JPH08143665A - 導電性複合体及び製造方法 - Google Patents

導電性複合体及び製造方法

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JPH08143665A
JPH08143665A JP31269294A JP31269294A JPH08143665A JP H08143665 A JPH08143665 A JP H08143665A JP 31269294 A JP31269294 A JP 31269294A JP 31269294 A JP31269294 A JP 31269294A JP H08143665 A JPH08143665 A JP H08143665A
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JP
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polyamic acid
conductive composite
solution
acid solution
inorganic
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JP31269294A
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English (en)
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Yasuhisa Nagata
康久 永田
Yukio Katsumata
幸雄 勝又
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Teijin Ltd
Original Assignee
Toho Rayon Co Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミン
の反応系に、特定の配合割合の多価アミンを加え、重付
加反応させたポリアミド酸溶液を用いた導電性複合体の
製造方法において、耐熱性と機械的特性に同時に優れ、
無機質導電性物質が均一に分布し、電気伝導率に異方性
の少ない、且つ電気伝導率の高い導電性複合体、及びそ
の製造方法を提供する。 【構成】 テトラカルボン酸二無水物、芳香族ジアミン
及び多価アミンを主成分とした高分子ゲルの架橋結合を
切断して粘度が安定したポリアミド酸溶液を得、該ポリ
アミド酸溶液に対して無機質導電性物質を添加混合し、
次いで、該ポリアミド酸溶液を成形する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、無機質導電性物質をポ
リアミド酸又はポリイミドに複合させた導電性複合体及
びその製造方法に関する。
【0002】さらに詳しくは、ポリマー中に無機質導電
性物質を均一に分散させることができ、且つ電気伝導率
が高く三次元方向に電気伝導率の異方性が少なく、機械
的特性に優れた成形体を得ることができるポリアミド酸
の導電性複合体、又はポリイミドの導電性複合体の製造
方法に関する。
【0003】
【従来の技術】従来、ポリマーにカーボンブラック又は
グラファイト等の無機質導電性物質を混入させて導電性
複合体を作ることが、例えば、特開昭60−10981
5号公報、特開昭62−58509号公報等により知ら
れている。また、ポリマーに薄片状銀粉を混入させて無
機質導電性複合体を作ることが、例えば、特開昭62−
51106号公報等により知られている。また、ポリマ
−としてポリイミドを使用し、カーボンブラック又はグ
ラファイト等の無機質導電性物質を混入させて導電性複
合体を作ることが、特開昭61−113625号公報に
より知られている。
【0004】一方、ポリイミド樹脂は耐熱性樹脂として
知られているが、耐熱性と機械的特性は相反する傾向に
あり、機械的特性と耐熱性に共に優れたものを得ること
は困難であった。前記従来の各導電性複合体において
も、耐熱性及び機械的特性の両方において優れた特性を
示すものはなかった。近年、ポリイミド樹脂の改良が行
われ、ポリアミド酸中に適度な架橋点を存在させること
により、最終的に優れた耐熱性と優れた機械的特性を兼
ね備えたポリイミド成形体を製造する方法が提案されて
いる(例えば、特開平3−109424号公報、特開平
3−146524号公報参照)。その技術は、テトラカ
ルボン酸二無水物と芳香族ジアミンの反応系に、特定の
配合割合の多価アミンを加え、重付加反応させること
で、ポリアミド酸の高分子ゲルを経由してポリアミド酸
成形体とし、次いでこのポリアミド酸成形体を脱水・閉
環反応させて、機械的特性と耐熱性に優れたポリイミド
成形体を製造する方法である。
【0005】また、このような耐熱性と機械的特性に優
れたポリイミド樹脂又はその前駆体としてのポリアミド
酸中に導電性の低分子有機化合物を配合した導電性複合
体を製造する方法が、本発明者により既に出願されてい
る(特開平4−189865号公報)。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記テ
トラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンの反応系に、
特定の配合割合の多価アミンを加え、重付加反応させて
ポリアミド酸溶液とし、このポリアミド酸の高分子ゲル
を経由してポリイミド成形体を製造する技術は、前記の
如く優れた耐熱性及び優れた機械的特性等の利点を有す
るが、この方法において製造されるポリアミド酸溶液は
その粘度が極めて不安定であるという欠点があった。
【0007】すなわち、付加反応直後からゲル化が進行
して高分子ゲルとなり、ゲルの形成が完了した後ではほ
とんど流動せず、そのポリアミド酸溶液が比較的短い時
間でゲル化を完了することがあるため、ゲル化までのポ
リマー溶液の粘度の逐次的な変化に対して、ムラなく品
質の安定したフィルムや繊維状等の成形体を作製するの
に高度の技術を要するという問題点があった。
【0008】ところで、無機質導電性物質は、前記特開
平4−189865号公報に記載の導電性の低分子有機
化合物より耐熱性に優れているので、無機質導電性物質
を使用した導電性複合体は、前記従来の低分子有機化合
物を使用した導電性複合体よりも耐熱性が期待される
が、前記テトラカルボン酸二無水物、芳香族ジアミン、
多価アミンからなるポリアミド酸に対して無機質導電性
物質等をポリアミド酸溶液に含有させようとする場合に
は、ポリアミド酸溶液の粘度が比較的短時間の内に変化
し、ゲル化するので、このようなポリアミド酸溶液にお
いて、ポリアミド酸の粘度を制御し、沈降しやすい無機
質導電性物質を均一に分散させることは困難であった。
そのため、そのようにして得られた導電性複合体は、導
電性物質の分布が三次元的に均一でなく、製造される導
電性複合体の電気伝導率に異方性がでやすいという欠点
があった。
【0009】また、一般に、無機質導電性物質をポリア
ミド酸等のポリマーに分散させたものを基材上に流延・
乾燥させて導電性フィルムを製造する場合には、流延・
乾燥段階で、沈降する傾向が強く、そのため上記と同様
に電気伝導率に異方性が生ずることが多かった。また、
電気伝導率を上げるために無機質導電性物質の含有量を
高くすると反り等の形状変化が発生する他、機械的特性
が極端に低下する傾向にあった。
【0010】そこで、本発明は、テトラカルボン酸二無
水物と芳香族ジアミンの反応系に、特定の配合割合の多
価アミンを加え、重付加反応させたポリアミド酸溶液を
用いた導電性複合体の製造方法において、耐熱性と機械
的特性に同時に優れ、無機質導電性物質が均一に分布
し、電気伝導率に異方性の少ない、且つ電気伝導率の高
い導電性複合体、及びその製造方法を提供することを目
的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】前記した問題点を解決す
るために、本発明の導電性複合体の製造方法は、(1)
テトラカルボン酸二無水物、芳香族ジアミン及び多価ア
ミンを主成分とした高分子ゲルの架橋結合を切断して粘
度が安定したポリアミド酸溶液を得、(2)該ポリアミ
ド酸溶液に対して無機質導電性物質を添加混合し、
(3)次いで、該ポリアミド酸溶液を成形することを特
徴とする。
【0012】また本発明の別の導電性複合体の製造方法
は、(1)テトラカルボン酸二無水物、芳香族ジアミン
及び多価アミンを主成分とした高分子ゲル生成前のポリ
アミド酸溶液に対して無機質導電性物質を添加混合し、
(2)該ポリアミド酸の高分子ゲルを生成し、(3)該
