JP4263182B2 - 可溶性末端変性イミドオリゴマーおよびワニス並びにその硬化物 - Google Patents

可溶性末端変性イミドオリゴマーおよびワニス並びにその硬化物 Download PDF

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本発明は、末端変性イミドオリゴマーおよびワニス並びにその硬化物に関し、特に、航空機や宇宙産業用機器をはじめとして易成形性かつ高耐熱性が求められる広い分野で使用可能な部材の材料に関するものである。
芳香族ポリイミドは高分子系で最高レベルの耐熱性を有し、機械特性、電気特性などにも優れていることから、広い分野で素材として用いられている。
一方、芳香族ポリイミドは一般に加工性に乏しく、特に溶融成形や繊維強化複合材料のマトリックス樹脂として用いることは不向きである。このため、末端を熱架橋基で変性したイミドオリゴマーが提案されている。なかでも、末端を4−(2−フェニルエチニル)無水フタル酸で変性したイミドオリゴマーが成形性、耐熱性、力学特性のバランスに優れているとされ、例えば、特許文献1、特許文献2および非特許文献1、非特許文献2において紹介されている。その特許文献1には硬化物の耐熱性および機械的特性が良好で、実用性の高い末端変性イミドオリゴマーおよびその硬化物を提供することを目的とし、2,3,3’4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミン化合物と4−(2−フェニルエチニル)無水フタル酸とを反応させて得られ、対数粘度が0.05〜1である末端変性イミドオリゴマーおよびその硬化物が開示されている。そして、その発明の効果として、実用性の高い新規な末端変性イミドオリゴマーを得ることができること、また、耐熱性や弾性率、引張強度および伸び等の機械的特性が良好な新規な末端変性ポリイミドの硬化物を得ることができると記載されている。
しかし、そのこれらの末端変性イミドオリゴマーは、N−メチル−2−ピロリドン(以下NMPと略称する。)などの有機溶媒に室温(本明細書で室温とは23℃±2℃を意味する。)で20重量%以下しか溶解せず、またこのワニスを保存しておくとしばしば数日後にゲル化する現象が見られ、高濃度のワニスを長期間安定に保存しておくことは難しいという問題を持っている。また、溶解性を上げるための手段の一つとして屈曲性の大きい構造を導入する方法が挙げられるが、この場合、一般的に硬化物の耐熱性が低くなる。
特開2000−219741号公報 特表2003−526704号公報 P. M. Hergenrother and J. G. Smith Jr.,Polymer, 35, 4857 (1994). R. Yokota, S. Yamamoto, S. Yano, T.Sawaguchi, M. Hasegawa, H. Yamaguchi, H. Ozawa and R. Sato, High Perform. Polym., 13, S61 (2001).
本発明は、有機溶媒に対する溶解性、溶液保存安定性および低溶融粘度等の成形性に優れ、硬化物の耐熱性および弾性率、引張強度および伸び等の機械的特性の高い新規な末端変性イミドオリゴマーおよびワニス並びにその硬化物を提供することを目的とする。
上記課題を解決する本発明の末端変性イミドオリゴマーは、下記一般式(1)で表され、有機溶媒N−メチルー2−ピロリドンに対して室温で固形分濃度30wt%以上溶解可能であることを特徴とするものである。
Figure 0004263182
(式中、R、R2、は芳香族ジアミン残基を表し、Rは下記一般式(2)で示される芳香族ジアミン残基である。m=Rの場合はm≧0、R=Rの場合はm≧1でありnはn>0であり、且つmとnとは1<m+n≦20および0<m/(m+n)≦1の関係を満たし、繰り返し単位の配列はブロック的、ランダム的のいずれであってもよい。)
Figure 0004263182
又、本発明は、式(1)で表される末端変性イミドオリゴマーを含むワニスを提供する。
又、本発明は、式(1)で表される末端変性イミドオリゴマーまたはそのワニスを加熱硬化して得られる硬化物を提供する。
本発明により、有機溶媒に対する溶解性、溶液保存安定性および低溶融粘度等の成形性に優れ、硬化物の耐熱性および弾性率、引張強度および伸び等の機械的特性の高い新規な末端変性イミドオリゴマーおよびワニス並びにその硬化物を得ることができる。
