JP3839160B2 - 射出成形型 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、アンダーカット部を有する成形品を射出成形する射出成形型に係わり、詳しくは置き中子を用いた射出成形型に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、アンダーカット部を有する成形品を射出成形する射出成形型には、一般的にスライド入子が用いられている。しかしながら、スライド入子を用いた射出成形型は型の構造が複雑になるため、型が高価になり、試作や少量生産には向かないという問題があった。このため、試作や少量生産などの成形数量が少ない型には、スライド入子に代えて、型内に挿脱可能な置き中子を用いた射出成形型が使用されるようになった。
【0003】
置き中子を用いた射出成形型には、例えば実開平3−95220号公報所載の技術が開示されている。図11を用いてこの技術を説明する。図11において、射出成形型の上型側は、上型102とその内部に嵌装された上金型本体103とからなっている。また、下型側は、下型104とその内部に嵌装された下型本体105とからなり、下型本体105には、置き中子101が挿脱される挿脱穴106が穿設されている。挿脱穴106の底部には、エジェクタピン107が上下動自在に嵌挿され、エジェクタピン107と置き中子101とは連結されている。置き中子101は挿脱穴106に挿入されたとき、置き中子101の表面101aと下金型本体105の表面105aとが面一となり、下型側のキャビティ面を形成している。成形後、エジェクタピン107を突き出すことにより、アンダーカット部を有する成形品108と置き中子101とが上昇し、置き中子101と成形品108とが分離可能となる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかるに、上記従来技術にはつぎのような問題点があった。すなわち、置き中子101の表面101aと下金型本体105の表面105aとが面一となるためには、置き中子101が挿脱穴106にテーパで接触するため、その両者の角度および寸法を精度よく同一に加工する必要がある。例えば、図12に示すように、テーパの傾斜角度は、置き中子101および挿脱穴106のどちらも、5°に仕上げられたとする。しかし、挿脱穴106の底部の幅寸法が35mmに仕上がったのに対し、置き中子101の底部の幅寸法が35.05mmとほんの僅か大きく仕上がったとする。すると、挿脱穴106に置き中子101を挿入したとき、置き中子101は本来の位置より0.286mmも出っ張ることになる。
【0005】
このため、高精度の成形品を得るには、置き中子101と挿脱穴106とは、互いの傾斜角度および幅寸法を正確に一致させる必要がある。しかしながら、このように高精度な加工を行うと、加工時間が長くなり、加工コストが高くなるという問題がある。さらに、置き中子101の外形は角錐形状であるため、直接バイスに挟んで加工機にセットすることができず、専用の加工治具を製作して用いる必要がある。これによっても、加工時間が長くなり、加工コストが高くなる要因となる。以上のように、上記従来技術では、アンダーカット部を有する成形品を精度よく成形できる射出成形型を、短納期かつ低コストで製作することは困難であった。
【0006】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたもので、請求項1、2または3に係る発明の課題は、アンダーカット部を有する成形品を精度よく成形できる射出成形型を、短納期かつ低コストで製作することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、請求項1または3に係る発明は、アンダーカット部を有する成形品を射出成形する射出成形型において、前記アンダーカット部を反転した形状を有し外形部の少なくとも1ヶ所に傾斜面を形成した置き中子と、該置き中子が挿脱される挿脱穴を有する型板と、前記置き中子の傾斜面に接触する傾斜面を有し前記型板に収納された傾斜ブロックと、該傾斜ブロックと前記型板との間に介装された調整板とを備えた。請求項2または3に係る発明は、アンダーカット部を有する成形品を射出成形する射出成形型において、前記アンダーカット部を反転した形状を有する置き中子と、該置き中子が挿脱される挿脱穴を有し該挿脱穴内に少なくとも1ヶ所に傾斜面を形成した型板と、前記型板の傾斜面に接触する傾斜面を有し前記置き中子に固定された傾斜ブロックと、該傾斜ブロックと前記置き中子との間に介装された調整板とを備えた。
