JPH0680794A - フッ化ビニリデン樹脂フィルム、その用途およびその製造方法 - Google Patents

フッ化ビニリデン樹脂フィルム、その用途およびその製造方法

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JPH0680794A
JPH0680794A JP4260692A JP26069292A JPH0680794A JP H0680794 A JPH0680794 A JP H0680794A JP 4260692 A JP4260692 A JP 4260692A JP 26069292 A JP26069292 A JP 26069292A JP H0680794 A JPH0680794 A JP H0680794A
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斌也 水野
Hiromitsu Makita
弘充 牧田
Takeo Azuma
健夫 東
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 透明性にすぐれ表面保護用フィルムに適する
フッ化ビニリデン(PVDF)樹脂フィルムおよび該P
VDF樹脂層を一外層とする多層フィルム、さらにそれ
らフィルムの製造方法を提供する。 【構成】 フィルムに含まれる平均球晶半径が1.6μ
m以下であり、厚さが1〜30μmであるPVDF樹脂
フィルム、または含まれる平均球晶半径が1.6μm以
下である厚さが1〜30μmのPVDF樹脂層を一外層
とし、フィルム全層の厚さが2〜300μmであり、同
曇価が8%以下である多層フィルム、およびこれらから
なる表面保護用フィルム。さらにダイからの溶融樹脂流
束の吐出速度、引取速度、ダイから冷却に接するまでの
滞留時間や樹脂流路長さ、およびダイ温度と冷媒温度差
を特定の条件に設定することを特徴とするこれらのフィ
ルムの製造方法である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は透明性にすぐれたフッ化
ビニリデン(PVDF)樹脂フィルムおよび該PVDF
樹脂層を一外層とする多層フィルムに関する。さらに詳
しくはPVDF樹脂層中に生成する平均球晶半径を1.
6μm以下に抑制することによって得られる透明性にす
ぐれたPVDF樹脂フィルムまたは該PVDF樹脂層を
一外層とする多層フィルムおよびそれらからなる表面保
護用フィルムに関し、さらにそれらフィルムの製造方法
に関する。
【0002】
【従来の技術】PVDF樹脂は溶融成形が可能であり、
しかも耐食性(耐溶剤性)や耐紫外線性に優れるところ
から簡易倉庫のテントやトラック用幌布等の膜構造体の
表面保護用フィルムとして、また電照式看板や主として
屋外に設置される機器、装備類の外装フィルムやステッ
カー、マーキングフィルムの保護用フィルムとして広く
使用されるようになって来た。
【0003】表面保護用フィルムは各種基材の表面に接
着外装されて使用される。そのために長期間使用中に剥
離の生じない接着性と基材の表面に施した印刷文字や文
様などが充分よく見える程度の透明性が求められるもの
である。さらにまた厚さの均一性も必要である。透明性
に関しては、保護用フィルムそのものがJIS−K−7
105による曇価の評価値で8%以下であることが求め
られている。
【0004】ところでPVDF樹脂はフッ素系樹脂以外
の他系樹脂のほとんどの樹脂に対して相溶性、親和性に
乏しく、これがPVDF樹脂成形物を他樹脂成形物に接
着させて使用しようとする上で解決しなければならない
難点のひとつであった。
【0005】このPVDF樹脂と他の熱可塑性樹脂との
接着性の改良については特開昭55−44898(特公
平3−13059)号、特開昭61−8350(特公平
3−80424)号などにPVDF樹脂と特異的に相溶