本発明の一般式(1)で表される末端変性イミドオリゴマーは、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸類と9,9−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)フルオレンを含む芳香族ジアミン化合物と4−(2−フェニルエチニル)無水フタル酸(以下、PEPAと略記することもある)とを、各酸基の当量の合計と各アミノ基の当量とが概略等量となるようにして、好適には溶媒中で反応させて得られるイミドオリゴマーであって、そのイミドオリゴマーの末端(好適には両末端)に4−(2−フェニルエチニル)無水フタル酸に基づくアセチレン性の付加重合可能な不飽和末端基およびイミドオリゴマーの主鎖にイミド結合を有し、しかも、一般式中(1)中、mおよびnは、R=Rの場合はm≧0、R=Rの場合はm≧1で、n0、1m+n≦20および0m/(m+n)≦1の関係を満たし、より好ましくは0.25≦m/(m+n)≦1、さらに好ましくは0.5≦m/(m+n)≦1の関係を満たす整数であって比較的低分子量である常温(23℃)で固体(粉末状)の末端変性イミドオリゴマーである。さらに、NMPなどの有機溶媒に室温で固形分30重量%以上溶解可能な末端変性イミドオリゴマーが好ましい。さらに、硬化後のガラス転移温度(Tg)が300℃以上である末端変性イミドオリゴマーが好ましい。さらに、硬化後のフィルムの引張破断伸びが8%以上である末端変性イミドオリゴマーが好ましい。
前記の2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸類とは、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(a−BPDA)、あるいは2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸のエステルまたは塩などの酸誘導体であり、特に、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物が最適である。
本発明においては、前記の2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸類の一部(好ましくは50モル%以下、特に好ましくは25モル%以下)が、他の芳香族テトラカルボン酸類、例えば3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s−BPDA)、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−カルボキシフェニル)エーテル二無水物などで置換されていても良い。
9,9−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)フルオレンとともに用いる前記の芳香族ジアミン化合物としては、1,4−ジアミノベンゼン、1,3−ジアミノベンゼン、1,2−ジアミノベンゼン、2,6−ジエチル−1,3−ジアミノベンゼン、4,6−ジエチル−2−メチル−1,3−ジアミノベンゼン、3,5−ジエチルトルエン−2,6−ジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(4,4’−ODA)、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル(3,4’−ODA)、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ビス(2,6−ジエチル−4−アミノフェニル)メタン、4,4’−メチレン−ビス(2,6−ジエチルアニリン)、ビス(2−エチル−6−メチル−4−アミノフェニル)メタン、4,4’−メチレン−ビス(2−エチル−6−メチルアニリン)、2,2−ビス(3−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、ベンジジン、3,3’−ジメチルベンジジン、2,2−ビス(4−アミノフェノキシ)プロパン、2,2−ビス(3−アミノフェノキシ)プロパン、2,2−ビス[4’−(4’’−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレンなどを挙げることができ、それらを単独、あるいは2種以上を併用することができる。特に、芳香族ジアミン化合物として、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテルあるいは1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼンが好適である。
本発明においては、末端変性(エンドキャップ)用の不飽和酸二無水物として4−(2−フェニルエチニル)無水フタル酸を使用する。前記の4−(2−フェニルエチニル)無水フタル酸は、酸類の合計量に対して5−200モル%、特に5−150モル%の範囲内の割合で使用することが好ましい。
