JP4100948B2 - バチルス・ポピリエの胞子嚢の製造方法 - Google Patents

バチルス・ポピリエの胞子嚢の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、バチルス・ポピリエに属する菌を培地で培養することによるコガネムシ科昆虫に対し防除効果を有するバチルス・ポピリエの胞子とパラスポラルボディとを含む胞子嚢の製造方法、コガネムシ科昆虫の防除剤及びコガネムシ科昆虫の防除方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
コガネムシ科昆虫の幼虫は、芝や農園芸作物や樹木等の広範囲な植物の根を食餌し、多大な被害を与えることが知られている。これらコガネムシ科昆虫の幼虫は地中に棲息するため、地上から散布する化学農薬では防除効果を得にくく、さらに幼虫の棲息場所も特定しにくい。このため広範囲にしかも多量の農薬散布により地中に農薬を浸透させる必要があるため自然環境や人体に対する悪影響が懸念されており、より有効な防除方法が切望されている。
【0003】
バチルス・ポピリエに属する菌はコガネムシ科昆虫の幼虫に寄生して乳化病を発病させ、最終的にこれらを死に至らしめることが知られており、化学農薬が効きにくいコガネムシ科昆虫の防除に該菌の胞子嚢を利用しようとする試みは古くから行われてきた。しかしながら、該菌はコガネムシ幼虫の体内では生育するものの、人工培地を用いた培養で生育することは難しく、該菌の胞子嚢を培地で製造することは特に難しかった。また福原は、培地を用いた培養で得た胞子嚢では幼虫の感染、発病が起こらないと報告している(福原俊彦著 昆虫病理学57頁、1979年)。
【0004】
例えば、ハイネスらはペプトン0.5%、酵母エキス1.5%、リン酸水素二カリウム0.3%、グルコース0.1%及び活性炭1%を含む液体培地でバチルス・ポピリエの培養を試み、最大で培養液1ml当たり2.06×10個の胞子嚢が得られる例を報告している(Journal of Invertebrate pathology,22巻,377−381頁,1973年)。しかし、培地に対するグルタミン酸の含有量や全アミノ酸に対するグルタミン酸の割合は不明であり、また、研究者自身もアミノ酸組成は胞子嚢の生産には関係ないと記載している(379頁、第1コラム、19行目)。
【0005】
また、ハイネスらは対数増殖後期の成熟した細胞をペプトン(トリプトン)0.5%、酵母エキス1.5%、リン酸水素二カリウム0.3%、グルコース0.1%、活性炭1%を含む液体培地成分でバチルス・ポピリエを培養することで培養液1ml当たり3.1×10個の胞子嚢を得たと報告している(Journal of Invertebrate pathology,19巻,125−130頁,1972年)。しかし、この培養方法は培養時間が長く、2週間程度かかっていた。
【0006】
また、米国特許第4824671号には1%可溶性デンプン、0.1%トレハロース、0.5%酵母エキス、0.3%リン酸水素二カリウム、0.1%炭酸カルシウムを含む液体培地で培養し、培養液1ml当たり1×10個の胞子嚢数が得られた例が挙げられている。しかし、この場合も得られた胞子嚢に胞子は有るがパラスポラルボディは存在せず、土壌1kgに2.0×1012個の割合で胞子嚢を散布し、コガネムシ科昆虫の幼虫に経口摂取させた際の乳化病感染率は7週間で47.59%であり、幼虫体内で形成された胞子嚢に比較してもコガネムシ科昆虫の幼虫に対する殺虫効果は弱かった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、コガネムシ科昆虫に対し防除効果を有するバチルス・ポピリエの胞子とパラスポラルボディとを含む胞子嚢を効率良く得る製造方法、該製造方法により得られるコガネムシ科昆虫の防除剤及び防除方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、コガネムシ科昆虫の効果的な防除には、バチルス・ポピリエの胞子のみでなく、胞子とパラスポラルボディとを含む胞子嚢が必要であることを明らかにした。そして該胞子とパラスポラルボディとを含む胞子嚢の培養での生産にはグルタミン酸と生育阻害物質を除去すると考えられる吸着剤とを特定濃度添加した培地で培養する必要があることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明はバチルス・ポピリエに属する菌を培地で培養し胞子とパラスポラルボディとを含む胞子嚢を製造する方法であって、グルタミン酸を0.2〜4.0質量%、吸着剤を0.05〜質量%含む培地で培養することを特徴とする、コガネムシ科昆虫に対し防除効果を有するバチルス・ポピリエの胞子とパラスポラルボディとを含む胞子嚢の製造方法を提供するものである。
【0010】
