JPH0646961Y2 - 害虫駆除用具 - Google Patents

害虫駆除用具

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JPH0646961Y2
JPH0646961Y2 JP8689387U JP8689387U JPH0646961Y2 JP H0646961 Y2 JPH0646961 Y2 JP H0646961Y2 JP 8689387 U JP8689387 U JP 8689387U JP 8689387 U JP8689387 U JP 8689387U JP H0646961 Y2 JPH0646961 Y2 JP H0646961Y2
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理佳子 吉井
隆之 日和
健 日比野
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健雄 松村
佳子 橋本
美智子 菊間
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Description

【考案の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本考案は害虫駆除用具,特に,カミキリムシ類,コガネ
ムシ類などの害虫に対し優れた殺虫効果を有する害虫駆
除用具に関する。
(従来の技術) 近年,カミキリムシ類による農作物の被害が増加する傾
向にある。例えば,クワ,イチジクに対しキボシカミキ
リ,ナシ,リンゴに対しゴマダラカミキリ,ウドに対し
センノカミキリが寄生し,大きな被害を与えている。他
に,マダラカミキリ,スギカミキリなどが樹木に寄生す
る。特に,クワの被害が大きく,広範囲にわたってい
る。カミキリムシはクワの樹皮下に産卵し,ふ化幼虫は
木質部に深く穴をあけて食害する。食害孔の長さは,例
えば,60cm以上に達する。寄生密度の高いクワ樹は生理
機能を失い,枯死する。
カミキリムシの駆除には,化学殺虫剤の使用が考えられ
る。しかし,カミキリムシは穿孔性害虫であるため,化
学殺虫剤が樹幹内の幼虫に到達し難い。それゆえ,カミ
キリムシを効果的に駆除し得ない。クワ葉はカイコの飼
育に用いられるため,化学殺虫剤の使用はカイコに好ま
しくない影響を及ぼす。イチジク,ナシ,リンゴは食用
であり,化学殺虫剤の使用は人畜に害を与える。
このような欠点を解決するために,化学殺虫剤に代え
て,カミキリムシの天敵微生物である糸状菌(例えば,
ボーベリア・テネラ)を用いる試みがなされている。糸
状菌はカミキリムシ,特にキボシカミキリによく寄生す
るうえにカイコに病原性を有しない。この糸状菌を用い
たカミキリムシの駆除は,糸状菌を例えばフスマ培地で
培養し,培養菌を培地とともに直接クワなどの樹木に散
布して行われる。培養菌の散布は,カミキリムシの羽化
時期に合わせて実施される。しかし,この方法では,培
養菌が培地成分を充分に吸収できないため,休眠細胞に
近い状態であり,糸状菌の所望の殺虫効果が発現され得
ない。散布された培養菌のうち,樹木に付着せずに土壌
に吸収される菌も多く,殺虫効率が悪い。しかも,樹木
に付着した菌も,自然条件(雨,風など)により洗い流
されるおそれがある。さらに,フスマ培地のような栄養
価の高い培地を散布すれば,自然界に存在する微生物を
無差別に増殖させ,その結果,二次的な微生物汚染を引
き起こすおそれがある。この微生物汚染は,人体や植物
に有害となる危険性をもっている。
(考案が解決しようとする問題点) 本考案は上記従来の問題点を解決するものであり,その
目的とするところは,殺虫効果に優れた害虫駆除用具を
提供することにある。本考案の他の目的は,風雨や殺菌
剤の影響を受けにくい害虫駆除用具を提供することにあ
る。本考案のさらに他の目的は,人畜に害のない害虫駆
除用具を提供することにある。
(問題点を解決するための手段) 本考案は,糸状菌のような害虫感染用微生物および/ま
たは害虫感染用微生物の胞子を培地成分を有する培養担
体にて培養させることにより,殺虫効果に優れた害虫駆
除用具が得られる;培養担体として発泡体マトリックス
等を用いることにより,害虫感染用微生物および/また