【0008】
請求項1または2に係る発明の射出成形型では、置き中子の傾斜面と傾斜ブロックの傾斜面との当たり具合を、調整板の厚さを変更することにより、最適に調整する。
請求項2または3に係る発明の射出成形型では、挿脱穴の傾斜面と傾斜ブロックの傾斜面との当たり具合を、調整板の厚さを変更することにより、最適に調整する。
請求項3に係る発明の射出成形型では、上記作用に加え、複数の薄い板の枚数を変更することにより、調整板の厚さを変更する。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態では、成形品のアンダーカット部の形状は、円筒状の張出しまたは突起を具体的な実施の形態の中で挙げているが、これに限定されるものではなく、円筒状の溝または穴の場合であっても、成形品のアンダーカット部として本発明の実施の形態を適用できるものである。また、置き中子は複数に分割された場合を例としているが、単体の置き中子であっても、同様に適用することができる。以下、具体的な実施の形態について説明する。
【0010】
(実施の形態1)
図1〜図3は実施の形態1を示し、図1はアンダーカット部を有する成形品の斜視図、図2は射出成形型の要部断面図、図3は置き中子の斜視図である。
【0011】
図1において、成形品1は、有底の円筒であり、その外周には成形品1のアンダーカット部である突起1a、1bが成形品1の軸心を基準として対象位置に突設されている。
【0012】
つぎに、成形品1を成形する射出成形型2について説明する。図2において、固定側パーティング板5と固定側受け板6とは、固定側型板3を構成するように、図示しないボルトにて接合されている。固定側パーティング板5には、成形品1の内周面を形成するコアピン4が固定されている。
【0013】
可動側型板7は、可動側パーティング板8と可動側受け板9とで構成され、図示しないボルトにて接合されている。可動側パーティング板8には、コアピン4の軸心と同心に挿脱穴8aが穿設され、成形品1の外周を形成する置き中子12A、12Bが、2分割されて挿脱可能に嵌挿されている。従って、置き中子12A、12Bは挿脱可能な挿脱穴を有する可動側型板7に配置されることになる。置き中子12A、12Bを挿脱可能とするため、置き中子12A、12Bと挿脱穴8aとの間に0.01〜0.05mm程度の隙間を設けている。置き中子12A、12Bを組み合わせたときの外周面下部には、テーパ状の傾斜面13a、13bが形成されている。また、置き中子12A、12Bを組み合わせたときの内周面には、成形品1の突起1a、1bを形成するための空隙11a、11bが形成されている。置き中子12A、12B、コアピン4および固定側パーティング板5によって形成される空間が、成形品1を成形するためのキャビティ11となっている。
【0014】
可動側パーティング板8の挿脱穴8aの下部には、収納穴8bが穿設され、傾斜ブロックとしてのバックアップ10A、10Bが収納されている。バックアップ10A、10Bの一方の側面が調整板20A、20Bを介して可動側パーティング板8と接し、底面が調整板19A、19Bを介して可動側受け板9と接している。また、バックアップ10A、10Bの他方の側面には、置き中子12A、12Bの傾斜面13A、13Bと同一角度の傾斜面が形成されている。可動側パーティング板8の挿脱穴8aに置き中子12A、12Bが挿入され、型締めされたとき、置き中子12A、12Bの傾斜面13a、13bからバックアップ10A、10Bの傾斜面に押圧力が伝達し、調整板20A、20Bおよび調整板19A、19Bを介して可動側パーティング板8および可動側受け板9によりバックアップ10A、10Bを支持する。すなわち、傾斜ブロックを支持する型板によりバックアップ10A、10Bを支持することになる。
【0015】