性に優れ、また他の熱可塑性樹脂とも比較的よい相溶性
を示すポリメタクリル酸メチル系(PMMA)樹脂を用
い、これをPVDF樹脂層と塩化ビニル樹脂層の間に接
着性樹脂層として介在させた3層共押出シートや、PV
DF樹脂層と接着性樹脂層であるPMMA樹脂層との間
にさらにこれら相互の層間接着力を改善する目的でPV
DF樹脂とPMMA樹脂混合層を配置した共押出シート
などが開示されている。
【0006】一方、PVDF樹脂は結晶性樹脂であり、
しかも結晶化速度が大きい。発明者らの知見では、たと
えば溶融状態の樹脂を12μm程度の極めて薄いフィル
ムに押出し、ガラス転移温度(ー40℃)以下に急冷却
しても結晶化し、その結晶化度は約15〜25%であ
り、生成する球晶の平均半径は0.5〜0.7μmとな
る。このフィルムは常温放置では数分間で、また110
℃程度の加温下では数秒間で結晶化度が約40%の上限
に達し、その球晶半径は約0.6〜1.6μm、平均球
晶半径0.7〜0.8μmとなる。通常のPVDF樹脂
フィルムの製造においては、このような急冷過程は採用
できず、またPVDF樹脂を単独で通常のダイリップク
リアランス、例えば0.5mmから押し出して、前記の
ような薄いフィルムに急変化させることも装置上の制限
からも困難であった。このような理由から、溶融延伸法
によってPVDFフィルムの球晶半径を0.5μm以下
に抑制することは困難であり、また事実上は球晶半径を
1.6μm以下に抑制する延伸方法も見出されていなか
った。すなわち従来知られているPVDF樹脂フィルム
は、平均球晶半径が1.6μmを越える不透明なもので
あった。このためPVDF樹脂フィルムに透明性が要求
される場合、その厚さを5μm程度あるいはそれ以下の
薄膜として使用しているのが実情である。このPVDF
樹脂フィルムの透明性改良に関し、特開平3−1500
5号にはPVDF樹脂とPMMA樹脂の特定範囲の混合
物を二軸延伸して得た厚さ100μmのフィルムが曇価
0.5%以下の値を示し、極めて透明性にすぐれたフィ
ルムであることが記載されている。しかしながら耐食性
に劣るPMMA樹脂が混合されたPVDF樹脂フィルム
を本発明の目的とする保護用フィルムの外装に採用する
ことの是非は当業者にとって明白である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は溶融延
伸法を用いて保護用フィルムとして実用上充分な程度の
透明性を有するPVDF樹脂フィルムもしくはPVDF
樹脂を一外層とする多層フィルムを提供することにあ
る。具体的にはJIS−K−7105に定められる曇価
が8%以下となる保護用フィルムに適したPVDF樹脂
フィルムもしくはPVDF樹脂層を一外層とする多層フ
ィルムを提供することにある。ここで本発明の目的のひ
とつであるPVDF樹脂層を一外層に有する多層フィル
ムの場合、PVDF樹脂層を除く他の層はPMMA樹脂
層であるか、これにさらに塩化ビニル樹脂層を追加した
2層または3層の多層フィルムを好ましい対象としてい
るが、これらの樹脂はいずれも非晶性の樹脂であり、い
ずれも極めて透明性にすぐれるものである。したがって
本発明が解決すべき課題は、ひとえにPVDF樹脂層の
透明性をいかにして曇価8%以下に調整するかその確実
な達成手法を完成することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは溶融延伸法
によりPVDF樹脂層を有する2ないし3層の保護用フ
ィルムの試作を数多くくりかえし、得られた保護用フィ
ルムの曇価を測定しPVDF樹脂層中の平均球晶半径と
の関係を調べた。その結果PVDF樹脂層の曇価(縦
軸、単位%)とその層中に生成している平均球晶半径
(横軸、単位μm)との間に図1に示すような一定の関
係があることを見出した。この関係は平均球晶半径が約
1.4〜1.7μmの範囲において直線関係であり、下
