JP4262348B2 - 穿孔性害虫の防除方法及びマツ枯損の拡大を防止する方法 - Google Patents

穿孔性害虫の防除方法及びマツ枯損の拡大を防止する方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、穿孔性害虫の防除方法及びマツ枯損の拡大を防止する方法に関する。さらに詳しくは、人畜等の他の生物に害を与えない、簡便且つ効果的な穿孔性害虫の防除方法及びマツ枯損の拡大を防止する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
マツの枯損は、マツノマダラカミキリ等の穿孔性害虫により媒介されるマツノザイセンチュウにより引き起こされることが推測されている。例えば、マツノマダラカミキリの場合、5月中旬から7月末にかけて前年のマツ材線虫病の被害木から羽化脱出し、健全な松の若枝を後食(成熟のための摂食)する。マツノマダラカミキリの体内及び体表に存在するマツノザイセンチュウが後食により傷ついた部位から松の樹体内に侵入し、増殖する。マツノザイセンチュウ侵入後2〜3ヵ月で外見的な萎凋症状を呈し、葉が変色した異常木が生じる。異常木や枯死した木に産卵されたマツノマダラカミキリの幼虫は、孵化し、幼虫は樹皮下を食害しながら成長する。春になり気温が上昇すると蛹室で越冬したマツノマダラカミキリの幼虫は蛹となり、羽化して成虫となる。このときマツノザイセンチュウは、羽化したマツノマダラカミキリに移り、マツノマダラカミキリと共に他の健全木へ移動する。このようなサイクルで、マツ枯損が引き起こされ拡大していくものと考えられる。
【0003】
一般的に害虫を駆除するにあたって殺虫剤を使用する場合は、害虫ばかりでなく人畜等他の生物にも害を与える場合が多い。このようなことから人畜に害を与えない害虫の防除方法として、例えばボーベリア・ブロンニアティ(Beauveria brongniartii)、ボーベリア・バッシアナ(Beauveria bassiana)、ボーベリア・アモルファ(Beauveria amorpha) 、メタリジウム・アニソプリエ(Metarhizium anisopliae)等の天敵糸状菌を害虫に感染させて、該害虫を駆除する試みがなされるようになった。
【0004】
従来、天敵糸状菌を利用する防除方法としては、フスマ等の培地で天敵糸状菌を培養し、天敵糸状菌を培地ごと直接地面に大量に散布するという方法が行なわれている。即ち、この方法は、地面に天敵糸状菌を散布し、その分生胞子を繁殖させることにより天敵糸状菌の環境濃度を上げ、天敵糸状菌を昆虫に経皮感染させ易い環境を作りだすことにより害虫の感染率を高めることにより、害虫を防除する方法である。しかしながら、単に野外環境下で天敵糸状菌を培養した培地を散布するだけでは、天敵糸状菌が培地成分を十分に利用できないため休眠細胞に近い状態となるため、害虫の天敵糸状菌感染率が低下し、所望の殺虫効果を発現し得ないという欠点がある。また、散布された天敵糸状菌は樹木に付着せず、土壌に吸収される菌が多くなるため、天敵糸状菌の有する殺虫効果を十分発揮できないという欠点がある。更には、樹木に付着した菌も雨、風等の自然条件下で洗い流され易いという欠点もある。しかも、天敵糸状菌の分生胞子が経日的に減少するという欠点もある。
【0005】
そこで、前記欠点を解決すべく、天敵糸状菌を培地成分を含育させた担体で培養して、この担体を害虫生息域内の通り道等に設置することにより、害虫を防除する方法が行なわれている。この方法の一例としては、特開昭63−190807号公報、特開昭63−258803号公報で開示された桑等の穿孔性害虫であるキボシカミキリに用いられる駆除方法が挙げられる。この方法は、キボシカミキリが桑の樹上で交尾し、その雌成虫は産卵のために桑の木の根元へ下りてくるという習性を利用したもので、天敵糸状菌を培養した発泡体マトリックス等である害虫駆除用具を桑の木の根元に設置しておくことにより、有効性を高め且つ有効期間を延長し、更には少量の設置で効率よく感染させることを目的とした方法である。しかしながら、前記方法によれば、害虫が害虫駆除用具に直接接触するか、或いは該害虫駆除用具に近づいた時のみしか有効ではないという欠点を有する。
