JPH0643340B2 - 虚血性心疾患治療薬 - Google Patents

虚血性心疾患治療薬

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JPH0643340B2
JPH0643340B2 JP61205778A JP20577886A JPH0643340B2 JP H0643340 B2 JPH0643340 B2 JP H0643340B2 JP 61205778 A JP61205778 A JP 61205778A JP 20577886 A JP20577886 A JP 20577886A JP H0643340 B2 JPH0643340 B2 JP H0643340B2
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ischemic heart
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伸二 富川
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久 杉本
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    • C12N9/00Enzymes; Proenzymes; Compositions thereof; Processes for preparing, activating, inhibiting, separating or purifying enzymes
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    • C12N9/0089Oxidoreductases (1.) acting on superoxide as acceptor (1.15)

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Description

【発明の詳細な説明】 <産業上の利用分野> 本発明は虚血性心疾患治療薬に関する。さらに詳しく
は、単細胞微生物特にヒト銅、亜鉛型スーパーオキシド
デイスムターゼ(またはヒト銅・亜鉛スーパーオキシド
ジスムターゼともいう)構造遺伝子を有する組換えDN
Aで形質転換された単細胞微生物中で産生されたヒトス
ーパーオキシドデイスムターゼと実質的に同一のアミノ
酸配列を有するポリペプチドを活性成分とする虚血性心
疾患治療薬に関する。
<従来の技術> スーパーオキシドデイスムターゼ(以下SODと略す)
は、次式に示す不均化反応により、スーパーオキシド
(・O )を消失させる酵素である。
・O +・O +2H→O+H スーパーオキシドは、生体における酸素毒性の中で最も
毒性の高い分子種で、炎症、未熟児酸素網膜症、放射線
障害、ガンなどの疾病を引き起こすと言われている。
ところで、虚血性心疾患の代表的なものとして心筋梗塞
があるが、心筋梗塞においては、冠動脈の狭窄あるいは
閉塞により冠動脈の支配下にある心筋は血液の供給を受
けることができなくなって、酸素不足の状態となる。そ
の際電子伝達系から自由電子が放出され活性酸素が作ら
れることになる。
また、心筋梗塞の治療においては、外科的療法や薬物療
法等によって血流が再開されるが、その際に心臓は急激
に酸素負荷されて、細胞内の酸素分圧(PO)を上昇
させて活性酸素の産生を高める。このことが血流再開の
障害(Reperfusion injurg)の一要因となっているとい
われている。
現在、心筋梗塞の治療法としては、大動脈−冠動脈バイ
パス法、大動脈内バルーンパンピング法の如き外科的療
法あるいは血管拡張薬、抗不整脈剤あるいは抗凝血剤等
を使用する薬物療法が知られているが、いずれも未だ十
分なものではない。
一方、特開昭57−141,288号公報には、ヒト細
胞スーパーオキシドデイスムターゼの特異抗体結合担体
を用いて、ヒト細胞からスーパーオキシドデイスムター
ゼを該担体に結合させて単離する方法が開示されてい
る。
特開昭57−155,991号公報には、ヒト・胎盤の
水抽出液から40〜50%飽和硫安沈殿画分を除去した
後の70〜80%飽和硫安上清から、硫安分画、陰イオ
