JP2002355030A - バチルス・ポピリエの胞子嚢の製造方法、防除剤及び防除方法 - Google Patents

バチルス・ポピリエの胞子嚢の製造方法、防除剤及び防除方法

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JP2002355030A JP2002094765A JP2002094765A JP2002355030A JP 2002355030 A JP2002355030 A JP 2002355030A JP 2002094765 A JP2002094765 A JP 2002094765A JP 2002094765 A JP2002094765 A JP 2002094765A JP 2002355030 A JP2002355030 A JP 2002355030A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 コガネムシ科昆虫に対し防除効果
を有するバチルス・ポピリエの胞子とパラスポラルボデ
ィとを含む胞子嚢を効率良く得る製造方法、該製造方法
により得られるコガネムシ科昆虫の防除剤及び防除方法
を提供すること。 【解決手段】 バチルス・ポピリエに属する菌を
培地で培養し胞子とパラスポラルボディとを含む胞子嚢
を製造する方法であって、グルタミン酸を0.2〜4.
0質量%、吸着剤を0.05〜0.5質量%含む培地で
培養する、コガネムシ科昆虫に対し防除効果を有するバ
チルス・ポピリエの胞子とパラスポラルボディとを含む
胞子嚢の製造方法を提供し、さらには前記製造方法によ
り得られたバチルス・ポピリエの胞子とパラスポラルボ
ディとを含む胞子嚢を有効成分として含有する防除剤及
び該防除剤をコガネムシ科昆虫の生息土壌に散布するコ
ガネムシ科昆虫の防除方法を提供する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、バチルス・ポピリ
エに属する菌を培地で培養することによるコガネムシ科
昆虫に対し防除効果を有するバチルス・ポピリエの胞子
とパラスポラルボディとを含む胞子嚢の製造方法、コガ
ネムシ科昆虫の防除剤及びコガネムシ科昆虫の防除方法
に関する。
【0002】
【従来の技術】コガネムシ科昆虫の幼虫は、芝や農園芸
作物や樹木等の広範囲な植物の根を食餌し、多大な被害
を与えることが知られている。これらコガネムシ科昆虫
の幼虫は地中に棲息するため、地上から散布する化学農
薬では防除効果を得にくく、さらに幼虫の棲息場所も特
定しにくい。このため広範囲にしかも多量の農薬散布に
より地中に農薬を浸透させる必要があるため自然環境や
人体に対する悪影響が懸念されており、より有効な防除
方法が切望されている。
【0003】バチルス・ポピリエに属する菌はコガネム
シ科昆虫の幼虫に寄生して乳化病を発病させ、最終的に
これらを死に至らしめることが知られており、化学農薬
が効きにくいコガネムシ科昆虫の防除に該菌の胞子嚢を
利用しようとする試みは古くから行われてきた。しかし
ながら、該菌はコガネムシ幼虫の体内では生育するもの
の、人工培地を用いた培養で生育することは難しく、該
菌の胞子嚢を培地で製造することは特に難しかった。ま
た福原は、培地を用いた培養で得た胞子嚢では幼虫の感
染、発病が起こらないと報告している(福原俊彦著 昆
虫病理学57頁、1979年)。
【0004】例えば、ハイネスらはペプトン0.5%、
酵母エキス1.5%、リン酸水素二カリウム0.3%、
グルコース0.1%及び活性炭1%を含む液体培地でバ
チルス・ポピリエの培養を試み、最大で培養液1ml当
たり2.06×10個の胞子嚢が得られる例を報告し
ている(Journal of Invertebra
te pathology,22巻,377−381
頁,1973年)。しかし、培地に対するグルタミン酸
の含有量や全アミノ酸に対するグルタミン酸の割合は不
明であり、また、研究者自身もアミノ酸組成は胞子嚢の
生産には関係ないと記載している(379頁、第1コラ
ム、19行目)。
【0005】また、ハイネスらは対数増殖後期の成熟し
た細胞をペプトン(トリプトン)0.5%、酵母エキス
1.5%、リン酸水素二カリウム0.3%、グルコース
0.1%、活性炭1%を含む液体培地成分でバチルス・
ポピリエを培養することで培養液1ml当たり3.1×
10個の胞子嚢を得たと報告している(Journa
l of Invertebrate patholo
gy,19巻,125−130頁,1972年)。しか
し、この培養方法は培養時間が長く、2週間程度かかっ
ていた。
【0006】また、米国特許第4824671号には1
%可溶性デンプン、0.1%トレハロース、0.5%酵
母エキス、0.3%リン酸水素二カリウム、0.1%炭
酸カルシウムを含む液体培地で培養し、培養液1ml当
たり1×10個の胞子嚢数が得られた例が挙げられて
いる。しかし、この場合も得られた胞子嚢に胞子は有る
がパラスポラルボディは存在せず、土壌1kgに2.0
×1012個の割合で胞子嚢を散布し、コガネムシ科昆
虫の幼虫に経口摂取させた際の乳化病感染率は7週間で