図3は、置き中子12A、12Bを射出成形型2から取り外し、分離した状態の斜視図である。図3において、置き中子12Aの分割面には、ガイドピン14が埋設され、置き中子12Bの分割面には、ガイドピン14が嵌挿されるガイド穴15が穿設されている。ガイドピン14とガイド穴15とにより、置き中子12A、12Bは組み合わされ、成形品1の外周部を形成するキャビティ11の一部が形成される。置き中子12A、12Bの分割面の上部の一方には、ランナ16およびゲート17がそれぞれ形成されている。
【0016】
図2において、エジェクタピン18は、可動側受け板9に穿設された穴に挿通され、置き中子12A、12Bの底面を押圧して、可動側パーティング板8から突き出せるように配設されている。射出成形型2の他の構成は、一般の射出成形型と同様のため、説明を省略する。
【0017】
つぎに、射出成形型の組立方法について説明する。射出成形型2を組み立てるときに、置き中子12A、12Bの傾斜面13a、13bがそれぞれバックアップ10A、10Bの傾斜面に接触し、かつ置き中子12A、12Bの上面が、可動側パーティング板8のパーティング面と面一となるように、調整板19A、19Bおよび20A、20Bの厚さを調整する。調整板19A、19Bおよび20A、20Bの厚さは、それぞれ1枚の金属板を研削加工によって少しずつ削ることにより調整される。または、極めて薄い板を複数枚重ねて、調整板19A、19Bおよび20A、20Bを構成するようにし、この極めて薄い板の枚数で、調整板19A、19Bおよび20A、20Bの厚さを調整してもよい。
【0018】
つぎに、上記構成の射出成形型2を用いた成形方法について説明する。射出成形型2のパーティング面を開いた状態で、置き中子12A、12Bを組み合わせ、可動側パーティング板8に穿設された挿脱穴8aに挿入する。そして、図2に示すように型締めし、射出成形機(図示省略)から溶融プラスチック材料を射出成形型2に射出すると、溶融プラスチック材料はランナ16およびゲート17を通過し、キャビティ11に到達する。
【0019】
このとき、射出成形時の溶融プラスチック材料により、キャビティ11に樹指圧が加えられ、置き中子12A、12Bをそれぞれ離反させようとする方向の力が作用する。しかし、置き中子12A、12Bに加えられた型締め方向(図2では下向きの方向)の力が、傾斜面13a、13bとバックアップ10A、10Bの傾斜面とによって、置き中子12A、12Bに、互いに結合する向きの力が作用するため、置き中子12A、12Bが離反して隙間が生じるのを防止する。
【0020】
キャビティ11に充填された溶融プラスチック材料が冷却固化すると、成形品1が出来上がる。ついで、パーティング面を開いて型開きし、エジュクタピン18により、置き中子12A、12Bを突き出して、可動側パーティング板8に穿設された挿脱穴8aから取り出す。その後、置き中子12A、12Bを2つに分離して、成形品1を取り出す。
【0021】
本実施の形態によれば、調整板19A、19Bおよび20A、20Bの厚さを調整することにより、置き中子12A、12Bの傾斜面13a、13bとバックアップ10A、10Bの傾斜面がそれぞれ接触し、かつ置き中子12A、12Bの上面が、パーティング面と面一になるようにするために、置き中子12A、12Bとバックアップ10A、10Bの傾斜角度のみを合わせれば良く、その寸法を高精度に加工する必要はない。
【0022】
また、置き中子12A、12Bの外周面は、傾斜面13a、13bを除いて直方体である。このため、置き中子12A、12Bを加工する際、バイスに直接くわえることができ、また任意の3面を加工基準とすることができるため、加工時の段取りが短時間で済む。さらに、射出成形時の溶融プラスチック材料による樹指圧を受けても、置き中子12A、12Bが離反して隙間が生じるのを防止するため、この間にバリが発生することがなく、高精度の成形品を得ることができる。以上のように、アンダーカット部を有する成形品を精度よく成形できる射出成形型を、短納期かつ低コストで製作することができる。
【0023】
本実施の形態では、成形品1にはアンダーカット部として、突起1a、1bを有しているが、これに替えて、対向する2つの穴であっても、本実施の形態を適用するこができる。この場合は、置き中子12A、12Bの空隙11a、11bに替えて、内周面に突出するピンを対向する位置に埋設し、コアピン4に接するようにすればよい。また、本実施の形態では、置き中子を2分割しているが、突起が3ヵ所以上の場合は3分割以上にしてもよいし、突起が1ヵ所の場合は単体の置き中子と型板とによりキャビティを形成するようにしてもよい。
