JP2020164730A - イミドプリプレグ、複合材料および耐熱性絶縁部品 - Google Patents

イミドプリプレグ、複合材料および耐熱性絶縁部品 Download PDF

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Abstract

【課題】電気絶縁性および耐熱性に優れた複合材料を提供する。【解決手段】本発明の一態様に係る複合材料は、下記一般式(1)で表されるイミドオリゴマーと、ガラス繊維と、を含んでいるイミドプリプレグを硬化させてなる、複合材料であって;(i)体積抵抗率が、1.0×1015Ω・cm以上、および/または、(ii)厚みが2.5mmであるときの絶縁破壊強さが、10kV/mm以上、を満たしている。【化1】【選択図】なし

Description

本発明は、イミドプリプレグ、複合材料および耐熱性絶縁部品に関する。
従来、炭素繊維で強化したポリイミド系複合材料が知られている(例えば、特許文献1を参照)。また、エポキシ樹脂や、ポリイミド樹脂の一種であるマレイミド樹脂を、絶縁材料であるガラス繊維に含浸させた複合材料を開示する文献も存在する(例えば、特許文献2を参照)。
国際公開第2010/027020号パンフレット 特開昭62−140840号公報
しかしながら、上述の特許文献1のような従来技術は、炭素繊維は電気伝導度が高いため、電気絶縁性に改良の余地があった。また、特許文献2の技術では、耐熱性の観点から改善の余地があった。
本発明の一態様は、電気絶縁性および耐熱性に優れた複合材料を提供することを目的とする。
一般的に、耐熱性の高いポリイミド樹脂のワニスは、粘度が高い傾向にある。このため、ポリイミド樹脂をガラス繊維に含浸させることは困難であった。具体的には、耐熱性の高いポリイミド樹脂のワニスを、ガラス繊維に含浸させるのに適した粘度となるまで溶剤で稀釈すると、ワニスの固形分濃度が期待されるよりも低くなってしまう。また、このように稀釈したワニスを含浸させた後の脱溶剤工程では、製品にボイド(空隙)などの不具合が生じやすくなる。
これに関して、本発明者らは、特定のイミドオリゴマーを用いることにより、(i)ワニスの粘度を低く制御でき、ガラス繊維へ含浸させ得ること、(ii)脱溶剤工程でボイドなどの不具合が抑制されること、(iii)得られた複合材料が耐熱性および電気絶縁性に優れること、という新規知見を見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は以下を包含する。
<1>
下記一般式(1)で表されるイミドオリゴマーおよび有機溶媒を含んでいるワニスであって、25℃における粘度が0.5〜50Pa・secであるワニスが含浸している状態のガラス繊維を乾燥させてなる、イミドプリプレグ。
Figure 2020164730
(一般式(1)中、RおよびRは、互いに同一または互いに異なっていてもよい、2価の芳香族ジアミン残基を表し、
およびRは、互いに同一または互いに異なっていてもよい、4価の芳香族テトラカルボン酸残基を表し、
およびRは、いずれか一方が水素原子であり、他方がフェニル基であり、
mおよびnは、1≦m、0≦n、1≦m+n≦20および0.05≦m/(m+n)≦1の関係を満たし、
繰り返し単位の配列は、ブロック、ランダムのいずれであってもよい)。
<2>
上記ガラス繊維にはサイジング剤が付着している、<1>に記載のイミドプリプレグ。
<3>
樹脂含有率が10〜60重量%である、<1>または<2>に記載のイミドプリプレグ。
<4>
<1>〜<3>のいずれか1つに記載のイミドプリプレグを硬化させてなる、複合材料。
<5>
下記(i)および/または(ii)を満たす、<4>に記載の複合材料:
(i)体積抵抗率が、1.0×1015Ω・cm以上
(ii)厚みが2.5mmであるときの絶縁破壊強さが、10kV/mm以上。
<6>
下記一般式(1)で表されるイミドオリゴマーと、ガラス繊維と、を含んでいるイミドプリプレグを硬化させてなる、複合材料であって、
下記(i)および/または(ii)を満たす、複合材料:
(i)体積抵抗率が、1.0×1015Ω・cm以上
(ii)厚みが2.5mmであるときの絶縁破壊強さが、10kV/mm以上。
Figure 2020164730
(一般式(1)中、RおよびRは、互いに同一または互いに異なっていてもよい、2価の芳香族ジアミン残基を表し、
およびRは、互いに同一または互いに異なっていてもよい、4価の芳香族テトラカルボン酸残基を表し、
およびRは、いずれか一方が水素原子であり、他方がフェニル基であり、
mおよびnは、1≦m、0≦n、1≦m+n≦20および0.05≦m/(m+n)≦1の関係を満たし、
繰り返し単位の配列は、ブロック、ランダムのいずれであってもよい)。
<7>
ガラス転移温度が300℃以上であり、かつ、下記(i)および/または(ii)を満たす、<4>〜<6>のいずれか1つに記載の複合材料:
(i)220℃に14日間静置した場合の重量減少率が、0.3%以下
(ii)240℃に14日間静置した場合の重量減少率が、0.5%以下。
<8>
厚みが0.5mm以上である、<4>〜<7>のいずれか1つに記載の複合材料。
<9>
<4>〜<8>のいずれか1つに記載の複合材料を含んでいる、耐熱性絶縁部品。
本発明の一態様によれば、電気絶縁性および耐熱性に優れた複合材料が提供される。
本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A〜B」は、「A以上、B以下」を意味する。
〔1.イミドオリゴマー〕
本発明の一実施形態に係るワニスは、下記一般式(1)で表されるイミドオリゴマーを含んでいる。
Figure 2020164730