47.59%であり、幼虫体内で形成された胞子嚢に比
較してもコガネムシ科昆虫の幼虫に対する殺虫効果は弱
かった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明が解決しようと
する課題は、コガネムシ科昆虫に対し防除効果を有する
バチルス・ポピリエの胞子とパラスポラルボディとを含
む胞子嚢を効率良く得る製造方法、該製造方法により得
られるコガネムシ科昆虫の防除剤及び防除方法を提供す
ることにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは上記課題を
解決すべく鋭意研究を重ねた結果、コガネムシ科昆虫の
効果的な防除には、バチルス・ポピリエの胞子のみでな
く、胞子とパラスポラルボディとを含む胞子嚢が必要で
あることを明らかにした。そして該胞子とパラスポラル
ボディとを含む胞子嚢の培養での生産にはグルタミン酸
と生育阻害物質を除去すると考えられる吸着剤とを特定
濃度添加した培地で培養する必要があることを見出し、
本発明を完成するに至った。
【0009】即ち、本発明はバチルス・ポピリエに属す
る菌を培地で培養し胞子とパラスポラルボディとを含む
胞子嚢を製造する方法であって、グルタミン酸を0.2
〜4.0質量%、吸着剤を0.05〜0.5質量%含む
培地で培養することを特徴とする、コガネムシ科昆虫に
対し防除効果を有するバチルス・ポピリエの胞子とパラ
スポラルボディとを含む胞子嚢の製造方法を提供するも
のである。
【0010】また本発明は、前記製造方法により得られ
たバチルス・ポピリエの胞子とパラスポラルボディとを
含む胞子嚢を有効成分として含有するコガネムシ科昆虫
の防除剤及び該防除剤をコガネムシ科昆虫の生息土壌に
散布するコガネムシ科昆虫の防除方法を提供するもので
ある。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。
本発明で用いるバチルス・ポピリエ(Bacillus
popilliae)に属する菌の細菌学的性質は、
バージェイズ・マニュアル・オブ・デターミネイティブ
・バクテリオロジー(Bergey’s Manual
of Determinative Bacteri
ology)によれば、形態的性質は長さが1.3〜
5.2μm、幅が0.5〜0.8μmのグラム陰性桿菌
であり、生育温度は20〜35℃で胞子嚢の中に胞子と
パラスポラルボディとを有する。
【0012】バチルス・ポピリエに属する菌の胞子嚢
は、図1に示す模式図の如く、胞子とパラスポラルボデ
ィ(又は副胞子小体)と呼ばれる小体を含む嚢である。
しかし、従来の培地を用いたバチルス・ポピリエの培養
方法に関する文献では、胞子嚢と胞子とが明確な区別な
く用いられている例が多く、文献中の「胞子」という言
葉が胞子のみを意味するのか、胞子のみを含む胞子嚢を
意味するのか、あるいは胞子とパラスポラルボディとを
含む胞子嚢なのか不明確であった。本発明者らは昆虫、
特にコガネムシ科昆虫の殺虫若しくは幼虫の生育阻害に
よる防除効果をあたえるためには胞子とパラスポラルボ
ディとが必要であることを明らかにした。
【0013】近年、これまでの菌株も含めバチルス・ポ
ピリエは、パエニバチルス・ポピリエ(Paeniba
cillus popilliae)に再分類されるべ
きとのパターソンらの学説上の見解も示されており(I
nt. J. Syst.Bacteriol.,49
巻,1999年,531−540頁)、現段階では名称
の扱いが明確になっていない。よって、本発明において
は、バチルス・ポピリエに属する菌とはパエニバチルス
・ポピリエに属する菌をも包含するものとする。
【0014】本発明の製造方法に用いる培地は生育を阻
害する物質の除去を目的とした吸着剤を含む。該吸着剤
としては活性炭、吸着樹脂、アロフォサイト又はモレキ
ュラーシーブ等が挙げられる。生育阻害物質の主たるも
のは過酸化水素であると考えられ、吸着剤は過酸化水素
分解能若しくは過酸化水素除去能を有するものが好まし
く、具体的には活性炭が好ましく挙げられる。
【0015】本発明に用いる活性炭の形状は、粉末状、
粒状又はシート状等が挙げられ、いずれも使用できるが
優れた菌の増殖及び胞子嚢化率を示すことから特に粉末
状の活性炭が好ましい。
【0016】本発明でいう吸着樹脂は、微細物質を吸着
する多孔質重合体を意味し、例えば粒子状に成型された
架橋性多孔質重合体で、粒子内部にまで達する細孔構造
により水溶液中の微細物質を効率よく吸着しうる合成樹
脂である。具体的には、三菱化学社製芳香族系合成樹脂
吸着剤DIAION HP20、DIAION HP2
1、SEPABEADS SP825、SEPABEA
DS SP850、SEPABEADS SP70、S
EPABEADS SP700、置換芳香族系合成樹脂
吸着剤SEPABEADS SP207、アクリル系合
成樹脂吸着剤DIAION HP2MGなどを挙げるこ
とができる。
【0017】本発明に用いる培地中の吸着剤の濃度は、
本発明の効果を達成する範囲であれば特に限定されない
が、培地に対して0.05〜5質量%が好ましい。0.
