JPH06329799A - ポリイミド成形体製造用前駆体溶液及びその製造方法、並びにポリイミドの成形体及びその製造方法 - Google Patents

ポリイミド成形体製造用前駆体溶液及びその製造方法、並びにポリイミドの成形体及びその製造方法

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JPH06329799A
JPH06329799A JP14156493A JP14156493A JPH06329799A JP H06329799 A JPH06329799 A JP H06329799A JP 14156493 A JP14156493 A JP 14156493A JP 14156493 A JP14156493 A JP 14156493A JP H06329799 A JPH06329799 A JP H06329799A
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polyimide
polyamic acid
producing
molded body
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JP14156493A
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English (en)
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Yasuhisa Nagata
康久 永田
Nobuyasu Sakai
信康 坂井
Yuki Onishi
祐輝 大西
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Teijin Ltd
Original Assignee
Toho Rayon Co Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 成形性に適した粘度を保持し、粘度安定性が
あるポリイミド成形体製造用前駆体溶液を提供し、その
前駆体溶液を用いた、優れた耐熱性、優れた機械的特性
及び耐薬品性を有するポリイミド成形品を提供する。 【構成】 テトラカルボン酸二無水物、芳香族ジアミン
及び多価アミンを主成分としたモノマー類を有機溶媒の
中で−30〜30℃の温度範囲で重合反応させて、ポリ
アミド酸の高分子ゲルを形成し、この高分子ゲルを10
0℃以下の温度範囲に保つことにより、高分子ゲルの網
目構造の架橋点を切断して粘度の安定なポリイミド成形
体製造用前駆体溶液を製造する。この溶液を基材上に塗
布し、又は口金から吐出し、脱溶媒することによりポリ
アミド酸成形体を成形し、次いで100℃以上の温度で
脱水・閉環反応を行ってポリイミド成形体とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、耐熱性に優れ、エレク
トロニクス、輸送機器、航空・宇宙分野等に広く使用さ
れているポリイミド成形体製造用前駆体溶液及びその製
造方法、並びにその前駆体溶液を使用して製造したポリ
イミド成形体及びその製造方法に関する。
【0002】さらに詳しくは、本発明は、特定モノマー
の重合反応によりポリアミド酸の高分子ゲルを得、この
高分子ゲルの網目構造の架橋点を熱処理により切断し、
粘度の安定な、流動性のあるポリイミド成形体製造用前
駆体溶液とするものである。本発明のポリイミド成形体
製造用前駆体溶液は粘度変化が少ないため、この前駆体
溶液を用いてフィルム、繊維等の成形体を製造すること
により、品質の安定した各種成形体を容易に作製するこ
とができる。また、本発明のポリイミド成形体の製造に
おいては、ポイリミド成形体製造用前駆体溶液を製造す
るときに切断された網目構造の架橋点が、脱溶媒過程に
おいて、再度、ポリマー分子鎖間の架橋反応により架橋
されるので、最終的な処理により得られたポリイミド成
形体は、耐熱性、機械的性質及び耐薬品性に優れた、従
来にない性能の新規な成形体を与えるものである。
【0003】
【従来の技術】テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジア
ミンを有機溶媒中で重合させて得られたポリアミド酸を
前駆体とし、これを加熱により脱水・閉環させ、あるい
は脱水剤を用いた化学的反応により脱水・閉環させた、
耐熱性に優れたポリイミド樹脂を得る方法に関しては公
知であり、数多くの特許出願がなされている。
【0004】一般に、ポリイミド樹脂の前駆体であるポ
リアミド酸溶液の製造は、ポリマー濃度が5〜20重量
%となるように有機溶媒中でテトラカルボン酸二無水物
と芳香族ジアミンを重付加反応させる方法で行なわれ、
この方法により有機溶媒に均一に溶解した高分子量のポ
リアミド酸溶液が得られる。
【0005】このポリアミド酸溶液は、ポリイミドの前
駆体である。例えば、前記ポリアミド酸溶液を基材など
に塗布し、或いは口金より吐出し、次いで脱溶媒するこ
とによりポリアミド酸のフィルム・繊維等の成形体と
し、さらに、このポリアミド酸成形体を、通常、高温処
理あるいは化学的処理により脱水・閉環反応を進め、ポ
リイミド成形体としている。このようなポリイミド成形
体の製造方法には、従来、例えば、特開昭61−788
34号公報,特開昭61−181828号公報,特開昭
61−250031号公報,特開昭63−25413号
公報等に記載されるものがあった。
【0006】前記、従来のポリイミド成形体は、耐熱性
と機械的特性が相反する傾向にあり、機械的特性と耐熱
性に優れたものを得ることは困難であった。テトラカル
ボン酸二無水物と芳香族ジアミンを使用するポリイミド
成形体を製造する技術において、近年、機械的特性と耐
熱性の両方の性質に優れた技術が、特開平3−1094
24号公報,特開平3−146524号公報に提案され
ている。その技術は、テトラカルボン酸二無水物と芳香
族ジアミンの反応系に、特定の配合割合の多価アミンを
加え、重付加反応させることで、ポリアミド酸の高分子
ゲルを経由してポリアミド酸成形体とし、次いでこのポ
リアミド酸成形体を脱水・閉環反応させて、機械的特性