高分子ゲルの架橋結合を切断して粘度が安定したポリア
ミド酸溶液を得、(4)次いで、該ポリアミド酸溶液を
成形して三次元網目構造を形成することを特徴とする。
【0013】また本発明の導電性複合体は、無機質導電
性物質が、テトラカルボン酸二無水物、芳香族アミン及
び多価アミンを主成分としたポリアミド酸の三次元網目
構造体中に均一に混合・分散されたものであり、その導
電性複合体の電気伝導率が、10-7S/cm以上で、表
面と裏面との電気的異方性が50%以内で、引張り強さ
が2.0Kgf/mm2 以上であることを特徴とする。
【0014】また本発明の導電性複合体は、無機質導電
性物質が、テトラカルボン酸二無水物、芳香族アミン及
び多価アミンを主成分としたポリイミドの三次元網目構
造体中に均一に混合・分散されたものであり、その導電
性複合体の電気伝導率が、10-7S/cm以上で、表面
と裏面との電気的異方性が50%以内で、引張り強さが
3.0Kgf/mm2 以上であることを特徴とする。
【0015】本発明の上記構成によれば、重付加反応に
よって生成した易ゲル化性のポリアミド酸溶液を一旦ゲ
ル化した後、100℃以下の温度範囲に保つ熱処理をす
ることによって、高分子ゲルの網目構造の架橋点が切断
され、粘度の安定なポリイミド成形体製造用前駆体溶液
(ポリアミド酸溶液)となる。このポリイミド成形体製
造用前駆体溶液中に無機質導電性物質を存在させて、こ
のポリイミド成形体製造用前駆体溶液を用いることによ
って、ポリアミド酸の成形体又はポリイミドの成形体を
製造すれば、ポリアミド酸又はポリイミドの三次元網目
構造中に無機質導電性物質が均一に且つ分散性良くポリ
マー中に複合され、耐熱性と機械的特性に同時に優れ、
無機質導電性物質が均一に分布し、成形物の三次元的な
電気伝導率に異方性が少なく、且つ電気伝導率の高い導
電性複合体を得ることができる。本発明をさらに詳細に
説明する。
【0016】テトラカルボン酸二無水物:本発明で用い
られるテトラカルボン酸二無水物の代表例としては、ピ
ロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフ
ェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’
−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,
3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、
2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無
水物、2,2’,6,6’−ビフェニルテトラカルボン
酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボ
ン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカル
ボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシ
フェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボ
キシフェニル)スルホン二無水物、ビス(3,4−ジカ
ルボキシフェニル)エーテル二無水物、3,4,9,1
0−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、ナフタレン−
1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物、ナフタレ
ン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、ベン
ゼン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物など
である。また、分子中にアミド基、エステル基、エーテ
ル基、スルホン基、メチレン基、プロパン基、フェニレ
ン基、イミダゾール基、チアゾール基等を任意に組合せ
た比較的分子量の大きいテトラカルボン酸二無水物やフ
ッ素等のハロゲン基を構造中に含むテトラカルボン酸二
無水物等も使用できる。これらは単独又は二種以上の混
合物で用いることができる。
【0017】芳香族ジアミン:本発明において、テトラ
カルボン酸二無水物と反応させる芳香族ジアミンの代表
例としては、メタフェニレンジアミン、パラフェニレン
ジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、
4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジア
ミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニル
スルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、
3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジ
アミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェ
ニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテ
ル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’
−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノベンゾ
フェノン、2,2’−ビス(4−アミノフェニル)プロ
パン、ベンジジン、3,3’−ジアミノビフェニル、
2,6−ジアミノピリジン、2,5−ジアミノピリジ
ン、3,4−ジアミノピリジン、ビス[4−(4−アミ
ノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−
アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−
(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス
[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、
2,2’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニ
ル]プロパン、2,2’−ビス[4−(3−アミノフェ
ノキシ)フェニル]プロパン、4,4’−ビス(4−ア
ミノフェノキシ)ビフェニル、1,4−ビス(4−アミ
ノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフ
ェノキシ)ベンゼン、2,2’−ビス[4−(3−アミ
ノフェノキシ)フェニル]ヘキサフロロプロパン、1,
5−ジアミノナフタレン、2,6−ジアミノナフタレン
及びこれらの誘導体等が挙げられる。また、イソフタル
酸ジヒドラジド等のジヒドラジド化合物も使用できる。
これらは、単独又は二種以上の混合物で用いることがで
きる。
【0018】多価アミン:本発明において使用される多
価アミンとは、一つの分子構造中に三個以上のアミノ基
及び/又はアンモニウム塩基を有する化合物をいう。多
価アミンの代表例としては、3,3’,4,4’−テト
ラアミノジフェニルエーテル、3,3’,4,4’−テ
トラアミノジフェニルメタン、3,3’,4,4’−テ
トラアミノベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テト
ラアミノジフェニルスルホン、3,3’,4,4’−テ
トラアミノビフェニル、1,2,4,5−テトラアミノ
ベンゼン、3,3’,4−トリアミノジフェニルエーテ
ル、3,3’,4−トリアミノジフェニルメタン、3,
3’,4−トリアミノベンゾフェノン、3,3’,4−
トリアミノジフェニルスルホン、3,3’,4−トリア
ミノビフェニル、1,2,4−トリアミノベンゼン及び
これらの化合物の官能基を第四アンモニウム塩の形に変
えた化合物類、例えば3,3’,4,4’−テトラアミ
ノビフェニル・四塩酸塩等が挙げられる。前記第四アン
モニウム塩としては塩酸塩の他に、酢酸塩、P−トルエ
ンスルホン酸塩、ピクリン酸塩の形で用いることもでき
る。これらの化合物の中には、多価アミンの官能基の全
てが第四アンモニウム塩の形でないものも含まれる。ま
た、上記物質の中には水和物として存在しているものも
あり、これらの多価アミン類は単独又は二種以上の混合
