JPH0642821Y2 - 射出成形用金型 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本考案は、射出成形用金型に係り、特にシール構造に改
良を加えた射出成形用金型に関する。

（従来の技術） 射出成形による成形体には、例えば第５図に符号１で示
すように、その一部に孔２を必要とするものがある。こ
のような成形体１において、該孔２を機械加工により形
成したのではコスト負担が大きくなり、このため、通常
は、第６、７図に示すような金型を用いて該孔２を一体
成形するようにしている。

第６、７図において、３は上型、４は下型で、それぞれ
は上型プレート５、下型プレート６に固定されている。
上型プレート５はプレス上ラム（図示略）に支持されて
昇降動作し得るものとなり、その下降動作により上型３
が下型４に型閉じされ、この型閉じ状態において上・下
型3,4の間には成形空間としてのキヤビテイ７が形成さ
れるようになる。しかして上型３下型４との何れか一方
（こゝでは上型３）の型彫り面には凹穴８が設けられ
（第７図）、この凹穴８には孔成形用のピン（シール部
材）９が圧入されている。ピン９は、キヤビテイ７内に
延ばした先端を相手型（こゝでは下型５）のキヤビテイ
面に当接させており、この状態でキヤビテイ７内に樹脂
を射出し、固化後脱型すれば、前記ピン９の抜け跡がそ
のまゝ孔となり、第５図に示したように、孔２を有する
成形体１が得られる。

このような金型構造において、ピン９の先端と相手型５
との間のシール性が悪いと、両者の隙に樹脂が入り込ん
で、いわゆるバリが発生するようになる。このため、通
常は、該ピン９を可撓性を有する樹脂、主に四ふっ化エ
チレン樹脂（テフロン）にて形成すると共に、ピン９を
キヤビテイ７の壁間距離よりもわずか長く突出させ、型
締力でその先端を弾性変形させることにより、相手型５
との間のシール性を高めるように配慮している。

（考案が解決しようとする課題） ところで、上記型締力は、通常、50〜3000トン程度とき
わめて大きく、かゝる大きな型締力で摺り合せ、変形を
繰り返す間にシール部材（ピン９等）に摩耗が生じ、結
果としてシール性が阻害されてバリ発生を招くようにな
る。このため、通常は、定期的にシール部材を交換し、
前記バリ発生に対処していた。しかしながら、上記凹穴
８内に単にシール部材９を嵌着する構造によれば、シー
ル部材９は凹穴８に密に嵌合しているため、該シール部
材９を凹穴８から取出そうとすると、その背部に負圧が
発生し、その取出しがきわめて困難になるという条件が
あった。そこで、従来一般には、該シール部材９を削り
出しにより取除くようにしていたが、その削り出しに時
間がかかって生産性が阻害され、その上、凹穴８の損傷
を招いて余分な修正加工を必要とする不具合も発生し、
その根本的な解決が望まれていた。

本考案は、上記従来の問題を解決することを課題として
なされたもので、その目的とするところは、シール部材
の交換を容易になし得る射出成形用金型を提供すること
にある。

（課題を解決するための手段） 本考案は、上記課題を解決するため、キヤビテイ面に設
けた凹穴内に、底部に貫通孔を有する有底筒状の金属製
のキャップ体を嵌着し、該キャップ体に、成形品に孔を
形成するための可撓性のシール部材の基部を嵌合保持さ
せるように構成したことを特徴とする。

本考案において、上記キャップ体とシール部材とは、予
めキャップ体にシール部材を嵌合してサブアッセンブリ
ー体として用意するのが望ましい。またキャップ体は、
金属製であれば特にその材質を問うものでないが、溶接
性に優れた材料例えば軟鋼を選択するのが望ましい。

（作用） 上記のように構成した射出成形用金型においては、キャ
ップ体に例えば点溶接等により取出し部材を連結して、
これを凹穴から簡単に抜き取ることができ、一方キャッ
プ体の底部の貫通孔に例えば押出し部材を挿入して、シ
ール部材をキャップ体から簡単に押出すことができる。
すなわち、切削等によりピンを破壊することなく、シー
ル部材の交換を行うことができるようになる。

（実施例） 以下、本考案の実施例を添付図面にもとづいて説明す
る。なお、以下の図において、前出第６、７図に示した
部分と同一部分には同一符号を付し、その説明は省略す
ることとする。