ンクロマトグラフィー、デルろ過等によってスーパーオ
キシドデイスムターゼを取得する方法が開示されてい
る。
また、特開昭59−91,881号公報には、不純な銅
亜鉛スーパーオキシドデイスムターゼを含有する溶液
を、非極性ハイポーラスポリマー系樹脂と接触させ、次
いで該樹脂を洗浄し、さらに該樹脂に吸着した銅、亜鉛
スーパーオキシドデイスムターゼを溶出して精製する方
法が開示されている。
<発明が解決しようとする問題点> 本発明の目的は、ヒト・スーパーオキシドデイスムター
ゼと実質的に同一のアミノ酸配列を有するポリペプチド
を含有する虚血性心疾患治療薬を提供することにある。
本発明の他の目的は、遺伝子組換え技術によって製造し
た上記構造を持つポリペプチドを含有する虚血性心疾患
治療薬を提供することにある。
本発明のさらに他の目的および利点は以下の説明から明
らかとなろう。
<問題点を解決するための手段及び作用> 本発明によれば、本発明の上記目的及び利点はヒトスー
パーオキシドデイスムターゼと実質的に同一のアミノ酸
配列を有するポリペプチドを活性成分とする虚血性心疾
患治療薬によって達成される。
上記ポリペプチドは、例えばポジテイブレギユレーシヨ
ンサイトを有する形質発現調節遺伝子の下流にヒト銅、
亜鉛型スーパーオキシドデイスムターゼ構造遺伝子を有
する組換えDNAで形質転換された微生物を培養し、培
養物中に蓄積されたヒト銅、亜鉛型スーパーオキシドデ
イスムターゼ(以下ヒトCu,Zn−SODという)を採取
することによって製造される。
上記ヒトCu,Zn−SODのcDNA合成の鋳型として用いら
れるmRNAは正常なヒト組織(肝臓、胎盤、腎臓など)か
ら分離される。組織からのDNAの分離は、フエノール
−クロロホルム法、グアニジニウム−熱フエノール法、
グアニジニウム−塩化セシウム法などの公知の方法(Ma
niatis,T.ら,Molecular Cloning,187−198,1
982,Cold Spring Harbor Laboratory)が利用でき
る。次いでオリゴ(dT)セレロース、ポリ(U)セフア
ロースなどを用いてポリ(A)テイルをもつmRNAを
分離する。
このようにして得られたmRNAは、ヒトCu,Zn−SO
DのmRNAを含んでいるmRNA混合物であるが、こ
れをそのままcDNA合成に用いる。まず、逆転写酵素
を用いmRNAを鋳型として一本鎖cDNAを合成し、
次いで逆転写酵素またはDNAポリメラーゼを用いて二
本鎖cDNAを合成した後、適当なベクターに組込まれ
た形でcDNAを得る。これにはdG−dCまたはdA−dTホ
モポリマー結合法(Nelson,T.S.,Methods in Enzymolog
y,68,41,1979,Academic Press Inc.)やOka
yama-Berg法(Okayama,H.and Berg,P.,Mol.Cell.Bio
l.,2,161,1982)が利用できる。
この場合のようにmRNA混合物中の目的mRNA含量
が低い場合は、効率の高いOkayama-Berg法が好ましい。
この方法に必要なDNAおよび宿主菌はフアルマシア
P.L.バイオケミカルズ社カタログNo.27−475
0−01として入手できる。
このようにして得られる組換えDNAをたとえばエシエ
リヒア・コリ(Escherichia coli)×1776株あるい
はDH1株(Low,B.,Proc.Natl.Acad.Sci.,60,16
0,1968;Meselson,M.and Yuan,R.,Nature,21
7,1110,1968;Hanahan,D.,J.Mol,Biol,16
6,557,1983)に導入して形質転換させる。形
質転換法は公知の方法(重定勝或,細胞工学、Vol.2,
No.3,616,1983)またはそれに準ずる方法で
行うことができる。アンピシリン耐性などの薬剤耐性に
よりまず形質転換体を選別したのち、ヒトCu,Zn−SO
D遺伝子に対応すると考えられる塩基配列を有するオリ
ゴヌクレオチドを化学合成しこれを32Pで標識してプ
ローブとして用い、公知のコロニーハイブリダイゼーシ
ヨン法(Hanahan,D.ら、Methods in Enzymology,10
0,333,1983)によりポジテイブなシグナルを