と耐熱性に優れたポリイミド成形体を製造する方法であ
る。この方法は、ポリアミド酸中に適度な架橋点を存在
させることにより、最終的に優れた耐熱性、優れた機械
的特性及び耐薬品性を兼ね備えたポリマー系を調製する
ことを特徴としたポリイミド成形体を製造する方法であ
る。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記テ
トラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンの反応系に、
特定の配合割合の多価アミンを加え、重付加反応させて
ポリアミド酸の高分子ゲルを経由してポリイミド成形体
を製造する技術は、前記の如く優れた耐熱性、優れた機
械的特性および耐薬品性を有する利点を有するが、この
方法において製造されるポリアミド酸溶液はその粘度が
極めて不安定であるという欠点があった。すなわち、付
加反応直後からゲル化が進行して高分子ゲルとなり、ゲ
ルの形成が完了した後ではほとんど流動せず、そのポリ
アミド酸溶液が比較的短い時間でゲル化を完了するた
め、ゲル化までのポリマ溶液の粘度の逐次的な変化に対
して、ムラなく品質の安定したフィルムや繊維状等の成
形体を作製するのに高度の技術を要するという問題点、
ポリマー溶液の貯蔵が困難であるという問題点があっ
た。また、フィルターによるポリマー溶液中の不純物の
除去方法において、既存の装置では困難であるという問
題点があった。
【0008】従って、前記テトラカルボン酸二無水物と
芳香族ジアミンの反応系に、特定の配合割合の多価アミ
ンを加え、重付加反応させて高分子ゲルを経由して作製
される成形体の製造技術においては、反応温度等の重合
条件の特殊なコントロール、更には成形体を賦形する過
程での特殊な製造技術及びプロセスを必要とし、製造法
の複雑さから品質の良好なポリイミド成形体を安定して
供給するためには技術的に難しい面も多かった。
【0009】そこで本発明は、テトラカルボン酸二無水
物と芳香族ジアミンの反応系に、特定の配合割合の多価
アミンを加え、重付加反応させるポリイミド成形体製造
用前駆体溶液において、そのポリイミド成形体製造用前
駆体溶液は、成形性に適した粘度を保持し、粘度安定性
があり、そのポリイミド成形体製造用前駆体溶液を用い
て成形されたポリイミドは、優れた耐熱性、優れた機械
的特性および耐薬品性を有するポリイミド成形体製造用
前駆体溶液を提供することを目的とする。また本発明
は、その前駆体溶液の製造方法を提供すること、その前
駆体溶液を使用したポリイミドを提供すること、および
そのポリイミド成形体を製造する方法を提供することを
目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明は、前記した問題
点を解決するために、下記の通りの構成を採用するもの
である。
【0011】本発明は、テトラカルボン酸二無水物、芳
香族ジアミン及び多価アミンを主成分としたポリアミド
酸の高分子ゲルの網目構造の架橋点が切断されて調製さ
れた溶液であり、且つ該溶液の粘度が1〜5000ポイ
ズであり、20℃、24時間経過後の粘度変化率が10
%以下の溶液であることを特徴とする、粘度の安定なポ
リイミド成形体製造用前駆体溶液とするものである。
【0012】前記粘度の安定なポリイミド成形体製造用
前駆体溶液は重合体を5〜30重量%含む有機溶媒溶液
であることが望ましい。
【0013】また本発明は、テトラカルボン酸二無水
物、芳香族ジアミン及び多価アミンを主成分としたモノ
マー類を有機溶媒の中で−30〜30℃の温度範囲で重
合反応させて、ポリアミド酸の高分子ゲルを形成し、前
記高分子ゲルを100℃以下の温度範囲に保つことによ
り、高分子ゲルの網目構造の架橋点を切断することを特
徴とする粘度の安定なポリイミド成形体製造用前駆体溶
液の製造方法とするものである。
【0014】また本発明は、前記粘度の安定なポリイミ
ド成形体製造用前駆体溶液を基材上に塗布し、または口
金から吐出することによりポリアミド酸成形体を成形
し、次いで該ポリアミド酸成形体を100℃以上の温度
で脱水・閉環反応を行ってポリイミド成形体とすること
を特徴とするポリイミド成形体の製造方法とするもので
ある。
【0015】また本発明は、前記粘度の安定なポリイミ
ド成形体製造用前駆体溶液を基材上に塗布し、または口
金から吐出し、脱溶媒することによりポリアミド酸成形
体を成形し、次いで該ポリアミド酸成形体を100℃以
上の温度で脱水・閉環反応を行ってポリイミド成形体と
することを特徴とするポリイミド成形体の製造方法とす
るものである。
【0016】また本発明は、前記ポリイミド成形体の製
造方法によっ得られたことを特徴とする優れた耐熱性、
優れた機械的特性および耐薬品性を有してポリイミド成
形体とするものである。
【0017】本発明によれば、重付加反応によって生成
した易ゲル化性のポリアミド酸溶液を一旦ゲル化した
後、100℃以下の温度範囲に保つ熱処理をすることに
よって、高分子ゲルの網目構造の架橋点を切断し、粘度
の安定なポリイミド成形体製造用前駆体溶液となる。本
発明のポリイミド成形体製造用前駆体溶液は、保存安定
に優れ、しかも粘度安定性があるため、この前駆体溶液
を使用して製造したポリイミド成形体は品質安定なもの
となる。
【0018】有機溶媒中でテトラカルボン酸二無水物、
芳香族ジアミン及び多価アミンを重付加反応させると、
重合時において有機溶媒を全体の70〜95重量%含む
ポリアミド酸の高分子ゲルが得られる。この高分子ゲル
は、高分子量のポリアミド酸成分の一部が多価アミンの
存在によって部分的に架橋したものであり、三次元網目
構造を形成している。
【0019】テトラカルボン酸二無水物、芳香族ジアミ
ン及び多価アミンの重付加反応は、テトラカルボン酸二
無水物とアミン類との重付加反応であり、その反応方法
としては、窒素ガスのような不活性雰囲気下、主に室温
以下の温度で、芳香族ジアミンと多価アミンを有機溶媒
に溶解させた溶液中で、攪拌させながらテトラカルボン
酸二無水物を徐々に加えて高分子量化させていく方法が
一般的である。
【0020】テトラカルボン酸二無水物は、固形で加え