は該害虫感染用微生物の胞子が培地成分を充分に吸収し
得る;それにより,害虫感染用微生物および/または該
害虫感染用微生物の胞子の剥離や流出が少ない害虫駆除
用具が得られる;この害虫駆除用具の培養担体に,樹木
等と当接して害虫の通行可能な暗所を形成するべく、凹
凸を設けることにより、暗所を好む害虫(例えば,カミ
キリムシ類)を誘引し得るため,さらに殺虫効率が高ま
る;そして,培養担体の少なくとも一部を撥水性シート
で覆うことにより,風雨や殺菌剤の影響を受けにくい害
虫駆除用具が得られる,との考案者の知見にもとづいて
完成された。
本考案の害虫駆除用具は,培地成分を有する培養担体に
害虫感染用微生物および/または該害虫感染用微生物の
胞子を培養してなる害虫駆除用具であって,該培養担体
が,樹木等と当接して害虫の通行可能な暗所を形成する
べく,凹凸を有してなり,そのことにより上記目的が達
成される。
培養担体は培地成分を担持し得て,害虫感染用微生物お
よび/または該害虫感染用微生物の胞子が培養され得る
ものであればよく,ボール紙,布切れ,発泡体マトリッ
クス,あるいは,害虫感染用微生物を培養し得るふすま
をプラスチック成形物やボール紙成形物等に接着させた
もの等が用いられる。
培養担体として用いられる発泡体マトリックスには,例
えば,ポリウレタン発泡体,ポリスチレン発泡体,塩化
ビニル発泡体,ポリエチレン発泡体,ポリエステル発泡
体がある。特にポリウレタン発泡体が好ましい。
この培養担体の少なくとも一部は,必要に応じて,撥水
性シートで覆われる。それにより,風雨や殺菌剤の影響
を受けにくい害虫駆除用具が得られる。撥水性シートの
素材としては,例えば,ポリエチレン,ポリプロピレ
ン,ポリアミド,フッ素樹脂がある。
害虫感染用微生物には,例えば,ボーベリア・テネラ
Beauveria tenella),ボーベリア・バシーナ(Beau
veria bassiana),メタリジウム・アニソプリエ(Met
arrhizium anisopliae),ベルチシリウム・リーアニ
Verticillium leeanii),シネマチウム・ジョネシ
ー(Synnematium jonesii)がある。カミキリムシ類の
駆除には,ボーベリア・テネラ(Beauveria tenella
が特に好ましい。
培地成分には,同化可能な炭素源と窒素源に無機塩類お
よび天然有機物が含有される。炭素源には,例えば,グ
ルコース,サッカロース,ラクトース,マルトース,グ
リセリン,デンプン,糖蜜がある。窒素源には,例え
ば,硫酸アンモニウム,塩化アンモニウム,硝酸アンモ
ニウムがある。無機塩類には,例えば,リン酸二水素カ
リウムなどのリン酸塩,硫酸マグネシウム,マグネシウ
ム,カリウム,カルシウムがある。天然有機物には,例
えば,肉エキス,魚肉抽出液,サナギ粉などの動物組織
抽出物または粉砕物;麦芽エキス,コーンスチープリカ
ー,大豆油などの植物組織抽出物;乾燥酵母,酵母エキ
ス,ポリペプトンなどの微生物菌体またはその抽出物が
ある。このような培地成分からなる培地としては,ツァ
ペックの培地などの合成培地やサナギ粉培地などの天然
培地が用いられる。
培養担体として,発泡体マトリックスを用いる場合に
は,例えば,発泡体組成物を培地成分とともに発泡させ
て得られる。こうすることにより,発泡体マトリックス
内に培地成分が組み込まれるため,発泡体表面だけでな
く内部での培養がなされ得,それにより,害虫感染用微
生物および/または該害虫感染用微生物の胞子の培養が
効果的に行われる。害虫感染用微生物および/または該
害虫感染用微生物の胞子は,発泡体マトリックス内に存
在する培地成分を充分に吸収し得るため,休眠細胞とな
らず,殺虫効果が高められる。培地成分は,発泡体組成
物の発泡の際に,主として発泡体マトリックス内に物理
的に組み込まれる。しかし,例えば,培地成分がアミノ
基,カルボキシル基を有し,発泡体組成物がイソシアネ
ート基を有する場合には,培地成分と発泡体マトリック
スとが化学的に反応する。それにより,培地成分が尿素
結合や酸アミド結合により,発泡体マトリックス内に化
学結合で担持される。このように,培地成分は発泡体マ
トリックスに強固に担持される。それとともに培養微生
物等が発泡体マトリックスの内部に組み込まれる。従っ