【0006】
一方、マツ枯損の原因とされるマツノザイセンチュウを媒介する穿孔性害虫、例えば、マツノマダラカミキリ等のように成虫がマツ樹主幹だけでなく枝部にまで広域に羽化脱出するという生態を示す害虫に対しては、ほとんどその天敵糸状菌の感染域外にいるときが多いため、前記キボシカミキリに用いられる方法のような駆除方法では、有効に感染させることができないという欠点がある。即ち、前記キボシカミキリに用いられる駆除方法は、マツノマダラカミキリのような害虫に対して用いる場合、広域にまんべんなく多数の駆除用具を設置する必要があり、限られた範囲内のみの処理では、処理範囲外に存在するマツノマダラカミキリのような害虫による被害を防止できないという欠点を有する。従って、前記キボシカミキリに用いられる駆除方法は、マツノマダラカミキリの防除方法としては不十分である。
【0007】
従来、マツ材線虫病によるマツ枯損を防止するために、マツノマダラカミキリまたはマツノザイセンチュウを防除する方法としては、(1)マツノマダラカミキリ幼虫の駆除を目的として、伐倒・剥皮・焼却および立木への薬剤処理、(2)マツノマダラカミキリ成虫の駆除を目的とした、殺虫剤の予防散布、(3)マツノザイセンチュウ感染後の駆除を目的とした、殺線虫剤の樹幹注入等が挙げられる。しかしながら、いずれも大変な労力を要すると共に、薬剤による中毒汚染や火災の危険性も有するという欠点がある。
【0008】
上記実情に鑑み、簡便且つ確実な穿孔性害虫の防除方法及びマツ枯損の拡大を防止する方法が望まれている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、マツノザイセンチュウを媒介する穿孔性害虫、とりわけマツノマダラカミキリに対して有効であり、人畜等の他の生物に害を与えない、簡便かつ確実な穿孔性害虫の防除方法を提供することを目的とする。さらに本発明は、人畜等の他の生物に害を与えない、簡便かつ確実なマツ枯損の拡大を防止する方法を提供することを目的とする。
【0010】
即ち、本発明は、〔1〕マツノマダラカミキリが生息する樹木の全部又は一部をシートで覆い、該シートで覆われた領域内部に、マツノマダラカミキリの天敵糸状菌の培養物を設置することを特徴とする、マツノマダラカミキリの防除方法であって、前記培養物は、マツノマダラカミキリの羽化脱出直後の成虫に接触するように、設置されることを特徴とする防除方法、及び〔2〕マツノマダラカミキリが生息する樹木の全部又は一部をシートで覆い、該シートで覆われた領域内部に、マツノマダラカミキリの天敵糸状菌の培養物を設置し、マツノマダラカミキリの羽化脱出直後の成虫を前記培養物に接触させることにより、前記天敵糸状菌に感染させることを特徴とする、マツノザイセンチュウによるマツ枯損の拡大を防止する方法であって、前記培養物は、マツノマダラカミキリの羽化脱出直後の成虫に接触するように、設置されることを特徴とする方法、に関する。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の穿孔性害虫の防除方法は、マツノザイセンチュウを媒介する穿孔性害虫が生息する樹木の全部又は一部をシートで覆い、該シートで覆われた領域内部に天敵糸状菌の培養物を設置することを1つの大きな特徴とする。本発明の防除方法によれば、天敵糸状菌培養物を用いるため、マツ枯損を引き起こす病原体であるマツノザイセンチュウを媒介する穿孔性害虫、とりわけマツノマダラカミキリに対して特異的に防除効果を発揮することができる。また、マツノザイセンチュウを媒介する穿孔性害虫が生息する樹木の全部又は一部をシートで覆い、該シートで覆われた領域内部に天敵糸状菌の培養物を設置するため、風雨等から守ることで効果を長期間安定させることができ、さらに、接触確率を上げることができるという優れた効果を発揮する。したがって、従来の防除方法では、防除効果が低い穿孔性害虫に対して、高い防除効果を発揮することができる。