また本発明は、前記製造方法により得られたバチルス・ポピリエの胞子とパラスポラルボディとを含む胞子嚢を有効成分として含有するコガネムシ科昆虫の防除剤及び該防除剤をコガネムシ科昆虫の生息土壌に散布するコガネムシ科昆虫の防除方法を提供するものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明で用いるバチルス・ポピリエ(Bacillus popilliae)に属する菌の細菌学的性質は、バージェイズ・マニュアル・オブ・デターミネイティブ・バクテリオロジー(Bergey’s Manual of Determinative Bacteriology)によれば、形態的性質は長さが1.3〜5.2μm、幅が0.5〜0.8μmのグラム陰性桿菌であり、生育温度は20〜35℃で胞子嚢の中に胞子とパラスポラルボディとを有する。
【0012】
バチルス・ポピリエに属する菌の胞子嚢は、図1に示す模式図の如く、胞子とパラスポラルボディ(又は副胞子小体)と呼ばれる小体を含む嚢である。しかし、従来の培地を用いたバチルス・ポピリエの培養方法に関する文献では、胞子嚢と胞子とが明確な区別なく用いられている例が多く、文献中の「胞子」という言葉が胞子のみを意味するのか、胞子のみを含む胞子嚢を意味するのか、あるいは胞子とパラスポラルボディとを含む胞子嚢なのか不明確であった。本発明者らは昆虫、特にコガネムシ科昆虫の殺虫若しくは幼虫の生育阻害による防除効果をあたえるためには胞子とパラスポラルボディとが必要であることを明らかにした。
【0013】
近年、これまでの菌株も含めバチルス・ポピリエは、パエニバチルス・ポピリエ(Paenibacillus popilliae)に再分類されるべきとのパターソンらの学説上の見解も示されており(Int. J. Syst. Bacteriol.,49巻,1999年,531−540頁)、現段階では名称の扱いが明確になっていない。よって、本発明においては、バチルス・ポピリエに属する菌とはパエニバチルス・ポピリエに属する菌をも包含するものとする。
【0014】
本発明の製造方法に用いる培地は生育を阻害する物質の除去を目的とした吸着剤を含む。該吸着剤としては活性炭、吸着樹脂、アロフォサイト又はモレキュラーシーブ等が挙げられる。生育阻害物質の主たるものは過酸化水素であると考えられ、吸着剤は過酸化水素分解能若しくは過酸化水素除去能を有するものが好ましく、具体的には活性炭が好ましく挙げられる。
【0015】
本発明に用いる活性炭の形状は、粉末状、粒状又はシート状等が挙げられ、いずれも使用できるが優れた菌の増殖及び胞子嚢化率を示すことから特に粉末状の活性炭が好ましい。
【0016】
本発明でいう吸着樹脂は、微細物質を吸着する多孔質重合体を意味し、例えば粒子状に成型された架橋性多孔質重合体で、粒子内部にまで達する細孔構造により水溶液中の微細物質を効率よく吸着しうる合成樹脂である。具体的には、三菱化学社製芳香族系合成樹脂吸着剤DIAION HP20、DIAION HP21、SEPABEADS SP825、SEPABEADS SP850、SEPABEADS SP70、SEPABEADS SP700、置換芳香族系合成樹脂吸着剤SEPABEADS SP207、アクリル系合成樹脂吸着剤 DIAION HP2MGなどを挙げることができる。
【0017】
本発明に用いる培地中の吸着剤の濃度は、本発明の効果を達成する範囲であれば特に限定されないが、培地に対して0.05〜5質量%が好ましい。0.05質量%以上であれば菌の生育阻害物質の吸着、除去効果を十分発揮し、5%以下であれば菌の増殖に必要な栄養源の吸着も少ないため、該範囲内で優れた菌の増殖促進効果を呈する。本発明に用いる吸着剤の添加方法としては殺菌前の培地中に添加しても良いし、殺菌後の培地に添加しても良い。
【0018】
本発明で言うグルタミン酸にはその生理学的に許容される塩も含まれる。具体的にはグルタミン酸ナトリウム、グルタミン酸カリウム、グルタミン酸アンモニウム、グルタミン酸塩酸塩等が挙げられる。これらの培地中の濃度はグルタミン酸として0.2〜4.0質量%であり、より優れた菌の増殖及び胞子嚢化率を呈する点で0.4〜1.0質量%が好ましい。
【0019】
本発明に用いる培地には、グルタミン酸以外にも通常の微生物培養に必要とされる窒素源が添加されていることが好ましい。窒素源としては、通常、微生物の培養に用いられるペプトン、肉エキス、魚肉エキス、ラクトアルブミン水解物又は酵母エキス等の有機性窒素源が挙げられる。それ以外の窒素源として、アンモニア、硝酸及びそれらの塩等の無機窒素源が挙げられる。本発明に用いる窒素源の培地中の濃度は5.0質量%以下であることが好ましく、より優れた菌の増殖促進効果を呈することから0.2〜4.0質量%が好ましい。
【0020】