示した形質転換体を選択する。これらの形質転換体より
常法に従ってプラスミドDNAを単離し、cDNA部分
の塩基配列をMaxam−Gilbert法(Maxam,A.M.and Gilber
t,W.,Proc.Natl.Acad.Sci.,74,560,1977)
またはジデオキシ法(Messing,J.ら,Nucleic Acids Re
s.,9,309,1981)によって決定し、ヒトCu,Zn
−SODcDNAの存在を確認する。確認には、ヒト赤
血球より単離されたCu,Zn−SODのアミノ酸配列(Jab
usch,J.R.,Biochemistry,19,2310,1980)
またはダウン症候群患者に由来する樹立細胞株より分離
されたmRNAから得られたcDNAの塩基配列(Sher
man,L.ら,Proc.Natl.Acad.Sci.,80,5465,1
983)を参考にすることができる。
次に、得られたヒトCu,Zn−SODのcDNAを適当な
形質発現調節遺伝子の下流に連結する。これにはトリプ
トフアンオペロンプロモーター(trpプロモーター)、
ラクトースオペロンプロモーター(lacプロモータ
ー)、λフアージのPプロモーター、tacプロモータ
ーなどの公知のプロモーターが利用できる。
しかし、ここで注目すべきことは、生体内にはO
必要とする酵素の存在が知られており(大柳善彦,スー
パーオキサイドと医学,58,1981,共立出版)、
従って、O を消去する作用を持つSODを過剰生産
させることにより宿主菌の生理障害をひき起す可能性が
充分に考えられることである。これを避けるためには、
遺伝子の発現を抑制した状態で細胞を成育させたのち、
適当な条件下にこの抑制を解除させて遺伝子を発現させ
SODを多量に産生させることが好ましい。
エシエリヒア・コリから分離されたプラスミドCol E
1 上に存在するコリシンE1遺伝子はコリシンE1タ
ンパクの産生を支配している遺伝子であり、通常の状態
においてはリプレツサータンパクがオペレーターに結合
することにより遺伝子の発現は抑制されているが、DN
Aに損傷を与えるような処理、たとえば紫外線照射、マ
イトマイシンC処理、ナリジキシン酸処理などによりこ
の抑制が解除されて誘発が起り、。コリシンE1タンパ
クが多量につくられる。これはいわゆる負の制御と呼ば
れる調節機構である。これに加えて、コリシンE1遺伝
子には正の制御も存在しており(調恒明ら、生化学、Vo
l.56,No.8,1082,1984)、ユニークな形
質発現調節機構を持つ遺伝子であって、誘発時には正の
制御の効果も加わってきわめて多量のコリシンE1タン
パク質が産生される。さらにコリシンE1タンパク質は
エシエリヒア・コリに対する抗菌性を機能とするタンパ
ク質であって、通常時の細胞の成育には必要ないタンパ
ク質とみなし得るものであり、その性質上、通常時のコ
リシンE1遺伝子の発現が厳密に抑制されていることか
らも、コリシンE1遺伝子の形質発現調節遺伝子の利用
は本発明にとってきわめて有利である。
Col E1 DNAはたとえばフアルマシアP.L.バ
イオケミカルズ社のカタログNo.27−4914−01
として入手することが可能である。また、正の制御に関
与する領域、プロモーター・オペレーター領域、リボソ
ーム結合領域からなるコリシンE1遺伝子の形質発現調
節遺伝子の塩基配列は既に報告されている(Ebina,Y.
ら,Gene,15,119,1981)。なお、本発明に
おけるコリシンE1遺伝子の形質発現調節遺伝子とは、
第1図の−140から78番目までの塩基配列の存在を
必須とするものである。
コリシンE1遺伝子の形質発現調節遺伝子の下流にヒト
Cu,Zn−SOD cDNAを連結する際に、いわゆる融
合タンパク質を産生するような形での連結は、適当な制
限酵素の切断部位を利用することにより比較的容易に行
うことができる。しかし、コリシンE1タンパク質に由
来する部分がある程度以上の長さを持っている場合、こ
の融合タンパク質を人体に投与した際に免疫原性(抗原
性)を発揮する危険性が充分に考えられる。従って、コ
リシンE1遺伝子の翻訳開始コドン(ATG)の直後に
ヒトCu,Zn−SODのN末端アミノ酸コドンが連結され
る形が好ましい。しかし、これを満足させてくれるよう
な適当な制限酵素の切断部位はどちらの遺伝子にも存在
