JPH06336450A - アルカジエノール類の製造方法 - Google Patents

アルカジエノール類の製造方法

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JPH06336450A
JPH06336450A JP6053530A JP5353094A JPH06336450A JP H06336450 A JPH06336450 A JP H06336450A JP 6053530 A JP6053530 A JP 6053530A JP 5353094 A JP5353094 A JP 5353094A JP H06336450 A JPH06336450 A JP H06336450A
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啓一 佐藤
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Yoko Seto
Iwao Nakajima
巌 中嶋
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  • Organic Low-Molecular-Weight Compounds And Preparation Thereof (AREA)
  • Low-Molecular Organic Synthesis Reactions Using Catalysts (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【目的】 アルカジエノール類を高収率で、また所望の
アルカジエノールを高選択的に製造することが出来る工
業的に有利なアルカジエノール類の製造方法を提供する
ものである。 【構成】 パラジウム化合物及びホスフィン化合物を触
媒として用い、二酸化炭素の存在下に共役アルカジエン
と水とを反応させて、アルカジエノール類を製造する方
法において、反応液中に遊離のホスフィン化合物を存在
させて反応を行なうことを特徴とするアルカジエノール
類の製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、アルカジエノール類の
製造方法に関する。更に詳しくは、本発明は、パラジウ
ム化合物及びホスフィン化合物を触媒として用い、二酸
化炭素の存在下に共役アルカジエンと水とを反応させ
て、該共役アルカジエンの二量化水和物であるアルカジ
エノール類を製造する方法の改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】アルカジエノール類、特にオクタ−2,
7−ジエン−1−オールをはじめとするオクタジエノー
ル類は、n−オクタノール或はそのエステル等を製造す
るための中間体として、化学工業的に重要な化合物であ
る。かかるアルカジエノール類を製造する方法として、
従来パラジウム化合物及びホスフィン化合物を触媒とし
て用い、二酸化炭素の存在下に共役アルカジエンと水と
を反応させて、二量化水和物であるアルカジエノール類
を製造する方法が、例えば、ケミカルコミュニケーショ
ンズ(Chemical Communication
s),330,(1971)、及び特公昭50−105
65号等により知られている。この場合、パラジウム化
合物の配位子として用いられるホスフィン化合物として
は、トリフェニルホスフィンが有利であることが知られ
ているが、アルカジエノール類の収率ならびに所望のオ
クタ−2,7−ジエン−1−オールへの選択性は未だ十
分なものではない。また、パラジウムに対してトリフェ
ニルホスフィンを約6倍モル程度過剰に使用すると、ア
ルカジエノール類の収率が低下することが知られており
(前記ケミカルコミュニケーションズ)、操業条件に制
約を受ける問題もあった。
【0003】一方、特開昭64−85988には、従
来、上記反応の触媒として三置換ホスフィンなどの配位