前記の溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチルカプロラクタム、γ−ブチロラクトン(GBL)、シクロヘキサノンなどが挙げられる。これらの溶媒は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの溶媒の選択に関しては可溶性ポリイミドについての公知技術を適用することができる。
以下、製造法の例について説明する。
本発明の末端変性イミドオリゴマーは、例えば、前記の2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸類(特に、この酸二無水物)と、9,9−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)フルオレンを含む芳香族ジアミン化合物と、4−(2−フェニルエチニル)無水フタル酸とが、全成分の酸無水基(または隣接するジカルボン酸基)の全量とアミノ基の全量とがほぼ等量になるように使用して、各成分を、前述の溶媒中で、約100℃以下、特に80℃以下の反応温度で重合させて、「アミド−酸結合を有するオリゴマー」を生成し、次いで、そのアミド酸オリゴマー(アミック酸オリゴマーともいう)を、約0〜140℃の低温でイミド化剤を添加する方法によるか、あるいは140〜275℃の高温に加熱する方法によるかして、脱水・環化させて、末端に4−(2−フェニルエチニル)無水フタル酸残基を有するイミドオリゴマーを得ることができる。
本発明の末端変性イミドオリゴマーの特に好ましい製法としては、例えば9,9−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)フルオレンを含む芳香族ジアミン化合物を前述の溶媒中に均一に溶解後、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を溶液中に加えて均一に溶解後約5〜60℃の反応温度で1〜180分程度攪拌し、この反応溶液に、4−(2−フェニルエチニル)無水フタル酸を加えて均一に溶解後約5〜60℃の反応温度で1〜180分程度攪拌しながら反応させて前記の末端変性アミド酸オリゴマーを生成した後、その反応液を140〜275℃で5分〜24時間攪拌して前記のアミド酸オリゴマーをイミド化反応させて末端変性イミドオリゴマーを生成させ、必要ならば、反応液を室温付近まで冷却する方法を挙げることができる。前記の反応において、全反応工程あるいは一部の反応工程を窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性のガスの雰囲気あるいは真空中で行うことが好適である。
前述のようにして生成した末端変性イミドオリゴマーは、必要があれば反応液を水中等に注ぎ込んで、粉末状の生成物として単離して、粉末状として、あるいは必要なときにその粉末生成物を溶媒に溶解して使用してもよく、また、反応液を、そのままか、あるいは適宜濃縮または希釈するかして、末端変性イミドオリゴマーの溶液組成物(ワニス)として使用してもよい。なお、本発明の末端変性オリゴマーは、分子量の異なるものを混合したものでもよい。また、本発明の末端変性イミドオリゴマーは、他の可溶性ポリイミドと混合してもよい。
本発明の末端変性イミドオリゴマーの硬化物は、例えば、前記の末端変性イミドオリゴマーのワニスを支持体に塗布し、280〜500℃で5〜200分間加熱硬化してフィルムとすることができる。また、末端変性イミドオリゴマーの粉体を金型などの型内に充填し、10〜280℃で1〜1000kg/cm2で1秒〜100分程度の圧縮成形によって予備成形体を形成し、この予備成形体を280〜500℃で10分〜40時間程度加熱して、硬化物を得ることができる。
以下に本発明を説明するためにいくつかの実施例を示すが、これによって本発明を限定するものではない。また、各特性の測定条件は、次のとおりとした。
試験方法
(1)核磁気共鳴スペクトル分析(1H−NMR):日本電子製JNM−AL300型を
用いて共鳴周波数300MHzで測定した。測定溶媒は、重水素化溶媒である重水素化ジメチルスルホキシドDMSO−d6を用いた。
(2)赤外分光分析(IR):日本分光製FT/IR610型を用いて、KBr錠剤法により測定した。
(3)熱重量分析:セイコーインスツルメンツ製TGA−6300型熱重量分析装置(TGA)を用い、アルゴン気流下、10℃/min.の昇温速度により測定した。
(4)ガラス転移温度:セイコーインスツルメンツ製DSC−6200型示差走査熱量計(DSC)を用い、アルゴン気流下、10℃/min.の昇温速度により測定した。
(5)レオロジー測定:TAインスツルメンツ製AR2000型レオメーターを用い、25mmパラレルプレートで4℃/min.の昇温速度により測定した。
(6)引張試験:オリエンテック社製TENSILON/UTM−II−20を用い、室温にて、引張速度5mm/minで行った。試験片形状は、長さ20mm、幅3mm、厚さ80−90μmのフィルムとした。