05質量%以上であれば菌の生育阻害物質の吸着、除去
効果を十分発揮し、5%以下であれば菌の増殖に必要な
栄養源の吸着も少ないため、該範囲内で優れた菌の増殖
促進効果を呈する。本発明に用いる吸着剤の添加方法と
しては殺菌前の培地中に添加しても良いし、殺菌後の培
地に添加しても良い。
【0018】本発明で言うグルタミン酸にはその生理学
的に許容される塩も含まれる。具体的にはグルタミン酸
ナトリウム、グルタミン酸カリウム、グルタミン酸アン
モニウム、グルタミン酸塩酸塩等が挙げられる。これら
の培地中の濃度はグルタミン酸として0.2〜4.0質
量%であり、より優れた菌の増殖及び胞子嚢化率を呈す
る点で0.4〜1.0質量%が好ましい。
【0019】本発明に用いる培地には、グルタミン酸以
外にも通常の微生物培養に必要とされる窒素源が添加さ
れていることが好ましい。窒素源としては、通常、微生
物の培養に用いられるペプトン、肉エキス、魚肉エキ
ス、ラクトアルブミン水解物又は酵母エキス等の有機性
窒素源が挙げられる。それ以外の窒素源として、アンモ
ニア、硝酸及びそれらの塩等の無機窒素源が挙げられ
る。本発明に用いる窒素源の培地中の濃度は5.0質量
%以下であることが好ましく、より優れた菌の増殖促進
効果を呈することから0.2〜4.0質量%が好まし
い。
【0020】窒素源中には各種のアミノ酸が含まれてお
り、窒素源を添加することで結果的に培地中にグルタミ
ン酸を添加することになる。従って、該窒素源の添加量
を増やすことでもグルタミン酸の濃度を高めることがで
きるが、その方法では結果的に胞子とパラスポラルボデ
ィとを含む胞子嚢を形成することはできない。これは窒
素源中に含まれる生育阻害物質やその他不必要な成分濃
度も同時に高まるためと推測される。そのため、培地中
の全アミノ酸に対するグルタミン酸の割合は35〜90
質量%が好ましい。
【0021】但し、本発明において全アミノ酸とは、ペ
プトンや酵母エキス等の通常培地に用いられる窒素源に
含まれていることが知られているアラニン、アルギニ
ン、アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン、イソロ
イシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラ
ニン、プロリン、セリン、トレオニン、ヒスチジン、チ
ロシン及びバリンからなる16種類の遊離型アミノ酸の
集合を指すものとする。該16種類の遊離型アミノ酸の
合計量は、ペプトンや酵母エキス等に含まれる総ての遊
離型アミノ酸量を概ね示すものとしてしばしば用いられ
るものである。
【0022】さらに、本発明に用いる培地には、通常の
微生物培養に必要とされる炭素源が添加されていて良
い。炭素源としては、トレハロース、シュークロース等
の糖類が挙げられる。また廃糖蜜、デンプン分解物、チ
ーズホエー等の農産廃棄物を用いることもできる。これ
らの炭素源の添加濃度は、本発明の効果を達成する範囲
で有れば特に限定されないが、より優れた菌の増殖促進
効果を呈することから培地に対して0.001〜5質量
%が好ましい。ただし、胞子とパラスポラルボディとを
含む胞子嚢を形成させるためには、グルコースの存在は
好ましくなく、培地に含まれるグルコース濃度は培地に
対して0.01質量%以下とすることが好ましい。
【0023】本発明に用いる培地には、必要に応じてリ
ン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム等のリン酸
塩又はそのナトリウム塩等の無機塩が添加されていても
良い。該無機塩の添加濃度は、本発明の効果を達成する
範囲であれば特に制限されないが、培地に対して1質量
%以下が好ましい。
【0024】さらにピルビン酸を培地に加えることでよ
り優れた菌の増殖と胞子嚢化率を得ることができる。本
発明で言うピルビン酸にはピルビン酸の生理学的に許容
される塩を含む。具体的にピルビン酸の生理学的に許容
される塩としてはピルビン酸ナトリウム、ピルビン酸カ
リウム等が挙げられる。
【0025】ピルビン酸の濃度は培地に対して0.01
〜0.5質量%であり、より優れた菌の増殖及び胞子嚢
化率を呈する点で好ましくは培地に対して0.03〜
0.3質量%である。添加されるピルビン酸は、培地成
分と共に殺菌しても良いし、培地成分と分けて殺菌して
培養開始時に添加しても良い。
【0026】本発明の製造方法に用いる培地は液体培地
であっても固体培地であっても良い。本発明の製造方法
を液体培地に適用する際、水も培地成分として含まれる
ものとする。また、本発明の製造方法を固体培地に適用
する際に用いる基材としては、例えば寒天等の多糖類が
好ましく挙げられる。該基材の培地中の濃度は0.5〜
5質量%であり、より優れた菌の増殖促進効果を呈する
ことから1〜3質量%が好ましい。
【0027】本発明に用いるバチルス・ポピリエに属す
る菌の増殖に適した温度は25〜32℃である。また、
pHは6.5〜8.5でありより好ましくは7〜8であ
る。pHの調整には各種の緩衝液や塩酸又は硫酸など通
常用いられる酸、あるいは水酸化ナトリウム、水酸化カ
リウム又はアンモニアなど通常用いられるアルカリを使
用することができる。
【0028】液体培養は、回分培養、連続培養、半回分
培養又は流加培養など、いずれの方法でも良い。培養時
間は培養方法、培養温度、培養pH又は接種菌体量によ
って異なるが、通常、回分培養の場合で5〜10日であ
る。
【0029】培養終了後に培養物から胞子とパラスポラ
ルボディとを含む胞子嚢を回収する方法としては、固体
