JPH06685B2 - 殺虫剤の製造方法 - Google Patents

殺虫剤の製造方法

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JPH06685B2
JPH06685B2 JP1261014A JP26101489A JPH06685B2 JP H06685 B2 JPH06685 B2 JP H06685B2 JP 1261014 A JP1261014 A JP 1261014A JP 26101489 A JP26101489 A JP 26101489A JP H06685 B2 JPH06685 B2 JP H06685B2
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【発明の詳細な説明】 (イ)発明の目的 〔産業上の利用分野〕 本発明は、バチルス・チューリンゲンシス(Bacillus t
huringiensis:以下BT菌という)の、各種菌株の培養
によって産出される結晶様殺虫性蛋白質毒素(以下結晶
毒素という)と芽胞等との混在物から、結晶毒素の殺虫
活性を保持しながら、芽胞および生栄養細胞を殺滅し
て、生きた芽胞および生栄養細胞による二次的災害発生
の惧れのない殺虫剤(以下BT農薬という)を製造する
方法に関するもので、農薬業界及び農業の分野で広く利
用されるものである。
〔従来の技術〕
BT菌の各種菌株は、芽胞形成に伴って、菱型、サイコ
ロ状、また不定形立方体などの、蛋白質からなる結晶毒
素を産生し、そのあるものは鱗翅目昆虫の幼虫に対する
選択的食毒であり、また別のものはヤブカ・アカイエカ
に代表される双翅目の幼虫に対して高い殺虫活性を示
し、あるいはコロラドポテトビートルに代表される鞘翅
目昆虫のみに選択的毒性を示すものなどが知られてい
る。
上記のように結晶毒素の選択生が著しく、対象種と種目
を異にする昆虫には作用せず、もちろん、人畜、魚介、
鳥類に無害であることから、選択的殺虫剤としての利用
が追求されてきた。
一方、同じく培養によって産出される自己再生のための
生命体である胞子、すなわち芽胞は休眠細胞であって、
強固な耐久性構造を持ち、一般の生物にとって不利な環
境条件(乾燥条件を含む)にも耐え、長期間生きつづけ
るものである。したがって、これを含むものを殺虫剤と
して圃場など野外に散布を繰り返す時には、土壌への蓄
積と風雨による転流拡散が懸念され、これが養蚕業の行
われる地域に侵入した場合、いわゆるカイコの卒倒病に
つながる可能性があり、厳重な警戒がなされている。
さらに、この芽胞が発芽して栄養細胞となり、それは対
数増殖の過程で水溶性の蛋白質毒素を分泌し、これは、
食中毒を発症するセレウス毒素と免役化学的に強く反応
し(品川邦汎、臨床検査32、P.1559〜P.1563
(1988))、よって芽胞が付着した食物の調理なら
びに保存過程において、食中毒の生ずる可能性が懸念さ
れている。これらの懸念は、生芽胞と結晶毒素とを分離
して生芽胞を含まない製品を製造すれば消失するわけで
あるが、芽胞と結晶毒素は、いずれもその大きさが数μ
m程度で、微細な上、表面の荷電状態も似かよってお
り、物理化学ならびに電気化学的に両者を分離すること
は極めて困難な作業であり、且つ、その作業は工業的実
用性に乏しいものである。一方、芽胞を死滅せしめた殺
虫剤を製造することによっても、上記懸念を、払拭でき
るが、芽胞は先にも触れたように、耐久性構造のもの
で、通常の殺滅のために行われる加熱、乾燥、薬品処理
などの物理的、または化学的殺菌処理に対して生物の中
で、最も強固な抵抗性を有す。よって、芽胞を完全に殺
滅するためには、厳しい殺菌条件が必要であり、例えば
加熱ならば100℃を越える高い温度が必要となる。
しかし、このような厳しい条件で処理した場合には、殺
虫有効成分である結晶毒素の変性(蛋白質の熱変性)を