物で用いることができる。脂肪族類の多価アミンを使用
することも可能である。
【0019】有機溶媒:本発明において、テトラカルボ
ン酸二無水物、芳香族ジアミン及び多価アミンを主成分
としたポリアミド酸の重合に用いられる有機溶媒は、重
合反応に対して不活性であると同時に、使用するモノマ
ー類及び反応により生成されたオリゴマーを含む高分子
量物を溶解又は高分子量物を膨潤させる能力のある有機
溶媒が使用され、代表的なものとして、N,N−ジメチ
ルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,
N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジエチルアセトア
ミド、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリ
ドン、N,N−ジメチルメトキシアセトアミド、ヘキサ
メチルホスホアミド、ピリジン、ジメチルスルホン、テ
トラメチレンスルホン、クレゾール、フェノール、キシ
レノール等のフェノール類や、ベンゼン、トルエン、キ
シレン、ベンゾニトリル、ジオキサン、シクロヘキサン
等が挙げられる。これらの溶媒は、単独又は二種以上混
合して使用される。
【0020】重合条件:テトラカルボン酸二無水物、芳
香族ジアミン及び多価アミンを主成分としたポリアミド
酸の重合は、有機溶媒中、−30〜30℃の温度条件
下、特に好ましくは−5〜20℃の温度範囲で反応させ
ることが好ましい。反応時間は5時間以内、好ましくは
2時間以内である。重合反応温度が−30℃より低い場
合、取扱性や反応方法・装置等が複雑化する。また、低
温での重合反応では、反応速度が遅くなり、反応自身が
充分に進まない場合があるので好ましくない。反応温度
が30℃を越える場合は、モノマーの加水分解が早くな
るため高分子量化しにくくなる問題や、あるいはゲル化
に至るまでの反応が早すぎて、不均質な膨潤体を与える
などの問題があり好ましくない。従って、ポリアミド酸
成分の反応温度は、−30〜30℃の温度条件下、特に
好ましくは−5〜20℃の温度範囲で反応させることが
好ましい。
【0021】テトラカルボン酸二無水物、芳香族ジアミ
ン及び多価アミンを重合させてなる本発明のポリアミド
酸は、反応により粘稠なポリマー溶液となるが、反応方
法やモノマー組成を組合せることにより、ポリアミド酸
溶液の状態を中間体的なものとし、最終的には高分子ゲ
ルを形成することができる。また、このポリアミド酸溶
液から製造されるゲルは、ゲルを形成する分子鎖の架橋
構造を熱処理等で切断せしめることで、ポリアミド酸の
溶液に再び変換させることが可能である。
【0022】一般に、テトラカルボン酸二無水物と芳香
族ジアミンからポリアミド酸を調製する場合、分子量を
上げるために両モノマー成分を出来る限り等モルで反応
させることが好ましい。本発明においても、ポリマー溶
液の分子量、あるいは膨潤体の架橋点間分子量と架橋度
を調節し適正化させるため、テトラカルボン酸二無水物
/芳香族ジアミン/多価アミンのモル比を、100/5
0〜100/1〜25の範囲内に留め、且つテトラカル
ボン酸二無水物とアミン類(芳香族ジアミンと多価アミ
ン)の反応基の当量比(即ち、酸価/アミン価の比)を
0.95〜1.05の範囲内(±5%以内)に合わせる
ことが好ましい。
【0023】このような成分の調整により、ポリマー中
に残存する未反応基の数を抑え、重合度の高いポリアミ
ド酸溶液あるいは高分子ゲルが得られる。この当量比を
合わせることは、フィルムの機械的特性を高めるだけで
なく、フィルム中における導電性物質の分散性を高める
効果にも影響する。前記反応基の当量比が0.95〜
1.05の範囲を外れる場合は導電性物質の分散性が悪
くなる。
【0024】テトラカルボン酸二無水物/多価アミンの
モル比は、100/1〜25であることが好ましく、特
に好ましくは、100/2〜15の範囲であるが、用い
るモノマーの種類により、その好適な組成範囲が若干ず
れる場合もある。
【0025】多価アミンは、共重合的にポリアミド酸の
一成分として組み込まれるか、あるいは高分子ゲルを形
成する場合はポリマーの架橋点として働き、多価アミン
のアミノ基が無機質導電性物質の活性部分との相互作用
により無機質導電性物質の分散性を高める。多価アミン
の配合比によりポリアミド酸の分子量あるいは高分子ゲ
ルの網目濃度(架橋密度)が変化する。
【0026】多価アミンの配合モル数が、テトラカルボ
ン酸二無水物100モルに対し1モルより小さいと、導
電性物質のフィルム中における分散性を改善するための
多価アミンの配合効果が小さくなり好ましくない。多価
アミンの配合モル数が25モルより大きいと、ポリアミ
ド酸の分子量の低下、三次元網目構造の架橋点の増加及
び架橋点間分子量の低下を起こすようになるので、ポリ
アミド酸溶液に導電性物質を混合し、脱溶媒して得られ
た導電性複合体の機械的特性を低下させる。従って、多
価アミンの配合モル数は、テトラカルボン酸二無水物1
00モルに対し1〜25モルの範囲内が良い。
【0027】重合反応時に使用される有機溶媒の量は、
重合されたポリアミド酸がポリマー溶液全量に対し3〜
40重量%、好ましくは5〜30重量%含まれるように
調整することが取扱性の面で好ましい。ポリアミド酸の
濃度が3重量%未満では、ポリマーの重合度が低くな
る。また、40重量%超では固形分濃度が高過ぎるた
め、重合途中で溶液粘度が上昇し、重合反応が思うよう
に進まなくなる。本発明での重合は、ポリマー収率が9
0%以上で進むので、ポリアミド酸重合時の全モノマー
濃度としては通常、溶液全体の5〜30重量%であるの
が良い。
【0028】これらのテトラカルボン酸二無水物、芳香
族ジアミン及び多価アミン成分は、それぞれ単独又は二
種以上の混合物で用いられるため、得られるポリアミド
酸は共重合体も含む。また、特定の成分から成るポリア
ミド酸と、このポリアミド酸の構成成分の少なくとも一
種類が異なるポリアミド酸を混合した、ポリアミド酸の
混合物も含まれる。
【0029】このようにして得られたポリアミド酸溶液
は、固有粘度が1.0以上のポリマー溶液であるが、通
常はポリアミド酸の分子鎖中に残存するカルボン酸基及
びアミノ基の架橋反応が更に進行してポリアミド酸の粘
度が増加し、ポリアミド酸成分の三次元網目構造が形成
され、ゲル化を起こすものが多い。
【0030】この有機溶媒を含むポリアミド酸の高分子
ゲルを形成するものは、有機溶媒中で2〜50倍の体積
膨潤度[(膨潤後の体積)/(膨潤前の溶媒を含まない
固形の体積)]を示すものであり、多量の有機溶媒を含
んでも流動を起こさず、形状を保持できるような自己支
持性のある高分子ゲルである。即ち、このポリアミド酸
の高分子ゲルは、重合時の有機溶媒を70〜95重量%
含むが自重により流動しない寒天状の物質である。
【0031】このような三次元網目構造は、ポリアミド
酸のモノマー成分として使用している多価アミンのアミ
ノ基が全て反応に関与し、共有結合あるいはイオン結合
的にテトラカルボン酸二無水物の酸無水物基あるいはカ
ルボン酸基と反応し、多価アミンが架橋点となり、ポリ
マー鎖の三次元ネットワークが形成される。
【0032】ポリアミド酸の高分子ゲルの再溶液化、及
びその成形:ポリアミド酸の高分子ゲルを、100℃以
下、好ましくは20〜100℃の温度に保つことによ
り、高分子ゲルの架橋点の分子鎖を切断して再溶液化し
て、溶液粘度が1〜1000ポイズの流動性のあるポリ
マー溶液に容易に転換することができる。得られた再溶
液化したポリアミド酸溶液は、粘度変化が少なく(20
℃、24時間経過後の粘度変化率が10%以下の溶液で
ある)、安定した粘度を持つ特徴がある。処理温度が1
00℃を越えた場合、ポリアミド酸の脱水閉環が始ま
り、部分的にポリアミド酸がポリイミドとなる反応が進
み、ポリイミド成分が溶液中から不溶部として析出し、
不均一な溶液となる場合が多いので好ましくない。ま
た、処理温度が20℃より低い場合、ポリアミド酸の高
分子ゲルの三次元網目構造を切断させるのに100時間
以上の長時間を必要とし、実用的ではない。
【0033】ポリアミド酸の高分子ゲルを100℃以下
の温度範囲で処理する時間は、高分子ゲルの三次元網目
構造が解離され、不溶分が存在しなくなるまでの時間で
よいが、溶液化の後に長時間の処理を続けると、ポリア
ミド酸分子鎖の切断が著しく進行し、分子量の低下を招
く恐れがある。このような分子量の低下は、成形体の機
械的特性の低下を招き、脱溶媒の後にイミド化させても
得られた成形体は脆性化する。したがって、ポリアミド
酸の高分子ゲルを100℃以下の温度範囲に処理する時