式(4)の如くの簡単な式で示される。
【式2】 (式4) Hz=23.3φr−29.3 Hz:曇価(%) φr:平均球晶半径(μm) 式(4)は厚さ2〜20μmの範囲にあって結晶化度が
25〜40%の範囲内にあるPVDF樹脂フィルムの曇
価と平均球晶半径の関係の実体をよく示している。ここ
で平均球晶半径φrの測定は、日本電気(株)製He−
NeガスレーザーGLG5360(6328オングスト
ローム)を用いてレーザー小角散乱法により測定した。
また曇価HzはJIS−K−7105に準じて日本電色
工業(株)製カラー測定システムΣ80(Color
Measuring System Σ80)を用いて
測定した。なお透明性の良い非晶性樹脂との多層フィル
ムにおいては、フィルム全層の曇価もPVDF樹脂層の
曇価とほとんど違わないので、曇価はフィルム全層につ
いて測定した。また2層構造フィルムからPVDF樹脂
層(フィルム)をクロロフォルムに浸漬後、剥離して球
晶半径測定用試料とした。
【0009】本発明者らは前記式(4)の関係からPV
DF樹脂フィルム中の平均球晶半径を1.6μm以下に
抑制する因子をさらに追求し、それが溶融押出され押出
機のダイから吐出されたのち冷却装置に導入され固化す
るまでのいわゆる流動変形過程で加えられる変形歪量
と、その間の温度変化に大きく依存することをつきとめ
て平均球晶半径を1.6μm以下に制御する条件を見出
し、本発明を完成するに至った。
【0010】すなわち製法にかかる本発明は押出機のダ
イから押し出される溶融樹脂流束の吐出速度をV1(m
m/秒)、この流出樹脂流束を引取る引取速度をV
2(mm/秒)、ダイの出口から冷却装置の冷媒に接す
るまでの樹脂流路長をG(mm)とし、さらに冷媒温度
Tb(℃)とダイ出口樹脂温度Td(℃)との差ΔT
(=Td−Tb)としたときに下記(1)、(2)、
(3)の条件を同時に満足するようV1、V2、G、ΔT
の値を設定して表面保護用フィルムに適したPVDF樹
脂フィルムまたはPVDF樹脂層を一外層有する保護用
フィルムを製造することを内容とするものである。
【式3】 (1) 2.0≧θ≧0.04(秒) θ=2G/(V1+V2) ただし、300≧G>0(mm) (2) 150≧V2/V1θ≧5(秒-1) (3) 240≧ΔT≧80(℃)
【0011】以下、本願各発明について詳しく説明す
る。結晶性ポリマーの結晶生成過程については古くから
多くの研究がなされ、鎖状の分子が延伸配向されきちん
と整列している部分からは、いわゆる高圧結晶と呼ばれ
る高密度な球晶が生成することや、ランダムな配列の分
子鎖からはいわゆる房状ミセルと呼ばれるゆるやかな比
較的低密度の球晶が生成するとの報告がある。本発明者
らは、PVDF樹脂の球晶半径を小さいものにするには
極端に速い冷却が必要であり、とくに前記のように通常
のPVDF樹脂フィルムの製造においてはそのような急
冷過程は採用できず、またPVDF樹脂を単独で押し出
して薄いフィルムに急変化させることも装置上の制限か
らも困難であることから、実現可能な装置条件で、平均
球晶半径が1.6μm以下となるフィルムの製造条件を
追求しようと考えた。なお、核剤添加により生成する球
晶を小さくすることも考えられるが、添加工程が入り、
全体の製造工程が長くなるという不利も伴う。
【0012】そこで押出機を出て溶融状態にあるPVD
F樹脂に着目し、この樹脂が流動可能な時に応力をかけ
て、いわゆる流動配向によって大きい球晶の生成阻害効
果がもたらされないものかを検討し、その結果本発明を
完成したものである。
【0013】本発明で採用するパラメーターのひとつで
あるV1/V2θはPVDF樹脂が流動可能な時間中に受
ける単位時間当りのズリ、つまり剪断応力に対応する値
と考えられる。ここでθは後記のように溶融樹脂流束が
ダイを出て冷却装置の冷媒(または冷却ロール)に接す
るまでの見かけの滞留時間である。このパラメーター値
