JPH07114694B2 - エンド−β−N−アセチルグルコサミニダ−ゼおよびその製造方法 - Google Patents

エンド−β−N−アセチルグルコサミニダ−ゼおよびその製造方法

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JPH07114694B2 JP60106734A JP10673485A JPH07114694B2 JP H07114694 B2 JPH07114694 B2 JP H07114694B2 JP 60106734 A JP60106734 A JP 60106734A JP 10673485 A JP10673485 A JP 10673485A JP H07114694 B2 JPH07114694 B2 JP H07114694B2
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Description

【発明の詳細な説明】 〔発明の目的〕 本発明は、新規酵素エンド−β−N−アセチルグルコサ
ミニダーゼ(以下endo−β−GlcNAcaseと略すこともあ
る)およびその製造法に関するものである。さらに詳し
くは、高マンノース型,混合型のN−アスパラギン結合
型糖鎖に対する広い基質特異性を有すると共に、糖タン
パク質の糖鎖に直接作用しうるエンド−β−N−アセチ
ルグルコサミニダーゼおよび微生物による製造法に関す
る。
(産業上の利用分野) 近年、生体内で複合糖質の糖鎖部分が細胞の分化・成
長、細胞間認識あるいは悪性腫瘍を含む多くの病気の発
症などに重要な役割をはたしていることが明らかにされ
てきた。これらの役割の解明には、その糖鎖構造の究明
が必要不可欠である。こうした糖鎖構造の解析には、複
合糖質の糖鎖構造に高い基質特異性を有する各種のグリ
コシダーゼが広く利用されている。
endo−β−GlcNAcaseは糖タンパク質に存在するN−ア
スパラギン結合型の糖鎖に作用して以下の様に糖鎖のN,
N′−ジアセチルキトビオース部分を加水分解する。
この様にendo−β−GlcNAcaseは糖タンパク質の糖鎖部
分をタンパク部分より遊離することができるため、糖タ
ンパク質糖鎖の構造解析に重要な手段を提供する酵素で
ある。
(従来の技術) (発明が解決しようとする問題点) 従来endo−β−GlcNAcaseとしては肺炎双球菌(Diploco
ccus pneumoniae)の生産するendo D(Koide,N&Murama
tsu,T.,J.Biol.Chem.249 4897−4904(1974)),Strept
omyces plicutusが生産するendo H(Tarentino,A.L.&M
aley,F,J,Biol.Chem.249 811−817(1974)),Clostrid
iumperfringensの生産するEndo−CI,CII(S.Ito,T.Mura
matsu,A.Kobata.,Arch.Biochem.Biophys.171 78(197
5)),Flavobacterium meningosepticunの生産するendo
F(Elder,J.H.&Alexander,S.,P oc.Natl,Acad.Sci.US
A 79 4540−4544(1982))などが知られている。これ
らの酵素は、糖ペプチドの高マンノース型,混合型のN
−アスパラギン結合型糖鎖のいずれか一方ないし両方に
作用するが天然の糖タンパクにはほとんど作用しないた
め、予めプロテアーゼによりグリコペプチドにしておく
必要がある。本発明酵素は両タイプの糖鎖に作用すると
ともに卵白アルブミンを含む天然の糖タンパクの糖鎖に
直接作用しうる点において従来知られている酵素とは異
なる新規な酵素である。
〔発明の構成〕
(問題点を解決するための手段) 本発明者らは糖タンパクのアスパラギン残基に結合して
いる糖鎖部分を特異的に切断し、天然の糖タンパク質糖
鎖にも作用するエンド−β−N−アセチルグルコサミニ
ダーゼを生産する菌を検索した結果、土壌より分離され
た細菌の培養物中に強い酵素活性を見出し、このような
微生物の培養物より単一の酵素蛋白質としてendo−β−
GlcNAcaseを得ることに成功し、本発明を完成するに至
った。
すなわち本発明は、高マンノース型,混合型,いずれの
N−アスパラギン結合型糖鎖にも作用し、かつ天然の糖
タンパク質糖鎖にintactの状態のまま作用する特徴を有
