JP4311977B2 - スラスト玉軸受 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、スラスト荷重を支持するスラスト玉軸受に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
この種のスラスト玉軸受として、非特許文献1に記載されたものが従来から知られている。図5はその非特許文献1に記載されたスラスト玉軸受を示す。このスラスト玉軸受は、一対の軌道輪20、21の対向面に形成された軌道溝23間にボール24と、そのボール24を保持する保持器25とを組込んでいる。
【0003】
保持器25は、環状板部26の外周と内周とに周方向に向く外側リング部27と内側リング部28とを設け、そのリング部27、28を相反する方向に傾斜させて先端の対向間隔をボール24の球径より幅狭としている。
【0004】
また、環状板部26の幅方向中央部に断面U字形の屈曲部29を設け、その環状板部26に上記屈曲部29とその両側部を打抜く複数のポケット30を保持器周方向に等間隔に形成し、各ポケット30内にボール24を収納している。
【0005】
ここで、ポケット30は、保持器周方向での対向間隔がボール24の球径よりやや大きい寸法とされ、保持器径方向で対向する間隔がボール24の球径より小さくされて、ボール24をその上部がポケット30から環状板部26上に突出する状態でボール24を保持するようになっている。
【0006】
上記保持器25においては、屈曲部29がリブの役目をするため、強度的に強く、変形や破損が生じ難いという特徴を有している。
【0007】
【非特許文献1】
J.ブレンドライン/P.エッシュマン/L.ハスバルゲン/K.ワイガンド著「ころがり軸受実用ハンドブック」株式会社工業調査会、1996年8月1日、P.32−33
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、非特許文献1に記載された図5に示すスラスト玉軸受においては、そのスラスト玉軸受の回転時、保持器25は複数のボール24の遅れ進みによってボール24との間に形成された軸方向すきまに相当する量だけ上方に移動して、図6(I)に示すように、外側リング部27および内側リング部28の内面がボール24に接触すると共に、図6(II)に示すように、ポケット30の保持器周方向で対向する一方の面30aの下側エッジ30bがボール24と接触する。このため接触応力が高く、その接触部において油膜切れや摩耗が生じ易い。また、ボール24にすり疵が発生したり、摩耗粉が軌道面にかみ込んで圧痕を発生する等の不都合があった。
【0009】
この発明の課題は、ボールの接触応力の低減を図り、ボールと保持器の接触部での油膜切れや摩耗を防止することができると共に、ボールにすり疵が発生するのを防止することができるようにしたスラスト玉軸受を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、この発明においては、軌道溝を有する一対の軌道輪と、その軌道輪間に組込まれた複数のボールと、そのボールを保持する保持器とから成り、前記保持器が、幅方向中央部に断面U字形の屈曲部が形成された環状板部と、その環状板部の外周および内周に連設されて先端の間隔がボールの球径より幅狭に形成されたテーパ状の外側リング部および内側リング部とを有し、前記環状板部には屈曲部およびその屈曲部の両側部にわたって形成されると共に、保持器周方向での対向間隔がボールの球径より大きく、保持器径方向での対向間隔がボールの球径より小さい複数のポケットを周方向に間隔をおいて設けたスラスト玉軸受において、前記保持器がボールにより支持される状態で前記外側リング部および内側リング部とボールの相互間に形成された軸方向すきまを保持器の厚み以下として、保持器が軸方向すきまの範囲で移動しても、ポケットの保持器周方向で対向する内面の上下のエッジ内にボールの中心が配置されるようにした構成を採用したのである。
【0011】
上記のように構成すれば、スラスト玉軸受の回転時、ポケットの保持器周方向で対向する一方の内面にボールを接触させることができる。
【0012】
このため、ボールの外周にポケットの下側エッジが当接する従来のスラスト玉軸受に比較して接触応力の低減を図ることができると共に、接触部での油膜切れや摩耗を防止することができる。また、ボールにすり疵が発生するのを防止することができる。
【0013】
ここで、保持器を金属板のプレス成形品とすることによって製造コストの安い保持器を得ることができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の形態を図1乃至図4に基づいて説明する。図1に示すように、スラスト玉軸受は、一対の軌道輪1a、1bと、その一対の軌道輪1a、1bの対向面に形成された軌道溝2に沿って転動可能な複数のボール3と、そのボール3を保持する保持器4とから成っている。
【0015】