しない。そこで、制限酵素を用いて両方のDNA断片を
必要部分が欠失した形で切り出し、欠失した部分は合成
DNA断片により補間することができる。
合成DNA断片は、たとえば固相トリエステル法(Miyo
shi,K.ら、Nucl.Acids Res.,8,5507,198
0)によりオリゴヌクレオチドを化学合成し、これらを
たとえばT4DNAリガーゼでつなぎ合せることにより
得られる。合成DNA断片は、もとの塩基配列を再現す
るものである必要は必ずしもない。アミノ酸コドンには
縮重が存在し、かつ生物の種によってコドンの使用頻度
が異なることは良く知られている。従って、アミノ酸の
配列を変えない限りにおいては、合成DNA断片の作製
時にどのようなコドンを選んでも自由であるが、宿主菌
中で使用頻度の高いコドンを選択すると、遺伝子の発現
量の増大が期待できる。コリシンE1遺伝子の形質発現
調節遺伝子領域に関しては、もとの塩基配列を再現する
方が好ましいが、結果として遺伝子の発現量の増加につ
ながるような塩基配列の変更は採用できる。
自律複製できるベクターに、コリシンE1遺伝子の形質
発現調節遺伝子を含むDNA断片、合成DNA断片、ヒ
トCu,Zn−SOD構造遺伝子断片を正しく組込むことに
より目的の組換えDNAが得られる。これらのDNA断
片は、たとえばT4DNAリガーゼにより連結すること
ができ、最終的に得られる組換えDNAの構造が目的と
するものである限り、DNA断片の連結順序に制限はな
い。使用するベクターは宿主微生物内で複製可能なもの
であれば特に制限はなく、宿主がエシエリヒア・コリの
場合はpBR322が良く用いられている。
得られた組換えDNAをベクターの宿主微生物内に導入
し形質転換させる。本発明では宿主微生物としてエシエ
リヒア・コリを使用しているが、形質発現調節遺伝子、
特にコリシンE1遺伝子の形質発現調節遺伝子が機能す
る限りにおいては、バチルス・ズブチリス(Bacillus s
ubtilis)、サツカロミセス・セレビシエ(Saccharomyc
es cerevisiae)等の他の微生物も使用できる。エシエ
リヒア・コリの場合はW3110株、20S0株、C6
00S株などの名前があげられる。特にW3110株が
好ましい。W3110株はエシエリヒア・コリK12株
の野性株(λ,F)から誘導されたλ,F株で
あり、栄養要求性などその他の点では野性株と同一であ
る(Bachmann,B.J.,Bacteriological Reviews,36,5
25,1972)。
テトラサイクリン耐性などによりまず形質転換体を選択
したのち、常法に従いプラスミドDNAを分離し、制限
酵素地図の解析により第2次のスクリーニングを行う。
さらに誘発時のヒトCu,Zn−SODの産生能によって目
的の形質転換体を選択する。
SOD活性の測定法としては、チトクロームC−キサン
チン−キサンチンオキシダーゼを用いる方法(McCord,
J.M.and Fridovich,I.,J.Biol.Chem.,244,604
9,1969)、ニトロブルーテトラゾリウム(NB
T)−リボフラビンを用いる方法(Beauchamp,C.and Fr
idovich,I.,Anal.Biochem.,44,276,1971)
等が利用できる。NBT−リボフラビン法は簡便であ
り、電気泳動後のタンパクの活性染色にも利用できるた
め便利である。エシエリヒア・コリの場合について言う
と、組換えDNAから産生されるヒトCu,Zn−SODに
加えて、宿主染色体から産生されるMn−SODおよびFe
−SODが混在している。これらのSODの酵素として
の作用は同一であるが、Cu,Zn−SODは1〜2mMのC
イオンによって活性が阻害されるのに対し、Mn−S
OD,Fe−SODは同条件下での阻害を受けないことか
ら区別できる。また、これら3種のSODは分子量や等
電点が互いに異なるため、電気泳動、イオン交換または
ゲル過カラムクロマトグラフイーによって分離するこ
とができる。
このようにして得られた、形質発現調節遺伝子、特には
コリシンE1遺伝子の形質発現調節遺伝子の下流にヒト
Cu,Zn−SOD構造遺伝子を有する組換えDNAで形質
転換された微生物を、その宿主微生物の増殖に適した条