が5秒-1より小さいと大きい球晶の生成を阻害するよう
な分子配向は示さず、一方150秒-1より大きいと配向
が逆に結晶核の生成を促進し、球晶そのものは大サイズ
にならないが数を増し曇価を大きくしてしまうものと考
えられる。V1/V2θの好ましい範囲は8秒-1以上70
-1以下である。実際上のズリはPVDF樹脂フィルム
の最終の厚さも考慮に入れる必要がある。したがってV
1/V2θをそれぞれのケースについて得られたPVDF
樹脂フィルム(多層の場合はPVDF樹脂層)の厚さD
で除して1μm当りの値で見れば、より現実にストレス
配向の程度の差が明確になる。たとえば5μm厚さのP
VDF樹脂フィルムの曇価が4.0%のものを単純に2
0μm厚さに換算した曇価20.0%に対して、はじめ
から20μm厚さのPVDF樹脂フィルムを得た場合に
曇価が3.3%以下である理由が両者の差で示される。
すなわち5μmのPVDF樹脂フィルムではこの値が
3.0%以上であるのに対し、20μmのPVDF樹脂
フィルムでは3.0%以下である。
【0014】この値をストレス配向パラメーターλ(=
1/V2θD秒-1・μm-1)とすると、好ましい範囲は
0.2から65.0(秒-1・μm-1)であり、より好ま
しくは0.4から3.0(秒-1・μm-1)の範囲とな
る。
【0015】今ひとつの前記パラメーターθ(=2G/
1+V2)はダイを出て冷媒に接触するまでの流動樹脂
流束の見かけの流路内滞留時間である。この時間が2秒
を越えると、PVDF樹脂流束(多層の場合は一外層に
配されているPVDF樹脂層)の外表面が空気によって
冷却されて固化がすすみ、ストレス配向の効果がPVD
F樹脂層の芯層側に偏ってしまい、結果的に平均球晶サ
イズを1.6μm以下に制御出来なくなる。路長G(m
m)は理論的には制限はない。実際上押出機ダイと水な
どの冷媒の直接接触(G=0)は装置上ありえないし、
引取速度V2も押出製造物の所望厚さや引取機の能力に
よって制限されるからGはむやみに長くとる必要はなく
適宜選択すればよいが、通常300mm以下3mm以上
あればよい。その意味からすれば、θの下限は0.04
秒でなくともそれより短かくともさしつかえないことに
なるが、冷媒の温度と樹脂流束温度に200℃以上の差
があると冷媒中に導入された樹脂流束の凝縮固化が急激
に起るため、流束のもつ弾性収縮挙動との間に位相差が
生じ、いわゆるドローレゾナンスと呼ばれる振動が発生
して著しい厚さムラの原因となる。したがってθが極端
に短いとこのような厚さムラを誘発しかねない。したが
って通常エアーギアップとして採用されている短い距離
50mmを通常生産速度として速いとされる1250m
m/秒(75m/分)で通過する時間をθの下限とした
ものである。θは好ましくは0.4秒以上1秒以下であ
る。
【0016】本発明の示す第3のパラメーターΔTはダ
イを出た時点の樹脂流束の温度と冷媒の温度Tbとの差
であり、通常80℃ないし240℃の範囲で適宜選択決
定される。冷媒温度はPVDF樹脂フィルム製造の場合
通常20℃から60℃が採用される。ダイを出た直後の
樹脂温はしばしばダイ温度(Td)で代用されるが、実
際上樹脂温度はダイ温度に等しいか10℃ないし15℃
程度高い程度であり、ダイ温度を代用しても特に問題は
ない。ΔTが80℃を下まわると冷媒によって樹脂流束
の固化される速度がおそくなり、ストレス延伸応力が固
化しつつある樹脂の分子配向に消費され、効果的な球晶
生成阻止効果が認められなくなる。また240℃を上ま
わると、前述したドローレゾナンスを生じやすくなり好
ましくない。
【0017】なお単位時間当りの温度変化量ΔT/θ
(κ)は前述したストレス延伸の効果を補償するパラメ
ーターと考えられる。κ値は70〜4500(℃/秒)
の範囲にあることが好ましく、500ないし4000
(℃/秒)の範囲にあることがさらに好ましい。κ値が
70(℃/秒)以下であると、ストレス延伸が好ましく
