JP4211093B2 - ころ軸受用プレス型保持器 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば工作機械の主軸等、大きなラジアル荷重が加わった状態で回転する回転体を支持するころ軸受に組み込む、ころ軸受用プレス型保持器、及び、ころ軸受用プレス型保持器を組み込んだ円筒ころ軸受の改良に関する。特に、本発明のころ軸受用プレス型保持器は、各リム部と各柱部との連続部に応力が集中するのを防止する事により、信頼性及び耐久性の向上を図るものである。
尚、本発明の対象となるころ軸受用プレス型保持器には、一般的な円筒ころ軸受の他、円すいころ軸受や自動調心ころ軸受等、他のころ軸受も含む。
【0002】
【従来の技術】
大きなラジアル荷重が加わる回転支持部分に、図3に示す様なころ軸受1が広く使用されている。このころ軸受1は、内周面中間部に円筒凹面状の外輪軌道2を形成した外輪3と、外周面中間部に円筒凸面状の内輪軌道4を形成した内輪5と、上記外輪軌道2と内輪軌道4との間に転動自在に設けた複数個のころ6と、これら複数個のころ6を保持する保持器7とから成る。
【0003】
この保持器7は、プレス型保持器と称せられるもので、金属板に、打ち抜き加工並びに曲げ加工等のプレス加工を施して、図3〜4に示す様に構成して成る。即ち、上記保持器7は、軸方向一端部(図3の左端部)に円環状の第一のリム部8を、軸方向他端部(図3の右端部)に円環状の第二のリム部9を、それぞれ配置している。そして、これら第一、第二のリム部8、9同士を、複数本の柱部10により互いに結合している。これら各柱部10は、円周方向に亙って互いに等間隔に配置しており、それぞれの一端部を上記第一のリム部8の内側縁に、それぞれの他端部を上記第二のリム部9の内側縁に、それぞれ連続させている。そして、これら各柱部10の円周方向両側縁と上記第一、第二のリム部8、9の内側縁とにより四方を囲まれた部分を、それぞれの内側に上記各ころ6、6を転動自在に保持する為のポケット11、11としている。
【0004】
図示の例では、保持器7の直径(内径)を、上記複数個のころ6、6のピッチ円直径よりも大きく、又、上記各ポケット11、11は、それぞれこれら各ころ6、6の一部のみを挿入可能な大きさに(各ころ6、6の最大面積部分よりも小さく)形成している。更に、上記各柱部10の円周方向両側縁の一部で、上記保持器7の直径方向に関して中間部乃至は内径側部分に、傾斜面12、12を、プレスによる面押し加工により形成している。これら各傾斜面12、12は、それぞれ内径側に向かう程上記各ポケット11、11の幅を大きくする方向に傾斜している。この様な保持器7は、これら各ポケット11、11内に保持したころ6、6の転動面のうち、この保持器7の直径方向に関して上記ピッチ円直径よりも外径側部分と、上記各傾斜面12、12との係合に基づいて上記保持器7の直径方向に亙る位置決めを図る、転動体案内として、前記ころ軸受1に組み込む。
【0005】
上述の様な保持器7を前述の様なころ軸受1に組み込んだ状態で、前記外輪3と内輪5とが相対回転すると、上記各ころ6、6が転動(自転)しつつ公転して、この相対回転を許容する。この際、これら各ころ6、6の転動面と上記各柱部10、10の円周方向両側縁に形成した傾斜面12、12とが摺接しつつ、上記保持器7が、上記ころ6、6の公転速度と同じ速度で回転する。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上述した従来の保持器7の場合、傾斜面12、12を形成する為の面押し加工に伴って、各柱部10の両端部と第一、第二のリム部8、9の内側縁との連続部に、図4に示す様に、大きな曲率で折れ曲がった隅凹部13、13が存在していた。一方、ころ軸受1の運転時に、各ころ6、6の公転速度と上記保持器7の回転速度とは、常に完全に一致しているわけではなく、微妙に変化する(微小角度相対回転する)。この変化に伴って、上記各ころ6、6の転動面と上記各傾斜面12、12とが衝突したり、或は転動面がこれら各傾斜面12、12に押し付けられる場合が生じる。そして、この様な衝突や押し付けに伴って上記各柱部10に、円周方向に亙る力が加わる。
【0007】
この様にして上記各柱部10に加わった円周方向に亙る力に基づき、これら各柱部10の端部と上記第一、第二のリム部8、9の内側縁との連続部には、この連続部を曲げる方向のモーメントが加わる。そして、この連続部に、上述の様に角が急に折れ曲がった隅凹部13、13が存在すると、これら各隅凹部13、13に応力集中が生じて、これら各隅凹部13、13に、亀裂等の損傷が発生し易くなり、上記保持器7の耐久性を損なう為、好ましくない。