子を含む低原子価パラジウム錯体をそのまま、又は三置
換ホスフィンなどの配位子の存在下にパラジウム(II)
化合物を還元することにより調製された化学種が使用さ
れていたことが記載されており、その問題の1つとし
て、パラジウムに対して過剰量の三置換ホスフィンを使
用してテロメリゼーション反応を行う場合には、たとえ
パラジウム化合物と三置換ホスフィンとを用いて調製さ
れる触媒活性種とされている低原子価パラジウム錯体を
テロメリゼーション反応に使用する場合であっても、反
応に長い誘導期が伴うことが記載されている。そして、
特開昭64−85988の発明によればリン化合物とし
てあらかじめ特定構造に形態変化させたホスホニウム塩
と、パラジウム化合物からなるテロメリゼーション触媒
の存在下に行うと、長い誘導期を伴うことなく上記反応
が進行することが記載されている。即ち、特開昭64−
85988は、触媒成分の1種としてホスフィン化合物
を反応系に添加したとしても、ホスフィンは反応系中で
形態変化し、反応の進行中及び反応の終了時には、ホス
ホニウム塩として存在することが示唆されている。
【0004】従来、上記反応の触媒としてパラジウム化
合物及びホスフィン化合物を使用することは知られてい
るが、反応液中の触媒の形態については未だ十分な検討
はなされていない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】錯体触媒反応は触媒に
用いる金属成分が重要な役割りを示すが、それと共に使
用される配位子の種類や、反応条件の選定が、触媒反応
の活性および選択性に重大な影響を及ぼし、従来、使用
することが知られている触媒であっても、反応液中の触
媒の形態によっては、十分な反応成績が得られない。本
発明者らは、パラジウム化合物及びホスフィン化合物を
触媒として用い、二酸化炭素の存在下、共役アルカジエ
ンと水とを反応させる二量化水和反応において、所望の
アルカジエノールを高収率および高選択率で得ることが
できる工業的に有利なアルカジエノール類の製造方法を
提供するべく鋭意検討を行なった。
【0006】その結果、触媒の1成分として使用するホ
スフィン化合物を反応液中に於ても、あえて、従来反応
液中に存在することが知られていたホスホニウム塩やホ
スフィンオキサイドの形態ではなく、遊離のホスフィン
化合物の形態のままで存在させて、反応することによ
り、驚くべきことに、低いパラジウム濃度でも、アルカ
ジエノール類が高収率で、しかも所望のアルカジエノー
ル類、具体的には、共役アルカジエンとして1,3−ブ
タジエンを使用する場合にはオクタ−2,7−ジエン−
1−オールが高選択的に得られることを見出し、本発明
を完成した。
【0007】
【課題を解決するための手段】即ち、本発明は、パラジ
ウム化合物及びホスフィン化合物を触媒として用い、二
酸化炭素の存在下に共役アルカジエンと水とを反応させ
てアルカジエノール類を製造する方法において、反応液
中に遊離のホスフィン化合物を存在させて反応を行なう
ことを特徴とするアルカジエノール類の製造方法に存す
る。
【0008】以下、本発明を詳細に説明する。本発明で
は、反応液中に遊離のホスフィン化合物を存在させて反
応を行うことを最大の特徴とする。本発明に於て、反応
液中に遊離のホスフィン化合物を存在させて反応を行う
とは、反応の初期のみならず、反応の進行中に於ても反
応液中に遊離のホスフィン化合物が存在する状態で反応
を行うことをいい、具体的には、生成物のアルカジエノ
ール類がパラジウム1モルに対して100モル以上、好
ましくは1000モル以上存在するか、或は生成物のア
ルカジエノール類がリン1モルに対して10モル以上、
好ましくは100モル以上存在する状態迄反応が進行し
た状態に於ても、反応液中に遊離のホスフィン化合物が
存在することを言う。本発明では、反応の初期から反応
終了時迄、反応液中に遊離のホスフィン化合物が存在し
ているのが特に好ましい。
【0009】また、本発明で言う、反応液中に存在する
遊離のホスフィン化合物とは、パラジウムの配位子を形
