JPH0979265A - 玉軸受用冠型保持器 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 汎用性に富み、しかも耐久性、音響特性が優
れた保持器を、安価に提供する。 【構成】 玉軸受用冠型保持器を、円環状の金属製素子
１２を合成樹脂２１中にインサートする事により造る。
この円環状の金属製素子１２の軸方向片面には、複数の
凹部１３、１３を形成している。この凹部１３、１３の
表面に合成樹脂２１を添設する事により、ポケット９、
９を形成する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明の玉軸受用冠型保持器は、
各種回転装置の回転部分を支持する為の玉軸受を構成す
る複数の玉を転動自在に保持するのに利用する。

【０００２】

【従来の技術】各種回転装置の回転部分を支持する為
に、例えば図６に示す様な玉軸受が広く使用されてい
る。この玉軸受は、外周面に内輪軌道１を有する内輪２
と、内周面に外輪軌道３を有する外輪４とを同心に配置
し、上記内輪軌道１と外輪軌道３との間に複数個の玉
５、５を転動自在に設けて成る。これら複数個の玉５、
５は、保持器７により転動自在に保持される。上記外輪
４の両端部（図６の上下両端部）内周面には、それぞれ
円輪状のシールド板６、６の外周縁を係止する。これら
両シールド板６、６により、上記玉５、５設置部分に存
在するグリースが外部に漏洩したり、或は外部に浮遊す
る塵芥がこの設置部分に進入したりするのを防止してい
る。尚、この様な非接触型のシールド板６、６に代え
て、接触型のシール板を使用する場合もある。

【０００３】上記保持器７として一般的には、図７〜８
に示す様な冠型保持器を使用している。この冠型保持器
は、ポリアミド、ポリ四弗化エチレン（ＰＴＦＥ）等の
滑り易い合成樹脂により構成される。そして、円環状の
主部８と、この主部８の軸方向片面（図７の表裏方向表
面、図８の上下方向上面）に等間隔に設けられた複数の
ポケット９、９とを備える。各ポケット９、９は、互い
に間隔をあけて配置された１対の弾性片１０、１０と、
上記主部８の軸方向片面でこの１対の弾性片１０、１０
の間部分に設けられた凹面部１１、１１とから構成され
る。そして、各ポケット９、９に玉５、５（図６）を１
個ずつ、転動自在に保持する。

【０００４】上記各玉５、５は、各ポケット９、９を構
成する１対ずつの弾性片１０、１０の先端縁同士の間隔
を弾性的に押し広げつつ、これら１対の弾性片１０、１
０の間に押し込む事により、上記各ポケット９、９内に
保持する。この作業は、上記各玉５、５を前記内輪軌道
１と外輪軌道３との間に挿入し、これら各玉５、５を円
周方向等間隔に配置した後に行なう。即ち、上記内輪軌
道１と外輪軌道３との間に設けられた玉５、５に向けて
保持器７を押し付け、この保持器７のポケット９、９内
に玉５、５を抱き込む。上記保持器７は、この様に上記
各ポケット９、９内に玉５、５を抱き込む事により、こ
れら各玉５、５を前記内輪軌道１と外輪軌道３との間
に、転動自在に保持する。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】ところで、上述した様
な合成樹脂製の冠型保持器は、金属製の保持器に比べて
摩耗しにくく、しかも騒音が発生しにくい。即ち、上記
金属製の保持器の場合、使用に伴って摩耗が進行する
為、耐久性に難がある。又、金属同士の接触による騒音
（摩擦音、打音）が発生する。これに対して、上記合成
樹脂製の冠型保持器では、これら各不都合はない。しか
しながら、合成樹脂製の冠型保持器の場合、互いに隣り
合うポケット９、９の間部分をなす柱部１４、１４の変
形を防止する為に、上記ポケット９、９の下方部分１
９、１９の厚さ寸法Ｄを或る程度大きくしなければなら
ない。この為、合成樹脂製の保持器は、ポケット９、９
の中心位置をずらせたり（例えば、中心位置を上方にず
らせる事により、上記厚さ寸法Ｄを確保する）、或は上
記玉５、５として小径のものを採用する事によって上記
ポケット９、９を小さくし、上記厚さ寸法Ｄを確保して
いる。この結果、上記合成樹脂製の冠型保持器は特殊な
形状となり、汎用性に乏しいものとなる。