て,培養微生物が自然条件により剥離したり流出するこ
とは少ない。培養微生物の剥離や流出は,培養担体に揆
水性シートを配置することにより,さらに防止される。
培地成分の水酸基は,イソシアネート基と反応して炭酸
ガスを発生し,発泡を促進する。
ポリウレタン発泡体は,ポリエーテルまたはポリエステ
ルと,分子内に2個以上のイソシアネート基を有するイ
ソシアネート化合物と,水や他の発泡剤とを反応させ発
泡させて得られる。イソシアネート化合物としては,通
常の多官能イソシアネートが用いられ,例えば,トリレ
ンジイソシアネート,ジフェニルメタンジイソシアネー
ト,ジフェニルイソシアネート,ナフタリンジイソシア
ネート,キシレンジイソシアネート,ブタンジイソシア
ネート,トリフェニルメタン−4,4′,4″−トリイソシ
アネートがある。ポリエーテルまたはポリエステルはイ
ソシアネート化合物と反応してプレポリマーとされ,こ
のプレポリマーと水とを反応させることにより,炭酸ガ
スが発生して発泡し,ポリウレタン発泡体が形成され
る。ポリスチレン発泡体は,ポリスチレンプレポリマー
に発泡剤(ペンタン,ヘイサン,ヘプタンなど)を加
え,水中乳化重合により形成される。塩化ビニル発泡体
は,熱分解法やガス吹き込み法により得られる。ポリエ
チレン発泡体は,ポリエチレンプレポリマーに石油エー
テル,ガスフレオン12などの発泡剤を加え,混練し,加
熱発泡させて得られる。
いずれの発泡体を用いる場合でも,発泡前のプレポリマ
ーに対し発泡剤とともに培地成分を加えて発泡させるこ
とにより,培地成分が発泡体マトリックス内に組み込ま
れる。しかし,可溶性コラーゲン,ゼラチン,アルブミ
ンなどのペプタイドを用いて発泡体マトリックス(ペプ
タイドマトリックス)を形成し,これに培地成分を含浸
させてもよい。ペプタイドマトリックスは,ペプタイド
の水溶液と分子内に2個以上のイソシアネート基を有す
るイソシアネート化合物とを反応させて形成される。こ
のイソシアネート化合物には,前記多官能イソシアネー
トが用いられる。
イソシアネート化合物の一部は水と反応して炭酸ガスを
発生し,一部はペプタイドのアミノ基,カルボキシル基
と反応して尿素結合および酸アミド結合を生じる。その
結果,分子中にペプタイドマトリックスを有するポリウ
レタン発泡体が得られる。得られたポリウレタン発泡体
は,分子中に含まれるペプタイドの性質に応じて,一般
のポリウレタン発泡体に比して優れた親水性,水保持性
を有しており,かつ,タンパク分解酵素による優れた天
然崩壊性を有している。このポリウレタン発泡体に培地
成分を含浸させれば,培地成分が発泡体マトリックス内
に強固に担持される。
培地成分を発泡体組成物とともに発泡させつつペプタイ
ドを添加してもよい。それにより,培地成分が,発泡体
マトリックスとペプタイドマトリックスの両者により,
さらに強固に組み込まれる。
発泡体マトリックスがポリウレタン発泡体であれば,プ
レポリマー(ポリエーテルまたはポリエステルとイソシ
アネート化合物との反応物)と水や他の発泡剤に培地成
分が加えられ,反応に供される。水溶性の培地成分は水
溶液にしてプレポリマーと混合される。水不溶性の培地
成分は、プレポリマーの水溶液に分散される。水の量
は,プレポリマー100重量部に対し,10〜100重量部の範
囲が好ましい。10重量部を下まわると,発泡反応が遅延
し,所望の発泡密度の発泡体が得られない。プレポリマ
ーと培地成分との反応や発泡体マトリックス中への培地
成分の担持も充分になされない。100重量部を上まわる
と,水とプレポリマーとの反応が優先して培地成分が発
泡体マトリックス内に取り込まれにくい。培地成分は,
プレポリマー100重量部に対し,20〜500重量部,好まし
くは50〜200重量部とされる。20重量部を下まわると,
培地成分が発泡体マトリックス内に充分に含有されな
い。500重量部を上まわる量の培地成分は発泡体マトリ
ックス内に担持され得ない。
発泡体マトリックスには,保水力を上げるべく,好まし
くは親水性ポリマーが含有される。親水性ポリマーの含
有により,発泡体マトリックスへの水分の補給がほとん
ど必要でなくなる。親水性ポリマーには,例えば,寒
天,ポリビニルアルコール,ポリアクリルアミドがあ
る。
このような発泡体マトリックスを用いた培養担体には,