窒素源中には各種のアミノ酸が含まれており、窒素源を添加することで結果的に培地中にグルタミン酸を添加することになる。従って、該窒素源の添加量を増やすことでもグルタミン酸の濃度を高めることができるが、その方法では結果的に胞子とパラスポラルボディとを含む胞子嚢を形成することはできない。これは窒素源中に含まれる生育阻害物質やその他不必要な成分濃度も同時に高まるためと推測される。そのため、培地中の全アミノ酸に対するグルタミン酸の割合は35〜90質量%が好ましい。
【0021】
但し、本発明において全アミノ酸とは、ペプトンや酵母エキス等の通常培地に用いられる窒素源に含まれていることが知られているアラニン、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、ヒスチジン、チロシン及びバリンからなる16種類の遊離型アミノ酸の集合を指すものとする。該16種類の遊離型アミノ酸の合計量は、ペプトンや酵母エキス等に含まれる総ての遊離型アミノ酸量を概ね示すものとしてしばしば用いられるものである。
【0022】
さらに、本発明に用いる培地には、通常の微生物培養に必要とされる炭素源が添加されていて良い。炭素源としては、トレハロース、シュークロース等の糖類が挙げられる。また廃糖蜜、デンプン分解物、チーズホエー等の農産廃棄物を用いることもできる。これらの炭素源の添加濃度は、本発明の効果を達成する範囲で有れば特に限定されないが、より優れた菌の増殖促進効果を呈することから培地に対して0.001〜5質量%が好ましい。ただし、胞子とパラスポラルボディとを含む胞子嚢を形成させるためには、グルコースの存在は好ましくなく、培地に含まれるグルコース濃度は培地に対して0.01質量%以下とすることが好ましい。
【0023】
本発明に用いる培地には、必要に応じてリン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム等のリン酸塩又はそのナトリウム塩等の無機塩が添加されていても良い。該無機塩の添加濃度は、本発明の効果を達成する範囲であれば特に制限されないが、培地に対して1質量%以下が好ましい。
【0024】
さらにピルビン酸を培地に加えることでより優れた菌の増殖と胞子嚢化率を得ることができる。本発明で言うピルビン酸にはピルビン酸の生理学的に許容される塩を含む。具体的にピルビン酸の生理学的に許容される塩としてはピルビン酸ナトリウム、ピルビン酸カリウム等が挙げられる。
【0025】
ピルビン酸の濃度は培地に対して0.01〜0.5質量%であり、より優れた菌の増殖及び胞子嚢化率を呈する点で好ましくは培地に対して0.03〜0.3質量%である。添加されるピルビン酸は、培地成分と共に殺菌しても良いし、培地成分と分けて殺菌して培養開始時に添加しても良い。
【0026】
本発明の製造方法に用いる培地は液体培地であっても固体培地であっても良い。本発明の製造方法を液体培地に適用する際、水も培地成分として含まれるものとする。また、本発明の製造方法を固体培地に適用する際に用いる基材としては、例えば寒天等の多糖類が好ましく挙げられる。該基材の培地中の濃度は0.5〜5質量%であり、より優れた菌の増殖促進効果を呈することから1〜3質量%が好ましい。
【0027】
本発明に用いるバチルス・ポピリエに属する菌の増殖に適した温度は25〜32℃である。また、pHは6.5〜8.5でありより好ましくは7〜8である。pHの調整には各種の緩衝液や塩酸又は硫酸など通常用いられる酸、あるいは水酸化ナトリウム、水酸化カリウム又はアンモニアなど通常用いられるアルカリを使用することができる。
【0028】
液体培養は、回分培養、連続培養、半回分培養又は流加培養など、いずれの方法でも良い。培養時間は培養方法、培養温度、培養pH又は接種菌体量によって異なるが、通常、回分培養の場合で5〜10日である。
【0029】
培養終了後に培養物から胞子とパラスポラルボディとを含む胞子嚢を回収する方法としては、固体培養の場合には該胞子嚢を含んだ菌体が培地の表面にあることから、水あるいはリン酸緩衝液、Tris−HCl等の緩衝液を添加して懸濁させて該菌体を洗い流し、その後、遠心分離や濾過等の一般的な方法で分離、回収すればよい。液体培養の場合には、培養液から遠心分離や濾過等の一般的な分離方法で該胞子嚢を含む菌体を分離し、回収すればよい。この際、必要に応じて水や緩衝液を使った洗浄操作を加えてもよい。
【0030】
従来の培地での培養では、コガネムシ科昆虫に防除効果を有する胞子とパラスポラルボディとを含むバチルス・ポピリエの胞子嚢は殆ど得られず、式1の胞子嚢化率で示される、菌数あたりの胞子嚢数の割合は0.05%未満である。
(式1) 胞子嚢化率(%)=〔(胞子嚢数)÷(菌数)〕×100
【0031】
これに対し、本発明の製造方法によれば、胞子とパラスポラルボディとを含むバチルス・ポピリエの胞子嚢を5〜50%の胞子嚢化率で製造することが可能である。また、液体培養により培養液1ml当たり、胞子とパラスポラルボディとを含む胞子嚢の数を5×10以上、通常5×10〜1×10個で製造することが可能である。
