JPH0644973A - リチウム二次電池およびその製造方法 - Google Patents

リチウム二次電池およびその製造方法

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JPH0644973A JP4216411A JP21641192A JPH0644973A JP H0644973 A JPH0644973 A JP H0644973A JP 4216411 A JP4216411 A JP 4216411A JP 21641192 A JP21641192 A JP 21641192A JP H0644973 A JPH0644973 A JP H0644973A
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和伸 松本
Akira Kawakami
章 川上
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 LiCoO2 系の正極活物質を用いるリチウ
ム二次電池において、充放電サイクルに伴う容量の劣化
を抑制する。 【構成】 375〜700℃で合成したLiCoO2
MnO2 を混合し、得られた混合物を焼成することによ
って合成したLiy (Coy Mnx )O2 (x+y=
1)を正極活物質として用いる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、リチウム二次電池およ
びその製造方法に係わり、さらに詳しくはその正極活物
質の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】リチウム二次電池の正極活物質として
は、これまで、二硫化チタン、五酸化バナジウム、マン
ガン酸化物、リチウムマンガン酸化物、リチウムコバル
ト酸化物などが提案されてきたが、最近は、LiX Co
2 などのリチウムコバルト酸化物が約4Vという高電
圧を有することから、特に注目されている(たとえば、
米国特許第4302518号明細書)。
【0003】しかし、LiX CoO2 のx値が約0.7
以下の領域では、LiX CoO2 が有機電解液を酸化す
る反応が徐々に進むと考えられ、充放電サイクルに伴い
容量が劣化する。
【0004】これを詳しく説明すると、上記LiX Co
2 を正極活物質として用いたリチウム二次電池は、ま
ずLi1 CoO2 を合成し、それを正極活物質として用
いて電池を組み立て、電池組立後、充電してLi1 Co
2 からLiを電気化学的に引き抜くことによって、L
X CoO2 (x<1)としている。
【0005】しかし、LiX CoO2 は、不安定な4価
のコバルトを含み酸化力が強いため、前記のように有機
電解液を酸化し、その結果、充放電サイクルに伴い容量
が劣化するのである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上述したよ
うに、LiX CoO2 を正極活物質として用いたリチウ
ム二次電池が、xの小さな値まで充放電に利用すると充
放電サイクルに伴い容量が劣化するという問題点を解決
し、充放電サイクルに伴う容量の劣化が少ないリチウム
二次電池を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、LiCoO2
と、MnO2 などのリチウムを含まないマンガン酸化物
との混合物を焼成することによって得られる化合物をリ
チウム二次電池の正極活物質として用いることにより、
上記目的を達成したものである。
【0008】上記のリチウムを含まないマンガン酸化物
としては、MnO2 のほか、たとえばMnOOHなどが
挙げられる。
【0009】LiCoO2 とマンガン酸化物との混合物
を焼成して得られる化合物は、Liy (Coy Mnx
2 (x+y=1)の化学式で表される。このLi
y (Coy Mnx )O2 で表される化合物の特徴を、た
とえば、Mnを20mol%添加した場合を例にあげて
説明すると、Mnを20mol%添加した場合、上記化
合物はLi0.8 (Co0.8 Mn0.2 )O2 になる。
【0010】これまで知られているLiMO2 (MはC
o、Mn、Ni、Fe、Vや2種以上の金属)ではLi
が1であるが、本発明で用いるLiy (Coy Mnx
2ではMnの添加量だけLiが1より小さくなる。