件下で所定の時間培養し、その後に誘発合成を行わせて
ヒトCu,Zn−SODを大量に産生させる。エシエリヒア
・コリの場合、たとえばL培地、グルコースおよびカザ
ミノ酸を含むM9培地などの公知の培地により培養を行
う。培養は通常15〜43℃の温度で2〜24時間行
う。必要により通気、撹拌を加えることができる。対数
増殖期にある培養物にマイトマイシンC、ナリジキシン
酸などの薬剤を添加したり、紫外線を照射することによ
り誘発合成を行わせることができる。
培養後、公知の方法で菌体を集め破砕したのち、通常知
られているタンパク質の精製法に従ってヒトCu,Zn−S
OD活性を持つタンパク質を単離することによりヒトC
u,Zn−SODが製造できる。精製は、たとえば熱処理、
塩析、濃縮、透析、イオン交換クロマトグラフイー、ゲ
ル過クロマトグラフイー、クロマトフオーカシング、
電気泳動、高束液体クロマトグラフイー、アフイニテイ
クロマトグラフイーなどの操作を適宜組合せて行うこと
ができる。
かくして製造されたヒトスーパーオキシドデイスムター
ゼと実質的に同一のアミノ酸配列を有するポリペプチド
は、虚血性心疾患の治療薬としての活性を示す。
本発明のポリペプチドは、通常の方法に従って注射剤、
錠剤、軟膏剤、カプセル剤、リポソーム製剤などの製剤
とすることができる。
本発明のポリペプチドは、例えば1〜10mgの量で好適
に用いられ、あるいは1日0.017〜0.17mg/kg
・体重の投与量で1回〜数回に分けて例えば急性心筋梗
塞の治療を目的として、経口的また非経口的に投与し得
る。
以下に実施例および参考例を示す。
参考例1 ヒトCu,Zn−SODのcDNAを組込んだプ
ラスミドpSOD2の作製: 正常分娩によって得られたヒト胎盤からグアニジウム−
塩化セシウム法によってRNAを分離し、ついでオリゴ
(dT)セルロースを用いてポリ(A)テイルをもったm
RNAを分離した。
得られたmRNAより、Okayama−Berg法に従って、c
DNAライブラリーを作成した。宿主菌として大腸菌D
H1株を用いた。
コロニーハイブリダイゼーシヨン法にて、ヒトCu,Zn−
SODのcDNAが組込まれたプラスミドpSOD2を
保持した大腸菌DH1(pSOD2)株を得た。この菌
株より常法に従ってプラスミドpSOD2を単離した。
参考例2 ヒトCu,Zn−SOD産生用組換換えDNAの
作製: コリシンE1遺伝子の形質発現調節遺伝子の下流にヒト
Cu,Zn−SOD構造遺伝子を連結して、ヒトCu,Zn−SO
Dを産生させるためのプラスミドは、第3図に示すスト
ラテジーに従って作製した。
(1)コリシンE1遺伝子の形質発現調節遺伝子断片を
組込んだプラスミドpAOK1の作製: コリシンE1DNAをDraIで切断し、ついで、StuIで切
断した後、5%ポリアクリルアミドゲル電気泳動法で3
40bpのStuI−DraI断片を得た。この断片をプラスミド
pBR322のDraIサイトに挿入し、プラスミドpAO
K1を作製した。
(2)ヒトCu,Zn−SOD構造遺伝子断片の作製: プラスミドpSOD2をAluIで切断し、ついでTaqIで切
断した後、5%ポリアクリルアミドゲル電気泳動法で4
40bp断片を得た。
(3)合成DNAの作製: コリシンE1遺伝子の形質発現調節遺伝子の下流にヒト
Cu,Zn−SOD構造遺伝子を連結するために、コリシン
E1 340bp断片およびSOD構造遺伝子の440bp
断片で欠失している部分84bpを第4図に示すように1
2個のオリゴペプチドに分割して合成した。
(4)ヒトCu,Zn−SOD産生用組換えDNAの作製: プラスミドpAOK1のDraIサイトに、84bpの合成D
NAと、440bpのSOD構造遺伝子断片を挿入し、コ
リシンE1遺伝子の形質発現調節遺伝子の下流に、ヒト
Cu,Zn−SOD構造遺伝子が連結したヒトCu,Zn−SOD
産生用組換えDNApUBE2を得た。
参考例3 ヒトCu,Zn−SODを産生する組換え大腸菌
545πHR(pUBE2)株の作製: SOB培地でOD550=0.55まで培養した大腸菌
545πHR株をTfbI、ついでTfbIIで処理したのち、
処理液にプラスミドpUBE2を加え、0℃で30分
間、ついで42℃で90秒間熱処理して、プラスミドp
UBE2を保持する大腸菌545πHR(pUBE2)