【0024】
(実施の形態2)
図4〜図6は実施の形態2を示し、図4はアンダーカット部を有する成形品の斜視図、図5は射出成形型の要部断面図、図6は置き中子の斜視図である。
【0025】
図4において、成形品21は、平板形状であり、その下部には成形品21のアンダーカット部であるキノコ状の突起21aが成形品21の中央に突設されている。
【0026】
つぎに、成形品21を成形する射出成形型22について説明する。図5において、成形品21を成形するためのキャビティ24は、固定側型板34と可動側型板26と置き中子23A、23Bとから形成される。成形品21の平板部を形成するキャビティ24の部分は、可動側型板26に凹設され、底面26bの中央には、置き中子23A、23Bを挿脱するための挿脱穴26aが穿設されている。置き中子23A、23Bと挿脱穴26aとの間には、0.01〜0.05mm程度の隙間を設けている。挿脱穴26aの側面下部には、テーパ状の傾斜面26c、26dが形成されている。挿脱穴26aには、2分割された置き中子23A、23Bが挿脱可能に嵌挿している。置き中子23A、23Bには、成形品21の突起21aを形成する空隙24a、24bが形成されている。
【0027】
置き中子23A、23Bの底面には、調整板28A、28Bを介して傾斜ブロック25A、25Bが取着され、ボルト27によって固定されている。また、置き中子23Aから傾斜ブロック25Aへ、置き中子23Bから傾斜ブロック25Bへ、それぞれ図示しないピンが貫通しており、互いの位置がずれないように構成されている。傾斜ブロック25A、25Bの外側の側面には、挿脱穴26aの傾斜面26c、26dと同一角度の傾斜面が形成され、傾斜ブロック25A、25Bの傾斜面は、挿脱穴26aの傾斜面26c、26dに接触し、支持されている。挿脱穴26aの底面には、エジェクタピン31が貫通し、傾斜ブロック25A、25Bを突き出せるようになっている。また、可動側型板26のパーティング面には、ランナ32、ゲート33が刻設されている。
【0028】
図6は、置き中子23A、23Bを射出成形型2から取り外し、分離した状態の斜視図である。置き中子23Aには、ガイドピン30が埋設され、置き中子23Bには、ガイドピン30が挿入されるガイド穴(図6では影となり図示省略)が穿設されている。射出成形型22の他の構成は、一般の射出成形型と同様のため、説明を省略する。
【0029】
つぎに、射出成形型の組立方法について説明する。まず、置き中子23A、23Bを組み合わせて、可動側型板26の挿脱穴26aに挿入し、傾斜ブロック25A、25Bと挿脱穴26aの傾斜面26c、26dとが接触したとき、置き中子23A、23Bの上面がキャビティ24の底面26bと面一になるように、調整板28A、28Bの厚さを調整する。調整板28A、28B厚さは、それぞれ1枚の金属板を研削加工によって少しずつ削ることにより調整される。または、極めて薄い板を複数枚重ねて、調整板28A、28Bを構成するようにし、この極めて薄い板の枚数で、調整板28A、28Bの厚さを調整してもよい。
【0030】
つぎに、上記構成の射出成形型22を用いた成形方法について説明する。射出成形型22のパーティング面を開いた状態で、置き中子23A、23Bを組み合わせ、可動側型板26に穿設された挿脱穴26aに挿入する。そして、図5に示すように型締めし、射出成形機(図示省略)から溶融プラスチック材料を射出成形型22に射出すると、溶融プラスチック材料はランナ32およびゲート33を通過し、キャビティ24に到達する。
【0031】
このとき、射出成形時の溶融プラスチック材料により、置き中子23A、23Bに樹指圧が加えられる。この力は、空隙24a、24b以外のところでは、下方に押し付けようと作用する。また、空隙24a、24bでは、置き中子23A、23Bをそれぞれ離反させようとする方向(図5の左右方向)の力が作用する。しかし、置き中子23A、23Bに加えられた下方に押し付けようとする力は、傾斜ブロック25A、25Bの傾斜面と挿脱穴26aの傾斜面26c、26dとによって、置き中子23A、23Bに、互いに結合する向きの力が作用するため、置き中子23A、23Bが離反して隙間が生じるのを防止する。
【0032】