【０００６】更に、玉軸受の使用時に、保持器は玉の公
転速度で回転する。この際、保持器には回転速度の２乗
に比例した遠心力が作用する。従って、上記回転速度が
大きく、作用する遠心力が大きいと、合成樹脂製の冠型
保持器の柱部１４、１４が遠心力により外径側に開く様
に、弾性変形、或は塑性変形する。従って、上記合成樹
脂製の冠型保持器は、高速回転する部分に装着する玉軸
受には使用できない。この為、この様な合成樹脂製の冠
型保持器は、使用できる箇所が限られる。本発明の玉軸
受用冠型保持器は、上述の様な不都合を何れも解消し、
耐久性、静音性に優れると共に、高速回転する部分にも
使用可能で、汎用性に富む玉軸受用冠型保持器を安価に
提供すべく、発明したものである。

【０００７】

【課題を解決するための手段】本発明の玉軸受用冠型保
持器は、玉を転動自在に保持する為の複数のポケットを
備えた玉軸受用冠型保持器であって、軸方向片面に複数
の凹部を形成して成る円環状の金属製素子を合成樹脂中
にインサート成形する事により構成されている。そし
て、少なくとも上記ポケットを、上記凹部の表面に添設
された合成樹脂により構成している。

【０００８】

【作用】上述の様に構成される本発明の玉軸受用冠型保
持器が、複数の玉を転動自在に保持する際の作用自体
は、前述した従来の玉軸受用冠型保持器の場合と同様で
ある。特に、本発明の玉軸受用冠型保持器の場合には、
金属製素子を合成樹脂中にインサートしている為、特に
肉厚を大きくしないでも、ポケットの下方部分及び円周
方向に隣り合うポケット同士の間部分の強度を十分に確
保できる。従って、この間部分の変形を抑えるべく、上
記下方部分の厚さ寸法を大きくする必要がなくなる。
又、使用時に、大きな遠心力が加わっても上記間部分が
外径側に開きにくい為、高速回転する部分にも使用でき
る。

【０００９】一方、玉を転動自在に保持する為のポケッ
トは、合成樹脂により形成される。従って、従来の合成
樹脂製の冠型保持器の有する、摩耗しにくく、騒音も発
生しにくいと言った利点をそのまま有する。しかも、本
発明の玉軸受用冠型保持器は、合成樹脂の射出成形時に
金属製素子をインサートする事により造られる。従っ
て、加工工数の増大は僅かである為、安価に製造でき
る。これらの結果、本発明の玉軸受用冠型保持器は、安
価に製造できるにも拘らず、耐久性、静音性に優れ、且
つ汎用性が増す。

【００１０】

【実施例】図１〜２は本発明の第一実施例を示してい
る。本発明の玉軸受用冠型保持器は、前述した従来の玉
軸受用冠型保持器と同様に、全体を円環状に造られ、軸
方向片面（図１、２の上下方向上面）に等間隔に設けら
れた、複数のポケット９、９を備えている。各ポケット
９、９の内面は、互いに間隔をあけて配置された１対の
弾性片１０、１０の内周面と、この１対の弾性片１０、
１０の間部分に設けられた凹面部１１とから構成され
る。そして、各ポケット９、９に、玉５、５（図３参
照。図１〜２には省略。）を１個ずつ、転動自在に保持
する。この様に構成されるポケット９、９の内面は、そ
の全体を球状凹面若しくは円筒面としている。