成しているホスフィン化合物、或はホスホニウム塩とは
区別され、遊離の状態で存在するホスフィン化合物であ
り、反応進行中の反応液をサンプリング直後に、または
反応終了直後に反応液のリン−NMRを常温常圧下で測
定したときに示すシフト値が、そのホスフィン化合物を
パラジウム等の遷移金属元素を含まない、反応液と同じ
組成の溶媒に溶かして測定したときに示すシフト値と同
一であるものをさす。反応液中の遊離のホスフィン化合
物の量は限定的ではないが、パラジウム1モルに対して
0.3モル以上250モル以下、好ましくは1モル以上
150モル以下、更に好ましくは1.5モル以上100
モル以下存在すると、低パラジウム濃度でも反応を良好
に行なうことができ望ましい。なかでも、2モル以上1
00モル以下の場合、触媒パラジウムの活性が特に良好
で好ましい。また使用したホスフィン化合物の全量が、
反応液中で遊離のホスフィン化合物の形で存在しても差
しつかえない。
【0010】本発明では、反応液中に遊離のホスフィン
化合物を存在させて上記反応を行う限り、反応液中に遊
離のホスフィン化合物を存在させる条件は特に限定され
るものではない。しかしながら、本発明では、以下に述
べるうちの、特にホスフィン化合物の種類、使用するホ
スフィン化合物とパラジウムの比率、ならびに反応温度
が、反応液中に遊離のホスフィン化合物を存在させるた
めの重要な因子であり、これらの因子を選定し、遊離の
ホスフィン化合物を存在させて二量化水和反応を行なう
ことにより、低いパラジウム濃度でも触媒成分が有効
に、効率良く利用され、かつアルカジエノール類の選択
性が改善され、良好な反応成績をあげることができる。
【0011】本発明方法において水と反応させてアルカ
ジエノール類を製造するための共役アルカジエンとして
は、1,3−ブタジエン、2−エチル−1,3−ブタジ
エン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、イソプ
レン、1,3−ペンタジエン、クロロプレン、1,3−
オクタジエン、等が挙げられる。原料が1,3−ブタジ
エンである場合、通常容易に入手可能のものとして、精
製1,3−ブタジエン及び所謂BBPすなわちナフサ分
解生成物中のC4 留分混合物等が挙げられる。
【0012】主に経済性を考慮してBBPを原料とする
場合においては、原料BBP中に含有されるアセチレン
類およびアレン類を予め分離除去しておくことが望まし
い。アセチレン類およびアレン類を低減化するための方
法はとくに限定されず、公知の諸法が適宜採用可能であ
る。アセチレン類およびアレン類を除去あるいは低減化
した後、オクタジエノール類を製造するための二量化水
和反応に供すべき1,3−ブタジエン原料中のアセチレ
ン類およびアレン類の総濃度は、可能な限り低いことが
望ましいが、通常1,3−ブタジエンに対して1.0重
量%以下程度が好ましい。
【0013】一方、他の原料である水としては二量化水
和反応に影響を与えない程度の純度の水が適宜使用され
る。水の使用量については特に限定的ではないが、共役
アルカジエンの1モルに対して、通常0.5〜10モ
ル、好ましくは1〜5モルの範囲から選択される。
【0014】本発明においては、主触媒としてパラジウ
ム化合物を使用する。使用されるパラジウム化合物の形
態およびその原子価状態については必ずしも限定的では
ない。共触媒として使用するホスフィン化合物を配位子
として持つビス(ホスフィン)パラジウム、トリス(ホ
スフィン)パラジウム、テトラキス(ホスフィン)パラ
ジウムの他、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パ
ラジウム、トリス(ジベンジリデンアセトン)二パラジ
ウム、(1,5−シクロアルカジエン)(無水マレイン
酸)パラジウム等の0価パラジウム錯体;硝酸パラジウ
ム等のパラジウム無機酸塩;酢酸パラジウム等のパラジ
ウム有機酸塩;ビス(アセチルアセトン)パラジウム、