間は、48時間以下であることが好ましい。
【0034】ポリアミド酸の高分子ゲルを100℃以下
の温度範囲で処理する際、その処理時の圧力は、通常、
大気圧であるが、10気圧を越えない範囲の加圧でも構
わない。加圧下で100℃以下の温度範囲の処理を行う
と、大気圧で処理する場合と比べ、短時間で高分子ゲル
の三次元網目構造を解離させることができる。
【0035】テトラカルボン酸二無水物、芳香族ジアミ
ン及び多価アミンの反応により得られたポリアミド酸の
高分子ゲルを、100℃以下の温度で、少なくとも10
分以上熱処理し、ゲルの網目構造を解離させ得られた再
溶液化したポリアミド酸溶液は、溶液粘度が1〜100
0ポイズ(20℃)の均一な溶液であり、その溶液を2
0℃、24時間保持したときの粘度変化率は10%以下
の溶液であり、その溶液はポリイミド成形体製造用ポリ
イミド前駆体溶液となる。
【0036】成形性を良くするために、得られた再溶液
化したポリアミド酸溶液(ポリイミド成形体製造用前駆
体溶液)を濃縮し、あるいは希釈しても構わない。この
ポリアミド酸溶液は、粘度が安定な、ポリマーの均一な
溶液であるため、その取扱い性が容易で、既存の設備を
用いても、また従来の成形方法でも品質の安定した成形
体が作製できる。例えば、ガラス基材のような基材上に
流延させることで一定厚みを持った溶液の塗膜を形成さ
せることができ、この塗膜を脱溶媒させることにより均
一な厚みを持ったポリアミド酸のフィルムなどの成形体
を形成させることが可能である。
【0037】本発明における再溶液化したポリアミド酸
溶液は、高濃度化させる手段、あるいは触媒的な作用を
する化学薬品を添加する等の手段によって、再び三次元
的な架橋反応を起こし、高分子ゲルを形成することがで
きる。この高分子ゲルを形成する反応においては、三次
元的な架橋反応に寄与する活性基が、ポリアミド酸の高
分子ゲルの解離により製造された再溶液化したポリアミ
ド酸溶液の中に残存しており、この活性基が、フィルム
を形成させるための脱溶媒過程の状態で再びポリマー鎖
の三次元的な架橋反応を起こし、ポリアミド酸成分の三
次元網目構造を形成させ、再びゲル化を起こすと考えら
れる。
【0038】したがって、本発明における再溶液化した
ポリアミド酸溶液は、例えば、基材上に均一に塗布また
は口金より吐出させた後、脱溶媒によりポリアミド酸の
成形体となる過程でポリアミド酸の高分子ゲルを経由す
る。ポリアミド酸の高分子ゲルを経由して得られた成形
体は溶媒の出入りにより可逆的に膨潤・収縮を繰り返す
構造体となり、その成形体は、ミクロレベルではポリア
ミド酸分子鎖内に架橋点を持つ分子構造となっている。
【0039】本発明における再溶液化したポリアミド酸
溶液は、高い延伸倍率を持つ成形体にできることを利用
して、機械的な一軸あるいは二軸延伸処理により、機械
的特性に優れたポリイミドフィルムとすることもでき
る。本発明における再溶液化したポリアミド酸溶液から
得られた成形体は、さらに、加熱による脱水閉環反応に
より、イミド化反応が進み、最終的にはポリイミド成形
体を与える。このような、ポリアミド酸の高分子ゲルを
経由して得られたポリイミド成形体は、多官能性モノマ
ーによる架橋点を有する分子構造であり、耐熱レベルが
高く機械的特性に優れたフィルム等の成形体となる。
【0040】また、多価アミンの含有量を変えたり、ポ
リマー濃度を調節するなどの手段によって、三次元網目
構造をコントロールすることにより、フィルム内の分子
鎖凝集状態を制御させることも可能で、このようなフィ
ルムは、選択的な気体あるいは液体透過性を有する分離
膜として使用できる。
【0041】本発明における再溶液化したポリアミド酸
溶液は、粘度が安定しているので、この溶液に対して、
無機質導電性物質を混合・分散させるか、或いは再溶液
化する前の段階で予め混合しておいた無機質導電性物質
を含むポリアミド酸溶液を高分子ゲルを経て再溶液化し
た後に、必要に応じて超音波処理等の分散処理を行うこ
とにより無機質導電性物質が分散されたポリアミド酸溶
液を得る。得られたポリアミド酸溶液に対して高濃度化
させる手段又は触媒的な作用を有する化学薬品を添加す
る手段を適用して、三次元網目構造における架橋点の分
子鎖を切断する前の三次元網目構造と同等の構造へ容易
に復帰することができる。前記高濃度化には、例えば、
塗布、脱溶媒等により行うことができる。このように、
ポリアミド酸の三次元網目構造の消失、再生の制御を容
易に行うことができるため、粘度制御が容易に行え、無
機質導電性物質をポリアミド酸中に均一に分散させるこ
とが容易となる。
【0042】なお、ポリアミド酸の高分子ゲルを再溶液
化させたポリマー溶液においては、固形分濃度が高くて
も比較的低粘度で、無機質導電性物質との混合・分散が
容易で、且つ得られた導電性複合体の機械的特性も損な
われないので好ましい。
【0043】このようにして、無機質導電性物質が、テ
トラカルボン酸二無水物、芳香族アミン及び多価アミン
を主成分としたポリアミド酸の三次元網目構造体中に均
一に混合・分散されたポリアミド酸成形体からなる導電
性複合体を得ることができる。また、このポリアミド酸
成形体からなる導電性複合体を前駆体として脱水・閉環
反応させて、無機質導電性物質が、テトラカルボン酸二
無水物、芳香族アミン及び多価アミンを主成分としたポ
リイミドの三次元網目構造体中に均一に混合・分散され
たポリイミドからなる導電性複合体を得ることができ
る。
【0044】無機質導電性物質:導電性複合体に用いら
れる無機質導電性物質としては、粉末状あるいは繊維状
の炭素物質、金属物質、金属酸化物の単独あるいは二種
以上の混合物質で、電気伝導率10-2S/cm以上のも
のが好ましい。
【0045】炭素物質としては、黒鉛粉末、アセチレン
ブラック,ファーネスブラック,ケッチンブラック、等
のカーボンブラック、短繊維状の炭素繊維などがある。
金属物質としては、代表的な良導体としてAg,Cu,
Au,Al,Pt,Pd等の微粉体あるいは繊維状物質
が、金属酸化物として酸化スズ,酸化インジウムが挙げ
られる。無機質半導体としてのゲルマニウムも使用する
ことができる。その他に、ニッケル等の金属でメッキさ
れた炭素繊維を用いても構わない。
【0046】これらの無機質導電性物質は、電気伝導性
且つ機械的特性の観点において、直径100μm以下の
微粉体、又は繊維径30μm以下で繊維長1mm以下の
繊維状形態で用いることが好ましく、特に好ましくは、
直径10μm以下の微粉体、又は繊維径10μm以下で
繊維長0.1mm以下の繊維状形態が好ましい。また無
機質導電性物質として、平均粒子径1μm以下のサブミ
クロン・オーダーの物質を用いることもでき、この場
合、無機質導電性物質のコンテントが低くても、電気伝
導性が高く、機械的特性に優れた導電性複合体を得るこ
とができる。例えば、炭素物質としてグラファイト粒子
の平均粒子径10μmの微粒子を導電性複合体全体に対
して20重量%配合させた系と、平均粒子径0.1μm
の微粒子を同量配合した系を比較した場合、後者の方が
約10倍、電気伝導率が高くなる傾向がある。
【0047】無機質導電性物質の含有量は、使用する無
機質導電性物質の種類により変化するが、一般には複合
体全量に対して1〜80重量%であることが好ましい。
無機質導電性物質を複合させて得られた導電性複合体の
電気伝導率は、導電性シート、無機質導電性物質等の用
途を考慮した場合10-7S/cm以上のものが望まれ
る。これらの無機質導電性物質は、一般に、電気伝導率
が高いため少ない配合量でも電気伝導率の高い導電性複
合体を与える。また、熱的に安定な物質が多いので、3
00℃以上の高温下でも変質、劣化等の物理科学的変化
が少なく、熱安定性のある導電性複合体となる。
【0048】無機質導電性物質とポリマーの複合化方
法:無機質導電性物質とポリマーの複合化方法として
は、無機質導電性物質が有機溶媒に分散させられた溶液
中でポリアミド酸を重合するか、又は予め重合したポリ
アミド酸溶液に無機質導電性物質を加える等の手段があ
り、これによりポリアミド酸溶液と無機質導電性物質の
混合溶液が得られる。混合溶液を超音波によって処理す
ることにより、更に無機質導電性物質が比較的均一に分
散させられた混合溶液とすることができる。ポリアミド
酸と無機質導電性物質の分散性を良くするために、混合
溶液をロール方式あるいはボール・ミル方式の混練機な
どで処理すると、更に両成分の混合状態の良い混合溶液
が得られる。
【0049】ポリアミド酸と無機質導電性物質の混合溶
液において、混合の調製方法あるいはモノマー成分の組
合せによっては、ポリアミド酸成分の三次元架橋反応が