ても、溶媒で溶解させた液状で加えてもよい。テトラカ
ルボン酸二無水物に、芳香族ジアミンと多価アミンを加
える方法でも構わない。
【0021】本発明で用いられるテトラカルボン酸二無
水物の代表例としては、ピロメリット酸二無水物、3,
3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無
水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン
酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカ
ルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテ
トラカルボン酸二無水物、2,2’,6,6’−ビフェ
ニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフ
タレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナ
フタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス
(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、
ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水
物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二
無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸
二無水物、ナフタレン−1,2,4,5−テトラカルボ
ン酸二無水物、ナフタレン−1,4,5,8−テトラカ
ルボン酸二無水物、ベンゼン−1,2,3,4−テトラ
カルボン酸二無水物などである。また、分子中にアミド
基、エステル基、エーテル基、スルホン基、メチレン
基、プロパン基、フェニレン基、イミダゾール基、チア
ゾール基等を任意に組合せた比較的分子量の大きいテト
ラカルボン酸二無水物やフッ素等のハロゲン基を構造中
に含むテトラカルボン酸二無水物等も使用できる。これ
らは単独または二種以上の混合物で用いることができ
る。
【0022】テトラカルボン酸二無水物と反応させる芳
香族ジアミンの代表例としては、メタフェニレンジアミ
ン、パラフェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフ
ェニルプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルメタ
ン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−
ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジ
フェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスル
ホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,
4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミ
ノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニル
エーテル、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,
3’−ジアミノベンゾフェノン、2,2’−ビス(4−
アミノフェニル)プロパン、ベンジジン、3,3’−ジ
アミノビフェニル、2,6−ジアミノピリジン、2,5
−ジアミノピリジン、3,4−ジアミノピリジン、ビス
[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、
ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホ
ン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エ
ーテル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニ
ル]エーテル、2,2’−ビス[4−(4−アミノフェ
ノキシ)フェニル]プロパン、2,2’−ビス[4−
(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、4,
4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、1,
4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−
ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2’−ビ
ス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフ
ロロプロパン、1,5−ジアミノナフタレン、2,6−
ジアミノナフタレン及びこれらの誘導体等が挙げられ
る。また、イソフタル酸ジヒドラジド等のジヒドラジド
化合物も使用できる。これらは、単独または二種以上の
混合物で用いることができる。
【0023】多価アミンとは、ひとつの分子構造中に三
個以上のアミノ基及び/またはアンモニウム塩基を有す
る化合物を示す。
【0024】多価アミンの代表例としては、3,3’,
4,4’−テトラアミノジフェニルエーテル、3,
3’,4,4’−テトラアミノジフェニルメタン、3,
3’,4,4’−テトラアミノベンゾフェノン、3,
3’,4,4’−テトラアミノジフェニルスルホン、
3,3’,4,4’−テトラアミノビフェニル、1,
2,4,5−テトラアミノベンゼン、3,3’,4−ト
リアミノジフェニルエーテル、3,3’,4−トリアミ
ノジフェニルメタン、3,3’,4−トリアミノベンゾ
フェノン、3,3’,4−トリアミノジフェニルスルホ
ン、3,3’,4−トリアミノビフェニル、1,2,4
−トリアミノベンゼン及びこれらの化合物の官能基を第