ビス(トリ−ブチルホスフィン)パラジウム酢酸塩等の
2価パラジウム錯体等が挙げられる。
【0015】これらのパラジウム化合物の使用量は広範
囲に可変であるが、通常共役アルカジエン1モルに対し
てパラジウムとして0.000002〜1モル、好まし
くは0.00002〜0.1モルの範囲内で選択され
る。なお、本発明の方法に従えば、反応液中に遊離のホ
スフィン化合物を存在させることにより反応液中の触媒
成分が有効に利用されるため0.00002〜0.00
15モル、更には0.00002〜0.0006モルと
いう非常に低いパラジウム濃度の範囲内でも良好に反応
が行なわれる。
【0016】一方、共触媒として使用するホスフィン化
合物の種類としては、従来公知のトリアルキルホスフィ
ン類、ジアルキルモノアリールホスフィン類、モノアル
キルジアリールホスフィン類、およびトリアリールホス
フィン類等が挙げられるが、殊にモノアルキルジアリー
ルホスフィン類、およびトリアリールホスフィン類が好
ましい。本発明では、前述の如く反応液中に遊離のホス
フィン化合物を存在させて反応を行うことを最大の特徴
とするが、この点から、ホスフィン化合物としては上記
の化合物の中でもオルト位に置換基を有するアリール基
を少なくとも1つ有するトリアリールホスフィン化合物
がより好ましい。本発明に於て特に好ましいホスフィン
化合物は、下記一般式(I)で表わされる。
【0017】
【化1】
【0018】(式中、R1 ,R5 及びR9 は夫々独立に
水素原子又は炭化水素基を表わし、R 2 ,R3 ,R4
6 ,R7 ,R8 ,R10,R11及びR12は夫々独立に水
素原子、電子供与性基又は電子吸引性基を表わす。但
し、R1 ,R5 及びR9 の少なくとも1つは水素原子で
はない。)
【0019】式(I)に於てR1 ,R5 及びR9 で表わ
される炭化水素基としては、C1 〜C10アルキル基、C
1 〜C20アリール基又はC1 〜C10アルコキシ基等が挙
げられる。好ましくはC1 〜C6 アルキル基、C1 〜C
10アリール基又はC1 〜C6アルコキシ基である。
2 ,R3 ,R4 ,R6 ,R7 ,R8 ,R10,R11及び
12で表わされる電子供与性基としては、C1 〜C20
ルキル基、C1 〜C20アルキルアミノ基、C1 〜C20
ルコキシ基、スルホC1 〜C20アルキル基もしくはその
塩、アミノ基、またはC1 〜C20アルキル置換アミノ基
が挙げられる。好ましくは、C1 〜C10アルキル基、C
1 〜C10アルコキシ基、スルホC1 〜C10アルキル基及
びその塩、アミノ基及びC1 〜C10アルキル置換アミノ
基である。又、電子吸引性基としてはスルホ基もしくは
その塩が挙げられる。
【0020】式(I)で表わされる化合物の例として
は、トリ(o−メチルフェニル)ホスフィン、ジ(o−
メチルフェニル)−フェニルホスフィン、(o−メチル
フェニル)−ジフェニルホスフィン、トリ(o−エチル
フェニル)ホスフィン、ジ(o−エチルフェニル)−フ
ェニルホスフィン、(o−エチルフェニル)ジ(フェニ
ル)ホスフィン、トリ(o−プロピルフェニル)ホスフ
ィン、トリ(o−ブチルフェニル)ホスフィン、トリ
(o−ビフェニリル)ホスフィン、トリ(2,6−ジメ
チルフェニル)ホスフィン、トリ(2,5−ジメチルフ
ェニル)ホスフィン、トリ(2,4−ジメチルフェニ
ル)ホスフィン、トリ(2,3−ジメチルフェニル)ホ
スフィン、トリ(2,4,6−トリメチルフェニル)ホ
スフィン、トリ(2,4,5−トリメチルフェニル)ホ
スフィン、トリ(2,3,4−トリメチルフェニル)ホ
スフィン、トリ(2,3,4,5−テトラメチルフェニ
ル)ホスフィン、トリ(2,5−ジエチルフェニル)ホ
スフィン、トリ(2,4−ジエチルフェニル)ホスフィ
ン、トリ(2,5−ジプロピルフェニル)ホスフィン、
トリ(2,4−ジプロピルフェニル)ホスフィン、トリ
(2,5−ジブチルフェニル)ホスフィン、トリ(2,
4−ジブチルフェニル)ホスフィン、トリ(2−メチル