培養の場合には該胞子嚢を含んだ菌体が培地の表面にあ
ることから、水あるいはリン酸緩衝液、Tris−HC
l等の緩衝液を添加して懸濁させて該菌体を洗い流し、
その後、遠心分離や濾過等の一般的な方法で分離、回収
すればよい。液体培養の場合には、培養液から遠心分離
や濾過等の一般的な分離方法で該胞子嚢を含む菌体を分
離し、回収すればよい。この際、必要に応じて水や緩衝
液を使った洗浄操作を加えてもよい。
【0030】従来の培地での培養では、コガネムシ科昆
虫に防除効果を有する胞子とパラスポラルボディとを含
むバチルス・ポピリエの胞子嚢は殆ど得られず、式1の
胞子嚢化率で示される、菌数あたりの胞子嚢数の割合は
0.05%未満である。 (式1) 胞子嚢化率(%)=〔(胞子嚢数)÷(菌数)〕×100
【0031】これに対し、本発明の製造方法によれば、
胞子とパラスポラルボディとを含むバチルス・ポピリエ
の胞子嚢を5〜50%の胞子嚢化率で製造することが可
能である。また、液体培養により培養液1ml当たり、
胞子とパラスポラルボディとを含む胞子嚢の数を5×1
以上、通常5×10〜1×10個で製造するこ
とが可能である。
【0032】バチルス・ポピリエ(Bacillus
popilliae)に属する菌株の中でもコガネムシ
科昆虫の幼虫に生育阻害若しくは殺虫活性を示す菌種と
しては、バチルス・ポピリエ・セマダラ(Bacill
us popilliaeSemadara、FERM
P−16818)、バチルス・ポピリエ・マメ(Ba
cillus popilliae var. pop
illiae Mame、FERM P−1766
1)、バチルス・ポピリエ・ヒメ(Bacillus
popilliae var. popilliae
Hime、FERM P−17660)、バチルス・ポ
ピリエ・サクラ(Bacillus popillia
e var. popilliae Sakura、F
ERM P−17662)、バチルス・ポピリエ・デュ
トキ(Bacillus popilliae Dut
ky、ATCC No.14706)、バチルス・ポピ
リエ・メロロンサ(Bacillus popilli
ae subsp. melolonthae)等が挙
げられる。
【0033】本発明の製造方法により得られた胞子とパ
ラスポラルボディとを含むバチルス・ポピリエの胞子嚢
はコガネムシ科昆虫に殺虫活性又は幼虫の生育抑制等の
防除効果を示す。このため該胞子嚢はコガネムシ科昆虫
の防除剤として有用である。
【0034】防除対象のコガネムシ科昆虫は、ドウガネ
ブイブイ(Anomala cuprea)、セマダラ
コガネ(Blitopertha orientali
s)、マメコガネ(Popillia japonic
a)、ウスチャコガネ(Phyllopertha d
iversa)、チャイロコガネ(Adoretust
enuimaculatus)、ヒメコガネ(Anom
ala rufocuprea)等が挙げられる。
【0035】本発明の製造方法により製造した胞子とパ
ラスポラルボディとを含む胞子嚢は、それらを懸濁した
液のまま昆虫、特にコガネムシ科昆虫の防除剤として用
いても良く、あるいは乾燥して粉末にして散布しても良
い。また乾燥した後、水あるいは緩衝液の懸濁液として
散布しても良い。更に該胞子嚢を農薬に用いられる公知
慣用の担体、固着剤、分散剤、凍結防止剤、増粘剤又は
栄養剤等の各種の添加剤と共に通常の微生物農薬の製造
方法に従って、粉剤、粒剤、水和剤、乳剤、液剤、フロ
アブル又は塗布剤等に製剤化しても良い。また本発明の
製造方法により得られる胞子とパラスポラルボディとを
含む胞子嚢を他の微生物製剤に混合して使用することも
可能である。
【0036】前記防除剤に含まれる胞子とパラスポラル
ボディとを含む胞子嚢の含有割合は、前記防除剤の形状
と使用方法により異なるが、通常0.0001〜100
質量%が好ましい。
【0037】施用方法としては、剤型や使用方法等また
は対象作物等によって適宜選択され、例えば、地上液剤
散布、地上固形散布、空中液剤散布、空中固形散布、施
設内施用、土壌混和施用又は土壌潅注施用等の方法を挙
げることができる。また、他の薬剤、すなわち殺虫剤、
殺線虫剤、殺ダニ剤、除草剤、殺菌剤、植物生長調節
剤、肥料又は土壌改良資材(泥炭、腐植酸資材又はポリ
ビニルアルコール系資材等)等と混合して施用、あるい
は混合せずに交互施用または同時施用することも可能で
ある。
【0038】前記防除剤の施用量は、コガネムシ科昆虫
の種類、適用植物の種類及び剤型等によって異なるため
一概には規定できないが、例えば、地上散布する場合、
本発明の胞子とパラスポラルボディとを含む胞子嚢の施
用量が、1010〜1015個/a、好ましくは10
11〜1014個/a程度となるようにすればよい。
【0039】
【実施例】以下、実施例及び試験例により本発明を更に
具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定され
るものではない。
【0040】(参考例1)各実施例で調製した培地の培
地成分として使用したペプトン、酵母エキス及びラクト
アルブミン水解物中の遊離型アミノ酸含有量をオルトフ
タルアルデヒド(OPA)を用いたポストカラム法によ
り測定した。
【0041】(1)試料の調製 標準試料としてアミノ酸混合標準液H型(和光純薬社
製、各アミノ酸2.5mmol/lを含む)を0.02
M塩酸で5倍希釈し、ポアサイズ0.2μmのフィルタ
ーで濾過し、標準試料溶液を調製した。
【0042】測定試料は、ペプトンとして「ポリペプト