行える条件でPVDF樹脂フィルムを製造しても、実際
上平均球晶半径が1.6μmより大きく、曇価も8.0
%以上となる。例えば比較例3の場合、ストレス延伸パ
ラメーターλの値は好ましい範囲内の0.60秒-1・μ
-1の値を示しているが、平均球晶半径は1.63μm
であり、曇価も8.4%である。
【0018】上記の製法発明で得られる本発明のPVD
F樹脂フィルムは、PVDF樹脂の単層フィルムであっ
てもよいが、好ましくはPVDF樹脂層を一外層とする
他の熱可塑性樹脂との多層フィルムである。いずれにし
ても、本発明のフィルムのPVDF樹脂層に含まれるP
VDF樹脂の平均球晶半径の上限については1.6μm
以下であり、下限については装置条件など前記した事情
により0.5μm以下に抑制することはすこぶる困難で
あり、好ましくは0.6μm以上1.6μm以下の範囲
であり、さらに好ましくは0.7μm以上1.4μm以
下の範囲である。
【0019】本発明のフィルムを構成するPVDF樹脂
としては、フッ化ビニリデン単独重合体、フッ化ビニリ
デンを構成単位として70モル%以上含有する共重合
体、さらにこれら重合体の混合物であってもよい。フッ
化ビニリデンと共重合されるモノマーとしては、四フッ
化エチレン、六フッ化プロピレン、三フッ化エチレン、
三フッ化塩化エチレン、フッ化ビニルなどが挙げられ、
これらの1種または2種以上を用いることができる。こ
れらPVDF樹脂は、その融点が146℃から178℃
の範囲にあるが、本発明のフィルムを構成するPVDF
樹脂はフィルムの状態で基材の膜構造物などに熱ロール
などの手段でラミネートされる場合も多くあり、その際
ラミネートロールへの粘着など製品外観を損なう現象を
避けるため、融点が165℃以上、好ましくは170℃
以上、さらに好ましくは175℃以上のものを用いるこ
とが望ましい。なおPVDF樹脂には、本発明の効果を
阻害しない範囲内で、必要に応じて紫外線吸収剤、核
剤、可塑剤等が添加されていても良い。
【0020】また本発明の多層フィルムを構成する他の
熱可塑性樹脂としては、通常透明性の良好な非晶性樹脂
が用いられる。このような非晶性樹脂としては、PMM
A系樹脂や塩化ビニル樹脂が例示される。PMMA系樹
脂としては、メタクリル酸メチル単独重合体のほか、メ
タクリル酸メチル単量体を構成単位として50モル%以
上とアクリル酸エステル、あるいはメタクリル酸メチル
以外のメタクリル酸エステルを50モル%未満含有する
共重合、さらにこれら重合体の2種以上の混合物などを
例示することができる。上記アクリル酸エステルとして
は、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸
プロピル、アクリル酸ブチルなどを、またメタクリル酸
メチル以外のメタクリル酸エステルとしては、メタクリ
ル酸エチル、メタクリル酸プロピルなどを例示すること
ができる。なお、共重合体としはランダムコポリマーに
限られず、例えばグラフトコポリマー等も用いられ、ア
クリル系飽和架橋ゴムにメチルメタクリレートを主とす
るモノマーをグラフト重合したものも好ましく用いられ
る。本発明に用いられる熱可塑性樹脂には、必要に応じ
て抗酸化剤、紫外線吸収剤等が添加されていても良い。
【0021】さらに上記PMMA系樹脂としてPMMA
系樹脂とPVDF樹脂との混合物を挙げることができ
る。両者の混合重量比(PMMA系樹脂/PVDF樹
脂)としては、15/85〜75/25の範囲にあるも
のがPVDF樹脂層に対する接着性に優れると共に他の
樹脂や基材との接着性が良好であることから特に好まし
い。
【0022】本発明で提供される多層フィルムを表面保
護用フィルムとして用いる際には、各種基材との接着性
を考慮して表面層にPVDF樹脂層を、接着層としてP
MMA樹脂系樹脂層を、あるいはさらにその外側に塩化
ビニル樹脂層を用いることが好ましく、とくにPVDF