【0012】
マツノザイセンチュウを媒介する穿孔性害虫としては、成虫がマツ樹主幹だけでなく枝部にまで広域に羽化脱出するという生態を示す穿孔性害虫が挙げられ、具体的には、マツノマダラカミキリ(Monochamus alternatus HOPE)、クロカミキリ(Spondylis buprestoides L.) 、サビカミキリ(Arhopalus coreanus SHARP)、アカハナカミキリ(Corymbia succedanea LEWIS) 、カラフトヒゲナガカミキリ(Monochamus saltuarius GEBLER)、ヒゲナガカミキリ(M. grandis WATERHOUSE) 、ビロウドカミキリ(Acalolepta fraudatrix BATES) 、ヤハズカミキリ(Uraecha bimaculata THOMPSON) 、ナカバヤシモモブトカミキリ(Leiopus guttatus BATES)、ヒゲナガモモブトカミキリ(Acanthocinus orientalis OHBAYASHI) が挙げられる。
【0013】
前記穿孔性害虫は、前記のように、マツの樹皮下に産卵され、孵化した幼虫は材内部で生長し、羽化脱出する。本発明者らは、蛹化、羽化した成虫が樹木から脱出してくる際、その羽化脱出してくる成虫に対して、天敵糸状菌の培養物が接触するように設置することにより、驚くべく高い防除効果が得られることを見出した。かかる防除効果は、従来のマツノマダラカミキリ等の穿孔性害虫の防除方法では得ることが困難な高い防除効果である。
【0014】
マツノマダラカミキリ等の穿孔性害虫が被害を及ぼす対象である樹木としては、マツ科植物が挙げられる。また、前記樹木としては、枯損木等が挙げられ、具体的には、立木の状態の被害木、伐倒した被害木等が挙げられる。防除効果を十分に発揮させる観点から、伐倒した被害木を集めて処理することが好ましい。
【0015】
天敵糸状菌の培養物の設置場所は、特に限定されないが、例えば、被害木の上に天敵糸状菌の培養物を設置すれば、その菌糸が木部内部に浸透し、幼虫に対しても致死効果を示すため、マツノマダラカミキリ等の穿孔性害虫が天敵糸状菌培養物と接触する確率が極めて高くなり、優れた防除効果を発揮させることができる。
【0016】
本発明においては、シートで覆った領域内部に天敵糸状菌培養物を設置するが、シートで覆う領域は樹木の全部であってもよく、一部であってもよい。例えば、樹木の全部を覆い、一部の開放部を設け、その周辺に天敵糸状菌の培養物を設置した場合、感染致死率を100%近くまで向上させることもできる。
【0017】
前記シートとしては、培養物を風雨等から守ることができるようなシートであればよく、例えば、ビニールシートが挙げられる。また、前記シートとしては、例えば、遮光性を有するシート等が挙げられ、さらに具体的には、黒色等のシートが挙げられる。例えば、黒色のシートを使用する場合、マツノマダラカミキリは羽化脱出した後、光を求めて外へ出ようとするので、その先に天敵糸状菌の培養物を設置すればより効果的に駆除を行なうことができる。この場合、シートを用いて、天敵糸状菌の培養物を設置した場所へ穿孔性害虫を誘導するように覆えばよい。
【0018】
本発明においては、前記穿孔性害虫の誘引物質を天敵糸状菌の培養物の設置場所付近に設置することにより、より効果的に天敵糸状菌の培養物の設置場所に該穿孔性害虫を導くことができ、効果的に駆除を行なうことができる。前記誘引物質としては、例えば、α−ピネン、その他テルペノイドとアルコールとの混合物、穿孔性害虫に由来する性フェロモン又は該性フェロモンと同等の生理活性を示す誘導体等が挙げられる。
【0019】