ンS」(日本製薬社製)、「トリプトン」(ディフコ社
製)のものを、酵母エキスとしてオクソイド社製、ディ
フコ社製のものを、及びラクトアルブミン水解物(和光
純薬社製)を用い、1.0質量%溶液を各々調製し、こ
れらを10質量%トリクロロ酢酸水溶液で2倍希釈、よ
く撹拌した後、遠心分離により不溶性沈殿を除去した。
その後、上清をポアサイズ0.2μmのフィルターで濾
過して各測定試料溶液を調製した。
【0043】(2)分析 標準試料溶液、各測定試料溶液の10μlを高速液体ク
ロマトグラフィーに注入し、アミノ酸分析を行った。な
お、分析は日立製作所製のアミノ酸自動分析装置「La
Chrom」を使用し、図2に示した流路図に基づいて
行った。なお、該アミノ分析に用いたOPA標識用反応
液及び溶離液の組成を表1及び2に記載した。
【0044】
【表1】
【0045】試薬は全て和光純薬社製特級品を使用し
た。
【0046】
【表2】
【0047】試薬は全て和光純薬社製を使用し、クエン
酸ナトリウム2HO、クエン酸H O、カプリル酸は
アミノ酸分析用、その他は特級品を使用した。
【0048】標準試料溶液及び各測定試料溶液より得ら
れたピークエリアから換算して、各測定試料中に含まれ
るL−グルタミン酸及び全アミノ酸の含有率を算出し表
3に示した。
【0049】
【表3】
【0050】(参考例2)ハイネスらに記載の培地条件
(Journal of Invertebrate
pathology,22巻,377−381頁,19
73年)、即ち、ペプトン0.5質量%、酵母エキス
1.5質量%、リン酸水素二カリウム0.3質量%、グ
ルコース0.1質量%及び活性炭1質量%を含む液体培
地で、市販されている各ペプトン、酵母エキスの各組合
せにおける培地中のグルタミン酸の含有率、および全ア
ミノ酸中に含まれるグルタミン酸の含有率を計算し、表
4に示した。
【0051】
【表4】
【0052】培地中のグルタミン酸の含有率は、市販の
最もグルタミン酸濃度が高いペプトンと酵母エキスを用
いた場合、すなわちペプトン(ディフコ社製「トリプト
ン」)と酵母エキス(オクソイド社製)を用いた場合の
0.12質量%であった。
【0053】また、同様に全アミノ酸中に含まれるグル
タミン酸の含有率は、市販の最も全アミノ酸中に含まれ
るグルタミン酸の高いペプトンと酵母エキスを用いた場
合、すなわちペプトン(日本製薬社製「ポリペプトン
S」)と酵母エキス(ディフコ社製)を用いた場合の2
0.6質量%であった。
【0054】(実施例1、比較例1) 固体培地の調製 フラスコに蒸留水80gを入れ、L−グルタミン酸(和
光純薬社製特級)、吸着剤、ペプトン(日本製薬社製
「ポリペプトンS」)、酵母エキス(オクソイド社
製)、トレハロース二水和物(和光純薬社製特級)、寒
天(和光純薬社製特級)を表5に示した量、混合した。
さらに撹拌しながら1mol/lの水酸化カリウム水溶
液を加えてpHを8.0に調整した。さらに蒸留水を加
えて最終的に100gとし、実施例として培地(A−
1)及び(A−2)を、比較例として(B−1)〜(B
−4)を調製した。なお、吸着剤として用いた活性炭は
和光純薬社製特級、および合成吸着樹脂は三菱化学社製
「DIAION HP20」を使用した(以下同様)。
【0055】
【表5】
【0056】参考例1をもとに、培地に対するグルタミ
ン酸の含有率及び全アミノ酸に対するグルタミン酸の割
合をそれぞれ求め、結果を表6及び表7に記載した。
【0057】(実施例2、比較例2) 固体培地を用い
た培養例 各培地を121℃、20分間のオートクレーブで殺菌
し、寒天が固化しないうちに十分撹拌して直径9cmの
プラスチックシャーレに20mlずつ分注して平板培地
を作製した。
【0058】バチルス・ポピリエ・セマダラ及びバチル
ス・ポピリエ・サクラの種菌は、乳化病感染コガネムシ
幼虫から採取した胞子嚢を用いた。胞子嚢数を顕微鏡に
よる直接検鏡で計測し、蒸留水にて胞子嚢の濃度が1×
10個/mlとなるよう胞子嚢液を調製した。これら
をプラスチックチューブに0.5ml取り、ヒートブロ
ックで70℃、20分間の加熱処理を行った。該種菌の
50μlを上記で調製した平板培地に塗布し、30℃の
培養装置内にて8日間培養した。
【0059】培養終了後、シャーレに蒸留水2mlを滴
下して、発生したコロニーをよく懸濁し、菌体を回収し
た。胞子嚢数、及び菌数を顕微鏡による直接検鏡で計測
し、式1を用いて胞子嚢化率を算出した。表6及び表7
に各菌株のシャーレ1枚当たりの胞子嚢数及び胞子嚢化
率を示す。
【0060】
【表6】
【0061】
【表7】
【0062】表6及び表7の結果から、各菌株とも吸着
剤の存在下、グルタミン酸を添加した培地で培養した場
合の方が胞子嚢数及び胞子嚢化率が高かった。
【0063】(実施例3、比較例3) 液体培地の調製 フラスコに蒸留水700gを入れ、添加するアミノ酸と
してL−グルタミン酸(和光純薬社製特級)又はL−ア
ラニン(和光純薬社製特級)を、さらにペプトン(日本
製薬社製「ポリペプトンS」)、酵母エキス(オクソイ
ド社製)及びトレハロース二水和物(和光純薬社製特
級)を表8に示した量、混合した。さらに攪拌しながら
5mol/lの水酸化カリウム水溶液を添加してpHを
7.6に調整し、更に蒸留水を加えて最終的に850g
とした。この培地を、pH電極を備えた発酵槽(丸菱バ
イオエンジ社製)に移し、121℃、60分間のオート
クレーブ滅菌を行った。
【0064】次に、フラスコに活性炭素粉末(和光純薬
社製特級)を表8に示した量添加し、さらに蒸留水を加
えて100gとし活性炭分散液を調製した。また、フラ