−4−オクチルフェニル)ホスフィン、トリ(2−メチ
ル−5−オクチルフェニル)ホスフィン、トリ(2−メ
チル−4−メトキシフェニル)ホスフィン、トリ(2−
メチル−5−メトキシフェニル)ホスフィン、トリ(2
−メチル−4−オクトキシフェニル)ホスフィン、トリ
(2−メチル−5−オクトキシフェニル)ホスフィン等
の疎水性ホスフィン化合物及びトリ(2−メチル−4−
(2′−ナトリウムスルホネートエチル)フェニル)ホ
スフィン、トリ(2−メチル−5−(2′−ナトリウム
スルホネートエチル)フェニル)ホスフィン、トリ(2
−メチル−4−(2′−リチウムスルホネートエチル)
フェニル)ホスフィン、トリ(2−メチル−5−(2′
−リチウムスルホネートエチル)フェニル)ホスフィ
ン、トリ(2−メチル−5−ナトリウムスルホネートフ
ェニル)ホスフィン、トリ(2−メチル−5−リチウム
スルホネートフェニル)ホスフィン、トリ(2−メチル
−4−N,N−ジメチルアミノフェニル)ホスフィン等
の親水性ホスフィン化合物等が挙げられる。
【0021】電子供与性の基の中ではC1 〜C4 のアル
キル基及びC1 〜C4 のアルコキシ基が好ましい。な
お、ホスフィン化合物の合成の観点からは、式(I)に
於て、R1 ,R5 及びR9 が同一の基を表わし、C1
4 アルキル基であり、R2 ,R6 並びにR 10,R3
7 並びにR11及びR4 ,R8 並びにR12が夫々同一
で、水素原子、C1 〜C4 アルキル基、C1 〜C4 アル
コキシ基、スルホ基もしくはその塩、スルホアルキル基
もしくはその塩である化合物が有利である。
【0022】なお、配位子の立体的な嵩高さを表わす指
標として、Tolmanのコーンアングルと称される指
標があり(Chem.Rev.,77,313(197
7))、例えばその指標によればトリ(o−メチルフェ
ニル)ホスフィンのコーンアングルは194°であると
いうことが知られている。それに準じた方法として、M
OPAC(Ver.6AMl)(半経験的分子軌道計算
プログラム)で計算した構造よりコーンアングルを測定
すると、トリ(o−メチルフェニル)ホスフィンのコー
ンアングルは210°と計算される。
【0023】上に挙げたホスフィン化合物のうちMOP
ACで計算したコーンアングルが200°以上、より好
ましくは200°以上270°以下であるものが本発明
では特に良好な反応成績を与え好ましい。この様な好ま
しいコーンアングルを与えるホスフィン化合物として
は、具体的には、次の様な化合物が例示される。
【0024】
【化2】
【0025】(上記式中、Xはメタ位又はパラ位に置換
するC1 〜C10アルキル基、C1 〜C 10アルコキシ基、
スルホ基もしくはその塩、スルホC1 〜C10アルキル基
もしくはその塩、アミノ基またはC1 〜C10アルキル置
換アミノ基を表し、nは0から3の整数を表し、nが2
または3のとき、複数個のXは互いに異なっていてもよ
い。)
【0026】スルホ基またはスルホアルキル基の塩を構
成する塩としては、リチウム、ナトリウム等のアルカリ
金属塩が挙げられる。なお、トリ(置換フェニル)ホス
フィンの場合、コーンアングルは主としてオルト位の置
換基の嵩高さで決定され、メタ位またはパラ位の置換基
の種類にはあまり影響されない。従って、上記例示化合
物の様なオルト位に炭素数1〜4のアルキル基を有する
トリ(置換フェニル)ホスフィンのコーンアングルは、
いずれも200〜270°程度である。
【0027】尚、本発明に於ける遊離のホスフィン化合
物は、助触媒として使用されるホスフィン化合物が反応
液中でも遊離の状態にあるものであるから、遊離のホス
フィン化合物としては、上述のホスフィン化合物と同様
の化合物が例示される。
【0028】本発明では、反応液中に遊離のホスフィン
化合物を存在させて反応を行う必要があり、そのため、
前記ホスフィン化合物の使用量は、通常パラジウム1モ
ルに対して0.1〜250モル程度から選択されるが、
好ましくは3モル〜150モル、より好ましくは5モル