(実施例1)
温度計、攪拌子、窒素導入管を備えた3つ口の100mLフラスコに、9,9−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)フルオレン1.332g(2.5mmol)、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル1.502g(7.5mmol)とN−メチル−2−ピロリドン12.5mLを加え、溶解後、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物2.354g(8mmol)を入れ、窒素気流下、室温で2時間重合反応させアミド酸オリゴマーを生成した。この反応溶液に4−(2−フェニルエチニル)無水フタル酸0.993g(4mmol)を入れ、窒素気流下、室温で18時間反応させ末端変性し、続けて175℃で5時間攪拌しイミド結合させた。得られた末端変性イミドオリゴマーは、前記一般式(1)において、R及びRがジフェニルエーテル基で表され、平均としてm=1.25、n=2.75のランダム共重合体である。冷却後、反応液を200mLのイオン交換水に投入し、析出した粉末を濾別した。80mLのメタノールで30分洗浄し、濾別して得られた粉末を60℃で1日間減圧乾燥し、生成物を得た。
収量:5.668g(97%)。
1H−NMR(300MHz,DMSO−d6):δ8.23、8.12、8.01、8.00、7.91、7.62、7.47、7.21、7.10、6.96
IR(KBr,cm-1):3447、2212、1777、1720、1615、1500、1376、1293、1239、1170、1115、1089、1014、943、879、825、739、690
上記で得られた末端変性イミドオリゴマーの未硬化物は、NMP溶媒に室温で40%以上可溶であり、室温保管では1〜2ヶ月後にゲル化が見られたものの、冷凍保管では2ヵ月後もゲル化はみられなかった。硬化前の最低溶融粘度は500ポイズ(340℃)であった。この末端変性イミドオリゴマーをホットプレスを用いて370℃で1時間加熱して得られたフィルム状の硬化物(厚さ89μm)は、Tgが332℃(DSC)、TGAによる5%重量減少温度は560℃であった。また、このフィルム形状の硬化物の引張試験による力学的性質は、弾性率が2.64GPa、破断強度が112MPa、破断伸びが11.6%であった。
(実施例2)
温度計、攪拌子、窒素導入管を備えた3つ口の100mLフラスコに、9,9−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)フルオレン1.775g(3.33mmol)、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル1.335g(6.67mmol)とN−メチル−2−ピロリドン13.0mLを加え、溶解後、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物2.354g(8mmol)を入れ、窒素気流下、室温で2時間重合反応させアミド酸オリゴマーを生成した。この反応溶液に4−(2−フェニルエチニル)無水フタル酸0.993g(4mmol)を入れ、窒素気流下、室温で18時間反応させ末端変性し、続けて175℃で5時間攪拌しイミド結合させた。得られた末端変性イミドオリゴマーは、前記一般式(1)において、R及びRがジフェニルエーテル基で表され、平均としてm=1.67、n=2.33のランダム共重合体である。冷却後、反応液を200mLのイオン交換水に投入し、析出した粉末を濾別した。80mLのメタノールで30分洗浄し、濾別して得られた粉末を60℃で1日間減圧乾燥し、生成物を得た。
収量:5.963g(98%)。
1H−NMR(300MHz,DMSO−d6):δ8.22、8.12、8.08、8.02、8.00、7.62、7.46、7.41、7.21、7.10、6.96
IR(KBr,cm-1):3448、2212、1777、1720、1615、1500、1377、1294、1239、1170、1115、1089、1014、943、878、825、740、689
上記で得られた末端変性イミドオリゴマーの未硬化物は、NMP溶媒に室温で40%以上可溶であり、室温保管、冷凍保管ともに2ヵ月後もゲル化はみられなかった。硬化前の最低溶融粘度は670ポイズ(346℃)であった。この末端変性イミドオリゴマーをホットプレスを用いて370℃で1時間加熱して得られたフィルム状の硬化物(厚さ80μm)は、Tgが329℃(DSC)、TGAによる5%重量減少温度は557℃であった。また、このフィルム形状の硬化物の引張試験による力学的性質は、弾性率が2.64GPa、破断強度が111MPa、破断伸びが10.7%であった。