適当量の水分を含有させた後,オートクレーブ(120℃,
1.2atm)などにより滅菌して害虫感染用微生物が接種さ
れる。次いで,この培養担体は,例えば,25℃で約2週
間培養に供される。培養により,培養担体の表面は菌糸
と胞子でおおわれて,所望の害虫駆除用具が形成され
る。胞子は菌糸よりもカミキリムシ類などの害虫に対す
る殺虫効果が高い。胞子数は発泡体の表面積1cm2当た
り105個以上生育し得る。胞子数は通常105〜107個/cm2
となる。
得られた害虫駆除用具は,主として,カミキリムシ類の
駆除に用いられる。駆除法としては,この害虫駆除用具
を,該培養担体が樹木等と当接して害虫の通行可能な暗
所を形成するべく,配置される。この培養担体には,こ
のような暗所を形成できるように,凹凸が設けられてい
る。カミキリムシ類は夜行性であって,夜間に樹木を這
いまわって,幹等の太い部分に集まり,日中は物陰など
の暗所に集中する習性を有する。そのために,本考案の
害虫駆除用具を,カミキリムシ類の通行可能な暗所を形
成するように樹木に配置すれば,この暗所にカミキリム
シ類が集まると考えられる。
本考案の害虫駆除用具は,カミキリムシ類のほかにコガ
ネムシ類にも適用され得る。コガネムシ類は,樹木苗畑
や造林地など林業関係だけでなく,イチゴ,サツマイ
モ,ラッカセイなど農作物にも被害が多い。本考案の害
虫駆除用具を用いて糸状菌をコガネムシ類の成虫に寄生
させれば,たとえ成虫自体を殺虫し得なくても,成虫の
産卵した卵がふ化しなくなる。さらに本考案の害虫駆除
用具は,カミキリムシ,コガネムシばかりでなく,生き
た植物に寄生して害を及ぼす線虫などに有効である。そ
の場合は,糸状菌でなくその線虫の天敵微生物である細
菌,パスツレラ・ペネトランスを用いることができる。
本考案の害虫駆除用具は,例えば,第1図(a)および
(b)に示すように,培養担体10の表面において,樹木
に当接したときに害虫の通行可能な凹部11を有する。
カミキリムシ類は上記のごとく夜行性であって,日中は
物陰などの暗所に集中する習性を有する。このため,培
養担体10の凸部12を樹木に当接させれば,凹部11によ
り,培養担体10と樹木との間に暗所が形成される。この
暗所にカミキリムシ類が集まる公算が大きく,カミキリ
ムシ類の駆除効果が一層高まる。この培養担体10の凸部
12が樹木に確実に当接されるように,凸部12の表面に,
必要に応じて粘着剤または粘着テープが塗布または接着
される。
本考案の他の害虫駆除用具は,例えば,第2図(a)お
よび(b)に示すように,培養担体20の表面において,
樹木に当接したときに害虫の通行可能な凹部21を有する
用具であって,この培養担体20の一面がさらに撥水性シ
ート23で覆われている。この害虫駆除用具も,培養担体
20の凸部22を樹木に当接させれば,凹部21により,培養
担体20と樹木との間に暗所が形成される。それにより,
上記と同様のカミキリムシ類の駆除効果が得られる。
この害虫駆除用具は,例えば,第3図および第4図に示
すように,培養担体20の形状に限らず帯状にと位置さ
れ,この培養担体20の凸部22が樹木に当接される。当接
には,凸部22の表面に塗布または接着された粘着剤また
は接着テープが使用される。しかも,揆水性シート23が
樹木を覆うように配置される。培養担体20は,接着剤ま
たは粘着テープの塗布面が樹木の幹,枝に接するように
して,第3図(a)および第4図(a)に示すように,
樹木の幹や枝に,一重に,あるいは第3図(b)に示す
ように螺旋状に巻回することにより,樹木に係止され
る。また,第3図(c)および第4図(c)に示すよう
に,幹や枝の軸線に沿って真直に貼着することにより,
樹木に係止される。前述のように,カミキリムシ類は樹
木の幹や枝を這う習性,および日中は物陰などの暗所に
集中する習性を有するため,このように培養担体を帯状
にして樹木の幹や枝を覆いつつ,樹木との間に暗所を形
成すれば,この暗所にカミキリムシ類が集まる公算が大
となるため,カミキリムシ類は培養担体と接する機会が
増加し,カミキリムシ類の殺虫効果が向上する。培養担
体は,暗所を形成し得るならば,樹木に限らずビニルハ
ウスの支柱に取り付けてもよい。
(実施例) 以下に本考案を実施例について述べる。
実施例1 水1にサナギ粉40gを加えてエキスを抽出し,さらに