招き、殺虫効力の喪失を生じ、有効な製品が得られな
い。
この課題を解決するために、結晶毒素を含有するBT菌
の培養液内の細菌細胞・芽胞に対して、該結晶毒素の殺
虫能を喪失せしめることのない緩徐な化学的殺菌処理
と、同じく緩徐な物理的殺菌処理を組合わせ、それらを
同時に行ない細菌細胞・芽胞を殺滅することを特徴とす
る殺虫剤の製造法が提案されている(特公昭51−50
47号公報)。
〔発明が解決しようとする問題点〕
上記の方法は、細菌細胞・芽胞の殺滅方法としては優れ
ているものであり、実用化されている方法であるが、該
方法で得られた結晶毒素は、殺菌処理により、実用的な
濃度(BT農薬は一般にコナガに対して1000ないし
2000倍の製剤水懸濁液として用いられる)における
残存殺虫活性が低下したものとなり易く、細菌細胞・芽
胞の殺滅を完全に行なう場合、時によってはこれをかな
りの高濃度で使用しなければ、充分な殺虫性能を示さな
い殺虫剤しか得られない事があるという問題点を有する
方法でもある。
本発明者等は、上記方法における細菌細胞・芽胞の殺滅
の効率を向上させ、品質の優れた製品が得られる製造方
法を確立すべく鋭意検討を行なった。
(ロ)発明の構成 〔課題を解決するための手段〕 本発明者等は、前記問題点を解消するための検討過程に
おいて、殺菌処理を施す培養液の培養期間に応じて、殺
菌処理後の残存殺虫活性が変化すること、培養液中に存
在する水溶性成分が栄養細胞・芽胞の殺菌効率を低下さ
せ、ひいては結晶毒素の殺虫活性を低下させること、及
び殺菌処理を施す培養液のpHの変動に応じても、殺菌処
理後の結晶毒素の残存殺虫活性が変化することを見出
し、特定時間培養した培養液から水溶性成分を除去する
とともにpHを調整することによって、実用に供し得る殺
虫剤を製造するに足る殺虫活性を有する結晶毒素が一定
して得られるのみならず、殺虫活性の飛躍的に向上した
結晶毒素が得られることを見出して本発明を完成した。
すなわち、本発明はバチルス・チューリンゲンシス(Ba
cillus thuringiensis)の培養液中に存在する生芽胞お
よび生栄養細胞の殺滅を培養により芽胞の90%が放出
された後で、かつ該放出後24時間以内の培養液に、水
溶性成分の除去分離行程を施し、かつpHを4〜7に調整
した後に実施することを特徴とする殺虫剤の製造方法に
関するものである。
○BT菌の培養液 本発明に用いられる培養液としては、バチルス・チュー
リンゲンシス・バラエティ・クルスタキ、バチルス・チ
ューリンゲンシス・バラエティ・イスラエレンシス等の
結晶毒素を産生するBT菌株を、通常公知の培養方法及
び条件で、培養して得られる一般的な培養液があげられ
る。
例えば、肉エキス、ペプトンなどよりなる培養用溶液を
用い、バチルス・チユーリンゲンシスを通常の方法及び
条件で培養し、芽胞及び結晶毒素が形成され、所定の培
養期間中にある培養終了液、或いは該培養液を部分精製
または濃縮して得られた結晶毒素と芽胞を含有する水懸
濁液、さらにはそれらを水で希釈した懸濁液が使用され
る。
培養について、さらに具体的に説明すると窒素源、炭素
源、ミネラルおよびビタミンに富む天然培地で培養す
る。結晶毒素ならびに菌体の産生は、通気攪拌条件に大
きく左右され、充分な好気的条件で培養した場合に、両
者の産生量が増す。培養温度は、約25〜30℃がよ
い。炭素源としては、例えば、庶糖、麦芽糖、グルコー
ス、フラクトース、糖蜜が利用され、窒素源としては、
例えば、コーンスチープリカー、硫酸アンモニウム、塩
化アンモニウム、綿実粉、酵母エキス、大豆粉、カゼイ
ン水解物などが挙げられる。また、ミネラルおよびビタ
ミンは、糖蜜、コーンスチープリカー、酵母エキスで代
用することができ、必要に応じては、無機塩類、ビタミ
ン類をさらに添加してもよい。特に、大量生産を行う場
合、深部通気攪拌培養が望ましい。
○培養期間の設定 芽胞が細胞外に放出され始めてから、芽胞の90%が細