一般式(1)中、RおよびRは、互いに同一または互いに異なっていてもよい、2価の芳香族ジアミン残基を表す。RおよびRは、互いに同一または互いに異なっていてもよい、4価の芳香族テトラカルボン酸残基を表す。RおよびRは、いずれか一方が水素原子であり、他方がフェニル基である。mおよびnは、1≦m、0≦n、1≦m+n≦20および0.05≦m/(m+n)≦1の関係を満たす。繰り返し単位の配列は、ブロック、ランダムのいずれであってもよい。
一般式(1)で表されるイミドオリゴマーの特徴の一つは、RおよびRが結合している2価の芳香族ジアミン残基において、RおよびRのいずれか一方が水素原子であり、他方がフェニル基であることにある。このような化学構造の結果、イミドオリゴマーが、非対称かつ非平面な構造を有することになる。この構造的な特徴を有することにより、イミドオリゴマーの可撓性および可溶性が高くなる。その結果、後述するワニスに応用する場合に、イミドオリゴマーの重合度(分子量)やワニスの固形分濃度の制限を受けることなく、ガラス繊維に含浸させるために好適な粘度を有するワニスを調製できる。
およびRで表される「2価の芳香族ジアミン残基」とは、芳香族ジアミンが有する2つのアミノ基の間に存在する芳香族有機基を指す。また、RおよびRで表される「4価の芳香族テトラカルボン酸残基」とは、芳香族テトラカルボン酸が有する4つのカルボニル基の間に存在する芳香族有機基を指す。ここで、芳香族有機基とは、芳香環を有する有機基である。芳香族有機基は、炭素数4〜30の有機基であることが好ましく、炭素数4〜18の有機基であることがより好ましく、炭素数4〜12の有機基であることがさらに好ましい。また、芳香族有機基は、(i)炭素数6〜30であり、炭素および水素を含む基であることが好ましく、(ii)炭素数6〜18であり、炭素および水素を含む基であることがより好ましく、(iii)炭素数6〜12であり、炭素と水素とを含む基であることがさらに好ましい。RおよびRで表される2価の芳香族ジアミン残基は、互いに同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。また、RおよびRで表される2価の芳香族ジアミン残基は、繰り返し単位ごとに異なる芳香族ジアミン残基であってもよい。
およびRで表される2価の芳香族ジアミン残基は、2−フェニル−4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)フルオレン、1,3−ジアミノベンゼン、4−フェノキシ−1,3−ジアミノベンゼンからなる群より選択される1種類以上であることがより好ましい。
一般式(1)で表されるイミドオリゴマーは、例えば、2−フェニル−4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを用いたイミドオリゴマーであって、以下の方法で合成されていることがより好ましい。すなわち、一般式(1)で表されるイミドオリゴマーは、
(i)1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸類(特に、その酸二無水物)、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸類(特に、その酸二無水物)、およびビス(3,4−カルボキシフェニル)エーテル類(特に、その酸二無水物)からなる群より選ばれる、1種類以上のテトラカルボン酸類と、
(ii)2−フェニル−4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを含む芳香族ジアミン類と、
(iii)イミドオリゴマーに不飽和末端基を導入するための、4−(2−フェニルエチニル)無水フタル酸(以下、「PEPA」と略記する場合がある)と、
を、ジカルボン酸基の全量と1級アミノ基の全量とがほぼ等しい量となるように仕込み、有機溶媒の存在下(または非存在下)で反応させる方法で合成されていることがより好ましい。
なお、ジカルボン酸基が複数隣接している場合は、「カルボキシル基の数÷2」を「ジカルボン酸基の数」とする。例えば、「COOH−COOH−COOH−COOH」という構造中には、2個のジカルボン酸基が含まれているとする。
このように合成されたイミドオリゴマーにおいて、RおよびRは、それぞれ独立に、上記1種類以上の芳香族テトラカルボン酸類に由来する4価の芳香族テトラカルボン酸残基から選択され、互いに同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。また、1<mおよび1<nの場合(mおよびnは整数)には、各繰り返し単位のR(またはR)は、互いに同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。さらに、1<mの場合には、Rがフェニル基であってRが水素原子である繰り返し単位と、Rが水素原子であってRがフェニル基である繰り返し単位との、一方または両方が任意に含まれていてもよい。
一般式(1)中、mおよびnは、1≦m、0≦n、1≦m+n≦20および0.05≦m/(m+n)≦1の関係を満たす。一実施形態においては、1≦m≦5であってもよく、0<n≦5であってもよく、1<m+n≦10であってもよく、0.5≦m/(m+n)<1であってもよい。また、4≦m+nであることがより好ましく、5≦m+nであることがさらに好ましい。mおよびnが上記関係を満たす場合には、上記イミドオリゴマーは、溶液状態での保存安定性にさらに優れる。また、mおよびnが上記関係を満たす場合には、上記イミドオリゴマーを硬化して得られるポリイミドは、耐熱性および機械的強度にさらに優れる。
本明細書において「繰り返し単位の配列はブロック、ランダムのいずれであってもよい」とは、繰り返し単位の部分がブロック重合体であってもよく、ランダム重合体であってもよいことを意図する。
より好ましくは、上記イミドオリゴマーは、主鎖にイミド結合を有するイミドオリゴマーであって、(i)末端(より好ましくは両末端)に4−(2−フェニルエチニル)無水フタル酸に由来する付加重合可能な不飽和末端基を有しており、(ii)1≦m+n≦20の関係を満たし、(iii)常温(例えば、23℃)で固体(より好ましくは粒子状または粉末状)である。