本発明のころ軸受用プレス型保持器及び円筒ころ軸受は、この様な原因による耐久性の低下を防止すべく、上記各柱部10の端部と上記第一、第二のリム部8、9の内側縁との連続部に応力が集中しない構造を提供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明のころ軸受用プレス型保持器及び円筒ころ軸受のうち、請求項1に記載したころ軸受用プレス型保持器は、前述した従来のころ軸受用プレス保持器と同様に、金属板にプレス加工を施して成り、軸方向一端部に配置された円環状の第一のリム部と、軸方向他端部に配置された円環状の第二のリム部と、円周方向に亙って互いに等間隔に配置され、それぞれの一端部を上記第一のリム部の内側縁に、それぞれの他端部を上記第二のリム部の内側縁に、それぞれ連続させた複数本の柱部と、これら各柱部の円周方向両側縁と上記第一、第二のリム部の内側縁とにより四方を囲まれた部分に設けられ、それぞれの内側にころを転動自在に保持する複数のポケットとを備える。
特に、本発明のころ軸受用プレス型保持器に於いては、上記第一、第二のリム部の内径及び上記各柱部の内接円の直径を、上記各ポケット内に保持する各ころのピッチ円の直径よりも大きくしている。
又、上記各柱部の円周方向両側縁の外径側部分に平坦面を、同じく中間部乃至内径側部分に、径方向内側に向う程上記各柱部の円周方向に関する幅を狭くする方向に傾斜した傾斜面を、それぞれ形成している。
又、上記各柱部の円周方向両側縁と上記第一、第二のリム部の内側縁とを、上記各平坦面の両端部とこれら両リム部の内側縁との間に関しては四分の一円筒面状の第一の曲面により、上記各傾斜面の両端部とこれら両リム部の内側縁との間に関しては、径方向内側に向かう程曲率半径が大きくなる四分の一円すい面状の第二の曲面により、それぞれ連続させる事により、上記各柱部及び第一、第二のリム部の厚さ方向に関する、上記各側縁の全幅に亙り、それぞれが四分の一円弧状である、上記第一、第二の曲面により滑らかに連続させている。
更に、請求項2に記載した円筒ころ軸受は、前述した従来から知られている円筒ころ軸受と同様に、内周面中間部に円筒凹面状の外輪軌道を形成した外輪と、外周面中間部に円筒凸面状の内輪軌道を形成した内輪と、これら外輪軌道と内輪軌道との間に転動自在に設けた複数個の円筒ころと、これら各円筒ころを保持する保持器とから成る。特に、請求項2に記載した円筒ころ軸受に於いては、この保持器が上述した様な本発明のころ軸受用プレス型保持器である。
【0009】
【作用】
上述の様に構成する本発明のころ軸受用プレス型保持器及び円筒ころ軸受の場合には、各柱部の端部と第一、第二のリム部の内側縁との連続部に応力が集中しにくく、この連続部に亀裂等の損傷が発生しにくいので、十分な耐久性及び信頼性の確保を図れる。
【0010】
【発明の実施の形態】
図1〜2は、本発明の実施の形態の1例を示している。本発明のころ軸受用プレス型保持器である保持器7aの全体構成は、前述の図3〜4に示した従来の保持器7と同様である。互いに平行に配置した、それぞれが円輪状である第一、第二のリム部8、9の内側縁同士を、円周方向に亙り互いに等間隔に配置した複数本の柱部10、10により互いに結合している。そして、上記第一、第二のリム部8、9の内側縁と、円周方向に隣り合う柱部10、10の円周方向側縁とにより四周を囲まれる部分を、それぞれポケット11、11としている。
【0011】
特に、本発明のころ軸受用プレス型保持器である、上記保持器7aに於いては、上記各柱部10、10の円周方向両側縁と上記第一、第二のリム部8、9の内側縁とを、これら各柱部10、10及び第一、第二のリム部8、9の厚さ方向(図1の表裏方向、図2の上下方向)に関する、上記各側縁の全幅に亙り、四分の一円弧状の曲面14、15により滑らかに連続させている。
【0012】
即ち、上記各柱部10、10の円周方向両側縁のうち、上記保持器7aの直径方向に関して外径側部分には平坦面16を、同じく中間部乃至は内径側部分には傾斜面12、12を、それぞれ形成しているが、このうちの平坦面16の両端部と上記第一、第二のリム部8、9の内側縁とを、四分の一円筒凹面状の曲面14により、滑らかに連続させている。これに対して、上記各傾斜面12、12の両端部と上記第一、第二のリム部8、9の内側縁とを、四分の一円すい凹面状の曲面15、15により、やはり滑らかに連続させている。