株を得た。
参考例4 ヒトCu,Zn−SODと実質上同一のアミノ酸
配列を有するポリペプチドの製造: カザミノ酸300g、グルコース400g、テトラサイ
クリン1g、NaHPO600g、KH2PO4300
g、NaCl50g、NHCl100g、CuCl2・2
O0.5g、ZnSO・7HO0.9gを含む
培地100に大腸菌545πHR(pUBE2)を接
種し、クレツト116まで37℃で撹拌(2000rp
m)培養後、培養液にNaHPO600g、KH
PO300g、NaCl50g、NHCl100g
を含む水2、グルコース450gを含む水1とマイ
トマイシンC200mgを含む水500mlを加えて誘発合
成を37℃、2時間行わせた。シヤープレス型遠心分離
機での遠心(2000rpm、3時間)により344gの
湿菌体を得た。
集菌した菌体を3の10mMトリエタノールアミン緩
衝液(pH7.0)に懸濁して、ダイノミルで破砕した。
破砕液を遠心(9000rpm,60分間)し、得られた
粗抽出液の全量を3.5とした。粗抽出液に1MCu
Cl水溶液0.35mlを加え、一晩撹拌したのち60
℃で5分間加熱処理した。生じた沈殿を9000rpm、
20分間の遠心により除去した。上清から硫安沈殿によ
って70〜95%飽和画分を回収し、透析後イオン交換
セルロースDE52カラムクロマトグラフイーにかけ
て、20mM NaCl濃度(10mMトリエタノール
アミン緩衝液)で溶出しSOD活性画分を得た。この画
分から100%飽和硫安で分離した硫安沈殿を遠心(1
5000rpm、10分)で得、透析後、凍結乾燥してヒ
トCu,Zn−SODと実質上同一のアミノ酸配列を有する
ポリペプチドを得た(990mg)。
実施例1(マウスにおける急性毒性試験) ddY系雄マウス(体重32±2g)1群8匹を用いて、
本物質を生理食塩液に溶解し、静脈内(i.v.)投与
した。投与量は30mg/kg、100mg/kg、300mg/
kgの3群である。投与後2週間中毒症状について観察し
たが、各群ともに異常なく生存した。屠殺後の解剖所見
においても、生理食塩液のみを投与したコントロール群
と何ら変わるところがなかった。従って、マウスにおけ
る本物質の静脈内投与におけるLD50値は300mg/
kg以上である(第1表参照)。
実施例2(急性心筋梗塞に対する効果) 体重10〜12kgの雑種成犬をControl6例、ヒトCu,Zn
−SOD投与群6例、計12例を用いた。
実験犬をGOF麻酔下で胸骨縦切開により開胸した。左
冠動脈回旋枝(LCCA)根部をクレンメにより完全に
閉塞させることにより急性心筋梗塞モデルを作製した。
ヒトCu,Zn−SOD(Control群では生理食塩水)は、L
CCA閉塞10分前から血流再開後30分まで10分毎
に左心房へ留置したカテーテルより、第5図に示したス
ケジユールに従って、総量60mgを投与した。
LCCA遮断時間は90分とし、その後血流を再開さ
せ、6時間後に屠殺し心臓を摘出し、TTC(Tripheny
l Tetrazorium Chloride)により染色し、梗塞率を測定
した。
梗塞率は次のようにして求められる。
摘出心標本のLCCA根部をクランプする。その状態
で、左冠動脈からTTC溶液を灌流させ、また右冠動脈
及び左冠動脈前下降枝からEvans Blue溶液を灌流させ
る。この方法によれば、冠動脈遮断により影響を受けな
い部分はEvans Blueによって青く染まり、該遮断により
影響を受ける部分はTTCによって赤く染まるか(生き
ている部分)あるいは染まらず白のままである(梗塞部
分)。
染料溶液の灌流が終了したのち、この摘出心から左心
房、右心房を除去して左心室および右心室のみとし、こ
の部分を横方向に6〜7切片にスライスした。それぞれ
のスライスの重量並びに切断して青色部分、赤色部分お
よび白色部分の重量を測定した。
第6図には、摘出心を染料溶液で灌流したのちのスライ
スの模式図が示されている。第6図の(a)および(b)はそ
れぞれコントロール、およびヒトCu,Zn−SOD投与群
についてのものである。図中斜線部分はEvans Blue染色
部分、多数の黒点部分は赤く染色された部分であり、白
い部分は染まらなかった部分である。
スライスの全重量をLRV(g)とし、赤く染まった部分