胞外に放出されるまでの経過は、無菌的に経時採取した
培養液を位相差光学顕微鏡を用いて鏡検することによ
り、容易に追跡できる。芽胞の放出とは、細胞内に形成
された結晶毒素と芽胞が、培養の進行に拌ってBT菌の
細胞壁が自己消化した結果、細胞外にそれらが放出さ
れ、培養液中に浮遊した状態を言う。
芽胞は短軸1〜3μ×長軸2〜6μの楕円状物体で、光
屈折性を有するため、位相差光学顕微鏡の視野内では、
青白い光を放つことから、他の顆粒と識別できる。ま
た、公知の染色法によっても、結晶毒素と芽胞は区別で
きる(Fadel A.Sharifet al.,J.Ind.Microbiol.,3,227
〜229(1988))。
さらに、芽胞の90%が細胞外に放出されたことは、顕
微鏡視野内の全菌数(結晶毒素・芽胞を内在する細胞と
遊離芽胞の総数)に対する遊離芽胞の割合が当該範囲に
あることで確認できる。なお、培養条件によって、ある
程度の差はあるものの、芽胞が細胞外に放出され始めて
から、上記の状態に達するまで8〜24時間を必要とす
る。本発明においては、この様にして芽胞の90%が細
胞外に放出された培養液に対して24時間以内に殺菌処
理を施すのである。
上記範囲外で殺菌処理を行なうと、結晶毒素の殺虫活性
が損なわれ、実用的濃度で有効な殺虫剤を定常的に製造
することが不可能となり、また残存殺虫活性が飛躍的に
は向上しない。
○水溶性成分の除去分離 上記の様にして培養した培養液中には、培地に起因する
成分、BT菌が菌体外に排出した代謝物あるいは菌体内
に含有され、自己融解後に培養液中に放出された代謝産
物等の水溶性成分も存在し、本発明者等は、これらのう
ちのどの成分であるかについては解明していないが、こ
れらの水溶性成分の存在により殺菌の効率が低下し、こ
のまま、すなわち水溶性成分の存在下に完全に殺菌する
ためには殺菌条件をかなり厳しいものとせざるを得ず、
ひいては結晶毒素の殺虫活性を低下させることになるこ
とを見出したのである。
そして殺菌前に水溶性成分を除去することにより、実用
的濃度で有効的な殺虫剤を製造することが可能になった
ばかりでなく、水溶性成分の除去の程度によっては、今
まで予測することも出来なかった程の殺虫活性を有する
殺虫剤の製造を可能にするものである。
芽胞及び結晶毒素が形成された培養終了液中の水溶性成
分を除く方法としては、通常の遠心分離法、濾過法、沈
降法などを利用して水溶液を除去する方法があげられ
る。特に、大量に処理する場合には、遠心分離機あるい
は膜濾過材を使用する方法が好ましい。また、水溶性成
分の除去量は、前者の場合、遠心力(重力加速度)、通
液インターバル、洗浄インターバル等の操作条件によ
り、後者の場合、膜の孔径、圧力、通液速度等の操作条
件により異なるが、除去量が多すぎて芽胞及び結晶毒素
の分散性が阻害される様になることは避けるのが好まし
く、もし分散性が阻害されるような状況に至った場合
は、蒸留水特に界面活性剤を添加しあるいは超音波処理
を施して分散性を調節するのが好ましい。
分散性の悪いものをそのまま殺菌すると殺菌剤との接触
または伝熱不良に起因すると思われるが殺菌効率が一定
せず、特に完全な殺菌を目的とする場合、殺菌条件をか
なり厳しいものとせざるを得ず、ひいては結晶毒素の殺
虫活性を低下させる恐れが生じる。
用いられる界面活性剤としては、分散させる粒子すなわ
ち栄養細胞、芽胞および結晶毒素の粒子表面が負に帯電
していることから、アニオン系又はノニオン系界面活性
剤が好ましく、アニオン系界面活性剤としては、ポリア
クリル酸ソーダ系、例えばアロンA−20px(東亞合
成化学工業(株)製)、ドデシルベンゼンスルホン酸ソ
ーダ系、例えばペレックスNo.6(花王(株)製)、レ
ベノールWZ(花王(株)製)、ラウリル硫酸ソーダ
系、例えばエマール2F(花王(株)製)、ジオクチル