上記1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸類の例としては、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物(PMDA)、および1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸の酸誘導体(エステル、塩など)が挙げられる。これらの中で、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物がより好ましい。なお、RおよびRが1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸類である場合には、一般式(1)のイミドオリゴマーは、下記一般式(1−2)で表わされる。一般式(1−2)中、R、R、R、R、mおよびnの定義は、一般式(1)における定義と同じである。
Figure 2020164730
上記3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸類の例としては、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s−BPDA)、および3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸の酸誘導体(エステル、塩など)が挙げられる。これらの中で、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物がより好ましい。なお、RおよびRが3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸類である場合には、一般式(1)のイミドオリゴマーは、下記一般式(1−3)で表わされる。一般式(1−3)中、R、R、R、R、mおよびnの定義は、一般式(1)における定義と同じである。
Figure 2020164730
上記ビス(3,4−カルボキシフェニル)エーテル類の例としては、ビス(3,4−カルボキシフェニル)エーテル、ビス(3,4−カルボキシフェニル)エーテル二無水物(s−ODPA)、およびビス(3,4−カルボキシフェニル)エーテルの酸誘導体(エステル、塩など)が挙げられる。これらの中で、ビス(3,4−カルボキシフェニル)エーテル二無水物がより好ましい。なお、RおよびRがビス(3,4−カルボキシフェニル)エーテル類である場合には、一般式(1)のイミドオリゴマーは、下記一般式(1−4)で表わされる。一般式(1−4)中、R、R、R、R、mおよびnの定義は、一般式(1)における定義と同じである。
本発明の一実施形態において、Rおよび/またはRは、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸類、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸類、およびビス(3,4−カルボキシフェニル)エーテル類以外の芳香族テトラカルボン酸類に由来する構造を有していてもよい。つまり、上記イミドオリゴマーを、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸類、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸類、およびビス(3,4−カルボキシフェニル)エーテル類以外の、他の芳香族テトラカルボン酸類を原料に加えて(モノマーとして用いて)合成してもよい。このような他の芳香族テトラカルボン酸類としては、例えば、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(a−BPDA)、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(i−BPDA)、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−カルボキシフェニル)エーテル二無水物、1,2,3,4−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物などが挙げられる。他の芳香族テトラカルボン酸類は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
また、上記イミドオリゴマーを、2−フェニル−4,4’−ジアミノジフェニルエーテル以外の、他の芳香族ジアミン化合物を原料に加えて(モノマーとして用いて)合成してもよい。このような他の芳香族ジアミン化合物としては、例えば、1,4−ジアミノベンゼン、1,3−ジアミノベンゼン、1,2−ジアミノベンゼン、2,6−ジエチル−1,3−ジアミノベンゼン、4,6−ジエチル−2−メチル−1,3−ジアミノベンゼン、3,5−ジエチルトルエン−2,6−ジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(4,4’−ODA)、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル(3,4’−ODA)、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ビス(2,6−ジエチル−4−アミノフェニル)メタン、4,4’−メチレン−ビス(2,6−ジエチルアニリン)、ビス(2−エチル−6−メチル−4−アミノフェニル)メタン、4,4’−メチレン−ビス(2−エチル−6−メチルアニリン)、2,2−ビス(3−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、ベンジジン、3,3’−ジメチルベンジジン、2,2−ビス(4−アミノフェノキシ)プロパン、2,2−ビス(3−アミノフェノキシ)プロパン、2,2−ビス[4’−(4''−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)フルオレンなどが挙げられる。上述した中では、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)フルオレン、および1,3−ジアミノベンゼンが、他の芳香族ジアミン化合物としてより好ましい。他の芳香族ジアミン化合物は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