進み、ゲル化を起こし、無機質導電性物質が含まれたま
まポリアミド酸の高分子ゲルが生成されるものがある。
このような場合、無機質導電性物質が沈降する前にでき
る限りゲル化を完了させることにより、無機質導電性物
質を均一にゲル中に分散させることもできる。しかしな
がら、粘度変化に対応させることが困難である場合が多
いので、無機質導電性物質を含むポリアミド酸の高分子
ゲルを100℃を越えない温度、好ましくは20〜10
0℃の範囲に保つことでゲルの三次元網目構造を切断
し、流動性のある均一な溶液として再溶解してポリアミ
ド酸溶液とした後、このポリアミド酸溶液を超音波等の
分散処理によって、ポリアミド酸溶液中に無機質導電性
物質を均一に分散させることができる。
【0050】次いで、無機質導電性物質が分散したポリ
アミド溶液を塗布等により成形した後、乾燥、脱水・閉
環反応させることにより、無機質導電性物質が均一に分
散したポリイミド成形体からなる導電性複合体とするこ
とができる。このようにゲルを一旦、再溶解して作製さ
れた導電性複合体は、ポリマー中に無機質導電性物質が
均一に分散した成形体となる。
【0051】あるいはポリアミド酸の高分子ゲルを前記
の方法で再溶液化させ、得られたポリアミド酸溶液に無
機質導電性物質を混合分散させ、このポリアミド酸溶液
を用いて塗布等によりフィルム等の成形体を作製するこ
とができる。このような方法においても、脱溶媒過程で
ポリアミド酸成分の三次元架橋によるゲル化が再度起こ
り、無機質導電性物質の均一な分散が達成される。
【0052】導電性複合体の成形体の例には、ポリアミ
ド酸溶液と無機質導電性物質の混合溶液を基材上に流延
等の方法により、一定の厚みを持った混合溶液の塗膜を
形成させ、これを脱溶媒させることで、均一な厚みを持
った無機質導電性物質を含んだポリアミド酸の導電性複
合フィルムなどの成形体が作製される。この手法を用い
て、1μm以下の厚さを有する無機質導電性物質が均一
に分散されているポリアミド酸の薄膜を形成させること
が可能である。
【0053】フィルム等の成形品を得るための脱溶媒の
方法には、例えば、150℃以下の温度、好ましくは1
00℃以下の温度で、常圧又は真空下で処理し、溶媒の
含有率を50重量%以下、好ましくは40重量%以下に
調製した後、基材より剥離させ、さらに乾燥・熱処理す
ることにより脱溶媒してもよい。また、ポリアミド酸溶
液と無機質導電性物質の混合溶液を基材上に流延後、ポ
リアミド酸の貧溶媒を凝固浴とした浴中に基材と共に浸
漬せしめ、混合溶液に含まれる有機溶媒を貧溶媒と置換
させ、固形分の凝固に引き続き、乾燥・熱処理すること
により脱溶媒してフィルム等の成形体を得ることもでき
る。
【0054】この場合、凝固液としては、水、メタノー
ルやエタノール等のアルコール類、アセトン等のような
ケトン類の単独又は混合系が考えられる。少量であれ
ば、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒、
1,2−ジクロロエタンのような塩素系溶媒等を凝固液
の中に含んでも構わないが、ポリアミド酸を溶解あるい
は膨潤させて、成形体の形状を著しく損ねるような凝固
液は使用できない。
【0055】上記のポリアミド酸フィルムの製造方法に
より、電気伝導率が10-7S/cm以上で、表面と裏面
との電気伝導率が10-7S/cm以上で、表面と裏面と
の電気的異方性が50%以内で、引張り強さが2.0K
gf/mm2 以上のポリアミド酸フィルムを得ることが
できる。
【0056】無機質導電性物質を含有したポリアミド酸
の導電性複合体のポリイミド化:無機質導電性物質を含
有したポリアミド酸の導電性複合体中のポリアミド酸成
分を脱水・閉環反応させてイミド化を完結させることに
より、無機質導電性物質を含有したポリイミドの導電性
複合体が作製される。イミド化を完了させる方法として
は、一般のポリイミド樹脂で用いられているイミド化の
方法と同様の方法で行うことができる。
【0057】例えば、高温処理によりイミド化を完結さ
せる場合は、上記の方法で得られたフィルム等の無機質
導電性物質の分散されたポリアミド酸の導電性複合体
を、100℃以上の処理、例えば、100〜200℃の
温度で少なくとも10秒以上乾燥させ、更に高温処理が
可能な場合は、150〜500℃の高温で熱処理させ
る。フィルムの場合、一対の両端を固定枠、チャックあ
るいはピンガイド等で固定させて処理すると、寸法安定
性や機械的特性に優れた導電性複合フィルムが得られや
すい。
【0058】また、無機質導電性物質を含んだポリアミ
ド酸からなる導電性複合体を脱水剤に浸漬あるいはその
導電性複合体中に脱水剤を含ませるような化学的処理に
よりポリアミド酸成分を脱水・閉環反応させる方法があ
る。
【0059】化学的脱水処理による脱水・閉環反応にお
いては、アミン類を触媒として、酸無水物を脱水剤とし
て用いるのが効果的である。酸無水物の例としては、無
水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸などの脂肪族酸無
水物、無水安息香酸などの芳香族酸無水物がある。これ
らは、単独又は二種以上の混合物として用いることがで
きる。
【0060】触媒としてのアミン類の例としては、トリ
メチルアミン、トリエチルアミン、トリエチレンジアミ
ン、トリブチルアミン、ジメチルアニリン、ピリジン、
α−ピコリン、β−ピコリン、γ−ピコリン、イソキノ
リン、ルチジン、等の第3級アミンの中から選ばれる少
なくとも一種のアミン類である。
【0061】化学的脱水反応において添加する酸無水物
の量は、ポリアミド酸に存在するカルボキシル基1当量
に対して1〜5当量、好ましくは1〜3当量である。触
媒の量は、ポリアミド酸に存在するカルボキシル基1当
量に対して0.01〜1.5当量、好ましくは0.2〜
1当量である。
【0062】化学的処理の場合は、触媒としてのアミン
類を含む酸無水物溶液の中に、無機質導電性物質を分散
したポリアミド酸の導電性複合体を0〜80℃で4〜7
2時間浸漬させることによりポリアミド酸成分のイミド
化が達成される。
【0063】本発明の無機質導電性物質を含有したポリ
アミド酸からなる導電性複合体に用いられるポリアミド
酸は、テトラカルボン酸二無水物、芳香族ジアミン及び
多価アミンを主成分とするが、特に無機質導電性物質と
の複合において、ポリアミド酸中の多価アミンの存在が
無機質導電性物質の分散性を高めている。このような現
象は、重合反応後に存在する多価アミンのアミノ基が無
機質導電性物質の活性部分との相互作用が強いことや、
無機質導電性物質が触媒的に働いてポリアミド酸の三次
元架橋反応を促進させる等の効果により、結果的に無機
質導電性物質の微粒子がポリアミド酸成分と良く馴染
み、均一に混合・分散する傾向が強いためと思われる。
【0064】無機質導電性物質が、カーボンブラック、
黒鉛のような微粉状の炭素物質である場合に特にこの分
散効果が顕著である。これは炭素物質の表面に存在する
とされている表面官能基、不対電子、ラジカル等の活性
点に起因するものである。この効果は、多価アミンが含
まれないテトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンの
反応によって得られたポリアミド酸と無機質導電性物質
の混合系では見られず、無機質導電性物質の分散効果に
多価アミンが有効であると言える。
【0065】上記のポリイミドフィルムの製造方法によ
り、電気伝導率が10-7S/cm以上で、表面と裏面と
の電気的異方性が50%以内で、引張り強さが3.0K
gf/mm2 以上のポリイミドフィルムを得ることがで
きる。
【0066】本発明で得られた無機質導電性物質を含有
したポリアミド酸の導電性複合体、及び/又は無機質導
電性物質を含有したポリイミドの導電性複合体において
は、ポリアミド酸あるいはポリイミドの網目構造の中に
無機質導電性物質が均一に混合・分散した系が作り出さ
れ、電気伝導性が高く三次元方向に電気伝導率の異方性
が少なく、且つ機械的特性に優れた導電性複合体を与え
るものである。
【0067】これらは、耐熱性に優れる特徴により、汎
用のプラスチックでは使用が難しいとされている200
℃以上500℃未満の温度雰囲気下で長期的又は短期的
に使用する事が可能であり、電気伝導性を有し機械的特
性に優れた材料としての電極材料,抵抗体,静電材料等
に有用である。
【0068】
【実施例】以下、本発明を実施例により説明する。
【0069】〔実施例1〕300ccの四つ口セパラブル
フラスコ中に、1.513g(0.0140モル)の精
製したパラフェニレンジアミン(略称:PPD)と0.