【0032】
バチルス・ポピリエ(Bacillus popilliae)に属する菌株の中でもコガネムシ科昆虫の幼虫に生育阻害若しくは殺虫活性を示す菌種としては、バチルス・ポピリエ・セマダラ(Bacillus popilliae Semadara、FERM BP−8068)、バチルス・ポピリエ・マメ(Bacillus popilliae var. popilliae Mame、FERM BP−8069)、バチルス・ポピリエ・ヒメ(Bacillus popilliae var. popilliae Hime、FERM P−17660)、バチルス・ポピリエ・サクラ(Bacillus popilliae var. popilliae Sakura、FERM P−17662)、バチルス・ポピリエ・デュトキ(Bacillus popilliae Dutky、ATCC No.14706)、バチルス・ポピリエ・メロロンサ(Bacillus popilliae subsp. melolonthae)等が挙げられる。
なお、バチルス・ポピリエ・セマダラは、平成10年5月21日に工業技術院生命工学工業技術研究所(現 独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センター)に受託番号FERM P−16818で寄託され、平成14年5月21日にブタペスト条約に基づく国際寄託に移管され、受託番号FERM BP−8068が付与されている。また、バチルス・ポピリエ・マメは、平成11年11月25日に工業技術院生命工学工業技術研究所(現 独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センター)に受託番号FERM P−17661で寄託され、平成14年6月10日にブタペスト条約に基づく国際寄託に移管され、受託番号FERM BP−8069が付与されている。
【0033】
本発明の製造方法により得られた胞子とパラスポラルボディとを含むバチルス・ポピリエの胞子嚢はコガネムシ科昆虫に殺虫活性又は幼虫の生育抑制等の防除効果を示す。このため該胞子嚢はコガネムシ科昆虫の防除剤として有用である。
【0034】
防除対象のコガネムシ科昆虫は、ドウガネブイブイ(Anomala cuprea)、セマダラコガネ(Blitopertha orientalis)、マメコガネ(Popillia japonica)、ウスチャコガネ(Phyllopertha diversa)、チャイロコガネ(Adoretustenuimaculatus)、ヒメコガネ(Anomala rufocuprea)等が挙げられる。
【0035】
本発明の製造方法により製造した胞子とパラスポラルボディとを含む胞子嚢は、それらを懸濁した液のまま昆虫、特にコガネムシ科昆虫の防除剤として用いても良く、あるいは乾燥して粉末にして散布しても良い。また乾燥した後、水あるいは緩衝液の懸濁液として散布しても良い。更に該胞子嚢を農薬に用いられる公知慣用の担体、固着剤、分散剤、凍結防止剤、増粘剤又は栄養剤等の各種の添加剤と共に通常の微生物農薬の製造方法に従って、粉剤、粒剤、水和剤、乳剤、液剤、フロアブル又は塗布剤等に製剤化しても良い。また本発明の製造方法により得られる胞子とパラスポラルボディとを含む胞子嚢を他の微生物製剤に混合して使用することも可能である。
【0036】
前記防除剤に含まれる胞子とパラスポラルボディとを含む胞子嚢の含有割合は、前記防除剤の形状と使用方法により異なるが、通常0.0001〜100質量%が好ましい。
【0037】
施用方法としては、剤型や使用方法等または対象作物等によって適宜選択され、例えば、地上液剤散布、地上固形散布、空中液剤散布、空中固形散布、施設内施用、土壌混和施用又は土壌潅注施用等の方法を挙げることができる。また、他の薬剤、すなわち殺虫剤、殺線虫剤、殺ダニ剤、除草剤、殺菌剤、植物生長調節剤、肥料又は土壌改良資材(泥炭、腐植酸資材又はポリビニルアルコール系資材等)等と混合して施用、あるいは混合せずに交互施用または同時施用することも可能である。
【0038】
前記防除剤の施用量は、コガネムシ科昆虫の種類、適用植物の種類及び剤型等によって異なるため一概には規定できないが、例えば、地上散布する場合、本発明の胞子とパラスポラルボディとを含む胞子嚢の施用量が、1010〜1015個/a、好ましくは1011〜1014個/a程度となるようにすればよい。
【0039】
【実施例】
以下、実施例及び試験例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
【0040】
(参考例1)
各実施例で調製した培地の培地成分として使用したペプトン、酵母エキス及びラクトアルブミン水解物中の遊離型アミノ酸含有量をオルトフタルアルデヒド(OPA)を用いたポストカラム法により測定した。
【0041】
(1)試料の調製
