ニッケルイオン:ジメチルグリオキシム法 亜鉛イオン:ジフェニルチオカルバゾン法 得られた赤紫色のPPC−鉄(III)粉末に関しては、紫
外及び可視の吸収スペクトルを測定し、その結果を図1
2に示す。図12から、PPC−鉄(III)が可視領域に
強い吸収を示すことがわかる。
【0051】実施例2PPC−メチルエステルの合成 PPCのメチルエステルを、以下の方法を用いて合成し
た。メタノール(10ml)をマイナス10℃に冷却し、撹拌
しながら塩化チオニル(2.6ml)を徐々に加えた。10分
後、実施例1で合成したPPCの塩酸塩(2.26g)を加
え、室温で15分間撹拌した。これを減圧濃縮し、残渣に
エーテルを加えて油状物質を得た。この油状物質を少量
のメタノールに溶解し、高速液体クロマトグラフィー
〔カラム:YMC-Pack ODS SH-343、移動相:メタノール
/水(90/10)〕に負荷して主成分を分取し、室温で減
圧下に濃縮、更に真空ポンプで3時間乾燥することによ
って、飴状のPPC−メチルエステル塩酸塩(1.90g)
を得た。
【0052】本品をTLC〔プレート:メルク シリカ
ゲル60F254、溶媒:n−ブタノール/酢酸/水(4/1
/3)の上層に5%ピリジン添加〕で展開し、プレート
をFeSO4で呈色した。PPC−メチルエステルのR
f値は0.31(PPCのRf値は0.09である)であった。
【0053】金属錯体混合物の合成 得られたPPC−メチルエステル塩酸塩(360mg)をメ
タノール(1ml)に溶解し、これにFeSO4・7H2
(139mg)を溶解した水(2ml)を加え、さらに水(7m
l)を加えて撹拌した。すると混合液は瞬間的に赤紫色
を呈した。
【0054】実施例1と同様に、高速液体クロマトグラ
フィー〔カラム:YMC-Pack ODS SH-343、移動相:メタ
ノール/水(60/40)〕に負荷して主成分を分取し、凍
結乾燥することによって、赤紫色の固体(280mg)を得
た。本品を実施例1と同様に処理してPPCと鉄イオン
を分離し、PPC及び鉄イオンを定量した結果、そのモ
ル比は3:1であった。本品の紫外吸収スペクトルを測
定し、その結果を図13に示す。
【0055】図13から、本品の紫外吸収スペクトルが
PPC単独のものと異なる吸収パターンを示したことに
よって、PPC−メチルエステルと鉄(II)との錯体の
形成が確認された。
【0056】試験例1 実施例1及び2で形成された金属錯体のSOD様活性
を、以下の方法(NBT法又はチトクロームC法)によ
って測定した。PPC−鉄(II)及びPPC−鉄(III)
についてはNBT法で、その他の金属錯体についてはチ
トクロームC法で測定し、その結果を表2に示す。
【0057】
【表2】
【0058】SOD活性の測定法としては、NBT法又
はチトクロームC法を用いた。これらの測定原理は、キ
サンチン/キサンチンオキシダーゼで発生するスーパー
オキシドアニオンが、チトクロームC又はニトロブルー
テトラゾリウム(NBT)の存在で酸化されてO2に変
換される反応において、その系にSOD活性が存在する
と、発生したスーパーオキシドアニオンがその活性によ
って消去され、スーパーオキシドアニオンが変換されて
生じるO2の発生が阻害されることに基づいている。O2
の発生が50%阻害された際の活性物質の濃度(μM)を
IC50値とした。
【0059】NBT法及びチトクロームC法の詳細は以
下のようである。 NBT法:0.05Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0又
は7.8)(52ml)、1%ゼラチン水溶液(20ml)、4単位
のキサンチンオキシダーゼを含むリン酸緩衝液(8ml)
及び316単位のカタラーゼを含む溶液(1μl)を混合
する。この溶液(2ml)に、0.4mMNBT(ニトロブ
ルーテトラゾリウム)(0.2ml)、各種濃度の金属錯体
(0.2ml)及び0.66mMキサンチン(0.5ml)を加える。
キサンチンの添加によって反応が開始されるが、25℃に