561g(0.0028モル)の4,4’−ジアミノジ
フェニルエーテル(略称:4,4’−DPE)及び0.
6336g(0.0016モル)の3,3’,4,4’
−テトラアミノビフェニル・四塩酸塩・二水和物(略
称:TABT)を採取し、50gの蒸留されたN−メチ
ル−2−ピロリドン(略称:NMP)を加え、撹拌し溶
解させた。
【0070】窒素雰囲気の下、外部水槽の温度を0℃に
コントロールし、上記溶液を撹拌しながら4.366g
(0.02モル)の精製した無水のピロメリット酸二無
水物(略称:PMDA)を固形のまま、溶液の温度が上
らないように注意しながら徐々に添加し、全て加え終っ
た後、撹拌を続け均一なポリアミド酸溶液を調製した。
このポリアミド酸の溶液粘度は、0℃で50ポイズであ
った。
【0071】このポリアミド酸溶液に黒鉛粉末を加え
ず、さらに撹拌を続けならがポリマー溶液の温度を室温
に戻した。約60分の後、セパラブルフラスコ中でポリ
マー溶液はゲル化を起こし、寒天状のポリアミド酸の高
分子ゲルが形成された。このポリアミド酸ゲルを、熱風
乾燥機中80℃で5時間熱処理を行ったところ、ゲルが
解離しポリアミド酸のポリマー溶液となった。このポリ
マー溶液は、濃度12wt%、対数粘度は1.3dl/
g,回転粘度計によって測定した溶液粘度は80ポイズ
であった。
【0072】このゲルの解離によるポリアミド酸溶液
に、1.768g(固形分の20wt%)のカーボンブ
ラック(キャボット社製、品番:VALCAN XC7
2R)を加え、混合・攪拌し、更に脱泡してカーボンブ
ラック含有ポリアミド酸の混合溶液を調製した。
【0073】この混合溶液を、厚さ250μmのポリエ
ステルフィルム上にコーティング装置を用いて、幅30
0mm、厚さが450μmになるように連続的に塗布し
た後、100℃に温調された乾燥炉内で滞留時間が40
分間になるように連続的に乾燥させた。乾燥したポリア
ミド酸の導電性複合フィルムを基材より連続的に剥離さ
せた。得られた導電性複合フィルムの電気伝導率は表面
が0.2S/cm、裏面が0.4S/cmであり、また
その機械的特性は引張り強さ4.0Kgf/mm2 、弾
性率230Kgf/mm2 、伸度10%であった。
【0074】この導電性複合フィルムを更に、熱処理炉
内で150℃で15分、200℃で15分、300℃で
15分、400℃で15分の滞留時間になるように段階
的且つ連続的に熱処理し、黒鉛粉末を含有したポリイミ
ドの導電性複合フィルムを連続的に作製した。得られた
ポリイミドの導電性複合フィルムの厚さは50μmであ
った。この導電性複合フィルムを短冊状に5mm幅でカ
ットし、導電性複合フィルムの引張り試験をチャック間
距離30mm,引張り速度5mm/分の条件で23℃に
て行った。フィルムの引張り強さは6.0Kgf/mm
2 、引張り弾性率は260Kgf/mm2 、引張り伸度
は4.5%であった。
【0075】この黒鉛粉末含有ポリイミドの導電性複合
フィルムに対して熱機械分析を空気中10℃/分の昇温
速度で引張り加重を加えながら行ったところ、390℃
にガラス転移温度に対応すると思われる熱膨張曲線の変
曲点が観測された。このポリイミドの導電性複合フィル
ムの電気伝導率は表面が0.5S/cm、裏面が0.7
S/cmであり、フィルム表裏で電気伝導率の異方性は
小さかった。本実施例1の配合の条件を下記の表1に及
びその結果を下記の表2に示す。
【0076】〔比較例1〕300ccの四つ口セパラブル
フラスコ中に、1.513g(0.0140モル)の精
製したパラフェニレンジアミン(略称:PPD)と1.
201g(0.006モル)の4,4’−ジアミノジフ
ェニルエーテルを採取し、50gの蒸留されたN−メチ
ル−2−ピロリドン(略称:NMP)を加え撹拌し溶解
させた。
【0077】窒素雰囲気の下、外部水槽の温度を0℃に
コントロールし、上記溶液を撹拌しながら4.366g
(0.02モル)の精製した無水のピロメリット酸二無
水物(略称:PMDA)を固形のまま、溶液の温度が上
らないように注意しながら徐々に添加し、全て加え終っ
た後、撹拌を続け均一なポリアミド酸溶液を調製した。
このポリアミド酸の溶液粘度は、0℃で3,000ポイ
ズであった。
【0078】このポリアミド酸溶液に、4.72g(固
形分の40wt%)の黒鉛粉末(関東化学製、試薬、2
00メッシュ・カット品)を加え、混合・攪拌を行い、
更に脱泡した後、混合溶液をガラス板上に流延した。こ
の混合溶液の塗布量は、スペーサーによりコントロール
し、350μmの厚さになるようにした。これを45℃
で真空乾燥させ、残存溶媒が20重量%以下になったと
ころでこのフィルムをガラス板より剥離した。剥離した
フィルムを更に80℃で5時間真空乾燥させ、黒鉛粉末
を含有したポリアミド酸の導電性複合フィルムを得た。
【0079】得られたポリアミド酸の導電性複合フィル
ムを短冊状に5mm幅でカットし、フィルムの引張り試
験をチャック間距離30mm,引張り速度5mm/分の
条件で23℃にて行った。フィルムの引張り強さは4.