また、穿孔性害虫の羽化脱出直後に、天敵糸状菌の培養物を設置した場所以外への穿孔性害虫の移動を減少させるように、穿孔性害虫の忌避物質を該培養物の設置場所以外の場所に配置し、天敵糸状菌の培養物への穿孔性害虫の接触をより高めることができる。
【0020】
本発明で使用する天敵糸状菌の培養物は、バンド状又はシート状の培養担体に天敵糸状菌と培地成分とを含有することを1つの大きな特徴とする。
【0021】
天敵糸状菌としては、ボーベリア・ブロンニアティ(Beauveria brongniartii)、ボーベリア・バッシアナ(Beauveria bassiana)、ボーベリア・アモルファ(Beauveria amorpha) 、メタリジウム・アニソプリエ(Metarhizium anisopliae)等の糸状菌がカミキリムシ類に有効な病原菌として例示できる。前記糸状菌の中では、マツノマダラカミキリへの感染による致死性の観点から、特にボーベリア・ブロンニアティ(Beauveria brongniartii)とボーベリア・バッシアナ(Beauveria bassiana)が望ましい。
【0022】
前記培養担体としては、天敵糸状菌の培地を保持しうる担体であればよく、例えば、フスマ、ピートモス、発泡体マトリックス、不織布、織布等が挙げらる。なかでも、発泡体マトリックス、不織布、織布が好ましい。
【0023】
前記発泡体マトリックスとしては、例えば特開昭63−74479号公報、特開昭63−190807号公報で開示されたポリウレタンフォーム、ポリスチレン発泡体、塩化ビニル発泡体、ポリエチレン発泡体、ポリスチレン発泡体等が挙げられる。かかる発泡体マトリックスを担体として用いる場合、そのまま用いてもよく、前記発泡体を生成しうる発泡体組成物を培地成分とともに発泡させて得られる物質を用いてもよい。
【0024】
前記培養担体として用いる織布又は不織布の素材としては特に限定されず、市販されている素材が使用できるが、培地成分の含育性や保水性・親水性、天敵糸状菌の付着性、炭素源としての利用や天然崩壊性等の点からは、パルプ、レーヨン、ポリエステル等を素材とする織布や不織布が特に好ましい。
【0025】
前記培養担体の形状は、樹木に簡便且つ確実に設置でき、しかも防除効果の有効性を長期間持続させることができる観点、及び少数配置するだけで効率よくカミキリムシ類に病原菌を感染させることができる観点から、バンド状又はシート状に形成された担体が望ましい。
【0026】
前記バンド状又はシート状の培養担体としては、例えば、特開昭63−74479号公報、特開昭63−190807号公報で開示された発泡体マトリックス、或いは不織布、織布等の多孔性で見かけの表面積が大きい素材、及びこれらを組合せた素材が挙げられる。
【0027】
前記培養担体に含有させる培地成分としては、同化が可能な炭素源や窒素源、無機塩類、天然有機物等を含んだ成分が好ましい。炭素源としては、例えば、グルコース、サッカロース、ラクトース、マルトース、グリセリン、デンプン、セルロース糖蜜等が例示できる。窒素源としては、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム等が例示できる。無機塩類としては、リン酸二水素カリウム等のリン酸塩、硝酸マグネシウム、マグネシウム、カリウム、カルシウム等が例示できる。天然有機物としては、肉エキス、魚肉摘出液、サナギ粉等の動物組織抽出物や動物組織粉砕物、麦芽エキス、コーンスチープリカー、大豆油等の壇物組織抽出物、乾燥酵母、酵母エキス、ポリペプトン等の微生物菌体又はその抽出物等が例示できる。これらの培地成分を担体に含有させる方法としては、培地成分を直接塗布する方法や浸漬等によって含有させる方法が例示できる。
【0028】
天敵糸状菌の培養物は、培養担体に培地成分を含有させた後に菌を接種し培養する方法、予め天敵糸状菌を前培養して得られた培養液と培地成分とを混合した後に得られた混合物を培養担体に含有させる方法等で得ることができる。
【0029】