四アンモニウム塩の形に変えた化合物類、例えば3,
3’,4,4’−テトラアミノビフェニル・四塩酸塩等
が挙げられる。第四アンモニウム塩としては塩酸塩の他
に、酢酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、ピクリン酸塩
等の形で用いることもできる。これらの化合物の中に
は、多価アミンの官能基の全てが第四アンモニウム塩の
形でないものも含まれる。また、上記物質の中には水和
物として存在しているものもあり、これらの多価アミン
類は単独または二種以上の混合物で用いることができ
る。脂肪族類の多価アミンを使用することも可能であ
る。
【0025】テトラカルボン酸二無水物、芳香族ジアミ
ン及び多価アミンを主成分としたポリアミド酸の重合に
おいて用いられる有機溶媒は、重合反応に対して不活性
であると同時に、使用するモノマー類及び反応により生
成されたオリゴマーを含む高分子量物を溶解または高分
子量物を膨潤させる能力のあるものが使用され、代表的
なものとして、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N
−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルホルムアミ
ド、N,N−ジエチルアセトアミド、ジメチルスルホキ
シド、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチル
メトキシアセトアミド、ヘキサメチルホスホアミド、ピ
リジン、ジメチルスルホン、テトラメチレンスルホン、
クレゾール、フェノール、キシレノール等のフェノール
類や、ベンゼン、トルエン、キシレン、ベンゾニトリ
ル、ジオキサン、シクロヘキサン等が挙げられる。これ
らの溶媒は、単独または二種以上混合して使用される。
【0026】テトラカルボン酸二無水物、芳香族ジアミ
ン及び多価アミンを主成分としたポリアミド酸の重合
は、有機溶媒中、−30〜30℃の温度条件下、特に好
ましくは−5〜20℃の温度範囲で反応させることが好
ましい。反応時間は5時間以内、好ましくは2時間以内
である。前記反応温度を採用する理由は、反応温度が−
30℃より低い場合は、取扱性や反応方法の難しさに加
え、温度が低過ぎるため反応自身が充分に進まない場合
があり、好ましくないからである。また反応温度が30
℃を越える場合は、モノマーの分解が早くなるため高分
子量化しにくくなる問題があり、あるいはゲル化に至る
までの反応が早すぎて、不均質な膨潤体を与えるなどの
問題があり、好ましくないからである。
【0027】一般に、テトラカルボン酸二無水物と芳香
族ジアミンからポリアミド酸を調製する場合、得られる
重合体の分子量を上げるために両モノマー成分を出来る
限り等モルで反応させている。本発明でも膨潤体の架橋
点間分子量と架橋度を調節し適正化させるため、テトラ
カルボン酸二無水物/芳香族ジアミン/多価アミンのモ
ル比を、100/50〜100/1〜25の範囲内に留
め、且つテトラカルボン酸二無水物とアミン類(芳香族
ジアミンと多価アミン)の反応基の当量比(酸価/アミ
ン価の比)を0.95〜1.05の範囲内(±5%以
内)に合わせることが、未反応基が少なく安定したポリ
アミド酸の高分子ゲルを得る上で好ましい。
【0028】この範囲を外れた組成でモノマーを配合し
反応させた場合、ポリアミド酸の三次元架橋反応が不完
全で、結果的に得られるポリアミド酸が高分子ゲルを形
成しなかったり、またポリアミド酸の高分子ゲルが得ら
れても不均質あるいは不安定なものとなり、最終的に目
的とする成形体の性質、例えばフィルムの引張り強さや
引張り弾性率等の物理的性質が異なるという不都合を生
ずる。
【0029】反応させるテトラカルボン酸二無水物/多
価アミンのモル比は、100/1〜25であることが好
ましく、特に好ましくは、100/4〜15であり、用
いるモノマーの種類により、その好適な組成範囲が若干
ずれる場合もある。多価アミンは、ポリアミド酸高分子
ゲルの架橋点として働き、その配合比によりポリアミド
酸の高分子ゲル中に存在する網目濃度(架橋密度)を変
化させる。
【0030】前記テトラカルボン酸二無水物/多価アミ
ンのモル比を採用する理由は、多価アミンの配合モル数
が、テトラカルボン酸二無水物100モルに対し1モル
より小さいと溶液中でのポリアミド酸成分の架橋点が少
なくなり、三次元網目構造が不完全になり、自己支持性
のある高分子ゲル(膨潤体)となりにくいからである。
また、多価アミンの配合モル数が25モルより大きい
と、三次元網目構造の架橋点の増加と架橋点間分子量の
低下を招き、ポリアミド酸ゲルの体積膨潤度を低下さ
せ、脆性的な高分子ゲルとなり、最終的に脱溶媒によっ
て得られたフィルムの性能を低下させるからである。
【0031】ポリアミド酸の重合時において全モノマー
濃度は、通常、溶液全体の5〜30重量%である。これ
らのテトラカルボン酸二無水物、芳香族ジアミン及び多
価アミン成分は、それぞれ単独または二種以上の混合物
で用いられるため、得られるポリアミド酸は共重合体の
ものを含む。また、本発明におけるポリアミド酸は、特
定の成分からなるポリアミド酸と、このポリアミド酸の
構成成分の少なくとも一種類が異なるポリアミド酸を混
合した、ポリアミド酸の混合物も含む。
【0032】このようにして得られたポリアミド酸溶液
は、ポリアミド酸に含まれる未反応の官能基による架橋
反応が有機溶媒中で徐々に進行することにより、ポリア
ミド酸成分の三次元網目構造が形成されゲル化を起こ
し、最終的には有機溶媒を含んだポリアミド酸の高分子
ゲルを与える。この高分子ゲルの形成は次の機作によっ
て行なわれる。すなわち、ポリアミド酸のモノマー成分
として使用している多価アミンのアミノ基が全て反応に
関与し、共有結合あるいはイオン結合的にテトラカルボ
ン酸二無水物の酸無水物基あるいはカルボン酸基と反応
し、多価アミンが架橋点となり、ポリマー鎖の三次元網
目構造(ネットワーク)が形成される。
【0033】また、テトラカルボン酸二無水物、芳香族
ジアミン及び多価アミン成分を主とする重付加反応によ
り生成された重合物の中には、三次元網目構造に関与し