〜150モル、更に好ましくは、10モル〜100モル
程度である。25モル〜100モルの場合、特にアルカ
ジエノール類の収率及び触媒パラジウムの活性の点で特
に好ましい。なお、ホスフィン化合物の使用量は、上記
範囲の中で反応の条件下で反応液中に溶解する範囲内が
望ましい。また、反応液中に遊離のホスフィン化合物を
存在させる目的で、反応の途中で反応液中に溶解する範
囲でホスフィン化合物を足し込みながら反応させること
も、有効な手段である。
【0029】本発明の共役アルカジエンと水との反応
は、上記の如きパラジウム化合物、遊離のホスフィン化
合物及び二酸化炭素の存在下に行なわれる。本発明で使
用される二酸化炭素は、反応系で二酸化炭素として存在
するものであればよく、特にその供給形態は問わない。
例えば分子状の二酸化炭素、炭酸、炭酸塩、重炭酸塩、
あるいは二酸化炭素または炭酸とアミンとの付加物等が
あげられる。二酸化炭素の使用量の上限は経済的理由に
より決定されるものであり、過剰に使用しても特に反応
を阻害することはない。通常二酸化炭素はパラジウム1
モルに対して1モル以上、好ましくは10モル以上使用
される。
【0030】上記共役アルカジエンと水との反応を行う
にあたっては、反応をより円滑に行なうためには溶媒を
使用するのが好適である。使用しうる溶媒としては、ジ
エチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、エ
チレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレング
リコールジメチルエーテル等のエーテル類、アセトン、
メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソプロ
ピルケトン、エチル−nブチルケトン等のケトン類、ア
セトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等の
ニトリル類、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベ
ンゼン等の芳香族炭化水素類、ペンタン、ヘキサン、ヘ
プタン等のアルカン類、ヘキセン、オクテン類のアルケ
ン類、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類、スル
ホラン等のスルホン類、ニトロベンゼン、ニトロメタン
等のニトロ化合物、ピリジン、α−ピコリン等のピリジ
ン誘導体、トリエチルアミン等のアミン類、アセトアミ
ド、プロピオンアミド、N,N−ジメチルホルムアミ
ド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチル
アセトアミド等のアミド類、メタノール、エタノール、
n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノー
ル、イソブタノール、t−ブタノール、n−アルカノー
ル等のアルコール類、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸
等のカルボン酸類などが例示される。かかる溶媒を使用
する場合には、これらを単独で、または混合溶媒として
のいずれでも差しつかえない。これらのうち、特に低級
アルコールを使用した場合には、アルコキシアルカジエ
ン等の副生成物の生成を伴ない、低級カルボン酸を使用
した場合には、アシルアルカジエン等の副生成物の生成
を伴ない、反応系を複雑にするので共に注意を要する。
【0031】溶媒としては、特にエーテル類、ケトン
類、アルカン類、アルクン類、スルホン類、アミン類、
アミド類が好ましい。溶媒を使用する場合の使用量は必
ずしも限定的ではないが、通常共役アルカジエン1重量
部に対して0.1〜50重量部、好ましくは1〜10重
量部の範囲から任意に選択される。
【0032】共役アルカジエンと水とを反応させるため
の反応温度は、室温から180℃程度の範囲から選択す