するendo−β−GlcNAcaseを提供するものである。
さらに、本発明はフラボバクテリウム属に属し、前記の
endo−β−GlcNAcase生産能を有する微生物を培養し、
培養物よりendo−β−GlcNAcaseを採取することを特徴
とするendo−β−GlcNAcaseの製造方法をも提供するも
のである。
本発明酵素は糖タンパク質糖鎖の内、N−アスパラギン
結合型糖鎖を特異的に切断する作用を有しなおかつ、タ
イプの異なる高マンノース型,混合型,のいずれの糖鎖
にも作用する特徴を有している。また、従来のendo−β
−GlcNAcaseが、糖タンパク質を予めプロテアーゼで処
理して糖ペプチドの形にしておかないと糖鎖をほとんど
切断できないのに対し、本発明酵素は天然の糖タンパク
質にも直接作用しうるなど極めて優れた性質を有してい
る。このように本発明酵素は従来見出されているendo−
β−GlcNAcaseとは異なった新しいタイプの基質特異性
を有している酵素であり、複合糖質の糖鎖構造の解析に
極めて有用である。
また、本発明酵素は菌体外に分泌される誘導酵素である
ため、容易にかつ多量の酵素蛋白を得ることができ、し
かも簡単に単一の酵素蛋白標品として精製することがで
きるため、糖鎖構造研究用の試薬として大量かつ安価な
供給が可能である。
以下、本発明の実施態様を更に詳細に説明する。後に示
す実施例の方法で製造したendo−β−GlcNAcaseの酵素
化学的および理化学的性質は下記のとおりである。
(作用) (1)酵素の作用 本発明酵素は、糖タンパク質のN−アスパラギン結合型
の糖鎖に作用して、以下の様に糖鎖のN,N′−ジアセチ
ルキトビオース部分を加水分解する。
(2)基質特異性 本発明酵素は、卵白アルブミンに含まれている異なった
種類のすべての糖鎖、すなわち高マンノース型,混合型
いずれのタイプのグリコベプタイドをも分解する。一
方、本発明酵素は卵白アルブミンそのものを基質とした
場合でも糖質を遊離することから天然の糖タンパク質に
対しても作用する。また本酵素は卵白アルブミンの他に
リボヌクレアーゼB(牛膵臓)や酵母インベルターゼの
糖鎖も遊離することが認められた。
(3)力価の測定法 酵素活性の測定は卵白アルブミンをプロナーゼ処理して
得られるグリコベプチドをダンシル化したDNS−グリコ
ペプチドを基質とし、pH6.0のリン酸カリウム緩衡液中3
7℃で反応を行ない、40%トリクロル酢酸を加えて反応
を停止させた後、生成するDNS−アスパラギン−N−ア
セチルグルコサミン(DNS−Asn−GlcNAc)をn−ブタノ
ール:アセトン:水(3:1:1)を展開剤とするペーパー
クロマトグラフィーにおいて分離し、水で抽出した後、
蛍光法にて定量する方法により行なった。酵素活性の単
位は1分間に1μmolのDNS−Asn−GlcNAcを遊離する酵
素量を1ユニットとした。
(4)至適pHおよび安定pH範囲 至適pHは第1図に示すとおりpH5.0〜6.0であり、安定pH
は4℃,48hrの処理条件の場合、pH5.0〜7.0であった。
なお第1図において使用した (5)作用適温の範囲 本発明酵素の作用適温の範囲は25〜60℃であり、作用至
適温度は50℃付近であった。(第2図) (6)温度による失活の条件 pH7.0において20〜80℃の各温度において10分間保持し
た後、残存する酵素活性を測定した。その結果、本発明
酵素は第3図に示したように40℃まで安定であり、80℃
で約30%の残存活性を示した。
(7)阻害,活性化及び安定化 本発明酵素に対する種々の添加物質の影響について検討
した結果を第1表に示した。本発明酵素を著しく活性化
する添加物質は存在しなかった。金属塩の中ではHgCl2
により85%の阻害が認められた。また、本発明酵素は他
のendo−β−GlcNAcaseが強く阻害を受けるマンノース
やマンナンにより何ら影響されなかった。
(8)精製方法 本発明酵素の精製は、塩析法,各種のクロマトグラフ法
等を適宜に組合わせて行なうことができる。精製の具体
例は実施例に示すとおりである。
(9)分子量 本発明酵素の分子量はセファデックスG−200を用いる
ゲル過法により約27,000,SDS−ポリアクリルアミドゲ
ル電気泳動法によって約30,000と算出された。
(10)ポリアクリルアミド電気泳動 精製された本発明酵素は、ポリアクリルアミド電気泳動
において単一のバンドを示した。