ない線状の高分子量物も含まれる。これらは、有機溶媒
で抽出されることで存在が確認される。
【0034】この有機溶媒を含むポリアミド酸の高分子
ゲルは、有機溶媒中で2〜50倍の体積膨潤度[(膨潤
後の体積)/(膨潤前の溶媒を含まない固形の体積)]
を示し、多量の有機溶媒を含んでも流動を起こさず、形
状を保持できるような自己支持性のある高分子ゲルであ
る。このポリアミド酸の高分子ゲルは、重合時の有機溶
媒を70〜95重量%含むが自重により流動しない形状
の寒天状の物質である。
【0035】本発明者らは、上記のようにして得られた
ポリアミド酸の高分子ゲルを、100℃以下の温度範囲
に保つことにより、その高分子ゲルの網目構造が解離さ
れ、再びポリアミド酸の溶液に戻る性質があることを見
出した。得られたこのポリアミド酸のポリマー溶液(ポ
リイミド成形体製造用前駆体溶液)は、20℃、24時
間経過後の粘度変化率が10%以下の溶液であり、その
粘度変化が少ない特徴を有している。
【0036】このポリイミド成形体製造用前駆体溶液を
用い脱溶媒によって作製されたフィルムは、例外を除き
高分子ゲルを脱溶媒して作製したフィルムと同等の性質
を示す。また、このポリイミド成形体製造用前駆体溶液
は、流動性があり、粘度変化の少ない安定したポリマー
溶液として用いることができるため、フィルムの作製工
程の溶液流延法等に使用される既存のフィルム製造装
置、あるいは湿式紡糸により繊維化する方法に使用され
る通常の紡糸設備が使用できる。
【0037】このことは前記従来の高分子ゲルを経由し
た特殊な成形体の製造プロセスのために装置を改良した
り、工程を増やしたりするといった手間が省け、エネル
ギーコストを低減させ、安定した品質の成形体を得る上
で大きな利点をもたらす。
【0038】本発明のポリイミド成形体製造用前駆体溶
液を製造するにあたり、テトラカルボン酸二無水物、芳
香族ジアミン及び多価アミンを主成分としたモノマー類
を有機溶媒中で重合反応させて得られたポリアミド酸の
高分子ゲルの三次元網目構造を解離させるには、主に熱
によりゲルの網目構造を切断させる方法で行なわれる。
加熱により高分子ゲルの網目構造を切断させ溶液化させ
る場合、処理温度としては100℃以下の温度範囲に保
つ。通常は20℃〜100℃に保持する。
【0039】処理温度が100℃を越えた場合、ポリア
ミド酸の脱水閉環が始まり、部分的にポリアミド酸がポ
リイミドとなる反応が進み、ポリイミド成分が溶液中か
ら不溶部として析出し、不均一な溶液となる場合が多い
ので好ましくない。また、処理温度が20℃より低い場
合、ポリアミド酸の高分子ゲルの網目構造を切断させる
のに100時間以上の長時間を必要とし、実用的ではな
い。
【0040】ポリアミド酸の高分子ゲルを100℃以下
の温度範囲で処理する時間は、高分子ゲルの網目構造が
解離され、不溶分が存在しなくなるまでの時間でよい
が、溶液化の後に長時間の処理を続けると、ポリアミド
酸分子鎖の切断が著しく進行し、分子量の低下を招く恐
れがある。このような分子量の低下は、成形体の機械的
特性の低下を招き、脱溶媒の後にイミド化させても得ら
れた成形体は脆性化する。したがって、ポリアミド酸の
高分子ゲルを100℃以下の温度範囲に処理する時間
は、48時間以下であることが好ましい。
【0041】ポリアミド酸の高分子ゲルを100℃以下
の温度範囲で処理する際、その処理時の圧力は、通常、
大気圧であるが、10気圧を越えない範囲の加圧でも構
わない。加圧下で100℃以下の温度範囲の処理を行う
と、大気圧で処理する場合と比べ、短時間で高分子ゲル
の三次元網目構造を解離させることができる。
【0042】テトラカルボン酸二無水物、芳香族ジアミ
ン及び多価アミンの反応により得られたポリアミド酸の
高分子ゲルを、100℃以下の温度で、少なくとも10
分以上熱処理し、ゲルの網目構造を解離させ得られたポ
リアミド酸溶液は、溶液粘度が1〜1000ポイズ(2
0℃)の均一な溶液であり、その溶液を20℃、24時
間保持したときの粘度変化率は10%以下の溶液であ
り、その溶液はポリイミド成形体製造用ポリイミド前駆
体溶液である。
【0043】成形性を良くするために、得られたポリイ
ミド成形体製造用前駆体溶液を濃縮し、あるいは希釈し
ても構わない。このポリイミド成形体製造用前駆体溶液
は、粘度が安定な、ポリマーの均一な溶液であるため、
その取扱い性が容易で、既存の設備を用いても、また従
来の成形方法でも品質の安定した成形体が作製できる。
例えば、ガラス基材のような基材上に流延させることで
一定厚みを持った溶液の塗膜を形成させることができ、
この塗膜を脱溶媒させることにより均一な厚みを持った
ポリアミド酸のフィルムなどの成形体を形成させること
が可能である。本発明のポリイミド成形体製造用前駆体
溶液は、高濃度化させる手段、あるいは触媒的な作用を
する化学薬品を添加する等の手段によって、再び三次元
架橋反応を起こし、高分子ゲルを形成することができ
る。この高分子ゲルを形成する反応においては、三次元
架橋反応に寄与する活性基が、ポリアミド酸の高分子ゲ
ルの解離により製造されたポリイミド成形体製造用前駆
体溶液の中に残存しており、この活性基が、フィルムを
形成させるための脱溶媒過程の状態で再びポリマー鎖の
三次元架橋反応を起こし、ポリアミド酸成分の三次元網
目構造を形成させ、再びゲル化を起こすと考えられる。
【0044】したがって、本発明のポリイミド成形体製
造用前駆体溶液は、基材上に均一に塗布または口金より
吐出させた後、脱溶媒によりポリアミド酸の成形体とな
る過程でポリアミド酸の高分子ゲルを経由する。ポリア
ミド酸の高分子ゲルを経由して得られた成形体は溶媒の
出入りにより可逆的に膨潤・収縮を繰り返す構造体とな
り、その成形体は、ミクロレベルではポリアミド酸分子
鎖内に架橋点を持つ分子構造となっている。
【0045】本発明のポリイミド成形体製造用前駆体溶
液より作製されたフィルムは、溶媒に膨潤する性質を示
すが、膨潤フィルムを凝固浴中での溶媒置換させ、多孔
質な凝固フィルムとすることにより、選択的な物質分離
性能及び吸着作用を示すポリイミドフィルムを作製する
こともできる。また、本発明のポリイミド成形体製造用
