JPH0660518B2 - 多階建築物用制振性鉄骨鉄筋コンクリートプレキャスト梁 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本発明は超高層ビル等の多階建築物において大地震によ
る振動を吸収させるための制振性鉄骨鉄筋コンクリート
プレキャスト梁に関する。

（従来の技術） 近年の超高層ビル等の多階建築物では、柱を剛性の高い
鉄骨鉄筋コンクリート（ＳＲＣ）造として梁もＳＲＣ造
とし、全体の剛性及び耐力の高いものとする一方で地震
等による振動を長周期化するために梁を鉄骨構造とし、
その弾性により柱間の振動を吸収できるように建物全体
の剛性を低めた、いわゆる免振構造が開発されている。

（発明が解決しようとする課題） しかし鉄骨梁を使用した場合、全体が柔かくなり過ぎ、
小中地震でもゆれが大きい欠点を有することや、耐火構
造となすためのロックウールの吹き付け等の工事が必要
になり、このために特殊な機械や足場を要しまた周囲の
養生等を要する上、所定の乾燥期間を待たなければなら
ず、しかもこれらの工程は他の工事と平行して行う自由
度が極めて少く、工期が長くならざるを得ないという問
題があった。

一方、通常のプレキャストコンクリート（ＰＣ）梁を使
用する場合は上述の如き、特別の耐火工事が不要なため
工期の短縮化が図れるが、従来の端部までコンクリート
が充填されたＰＣ梁では建築物全体の剛性が高まり地震
等によって建物に加わる力が大きいという問題がある。

本発明は、このような従来の問題にかんがみ、短期間に
て小中地震時にはある程度剛構造として、働き、大地震
時には柔構造として働く多階建築物を構築し得る制振性
鉄骨鉄筋コンクリートプレキャスト梁の提供を目的とし
たものである。

（課題を達成するための手段） 上述の如き従来の問題を解決し、所期の目的を達成する
ための本発明の要旨とするところは、連続した長尺鉄骨
を芯にし、その回りに鉄筋コンクリートを巻き付けて一
体化させた鉄骨鉄筋コンクリート梁本位の両端部に、一
定長さだけ前記長尺鉄骨の回りに鉄筋コンクリートを一
体化させない鉄骨梁部を設け、該鉄骨梁部の弾塑性によ
って大地震時の柱間振動を吸収自在としたことを特徴と
してなる多階建築物用制振性鉄骨鉄筋コンクリートプレ
キャスト梁に存する。

（実施例） 次に本発明の実施の一例を図面について説明する。

第１図〜第３図は、本発明に係るプレキャスト梁を示し
ており、図中１１は断面がＩ型をした長尺鉄骨である。
この長尺鉄骨１１は使用箇所に応じてあらかじめ左右柱
間の１スパン全長に及ぶ長さに形成したものを使用し、
その端部に継手連結用のボルト挿通孔１２が多数開口さ
れている。このボルト挿通孔１２はその一部を必要に応
じてフープ筋挿通孔として使用する。

長尺鉄骨１１の周囲には、その上下の両フランジ１１
ａ，１１ｂの両側部に長手方向に向けて梁主筋１３が４
本配置され、その梁主筋１３の外側にあばら筋１４を掛
け回している。

このように梁主筋１３及びあばら筋１４を配設した長尺
鉄骨１１には、上側のフランジ１１ａとウエブ１１ｃの
上端部が露出された状態にコンクリート１５が巻いて鉄
骨鉄筋コンクリート半梁からなる梁本体１６を形成して
いる。

この梁本体１６の両端には、前述したコンクリート１５
と長尺鉄骨１１のウエブ１１ｃとの間を力学的に縁切り
する発砲スチロール１７、１７が長尺鉄骨１１のウエブ
１１ｃの両面に貼着されているとともに、そのウエブ１
１ｃの下側には剥離材１７ａが塗布されている。

このようにして縁切りされた部分の外側に梁主筋１３及
びあばら筋１４を配筋し、さらにその外側に溶接金網１
８を配置してコンクリート１５を巻き付けた鉄骨梁部１
６Ａが設けられている。また鉄骨梁部１６Ａの外側のコ
ンクリート１５の端面には撥水性グラスウール１９が接
着剤により貼着されている。