スコに消泡剤(日本油脂社製「ディスホームCA−12
3」)を表8に示す量添加し蒸留水を添加して50gと
し消泡剤液を調製した。活性炭分散液及び消泡剤液を滅
菌し、その後発酵槽に無菌的に加え、実施例として培地
(C−1)を、比較例として培地(D−1)〜(D−
3)を調製した。
【0065】
【表8】
【0066】(比較例4)「ハイネスら(Journa
l of Invertebrate patholo
gy,22巻,1973年,377−381頁)」と比
較するため、フラスコに蒸留水80gを入れ、さらにペ
プトン(ディフコ社製「トリプトン」)、酵母エキス
(オクソイド社製)、リン酸水素二カリウム(和光純薬
社製特級)、グルコース(和光純薬社製特級)及び活性
炭素粉末(和光純薬社製特級)を表9に示した量、混合
した。更に蒸留水を加えて最終的に100gとした。こ
れを培地(D−4)と称する。121℃、20分間のオ
ートクレーブ殺菌を行った。
【0067】
【表9】
【0068】(実施例4、比較例5) 液体培地を用い
た培養例 バチルス・ポピリエ・セマダラ、バチルス・ポピリエ・
サクラ及びバチルス・ポピリエ・マメの種菌として、各
々予め活性炭を含む培地(A−1)を用いた培養で作製
した胞子嚢を使用した。無菌的に回収した胞子嚢を顕微
鏡による直接検鏡で計測し、蒸留水にて胞子嚢の濃度が
1×10個/mlとなるように胞子嚢液を調製した。
【0069】各菌株の胞子嚢液を1mlずつプラスチッ
クチューブに分注し、ヒートブロックで70℃、20分
間の加熱処理を行った。培地(C−1)及び(D−1)
〜(D−3)には胞子嚢液を各1ml接種し、撹拌15
0rpm、通気1vvm、30℃、pH7.6制御の条
件で7日間培養した。一方、培地(D−4)は胞子嚢液
を0.01ml接種し、30℃の培養装置内にて100
rpmの回転数で撹拌して7日間培養した。
【0070】培養終了後、培養液中の単位容積当たりの
胞子嚢数及び菌数を顕微鏡による直接検鏡で計測し、式
1を用いて胞子嚢化率を算出した。表10〜12に培養
液1mlあたりの胞子嚢数と胞子嚢化率を示す。
【0071】
【表10】
【0072】
【表11】
【0073】
【表12】
【0074】表10〜12の結果から明らかなように吸
着剤とグルタミン酸とを添加した培地においてのみ胞子
嚢が得られた。
【0075】(実施例5、比較例6) 液体培地の調製
例 ビーカーに蒸留水700gを入れ、L−グルタミン酸
(和光純薬社製特級)、ペプトン(日本製薬社製「ポリ
ペプトンS」)、酵母エキス(オクソイド社製)、ラク
トアルブミン水解物(和光純薬社製)、トレハロース二
水和物(和光純薬社製特級)を表13に示した量、混合
した。攪拌しながら5mol/lの水酸化カリウム水溶
液を添加してpHを7.6に調整し、更に蒸留水を加え
て850gとした。この培地を、pH電極を備えた発酵
槽(丸菱バイオエンジ社製)に移し、121℃、60分
間のオートクレーブ滅菌を行った。
【0076】次に、フラスコに活性炭素粉末(和光純薬
社製特級)を表13に示した量添加し、蒸留水を加えて
100gとして活性炭分散液を調製した。また、フラス
コに消泡剤(日本油脂社製「ディスホームCA−12
3」)を表13に示した量添加し、さらに蒸留水を加え
て50gとし消泡剤液を調製した。該活性炭分散液及び
消泡剤液を滅菌し、その後各発酵槽に無菌的に加え、さ
らに蒸留水を加え最終的に1000gとし、実施例とし
て培地(E−2)〜(E−6)、比較例として培地(E
−1)及び(E−7)を調製した。
【0077】
【表13】
【0078】(実施例6、比較例7) 液体培地を用い
た培養例 バチルス・ポピリエ・セマダラの種菌として、各々予め
活性炭を含む培地(A−1)を用いた培養で作製した胞
子嚢を使用した。無菌的に回収した胞子嚢を顕微鏡によ
る直接検鏡で計測し、蒸留水にて胞子嚢の濃度が1×1
個/mlとなるように胞子嚢液を調製した。
【0079】胞子嚢液を1mlずつプラスチックチュー
ブに分注し、ヒートブロックで70℃、20分間の加熱
処理を行った。これを各培地に1ml接種し、撹拌15
0rpm、通気1vvm、30℃、pH7.6制御の条
件で7日間培養した。培養終了後、培養液中の単位容積
当たりの胞子嚢数及び菌数を顕微鏡による直接検鏡で計
測し、式1を用いて胞子嚢化率を算出した。表14に培
養液1mlあたりの菌体数と胞子嚢数と胞子嚢化率を示
す。また、図3に培地に対するグルタミン酸濃度(質量
%)と菌数(×108個/ml)及び胞子嚢数(×10個/m
l)の関係を示す。
【0080】
【表14】
【0081】(実施例7、比較例8) 液体培地の調製
例 ビーカーに蒸留水700gを入れ、L−グルタミン酸
(和光純薬社製特級)、ピルビン酸ナトリウム(和光純
薬社製特級)、ペプトン(日本製薬社製「ポリペプトン
S」)、酵母エキス(オクソイド社製)、ラクトアルブ
ミン水解物(和光純薬社製)、トレハロース二水和物
(和光純薬社製特級)を表15に示す量、混合した。続
いて、撹拌しながら4mol/lの水酸化ナトリウム水
溶液を添加してpHを7.6に調製し、更に蒸留水を加
えて最終的に850gとした。調製した培地をpH電極
を備えた発酵槽(丸菱バイオエンジ社製)に入れて12
1℃、50分のオートクレーブ殺菌を行なった。
【0082】次に、フラスコに活性炭素粉末(和光純薬
社製特級)を表15に示す量添加し、さらに蒸留水を加
えて100gとし活性炭分散液を調製した。また、フラ
スコに消泡剤(日本油脂社製「ディスホームCA−12
3」)を表15に示す量添加し、さらに蒸留水を加えて