0Kgf/mm2 、引張り弾性率は200Kgf/mm
2 、引張り伸度は20%であった。ポリアミド酸の導電
性複合フィルムの電気伝導率は表面が0.01S/c
m、裏面が0.2S/cmであり、フィルム表裏で電気
伝導率の大きな異方性が認められた。
【0080】このポリアミド酸の導電性複合フィルムを
更に、100℃で1時間、200℃で1時間、300℃
で1時間、400℃で1時間の条件で段階的に処理し、
黒鉛粉末を含有したポリイミドの導電性複合フィルムを
作製した。この導電性複合フィルムの厚さは、50μm
であった。
【0081】得られたポリイミドの導電性複合フィルム
を短冊状に5mm幅でカットし、フィルムの引張り試験
をチャック間距離30mm,引張り速度5mm/分の条
件で23℃にて行った。ポリイミドの導電性複合フィル
ムの引張り強さは4.5Kgf/mm2 、引張り弾性率
は250Kgf/mm2 、引張り伸度は2.5%であっ
た。また、この導電性複合フィルムの熱機械分析を空気
中、10℃/分の昇温速度で引張り加重を加えながら行
ったところ、420℃にガラス転移温度に対応すると思
われる熱膨張曲線の変曲点が観測された。この導電性複
合フィルムの電気伝導率は表面が0.05S/cm、裏
面が0.5S/cmであり、フィルム表裏で電気伝導率
の大きな異方性が認められた。
【0082】本比較例1の配合条件を下記の表1に及び
その結果を下記の表2に示す。
【0083】〔比較例2〕前記比較例1と同様の方法に
より、ポリアミド酸溶液を得た(溶液粘度:0℃で3,
000ポイズ)。このポリアミド酸溶液を熱風乾燥機中
80℃で3時間熱処理を行い、溶液粘度を100ポイズ
に調整した。
【0084】このポリアミド酸溶液に、1.77g(固
形分の20wt%)のカーボンブラック(キャボット社
製、品番:VALCAN XC72R)を加え、混合・
攪拌を行い、更に脱泡し、カーボンブラックを含有した
ポリアミド酸の混合溶液を調製した。この混合溶液を、
前記実施例1と同じ装置、方法を用いてカーボンブラッ
クを含有したポリアミド酸の導電性複合フィルムを連続
的に作製した。得られたポリアミド酸の導電性複合フィ
ルムの引張り強さは3.0Kgf/mm2 、引張り弾性
率は220Kgf/mm2 、引張り伸度は5%であっ
た。
【0085】このポリアミド酸の導電性複合フィルムを
用いて、前記実施例1と同様にして得られたカーボンブ
ラックを含有したポリイミドの導電性複合フィルムの引
張り強さは2.0Kgf/mm2 、引張り弾性率は24
0Kgf/mm2 、引張り伸度は2.0%で脆性的な傾
向であった。
【0086】このポリイミドの導電性複合フィルムの熱
機械分析を空気中、10℃/分の昇温速度で引張り加重
を加えながら行ったところ、370℃にガラス転移温度
に対応すると思われる熱膨張曲線の変曲点が観測され
た。このポリイミドの導電性複合フィルムの電気伝導率
は表面が0.05S/cm、裏面が3.0S/cmであ
り、フィルム表裏で電気伝導率の大きな異方性が認めら
れた。
【0087】本比較例2の配合の条件を下記の表1に及
びその結果を下記の表2に示す。
【0088】〔実施例2〕300ccの四つ口セパラブル
フラスコ中に、1.470g(0.0136モル)の精
製したPPDと0.961g(0.0048モル)の
4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(略称:4,
4’−DPE)及び0.3168g(0.0008モ
ル)のTABTを採取し、100gの蒸留されたNMP
を加え、撹拌し溶解させた。
【0089】窒素雰囲気の下、外部水槽の温度を−10
℃にコントロールし、上記溶液を撹拌しながら4.36
6g(0.02モル)の精製した無水のPMDAを固形
のまま、溶液の温度が上らないように注意しながら徐々
に添加し、全て加え終った後、撹拌を続け均一なポリア
ミド酸溶液を調製した。このポリアミド酸の溶液粘度
は、0℃で5ポイズであった。
【0090】このポリアミド酸溶液に、7.114g
(固形分の50wt%)の薄片状の銀粉(福田金属工業
社製、シルコートAgC−GS)を加え、混合・攪拌し
た。この混合溶液を室温で放置させることにより直ちに
ゲル化を起こし、銀粉が分散されたポリアミド酸のゲル
状の複合物が得られた。
【0091】この銀粉が分散されたポリアミド酸の複合
ゲルを、熱風乾燥機中80℃で7時間熱処理を行ったと
ころ、ゲルが解離し、銀粉が分散されたポリアミド酸の
混合溶液となった。このポリマー溶液よりエバポレータ
ーを用いてNMPをある程度飛散させ、濃度30wt%
とした。混合溶液の粘度は800ポイズであった。
【0092】この混合溶液をガラス板上に流延し、溶液
の塗布量を400μmの厚さになるようにスペーサーで
コントロールし、ガラス板上に混合溶液を引き伸した。
ガラス板上に塗布された混合溶液を45℃の真空乾燥機
に入れ、4時間真空で乾燥させた。この銀粉が分散され
たポリアミド酸の導電性複合フィルムをガラス板より剥
離させ、更に80℃で5時間真空乾燥させ、銀粉が分散
されたポリアミド酸の導電性複合フィルムを得た。この
導電性複合フィルムの電気伝導率は表裏共に250S/
cmであり、機械的特性は、引張り強さ3.0Kgf/
mm2 、引張り弾性率250Kgf/mm2 、引張り伸
度8%であった。
【0093】このポリアミド酸の導電性複合フィルムを
更に、100℃で1時間、200℃で1時間、300℃
で1時間、400℃で1時間の条件で段階的に処理し、
銀粉が分散されたポリイミドの導電性複合フィルムを作
製した。昇温速度は5℃/分を標準とした。得られたポ
リイミドの導電性複合フィルムを短冊状に5mm幅でカ
ットし、フィルムの引張り試験をチャック間距離30m
m,引張り速度5mm/分の条件で23℃にて行った。
ポリイミドの導電性複合フィルムの引張り強さは3.2
Kgf/mm2 、引張り弾性率は330Kgf/m
2 、引張り伸度は3.0%であった。
【0094】ポリイミドの導電性複合フィルムの熱機械
分析を空気中、10℃/分の昇温速度で引張り加重を加
えながら行ったところ、380℃にガラス転移温度に対
応すると思われる熱膨張曲線の変曲点が観測された。ポ
リイミドの導電性複合フィルムの電気伝導率は表裏共に
300S/cmであった。
【0095】本実施例2の配合の条件を下記の表1に及
びその結果を下記の表2に示す。
【0096】〔実施例3〕300ccの四つ口セパラブ
ルフラスコをセットし、窒素雰囲気の下、外部水槽の温
度を−25℃にコントロールした。25gの蒸留された
NMPをフラスコに注ぎ、撹拌しながら4.366g
(0.02モル)の精製した無水のPMDAを徐々に添
加し分散させた。上記溶液を攪拌させながら、0.15
84g(0.0004モル)のTABTを固形で添加
し、更に30分間攪拌を続けた。
【0097】次に、1.643g(0.0152モル)
のPPDと0.801g(0.004モル)の4,4’
−DPEを25gのNMPに室温で溶解させ、この溶液
を滴下ロートに入れ上記セパラブルフラスコにセット
し、フラスコ中のPMDAが分散したNMP溶液の中に
攪拌しながら徐々に滴下した。全て加え終った後、この
反応液を温度−25℃にコントロールしたまま撹拌を続
け均一なポリアミド酸溶液を調製した。
【0098】攪拌を続けながらこのポリアミド酸溶液の
温度を室温に戻した。約30分の後、ボリアミド酸溶液
はゲル化を起こし、寒天状の高分子ゲルが得られた。こ
のポリアミド酸ゲルを、熱風乾燥機中80℃で8時間熱
処理を行ったところ、ゲルが解離しポリアミド酸溶液と
なった。このポリアミド酸溶液は、濃度12wt%、対
数粘度は1.2dl/g,回転粘度計によって測定した
溶液粘度は60ポイズであった。
【0099】このゲルの解離によるポリアミド酸溶液
に、10.45g(固形分の60wt%)の酸化スズ
(触媒化成工業株社製、品番:ELCOM−TL20)
を加え、混合・攪拌を行い、更に脱泡し、酸化スズとポ
リアミド酸溶液からなる混合溶液を調製した。この混合
溶液をガラス板上に流延した。溶液の塗布量は、スペー
サーによりコントロールし、300μmの厚さになるよ
うにした。これを45℃で真空乾燥させ、残存溶媒が1
0重量%以下になったところで、酸化スズを分散してい
るポリアミド酸複合フィルムをガラス板より剥離させ
た。更に80℃で5時間真空乾燥させ、酸化スズを分散
しているポリアミド酸の導電性複合フィルムを得た。
【0100】得られたポリアミド酸の引張り強さは3.