スルホサクシネート系、例えばペレックスOTP(花王
(株)製)などがあげられ、ノニオン系界面活性剤とし
てはポリオキシエチレンエーテル系、例えばエマルゲン
910(花王(株)製)などがあげられる。なお使用量
としては殺菌を施す培養液に対して0.01〜0.50重量
%の範囲が好ましく、特に好ましくは0.05〜0.20重
量%であり、具体的には通液速度等の操作条件等に応じ
て設定することが好ましい。
○pH調整方法 本発明においては、BT菌の培養液の殺菌をpH4〜7、
好ましくはpH5〜7、特に好ましくはpH5〜5.5の範囲
内で行うことが必要であり、前記培養液は一般的にpH8
〜9程度であるので、硫酸等の酸によりそのpHを4〜7
に調整してから殺菌処理を行なう。また、殺菌処理中
に、処理に伴ないpHが変動し上記範囲外に逸脱する恐れ
があるときも、その変動に応じて酸やアルカリを添加
し、pHを上記範囲内に維持することが必要である。
上記範囲外で殺菌処理を行なうと、結晶毒素の殺虫活性
が損なわれ、実用的濃度で有効な殺虫剤を定常的に製造
することが不可能となり、また残存殺虫活性が飛躍的に
は向上しない。
この効果は、遠心分離により、培養液上清部を取り去っ
て水に再懸濁したものにおいても、同様に示される。
○殺菌 本発明における殺菌は、栄養細胞・芽胞を殺滅するため
に行われるものであって、下記のような化学的殺菌処理
及び物理的殺菌処理方法があり、前掲の特公昭51−5
047号公報に開示されているように、単に一種類の殺
菌処理のみでは結晶毒素の殺虫能力を保持させながら、
栄養細胞・芽胞を完全に死滅させることは困難であるか
ら、本発明においても緩徐な化学的殺菌処理と物理的殺
菌処理とを組合せて、それらを同時に行うことが好まし
く、その方法により容易に栄養細胞・芽胞を完全に死滅
させることができ、殺虫能の優れた産業上極めて有用な
殺虫剤を得ることができる。
○化学的殺菌処理 化学的殺菌処理方法は、ホルマリン、パラトルエンスル
ホンクロルアミドナトリウム、パラトルエンスルホン酸
ジクロルアミド、ベンゼンスルホン酸クロルアミドナト
リウム、アゾビスクロロホルムアミジン、アクリフラビ
ン、メチレンブルー、塩化ベンザルコニウム、塩化セチ
ルピリジニウム、次亜塩素酸ナトリウム、N−クロルコ
ハク酸イミド、N−ブロムコハク酸イミド、N−クロル
グルタール酸イミド、N−クロル安息香酸イミドなどの
脂肪族、芳香族のジカルボン酸イミドのN−ハロゲン化
物等のN−ハロゲンジカルボン酸イミドなどの薬剤を上
述の水性培養液等に適量加え殺菌する方法である。
薬剤の培養液への添加量は、予備試験を行うことにより
容易に定められる。
○物理的殺菌処理 物理的殺菌処理方法は、加熱、超音波、放射線などによ
り、上述の水性培養液等を殺菌する方法である。
工業的に有利な加熱方式は、反応槽内で攪拌しながら加
熱するバッチ加熱方式、あるいは長い反応管内に一方の
端から流入し、途中で加熱昇温しつつ、他端から排出す
る流管連続加熱方式などであり、特に後者は工業的実施
に当って有用である。
○製剤方法 殺菌処理の終った培養液は、そのまま、或いは必要に応
じて、固液分離、濃縮、精製を行ない、適宜の助剤を添
加或いは添加せずに、結晶毒素と死滅した芽胞を含有す
る懸濁液状の殺虫剤とすることが出来る。かかる殺虫剤
は、好ましくは、噴霧乾燥や流動乾燥等の公知の方法
で、水和剤粉末、ないしは顆粒状製品に製剤化され、さ
らには溶剤に懸濁させて製剤化される。
そして、その有効成分量は、対象昆虫によって異なる
が、通常公知の範囲で用いられ、また他の殺虫剤と併用
することも可能である。
○殺虫活性の測定法 結晶毒素の殺虫活性を定量的に把握する方法としては、
生虫を用いた殺虫試験により半数致死濃度を求め、残存
殺虫活性を定量的に測定するという方法を採用した。す
なわち、適当に希釈した試料液夫々に対する検定供試昆
虫の死亡率を測定し、試料液の濃度と死亡率との関係か