【0011】そして、上記のようにLiが1より小さく
なることから、結晶構造にLiの空位が既に合成時から
存在しているものと推測され、それがLi+ イオンの拡
散をスムーズにするものと推測される。また、Liの空
位があり、かつ後述するようにMnが4価であることか
ら、合成時の試料に放電反応によりLiを挿入すること
ができるという特性があり、特性面において従来のLi
MO2 と異なるようになるものと考えられる。
【0012】上記のようにLiが1より小さくなったの
は、4価が安定なMnが固溶したためであり、このMn
の固溶が前述したような不安定なCo4+による有機電解
液の酸化を抑制して、充放電サイクルによる容量劣化の
小さい正極活物質になるものと考えられる。
【0013】上記Liy (Coy Mnx )O2 は、その
合成にあたって、LiCoO2 とMnO2 などのマンガ
ン酸化物との混合物を加熱して焼成するが、1100℃
付近で合成したLiCoO2 を用いると、単一相のLi
y (Coy Mnx )O2 が得られず、LiCoO2 、C
3 4 、Li2 MnO3 などに相分離してしまう。
【0014】しかし、比較的低温の700℃で合成した
LiCoO2 を用いると、単一相のLiy (Coy Mn
x )O2 が得られる。
【0015】また、ESCA(X線光電子分光法)によ
りCoとMnの価数を調べたところ、Mnは4価、Co
は3価であった。従来のLiMnO2 では、Mはすべて
3価であり、4価のものは混入しない。
【0016】低温で合成したLiCoO2 (375〜5
00℃で合成)は、従来の層状構造を有するLiCoO
2 (900〜1100℃で合成)とX線回折像が若干異
なっており、結晶構造が異なっているものと考えられ
る。
【0017】そのため、上記のように、低温合成品のL
iCoO2 と従来の高温合成品のLiCoO2 とでは、
MnO2 との混合物を焼成したときに生成物に差が生じ
るものと考えられる。そして、その差が生じる境となる
LiCoO2 の合成温度は、Liy (Coy Mnx )O
2 を合成する際の条件によっても変化するものと考えら
れるが、低温の下限と考えられる375℃付近に近づく
ほど層状構造が乱れた構造になっている。また、LiC
oO2 の層状構造の乱れの変化は連続的で700℃では
上記の低温型に近いと考えられる。
【0018】つぎに、Liy (Coy Mnx )O2 の結
晶構造について述べる。
【0019】図2は、700℃で合成したLiCoO2
とMnO2 をCo/Mn=9/1、8/2、7/3、6
/4(モル比)の割合で混合し、得られた混合物をそれ
ぞれ900℃で焼成して合成した試料のX線回折パター
ンである。
【0020】図3は、1100℃で合成したLiCoO
2 とMnO2 を同様にCo/Mn=9/1、8/2、7
/3、6/4(モル比)の割合で混合し、得られた混合
物をそれぞれ900℃で焼成して合成した試料のX線回
折パターンである。
【0021】図2、図3ともに、MnO2 量の増加によ
り格子定数(a0 、c0 )が変化し、ピーク位置が変化
する。
【0022】しかし、後者では、図3に示すように、い
ずれも、たとえば2θ=31°付近にCo3 4 のピー
ク(×印で示す)が観察され、単一相ではなかった。
【0023】これに対し、前者では、図2に示すよう
に、Co/Mn=8/2(モル比)とCo/Mn=9/
1(モル比)では2θ=31℃付近のピークがなく、単
一の化合物となっていた。図2のCo/Mn=8/2
(モル比)とCo/Mn=9/1(モル比)のパターン
および図2には図示していないがLiCoO2 のパター
ンより格子定数a0 、c0 を求めた結果を図4に示す。
【0024】図4に示すように、Mnの添加により(図
4では、横軸のy値の減少により)格子定数a0 が若干
減少し、格子定数c0 は増加している。これよりMnが
Coに固溶しており、混合物ではないことがわかる。こ
のように、4価が安定なMnの固溶によって前述したよ
うな不安定なCo4+による有機電解液の酸化を抑制し、
充放電サイクルによる容量劣化の少ない正極活物質とな
るものと考えられる。
【0025】上記のように、LiCoO2 としては、7
00℃以下、特に375℃〜700℃で合成したもので
あれば、単一相のLiy (Coy Mnx )O2 が得られ
る。
【0026】LiCoO2 とMnO2 などのマンガン酸
化物との混合物の焼成は、通常、700〜1100℃で