グルコース20gを加えて基本培地を得た。5重量%のゼ
ラチン水溶液275gにソフランネート(東洋ゴム工業製
造)(イソシアネート化合物)1000gを反応させてポリ
ウレタン発泡体を得た。このポリウレタン発泡体を(幅
30mm×長さ300mm×厚さ10mm)に切断し,さらにその一
面に第1図(a)に示すような平均高さ10mmの凸部を20
mm間隔で形成した。これに上記基本培地5〜100mlを含
浸させた。この発泡体をオートクレープ(121℃,1.2at
m)にて20分間滅菌した後,ボーベリア・テネラ(Beauv
eria tenella)の液体培養液1〜5mlを接種して25℃で
2週間培養した。培養後,このポリウレタン発泡体の凸
部の表面に,粘着剤を塗布した。
このように得られた害虫駆除用具を,第3図(a)に示
すように,凸部が樹木に当接されてスギカミキリの通行
可能な暗所を形成するように,スギの木の幹に一重に巻
回した。
その後,一昼夜放置後の朝方,このスギの木にいたカミ
キリを捕獲する。この捕獲作業を5回繰り返した(捕獲
数は12匹)。捕獲したカミキリを飼育したところ,15日
目にはすべて死んだ。
上記スギカミキリの死体を70%アルコールで表面処理
し,蒸留水を含浸した濾紙とともにプレート中に入れて
24℃で保存した。その結果,死体の関節部分にボーベリ
ア・テネラが局部的に発生した。
実施例2 害虫駆除用具として,第2図(a)に示すように,培養
担体に撥水性シートを積層した用具を用いたこと以外
は,実施例1と同様の試験を行った。
その結果,ポリウレタン発泡体の凹部により形成された
暗所およびスギの木のまわりにおいて,ボーベリア・テ
ネラに感染したスギカミキリの死体が数匹認められた。
しかも,この害虫駆除用具は,撥水性シートにより風雨
の影響から遮断されるため,30日間にわたり樹木から離
脱することはなかった。
実施例3 ボーベリア・テネラに代えてベルチシリウム・リーアニ
Verticillium leeanii,キボシカミキリの死体から
分離された)を接種したこと以外は,実施例1と同様の
試験を行った。
その結果,ポリウレタン発泡体の凹部により形成された
暗所およびスギの木のまわりにおいて,ベルチシリウム
・リーアニに感染したスギカミキリの死体が数匹認めら
れた。
実施例4 スギカミキリの成虫に代えてキボシカミキリの成虫を用
い,スギの木に代えてクワの木に害虫駆除用具を配置し
たこと以外は,実施例1と同様の実験を行った。
その結果,ポリウレタン発泡体の凹部により形成された
暗所およびクワの木のまわりにおいて,ボーベリア・テ
ネラに感染したキボシカミキリの死体が数匹認められ
た。
比較例1 培養担体として,凸部を有しないポリウレタン発泡体を
用いたこと以外は,実施例1と同様の試験を行った。捕
獲数は13匹であり,これらを飼育したところ,17日目ま
でに8匹が死んだ。残り5匹は35日目までに死んだ。
上記スギカミキリの死体を70%アルコールで表面処理
し,蒸留水を含浸した濾紙とともにプレート中に入れて
24℃で保存した。その結果,17日目までに死んだ8匹に
ついては,死体の関節部分にボーベリア・テネラが局部
的に発生した。他の5匹については,ボーベリア・テネ
ラの発生は認められなかった。
実施例および比較例から明らかなように,本考案の害虫
駆除用具は,樹木に配置したときカミキリムシ類の通行
可能な暗所を形成するべく凹凸を有するため,この暗所
にカミキリムシ類が集まり,そのために殺虫効果が高ま
る。糸状菌のような害虫感染用微生物は発泡体マトリッ
クス内で培養されるため,培養効率が高い。この害虫駆
除用具を樹木の幹に巻きつけて放置しても,菌糸が剥離
したり流されることはない。特に,撥水性シートを有す
る害虫駆除用具は,風雨や殺菌剤の影響から遮断される
ため,長期間にわたって樹木に保持され得る。
(考案の効果) 本考案の害虫駆除用具は,このように,害虫感染用微生
物および/またはその胞子が培養担体内で培養されるた
め,培養効率が高く殺虫効果に優れている。特に,カミ
キリムシ類に対する殺虫効果が高い。しかも,この害虫
駆除用具は,樹木等と当接して害虫の通行可能な暗所を
形成するべく,凹凸を有するため,この暗所にカミキリ
ムシ類が集まり,さらに殺虫効果に優れる。害虫感染用