前駆体溶液より作製されたフィルムが、高い延伸倍率を
持つ成形体にできることを利用して、機械的な一軸ある
いは二軸延伸処理により、機械的特性に優れたポリイミ
ドフィルムとすることもできる。
【0046】本発明のポリイミド成形体製造用前駆体溶
液から得られた成形体は、加熱による脱水閉環反応によ
り、イミド化反応が進み、最終的にはポリイミド成形体
を与える。このような、ポリアミド酸の高分子ゲルを経
由して得られたポリイミド成形体は、多官能性モノマー
による架橋点を有する分子構造であり、耐熱レベルが高
く機械的性質に優れたフィルム等の成形体となる。
【0047】また、多価アミンの含有量を変えたり、ポ
リマー濃度を調節するなどの手段によって、網目構造を
コントロールすることにより、フィルム内の分子鎖凝集
状態を制御させることも可能で、このようなフィルム
は、選択的な気体あるいは液体透過性を有する分離膜と
して使用できる。また、本発明のポリイミド成形体製造
用前駆体溶液から得られた成形体の中には、有機溶媒以
外の他の物質、例えば、各種金属化合物、低分子有機化
合物、高分子化合物、無機充填剤、着色剤、強化繊維等
を含ませることができる。
【0048】本発明のポリイミド成形体製造用前駆体溶
液より得られた成形体は、主にフィルム等の形状で、半
導体素子、変換素子等のエレクトロニクス用の素材、分
離膜、絶縁フィルム、感光体、等に応用される。
【0049】
【実施例】
〔実施例1〕300ccの四つ口セパラブルフラスコ中
に、1.816g(0.0168モル)の精製したパラ
フェニレンジアミン(略称:PPD)と0.6336g
(0.0016モル)の3,3’,4,4’−テトラア
ミノビフェニル・四塩酸塩・二水和物(略称:TAB
T)を採取し、50gの蒸留されたN−メチル−2−ピ
ロリドン(略称:NMP)を加え、撹拌し溶解させて溶
液とした。
【0050】窒素雰囲気の下、外部水槽の温度を5℃に
コントロールし、上記溶液の温度が上らないように注意
しながら、上記溶液を撹拌し続けた状態で、4.366
g(0.02モル)の精製した無水のピロメリット酸二
無水物(略称:PMDA)を固形のまま徐々に添加し
た。全て加え終った後も撹拌を続け均一なポリアミド酸
溶液を調製した。さらに攪拌を続けながらポリマー溶液
の温度を室温に戻した。約30分後、セパラブルフラス
コ中でポリマー溶液はゲル化を起こし、寒天状のポリア
ミド酸の高分子ゲルが得られた。
【0051】この高分子ゲルを、熱風乾燥機中80℃で
5時間熱処理したところ、ゲルが解離しポリアミド酸の
ポリマー溶液となった。このポリマー溶液は、濃度12
重量%、対数粘度は1.3dl/g,回転粘度計によっ
て測定した溶液粘度は100ポイズであった。また、こ
のポリマー溶液の20℃、24時間経過後の粘度は98
ポイズであり、粘度変化率は2%であった。
【0052】〔比較例1〕前記実施例1と同じモノマ
ー、溶媒、反応条件で、前記実施例1と同様な寒天状の
ポリアミド酸の高分子ゲルを製造した。得られたポリア
ミド酸ゲルを、冷蔵庫の中で、0℃で1週間以上放置
(処理)したが、ポリアミド酸の高分子ゲルのままで、
ゲルの解離が起こらず、流動性のあるポリマー溶液が得
られなかった。 〔実施例2〕前記実施例1で得られたポリアミド酸ゲル
のゲルの解離によるポリアミド酸のポリマー溶液をガラ
ス板上に流延した。そのポリマー溶液の塗布量は、スペ
ーサーによりコントロールし、約0.4mmの厚さにな
るようにした。このポリアミド酸のポリマー溶液を45
℃で真空乾燥させると、溶媒が飛散する過程で高分子ゲ
ルが形成され、更に乾燥を続け残存溶媒が5重量%以下
になったところでポリアミド酸フィルムをガラス板より
剥離させた。
【0053】このポリアミド酸フィルムを鉄枠で固定
し、100℃で1時間、200℃で1時間、300℃で
1時間、400℃で1時間の条件で段階的に熱処理し、
ポリイミドフィルムを作製した。このときの昇温速度は
5℃/分を標準とした。
【0054】このポリイミドフィルムに対し、空気中に
て10℃/分の昇温速度で引張り荷重を加えながら熱機
械分析を行ったところ、420℃にガラス転移温度に対
応すると思われる熱膨張曲線の変曲点が観測された。ま
た、100℃での線膨張係数は5.0×10-6cm/c
m/℃であった。
【0055】このポリイミドフィルムを短冊状に5mm
幅でカットし、該フィルムに対し引張り試験を、チャッ
ク間距離30mm,引張り速度5mm/分の条件で23
℃にて行った。その結果、このフィルムの引張り強さは
20Kgf/mm2 、引張り弾性率は700Kgf/m
2 、引張り伸度は5.0%であった。
【0056】〔比較例2〕前記実施例1で得られたゲル
の解離によるポリアミド酸のポリマー溶液を、ガラス板
上に流延し、45℃で真空乾燥(残存溶媒が5重量%以
下)し、得られたポリアミド酸フィルムをガラス板より
剥離させ、更に80℃で10時間処理した。この熱処理
されたフィルムの赤外吸収スペクトルから、1550c
-1にアミド酸基の特性吸収帯が観測され、イミド化が
不完全であることが確認された。
【0057】このフィルムを短冊状に5mm幅でカット
し、このフィルムに対して引張り試験を、チャック間距
離30mm,引張り速度5mm/分の条件で23℃にて
行った。このフィルムの引張り強さは8Kgf/m
2 、引張り弾性率は200Kgf/mm2 、引張り伸
度は50%であった。また、このフィルムに対して熱機
械分析を、10℃/分の昇温速度で引張り荷重を加えな
がら行ったところ、80℃にガラス転移温度に対応する
と思われる熱膨張曲線の変曲点が観測され、更に高温域
ではこのフィルムが大きく収縮し、イミド化が不完全で
あることを示した。 〔実施例3〕300ccの四つ口セパラブルフラスコ中
に、1.470g(0.0136モル)の精製したPP
Dと0.961g(0.0048モル)の4,4’−ジ
アミノジフェニルエーテル(略称:4,4’−DPE)
及び0.288g(0.0008モル)のTABTを採
取し、50gの蒸留されたNMPを加え、撹拌し溶解さ
せた。
【0058】窒素雰囲気の下、外部水槽の温度を−10
℃にコントロールし、上記溶液の温度が上がらないよう
に注意しながら、上記溶液を撹拌し続けた状態で、4.