0Kgf/mm2 、引張り弾性率は220Kgf/mm
2 、引張り伸度は5.0%であった。
【0101】このポリアミド酸の導電性複合フィルムを
更に、100℃で1時間、200℃で1時間、300℃
で1時間、400℃で1時間の条件で段階的に処理し、
酸化スズを分散しているポリイミドの導電性複合フィル
ムを作製した。
【0102】得られたポリイミドの導電性複合フィルム
を短冊状に5mm幅でカットし、フィルムの引張り試験
をチャック間距離30mm,引張り速度5mm/分の条
件で23℃にて行った。フィルムの引張強さは3.5K
gf/mm2 、引張り弾性率は250Kgf/mm2
引張り伸度は2.5%であった。複合フィルムの熱機械
分析を引張り加重を加えながら行ったところ、420℃
にガラス転移温度に対応すると思われる熱膨張曲線の変
曲点が観測された。複合フィルムの電気伝導率は8.0
×10-5S/cmであり、フィルム表裏で電気伝導率の
異方性は認められなかった。
【0103】本実施例4の配合の条件を下記の表1に及
びその結果を下記の表2に示す。
【0104】〔実施例4〜7〕300ccの四つ口セパ
ラブルフラスコに、下記の表1に示す種類と量の各種モ
ノマー、溶媒及び無機質導電性物質を仕込み、前記実施
例1〜3と同様なフィルムの作製方法及び熱処理方法で
導電性複合フィルムを調製した。
【0105】これらのフィルムは、下記の表2の結果に
示すように、電気伝導性と機械的特性に優れた複合フィ
ルムであった。
【0106】〔比較例3〕300ccの四つ口セパラブ
ルフラスコに、下記の表1に示す種類と量の各種モノマ
ー及び溶媒を仕込み、無機質導電性物質を複合させない
で前記実施例1と同様な方法でポリイミドフィルムを作
製した。
【0107】このフィルムは、機械的特性には優れてい
るが絶縁性であり、10-7S/cm以上の電気伝導率を示
さなかった。その結果を下記の表2に示す。
【0108】
【表1】 *1 溶媒の種類・・・DMAc:N,N−ジメチルア
セトアミド NMP :N−メチル−2−ピロリドン DMF :N,N−ジメチルホルムアミド *2 炭素繊維:繊維径7μm、平均繊維長100μm
【0109】
【表2】
【0110】
【発明の効果】ポリアミド酸又はポリイミドの三次元網
目構造中に無機質導電性物質が均一に且つ分散性良くポ
リマー中に複合され、耐熱性と機械的特性に同時に優
れ、無機質導電性物質が均一に分布し、成形物の三次元
的な電気伝導率に異方性が少なく、且つ電気伝導率の高
い導電性複合体を得ることができる。

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 (1)テトラカルボン酸二無水物、芳香
    族ジアミン及び多価アミンを主成分とした高分子ゲルの
    架橋結合を切断して粘度が安定したポリアミド酸溶液を
    得、 (2)該ポリアミド酸溶液に対して無機質導電性物質を
    添加混合し、 (3)次いで、該ポリアミド酸溶液に三次元網目構造を
    形成して成形することを特徴とする導電性複合体の製造
    方法。
  2. 【請求項2】 (1)テトラカルボン酸二無水物、芳香
    族ジアミン及び多価アミンを主成分とした高分子ゲル生
    成前のポリアミド酸溶液に対して無機質導電性物質を添
    加混合し、 (2)該ポリアミド酸の高分子ゲルを生成し、 (3)該高分子ゲルの架橋結合を切断して粘度が安定し
    たポリアミド酸溶液を得、 (4)次いで、該ポリアミド酸溶液を成形して三次元網
    目構造を形成することを特徴とする導電性複合体の製造
    方法。
  3. 【請求項3】 前記高分子ゲルの架橋結合の切断は、高
    分子ゲルを100℃以下の温度に保つことにより行うこ
    とを特徴とする請求項1又は2記載の導電性複合体の製
    造方法。
  4. 【請求項4】 前記粘度の安定したポリアミド酸溶液に
    三次元網目構造を形成する手段は、高濃度化させる手段
    又は触媒的な作用を有する化学薬品を添加する手段によ
    って行うことを特徴とする請求項1、2又は3記載の導
    電性複合体の製造方法。
  5. 【請求項5】 前記無機質導電性物質が、炭素物質、金
    属物質、金属酸化物から選ばれた一種又は二種以上の混
    合物質である請求項1、2、3又は4記載の導電性複合
    体の製造方法。
  6. 【請求項6】 請求項1、2、3、4又は5記載の導電
    性複合体の製造方法により無機質導電性物質を含むポリ
    アミド酸成形体を得ることを特徴とする導電性複合体の
    製造方法。
  7. 【請求項7】 前記粘度が安定したポリアミド酸溶液に
    三次元網目構造を形成して成形することにより得られる
    ポリアミド酸成形体に対して、100℃を越える温度で
    脱水閉環させてポリイミド成形体とすることを特徴とす
    る請求項1、2、3、4又は5記載の導電性複合体の製
    造方法。
  8. 【請求項8】 無機質導電性物質が、テトラカルボン酸
    二無水物、芳香族アミン及び多価アミンを主成分とした
    ポリアミド酸の三次元網目構造体中に均一に混合・分散
    されており、電気伝導率が10-7S/cm以上で、表面
    と裏面との電気的異方性が50%以内で、引張り強さが
    2.0Kgf/mm2 以上であることを特徴とする導電
    性複合体。
  9. 【請求項9】 無機質導電性物質が、テトラカルボン酸
    二無水物、芳香族アミン及び多価アミンを主成分とした
    ポリイミドの三次元網目構造体中に均一に混合・分散さ
    れており、電気伝導率が10-7S/cm以上で、表面と
    裏面との電気的異方性が50%以内で、引張り強さが
    3.0Kgf/mm2 以上であることを特徴とする導電
    性複合体。
  10. 【請求項10】 無機質導電性物質が1〜80重量%含
    まれている請求項8又は9記載の導電性複合体。
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