ら半数致死濃度を求め、殺虫活性の高低を比較する方法
である。
〔作用〕
本発明の殺菌処理が、なぜ殺菌効率を向上させ、結晶毒
素の殺虫活性を維持することに有効であるのか不明であ
るが、本発明方法によれば、殺菌処理をより緩徐(例え
ば、化学殺菌剤の使用量が軽減する)にすることが可能
で、結晶毒素の殺虫活性の低下を防止できるばかりでな
く、品質の一定した殺虫剤を定常的に供与でき、かつ従
来のものからは予測出来ないほど殺虫活性を飛躍的に高
めることができるという作用を奏するのである。
〔実施例〕
次に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。
実施例1 肉エキス1%、ペプトン1%、NaCl0.5%、pH7.0
の培養原料液を110℃にて10分間加熱殺菌し、これ
にバチルス・チューリンゲンシス・バラエティ・クルス
タキHD−1菌株(アメリカ農務省ブランズビル研究所
保管菌株)を肉エキス・ペプトン寒天斜面に30℃、4
8時間静置培養した種菌を接種し、30℃にて、5日間
振盪培養を行なった。培養2日目以降、約50%の細胞
内に結晶毒素と芽胞の形成が認められ、3日目から、細
胞外に放出され、4.5日目には、芽胞の放出率(下記の
方法)は90%となった。同培養液は芽胞の90%が細
胞から放出されてから、15時間後に相当した。この培
養で培養液のpHは8程度となっている。この培養液を単
位重量中に同量含み、かつpH1,3,5,5.5,6,6.
5,7,7.5,9,11となるような10種の殺菌処理
を施す培養液を夫々適当な濃度のH2SO4、あるいは、
NaOH溶液及び無菌水で調製する。この培養液を卓上
型遠心分離機(14000rpm,4℃、10分間)を用
いて遠心分離し、上澄部分をデカンテーションにより、
回収する。本上澄液の10%を水で置換したものを遠心
管中の残渣にもどし、再分散させる。
この液に界面活性剤であるペレックスOTP希釈液を数
滴、滴下し、液中の濃度が0.02%となるようにし、同
液を5mlずつ試験管に分注し、これにより殺菌剤5mlを
添加することにより、下記の条件となるように薬液を予
じめ調合したものを同試験管にすばやく加え、所定の加
熱処理を施した後、室温に冷却し、15000rpmにお
いて、10分間遠心分離操作に付し、上清液を捨てて、
沈降物に5mlの無菌水を加えて懸濁する操作を2回繰り
返し、殺菌剤と菌体外可溶性毒素物質を除去した。
このようにして得られた夫々の試料液の生残細胞・芽胞
数(ケ/ml)と残存殺虫活性を以下の方法に準じて測定
した結果を表1に示す。pH1,9および11に於ては、
いずれの殺菌剤を用いた場合も、試料液を希釈しない状
態でコナガに投与しても、死亡が観察されず、半数致死
濃度は測定不能となった。塩素系ならびに酸素系殺菌剤
に対しては、殺菌処理を施す培養液のpHを4ないし、7
に調整する。また好ましくは、pH5〜5.5の範囲内に調
整することで高い残存殺虫活性が得られる。
芽胞の放出率測定 培養の種々の過程で培養液を適宜、無菌採取し、位相差
光学顕微鏡(倍率1500倍、油浸法)下で培養状況を
観察する。培養液−試料あたり、任意に視野を5箇所選
び、芽胞の放出率を個々に求め、その平均値をもって、
各培養過程における芽胞の放出率とした。
なお、芽胞の放出率は、視野に存在する全芽胞数(結晶
毒素ならびに芽胞を自己体内に含む細胞と培養液中に遊
離する芽胞の総数)に対する遊離芽胞数の割合(%)で
表示することとする。
生存細胞・芽胞数測定 試料液1mlを採り、無菌水にて適宜希釈し、肉エキス・
ペプトン寒天平板上に流し、30℃にて48時間培養
し、発生する集落を数えて、これより試料中の生残細胞
・芽胞数(ケ/ml)を計算する。
残存殺虫活性測定 試料液を適当に水で希釈した一連の5ないし6濃度段階
の被検定液を作製し、この一連の被検定液50mlに20