ることができるが、50〜130℃程度の温度範囲を選
ぶのがより一般的であり、好ましくは、75〜110
℃、更に好ましくは85℃〜100℃の温度範囲がより
望ましい。
【0033】反応圧力は常圧から200kg/cm2
度の範囲から選択される。この際二酸化炭素の他に窒
素、ヘリウム、アルゴン等の反応に不活性な気体を共存
させることも可能である。本発明の方法は、連続式、半
連続式及び回分式操作等周知の反応方式を用いて実施す
ることができるが、工業的には、連続式で行うのが経済
性等の点で有利である。
【0034】本発明においては、以上に説明した反応原
料、反応条件にて共役アルカジエンと水とを反応させ
て、アルカジエノール類を生成させる。この反応により
得られる反応生成液中には、触媒、主生成物であるアル
カジエノール、副生成物のアルカトリエン類、ジアルカ
ジエニルエーテル類、有機カルボン酸及びエステル類、
ならびに溶媒、未反応の共役アルカジエン及び水等が含
有されている。原料共役アルカジエンが1,3−ブタジ
エンの場合、生成するアルカジエノールはオクタジエノ
ールであり、主生成物としてはオクタ−2,7−ジエン
−1−オールが、副生成物としてはオクタ−1,7−ジ
エン−3−オール、オクタトリエン類、ジオクタジエニ
ルエーテル類、有機カルボン酸及びエステル類等が挙げ
られる。なお、副生成物の生成量は、反応条件に依存
し、通常共役アルカジエン基準でそれぞれ数モルパーセ
ント内外である。反応後、アルカジエノール類は所望に
より蒸留分離、抽出分離等公知の手段により回収するこ
とができる。
【0035】又、反応生成液または反応生成液からアル
カジエノール類を分離した後の、触媒成分を含有する溶
液は、必要に応じその少なくとも一部を水和二量化反応
の反応液中に循環してもよい。その際、循環に先立ち、
触媒成分含有溶液から高沸副生物等の分離等の処理を行
なってもよい。又、反応生成液中に含まれる、反応液中
で形態変化した、遊離のホスフィン化合物以外のリン化
合物は、反応生成液をそのまま、または、必要に応じて
反応生成液から原料化合物、アルカジエノール類、溶媒
等を分離した後に加熱処理、水素ガスとの接触処理、水
酸化ナトリウム等の塩基性物質との接触処理等を行うこ
とにより遊離のホスフィン化合物に分解し、これを水和
二量化反応の反応液に循環してもよい。
【0036】本発明方法によれば、パラジウム化合物及
びホスフィン化合物を触媒として用い、二酸化炭素の存
在下に共役アルカジエンと水とを反応させて、アルカジ
エノール類を製造する際に、遊離のホスフィン化合物を
存在させることにより低いパラジウム濃度でも触媒成分
が有効に、効率的に利用され、アルカジエノール類を高
収率で、また特に所望のアルカジエノールを高選択的に
製造することが出来、工業的に極めて有用である。
【0037】
【実施例】次に実施例により本発明を更に説明するが、
本発明はその要旨を越えない限り以下の実施例によって
限定されるものではない。なお、以下の表中、Pd/B
D、ホスフィン/Pd、ΣHOD収率、1HOD/ΣH
OD、ΣHOD選択性、遊離P/Pd、TOFはそれぞ
れ下記の意味を表わす。
【0038】Pd/BD:仕込みブタジエンモル数に対
する仕込みパラジウム化合物のモル数 ホスフィン/Pd:仕込みパラジウム化合物のモル数に
対する仕込みホスフィン化合物のモル数 ΣHOD収率:生成オクタジエノール類の仕込みブタジ
エンに対する収率(%) 1−HOD/ΣHOD:オクタジエノール類中のオクタ
−2,7−ジエン−オール(1−HOD)の割合(%) ΣHOD選択性:生成オクタジエノール類の反応したブ
タジエンに対する選択率(%) 遊離P/Pd:仕込みパラジウム化合物モル数に対す
る、P−NMRで測定した遊離ホスフィン化合物のモル
数 TOF:使用したパラジウム1モルあたり、1時間あた
り、オクタジエノール類に変換されたブタジエンのモル
【0039】実施例1 内容積200mlのステンレス製オートクレーブに、窒
素ガス雰囲気下で0.063ミリモルの酢酸パラジウ