特に、機械的強度が求められる用途においては、上記イミドオリゴマーの合成において、(i)2−フェニル−4,4’−ジアミノジフェニルエーテルと、(ii)他の芳香族ジアミン化合物と、を併用することが好ましい。この場合には、他の芳香族ジアミン化合物の使用量は、芳香族ジアミン化合物の合計量を100モル%として、好ましくは0を超えて50モル%以下であり、より好ましくは0を超えて25モル%以下であり、さらに好ましくは0を超えて10モル%以下である。このときに用いる他の芳香族ジアミン化合物としては、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)フルオレン、および1,3−ジアミノベンゼンから選択される1種類以上が好ましい。
同様に、機械的強度が求められる用途においては、一般式(1)中、0.50≦m/(m+n)<1であることが好ましく、0.75≦m/(m+n)<1であることがより好ましく、0.90≦m/(m+n)<1であることがさらに好ましく、0.90≦m/(m+n)≦0.95であることがより一層好ましい。
このようなイミドオリゴマーは、高い溶解性を有する上に、機械的特性も高くなる。
末端変性(エンドキャップ)用の不飽和酸無水物としては、4−(2−フェニルエチニル)無水フタル酸を使用することが好ましい。上記イミドオリゴマーを合成するときには、4−(2−フェニルエチニル)無水フタル酸を、芳香族テトラカルボン酸類の合計量を100モル%として、5〜200モル%の範囲で用いることが好ましく、5〜150モル%の範囲内の割合で用いることがより好ましい。
〔2.イミドオリゴマーの製造方法〕
上記イミドオリゴマーは、例えば、以下の方法で合成することができる。
1.(i)3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸類(特に、この酸二無水物)、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸類(特に、この酸二無水物)、およびビス(3,4−カルボキシフェニル)エーテル類(特に、この二無水物)からなる群より選ばれる、1種類以上の芳香族テトラカルボン酸類と、(ii)2−フェニル−4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを含む芳香族ジアミン類と、(iii)4−(2−フェニルエチニル)無水フタル酸と、を、ジカルボン酸基の全量と1級アミノ基の全量とがほぼ等しい量となるように準備する。
2.上記各成分を、有機溶媒中で、約100℃以下(好ましくは約80℃以下)の反応温度で重合させることにより、アミド酸オリゴマーを合成する。
3.上記アミド酸オリゴマーを、脱水および環化させる。例えば、上記アミド酸オリゴマーに、約0〜140℃の低温にて、イミド化剤を添加する。或いは、約140〜275℃の高温に加熱する。このようにして、末端に4−(2−フェニルエチニル)無水フタル酸残基を有するイミドオリゴマーが得られる。
上記イミドオリゴマーのより好ましい合成方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。
1.2−フェニル−4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを含む芳香族ジアミン類を、有機溶媒中に均一に溶解させる。
2.得られた溶液に、芳香族テトラカルボン酸二無水物を加えて均一に溶解させる。この芳香族テトラカルボン酸二無水物は、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、およびビス(3,4−カルボキシフェニル)エーテル二無水物から選択される1種類以上である。
3.得られた溶液を、約5〜60℃の反応温度にて、1〜180分間程度攪拌しながら反応させる。
4.得られた反応液に、4−(2−フェニルエチニル)無水フタル酸を加えて、均一に溶解させる。
5.得られた溶液を、約5〜60℃の反応温度にて、1〜180分間程度攪拌しながら反応させる。このようにして、アミド酸オリゴマーを合成する。
6.得られた反応液を、約140〜275℃にて5分間〜24時間程度攪拌して、アミド酸オリゴマーにイミド化反応を起こさせる。反応後、必要に応じて、反応液を室温付近まで冷却する。これにより、上記イミドオリゴマーを合成する。
好ましくは、上記合成における全てまたは一部の工程を、不活性ガス雰囲気下(窒素ガス、アルゴンガスなどの雰囲気下)または減圧下で行う。
上記合成で用いる有機溶媒としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン(NMP、沸点:202℃)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc、沸点:165℃)、N,N−ジエチルアセトアミド(沸点:185℃)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF、沸点:153℃)、N−メチルカプロラクタム(減圧下(25mmHg)における沸点:120℃)、γ−ブチロラクトン(GBL、沸点:204℃)、シクロヘキサノン(沸点:156℃)などが挙げられる。これら有機溶媒は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。これら有機溶媒は、可溶性ポリイミドに関する公知技術を適用して、適宜選択することができる。