図2および図3に示すように、保持器4は金属板のプレス成形品から成る。この保持器4は、環状板部5の外周と内周とに下方に向く外側リング部6と内側リング部7とを設けた構成とされている。
【0016】
外側リング部6と内側リング部7は相反する方向に傾斜するテーパ状とされて先端の間隔がボール3の球径より幅狭とされている。
【0017】
環状板部5の幅方向中央部には下面側に突出する断面U字形の屈曲部8が設けられている。環状板部5には屈曲部8およびその屈曲部8の両側部にわたる複数のポケット9が保持器周方向に等間隔に形成されている。
【0018】
ポケット9は、保持器周方向での対向間隔がボール3の球径より僅かに大きく、保持器径方向での対向間隔がボール3の球径より小径とされている。ボール3は各ポケット9内に挿入され、その挿入状態でボール3は上部がポケット9の上部開口から環状板部5の上側に突出する状態で上方に抜け出るのが防止されると共に、外側リング部6と内側リング部7によって下方に抜け出るのが防止される。
【0019】
図2(I)は、ポケット9の保持器径方向で対向する内面9aの下側のエッジ10がボール3に支持された状態を示し、その支持状態においてボール3と保持器4の相互間に軸方向すきまδが設けられている。この軸方向すきまδは、保持器4の厚みtより小さくなっている。
【0020】
また、エッジ10がボール3に接触する保持器4の支持状態において、ポケット9の保持器周方向で対向する内面9bの上側のエッジ11よりやや下側の位置にボール3の中心が位置し、ボール3と保持器4とが軸方向すきまδに相当する量だけ相対的に移動しても、上記内面9bの上下のエッジ11、12内にボール3の中心が配置されるようになっている。
【0021】
いま、スラスト玉軸受が回転すると、複数のボール3の遅れ進みによって保持器4が軸方向すきまδの範囲内において上下方向に移動する。
【0022】
このとき、軸方向すきまδは保持器4の厚みtより以下とされているため、ポケット9の保持器周方向で対向する内面9bの上下のエッジ11、12内にボール3の中心が位置し、ボール3は図4(II)に示すように、上記内面9bと接触する状態で自転しながら軌道溝2に沿って転動することになる。
【0023】
このように、ボール3は内面9bと接触し乍ら回転するため、ボールがポケットのエッジと接触しながら回転する従来のスラスト玉軸受に比較して接触応力の低減を図ることができる。
【0024】
また、ボール3と内面9bの接触部で油膜切れが生じたり摩耗したりするのを防止することができると共に、ボール3の表面にすり疵が発生するのを防止することができる。
【0025】
【発明の効果】
以上のように、この発明においてはボールと保持器の相互間に形成される軸方向すきまを保持器の厚みより小さくして、ポケットの保持器周方向で対向する内面の上下のエッジ内にボールの中心が配置されるようにしたので、ボールと保持器の接触応力の低減を図ることができると共に、その接触部での油膜切れや摩耗を防止し、かつボールにすり疵が発生するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明に係るスラスト玉軸受の実施の形態を示す断面図
【図2】(I)は図1の一部を拡大して示す断面図、(II)は(I)のイ−イ線に沿った断面図
【図3】図1に示す保持器の一部分を示す斜視図
【図4】(I)は図2(I)に示す保持器が上方に移動した状態の断面図、(II)は(I)のロ−ロ線に沿った断面図
【図5】従来のスラスト玉軸受を示す断面図
【図6】(I)は従来のスラスト玉軸受の回転状態を示す断面図、(II)は(I)のハ−ハ線に沿った断面図
【符号の説明】
1a、1b 軌道輪
2 軌道溝
3 ボール
4 保持器
5 環状板部
6 外側リング部
7 内側リング部
8 屈曲部
9b 内面
11、12 エッジ

Claims (2)

  1. 軌道溝を有する一対の軌道輪と、その軌道輪間に組込まれた複数のボールと、そのボールを保持する保持器とから成り、前記保持器が、幅方向中央部に断面U字形の屈曲部が形成された環状板部と、その環状板部の外周および内周に連設されて先端の間隔がボールの球径より幅狭に形成されたテーパ状の外側リング部および内側リング部とを有し、前記環状板部には屈曲部およびその屈曲部の両側部にわたって形成されると共に、保持器周方向での対向間隔がボールの球径より大きく、保持器径方向での対向間隔がボールの球径より小さい複数のポケットを周方向に間隔をおいて設けたスラスト玉軸受において、
    前記保持器がボールにより支持される状態で前記外側リング部および内側リング部とボールの相互間に形成された軸方向すきまを保持器の厚み以下として、保持器が軸方向すきまの範囲で移動しても、ポケットの保持器周方向で対向する内面の上下のエッジ内にボールの中心が配置されるようにしたことを特徴とするスラスト玉軸受。
  2. 前記保持器を金属板のプレス成形品とした請求項1に記載のスラスト玉軸受。
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