【0013】
上述の様に構成する本発明のころ軸受用プレス型保持器の場合には、上記各柱部10、10の端部と上記第一、第二のリム部8、9の内側縁との連続部に、前述した従来構造に於ける隅凹部13、13(図4)の如き、大きな曲率で折れ曲がった部分が存在しない。言い換えれば、上記各曲面14、15の曲率は、何れも上記隅凹部13、13の曲率よりも小さく(曲率半径が大きく)応力が集中しにくい。従って、上記各連続部に亀裂等の損傷が発生しにくくなり、十分な耐久性及び信頼性の確保を図れる。
【0014】
尚、図示の例は、NU型と呼ばれる、外輪3の内周面両端部に内向フランジ状の鍔を有する円筒ころ軸受用のプレス型保持器に、本発明を適用した場合に就いて示した。但し、本発明は、この様な構造に限らず、NJ型、NUP型、N型、NF型等、他の型式の円筒ころ軸受や、円すいころ軸受、自動調心ころ軸受等、ころ軸受であれば、他の型式のころ軸受用のプレス型保持器にも適用できる。又、上記各柱部10、10に形成する傾斜面12、12を、図示の様な平坦面ではなく、上記各ころ6、6の転動面の曲率半径よりも少し大きな曲率半径を有する部分円筒凹面状に形成すれば、これら各転動面と上記各傾斜面12、12との当接部に、十分な油膜を形成できる。そして、上記各ころ6、6の転動に対する抵抗の低減や、耐摩耗性の向上を図れる。
【0015】
【発明の効果】
本発明のころ軸受用プレス型保持器は、以上に述べた通り構成され作用するので、第一、第二のリム部と柱部との連続部に亀裂等の損傷が発生する事を防止して、プレス型保持器を組み込んだころ軸受、並びにこのころ軸受を組み込んだ各種機械装置の信頼性並びに耐久性の向上を図れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態の1例を、保持器の一部を内径側から見た状態で示す図。
【図2】図1のA部拡大斜視図。
【図3】本発明の対象となる保持器を組み込んだころ軸受の部分断面図。
【図4】従来構造の1例を示す、図2と同様の図。
【符号の説明】
1 ころ軸受
2 外輪軌道
3 外輪
4 内輪軌道
5 内輪
6 ころ
7、7a 保持器
8 第一のリム部
9 第二のリム部
10 柱部
11 ポケット
12 傾斜面
13 隅凹部
14 曲面
15 曲面
16 平坦面

Claims (2)

  1. 金属板にプレス加工を施して成り、軸方向一端部に配置された円環状の第一のリム部と、軸方向他端部に配置された円環状の第二のリム部と、円周方向に亙って互いに等間隔に配置され、それぞれの一端部を上記第一のリム部の内側縁に、それぞれの他端部を上記第二のリム部の内側縁に、それぞれ連続させた複数本の柱部と、これら各柱部の円周方向両側縁と上記第一、第二のリム部の内側縁とにより四方を囲まれた部分に設けられ、それぞれの内側にころを転動自在に保持する複数のポケットとを備えたころ軸受用プレス型保持器に於いて、上記第一、第二のリム部の内径及び上記各柱部の内接円の直径は、上記各ポケット内に保持する各ころのピッチ円の直径よりも大きく、上記各柱部の円周方向両側縁の外径側部分に平坦面を、同じく中間部乃至内径側部分に、径方向内側に向う程上記各柱部の円周方向に関する幅を狭くする方向に傾斜した傾斜面を、それぞれ形成しており、上記各柱部の円周方向両側縁と上記第一、第二のリム部の内側縁とを、上記各平坦面の両端部とこれら両リム部の内側縁との間に関しては四分の一円筒面状の第一の曲面により、上記各傾斜面の両端部とこれら両リム部の内側縁との間に関しては、径方向内側に向かう程曲率半径が大きくなる四分の一円すい面状の第二の曲面により、それぞれ連続させる事により、上記各柱部及び第一、第二のリム部の厚さ方向に関する、上記各側縁の全幅に亙り、それぞれが四分の一円弧状である、上記第一、第二の曲面により滑らかに連続させた事を特徴とするころ軸受用プレス型保持器。
  2. 内周面中間部に円筒凹面状の外輪軌道を形成した外輪と、外周面中間部に円筒凸面状の内輪軌道を形成した内輪と、これら外輪軌道と内輪軌道との間に転動自在に設けた複数個の円筒ころと、これら各円筒ころを保持する保持器とから成る円筒ころ軸受に於いて、この保持器が請求項1に記載したころ軸受用プレス型保持器である事を特徴とする円筒ころ軸受。
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