なお、この実施例では長尺鉄骨１１としてＩ型鋼を使用
しているが、その形式はラチス形、ハニカム形、箱形
等、種々のものを選択することができ、また長手方向に
ついても梁ウエブ添え板や同フランジ添え板の添設等に
よる複数鉄骨を一体的に連結したものを使用してもよい
ものである。また、鉄骨梁部１６Ａをその外側に鉄筋コ
ンクリートを縁切りして巻き付けているが、この他この
部分にはコンクリート巻きをせずに他の耐火被覆処理を
施しておいてもよいものである。

次にこのように構成されるプレキャスト梁Ａの使用例を
第４図以下の図面について説明する。

図において２１は柱用鉄骨であり、断面が十字状をなし
四方にフランジ２１ａ、２１ａ……が一体に設けられて
いる。この柱間鉄骨２１には、梁取付け高さ位置に継手
２２が突出され、この継手には前述したプレキャスト梁
Ａの両端の鉄骨端部に形成したボルト挿通孔が形成さ
れ、この継手２２にボルト２３を使用してプレキャスト
梁Ａを連結する。その連結に際し、一部のボルト挿通孔
に水平方向のフープ筋２４を挿通する。

このようにして柱用鉄骨２１間にプレキャスト梁Ａを掛
け渡した後、各プレキャスト梁Ａ間に型板兼用の床用プ
レキャスト版２５を必要枚数並べて掛け渡す。このと
き、床用プレキャスト板２５はその端部をプレキャスト
梁Ａのコンクリート１５の縁部上に載荷させて横架す
る。またこれと同時に柱用鉄骨２１の外側に型枠（図示
せず）を組み、必要な配筋を行って床スラブ２６の場所
打コンクリートの打設と同時に柱用コンクリートを打設
し、柱Ｂ及び床Ｃを構築する。

なおこの実施例では鉄骨コンクリート造の柱を示してい
るが、本発明のプレキャスト梁はこの他、鉄筋コンクリ
ート造、鉄骨造の梁の建築物にも使用し得るものである
ことはいうまでもない。

このようにして構築された他階建築物は、柱Ｂは剛性の
高いＳＣＰ構造であるが、プレキャスト梁Ａは、その梁
端部に周囲のコンクリートを力学的に縁切りされた鉄骨
梁部１６ａを有するため、地震等によって柱間に振動が
生じると鉄骨梁部１６ａが弾性的にこれを吸収し、振動
を長周期化して建築物に加わる力が減少させる。

（発明の効果） 本発明の多階建築物用制振性鉄骨鉄筋コンクリートプレ
キャスト梁は上述の如く構成され、長尺鉄骨の回りに鉄
筋コンクリートを一体化させない鉄骨梁部を設け、この
鉄骨梁部によって柱間の振動を吸収できる構造としたこ
とにより、鉄骨鉄筋コンクリート造によるプレキャスト
梁を使用して免振構造の多階建築物が構築できることと
なったものであり、従来の鉄骨梁による免振構造のよう
に柔か過ぎてかえってゆれが大きくなってしまうという
欠点が解消され、また梁の架設後に耐火のための工事を
必要とせず、短期間でスラブの掛け渡しを完了させるこ
とができることとなったものである。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明に係るプレキャスト梁の端部の側面図、
第２図は同正面図、第３図は第１図中のＡ−Ａ線断面
図、第４図は本発明のプレキャスト梁と柱との結合部分
を示す縦断面図、第５図は同横断面図、第６図は第４図
中のＢ−Ｂ線断面図である。 Ａ……プレキャスト梁、Ｂ……柱、Ｃ……床、１１……
長尺鉄骨、１３……梁主筋、１４……あばら梁、１５…
…コンクリート、１６……梁本体、１６Ａ……鉄骨梁
部、１７……発砲スチロール、１８……剥離材。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】連続した長尺鉄骨を芯にし、その回りに鉄
   筋コンクリートを巻き付けて一体化させた鉄骨鉄筋コン
   クリート梁本体の両端部に、一定長さだけ前記長尺鉄骨
   の回りに鉄筋コンクリートを一体化させない鉄骨梁部を
   設け、該鉄骨梁部の弾塑性によって大地震時の柱間振動
   を吸収自在としたことを特徴としてなる多階建築物用制
   振性鉄骨鉄筋コンクリートプレキャスト梁。