第１図〜第３図において、11は軟鋼製の有底筒状のキャ
ップ体、12は四ふっ化エチレン樹脂製のピン（こゝで
は、テフロンピン）で、両者は、上型３の型彫り面に設
けた凹穴８内に一体的に嵌着されている。キャップ体11
は、その底部に貫通孔13を有し、前記凹穴８内に底付き
となるまで嵌入されている。一方ピン12は、大径の本体
部12aと該本体部12aに肩面12bを介して連接する小径の
孔成形部12cとから成り、キャップ体11内に同じく底付
きとなるまで嵌入されている。キャップ体11とピン12と
は、予めキャップ体11内にピン12を圧入することにより
サブアッセンブリー体として供され、キャップ体11に押
圧力を加えることにより凹穴８内に一体的に嵌着され
る。そしてこの嵌着状態においてキャップ体11の端面11
aとピン12の肩面12bとは上型３のキヤビテイ面に面一と
なり、ピン12の孔成形部12cのみがキヤビテイ７内へ突
出するようになる。

上記のように構成した射出成形用金型においては、上・
下型3,4を型閉じすると、ピン12の孔成形部12cの先端が
下型４の型彫り面に当接して弾性変形し、この状態でキ
ヤビテイ７内に樹脂を射出し、固化後脱型すれば、前記
ピン12の抜け跡がそのまゝ孔となり、前出第５図に示し
たように、孔２を有する成形体１が得られるようにな
る。

しかして、射出サイクルの繰返しによりピン12が摩耗
し、その交換を行わなければならい時期になったら、先
ず第２図に示すように、パイプ等から成る取出し部材15
をキャップ体11の端面11aに突合せ溶接し（図中、16は
点溶接部を表す）、該取出し部材15を操作して前記サブ
アッセンブリー体を凹穴８から抜き取る。次にキャップ
体11から取出し部材15を切り離して、第３図に示すよう
に、キャップ体11の貫通孔13に丸棒等の押出し部材17を
挿入し、キャップ体11からピン12を押出す。このように
して、ピン12に傷を付けることなくその取出しを行うこ
とができ、その後、点溶接部16を修正し、該キャップ体
11に新たなピン12を圧入してサブアッセンブリー体を形
成し、このサブアッセンブリー体を上型３の凹穴８に打
込めば、ピン12の交換は完了する。本実施例においては
特に、凹穴８は無傷となるので、修正によって該凹穴８
の形状や位置精度を悪化させる虞れもなく、したがって
品質的に安定した成形体を得ることができる。

使用済のピン12は、その孔成形部12cを修正して再利用
することができる。この場合は、第４図に示すように、
カラー11の底部にスペーサ18を納めて、ピン12の突出し
代を調整する。この突出し代は、同図に示すように、ピ
ン12の孔成形部12cの先端部に所定の弾性変形量ａを確
保し得る値であり、したがって、スペーサ18としては、
この弾性変形量ａを確保できる厚さのものを選択すれば
良い。

なお、上記実施例において、上・下型を備えて縦形の射
出成形用金型を示したが、本考案は、固定型と可動型と
を左右方向に配した横形の金型も対象とすることができ
る。

（考案の効果） 以上、詳細に説明したように、本考案にかゝる射出成形
用金型によれば、シール部材をキャップ体を介して簡単
に凹穴から取出すことができるので、シール部材交換の
時間短縮が可能になって生産性の向上に大きく寄与する
効果を奏する。またシール部を削り出さないで済むの
で、シール部材を修正して再使用することが可能にな
り、その上、凹穴が損傷することもないのでその修復が
不要となり、経済的にも大きな利益をもたらす効果があ
る。さらに、形状変更や構造変更を行うことなく従来と
同様の態様でシール部材を用いることができるので、品
質的な悪影響を及ぼすことはない。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案にかゝる射出成形用金型の要部断面図、
第２図はキャップ体およびシール部材の金型からの取出
し状態を示す断面図、第３図はシール部材のキャップ体
からの取出し状態を示す断面図、第４図は本金型の変形
例を示す断面図、第５図は一体成形した孔を有する成形
体の斜視図、第６図は従来の射出成形用金型の断面図、
第７図は第６図の要部拡大断面図である。 ３…上型 ４…下型 ８…凹穴 11…キャップ体 12…ピン（シール部材） 18…スペーサ

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】キヤビテイ面に設けた凹穴内に、底部に貫
   通孔を有する有底筒状の金属製のキャップ体を嵌着し、
   該キャップ体に、成形品に孔を形成するための可撓性の
   シール部材の基部を嵌合保持させたことを特徴とする射
   出成形用金型。