(実施例3)
温度計、攪拌子、窒素導入管を備えた3つ口の100mLフラスコに、9,9−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)フルオレン2.663g(5mmol)、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル1.001g(5mmol)とN−メチル−2−ピロリドン14.2mLを加え、溶解後、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物2.354g(8mmol)、を入れ、窒素気流下、室温で2時間重合反応させアミド酸オリゴマーを生成した。この反応溶液に4−(2−フェニルエチニル)無水フタル酸0.993g(4mmol)を入れ、窒素気流下、室温で18時間反応させ末端変性し、続けて175℃で5時間攪拌しイミド結合させた。得られた末端変性イミドオリゴマーは、前記一般式(1)において、R及びRがジフェニルエーテル基で表され、平均としてm=2.5、n=1.5のランダム共重合体である。冷却後、反応液を200mLのイオン交換水に投入し、析出した粉末を濾別した。80mLのメタノールで30分洗浄し、濾別して得られた粉末を60℃で1日間減圧乾燥し、生成物を得た。
収量:6.531g(98%)。
1H−NMR(300MHz,DMSO−d6):δ8.23、8.11、8.09、8.01、7.91、7.46、7.41、7.34、7.21、7.10、6.96
IR(KBr,cm-1):3446、2212、1777、1720、1615、1499、1376、1293、1239、1170、1115、1089、1014、943、878、825、740、690
上記で得られた末端変性イミドオリゴマーの未硬化物は、NMP溶媒に室温で40%以上可溶であり、室温保管、冷凍保管ともに2ヵ月後もゲル化はみられなかった。硬化前の最低溶融粘度は1200ポイズ(339℃)であった。この末端変性イミドオリゴマーをホットプレスを用いて370℃で1時間加熱して得られたフィルム状の硬化物(厚さ89μm)は、Tgが325℃(DSC)、TGAによる5%重量減少温度は557℃であった。また、このフィルム形状の硬化物の引張試験による力学的性質は、弾性率が2.47GPa、破断強度が105MPa、破断伸びが10.6%であった。
(比較例1)
温度計、攪拌子、窒素導入管を備えた3つ口の100mLフラスコに、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル2.002g(10mmol)とN−メチル−2−ピロリドン12mLを加え、溶解後、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物2.354g(8mmol)を加えて窒素気流下、室温で2時間重合反応させアミド酸オリゴマーを生成した。この反応溶液に4−(2−フェニルエチニル)無水フタル酸0.993g(4mmol)を入れ、窒素気流下、室温で18時間反応させ末端変性し、続けて175℃で5時間攪拌しイミド結合させた。冷却後、反応液を120mLのイオン交換水に投入し、析出した粉末を濾別した。60mLのメタノールで30分洗浄し、濾別して得られた粉末を60℃で1日間減圧乾燥し、生成物を得た。
収量:4.834g(97%)
1H−NMR(300MHz,DMSO−d6):δ8.25、8.14、8.02、7.93、7.63、7.48、7.22
IR(KBr,cm-1):3448、2212、1778、1722、1616、1502、1425、1377、1290、1240、1169、1115、1088、1016、943、879、827、793、749、690
上記で得られた末端変性イミドオリゴマーの未硬化物は、NMP溶媒に室温で20%程度可溶であるが、室温保管では1日後にゲル化が見られた。硬化前の最低溶融粘度は860ポイズ(344℃)であった。この末端変性イミドオリゴマーをホットプレスを用いて370℃で1時間加熱して得られたフィルム状の硬化物(厚さ86μm)は、Tgが337℃(DSC)、TGAによる5%重量減少温度は574℃であった。また、このフィルム形状の硬化物の引張試験による力学的性質は、弾性率が2.55GPa、破断強度が118MPa、破断伸びが15.5%であった。
(比較例2)