と白のままの部分の合せた重量をRisk(g)とし、そして
白のままの部分の重量をInf(g)とすると、梗塞率はInf
/LRV、Risk/LRVおよびInf/Riskの値によって
総合的に判断される。
結果を、第2表および第7図に示した。
なお、第7図において、斜線を施した柱は、ヒトCu,Zn
−SOD群についてのものであり、他の柱はcontrol群
についてのものである。
第2表および第7図の結果から、Control群に比較ヒトC
u,Zn−SOD投与群では有意に梗塞範囲の縮小効果が認
められた。
また、実験中、心電図、血圧、心拍数を経時的に測定し
た。心電図を第8図(ヒトCu,Zn−SOD投与群)およ
び第9図(Control群)に示した。
第8図及び第9図中、(a)はcontrol、(b)はLCCA根
部閉塞30分後、(c)は閉塞解除直後および(d)は閉塞解
除直3時間後の心電図を各々示している。
第8図と第9図の比較から、Control群に比較し、ヒトC
u、Zn−SOD投与群ではT波の増高、心室性期外収縮の
出現が少ないことがわかる。
また血圧、心拍数については両群の間に有意な差は認め
られなかった。
【図面の簡単な説明】
第1図はコリシンE1遺伝子の形質発現調節遺伝子領域
の塩基配列を示したものである。PBはRNAポリメラ
ーゼの結合部位、RSはRNAポリメラーゼの認識部位
である。太い矢印は転写の開始点と転写方向を示してい
る。破線による下線部はリボソーム結合部位を示し、Me
tが翻訳開始コドンの位置を示している。2カ所存在す
る実線下線部は正の制御に関与する領域である。また制
限酵素DraIの切断位置を示した。 第2図は胎盤のmRNAから得られたヒトCu,Zn−SO
D cDNAの構造遺伝子領域の塩基配列と、塩基配列
から決定されるアミノ酸配列を示した。2カ所の下線部
はコロニーハイブリダイゼーシヨンに用いた2種類の合
成DNAがハイブリダイズする領域である。 第3図は組換えDNA pUBE2が作製されるまでの
経過の概略を図示したものである。 第4図は合成DNA断片の塩基配列と、化学合成したオ
リゴヌクレオチドの塩基配列を示したものであり、オリ
ゴヌクレオチドを結合して得られる合成DNA断片は、
5′端はDraI断端、3′端はTaqI切断端となっている。
*印は第2図の塩基配列を変更した個所で2カ所存在し
ている。但しアミノ酸配列は変わっていない。 第5図は、ヒトCu,Zn−SOD投与のスケジユールであ
る。 第6図は、摘出心を染料溶液(TTC溶液とEvans Blue
溶液)で灌流したのちのスライスの模式図ある。 第7図は、Control群とヒトCu,Zn−SOD投与群とにつ
いての心臓の梗塞率の比較を示している。 第8図および第9図は、それぞれヒトCu,Zn−SOD投
与群およびcontrol群についての心電図である。
フロントページの続き (72)発明者 杉本 久 東京都港区白金台4−6−1 東京大学医 科学研究所宿舎 (72)発明者 藤原 寛 山口県宇部市大字小串1978の5 宇部興産 株式会社宇部研究所内 (72)発明者 中越 一郎 山口県宇部市大字小串1978の5 宇部興産 株式会社宇部研究所内 (56)参考文献 特開 昭56−32422(JP,A) 特開 昭62−289187(JP,A) 特開 昭62−226958(JP,A) 特開 昭59−91881(JP,A)

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】ヒト銅・亜鉛スーパーオキシドジスムター
    ゼと実質的に同一のアミノ酸配列を有するポリペプチド
    を活性成分として含んでなる虚血性心疾患治療薬。
  2. 【請求項2】上記ポリペプチドが単細胞微生物中で産生
    されたものである特許請求の範囲第1項に記載の虚血性
    心疾患治療薬。
  3. 【請求項3】上記単細胞微生物がポジテイブレギユレー
    シヨンサイトを有する形質発現調節遺伝子の下流にヒト
    銅、亜鉛型スーパーオキシドジスムターゼ構造遺伝子を
    有する組換えDNAで形質転換されたものである特許請
    求の範囲第2項に記載の虚血性心疾患治療薬。
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