ム、1.0ミリモルのトリ(2,4−ジメチルフェニ
ル)ホスフィン、47mlのアセトン、6.7mlの水
を仕込み、更に13.8gの1,3−ブタジエンと8g
の二酸化炭素を導入した。反応混合液を800rpmの
速度で撹はんしながら20分間かけて内温が75℃にな
るまで加温した。75℃で4時間反応を継続したのち、
ガスクロマトグラフィーおよびP−NMRで反応液を分
析した。結果を表−1に示す。
【0040】実施例2 実施例1に於いて、トリ(2,4−ジメチルフェニル)
ホスフィンの使用量を3.0ミリモルに変更した以外は
同様に反応を行なった。結果を表−1に示す。
【0041】比較例1 実施例1に於いて、トリ(2,4−ジメチルフェニル)
ホスフィンの使用量を0.2ミリモルに変更した以外は
同様に反応を行なった。結果を表−1に示す。
【0042】実施例3 実施例1に於いて、トリ(2,4−ジメチルフェニル)
ホスフィンの使用量を2.0ミリモルに、反応温度を9
0℃に変更した以外は同様に反応を行なった。結果を表
−1に示す。尚、表−1には、反応条件もまとめて示
す。
【0043】
【表1】
【0044】実施例4 実施例1に於いて、酢酸パラジウムの量を0.50ミリ
モルに、トリ(2,4−ジメチルフェニル)ホスフィン
1.0ミリモルをトリ(o−メチルフェニル)ホスフィ
ン2.0ミリモルに変更した以外は同様に反応を行なっ
た。結果を表−2に示す。
【0045】実施例5,6,7,8,9、比較例2 実施例1に於いて、トリ(2,4−ジメチルフェニル)
ホスフィンに代えて下記表−2中に記したホスフィン化
合物を2.0ミリモル使用し、反応温度を90℃とした
以外は、同様に反応を行なった。結果を表−2に示す。
尚、表−2には、反応条件もまとめて示す。
【0046】実施例10、比較例3 実施例1に於いて、酢酸パラジウムの量を0.2ミリモ
ル、1,3−ブタジエンの使用量を25.6gとし、ト
リ(2,4−ジメチルフェニル)ホスフィンのかわりに
ジ(o−メチルフェニル)−(2−メチル−5−ナトリ
ウムスルホネートフェニル)ホスフィン(実施例1
0)、またはジフェニル(5−ナトリウムスルホネート
フェニル)ホスフィン(比較例3)を2.4ミリモル使
用し、更に溶媒としてアセトン及び水に代えて45重量
パーセントの水を含んだスルホラン60mlとトリエチ
ルアミン11mlを使用して反応温度85℃、反応時間
2時間とした以外は同様に反応を行なった。反応結果を
表−3に示す。尚、表−3には、反応条件もまとめて示
す。
【0047】
【表2】
【0048】
【表3】

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 パラジウム化合物及びホスフィン化合物
    を触媒として用い、二酸化炭素の存在下に共役アルカジ
    エンと水とを反応させて、アルカジエノール類を製造す
    る方法において、反応液中に遊離のホスフィン化合物を
    存在させて反応を行なうことを特徴とするアルカジエノ
    ール類の製造方法。
  2. 【請求項2】 ホスフィン化合物が、オルト位に置換基
    を有するアリール基を少なくとも一つ有するトリアリー
    ルホスフィン化合物であることを特徴とする請求項1に
    記載の方法。
  3. 【請求項3】 反応液中に存在する遊離のホスフィン化
    合物の量が、パラジウム1モルに対して0.3モル以上
    250モル以下である請求項1又は2に記載の方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2013519519A (ja) * 2010-02-17 2013-05-30 ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー ブタジエンの短鎖重合に有用なホスフィンに基づく新規触媒

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