温度計、攪拌子、窒素導入管を備えた3つ口の100mLフラスコに、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル0.400g(2mmol)、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン2.339g(8mmol)、とN−メチル−2−ピロリドン12mLを加え、溶解後、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物2.354g(8mmol)を加えて窒素気流下、室温で2時間重合反応させアミド酸オリゴマーを生成した。この反応溶液に4−(2−フェニルエチニル)無水フタル酸0.993g(4mmol)を入れ、窒素気流下、室温で18時間反応させ末端変性し、続けて175℃で5時間攪拌しイミド結合させた。冷却後、反応液を120mLのイオン交換水に投入し、析出した粉末を濾別した。60mLのメタノールで30分洗浄し、濾別して得られた粉末を60℃で1日間減圧乾燥し、生成物を得た。
収量:5.560g(97%)
1H−NMR(300MHz,DMSO−d6):δ8.24、8.13、8.04、8.01、8.00、7.92、7.63、7.62、7.50、7.49、7.47、7.22、7.21
IR(KBr,cm-1):3447、2212、1776、1718、1615、1500、1375、1238、1166、1114、1085、1013、942、878、823、738、688
上記で得られた末端変性イミドオリゴマーの未硬化物は、NMP溶媒に室温で20%、50℃で40%以上可溶であった。この末端変性イミドオリゴマーをホットプレスを用いて370℃で1時間加熱して得られた硬化物は、Tgが290℃(DSC)、TGAによる5%重量減少温度は537℃であった。
(比較例3)
温度計、攪拌子、窒素導入管を備えた3つ口の100mLフラスコに、9,9−ビス(4−ジアミノフェニル)フルオレン3.484g(10mmol)とN−メチル−2−ピロリドン14.2mLを加え、溶解後、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物2.354g(8mmol)、を入れ、窒素気流下、室温で2時間攪拌した。この反応溶液に4−(2−フェニルエチニル)無水フタル酸0.993g(4mmol)を入れ、窒素気流下、室温で18時間、続けて175℃で5時間攪拌した。冷却後、反応液を150mLのイオン交換水に投入し、析出した粉末を濾別した。60mLのメタノールで30分洗浄し、濾別して得られた粉末を60℃で1日間減圧乾燥し、生成物を得た。
収量:6.419g(99%)
1H−NMR(300MHz,DMSO−d6):δ8.19、8.06、7.98、7.96、7.61、7.56、7.47、7.44、7.38、7.37、7.35、7.33、7.30
IR(KBr,cm-1):3448、2212、1778、1722、1616、1504、1373、1240、1169、1117、1090、1020、943、879、821、738、690
上記で得られた末端変性イミドオリゴマーの未硬化物は、NMP溶媒に室温で40%以上可溶であり、室温保管、冷凍保管ともに2ヵ月後もゲル化はみられなかった。また硬化前の状態は粉状形態であって、加熱しても粘性はみられなかった。この末端変性イミドオリゴマーをホットプレスを用いて370℃で1時間加熱して得られた硬化物はフィルム状にはならずに粉末を押し固めた状態であり、この硬化物のTgは376℃(DSC)、TGAによる5%重量減少温度は566℃であった。
本発明は、有機溶媒に対する溶解性、溶液保存安定性および低溶融粘度等の成形性に優れ、フィルム化も容易であり、硬化物の耐熱性および弾性率、引張強度および伸び等の機械的特性の高い新規な末端変性イミドオリゴマーおよびワニス並びにその硬化物であり、航空機や宇宙産業用機器をはじめとして易成形性かつ高耐熱性が求められる広い分野で利用可能な材料である。

Claims (6)

  1. 下記一般式(1)で表され、有機溶媒N−メチルー2−ピロリドンに対して室温で固形分濃度30wt%以上溶解可能である末端変性イミドオリゴマー。
    Figure 0004263182
    (式中、R、R2、は芳香族ジアミン残基を表し、Rは下記一般式(2)で示される芳香族ジアミン残基である。m=Rの場合はm≧0、R=Rの場合はm≧1でありnはn>0であり、且つmとnとは1<m+n≦20および0<m/(m+n)≦1の関係を満たし、繰り返し単位の配列はブロック的、ランダム的のいずれであってもよい。)
    Figure 0004263182
  2. 請求項1に記載の末端変性イミドオリゴマーを有機溶媒に溶解してなるワニス。
  3. 請求項1に記載の末端変性イミドオリゴマーを加熱硬化して得られる硬化物。
  4. 請求項2に記載のワニスを加熱硬化して得られる硬化物。
  5. ガラス転移温度(Tg)が300℃以上である請求項3又は4に記載の硬化物。
  6. フィルム形状での引張破断伸びが8%以上である請求項3又は4に記載の硬化物。
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