標準試料としてアミノ酸混合標準液H型(和光純薬社製、各アミノ酸2.5mmol/lを含む)を0.02M塩酸で5倍希釈し、ポアサイズ0.2μmのフィルターで濾過し、標準試料溶液を調製した。
【0042】
測定試料は、ペプトンとして「ポリペプトンS」(日本製薬社製)、「トリプトン」(ディフコ社製)のものを、酵母エキスとしてオクソイド社製、ディフコ社製のものを、及びラクトアルブミン水解物(和光純薬社製)を用い、1.0質量%溶液を各々調製し、これらを10質量%トリクロロ酢酸水溶液で2倍希釈、よく撹拌した後、遠心分離により不溶性沈殿を除去した。その後、上清をポアサイズ0.2μmのフィルターで濾過して各測定試料溶液を調製した。
【0043】
(2)分析
標準試料溶液、各測定試料溶液の10μlを高速液体クロマトグラフィーに注入し、アミノ酸分析を行った。なお、分析は日立製作所製のアミノ酸自動分析装置「LaChrom」を使用し、図2に示した流路図に基づいて行った。なお、該アミノ分析に用いたOPA標識用反応液及び溶離液の組成を表1及び2に記載した。
【0044】
【表1】
Figure 0004100948
【0045】
試薬は全て和光純薬社製特級品を使用した。
【0046】
【表2】
Figure 0004100948
【0047】
試薬は全て和光純薬社製を使用し、クエン酸ナトリウム2HO、クエン酸HO、カプリル酸はアミノ酸分析用、その他は特級品を使用した。
【0048】
標準試料溶液及び各測定試料溶液より得られたピークエリアから換算して、各測定試料中に含まれるL−グルタミン酸及び全アミノ酸の含有率を算出し表3に示した。
【0049】
【表3】
Figure 0004100948
【0050】
(参考例2)
ハイネスらに記載の培地条件(Journal of Invertebrate pathology,22巻,377−381頁,1973年)、即ち、ペプトン0.5質量%、酵母エキス1.5質量%、リン酸水素二カリウム0.3質量%、グルコース0.1質量%及び活性炭1質量%を含む液体培地で、市販されている各ペプトン、酵母エキスの各組合せにおける培地中のグルタミン酸の含有率、および全アミノ酸中に含まれるグルタミン酸の含有率を計算し、表4に示した。
【0051】
【表4】
Figure 0004100948
【0052】
培地中のグルタミン酸の含有率は、市販の最もグルタミン酸濃度が高いペプトンと酵母エキスを用いた場合、すなわちペプトン(ディフコ社製「トリプトン」)と酵母エキス(オクソイド社製)を用いた場合の0.12質量%であった。
【0053】
また、同様に全アミノ酸中に含まれるグルタミン酸の含有率は、市販の最も全アミノ酸中に含まれるグルタミン酸の高いペプトンと酵母エキスを用いた場合、すなわちペプトン(日本製薬社製「ポリペプトンS」)と酵母エキス(ディフコ社製)を用いた場合の20.6質量%であった。
【0054】
(実施例1、比較例1) 固体培地の調製
フラスコに蒸留水80gを入れ、L−グルタミン酸(和光純薬社製特級)、吸着剤、ペプトン(日本製薬社製「ポリペプトンS」)、酵母エキス(オクソイド社製)、トレハロース二水和物(和光純薬社製特級)、寒天(和光純薬社製特級)を表5に示した量、混合した。さらに撹拌しながら1mol/lの水酸化カリウム水溶液を加えてpHを8.0に調整した。さらに蒸留水を加えて最終的に100gとし、実施例として培地(A−1)及び(A−2)を、比較例として(B−1)〜(B−4)を調製した。
なお、吸着剤として用いた活性炭は和光純薬社製特級、および合成吸着樹脂は三菱化学社製「DIAION HP20」を使用した(以下同様)。
【0055】
【表5】
Figure 0004100948
【0056】
参考例1をもとに、培地に対するグルタミン酸の含有率及び全アミノ酸に対するグルタミン酸の割合をそれぞれ求め、結果を表6及び表7に記載した。
【0057】
(実施例2、比較例2) 固体培地を用いた培養例
各培地を121℃、20分間のオートクレーブで殺菌し、寒天が固化しないうちに十分撹拌して直径9cmのプラスチックシャーレに20mlずつ分注して平板培地を作製した。
【0058】
バチルス・ポピリエ・セマダラ及びバチルス・ポピリエ・サクラの種菌は、乳化病感染コガネムシ幼虫から採取した胞子嚢を用いた。胞子嚢数を顕微鏡による直接検鏡で計測し、蒸留水にて胞子嚢の濃度が1×10個/mlとなるよう胞子嚢液を調製した。これらをプラスチックチューブに0.5ml取り、ヒートブロックで70℃、20分間の加熱処理を行った。該種菌の50μlを上記で調製した平板培地に塗布し、30℃の培養装置内にて8日間培養した。
【0059】
培養終了後、シャーレに蒸留水2mlを滴下して、発生したコロニーをよく懸濁し、菌体を回収した。胞子嚢数、及び菌数を顕微鏡による直接検鏡で計測し、式1を用いて胞子嚢化率を算出した。表6及び表7に各菌株のシャーレ1枚当たりの胞子嚢数及び胞子嚢化率を示す。