【００１１】特に、本発明の玉軸受用冠型保持器に於い
ては、ポリアミド、ＰＴＦＥ、ポリアセタール等の合成
樹脂２１を射出成形する際に、この合成樹脂２１中に円
環状の金属製素子１２をインサートしている。この金属
製素子１２には、複数の凹部１３、１３を、円周方向に
亙って等間隔に形成している。上記凹部１３、１３は、
後述する様に合成樹脂を添設する事により、上記ポケッ
ト９、９をなすものである。この為に、上記各凹部１
３、１３の大きさは、完成後のポケット９、９の寸法形
状よりも大きく形成する。更に、隣り合う凹部１３、１
３の間部分をなす柱部１４、１４には、合成樹脂２１
を、金属製素子１２の一面側から他面側に送り込む為の
透孔１５、１５を設けている。

【００１２】上記合成樹脂２１は、金属製素子１２を成
形型（図示せず）の内側にセットした状態でこの成形型
内に送り込む事により、射出成形する。この結果、上記
合成樹脂２１は、透孔１５、１５を介して、例えば金属
製素子１２の表面（図１〜２の上面）側から裏面（図１
〜２の下面）側に入り込み、この金属製素子１２の表裏
両面に添設される。これにより、上記成形型の内面形状
に合致する、図１に示す様な凹面部１１及び弾性片１
０、１０から成るポケット９、９を備えた保持器が形成
される。本実施例の場合、図１〜２に示す様に、金属製
素子１２の表裏両面に上記透孔１５、１５を介して合成
樹脂２１が添設される。この為、合成樹脂２１が金属製
素子１２から分離する事はない。尚、本実施例の場合、
金属製素子１２の幅寸法Ｌを、完成後の保持器のポケッ
ト９部分の幅寸法Ｔよりも小さくしている。これは、保
持器の軽量化、並びに材料費低減の為である。但し、上
記各寸法は、必要とする強度、好ましい重量等を勘案し
て設計的に定める。又、本実施例では、凹部１３、１３
の中心部分には合成樹脂２１を設けていない。これも、
保持器の軽量化を図ると共に、合成樹脂２１の使用量を
低減しコスト低減を図る為である。

【００１３】上述の様に構成される本発明の玉軸受用冠
型保持器が、複数の玉を転動自在に保持する際の作用自
体は、前述した従来の玉軸受用冠型保持器の場合と同様
である。特に、本発明の玉軸受用冠型保持器の場合、金
属製素子１２をインサートしている。従って、上記柱部
１４、１４及びポケット９、９の下方部分１９、１９は
上記金属製素子１２により補強され、その強度は、従来
の合成樹脂製の冠型保持器に比べて十分に大きい。この
為、上記柱部１４、１４の変形を抑えるべく、上記下方
部分１９、１９の厚さ寸法Ｄを徒に大きくする必要がな
くなる。即ち、ポケット９、９の中心位置をずらせた
り、上記玉５、５を小径のものにする必要がなくなる。
この結果、従来は金属製の保持器を使用せざるを得なか
った箇所に、本発明の冠型保持器を用いた玉軸受を使用
可能になる。又、使用時に、上記柱部１４、１４が遠心
力により外径側に開きにくくなる。この為、本発明の冠
型保持器を用いた玉軸受を、高速回転する部分に使用す
る事ができる。

【００１４】一方、玉５、５を転動自在に保持する為の
ポケット９、９は、金属製素子１２の軸方向片面に形成
した凹部１３、１３に上記合成樹脂２１を添設する事に
より形成される。従って、各玉５、５の転動面は保持器
に対し、合成樹脂２１部分でのみ接触する。この為本発
明の冠型保持器は、従来の合成樹脂製の冠型保持器の有
する、摩耗し難く、騒音も発生し難いと言った利点をそ
のまま有する。