1〜48時間行われる。
【0027】Liy (Coy Mnx )O2 におけるxと
yはx+y=1であるが、xが0.05〜0.20のも
のにおいて特に特性のよいものが得られる。
【0028】Liy (Coy Mnx )O2 の原料となる
LiCoO2 は、たとえばCo3 4 とLiOH・H2
Oとの混合物を加熱処理することによって得られる。上
記Co3 4 は炭酸コバルト(CoCO3 )の酸素中で
の加熱処理によって得られるものであるが、このCo3
4 に代えてCoCO3 や2CoCO3 ・Co(OH)
2 などを用いてもよいし、またLiOH・H2 Oに代え
てLi2 CO3 などの他のリチウム塩を用いてもよい。
【0029】正極は、上記Liy (Coy Mnx )O2
に、必要に応じて、たとえば黒鉛、アセチレンブラック
などの電子伝導助剤や、たとえばポリテトラフルオロエ
チレンなどの結着剤を加え、混合して正極合剤を調製
し、得られた正極合剤をたとえば加圧成形することによ
って得られる。
【0030】負極には、リチウム金属、リチウム−アル
ミニウム合金などのリチウム合金、リチウム−炭素材料
(黒鉛など)などのリチウム化合物が用いられる。
【0031】電解液には、たとえば、LiClO4 、L
iPF6 、LiBF4 、LiCF3SO3 、LiC4
9 SO3 などの電解質の1種または2種以上を、1,2
−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、プロ
ピレンカーボネート、エチレンカーボネート、γ−ブチ
ロラクトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラ
ンなどの単独または2種以上の混合溶媒に溶解した有機
電解液が用いられる。
【0032】負極にリチウム−炭素材料を用いる場合に
おいて、電池組立時には炭素材料だけを用い、電池内に
おける電気化学的反応を利用してリチウム−炭素材料と
する場合には、正極活物質にリチウム(Li)源となる
物質を混入しておくことが好ましい。たとえば、Liy
(Coy Mnx )O2 に、Li2 MoO3 、Li2 Ni
2 や、Liを入れたNb2 5 などのLiを含み、L
y (Coy Mnx )O2 より低い電位でLiが引き抜
かれて炭素材料中へLiが挿入されるものを混合してお
く方法が挙げられる。
【0033】さらに、正極活物質と有機電解液の反応を
防ぐため、Liy (Coy Mnx )O2 粒子の表面をL
4 SiO4 ・Li3 PO4 などの固体電解質などでコ
ートしてもよい。また、過電圧を高めるため、PbO2
やIn2 3 、Bi2 3 などの酸化物を混合してもよ
い。
【0034】
【実施例】つぎに実施例をあげて本発明をより具体的に
説明する。ただし、本発明はそれらの実施例のみに限定
されるものではない。
【0035】実施例1 まず、以下に示すようにして、従来より低い温度でLi
CoO2 を合成した。
【0036】炭酸コバルト(CoCO3 )を375℃で
20時間酸素中で加熱し、Co3 4 を得た。このCo
3 4 とLiOH・H2 OをLi/Co=1/1(モル
比)で混合し、得られた混合物を700℃で20時間酸
素中で加熱して、LiCoO2 を合成した。
【0037】このようにして合成されたLiCoO2
MnO2 をCo/Mn=9/1(モル比)で混合し、得
られた混合物を900℃で24時間焼成して、Li0.9
(Co0.9 Mn0.1 )O2 を合成した。
【0038】上記のようにして合成されたLi0.9 (C
0.9 Mn0.1 )O2 を正極活物質として用い、これに
電子伝導助剤としてアセチレンブラックおよび結着剤と
してポリテトラフルオロエチレンを80:15:5(重
量比)の割合で混合して正極合剤を調製した。
【0039】この正極合剤40mgを金型内に充填し、
1t/cm2 で直径10mmの円板状に加圧成形したの
ち、200℃で熱処理して正極とした。この正極を用
い、図1に示すボタン形のリチウム二次電池を作製し
た。
【0040】図1において、1は上記の正極であり、2
は直径14mmの円板状のリチウムからなる負極であ
る。3は微孔性ポリプロピレンフィルムからなるセパレ
ータで、4はポリプロピレン不織布からなる電解液吸収
体である。
【0041】5はステンレス鋼製の正極缶であり、6は
ステンレス鋼製網からなる正極集電体で、7はステンレ