(11)等電点 アンフォラインを用いたクロマトフォーカシング法によ
り測定した結果pIは4.50であった。
(12)アミノ酸分析 精製酵素標品を6N−HCl中で110℃,24時間加水分解した
後アミノ酸自動分析機でアミノ酸組成を測定した。この
結果を第2表に示した。
次に本発明酵素を微生物の培養によって製造する方法を
具体的に示す。
本発明酵素の製造に使用される微生物はフラボバクテリ
ウム(Flavobacteriun)属に属し、本発明酵素を生産す
る能力を有するものであれば如何なるものでもよい。こ
のような微生物の具体例としては、本発明者らにより土
壌から分離された1022株があげられる。以下にこの菌株
の菌学的性質を記載する。
(1)形態学的性質 形:短桿 大きさ:0.4〜0.5×1.2〜1.5μm 運動性:なし 鞭毛:なし 胞子:なし グラム染色:陰性 (2)生育の状態 (イ)肉汁寒天平板培養 形状:小円形(粒状) 隆起:凸円状 周縁:全緑 表面:潤滑 (ロ)肉汁寒天斜面培養 発育の良否:適度 表面:潤滑 生育形状:糸状 色調:黄色 光沢:あり 透明度:半透明 (ハ)肉汁液体培養 表面の生育:なし 濁度:適度 沈殿:適度 (ニ)肉汁ゼラチン穿刺培養 生育の状態:表面のみ生育 ゼラチンの液化:陽性 (ホ)リトマス・ミルク 凝固:陰性 pH:酸性 (3)生理学的性質 硝酸塩の還元:− 脱窒反応:− MRテスト:− VPテスト:+ インドールの生成:− デンプンの加水分解:− クエン酸の利用:(Koserの培地)− :(Christensenの培地)− 無機窒素源の利用(生育) 塩化アンモニウム − 硝酸アンモニウム − 硝酸カリウム +w 色素の生成:+(非水溶性) オキシダーゼ:+ カタラーゼ:+ 生育pH:6.5〜7.5 生育至適温度:20〜30℃ 酸素に対する態度:通性好気性 O−Fテスト:Oxidative 糖類から酸及びガスの生成 糖 類 酸 ガス D−キシロース ± − D−グルコース ± − D−マンノース ± − D−フラクトース ± − D−ガラクトース ± − マルトース ± − シュークロース ± − ラクトース ± − グリセリン ± − デンプン ± − 以上のような菌学的性質を有する菌について、バージェ
ーズ・マニュアル・オブ・ディタミネーティブ・バクテ
リオロジー(第8版)の分類に従って同定したところ、
本菌株はフラボバクテリウム属に属するが、本菌株の特
徴に十分に合致する公知の種は見出せず、本菌株を新菌
株と同定し、フラボバクテリウム・エスピー1022(Flav
obacterium SP.1022)と命名した。本菌株は微生物工業
技術研究所に微工研菌寄第8201号として寄託されてい
る。
前記使用微生物の培養に用いる培地組成は、通常の微生
物の培養に用いられるものであれば特に限定されない。
炭素源としては、例えばグルコース,シュークロース,
アラビノース,フラクトース,マンニトール,イノシト
ール,可溶性澱粉,糖蜜,デキストリンなど、窒素源と
してはペプトン,肉エキス,酵母エキス,カザミノ酸,
コーンスティープリカー,各種アンモニウム塩,各種硝
酸塩,尿素等があげられる。その他必要に応じてリン
酸,マグネシウム,カリウム,ナトリウム,カルシウ
ム,マンガン,亜鉛,銅,鉄,モリブデン酸などの無機
塩類を適当に含有する培地などが用いられる。また、活
性汚泥をアルカリおよび酸で加水分解して得られる汚泥
抽出物を培地として利用することもできる。本発明酵素
は培地に酵母エキスを添加することによる誘導効果が認
められ0.1%添加で無添加の場合の約2〜3倍、1%添
加で約9倍の活性上昇が認められた。培養は培地を通常
の方法で滅菌し、本発明の菌株を接種し、20〜30℃,3〜
4日間振とうまたは通気撹拌により好気的に行なう。
本発明酵素は以下のようにして採取することができる。
すなわち培養終了後、遠心分離により菌体を除いた培養
上澄液に硫安等の無機塩を添加して生じる塩析物より分
離する方法、前記培養上澄液を限外過により濃縮する
方法などがある。本発明酵素は、これら塩析物あるいは
濃縮物から常法により精製される。以下、実施例により
本発明を更に詳細に説明するが、以下の実施例は本発明
の範囲を何ら限定するものではない。
〔実施例〕
グルコース0.5%、ペプトン0.5%、酵母エキス1.0%、
塩化ナトリウム0.5%を含む培地を容量2の振とうフ
ラスコ19本に各500ml分注し、120℃,15分間加圧滅菌し
