JPH0656516U - スラスト玉軸受用保持器 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】各ポケット５、５内に玉を押し込む際に要する
力の低減を図る事で、スラスト玉軸受の組立作業の容易
化を図る。 【構成】合成樹脂の射出成形により全体を円輪状に造
る。保持すべき玉の外径よりも少し大きな内径を有する
円形のポケット５、５を、円周方向に亙って複数個設け
る。各ポケット５、５の開口周縁部に抑え突条８、８
を、各開口部の円周方向１個所にのみ設ける。各抑え突
条８、８は、各ポケット５、５の中心に対する角度が７
０〜１００度である円弧状で、それぞれの先端縁をポケ
ット５、５の開口部に張り出させる。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】

この考案に係るスラスト玉軸受用保持器は、各種回転支持部分に組み込んでス ラスト荷重を受けるスラスト玉軸受を構成する保持器の改良に関する。

【０００２】

【従来の技術】

回転支持部分に組み込んでスラスト荷重を支承する為に従来から、図４に示す 様な構造のスラスト玉軸受が、広く使用されている。このスラスト玉軸受は、そ れぞれが円輪状に形成された１対の軌道輪１、２と、両軌道輪１、２の間に挟持 された複数個の玉３、３と、各玉３、３を転動自在に保持する保持器４とから構 成される。この保持器４には円形のポケット５、５を、円周方向に亙って複数個 、等間隔に設けており、各玉３、３は各ポケット５、５の内側に、転動自在に保 持されている。

【０００３】 ところで、上記各ポケット５、５は、各ポケット５、５内に玉３、３を押し込 める反面、一度押し込んだ玉３、３が不用意に脱落するのを防止する構造でなけ ればならない。この為従来から、例えば図５〜８に示す様な構造により、各ポケ ット５、５からの玉３、３の脱落防止を図っている。

【０００４】 先ず、図５〜６に示した第１例の構造の場合、各ポケット５、５の両端開口部 の全周に亙って、脱落防止用の突条６、６を形成している。各突条６、６の先端 開口部の内径Ｒは、各ポケット５、５内に保持すべき玉３の外径Ｄよりも少しだ け小さく（例えばＲ＝０．９〜０．９３Ｄ）している。各ポケット５、５に玉３ 、３を組み付ける場合には、各突条６、６の先端縁に玉３を整合させた状態で、 この玉３を各ポケット５、５内に押し込む。この際に各突条６、６は、弾性変形 しつつ玉３の通過を許容し、通過後は弾性的に復元して、各ポケット５、５内か ら玉３、３が脱落するのを防止する。

【０００５】 又、図７に示した第２例の構造では、各ポケット５、５の開口周縁部に半円弧 形の突条６ａ、６ａを設け、各突条６ａ、６ａの間隔を押し広げつつ、各ポケッ ト５、５内に玉を押し込める様にしている。更に、図８に示した第３例の場合、 各ポケット５、５の開口周縁部に、幅の狭い突条６ｂ、６ｂを３個ずつ設け、各 突条６ｂ、６ｂを外方に押し広げつつ、各ポケット５、５内に玉を押し込める様 にしている。

【０００６】

【考案が解決しようとする課題】

本考案のスラスト玉軸受用保持器は、ポケット内に玉を押し込む際に要する力 の低減を図る事で、スラスト玉軸受の組立作業の容易化を図るものである。

【０００７】 前記図５〜８に示した従来の保持器４の場合、各ポケット５、５内に玉３を押 し込む際に、この玉３が突条６、６ａ、６ｂによって、周囲からほぼ均等に押圧 される。この結果、各突条６、６ａ、６ｂを押し広げつつ玉３をポケット５内に 押し込むのに要する力が大きくなり、保持器４への玉３、３の組み付け作業に起 因して、スラスト玉軸受の組立作業が面倒になる。