【0060】
【表6】
Figure 0004100948
【0061】
【表7】
Figure 0004100948
【0062】
表6及び表7の結果から、各菌株とも吸着剤の存在下、グルタミン酸を添加した培地で培養した場合の方が胞子嚢数及び胞子嚢化率が高かった。
【0063】
(実施例3、比較例3) 液体培地の調製
フラスコに蒸留水700gを入れ、添加するアミノ酸としてL−グルタミン酸(和光純薬社製特級)又はL−アラニン(和光純薬社製特級)を、さらにペプトン(日本製薬社製「ポリペプトンS」)、酵母エキス(オクソイド社製)及びトレハロース二水和物(和光純薬社製特級)を表8に示した量、混合した。さらに攪拌しながら5mol/lの水酸化カリウム水溶液を添加してpHを7.6に調整し、更に蒸留水を加えて最終的に850gとした。この培地を、pH電極を備えた発酵槽(丸菱バイオエンジ社製)に移し、121℃、60分間のオートクレーブ滅菌を行った。
【0064】
次に、フラスコに活性炭素粉末(和光純薬社製特級)を表8に示した量添加し、さらに蒸留水を加えて100gとし活性炭分散液を調製した。また、フラスコに消泡剤(日本油脂社製「ディスホームCA−123」)を表8に示す量添加し蒸留水を添加して50gとし消泡剤液を調製した。活性炭分散液及び消泡剤液を滅菌し、その後発酵槽に無菌的に加え、実施例として培地(C−1)を、比較例として培地(D−1)〜(D−3)を調製した。
【0065】
【表8】
Figure 0004100948
【0066】
(比較例4)
「ハイネスら(Journal of Invertebrate pathology,22巻,1973年,377−381頁)」と比較するため、フラスコに蒸留水80gを入れ、さらにペプトン(ディフコ社製「トリプトン」)、酵母エキス(オクソイド社製)、リン酸水素二カリウム(和光純薬社製特級)、グルコース(和光純薬社製特級)及び活性炭素粉末(和光純薬社製特級)を表9に示した量、混合した。更に蒸留水を加えて最終的に100gとした。これを培地(D−4)と称する。121℃、20分間のオートクレーブ殺菌を行った。
【0067】
【表9】
Figure 0004100948
【0068】
(実施例4、比較例5) 液体培地を用いた培養例
バチルス・ポピリエ・セマダラ、バチルス・ポピリエ・サクラ及びバチルス・ポピリエ・マメの種菌として、各々予め活性炭を含む培地(A−1)を用いた培養で作製した胞子嚢を使用した。無菌的に回収した胞子嚢を顕微鏡による直接検鏡で計測し、蒸留水にて胞子嚢の濃度が1×10個/mlとなるように胞子嚢液を調製した。
【0069】
各菌株の胞子嚢液を1mlずつプラスチックチューブに分注し、ヒートブロックで70℃、20分間の加熱処理を行った。培地(C−1)及び(D−1)〜(D−3)には胞子嚢液を各1ml接種し、撹拌150rpm、通気1vvm、30℃、pH7.6制御の条件で7日間培養した。一方、培地(D−4)は胞子嚢液を0.01ml接種し、30℃の培養装置内にて100rpmの回転数で撹拌して7日間培養した。
【0070】
培養終了後、培養液中の単位容積当たりの胞子嚢数及び菌数を顕微鏡による直接検鏡で計測し、式1を用いて胞子嚢化率を算出した。表10〜12に培養液1mlあたりの胞子嚢数と胞子嚢化率を示す。
【0071】
【表10】
Figure 0004100948
【0072】
【表11】
Figure 0004100948
【0073】
【表12】
Figure 0004100948
【0074】
表10〜12の結果から明らかなように吸着剤とグルタミン酸とを添加した培地においてのみ胞子嚢が得られた。
【0075】
(実施例5、比較例6) 液体培地の調製例
ビーカーに蒸留水700gを入れ、L−グルタミン酸(和光純薬社製特級)、ペプトン(日本製薬社製「ポリペプトンS」)、酵母エキス(オクソイド社製)、ラクトアルブミン水解物(和光純薬社製)、トレハロース二水和物(和光純薬社製特級)を表13に示した量、混合した。攪拌しながら5mol/lの水酸化カリウム水溶液を添加してpHを7.6に調整し、更に蒸留水を加えて850gとした。この培地を、pH電極を備えた発酵槽(丸菱バイオエンジ社製)に移し、121℃、60分間のオートクレーブ滅菌を行った。
【0076】
次に、フラスコに活性炭素粉末(和光純薬社製特級)を表13に示した量添加し、蒸留水を加えて100gとして活性炭分散液を調製した。また、フラスコに消泡剤(日本油脂社製「ディスホームCA−123」)を表13に示した量添加し、さらに蒸留水を加えて50gとし消泡剤液を調製した。該活性炭分散液及び消泡剤液を滅菌し、その後各発酵槽に無菌的に加え、さらに蒸留水を加え最終的に1000gとし、実施例として培地(E−2)〜(E−6)、比較例として培地(E−1)及び(E−7)を調製した。
【0077】
【表13】
Figure 0004100948
【0078】