樹脂層/PMMA系樹脂層からなるもの、あるいはPV
DF樹脂層/PMMA系樹脂層/塩化ビニル樹脂層の順
に層構成されているものが好ましい。
【0023】本発明のフィルムを表面保護用フィルムと
して用いる際のフィルム厚さとしては、多層フィルムの
場合は2〜300μmであり、フィルム全層の曇価が8
%以下であることが、透明性の点から要求される。以下
実施例を示し本発明を説明するが、本実施例によって本
発明の内容は何ら制限されるものではない。
【0024】(実施例1〜9,比較例1〜2)PVDF
樹脂用40mmΦ、L/D=22の押出機とPMMA樹
脂用90mmΦ、L/D=26の押出機を用い、PVD
F樹脂として呉羽化学工業(株)製KF−1000、P
MMA樹脂として三菱レイヨン(株)製HBS001を
溶融押出しし、巾1700mmのTダイにて両方の樹脂
流を積層合流して二層積層シートを成形した。Tダイの
リップクリアランスは0.6mmとした。またダイ温度
Tdは240℃とし、ダイ直下に冷却槽を置き、冷媒の
レベルを変化させ種々の2層フィルムを製作した。各実
施例における製造条件および各種パラメーター、さらに
得られた2層の保護用フィルムの曇価とPVDF樹脂層
中の平均球晶半径の測定結果を表−1〜3に示す。なお
実施例6は冷媒をグリセリンとし、実施例7では直径5
00mmΦの加熱装置付きロールを冷却ロールとして使
用し、2秒間接触させた。他の実施例や比較例では、冷
媒として水を用いた。また実施例4、5および比較例2
のPMMA樹脂層は前記PVDF樹脂を20%混合した
混合品を用いた。さらに溶融樹脂流束の吐出速度V1
ダイリップクリアランス、樹脂の押出量および使用樹脂
割合を考慮した溶融状態の樹脂比重から算出した。溶融
状態の樹脂比重としてPVDF樹脂は1.41g/c
c、PMMA樹脂は1.01g/cc、塩化ビニル樹脂
は1.16g/ccの値を用いた。
【0025】
【表1】
【0026】
【表2】
【0027】
【表3】
【0028】(実施例10〜14、比較例3〜5)前記
実施例1〜9および比較例1〜2に用いたPVDF樹脂
用40mmΦ、L/D=22の押出機を2台用意してP
VDF樹脂とPMMA樹脂用の押出機とし、前記例でP
MMA樹脂の押出に用いた90mmΦ、L/D=26の
押出機で呉羽化学工業(株)製塩化ビニル樹脂(「S−
903」、重合度1300)に可塑剤DOP(大八化学
製)50PHR、亜鉛系安定剤(共同薬品「KV−69
B−4」)2.5PHR、抗酸化剤(日本チバガイギー
「イルガノックス1010」)0.1PHRを処方した
コンパウンドを押出し、巾1300mmのTダイで樹脂
流を積層合流させて押出しし、3層構成の保護用フィル
ムを製造した。Tダイのダイ温度Tdは210℃、リッ
プクリアランスは0.8mmとした。他の製造条件につ
いては、前記例と同様に変化させた。条件および結果を
表−4〜5にまとめて示す。
【0029】
【表4】
【0030】
【表5】
【0031】各表の結果からも明かなように、前記した
条件(1)、(2)および(3)を同時に満足する
1、V2、G、およびΔTの設定値で製造されたPVD
F樹脂層を有する本発明の保護用フィルムは市場が要求
する透明性を充分に満足するものである。
【0032】
【発明の効果】本発明により透明性に優れるPVDF樹
脂フィルムおよびPVDF樹脂を一外層とする多層フィ
ルムが提供され、これらは透明性、耐食性、さらには耐
紫外線性に優れる表面保護用フィルムとして用いること
が出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例および比較例の表面保護フィル
ムに含まれるPVDF樹脂の平均球晶半径φrと曇価と
の関係を示す。

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 フィルムに含まれる平均球晶半径が1.