〔3.ワニス〕
本発明の一実施形態に係るワニスは、上記一般式(1)で表されるイミドオリゴマーと、有機溶媒と、を含んでいる。一実施形態において、ワニスは、上記イミドオリゴマーを有機溶媒に溶解させたものである。この有機溶媒としては、上述したイミドオリゴマーの製造方法において用いられる有機溶媒を用いることができる。他の実施形態において、ワニスは、上述したイミドオリゴマーの製造方法において得られる反応液である。必要に応じて、反応液を濃縮または稀釈してワニスとしてもよい。
上述した通り、一般式(1)で表されるイミドオリゴマーの特徴の一つは、RおよびRが結合している2価の芳香族ジアミン残基において、RおよびRのいずれか一方が水素原子であり、他方がフェニル基であることにある。このような化学構造の結果、イミドオリゴマーが、非対称かつ非平面な構造を有することになる。この構造的な特徴を有することにより、イミドオリゴマーの可撓性および可溶性が高くなる。その結果、後述するワニスに応用する場合に、イミドオリゴマーの重合度(分子量)やワニスの固形分濃度の制限を受けることなく、ガラス繊維に含浸させるために好適な粘度を有するワニスを調製できる。
上記ワニスの粘度は、25℃において、0.5Pa・sec以上であり、好ましくは1.0Pa・sec以上であり、より好ましくは2.0Pa・sec以上である。あるいは、上記ワニスの粘度は、25℃において、0.8Pa・sec以上、1.3Pa・sec以上、1.5Pa・sec以上、または1.8Pa・sec以上であってもよい。また、上記ワニスの粘度は、25℃において、50Pa・sec以下であり、好ましくは30Pa・sec以下であり、より好ましくは20Pa・sec以下である。
粘度が上記の範囲であるならば、上記ワニスをガラス繊維に含浸させやすくなる。その結果、イミドオリゴマーの物性(電気絶縁性、耐熱性など)が充分に反映された複合材料が得られる。本発明では、複合材料に含まれる繊維としてガラス繊維を採用するので、ワニスの粘度の選択は重要である。炭素繊維にワニスを含浸させる場合は、粘度が少々高いワニスであっても、高温・高圧にすることによって繊維にワニスを含浸させることができる。しかし、ガラス繊維は高温・高圧にすると、変性してしまう。それゆえ、ワニスの粘度を上記の範囲とすることが重要となる。
ワニスの粘度を調節する方法としては、イミドオリゴマーの重合度(分子量)を調節する方法、ワニスの固形分濃度を調節する方法などが挙げられる。具体的には、イミドオリゴマーの重合度を高くしたり、ワニスの固形分濃度を高くしたりすれば、粘度が上がる傾向にある。逆に、イミドオリゴマーの重合度を低くしたり、ワニスの固形分濃度を低くしたりすれば、粘度が下がる傾向にある。
ただし、イミドオリゴマーの重合度を低くすると、複合材料とした場合の機械物性が劣る傾向にある。また、ワニスの固形分濃度を低くすると、イミドプリプレグおよび複合材料を製造する際に、ボイド(空隙)が発生して製品の機械物性が劣ったり、多量の溶剤を回収するために製造効率が悪化したりする傾向がある。そのため、ワニスに使用するイミドオリゴマーの可撓性および可溶性が高いことが重要である。
上記ワニスに用いる有機溶媒としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン(NMP、沸点:202℃)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc、沸点:165℃)、N,N−ジエチルアセトアミド(沸点:185℃)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF、沸点:153℃)、N−メチルカプロラクタム(減圧下(25mmHg)での沸点:120℃)、γ−ブチロラクトン(GBL、沸点:204℃)、シクロヘキサノン(沸点:156℃)などが挙げられる。
上記のイミドオリゴマーワニスは、加水分解の恐れがほとんどない。そのため、粘度低下などを起こすことなく、アミド酸オリゴマーワニスと比べて長期間安定に保存できる。ワニスを長期間保存する場合は、ゲル化を防ぐために、良溶媒であるアミド系溶媒を溶媒とすることが好ましく、N−メチル−2−ピロリドンを溶媒とすることがより好ましい。
〔4.イミドプリプレグ〕
本発明の一実施形態に係るイミドプリプレグは、上記のワニスが含浸している状態のガラス繊維を乾燥させてなる。このようなイミドプリプレグは、例えば、以下のようにして作製できる。
1.適度に濃度を調節した、イミドオリゴマーを含有するワニスを、ガラス繊維(平面状に一方向に引き揃えた繊維、繊維織物など)に含浸させる。
2.乾燥機を用いて、20〜180℃にて1分〜20時間乾燥させる。
上記イミドプリプレグの樹脂含有率は、10〜60重量%が好ましく、20〜50重量%がより好ましく、30〜50重量%がさらに好ましい。ここで、樹脂含有率とは、「イミドオリゴマーの重量/(イミドオリゴマーの重量+ガラス繊維の重量)」を意図する。つまり、樹脂含有率においては、ワニスに含まれている有機溶媒の量は無視されている。
また、イミドプリプレグに含まれる有機溶媒は、イミドプリプレグ全体の重量を100重量%として、1〜30重量%であることが好ましく、5〜25重量%であることがより好ましく、5〜20重量%であることがさらに好ましい。有機溶媒の含有率が上記の範囲であれば、イミドプリプレグの積層時の取り扱いが簡便となる。また、有機溶媒の含有率が上記の範囲であれば、高温下の複合材料の成形過程において樹脂の流出を阻止できるので、優れた機械強度を発現する複合材料を作製することができる。