天敵糸状菌の培養物において、天敵糸状菌の濃度は、例えば、パルプ不織布を用いる場合、107 個(細胞)/cm2 (培養担体表面)以上であることが好ましく、108 個(細胞)/cm2 (培養担体表面)以上であることがより好ましい。
【0030】
本発明の穿孔性害虫の防除方法において、天敵糸状菌の培養物の設置時期は、成虫が羽化脱出する前、例えば、西日本では4月まで、東日本でも6月初旬までであることが好ましく、冬期は低温のため糸状菌の培養物の有効性は保持されるため、前年の11月に設置しても、翌年の羽化全期間に渡って十分効果が示される。
【0031】
本発明の穿孔性害虫の防除方法は、後記実施例の結果から明らかなように、樹木に少数配置するだけで効率よくマツノマダラカミキリに病原菌を感染させる方法であり、防除効果と作業性のよい防除方法である。
【0032】
本発明においては、前記のようにマツノザイセンチュウを媒介する穿孔性害虫が生息する樹木の全部又は一部をシートで覆い、該シートで覆われた領域内部に天敵糸状菌の培養物を設置することにより、該穿孔性害虫を天敵糸状菌によって感染させ、死滅させることができるので、これにより効率よくマツノザイセンチュウによるマツ枯損の拡大を防止することができる。
【0033】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0034】
実施例1
パルプ不織布(5×50cm)を培養担体として用い、グルコースとコーンスチープリカーの成分からなる培地を含有させ、B. bassiana を接種し、培養物(シート状の不織布製剤)を得た。前記不織布製剤における細胞濃度は2×108 個(細胞)/cm2 (培養担体表面)であった。
【0035】
得られた不織布製剤を、羽化脱出して数日のマツノマダラカミキリ成虫を強制的に接触させて、その後のマツノマダラカミキリの死亡状況を調べた。具体的には、製造後5℃の条件で保存したシート状の不織布製剤(表1中、「新製剤」の項)、又は4月に野外で松枯れした松の木を伐倒処理し、処理後の松の木の上に不織布製剤(シート状)を設置し、黒色のシートで覆って野外で2ヵ月放置して得られたシート状の不織布製剤(表1中、「製剤施用2ヵ月後」の項)のいずれかに対し、マツノマダラカミキリ成虫を連続的に、あるいは1秒又は30秒接触させた。ついで、前記成虫を個体別に飼育し、接触後、8日、14日及び21日後のマツノマダラカミキリ成虫の死亡数と糸状菌の該成虫への叢生の有無とを調べた。
【0036】
また、B. bassiana に代わりにB. brongniartii を用いた場合についても同様に調べた。結果を表1に示す。表中、死亡率は、「羽化脱出してきたマツノマダラカミキリの総数」に対する「マツノマダラカミキリの死亡数」の割合(%)を示す。また、叢生率は、「羽化脱出してきたマツノマダラカミキリの数」に対する「糸状菌を叢生したマツノマダラカミキリの死亡個体数」の割合(%)を示す。
【0037】
【表1】
Figure 0004262348
【0038】
表1の結果より、野外で2ヵ月放置された不織布製剤(B.bassiana) であっても、新製剤同様、2週間以内に100%のマツノマダラカミキリ成虫を致死させることが示される。また、B. brongniartii を用いた場合に比べ、B. bassiana を用いた際に、マツノマダラカミキリに対してより高い効果を示す。
【0039】
実施例2
松くい虫被害材(直径5〜15cm、長さ2m)の供試材20本を下から6、5、4、3、2本の順に5段に積み重ねた。ついで、実施例1と同様にして得られたB. bassiana を含有したシート状の不織布製剤〔50×5cm;細胞濃度:108 個(細胞)/cm2 (培養担体表面)〕を、積み重ねられた供試材の最上段に設置した(図1)。その後、直接雨に当たることのないよう供試材の最上段を黒色のビニールシートで覆った。不織布製剤の設置枚数、設置の有無により表2に示すように試験区1〜4を設定した。また、〔冬期処理:無処理、春期処理:不織布製剤8本の設置・ビニールシートなし〕を試験区5として設定した。