【０００８】 各突条６、６の先端開口部の内径Ｒ若しくは突条６ａ、６ｂの内接円の直径を 玉３の外径Ｄに近付ければ、上記押し込むのに要する力を小さく出来るが、各ポ ケット５、５内で玉３がスラスト方向（図６の上下方向）に変位し易くなる。こ の結果、スラスト玉軸受の使用時に保持器４がスラスト方向に変位し易くなって 、軸受音響の点で問題が生じ易くなる。又、保持器４の変位に拘らず、この保持 器４と軌道輪１、２（図４参照）とが接触しない様にする為、保持器４の厚さ寸 法を小さくしなければならなくなり、保持器４の強度が不足する場合が考えられ る。

【０００９】 本考案のスラスト玉軸受用保持器は、上述の様な事情に鑑みて考案されたもの である。

【００１０】

【課題を解決するための手段】

本考案のスラスト玉軸受用保持器は、前述した従来のスラスト玉軸受用保持器 と同様に、合成樹脂の射出成形により全体を円輪状に造られ、保持すべき玉の外 径よりも少し大きな内径を有する円形のポケットを、円周方向に亙って複数個設 けている。

【００１１】 特に、本考案のスラスト玉軸受用保持器に於いては、上記各ポケットの開口周 縁部に、各ポケットの中心に対する角度が７０〜１００度である円弧状で、それ ぞれの先端縁をポケットの開口部に張り出させた抑え突条を、各開口部の円周方 向１個所にのみ設けた事を特徴としている。

【００１２】

【作用】

上述の様に構成される本考案のスラスト玉軸受用保持器のポケットに玉を保持 させる場合には、１個の抑え突条を弾性変形させつつ、各ポケット内に玉を押し 込む。この際、玉は抑え突条の先端縁と、ポケットの開口周縁部で抑え突条と反 対側部分とに接触しつつ、各ポケット内に押し込まれる。又、抑え突条の先端縁 はポケットの開口周縁よりも少し突出している為、玉はポケットの中心軸に対し て少し傾斜しつつ、各ポケット内に押し込まれる。

【００１３】 従って、玉の挿入方向に対する開口寸法は、前記従来構造の様に、ポケットの 開口部の全周に亙って単一の、或は複数の抑え突条を形成した場合に比べて広く なり、上記玉の挿入作業を容易に行なえる様になる。しかも、抑え突条をポケッ トの開口部に向け十分に張り出させる事が出来る為、ポケット内で玉がスラスト 方向に大きくずれ動く事もなくなる。

【００１４】

【実施例】

図１〜３は本考案の実施例を示している。合成樹脂を射出成形する事により造 られた保持器７には円形のポケット５、５を、円周方向に亙って複数個、等間隔 に設けている。上記各ポケット５、５の開口周縁部には抑え突条８、８を、各開 口部の円周方向１個所にのみ設けている。上記各抑え突条８、８は、各ポケット ５、５の中心に対する角度θが７０〜１００度、更に好ましくは７０〜９０度で ある円弧状で、それぞれの先端縁をポケット５、５の開口部に張り出させている 。

【００１５】 更に、図示の実施例の場合には、上記各ポケット５、５の周囲で、上記各抑え 突条８、８と反対側部分に、それぞれ１対ずつの位置決め突起９、９を形成して いる。

【００１６】 上述の様に構成される本考案のスラスト玉軸受用保持器のポケット５、５に玉 ３を保持させる場合には、各ポケット５、５の開口周縁部に１個ずつ設けた抑え 突条８、８を弾性変形させつつ、各ポケット５、５内に玉３を押し込む。この押 し込み作業に先立って、各ポケット５、５の開口にそれぞれ玉３を１個ずつ対向 させるが、この作業は、上記位置決め突起９、９の存在により、容易に行なえる 。

【００１７】 即ち、保持器７のポケット５、５に保持すべき玉３は、各ポケット５、５の周 囲に設けられた抑え突条８、８と位置決め突起９、９とにより、各ポケット５、 ５の直径方向に亙る移動を阻止された状態で、各ポケット５、５に対向する。従 って、各ポケット５、５の開口に玉３を１個ずつ対向させる作業を、自動機械に より容易且つ確実に行なえる。