上記イミドプリプレグに含まれているガラス繊維は、特に限定されない。ガラス繊維の例としては、Eガラス(電気絶縁性)、Cガラス(耐酸性)、Sガラス(高強度)、Dガラス(低誘電率)、Tガラス(高強度・高耐熱)、NEガラス(低誘電率・低誘電正接)などが挙げられる。また、上記イミドプリプレグに含まれているガラス繊維の形態も、特に限定されない。ガラス繊維の形態の例としては、UD(一方向)、連続した繊維形状(平織り、朱子織などの織り、編みなど)が挙げられる。さらに、ガラス繊維にワニスを含浸させる前に、当該ガラス繊維の繊維束を開繊してもよい。
一実施形態において、上記イミドプリプレグの作製に用いられるガラス繊維は、サイジング剤が付着した状態である。すなわち、本発明の一実施形態に係るイミドプリプレグ(および複合材料)は、ガラス繊維のサイジング剤を含んでいてもよい。このようなイミドプリプレグの製造方法は、ガラス繊維からサイジング剤を除去する必要がなく、工数が低減できるので好ましい。サイジング剤の例としては、シランカップリング剤(ビニルシラン、アクリルシラン、アミノシランなど)が挙げられる。
上記ガラス繊維のサイジング剤含有率は、ガラス繊維の重量を100重量%として、0.1〜3.0重量%が好ましく、0.2〜2.0重量%がより好ましい。
なお、ガラス繊維に用いられるサイジング剤は、通常、エポキシ樹脂との複合化を前提とするサイジング剤である。このようなエポキシ樹脂用のサイジング剤は、エポキシ樹脂以外の樹脂と複合化する場合、除去されるのが一般的である。特に、ポリイミドと繊維とを複合化して耐熱性を得る場合には、サイジング剤を除去しないと所望の耐熱性が得られないというのが当業者の常識であった。しかし本発明者らは、本発明の一実施形態に係るワニスによれば、エポキシ樹脂用のサイジング剤を除去しなくても所望の物性(耐熱性など)を有する複合材料が得られることを見出したのである。
〔5.複合材料〕
本発明の一実施形態に係る複合材料は、上記イミドプリプレグ(上記ワニスをガラス繊維に含浸させたイミドプリプレグ)を硬化させてなる。本発明の他の実施形態に係る複合材料は、一般式(1)で表されるイミドオリゴマーと、ガラス繊維とを含んでいるイミドプリプレグを硬化させてなる。つまり、本発明の一態様に係る複合材料の材料となるイミドプリプレグは、(i)25℃における粘度が0.5〜50Pa・secであるワニスをガラス繊維に含浸させてなるイミドプリプレグであってもよいし、(ii)ワニスの粘度が上記範囲を満たさなくとも、イミドオリゴマーおよびガラス繊維を含んでいるイミドプリプレグであってもよい。
上記複合材料の体積抵抗率は、1.0×1015Ω・cm以上が好ましく、1.5×1015Ω・cm以上がより好ましく、2.0×1015Ω・cm以上がさらに好ましい(上限値は、例えば1.0×1018Ω・cm以下とすることができる)。また、上記複合材料の、厚みが2.5mmであるときの絶縁破壊強さは、10kV/mm以上が好ましく、15kV/mm以上がより好ましく、20kV/mm以上がさらに好ましい(上限値は、例えば50kV/mm以下とすることができる)。体積抵抗率および/または絶縁破壊強さが上記の範囲にあるならば、上記複合材料に充分な絶縁性があると言える。体積抵抗率および絶縁破壊強さの測定方法は、実施例に記載の通りである。
本発明の一実施形態に係る複合材料は、例えば、以下のようにして製造することができる。これらの工程の一部または全部を、真空中または不活性ガス中で行ってもよいし、大気中で行ってもよい。
1.イミドプリプレグを準備する。このイミドプリプレグは、1枚でもよいし、2枚以上を積層してもよい。
2.オートクレーブまたは(真空)ホットプレスなどを用いて、イミドプリプレグを加熱硬化させる。加熱硬化の条件は、例えば、温度:250〜500℃、圧力:0.1〜100MPa、時間:10分間〜40時間とすることができる。
なお、イミドオリゴマーを加熱硬化させた樹脂は、非常に複雑な構造を取る。したがって明確性を担保するために、本明細書では、複合材料中の樹脂を化学構造で規定するのではなく、「一般式(1)に記載のイミドオリゴマーを硬化させてなる」との表現を採用する。
上記複合材料を、220℃に14日間静置した場合の重量減少率は、0.3%以下が好ましく、0.2%以下がより好ましく、0.1%以下がさらに好ましい(下限値は、0%以上とすることができる)。また、上記複合材料を、240℃に14日間静置した場合の重量減少率は、0.5%以下が好ましく、0.3%以下がより好ましく、0.1%以下がさらに好ましい(下限値は、0%以上とすることができる)。さらに、上記複合材料のガラス転移温度は、300℃以上が好ましく、325℃以上がより好ましく、350℃以上がさらに好ましい(上限値は、例えば500℃以下とすることができる)。重量減少率およびガラス転移温度が上記の範囲にあるならば、上記複合材料に充分な耐熱性があると言える。重量減少率およびガラス転移温度の測定方法は、実施例に記載の通りである。
上記複合材料の厚みは、0.5mm以上が好ましく、1.0mm以上が好ましく、1.5以上がさらに好ましく、2.0mm以上が最も好ましい(上限値は、例えば100mm以下とすることができる)。厚みが上記の範囲にあるならば、上記複合材料を強度の必要な部材(電気ハウジング部材、機械ハウジング部材、建築外装材料、車両外装材料、航空機外装材料、宇宙機外装材料など)として好適に利用できる。本発明の一実施形態に係るワニスはガラス繊維によく含浸し、本発明の一実施形態に係るイミドプリプレグは加熱硬化させた際に溶媒が残存しにくい。そのため、上記ワニスおよびイミドプリプレグは、厚みのある複合材料の材料として好適である。なお、複合材料の厚みとは、ガラス繊維の積層方向(または平面状ガラス繊維の厚さ方向)の長さのことを言う。
上記複合材料は、ガラス繊維のサイジング剤を含んでいてもよい。この場合のサイジング剤含有率は、ガラス繊維の重量を100重量%として、0.1〜3.0重量%が好ましく、0.2〜2.0重量%がより好ましい。