(実施例6、比較例7) 液体培地を用いた培養例
バチルス・ポピリエ・セマダラの種菌として、各々予め活性炭を含む培地(A−1)を用いた培養で作製した胞子嚢を使用した。無菌的に回収した胞子嚢を顕微鏡による直接検鏡で計測し、蒸留水にて胞子嚢の濃度が1×10個/mlとなるように胞子嚢液を調製した。
【0079】
胞子嚢液を1mlずつプラスチックチューブに分注し、ヒートブロックで70℃、20分間の加熱処理を行った。これを各培地に1ml接種し、撹拌150rpm、通気1vvm、30℃、pH7.6制御の条件で7日間培養した。
培養終了後、培養液中の単位容積当たりの胞子嚢数及び菌数を顕微鏡による直接検鏡で計測し、式1を用いて胞子嚢化率を算出した。表14に培養液1mlあたりの菌体数と胞子嚢数と胞子嚢化率を示す。また、図3に培地に対するグルタミン酸濃度(質量%)と菌数(×108個/ml)及び胞子嚢数(×10個/ml)の関係を示す。
【0080】
【表14】
Figure 0004100948
【0081】
(実施例7、比較例8) 液体培地の調製例
ビーカーに蒸留水700gを入れ、L−グルタミン酸(和光純薬社製特級)、ピルビン酸ナトリウム(和光純薬社製特級)、ペプトン(日本製薬社製「ポリペプトンS」)、酵母エキス(オクソイド社製)、ラクトアルブミン水解物(和光純薬社製)、トレハロース二水和物(和光純薬社製特級)を表15に示す量、混合した。続いて、撹拌しながら4mol/lの水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを7.6に調し、更に蒸留水を加えて最終的に850gとした。調製した培地をpH電極を備えた発酵槽(丸菱バイオエンジ社製)に入れて121℃、50分のオートクレーブ殺菌を行なった。
【0082】
次に、フラスコに活性炭素粉末(和光純薬社製特級)を表15に示す量添加し、さらに蒸留水を加えて100gとし活性炭分散液を調製した。また、フラスコに消泡剤(日本油脂社製「ディスホームCA−123」)を表15に示す量添加し、さらに蒸留水を加えて50gとし消泡剤液を調製した。該活性炭分散液及び消泡剤液を滅菌し、その後発酵槽に無菌的に加え、実施例として培地(F−1)及び(F−2)を、比較例として培地(F−3)を調製した。
【0083】
【表15】
Figure 0004100948
【0084】
(実施例8、比較例9) 液体培地を用いた培養例
実施例6と同様にしてバチルス・ポピリエ・セマダラを種菌として用い、培地(F−1)〜(F−3)に各1mlずつ無菌的に植菌して培養を開始した。培養条件は温度29℃、通気量0.5vvm、回転数150rpmとし、培養中は4mol/lの水酸化ナトリウム溶液及び4mol/lの硫酸水溶液にてpH7.6に制御した。
【0085】
培養を5日間行い、培養液中の単位容積当たりの胞子嚢数及び菌数を顕微鏡による直接検鏡で計測し胞子嚢化率を算出した。表16に培地(F−1)〜(F−3)の菌数、胞子嚢数、胞子嚢化率を示した。
【0086】
【表16】
Figure 0004100948
【0087】
ピルビン酸ナトリウムを添加しかつpHを制御することで高い胞子嚢化率となり、かつ得られた胞子嚢数も高かった。
【0088】
(生物試験例1)
本発明の製造方法により得られた胞子嚢によるコガネムシ科昆虫の幼虫の生育抑制効果試験を行った。
実施例2の培地(A−1)を用いた培地で取得したバチルス・ポピリエ・セマダラの胞子嚢を蒸留水に2×10個/mlとなるよう懸濁させ懸濁液(I)を調製した。さらに、実施例2の培地(A−1)を用いた培地で取得したバチルス・ポピリエ・セマダラの胞子嚢を含む懸濁液をフレンチプレス処理し、胞子嚢から胞子とパラスポラルボディとを分離し取り出した。分離した胞子を蒸留水に2×10個/mlとなるよう懸濁させ懸濁液(II)を調製した。また、分離したパラスポラルボディを蒸留水に2×10個/mlとなるよう懸濁させ懸濁液(III)を調製した。
【0089】
腐葉土を約20gずつ入れた直径6cmのプラスチックカップを80個準備した。
i)プラスチックカップ20個に対し、胞子嚢数が2×10個/カップとなるように胞子嚢を含む懸濁液(I)を散布した。
ii)プラスチックカップ20個に対し、胞子数が2×10個/カップとなるように胞子のみを含む懸濁液(II)を散布した。
iii)プラスチックカップ20個に対し、パラスポラルボディ数が2×10個/カップとなるようにパラスポラルボディのみを含む懸濁液(III)を散布した。
iv)残りの20個には何も散布せず、対照試験とした。
それぞれのカップにドウガネブイブイ2令幼虫を1頭ずつ入れ、25℃の培養装置内で30日間飼育し、経時的に幼虫の死亡率と生存幼虫の平均体重の増加量を測定した。累積死亡率について表17に示し、生育抑制効果について図4に結果を示す。
【0090】
【表17】
Figure 0004100948
【0091】