366g(0.02モル)の精製した無水のPMDAを
固形のまま徐々に添加した。全て加え終った後も撹拌を
続け均一なポリアミド酸溶液を調製した。さらに攪拌を
続けながらポリマー溶液の温度を室温に戻した。約30
分後、セパラブルフラスコ中でポリマー溶液はゲル化を
起こし、寒天状のポリアミド酸の高分子ゲルが得られ
た。
【0059】この高分子ゲルを、熱風乾燥機中80℃で
7時間熱処理を行なったところ、ゲルが解離しポリアミ
ド酸のポリマー溶液となった。このポリマー溶液に対し
て、エバポレーターを用いてNMPをある程度飛散さ
せ、ポリマーの濃度を17重量%とした。このポリマー
溶液の対数粘度は1.2dl/g、溶液粘度は800ポ
イズであった。また、このポリマー溶液の20℃、24
時間経過後の粘度は800ポイズで変わらず、粘度変化
率は0%であった。
【0060】〔実施例4〕前記実施例3で得られたゲル
の解離によるポリアミド酸のポリマー溶液をコーティン
グ装置にて、表面が研磨されたステンレスベルト上に幅
500mm、厚さが450μmになるように連続的に塗
布し、次いで、100℃に温調された乾燥炉で45分間
乾燥させた。得られたフィルムをステンレスベルトより
剥離させ、ポリアミド酸の連続フィルムを作製した。
【0061】このポリアミド酸フィルムをピン方式のテ
ンターでフィルムの両端を固定し、熱処理炉にて150
℃で1時間、200℃で1時間、300℃で1時間、4
00℃で1時間の条件で段階的に熱処理し、ポリイミド
フィルムを作製した。このときの昇温速度は5℃/分を
標準とした。
【0062】このポリイミドフィルムの赤外吸収スペク
トルから、1780cm-1,1720cm-1にイミド基
の特性吸収帯が観測され、イミド化が確認された。この
ポリイミドフィルムに対して、熱機械分析を引張り荷重
を加えながら行ったところ、400℃にガラス転移温度
に対応すると思われる熱膨張曲線の変曲点が観測され、
100℃での線膨張係数は2.0×10-5cm/cm/
℃であった。
【0063】このポリイミドフィルムを短冊状に5mm
幅でカットし、該フィルムに対し引張り試験を、チャッ
ク間距離30mm,引張り速度5mm/分の条件で23
℃にて行った。その結果、このポリイミドフィルムの引
張り強さは18Kgf/mm2 、引張り弾性率は500
Kgf/mm2 、引張り伸度は10%であった。
【0064】〔実施例5〕300ccの四つ口セパラブ
ルフラスコ中に、1.081g(0.010モル)の精
製したPPDと0.792g(0.002モル)のTA
BTを採取し、40gの蒸留されたN,N−ジメチルア
セトアミド(略称:DMAc)を加え、撹拌し溶解させ
て溶液とした。
【0065】窒素雰囲気の下、外部水槽の温度を0℃に
コントロールし、上記溶液の温度が上らないように注意
しながら上記溶液を撹拌し続けた状態で、3.056g
(0.014モル)の精製したPMDAを固形のまま徐
々に添加した。さらに攪拌を続けながらポリマー溶液の
温度を室温に戻した。約30分後、ポリマー溶液はゲル
化を起こし、寒天状のポリアミド酸の高分子ゲルが得ら
れた。このポリアミド酸の高分子ゲルを、熱風乾燥機中
80℃で5時間熱処理を行なったところ、ゲルが解離し
ポリアミド酸のポリマー溶液となった。
【0066】一方、別の300ccの四つ口セパラブル
フラスコ中に、今度は0.689g(0.006モル)
の精製したPPDを採取し、30gの蒸留されたN,N
−ジメチルホルムアミド(略称:DMF)を加え、撹拌
し溶解させて溶液とした。窒素雰囲気の下、外部水槽の
温度を15℃にコントロールし、溶液の温度が上らない
ように注意しながら、このPPDのDMF溶液を撹拌し
続けた状態で、1.764g(0.006モル)の精製
した3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸
二無水物(略称:BPDA)を固形のまま、徐々に添加
し、均一なポリマー溶液を調整した。
【0067】上記二種類のポリマー溶液を、温度を0℃
にコントロールしたまま混合・撹拌することによって、
ポリアミド酸の均一な混合ポリマー溶液を調製した。溶
液粘度は750ポイズ(20℃)であった。また、この
混合ポリマー溶液の20℃、24時間経過後の粘度は7
40ポイズであり、粘度変化率は1.3%であった。こ
のポリアミド酸の混合ポリマー溶液をコーティング装置
にて、表面が研磨されたステンレスベルト上に幅500
mm、厚さが700μmになるように連続的に塗布した
後、100℃に温調された乾燥炉で45分間乾燥させ
た。得られたフィルムを基材より剥離させ、ポリアミド
酸の連続フィルムを作製した。
【0068】このポリアミド酸のフィルムをピン方式の
テンターでフィルムの両端を固定し、熱処理炉にて15
0℃で1時間、200℃で1時間、300℃で1時間、
400℃で1時間の条件で段階的に熱処理し、ポリイミ
ドフィルムを作製した。このときの昇温速度は5℃/分
を標準とした。このポリイミドフィルムの赤外吸収スペ
クトルから、1780cm-1,1720cm-1にイミド
基の特性吸収帯が観測され、イミド化が確認された。
【0069】このポリイミドフィルムの熱機械分析を引
張り加重を加えながら行ったところ、420℃にガラス
転移温度に対応すると思われる熱膨張曲線の変曲点が観
測され、100℃での線膨張係数は3.0×10-6cm
/cm/℃であった。またこのポリイミドフィルムを短
冊状に5mm幅でカットし、このフィルムに対して引張
り試験を、チャック間距離30mm,引張り速度5mm
/分の条件で23℃にて行った。その結果、フィルムの
引張り強さは22Kgf/mm2 、引張り弾性率は80
0Kgf/mm2 、引張り伸度は7.0%であった。