50gとし消泡剤液を調製した。該活性炭分散液及び消
泡剤液を滅菌し、その後発酵槽に無菌的に加え、実施例
として培地(F−1)及び(F−2)を、比較例として
培地(F−3)を調製した。
【0083】
【表15】
【0084】(実施例8、比較例9) 液体培地を用い
た培養例 実施例6と同様にしてバチルス・ポピリエ・セマダラを
種菌として用い、培地(F−1)〜(F−3)に各1m
lずつ無菌的に植菌して培養を開始した。培養条件は温
度29℃、通気量0.5vvm、回転数150rpmと
し、培養中は4mol/lの水酸化ナトリウム溶液及び
4mol/lの硫酸水溶液にてpH7.6に制御した。
【0085】培養を5日間行い、培養液中の単位容積当
たりの胞子嚢数及び菌数を顕微鏡による直接検鏡で計測
し胞子嚢化率を算出した。表16に培地(F−1)〜
(F−3)の菌数、胞子嚢数、胞子嚢化率を示した。
【0086】
【表16】
【0087】ピルビン酸ナトリウムを添加しかつpHを
制御することで高い胞子嚢化率となり、かつ得られた胞
子嚢数も高かった。
【0088】(生物試験例1)本発明の製造方法により
得られた胞子嚢によるコガネムシ科昆虫の幼虫の生育抑
制効果試験を行った。実施例2の培地(A−1)を用い
た培地で取得したバチルス・ポピリエ・セマダラの胞子
嚢を蒸留水に2×10個/mlとなるよう懸濁させ懸
濁液(I)を調製した。さらに、実施例2の培地(A−
1)を用いた培地で取得したバチルス・ポピリエ・セマ
ダラの胞子嚢を含む懸濁液をフレンチプレス処理し、胞
子嚢から胞子とパラスポラルボディとを分離し取り出し
た。分離した胞子を蒸留水に2×10個/mlとなる
よう懸濁させ懸濁液(II)を調製した。また、分離したパ
ラスポラルボディを蒸留水に2×10個/mlとなる
よう懸濁させ懸濁液(III)を調製した。
【0089】腐葉土を約20gずつ入れた直径6cmの
プラスチックカップを80個準備した。 i)プラスチックカップ20個に対し、胞子嚢数が2×
10個/カップとなるように胞子嚢を含む懸濁液
(I)を散布した。 ii)プラスチックカップ20個に対し、胞子数が2×1
個/カップとなるように胞子のみを含む懸濁液(I
I)を散布した。 iii)プラスチックカップ20個に対し、パラスポラル
ボディ数が2×10個/カップとなるようにパラスポ
ラルボディのみを含む懸濁液(III)を散布した。 iv)残りの20個には何も散布せず、対照試験とした。 それぞれのカップにドウガネブイブイ2令幼虫を1頭ず
つ入れ、25℃の培養装置内で30日間飼育し、経時的
に幼虫の死亡率と生存幼虫の平均体重の増加量を測定し
た。累積死亡率について表17に示し、生育抑制効果に
ついて図4に結果を示す。
【0090】
【表17】
【0091】以上の結果から胞子とパラスポラルボディ
とを含む胞子嚢が優れた殺虫効果及び幼虫の生育抑制効
果を有することが確認された。
【0092】(生物試験例2)本発明の製造方法(固体
培養)により得られた胞子嚢によるコガネムシ科昆虫の
殺虫試験を行った。
【0093】実施例2の活性炭含有平板培地(A−1)
を用いた培養で取得したバチルス・ポピリエ・セマダラ
の胞子嚢を蒸留水に1×109個/mlとなるよう懸濁
し胞子嚢液を調製した。直径6cmのプラスチックカッ
プ40個に腐葉土を約20gずつ入れ、そのうちの20
個に対して、胞子嚢数が1×109個/カップとなるよ
うに胞子嚢液を散布した。残りの20個には胞子嚢液を
散布せず、対照試験とした。それぞれのカップにドウガ
ネブイブイ2令幼虫を1頭ずつ入れ、25℃の培養装置
内で40日間飼育し、経時的に死亡個体数を調べ、累積
死亡率(%)を求めた。
【0094】表18に本発明の固体培養で得られた胞子
嚢のドウガネブイブイに対する殺虫活性を示す。40日
目では100%の死亡率が観察された。
【0095】
【表18】
【0096】(生物試験例3)本発明の製造方法(液体
培養)により得られた胞子嚢によるコガネムシ科昆虫の
殺虫試験を行った。生物試験例2と同様にして試験区を
作製した。ただし、散布した胞子嚢は i)実施例4の活性炭含有液体培地(C−1)を用いた
培養で取得したバチルス・ポピリエ・セマダラの胞子
嚢、 ii)実施例4の活性炭含有液体培地(C−1)を用いた
培養で取得したバチルス・ポピリエ・マメの胞子嚢、 であった。それぞれのカップにドウガネブイブイ2令幼
虫を1頭ずつ入れ、25℃の培養装置内で40日間飼育
し、経時的に死亡個体数を調べ、累積死亡率(%)を求
めた。
【0097】表19に本発明の液体培養で得られた胞子
嚢のドウガネブイブイに対する殺虫活性を示す。40日
目では85〜100%の死亡率が観察された。
【0098】
【表19】
【0099】(生物試験例4)本発明の製造方法(液体
培養)により得られた胞子嚢によるコガネムシ科昆虫の
殺虫試験を行った。実施例8に示した培地(F−2)の
培養により得たバチルス・ポピリエ・セマダラ株の胞子
嚢を蒸留水に1×109個/mlとなるよう懸濁し胞子
嚢液を調製した。
【0100】直径6cmのプラスチックカップ40個に
腐葉土20gずつを入れた。そのうちの20個に対し
て、胞子嚢数が1×109個/カップとなるよう胞子嚢
液を散布した。残りの20個には胞子嚢液を散布せず、
対照試験とした。それぞれのカップにドウガネブイブイ
2令幼虫を1頭ずつ入れ、25℃の培養装置内で40日
間飼育し、経時的に死亡個体数を調べ、累積死亡率
(%)を調べた。
【0101】表20にドウガネブイブイに対する昆虫体
外形成胞子嚢の殺虫活性の結果を示す。得られた胞子嚢
は殺虫活性を示し40日目までに全ての幼虫が死亡し