上記複合材料の引張強度は、200MPa以上が好ましく、300MPa以上がより好ましく、400MPa以上がさらに好ましい(上限は、例えば1000MPa以下とすることができる)。引張強度が上記の範囲にあるならば、上記複合材料に充分な機械強度があると言える。
上記複合材料と異種材料との間に、イミドプリプレグ(本発明の一実施形態に係るイミドプリプレグであってもよいし、他のイミドプリプレグであってもよい)を挿入した後、加熱溶融して一体化させることによって、複合材料構造体を得てもよい。異種材料は特に限定されず、この分野で常用されるものをいずれも使用できる。異種材料の例としては、金属材料(例えば、ハニカム形状のもの)、コア材料(例えば、スポンジ形状のもの)などが挙げられる。
上記複合材料は、電気絶縁性および耐熱性に優れている。また、上記複合材料はガラス繊維を用いているので、炭素繊維を用いた複合材料よりも原料コストを低減できる。さらに、上記複合材料を金属部材の代替として用いることができ、部材の軽量化にも貢献する。
〔6.用途〕
上記複合材料は、広汎な産業分野に応用できる。特に、上記複合材料は、電気絶縁性および耐熱性が良好であるため、耐熱性が要求される絶縁部品(耐熱性絶縁部品)に好適に用いられる。ここで、「耐熱性絶縁部品」とは、例えば、200℃以上(好ましくは220℃以上、より好ましくは240℃以上)の環境に置かれる可能性がある絶縁部品のことを指す。このような耐熱性絶縁部品の例としては、電気自動車、鉄道車両のモーター関連部材;SiCなどの大電流半導体の関連部材;大電流蓄電池の関連部材;風力発電機など各種発電ユニットの関連部材;高圧変圧器・ACコンバーターなどの各種変電ユニットの関連部材;電動ヘリコプター、電動マルチコプター、電動航空機の関連部材などが挙げられる。
その他にも、上記複合材料は、建築外装材料、車両外装材料などに利用できる。
上記各項目で記載した内容は、他の項目においても適宜援用できる。本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。したがって、異なる実施形態にそれぞれ開示されている技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても、本発明の技術的範囲に含まれる。
本明細書中に記載された学術文献および特許文献のすべてが、本明細書中において参考文献として援用される。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は下記実施例のみに限定されるものではない。
〔試験方法〕
(1)ガラス転移温度(Tg)
(複合材料)
板状の複合材料の中央部分を切削して、試験片を作製した。測定には、TAインスツルメンツ製DMA−Q−800型動的粘弾性測定(DMA)装置を用いた。測定条件は、片持ち梁方式、歪み:0.1%、周波数:1Hz、昇温速度:5℃/分とした。貯蔵弾性率曲線が低下する前後における2つの接線の交点を、複合材料のガラス転移温度とした。
(ポリイミド樹脂)
測定には、TAインスツルメンス社製Q100(DSC)装置を用いた。測定は1st runおよび2nd runの2回おこなった。1st runの測定条件は、40〜285℃(昇温速度:20℃/分)→285℃で5分間保持とした。2nd runの測定条件は、40〜500℃(昇温速度:10℃/分)とした。2nd runのヒートフロー(W/g)曲線が低下する前後における2つの接線の交点を、ガラス転移温度とした。
(2)イミドオリゴマーの最低溶融粘度
測定には、TAインスツルメンツ製DISCOVERY HR−2型レオメーターを用いた。測定条件は、25mmパラレルプレートを使用し、昇温速度:5℃/分とした。なお、「最低溶融粘度」とは、上記の条件にて測定したときの、溶融粘度の最低値を指す。
(3)ワニスの粘度
測定には、東機産業株式会社製E型粘度計RE−80Uを用いた。測定条件は、ローターの傾斜角度:3度、ローターの種類:R14、回転数:50rpmであり、5分後の値を読み取った。
(4)ワニスの固形分濃度
0.1〜0.2gのワニスを金属製容器に量り取り、計量した。その後、250℃に加温したオーブン内にてワニスを30分間静置して、溶剤を除去した。残った固体の重量を測定し、以下の式に基づいて固形分濃度を計算した。
固形分濃度(重量%)=(溶剤除去後の重量/溶剤除去前の重量)×100。
(5)イミド化率
イミドオリゴマーの粉末を、重水素化N,N−ジメチルホルムアミドに溶解させた。この溶解液について、プロトン核磁気共鳴分光装置(型式:AV−400M、(株)Bruker社製、H−NMR)を用いて、30℃におけるピーク面積を測定した。(i)化学シフトが7〜9ppmの芳香族H由来のピーク面積、および(ii)化学シフトが11ppm付近の残存アミド由来のピーク面積、からイミド化率を算出した。
(6)揮発分含有率、繊維体積含有率(Vf)、および樹脂含有率
作製したプリプレグの重量を測定した後、280℃のオーブンに1時間静置して揮発分を除去した。その後、再度プリプレグの重量を測定して、下記式にて揮発分含有率を求めた。
揮発分含有率(重量%)={1−(揮発分除去後の重量/揮発分除去前の重量)}×100。
また、作製したプリプレグをN−メチル−2−ピロリドンで洗浄して樹脂成分を除去した後、乾燥させた。乾燥物の重量から、下記式にて繊維体積含有率(Vf)を求めた。
繊維体積含有率(体積%)={(ガラス成分の重量/ガラス比重)/(樹脂成分の重量/樹脂比重)+(ガラス成分の重量/ガラス比重)}×100
式中、樹脂成分の重量は、揮発分除去後の重量から、ガラス成分の重量を減算して求めた。また、ポリイミド樹脂の比重:1.3、Eガラスの比重:2.55とした。
樹脂含有率は、下記式に基づいて求めた。
樹脂含有率(重量%)=(樹脂成分の重量)/(樹脂成分の重量+ガラス成分の重量)×100。
(7)体積抵抗率