0cm2のキャベツ生葉を1分間浸漬する。キャベツ生葉
を風乾後、大型シャーレに敷き、各区30頭のコナガ3
令幼虫を放飼し、72時間後に死虫数を数え死亡率
(%)を産出する。この結果をフィニー(Finney)の図
解法(Finney,D.J.(1947)Probit Analysis,Cambridge U
niv.Press,Cambridge,318PP)により解析し、半数致死
濃度(被検定液中の試料液の濃度;ppm)を求める。
実施例2 バチルス・チューリンゲンシス・バラエティ・イスラエ
レンシスHD−522菌株〔アメリカ農務省ブランズ・
ビル研究所保管菌株〕を肉エキス1%、ペプトン0.5
%、酵母エキス0.5%、pH7.0の加熱殺菌済培養原料液
10に接種し、30℃に保って、毎分5の無気空気
で通気攪拌培養した。培養の種々の過程で培養液を適
宜、無菌採取し、位相差光学顕微鏡により培養状況を観
察したところ、培養45時間後に芽胞の放出率が90%
に達した。
60時間で培養を終了し、最終pHは、8.5であった。こ
の培養終了液について、表2に示すようなpHに調整し、
実施例1と同様の操作で殺菌処理を施し、それぞれにつ
いて生残細胞・芽胞数を測定した。
殺虫力測定は、各殺菌終了液を蒸留水で希釈し、段階濃
度希釈液をつくり、その各2mlをアカイエカ(Culex pi
piens)の3令幼虫30頭を浮遊した200mlの飼育液
中に加え、27℃に保って2日後、死亡虫数を測定し、
半数致死濃度を求め、培養終了液についての値と対比し
て、活性保持率(%)を産出した。結果を表2に示す。
実施例1と同様に、殺菌すべき培養液のpHを4ないし7
に調整する、また好ましくは、pH5〜5.5の範囲内に調
整することで高い残存殺虫活性が得られることがわか
る。
実施例3 バチルス・チューリンゲンシス・バラエティ・クルスタ
キHD−1菌株を坂口フラスコ中のC培地(グルコース
1%、コーンスチープリカー1%、Mn.1ppm:pH7.
0)50mlに接種し、30℃、3日間振盪培養する。実
施例1、2と同様に、芽胞の放出率を追跡したところ、
培養2.5日後に、芽胞の90%が放出するに至った。こ
の培養液のpHを5.5に調整した後、同液0.8を日立連続
遠心分離用ローター(容量1)に入れ、回転数を種々
変えて(重力加速度:1000×g〜7000×g)、
回分遠心分離を行う。遠心終了後、沈澱部をまき込まな
いように注意深く、上清部分をとり除き、水溶性成分の
除去割合(濃縮比率:×1、×5、×10)の異なる濃
縮された培養液を得る。同液に界面活性剤であるエマル
ゲン910希釈液を数滴、滴下し、液中の濃度が0.25
%となるように添加混合した液5mlずつを試験管に分注
し、実施例1に用いた殺菌剤を適宜希釈したものを5ml
ずつ添加し、所定の条件で加熱処理を施した後、実施例
1と同様に操作して、薬剤を除去した沈降物を集め、無
菌水に懸濁し、これについて生残細胞・芽胞数及び残存
殺虫活性を測定した。生残芽胞数が0ケ/mlとなる混合
液中の薬剤の最小値と同液の残存殺虫活性を表3に示
す。
表3から明らかなように、培養液からの水溶性成分の除
去割合の増大化に応じて、培養固形分換算の薬剤使用量
(混合液中の薬剤濃度/混合液中の培養固形分濃度)を
軽減できるとともに、培養固形分あたりの残存殺虫活性
を飛躍的に高めることが可能となった。
実施例4 肉エキス0.5%、ペプトン0.5%、CSL2%、グルコ
ース1%の培養原料液を加熱殺菌し、これにバチルス・
チューリンゲンシス・バラエティ・クルスタキHD−1
株を、予め7時間、前培養した種菌液を接種し、30℃
で通気攪拌培養する。培養前期から中期にかけて、アン
モニア水を注加することにより、培養液のpHを6.75±
0.25の範囲に調節し、中期以降はpH上昇にまかせ、5
4時間にて培養を終了する。実施例3と同様に、芽胞の
放出率を追跡したところ、培養38時間後に、芽胞の9