    6μm以下であり、厚さが1〜30μmであることを特
    徴とするフッ化ビニリデン樹脂フィルム。
  2. 【請求項2】 一外層を形成する厚さが1〜30μmの
    フッ化ビニリデン樹脂層と他の熱可塑性樹脂層との多層
    フィルムであって、該フッ化ビニリデン樹脂層に含まれ
    る平均球晶半径が1.6μm以下であり、該多層フィル
    ムの厚さが2〜300μmでありかつJISーKー71
    05に定める曇価が8%以下であることを特徴とする多
    層フィルム。
  3. 【請求項3】 フィルムに含まれる平均球晶半径が1.
    6μm以下であり、厚さが1〜30μmであるフッ化ビ
    ニリデン樹脂フィルムからなる表面保護用フィルム。
  4. 【請求項4】 一外層を形成する厚さが1〜30μmの
    フッ化ビニリデン樹脂層と他の熱可塑性樹脂層との多層
    フィルムであって、該フッ化ビニリデン樹脂層に含まれ
    る平均球晶半径が1.6μm以下であり、該多層フィル
    ムの厚さが2〜300μmでありかつJISーKー71
    05に定める曇価が8%以下である多層フィルムからな
    る表面保護用フィルム。
  5. 【請求項5】 多層フィルムがフッ化ビニリデン樹脂層
    とメタクリル酸メチル系樹脂層の二層からなることを特
    徴とする請求項4記載の表面保護用フィルム。
  6. 【請求項6】 多層フィルムがフッ化ビニリデン樹脂
    層、メタクリル酸メチル系樹脂層、および塩化ビニル樹
    脂層の順に積層された三層からなることを特徴とする請
    求項4記載の表面保護用フィルム。
  7. 【請求項7】 メタクリル酸メチル系樹脂層がポリメチ
    ルメタクリレートまたはポリメチルメタクリレートとポ
    リフッ化ビニリデンとの混合樹脂層であることを特徴と
    する請求項5または6記載の表面保護用フィルム。
  8. 【請求項8】 フッ化ビニリデン樹脂を溶融押出する際
    またはフッ化ビニリデン樹脂と積層する他の熱可塑性可
    塑性樹脂とを溶融共押出する際に、ダイからの溶融樹脂
    流束の吐出速度V1(mm/秒)、この樹脂流束の引取
    速度V2(mm/秒)、溶融樹脂流束がダイを出て冷却
    装置の冷媒に接触するまでの見かけの滞留時間θ
    (秒)、およびダイの出口から冷媒に接するまでの樹脂
    流路長さG(mm)の間に下記(1)、(2)の条件を
    同時に満足するようV1、V2、Gを設定し、かつダイ温
    度Td(℃)と冷媒温度Tb(℃)の差ΔTを下記
    (3)の条件を満たすようにTdおよびTbを定めて押
    出成形を行うことを特徴とする請求項1または2記載の
    フッ化ビニリデン樹脂フィルムまたは多層フィルムの製
    造方法。 【式1】 (1) 2.0≧θ≧0.04(秒) θ=2G/(V1+V2) ただし、300≧G>0(mm) (2) 150≧V2/V1θ≧5(秒-1) (3) 240≧ΔT≧80(℃)
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