【００１５】上述した様に、本発明の玉軸受用冠型保持
器は、金属製素子１２を合成樹脂２１中にインサートす
る事により、剛性が向上し、汎用性が増す。又、高速回
転する部分にも使用できる。これと共に、ポケット９、
９を合成樹脂製とする事により、耐久性、静音性に優れ
たものとしている。更に、上記金属製素子１２を合成樹
脂２１中にインサート成形する事による加工工数の増大
は僅かである為、安価に製造できる。

【００１６】次に、図３〜５は本発明の第二実施例を示
している。本実施例に於いては、金属製素子１２ａの軸
方向片面（図３、４の上下方向上面）にのみ、合成樹脂
２１を添設している。又、上記金属製素子１２ａの幅寸
法Ｌ´と完成後の保持器のポケット９部分の幅寸法Ｔ´
とを同一寸法としている。但し、これら各寸法Ｌ′、
Ｔ′は、前述した様に、保持器の剛性、重量を勘案して
設計的に定める。更に、本実施例の場合、上記合成樹脂
２１を金属製素子１２ａの軸方向片面にのみ添設する事
に伴い、この金属製素子１２ａの各凹部１３、１３の中
央部分と、円周方向に隣り合う凹部１３、１３の間部分
２０、２０に、上記合成樹脂を固定する為の係止孔１
６、１６を設けている。この係止孔１６、１６は、図５
に詳示する様に、上記金属製素子１２ａの厚みＨの軸方
向片半部側（図５の上半部側）の円筒部１７と、この円
筒部１７に連続する、軸方向他半部側（図５の下半部
側）の面取り部１８とで構成している。この様な係止孔
１６、１６を設け、上記合成樹脂２１を各係止孔１６、
１６内に充填している為、この合成樹脂２１が、金属製
素子１２ａから分離する事はない。その他の構成並びに
作用に就いては、前述した第一実施例と同様である。

【００１７】尚、上述した第一、第二、各実施例は、ポ
ケット９、９部分の他、上記間部分２０、２０等にも合
成樹脂２１を添設している。但し、合成樹脂２１を添設
する部分は、ポケット９、９となる凹部１３、１３の表
面部分のみで良い。従って、例えば上記第一、二各実施
例で、上記間部分２０、２０に添設している合成樹脂２
１を省略する事もできる。

【００１８】

【発明の効果】本発明の玉軸受用冠型保持器は、以上に
述べた通り構成され作用する為、汎用性に富むと共に耐
久性、音響特性（静音性）に優れた保持器を提供でき
る。しかも、加工工数の増大は僅かである為、製造コス
トが嵩む事もない。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の第一実施例を示す、図８のＡ−Ａ断面
に相当する図。

【図２】図１のＢ−Ｂ断面図。

【図３】本発明の第二実施例を示す、図１と同様の断面
図。

【図４】図３のＣ−Ｃ断面図。

【図５】係止孔を示す、図４のＤ部拡大図。

【図６】冠型保持器を組み込んだ玉軸受の１例を示す断
面図。

【図７】従来の保持器の１例を示す半部平面図。

【図８】同じく斜視図。

【符号の説明】

１ 内輪軌道 ２ 内輪 ３ 外輪軌道 ４ 外輪 ５ 玉 ６ シールド板 ７ 保持器 ８ 主部 ９ ポケット １０ 弾性片 １１ 凹面部 １２、１２ａ 金属製素子 １３ 凹部 １４ 柱部 １５ 透孔 １６ 係止孔 １７ 円筒部 １８ 面取り部 １９ 下方部分 ２０ 間部分 ２１ 合成樹脂

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 玉を転動自在に保持する為の複数のポケ
   ットを備えた玉軸受用冠型保持器であって、軸方向片面
   に複数の凹部を形成して成る円環状の金属製素子を合成
   樹脂中にインサート成形して成り、少なくとも上記ポケ
   ットは、上記凹部の表面に添設された合成樹脂により構
   成されている、玉軸受用冠型保持器。