0%が放出するに至った。終了時のpHは8.8に達してい
た。
これに硫酸を添加し、pHを5.5とし、8000rpmで連
続遠心沈降機に通して、濃縮泥(×5)を取得する。こ
れにドテシルベンゼンスルホン酸ソーダを0.15%とな
るように添加した後に、パラトルエンスルホンクロルア
ミドナトリウムを0.15%添加し、60℃に昇温し、1
0分間保持した。
生残細胞・芽胞数は0ケ/mlであり、下記の殺虫力測定
により求めた殺虫活性保持率は60%であった。
殺虫力測定 展着剤ダイン(武田薬品工業(株))を0.03%添加し
た水道水で殺菌処理液を順次希釈し、段階濃度、希釈液
列を整える。
直径8cmの円形に打ち抜いたキャベツの葉片を希釈液中
に浸漬し、風乾する。この葉片の上にコナガ3令幼虫1
0頭を載せ、3日後の死虫数を測定する。1水準3連で
半数致死濃度を求め、培養終了液についての値と対比し
て、活性保持率(%)を算出する。
実施例5 実施例4と同様にして得たpH5.5の遠心沈降濃縮泥にエ
マルゲン910を0.12%となるように添加した後に、
次亜塩素酸ソーダを0.09%(有効塩素として)添加
し、二重管のガラス内管の一端から連続的に送入し、外
管に55℃の温湯を並流で流入して、ピストン流で50
℃に昇温し、その温度に10分保持してから、連続的に
流出せしめる。
生残細胞・芽胞数0ケ/ml、および殺虫活性保持率63
%を得た。
実施例6 バチルス・チューリンゲンシス・バラエティ・イスラエ
レンシスHD−522株を2XC倍地(グルコース2
%、コーンスチープリカー2%、Mn2ppm:pH7.0)に接
種し、60時間通気攪拌培養した。
培養終了pHは8.9に達していた。これに塩酸を注加し、
pHを5.5とした後、10000rpmで遠心沈降により上
澄液を去り、結晶毒素と生芽胞混在沈泥(×10濃縮)
を得、実施例5と同様に界面活性剤処理をする。
ついで、次亜塩素酸ソーダを0.10%(有効塩素とし
て)添加し、50℃に昇温し、10分間保持した。実施
例2に準じて、生残細胞・芽胞数およびアカイエカ幼虫
に対する殺虫力を測定したところ、生残細胞・芽胞数0
ケ/mlおよび殺虫活性保持率62%の結果であった。
(ハ)発明の効果 本発明は、コナガ、モンシロチョウ、ヨトウガ、イチモ
ンジセセリ、などの鱗翅目昆虫の幼虫やアカイエカなど
の双翅目昆虫の幼虫に対して有効で、かつ生菌体および
胞子による二次増殖がない殺虫剤の製造法に関し、結晶
毒素を含有するBT菌の培養液に、特定の処理を施した
後に、殺菌処理を施すことで、化学薬品の使用量を大幅
に削減したより緩徐な殺菌を可能とし、しかも、殺菌処
理後の残存殺虫活性を飛躍的に高められるという優れた
効果を有し、当該殺虫剤の生産性向上ならびに品質向上
に大きく寄与し、生菌体による二次的災害生起のない安
全で高い薬効のBT農薬を、工業的に安全に製造し、提
供出来るため、農薬業界及び農業の分野に広く貢献でき
るものである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 大森 巖 愛知県名古屋市港区船見町1番地の1 東 亞合成化学工業株式会社研究所内 (72)発明者 清水 和郎 愛知県名古屋市南区鳥栖2丁目12番20号 審査官 今村 玲英子

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】バチルス・チューリンゲンシス(Bacillus
    thuringiensis)の培養液中に存在する生芽胞および生
    栄養細胞の殺滅を培養により芽胞の90%が放出された
    後で、かつ該放出後24時間以内の培養液に、水溶性成
    分の除去分離行程を施し、かつpHを4〜7に調整した後
    に実施することを特徴とする殺虫剤の製造方法。
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