以上の結果から胞子とパラスポラルボディとを含む胞子嚢が優れた殺虫効果及び幼虫の生育抑制効果を有することが確認された。
【0092】
(生物試験例2)
本発明の製造方法(固体培養)により得られた胞子嚢によるコガネムシ科昆虫の殺虫試験を行った。
【0093】
実施例2の活性炭含有平板培地(A−1)を用いた培養で取得したバチルス・ポピリエ・セマダラの胞子嚢を蒸留水に1×109個/mlとなるよう懸濁し胞子嚢液を調製した。直径6cmのプラスチックカップ40個に腐葉土を約20gずつ入れ、そのうちの20個に対して、胞子嚢数が1×109個/カップとなるように胞子嚢液を散布した。残りの20個には胞子嚢液を散布せず、対照試験とした。それぞれのカップにドウガネブイブイ2令幼虫を1頭ずつ入れ、25℃の培養装置内で40日間飼育し、経時的に死亡個体数を調べ、累積死亡率(%)を求めた。
【0094】
表18に本発明の固体培養で得られた胞子嚢のドウガネブイブイに対する殺虫活性を示す。40日目では100%の死亡率が観察された。
【0095】
【表18】
Figure 0004100948
【0096】
(生物試験例3)
本発明の製造方法(液体培養)により得られた胞子嚢によるコガネムシ科昆虫の殺虫試験を行った。
生物試験例2と同様にして試験区を作製した。ただし、散布した胞子嚢は
i)実施例4の活性炭含有液体培地(C−1)を用いた培養で取得したバチルス・ポピリエ・セマダラの胞子嚢、
ii)実施例4の活性炭含有液体培地(C−1)を用いた培養で取得したバチルス・ポピリエ・マメの胞子嚢、
であった。それぞれのカップにドウガネブイブイ2令幼虫を1頭ずつ入れ、25℃の培養装置内で40日間飼育し、経時的に死亡個体数を調べ、累積死亡率(%)を求めた。
【0097】
表19に本発明の液体培養で得られた胞子嚢のドウガネブイブイに対する殺虫活性を示す。40日目では85〜100%の死亡率が観察された。
【0098】
【表19】
Figure 0004100948
【0099】
(生物試験例4)
本発明の製造方法(液体培養)により得られた胞子嚢によるコガネムシ科昆虫の殺虫試験を行った。実施例8に示した培地(F−2)の培養により得たバチルス・ポピリエ・セマダラ株の胞子嚢を蒸留水に1×109個/mlとなるよう懸濁し胞子嚢液を調製した。
【0100】
直径6cmのプラスチックカップ40個に腐葉土20gずつを入れた。そのうちの20個に対して、胞子嚢数が1×109個/カップとなるよう胞子嚢液を散布した。残りの20個には胞子嚢液を散布せず、対照試験とした。それぞれのカップにドウガネブイブイ2令幼虫を1頭ずつ入れ、25℃の培養装置内で40日間飼育し、経時的に死亡個体数を調べ、累積死亡率(%)を調べた。
【0101】
表20にドウガネブイブイに対する昆虫体外形成胞子嚢の殺虫活性の結果を示す。得られた胞子嚢は殺虫活性を示し40日目までに全ての幼虫が死亡した。
【0102】
【表20】
Figure 0004100948
【0103】
【発明の効果】
本発明は胞子とパラスポラルボディとを含むバチルス・ポピリエの胞子嚢を効率良く得る製造方法を提供できる。すなわち、本発明は5〜10日程度の液体培地で、胞子とパラスポラルボディとを含むバチルス・ポピリエの胞子嚢を5〜50%の胞子嚢化率で製造することができ、また、培養液1ml当たり、胞子とパラスポラルボディとを含む胞子嚢を5×10個以上の割合で製造することができる。また本発明は昆虫、特にコガネムシ科昆虫に殺虫又は幼虫の生育阻害等の防除効果を示す防除剤及び該防除剤を用いた昆虫、特にコガネムシ科昆虫の防除方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 胞子とパラスポラルボディとを含むバチルス・ポピリエの胞子嚢の模式図である。
【図2】 アミノ酸分析に用いた高速液体クロマトグラフィーシステムの模式図である。
【図3】 実施例3における培地中のグルタミン酸濃度に対する胞子嚢数及び菌体数を示したグラフである。
【図4】 生物試験例1におけるドウガネブイブイの生育阻害効果を示したグラフである。
【符号の説明】
1 胞子嚢
2 パラスポラルボディ
3 胞子

Claims (3)

  1. バチルス・ポピリエに属する菌を培地で培養し胞子とパラスポラルボディとを含む胞子嚢を製造する方法であって、グルタミン酸を0.2〜4.0質量%、吸着剤を0.05〜5質量%含む培地で培養することを特徴とする、コガネムシ科昆虫に対し防除効果を有するバチルス・ポピリエの胞子とパラスポラルボディとを含む胞子嚢の製造方法。
  2. 前記培地がグルタミン酸を培地中の全アミノ酸に対し37.01〜90質量%含む請求項1に記載の胞子嚢の製造方法。
  3. 前記培地が培地中にピルビン酸を含む請求項1に記載の胞子嚢の製造方法。
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