微生物は培養担体内で培養されるため,培養効率も高
い。培養担体として発泡体マトリックスを用いる場合に
は,害虫感染用微生物および/またはその胞子は発泡体
マトリックス内に強固に担持されており,自然条件など
により剥離したり流されることはない。この害虫駆除用
具に撥水性シートを積層すれば,風雨や殺菌剤の影響か
ら遮断されるため,さらに強固に樹木に保持され得る。
しかも,この害虫駆除用具は微生物を用いて殺虫される
ため,化学殺虫剤に比べ人畜に害を及ぼさない。本考案
の害虫駆除用具は,樹木の幹や枝に巻きつけて使用され
るため,土壌などに吸収されず,害虫の殺虫が効果的に
なされ得る。しかも操作は容易である。それゆえ,本考
案の害虫駆除用具は,カミキリムシ類やコガネムシ類の
駆除に有効に利用され得る。
【図面の簡単な説明】
第1図(a)および(b)は,本考案の害虫駆除用具の
一実施例を示す斜視図;第2図(a)および(b)は,
本考案の害虫駆除用具の他の実施例を示す斜視図;第3
図は本考案の害虫駆除用具を樹木に配置したときの正面
図;第4図(a)および(b)は本考案の害虫駆除用具
を樹木に配置したときの断面図である。 10,20……培養担体,11,21……凹部,12,22……凸部,23…
…撥水性シート,3……樹木。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)考案者 日和 隆之 大阪府茨木市下穂積1丁目1番2号 日東 電気工業株式会社内 (72)考案者 日比野 健 大阪府茨木市下穂積1丁目1番2号 日東 電気工業株式会社内 (72)考案者 樋口 俊男 大阪府茨木市下穂積1丁目1番2号 日東 電気工業株式会社内 (72)考案者 松村 健雄 大阪府茨木市下穂積1丁目1番2号 日東 電気工業株式会社内 (72)考案者 橋本 佳子 大阪府茨木市下穂積1丁目1番2号 日東 電気工業株式会社内 (72)考案者 菊間 美智子 大阪府茨木市下穂積1丁目1番2号 日東 電気工業株式会社内

Claims (8)

    【実用新案登録請求の範囲】
  1. 【請求項1】培地成分を有する培養担体に害虫感染用微
    生物および/または該害虫感染用微生物の胞子を培養し
    てなる害虫駆除用具であって, 該培養担体が,樹木等と当接して害虫の通行可能な暗所
    を形成するべく,凹凸を有する害虫駆除用具。
  2. 【請求項2】前記培養担体の少なくとも一部が,撥水性
    シートで覆われている実用新案登録請求の範囲第1項に
    記載の害虫駆除用具。
  3. 【請求項3】前記害虫感染用微生物が,ボーベリア・テ
    ネラ(Beauveria tenella),ボーベリア・バシーナ
    Beauveria bassiana),メタリジウム・アニソプリ
    エ(Metarrhizium anisopliae),ベルチシリウム・リ
    ーアニ(Verticillium leeanii)およびシネマチウム
    ・ジョネシー(Synnematium jonesii)のうちの少なく
    とも一種である実用新案登録請求の範囲第1項に記載の
    害虫駆除用具。
  4. 【請求項4】前記培養担体が,発泡体組成物を培地成分
    とともに発泡させた発泡体マトリックスである実用新案
    登録請求の範囲第1項に記載の害虫駆除用具。
  5. 【請求項5】前記培養担体が,培地成分を含浸させた発
    泡体マトリックスである実用新案登録請求の範囲第1項
    に記載の害虫駆除用具。
  6. 【請求項6】前記発泡体マトリックスがポリウレタン発
    泡体である実用新案登録請求の範囲第4項または第5項
    に記載の害虫駆除用具。
  7. 【請求項7】前記発泡体マトリックスが,保水性を向上
    させるべく親水性ポリマーを含有する実用新案登録請求
    の範囲第4項または第5項に記載の害虫駆除用具。
  8. 【請求項8】前記害虫感染用微生物が,カミキリムシ類
    および/またはコガネムシ類に感染して,該カミキリム
    シ類および/またはコガネムシ類を駆除する実用新案登
    録請求の範囲第1項に記載の害虫駆除用具。
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