【0040】
【表2】
Figure 0004262348
【0041】
評価は、それぞれの試験区を試験開始から終了時(1月〜6月)まで、網室に設置し、試験期間中に羽化脱出してきた成虫を捕獲し、羽化脱出数(試験期間内の総数)と、羽化脱出してきた成虫を個体別飼育して、その後の死亡までの日数と、B. bassiana の感染状況(表3中、「菌の叢生虫数(叢生率)」の項)を調べることで行った。結果を表3に示す。
【0042】
【表3】
Figure 0004262348
【0043】
表3の結果より、14日以内の死亡率、菌の叢生率は、試験区1〜3において、ほぼ70%であり、無処理の試験区4と比較して非常に高くなることが示される。試験区1〜3内での死亡率及び叢生率のそれぞれの差はなく、設置回数の影響や枚数の影響は現れなかった。また、試験区3(本発明)と試験区5との比較の結果、ビニールシートで覆うことにより、格段に優れた防除効果を得ることができることが示される。
【0044】
【発明の効果】
本発明の穿孔性害虫の防除方法によれば、羽化脱出後、飛翔するマツノマダラカミキリ成虫をターゲットとするのではなく、羽化脱出直後の成虫を天敵糸状菌の培養物に接触させて駆除するため、接触確率が高く、また、雌成虫は産卵する前に致死させることができるという優れた効果を奏する。従って、次世代のカミキリの発生を防ぎ、一層効果的な防除が可能となると共にマツ枯損の拡大を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、マツノマダラカミキリの防除の目的で、8枚の不織布製剤を設置した際の概略の斜視図を示す。本発明においては、さらに遮光性のビニールシートで不織布製剤を設置した供試木を覆う。
【符号の説明】
1 天敵糸状菌を含有した不織布製剤
2 供試木

Claims (7)

  1. マツノマダラカミキリが生息する樹木の全部又は一部をシートで覆い、該シートで覆われた領域内部に、マツノマダラカミキリの天敵糸状菌の培養物を設置することを特徴とする、マツノマダラカミキリの防除方法であって、
    前記培養物は、マツノマダラカミキリの羽化脱出直後の成虫に接触するように、設置されることを特徴とする、防除方法。
  2. 前記培養物がバンド状又はシート状の培養担体に前記天敵糸状菌と培地成分とを含有させたものである、請求項1に記載の防除方法。
  3. 前記シートが、遮光性を有するシートである、請求項1又は2に記載の防除方法。
  4. 前記シート及び培養物は、11月から翌年マツノマダラカミキリ成虫が羽化脱出するまでに設置される、請求項1〜3の何れか一項に記載の防除方法。
  5. 前記樹木が枯損木である、請求項1〜4の何れか一項に記載の防除方法。
  6. 前記天敵糸状菌が、ボーベリア・ブロンニアティ(Beauveria brongniartii)、ボーベリア・バッシアナ(Beauveria bassiana)、ボーベリア・アモルファ(Beauveria amorpha) 及びメタリジウム・アニソプリエ(Metarhizium anisopliae)からなる群より選ばれた少なくとも1種の糸状菌である、請求項1〜5の何れか一項に記載の防除方法。
  7. マツノマダラカミキリが生息する樹木の全部又は一部をシートで覆い、該シートで覆われた領域内部に、マツノマダラカミキリの天敵糸状菌の培養物を設置し、マツノマダラカミキリの羽化脱出直後の成虫を前記培養物に接触させることにより、前記天敵糸状菌に感染させることを特徴とする、マツノザイセンチュウによるマツ枯損の拡大を防止する方法であって、
    前記培養物は、マツノマダラカミキリの羽化脱出直後の成虫に接触するように、設置されることを特徴とする、方法。
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