キャビティ24に充填された溶融プラスチック材料が冷却固化すると、成形品21が出来上がる。ついで、パーティング面を開いて型開きし、エジュクタピン31により、置き中子23A、23Bおよび傾斜ブロック25A、25Bを突き出して、可動側固定板26に穿設された挿脱穴26aから取り出す。その後、置き中子23A、23Bを2つに分離して、成形品21を取り出す。
【0033】
本実施の形態によれば、置き中子23A、23Bの上面と、キャビティ24の底面26bとを面一にするために、傾斜ブロック25A、25Bと挿脱穴26aの傾斜面26c、26dの角度を一致させ、調整板28A、28Bの厚さを調整すればよいので、傾斜ブロック25A、25Bの寸法を高精度に仕上げる必要はない。また、置き中子23A、23Bの外周面は直方体である。このため、置き中子23A、23Bを加工する際、バイスに直接くわえることができ、また任意の3面を加工基準とすることができるため、加工時の段取りが短時間で済む。さらに、射出成形時の溶融プラスチック材料による樹指圧を受けても、置き中子23A、23Bが離反して隙間が生じるのを防止するため、この間にバリが発生することがなく、高精度の成形品を得ることができる。以上のように、アンダーカット部を有する成形品を精度よく成形できる射出成形型を、短納期かつ低コストで製作することができる。
【0034】
本実施の形態では、成形品21にはアンダーカット部として、キノコ状の突起21aを有しているが、これに替えて、突起した軸に輪帯状の溝を刻設したものであっても、本実施の形態を適用することができる。この場合は、置き中子23A、23Bの空隙24a、24bに替えて、内周面に突出する輪帯状の突起を対向する位置に埋設するようにすればよい。また、本実施の形態では、置き中子を2分割しているが、キノコ状の突起の傘の部分が1方向のみの場合は単体の置き中子とし、可動側型板との間の空間をキャビティとしてもよい。
【0035】
(実施の形態3)
図7〜図10は実施の形態3を示し、図7はアンダーカット部を有する成形品の斜視図、図8は射出成形型の要部断面図、図9は置き中子を組み合わせた状態の斜視図、図10は単体の置き中子の斜視図である。
【0036】
図7において、成形品35は、円筒であり、その外周には成形品35のアンダーカット部である突起35a、35b、35cが成形品35の軸心を基準として3等分された位置に突設されている。
【0037】
つぎに、成形品35を成形する射出成形型36について説明する。図8において、成形品36を成形するためのキャビティ37は、置き中子38A、38B、38Cの3部品と、コア39と、固定側型板40とから形成される。図9および図10に示すように、3分割された置き中子38A、38B、38Cは、これを組み合わせたとき、上下にテーパ38a、38bを形成した円筒形となっている。また、置き中子38A、38B、38Cの内周面には、成形品35の突起35a、35b、35cを成形する空隙37a、37b、37cが穿設されている。
【0038】
図8において、置き中子38A、38B、38Cの中心部を挿通して、成形品35の内周面を形成するコア39が可動側受け板42に嵌装され、コア39は、ボルト50にて、可動側受け板42に固定されている。置き中子38A、38B、38Cは、可動側受け板42に図示しないボルトにて固着された可動側パーティング板43の挿脱穴43aに挿脱可能に嵌挿されている。置き中子38A、38B、38Cと挿脱穴43aとの間には、0.01〜0.05mm程度の隙間を設けている。可動側パーティング板43と可動側受け板42とは、図示しないボルトにより接合され、可動側型板41を構成している。すなわち、置き中子38A、38B、38Cは、挿脱穴43aを有する可動側型板41に嵌挿されていることになる。可動側パーティング板43の挿脱穴43aの下部には、収納穴43bが穿設され、収納穴43bには、リング状の傾斜ブロック下47が配設され、調整板48を介して可動側受け板42に支持されている。すなわち、傾斜ブロック下47は可動側型板41に支持されていることになる。傾斜ブロック下47の円錐状の傾斜面と、置き中子38A、38B、38Cの下部のテーパ38bとは、同一角度で接触している。可動側受け板42には、エジュクタピン49が、置き中子38A、38B、38Cを突き出せるように配設されている。
【0039】