た。
【0102】
【表20】
【0103】
【発明の効果】本発明は胞子とパラスポラルボディとを
含むバチルス・ポピリエの胞子嚢を効率良く得る製造方
法を提供できる。すなわち、本発明は5〜10日程度の
液体培地で、胞子とパラスポラルボディとを含むバチル
ス・ポピリエの胞子嚢を5〜50%の胞子嚢化率で製造
することができ、また、培養液1ml当たり、胞子とパ
ラスポラルボディとを含む胞子嚢を5×10個以上の
割合で製造することができる。また本発明は昆虫、特に
コガネムシ科昆虫に殺虫又は幼虫の生育阻害等の防除効
果を示す防除剤及び該防除剤を用いた昆虫、特にコガネ
ムシ科昆虫の防除方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 胞子とパラスポラルボディとを含むバチルス
・ポピリエの胞子嚢の模式図である。
【図2】 アミノ酸分析に用いた高速液体クロマトグラ
フィーシステムの模式図である。
【図3】 実施例3における培地中のグルタミン酸濃度
に対する胞子嚢数及び菌体数を示したグラフである。
【図4】 生物試験例1におけるドウガネブイブイの生
育阻害効果を示したグラフである。
【符号の説明】
1 胞子嚢 2 パラスポラルボディ 3 胞子
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成14年7月2日(2002.7.2)
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0032
【補正方法】変更
【補正内容】
【0032】バチルス・ポピリエ(Bacillus
popilliae)に属する菌株の中でもコガネムシ
科昆虫の幼虫に生育阻害若しくは殺虫活性を示す菌種と
しては、バチルス・ポピリエ・セマダラ(Bacill
us popilliaeSemadara、FERM
BP−8068)、バチルス・ポピリエ・マメ(Ba
cillus popilliae var. pop
illiae Mame、FERM BP−806
)、バチルス・ポピリエ・ヒメ(Bacillus
popilliae var. popilliae
Hime、FERM P−17660)、バチルス・ポ
ピリエ・サクラ(Bacillus popillia
e var. popilliae Sakura、F
ERM P−17662)、バチルス・ポピリエ・デュ
トキ(Bacillus popilliae Dut
ky、ATCC No.14706)、バチルス・ポピ
リエ・メロロンサ(Bacillus popilli
ae subsp. melolonthae)等が挙
げられる。なお、バチルス・ポピリエ・セマダラは、平
成10年5月21日に工業技術院生命工学工業技術研究
所(現 独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄
託センター)に受託番号FERM P−16818で寄
託され、平成14年5月21日にブタペスト条約に基づ
く国際寄託に移管され、受託番号FERM BP−80
68が付与されている。また、バチルス・ポピリエ・マ
メは、平成11年11月25日に工業技術院生命工学工
業技術研究所(現 独立行政法人 産業技術総合研究所
特許生物寄託センター)に受託番号FERM P−17
661で寄託され、平成14年6月10日にブタペスト
条約に基づく国際寄託に移管され、受託番号FERM
BP−8069が付与されている。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 西橋 秀治 千葉県佐倉市大崎台2−23−9 (72)発明者 藤家 梓 千葉県長生郡睦沢町上市場256−3 (72)発明者 青柳 森一 千葉県香取郡山田町府馬1740 (72)発明者 長谷川 誠 千葉県千葉市緑区椎名崎町486コープシテ ィおゆみ野E−503 (72)発明者 田中 正男 千葉県千葉市美浜区高浜6−11−12 (72)発明者 横山 とも子 千葉県千葉市美浜区磯辺5−10 1−1206 Fターム(参考) 4B065 AA15X AC12 AC20 BB08 BB12 BB40 CA48 4H011 AC01 BB21 DA15 DD03 DD04

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 バチルス・ポピリエに属する菌を培地で
    培養し胞子とパラスポラルボディとを含む胞子嚢を製造
    する方法であって、グルタミン酸を0.2〜4.0質量
    %、吸着剤を0.05〜0.5質量%含む培地で培養す
    ることを特徴とする、コガネムシ科昆虫に対し防除効果
    を有するバチルス・ポピリエの胞子とパラスポラルボデ
    ィとを含む胞子嚢の製造方法。
  2. 【請求項2】 前記培地がグルタミン酸を培地中の全ア
    ミノ酸に対し35〜90質量%含む請求項1に記載の胞
    子嚢の製造方法。
  3. 【請求項3】 前記培地が培地中にピルビン酸を含む請
    求項1に記載の胞子嚢の製造方法。
  4. 【請求項4】 請求項1に記載の製造方法により得られ
    たバチルス・ポピリエの胞子とパラスポラルボディとを
    含む胞子嚢を有効成分として含有するコガネムシ科昆虫
    の防除剤。
  5. 【請求項5】 請求項4に記載の防除剤をコガネムシ科
    昆虫の生息土壌に散布するコガネムシ科昆虫の防除方
    法。
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