【００１８】 上述の様にして、各ポケット５、５に玉３を１個ずつ対向させた後、この玉３ をポケット５、５内に押し込むが、この押し込み作業の際、各玉３は各抑え突条 ８、８の先端縁と、各ポケット５、５の開口周縁部で各抑え突条８、８と反対側 部分とに接触しつつ、各ポケット５、５内に押し込まれる。各抑え突条８、８の 先端縁は、各ポケット５、５の開口周縁よりも少し突出している為、各玉３は、 図３に示す様に、各ポケット５の中心軸Ｘに対して少し傾斜しつつ、各ポケット ５内に押し込まれる。

【００１９】 従って、各玉３の挿入方向に対する開口寸法Ｗは、平面で見た場合に於ける、 抑え突条８の先端縁とポケット５の反対側開口周縁との距離ｗよりも大きく（Ｗ ＞ｗ）なる。この為、前記従来構造の様に、各ポケット５、５の開口部の全周に 亙って単一の突条６、６を形成したり（図５〜６の場合）、或は複数の突条６ａ 、６ｂを形成した（図７〜８の各場合）場合に比べ広くなって、上記玉３の挿入 作業を容易に行なえる様になる。

【００２０】 例えば、前記図５〜８図に示した従来構造の場合、前述の様に、各突条６、６ ａ、６ｂの先端開口部の内径Ｒを、各ポケット５、５内に保持すべき玉３の外径 Ｄの０．９〜０．９３倍（Ｒ＝０．９〜０．９３Ｄ）としなければ、各ポケット ５、５内への玉３の押し込み作業に要する力が大きくなり過ぎるのに対して、本 考案の場合には、上記抑え突条８の先端縁とポケット５の反対側開口周縁との距 離ｗを、玉３の外径Ｒの０．８６〜０．９倍（ｗ＝０．８６〜０．９Ｄ）として も、上記力が大きくなり過ぎる事はない。

【００２１】 従って、各抑え突条８、８を各ポケット５、５の開口部に向け十分に張り出さ せる事が出来、各ポケット５、５内で玉３がスラスト方向（図２〜３の上下方向 ）に大きくずれ動く事もなくなる。

【００２２】 尚、各抑え突条８、８を、各ポケット５、５の中心に対する角度θが７０〜１ ００度の円弧状としたのは、次の理由による。即ち、上記角度θが１００度を越 えた場合には、抑え突条８、８の剛性が大きくなり過ぎて、各ポケット５、５内 に玉３を押し込む為に要する力が大きくなり過ぎ、反対に７０度未満の場合には 、上記剛性が弱くなり過ぎて、ポケット５、５内に押し込んだ玉３が脱落し易く なるからである。

【００２３】

【考案の効果】

本考案のスラスト玉軸受用保持器は、以上に述べた通り構成され作用する為、 ポケット内に玉を押し込む際に要する力の低減を図る事で、スラスト玉軸受の組 立作業の容易化を図れる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案の実施例を示す半部平面図。

【図２】図１の上方から見た図。

【図３】図１の拡大Ａ−Ａ断面図。

【図４】スラスト玉軸受の断面図。

【図５】従来のスラスト玉軸受用保持器の第１例を示す
部分平面図。

【図６】図５の拡大Ｂ−Ｂ断面図。

【図７】従来のスラスト玉軸受用保持器の第２例を示す
部分平面図。

【図８】従来のスラスト玉軸受用保持器の第３例を示す
部分平面図。

【符号の説明】

１、２ 軌道輪 ３ 玉 ４ 保持器 ５ ポケット ６、６ａ、６ｂ 突条 ７ 保持器 ８ 抑え突条 ９ 位置決め突起

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 合成樹脂の射出成形により全体を円輪状
   に造られ、保持すべき玉の外径よりも少し大きな内径を
   有する円形のポケットを、円周方向に亙って複数個設け
   たスラスト玉軸受用保持器に於いて、上記各ポケットの
   開口周縁部に、各ポケットの中心に対する角度が７０〜
   １００度である円弧状で、それぞれの先端縁をポケット
   の開口部に張り出させた抑え突条を、各開口部の円周方
   向１個所にのみ設けた事を特徴とするスラスト玉軸受用
   保持器。