置き中子38A、38B、38Cの上方には、リング状の傾斜ブロック上44が、調整板45を介して、固定側型板40にボルト46で固定されている。傾斜ブロック上44の円錐状の傾斜面と置き中子38A、38B、38Cの上部のテーパ38aとは同一角度で接触している。固定側型板40には、ランナ53およびピンゲート54が設けられ、キャビティ37に連通している。固定側型板40の上面には、固定側落下板51が図示しないボルトにて固着されている。固定側落下板51には、スプル52が形成されたスプルブッシュ55が嵌装され、スプル52はランナ53に連通している。その他の構成は、一般の射出成形型と同様のため、説明を省略する。
【0040】
つぎに、射出成形型36の組立方法について説明する。射出成形型36を組み立てるときに、置き中子38A、38B、38Cの下側のテーパ38bが傾斜ブロック下47の傾斜面に接触し、かつ置き中子38A、38B、38Cの上面が、可動側パーティング板43のパーティング面およびコア39の上面と面一となるように、調整板48の厚さを調整する。また、型を閉じたときに、置き中子38A、38B、38Cの上側のテーパ38aが、傾斜ブロック上44の傾斜面に接触し、かつパーティング面に隙間が生じないように、調整板45の厚さを調整する。調整板45、48の厚さは、それぞれ1枚の金属板を研削加工によって少しずつ削ることにより調整される。または、極めて薄い板を複数枚重ねて、調整板45、48を構成するようにし、この極めて薄い板の枚数で、調整板45、48の厚さを調整してもよい。
【0041】
つぎに、上記構成の射出成形型36を用いた成形方法について説明する。射出成形型36のパーティング面を開いた状態で、置き中子38A、38B、38Cを組み合わせて、可動側パーティング板43に穿設された挿脱穴43aに挿入する。そして、図8に示すように型締めし、射出成形機(図示省略)から溶融プラスチック材料を射出成形型36に射出すると、溶融プラスチック材料はランナ53およびピンゲート54を通過し、キャビティ37に到達する。
【0042】
このとき、射出成形時の溶融プラスチック材料により、キャビティ37に樹指圧が加えられ、置き中子38A、38B、38Cをそれぞれ離反させようとする方向の力が作用する。しかし、置き中子38A、38B、38Cに加えられた型締め方向(図8では下向きの方向)の力が、テーパ38a、38bと傾斜ブロック上44、傾斜ブロック下47のの傾斜面とによって、置き中子38A、38B、38Cに、互いに結合する向きの力が作用するため、置き中子38A、38B、38Cが離反して隙間が生じるのを防止することができる。
【0043】
キャビティ37に充填された溶融プラスチック材料が冷却固化すると、成形品35が出来上がる。ついで、パーティング面を開いて型開きし、エジュクタピン49により、置き中子38A、38B、38Cを突き出して、可動側パーティング板43に穿設された挿脱穴43aから取り出す。その後、置き中子38A、38B、38Cを3つに分離して、成形品35を取り出す。
【0044】
本実施の形態によれば、調整板45、48の厚さを調整することにより、置き中子38A、38B、38Cのテーパ38a、38bと、傾斜ブロック上44および傾斜ブロック下47の傾斜面がそれぞれ接し、かつ置き置き中子38A、38B、38Cの上面が、パーティング面と面一になるようにするために、置き中子38A、38B、38Cのテーパ38a、38bと、傾斜ブロック上44および傾斜ブロック下47の傾斜面との傾斜角度のみを合わせれば良く、その寸法を高精度に加工する必要はない。
【0045】
置き中子38A、38B、38Cは、これら3部品を組み合わせたとき、円筒形状となる。そのため、まず置き中子38A、38B、38Cの3部品を組み合わせた後、旋盤加工することにより、内外周の置き中子間の段差を小さくでき、真円度をより高精度に確保することができる。さらに、射出成形時の溶融プラスチック材料による樹指圧を受けても、置き中子38A、38B、38Cが離反して隙間が生じるのを防止するため、この間にバリが発生することがなく、高精度の成形品を得ることができる。以上のように、アンダーカット部を有する成形品を精度よく成形できる射出成形型を、短納期かつ低コストで製作することができる。
【0046】