ス鋼製で表面にニッケルメッキを施した負極缶である。
8はステンレス鋼製網からなる負極集電体で、上記負極
缶7の内面にスポット溶接されていて、前記の負極2
は、このステンレス鋼製網からなる負極集電体8に圧着
されている。
【0042】9はポリプロピレン製の環状ガスケットで
あり、この電池にはプロピレンカーボネートと1,2−
ジメトキシエタンとの容量比1:1の混合溶媒にLiC
3SO3 を0.6mol/l溶解した電解液が注入さ
れている。
【0043】比較例1 Co3 4 とLiOH・H2 OをLi/Co=1/1
(モル比)で混合し、得られた混合物を900℃で24
時間焼成して、LiCoO2 を合成した。
【0044】上記のようにして合成されたLiCoO2
を正極活物質として用い、それ以外は実施例1と同様に
して、ボタン形のリチウム二次電池を作製した。つま
り、この比較例1の電池は、正極活物質としてMnを含
まないLiCoO2 (ただし、この合成は従来の一般的
合成方法にしたがって900℃で合成した)を用いた以
外は実施例1の電池と同様の構成のものである。
【0045】上記実施例1の電池および比較例1の電池
を充放電電流0.785mA(1mA/cm2 )で4.
3〜3.0Vの電圧間で充放電した。表1に両電池の充
放電サイクル数と充放電容量との関係を示す。
【0046】
【表1】
【0047】表1に示すように、充放電が10サイクル
目までは比較例1の電池の方が実施例1の電池より充放
電容量が大きかったが、20サイクル目になると実施例
1の電池の方が比較例1の電池より充放電容量が大きく
なり、さらに充放電サイクル数が多くなった40サイク
ル目や80サイクル目では、その差が大きくなり、実施
例1の電池が充放電サイクルに伴う容量劣化が少ないこ
とが明らかにされていた。
【0048】本発明では、正極活物質としてLiy (C
y Mnx )O2 を用いることを必須の要件としている
関係で、LiCoO2 とMnO2 などのマンガン酸化物
とを加熱下で反応させているが、マンガン酸化物以外に
もTiO2 、PbO2 、SnO2 などの4価金属の酸化
物をLiCoO2 と加熱下で反応させて、Liy (Co
y Mnx )O2 同様にリチウム二次電池の正極活物質と
有用な化合物が得られるものと期待される。
【0049】また、Fe、Ni、In、Biなどについ
ても、Mnに代えて用いることにより、Mnの場合同様
に、リチウム二次電池の正極活物質として有用な化合物
が得られるものと期待される。
【0050】
【発明の効果】以上説明したように、本発明では、Li
y (Coy Mnx )O2 (x+y=1)を正極活物質と
して用いることにより、充放電サイクルに伴う容量の劣
化が少ないリチウム二次電池を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るリチウム二次電池の一例を示す断
面図である。
【図2】700℃で合成したLiCoO2 とMnO2
の混合物を900℃で焼成して合成した試料のX線回折
パターンを示す図である。
【図3】1100℃で合成したLiCoO2 とMnO2
との混合物を900℃で焼成して合成した試料のX線回
折パターンを示す図である。
【図4】図2に示すパターンより求めたLiy (Coy
Mnx )O2 のy値と格子定数との関係を示す図であ
る。
【符号の説明】
1 正極 2 負極 3 セパレータ

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 リチウム金属、リチウム合金またはリチ
    ウム化合物を負極に用いるリチウム二次電池において、
    正極活物質としてLiy (Coy Mnx )O2 (x+y
    =1)を用いたことを特徴とするリチウム二次電池。
  2. 【請求項2】 請求項1記載のLiy (Coy Mnx
    2 を、LiCoO2 とリチウムを含まないマンガン酸
    化物との混合物を焼成することによって合成することを
    特徴とするリチウム二次電池の製造方法。
  3. 【請求項3】 LiCoO2 が700℃以下で合成した
    ものであり、リチウムを含まないマンガン酸化物がMn
    2 であることを特徴とする請求項2記載のリチウム二
    次電池の製造方法。
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