おいて540nmの吸光度の変化を3分間測定する。
【0060】チトクロームC法:0.05Mリン酸カリウム
緩衝液(pH7.0又は7.8)(22ml)、0.75mMキサンチ
ン(2ml)、0.15mMチトクロームC(酸化型)及び15
8単位のカタラーゼを含む溶液(1μl)を混合する。
この溶液(2.6ml)に、各種濃度の金属錯体(0.2ml)及
び0.008単位のキサンチンオキシダーゼを含むリン酸緩
衝液(0.2ml)を加える。このキサンチンオキシダーゼ
の添加で反応が開始されるが、25℃で550nmの吸光度
の変化を3分間測定する。
【0061】上記の2種の方法で測定した結果からIC
50値(50%阻害濃度)を算出するには、阻害率を縦軸、
金属錯体濃度(μM)の対数値を横軸として少なくとも
3種以上の濃度の異なる金属錯体溶液について阻害率
(%)を求め、グラフによってIC50値を求めた。対照
として、PPC単独及び関連化合物のIC50値を同様に
して求め、あわせて結果を表2に示す。
【0062】表2中、o−フェナンスロリン−銅(II)
は低分子SOD活性物質として報告されたものである
〔ヴァレンチン(Valentine)ら、J. Am. Chem. Sec., 9
7, 224-225, 1975〕。表2から、本発明の金属錯体が優
れたSOD様活性を有することがわかる。また、表中、
PPC−銅(II)のIC50値は0.11μM(pH7.0)で、
長野らのTPEN−鉄(II)のIC50値0.7μM(J. Bi
ol. Chem., 224, 6049-6055, 1989)に比べても非常に
優れている。各種PPC−金属錯体の抗菌・抗カビ活性
を調べたところ、100μg/ml程度でも全く認められ
なかった。
【0063】試験例2 サルモネラ エンテリチディス(Salmonella enteritid
is)を用いて、農薬パラコートの毒性解除実験を行っ
た。培地として、1リットル中に0.2gのMgSO4・7
2O、3.28gのクエン酸ナトリウム、10gのK2HP
4、2.2gの(NH42HPO4及び5gのグルコースを含
む合成培地を用いた。その培地に、5μMのパラコート
を加えて上記サルモネラ菌の発育を抑制させ、それに6.
2μM、12.5μM又は25μMのPPC−鉄(II)を添加
した。
【0064】6.2μM及び12.5μMのPPC−鉄(II)
の添加によって発育は次第に回復し、25μMのPPC−
鉄(II)の添加で完全に発育の回復が見られた。次に、
PPC−鉄(II)錯体の雄性マウスに対する急性毒性試
験を行った。その結果は、7日間判定で、経口投与の場
合のLD50値は5g/kg以上、静脈内投与の場合のL
50値は3mg/kgであった。
【0065】更に、PPC−鉄(II)水溶液を、瀉血し
て一時的に貧血を起こさせた雄性家兎群に1日1回1μ
g/kgの割合で投与した結果、PPC−鉄(II)水溶
液を投与しない対照群に比べて明瞭な体重増加が認めら
れた。パラコートの毒性は、活性酸素によっておこるこ
とが知られており、パラコートの添加によって阻害され
たサルモネラ菌の発育が本発明の金属錯体の添加によっ
て回復されたことから、活性酸素が関与する各種疾患の
治療に対する本発明の金属錯体の有用性が示唆された。
【0066】また、本発明の金属錯体のLD50値から、
その安全性が確認された。更には、インビボ(in vivo)
での試験においても、本発明の金属錯体の有用性が示唆
された。
【0067】
【発明の効果】本発明の金属錯体は、水に溶けやすく、
強力なSOD様活性を有する。従って、水に溶けやすい
ために取り扱いが容易であり、活性酸素が関与すると考
えられる各種疾患の予防又は治療に有用である。例え
ば、虚血性疾患、虚血−再灌流が関与する疾患、脳血管
障害、リウマチ性関節炎、膵炎、腎炎及び肝炎のような
炎症性疾患、癌、自己免疫疾患、インスリン依存性の真
性糖尿病、汎発性血管内凝固症候群、脂肪閉塞症、成人
及び幼児の呼吸困難症、新生児の脳出血、火傷、電離放
射線による悪影響、腎臓、肺、心臓、膵臓、肝臓又は皮