【0070】〔実施例6〕300ccの四つ口セパラブ
ルフラスコをセットし、窒素雰囲気の下、外部水槽の温
度を−25℃にコントロールした。25gの蒸留された
NMPをフラスコに注ぎ、撹拌しながら4.366g
(0.02モル)の精製した無水のPMDAを徐々に添
加し分散させた。上記溶液を攪拌しながら、0.144
g(0.0004モル)のTABTを固形で添加し、更
に30分間攪拌を続けた。
【0071】次に、1.643g(0.0152モル)
のPPDと0.801g(0.004モル)の4,4’
−DPEを25gのNMPに室温で溶解させ、この溶液
を滴下ロートに入れ上記セパラブルフラスコにセット
し、攪拌溶液の中に溶液の温度が上らないように注意し
ながら徐々に添加した。全て加え終った後、この反応液
を温度−25℃にコントロールしたまま撹拌を続け均一
なポリアミド酸のポリマー溶液を調製した。さらに攪拌
を続けながらこのポリマー溶液の温度を室温に戻した。
約30分の後、このポリマー溶液はゲル化を起こし、寒
天状のポリアミド酸の高分子ゲルが得られた。
【0072】このポリアミド酸の高分子ゲルを、熱風乾
燥機中80℃で8時間熱処理を行なったところ、ゲルが
解離しポリアミド酸のポリマー溶液となった。このポリ
マー溶液のポリマー濃度を調整し、15重量%とした。
溶液粘度は350ポイズであった。また、このポリマー
溶液の20℃、24時間経過後の粘度は360ポイズで
あり、粘度変化率は2.9%であった。
【0073】このポリアミド酸のポリマー溶液をコーテ
ィング装置にて、表面が研磨されたステンレスベルト上
に幅600mm、厚さが250μmになるように連続的
に塗布した後、100℃に温調された乾燥炉で30分間
乾燥させた。得られたフィルムを基材より剥離させ、ポ
リアミド酸の連続フィルムを作製した。
【0074】このポリアミド酸のフィルムをピン方式の
テンターで該フィルムの両端を固定し、熱処理炉にて1
50℃で1時間、200℃で0.5時間、300℃で1
時間、400℃で0.5時間、450℃で1時間の条件
で段階的に熱処理し、ポリイミドフィルムを作製した。
このときの昇温速度は5℃/分を標準とした。このポリ
イミドフィルムの赤外吸収スペクトルから、1780c
-1,1720cm-1にイミド基の特性吸収帯が観測さ
れ、イミド化が確認された。
【0075】このポリイミドフィルムの熱機械分析を引
張り加重を加えながら行ったところ、450℃にガラス
転移温度に対応すると思われる熱膨張曲線の変曲点が観
測され、100℃での線膨張係数は2.5×10-6cm
/cm/℃であった。このポリイミドフィルムを短冊状
に5mm幅でカットし、フィルムの引張り試験を、チャ
ック間距離30mm,引張り速度5mm/分の条件で2
3℃にて行った。フィルムの引張り強さは20Kgf/
mm2 、引張り弾性率は700Kgf/mm2、引張り
伸度は12.0%であった。
【0076】
【発明の効果】本発明によれば、テトラカルボン酸二無
水物と芳香族ジアミンの反応系に、特定の配合割合の多
価アミンを加え、重付加反応させるポリイミド成形体製
造用前駆体溶液において、そのポリイミド成形体製造用
前駆体溶液は、成形性に適した粘度を保持し、溶液の粘
度の変化率が少なく粘度安定性がある。
【0077】本発明のポリイミド成形体製造用前駆体溶
液を用いて成形されたポリイミドは、優れた耐熱性、優
れた機械的特性および耐薬品性を有する。

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 テトラカルボン酸二無水物、芳香族ジア
    ミン及び多価アミンを主成分としたポリアミド酸の高分
    子ゲルの網目構造の架橋点が切断されて調製された溶液
    であり、且つ該溶液の粘度が1〜5000ポイズであ
    り、20℃、24時間経過後の粘度変化率が10%以下
    の溶液であることを特徴とする、粘度の安定なポリイミ
    ド成形体製造用前駆体溶液。
  2. 【請求項2】 前記溶液が重合体を5〜30重量%含む
    有機溶媒溶液である請求項1記載のポリイミド成形体製
    造用前駆体溶液
  3. 【請求項3】 (1)テトラカルボン酸二無水物、芳香
    族ジアミン及び多価アミンを主成分としたモノマー類を
    有機溶媒の中で−30〜30℃の温度範囲で重合反応さ
    せて、ポリアミド酸の高分子ゲルを形成し、 (2)前記高分子ゲルを100℃以下の温度範囲に保つ
    ことにより、高分子ゲルの網目構造の架橋点を切断する
    ことを特徴とする粘度の安定なポリイミド成形体製造用
    前駆体溶液の製造方法。
  4. 【請求項4】 請求項1又は2記載の粘度の安定なポリ
    イミド成形体製造用前駆体溶液を基材上に塗布し、また
    は口金から吐出することによりポリアミド酸成形体を成
    形し、次いで該ポリアミド酸成形体を100℃以上の温
    度で脱水・閉環反応を行ってポリイミド成形体とするこ
    とを特徴とするポリイミド成形体の製造方法。
  5. 【請求項5】 請求項1又は2記載の粘度の安定なポリ
    イミド成形体製造用前駆体溶液を基材上に塗布し、また
    は口金から吐出し、脱溶媒することによりポリアミド酸
    成形体を成形し、次いで該ポリアミド酸成形体を100
    ℃以上の温度で脱水・閉環反応を行ってポリイミド成形
    体とすることを特徴とするポリイミド成形体の製造方
    法。
  6. 【請求項6】 請求項4又は5記載のポリイミド成形体
    の製造方法によって得られたことを特徴とするポリイミ
    ド成形体。
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