本実施の形態では、成形品35にはアンダーカット部として、突起35a、35b、35cを有しているが、これに替えて、3方向に貫通する3つの穴であっても、本実施の形態を適用することができる。この場合は、置き中子38A、38B、38Cの空隙37a、37b、37cに替えて、内周面に突出するピンを対応する位置に埋設し、コア39に接するようにすればよい。また、本実施の形態では、置き中子を3分割しているが、突起が4ヵ所以上の場合は4分割以上にしてもよいし、突起が1又は2ヵ所の場合は2分割の置き中子としてもよい。
【0047】
なお、上述の具体的実施の形態から、つぎの様な構成の技術的思想が導き出される。
(付記)
(1) 成形品のアンダーカット部を反転した形状を有する置き中子と、該置き中子を挿脱する挿脱穴を有する型板とを備えた射出成形型において、
前記置き中子または前記型板に傾斜面を形成し、この傾斜面に接触する傾斜ブロックと、必要に応じこの傾斜ブロックを支持する型板と、該型板または前記置き中子と前記傾斜ブロックとの間に介装した調整板とを設け、前記調整板の厚さを変更することにより、前記置き中子同士または前記置き中子と他の金型部材との表面が面一になるように構成したことを特徴とする射出成形型。
調整板の厚さを変更することにより、置き中子同士または置き中子と他の金型部材との表面が面一になるので、成形品にはバリが発生せず、高精度の成形品を得ることができる。これにより、アンダーカット部を有する成形品を精度よく成形できる射出成形型を、短納期かつ低コストで製作することができる。
(2) 前記置き中子が複数個であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の射出成形型。
請求項1または2記載の効果に加え、複数方向のアンダーカット部を有する成形品を精度よく成形することができる。
【発明の効果】
請求項1、2または3に係る発明によれば、アンダーカット部を有する成形品を精度よく成形できる射出成形型を、短納期かつ低コストで製作することができる。
請求項3に係る発明によれば、上記効果に加え、調整板の厚さを容易に変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態1のアンダーカット部を有する成形品の斜視図である。
【図2】実施の形態1の射出成形型の要部断面図である。
【図3】実施の形態1の置き中子の斜視図である。
【図4】実施の形態2のアンダーカット部を有する成形品の斜視図である。
【図5】実施の形態2の射出成形型の要部断面図である。
【図6】実施の形態2の置き中子の斜視図である。
【図7】実施の形態3のアンダーカット部を有する成形品の斜視図である。
【図8】実施の形態3の射出成形型の要部断面図である。
【図9】実施の形態3の置き中子を組み合わせた状態の斜視図である。
【図10】実施の形態3の単体の置き中子の斜視図である。
【図11】従来技術の射出成形型の断面図である。
【図12】従来技術の不具合を示す説明図である。
【符号の説明】
8 可動側パーティング板
8a 挿脱穴
9 可動側受け板
10A バックアップ
10B バックアップ
11a 空隙
11b 空隙
12A 置き中子
12B 置き中子
13a 傾斜面
13b 傾斜面
19A 調整板
19B 調整板
20A 調整板
20B 調整板

Claims (3)

  1. アンダーカット部を有する成形品を射出成形する射出成形型において、前記アンダーカット部を反転した形状を有し外形部の少なくとも1ヶ所に傾斜面を形成した置き中子と、該置き中子が挿脱される挿脱穴を有する型板と、前記置き中子の傾斜面に接触する傾斜面を有し前記型板に収納された傾斜ブロックと、該傾斜ブロックと前記型板との間に介装された調整板とを備えたことを特徴とする射出成形型。
  2. アンダーカット部を有する成形品を射出成形する射出成形型において、前記アンダーカット部を反転した形状を有する置き中子と、該置き中子が挿脱される挿脱穴を有し該挿脱穴内に少なくとも1ヶ所に傾斜面を形成した型板と、前記型板の傾斜面に接触する傾斜面を有し前記置き中子に固定された傾斜ブロックと、該傾斜ブロックと前記置き中子との間に介装された調整板とを備えたことを特徴とする射出成形型。
  3. 前記調整板は、複数の薄い板から構成されたことを特徴とする請求項1または請求項2記載の射出成形型。
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