膚のような器官の移植、心臓手術、酸素ラジカルを産生
する有毒物質もしくは発癌物質で曝露されて生じる疾
患、スーパーオキシドラジカルによって誘発される内皮
由来の脈管弛緩因子の分解が関与する病理学的疾患等の
予防又は治療に有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】PPCの紫外吸収スペクトルを示す。
【図2】PPCとFeSO4・7H2Oとから形成された
金属錯体の紫外吸収スペクトルを示す。
【図3】PPCとCuClとから形成された金属錯体の
紫外吸収スペクトルを示す。
【図4】PPCとMnSO4・5H2Oとから形成された
金属錯体の紫外吸収スペクトルを示す。
【図5】PPCとCoCl2・6H2Oとから形成された
金属錯体の紫外吸収スペクトルを示す。
【図6】PPCとNiSO4・6H2Oとから形成された
金属錯体の紫外吸収スペクトルを示す。
【図7】PPCとZnCl2とから形成された金属錯体
の紫外吸収スペクトルを示す。
【図8】PPCとCuSO4・5H2Oとから形成された
金属錯体の紫外吸収スペクトルを示す。
【図9】PPCとFeCl3・6H2Oとから形成された
金属錯体の紫外吸収スペクトルを示す(過剰のFeCl
3・6H2O)。
【図10】PPCを高速液体クロマトグラフィーで分析
することによって得られたクロマトグラムを示す。
【図11】PPC−鉄(II)を高速液体クロマトグラフ
ィーで分析することによって得られたクロマトグラムを
示す。
【図12】PPC−鉄(III)の紫外及び可視の吸収スペ
クトルを示す。
【図13】PPC−メチルエステルと鉄(II)とから形
成された錯体の紫外吸収スペクトルを示す。

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 2−(2−ピリジル)−1−ピロリン−
    5−カルボン酸又はそのエステルもしくはそれらの塩と
    遷移金属塩(但し、2価鉄の塩を除く)との反応生成物
    からなるピロリンカルボン酸誘導体の金属錯体。
  2. 【請求項2】 一般式(I) 【化1】 〔式中、Rは水素原子、又は酸素原子が介在していても
    よい脂肪族炭化水素残基あるいは芳香族炭化水素残基
    を、Meは遷移金属イオン(但し、2価鉄の塩を除く)
    を、nは1〜4の整数を、mは2〜6の整数を示す〕で
    表わされる請求項1記載の金属錯体。
  3. 【請求項3】 遷移金属塩が、1価の銅、2価の銅、2
    価のマンガン、4価のマンガン、2価のニッケル、2価
    のコバルト、2価の亜鉛又は3価の鉄の塩である請求項
    1記載の金属錯体。
  4. 【請求項4】 一般式(I)において、Rが水素原子で
    ある請求項2記載の金属錯体。
  5. 【請求項5】 一般式(I)において、Rが低級アルキ
    ル基である請求項2記載の金属錯体。
  6. 【請求項6】 一般式(I)において、Rがメチル基で
    ある請求項5記載の金属錯体。
  7. 【請求項7】 2−(2−ピリジル)−1−ピロリン−
    5−カルボン酸又はそのエステルもしくはそれらの塩と
    遷移金属塩との反応生成物からなるピロリンカルボン酸
    誘導体の金属錯体を有効成分として含有してなるスーパ
    ーオキシドジスムターゼ様作用組成物。
JP26512893A 1993-10-22 1993-10-22 ピロリンカルボン酸誘導体の金属錯体及びその用途 Pending JPH07118264A (ja)

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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2009507865A (ja) * 2005-09-12 2009-02-26 メルク パテント ゲーエムベーハー 金属錯体

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