た後、同じ組成の培地で前培養したフラボバクテリウム
・エスピー1022株を5ml接種し28℃で4日間振とう培養
した。培養終了後、遠心分離により菌体を除き培養液
を得た。この液に硫安を90%飽和になるよう添加し、
生成した沈殿を0.01Mリン酸緩衡液(pH7.0)に溶解し、
同緩衡液で一夜透析した。この透析内液を同緩衡液で予
め平衡化したDEAE−セルロースのカラム(6.0×45cm)
に通し、吸着した酵素を0.1MのNaClを含む同緩衡液を用
いて溶出した。活性画分を集め限外過法によって濃縮
し、これを0.001Mのリン酸緩衡液(pH7.0)で一夜透析
した。この透析内液を同緩衡液で平衡化したハイドロキ
シルアバタイトカラム(2.6×24cm)に通し、吸着した
酵素を0.11Mリン酸緩衡液(pH7.0)で溶出した。溶出さ
れた活性画分を集め限外過法によって濃縮し、これを
0.01Mリン酸緩衡液(pH7.0)で平衡化したセファデック
スG−150カラム(2.0×113cm)を用いてゲル過を行
なった。活性画分を集めて前記操作と同様に処理し、セ
ファデックスG−100カラム(2.0×113cm)を用いてゲ
ル過を行なった。活性画分を集めて限外過により濃
縮し、endo−β−GlcNAcaseの精製標品10.3mg(比活性1
7.2u/mg収率31.8%)を得た。
〔発明の効果〕
本発明の酵素を用いるとN−アスパラギン結合型糖鎖を
糖タンパクより遊離することが出来るので、糖タンパク
質糖鎖の構造解析に極めて有効である。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明酵素の作用至適pH範囲を示す。 第2図は本発明酵素の作用至適温度範囲を示す。 第3図は本発明酵素の安定温度範囲を示す。

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】以下の物理化学的性質を有するエンド−β
    −N−アセチルグルコサミニダーゼ。 作用および基質特異性:天然の高分子タンパク質に
    結合したN−アスパラギン結合型糖鎖に作用して、糖鎖
    のN,N′−ジアセチルキトビオース部分を特異的に加水
    分解する 作用適温の範囲:25〜60℃ 至適pH:pH5.0〜6.0 分子量:約30,000(SDS−ポリアクリルアミドゲル
    電気泳動法による測定)
  2. 【請求項2】N−アスパラギン結合型糖鎖が高マンノー
    ス型,混合型である特許請求の範囲(1)記載のエンド
    −β−N−アセチルグルコサミニダーゼ。
  3. 【請求項3】4℃,48時間の保持条件において安定pHが
    5.0〜7.0である特許請求の範囲(1)記載のエンド−β
    −N−アセチルグルコサミニダーゼ。
  4. 【請求項4】安定温度範囲がpH7.0,10分間の保持条件に
    おいて40℃までである特許請求の範囲(1)記載のエン
    ド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼ。
  5. 【請求項5】マンナンおよびマンノースによって阻害さ
    れない特許請求の範囲(1)記載のエンド−β−N−ア
    セチルグルコサミニダーゼ。
  6. 【請求項6】卵白アルブミン,リボヌクレアーゼB(牛
    膵臓),酵母インベルターゼの糖鎖をインタクト(inta
    ct)の状態のまま切断することができる特許請求の範囲
    (1)記載のエンド−β−N−アセチルグルコサミニダ
    ーゼ。
  7. 【請求項7】フラボバクテリウム属に属し、エンド−β
    −N−アセチルグルコサミニダーゼを生産する能力を有
    する微生物を培養し、培養物より以下の物理化学的性質
    を有するエンド−β−N−アセチルグルコサミニダーゼ
    を採取することを特徴とするエンド−β−N−アセチル
    グルコサミニダーゼの製造方法。 作用および基質特異性:天然の高分子タンパク質に
    結合したN−アスパラギン結合型糖鎖に作用して、糖鎖
    のN,N′−ジアセチルキトビオース部分を特異的に加水
    分解する 作用適温の範囲:25〜60℃ 至適pH:pH5.0〜6.0 分子量:約30,000(SDS−ポリアクリルアミドゲル
    電気泳動法による測定)
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