測定は、JIS C 2139に準拠した。測定装置として、ハイレジスタンスメータ4339B(アジレント・テクノロジー(株)製)を使用した。試験片のサイズは、縦:110mm×横:110mm×厚み:1.6〜2.5mmであった。試験室の環境は、23℃±1℃、50%RH±5%RHであった。測定温度は、23℃とした。具体的な試験条件は、以下の通りである。
印加電圧:DC500V×1分間
電極:主電極径=50mm、環状電極内径=70mm、対電極径=85mm、材質=銀ペースト
測定サンプル数:n=2(平均値を体積抵抗率とした)。
(8)絶縁破壊強さ
測定は、JIS C 2110−1に準拠した。測定装置として、絶縁破壊試験装置YST 243100RHO(ヤマヨ試験器(有)製)を使用した。試験片のサイズは、縦:110mm×横:110mm×厚み:1.6〜2.5mmであった。試験室の環境は、23℃±2℃、50%RH±5%RHとした。測定温度は、23℃とした。試験条件は、以下の通りであった。
昇圧方式:短時間法(交流、50.1Hz)
周囲媒質:シリコーン液
試験電極:φ25mm円柱/φ25mm円柱
昇圧速度:3kV/s
測定サンプル数:n=5(平均値を絶縁破壊強さとした)。
(9)重量減少率
作製した積層体を20mm×50mmの大きさに切り出して試験片とし、重量を測定した。この試験片を、220℃または240℃のオーブン内に所定の時間静置した後、再度重量を測定した。この測定値から、下記式で重量減少率を求めた。なお、測定サンプル数はn=3〜5であり、平均値を重量減少率とした。
重量減少率(重量%)={1−(試験後の重量/試験前の重量)}×100。
〔製造例〕
温度計、攪拌子、窒素導入管を備えた3つ口の2000mLセパラブルフラスコに、2−フェニル−4,4’−ジアミノジフェニルエーテル248.52g(0.90mol)、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン34.84g(0.10mol)およびN−メチル−2−ピロリドン700mLを加え、溶解させた。その後、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物174.50g(0.8mol)を、3分割して投入した。さらに、N−メチル−2−ピロリドン300mLを加え、窒素気流下にて、室温から45℃まで徐々に昇温させた。重合反応は合計で4時間であった。この反応により、アミド酸オリゴマーを合成した。
得られた反応液に、4−(2−フェニルエチニル)無水フタル酸99.29g(0.4mol)を加え、窒素気流下、45℃にて1.5時間反応させた。これにより、アミド酸オリゴマーの末端を変性させた。次に、200℃にて5時間攪拌して、アミド酸オリゴマーをイミド化させた。最後に、反応系を冷却して反応を終了させた。
このようにして得られた反応液の一部を、実施例1におけるワニスとして使用した。ワニスの固形分濃度は35重量%であり、25℃における粘度は2.7Pa・sであった。
また、上記の反応液100gを720gのメタノールに投入し、析出した粉末を濾別した。得られた粉末を、480gのメタノールで30分間洗浄した(5回繰り返した)。濾別して得られた粉末を120℃で1日間減圧乾燥し、イミドオリゴマーの粉末を得た。
硬化前のイミドオリゴマーのガラス転移温度は225℃であり、最低溶融粘度は520Pa・s(340℃)であり、イミド化率は99.3%であった。
得られたイミドオリゴマーは、上記一般式(1−2)で表されるものであった。この場合、RおよびRは、一方が水素原子であり、他方がフェニル基である。Rは、2−フェニル−4,4’−ジアミノジフェニルエーテル残基または9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン残基である。Rは、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン残基である。平均として、m=3.6、n=0.4であった。ここで得られた粉末の一部を、比較例1で使用した。
〔実施例1〕
製造例で作製したイミド樹脂のワニス約100g〜200gを、30cm×30cmのガラス平織材(商品名:プリント配線基板用7628、日東紡績株式会社製)に充分含浸させた。このガラス繊維平織材の目付は209g/mであり、脱サイジング処理を施さずに使用した。ガラス繊維平織材を構成するガラス繊維のフィラメント径は4〜8μmであり、シランカップリング剤で処理されていた。ワニスを含浸させたガラス繊維平織材を、乾燥機中、100℃にて、10分間乾燥させた。このようにして、イミドプリプレグを得た。得られたイミドプリプレグの、樹脂含有割合は約35重量%であり、溶媒含有量は約13重量%であった。
50cm×50cmのステンレス板上に、剥離フィルムとしてポリイミドフィルムを載置し、その上に作製したプリプレグを14枚積層した。その上にさらにポリイミドフィルムとステンレス板を載置し、ホットプレス上、真空条件下、昇温速度:5℃/分にて、260℃まで加熱した。260℃にて2時間加熱後、1.3MPa、昇温速度:3℃/分にて370℃まで昇温した。その後、370℃にて1時間加熱および加圧した。その結果、大きなボイドのない良好な積層板が得られた(外観および超音波探傷試験の結果から判断した)。
得られた複合材料の、厚みは2.5mmであり、ガラス転移温度は369℃であり、繊維体積含有率(Vf)は49体積%であり、樹脂含有率は35重量%であった。また、この複合材料の、体積抵抗率は2.8×1015Ω・cmであり、絶縁破壊強さは26.4kV/mmであった。
〔比較例1〕
粉末状のイミドオリゴマーを、ホットプレスを用いて370℃で1時間加熱して、板状硬化物を得た。得られた板状硬化物の、厚みは2.0mmであり、ガラス転移温度は372℃であり、体積抵抗率は、3.1×1017Ω・cm、絶縁破壊強さは、22.2kV/mmであった。
ここで、絶縁破壊強さは、以下の式により定義される。
絶縁破壊強さ(kV/mm)=絶縁破壊電圧(kV)/サンプル厚み(mm)。
絶縁破壊電圧(kV)は厚みに依存することが知られており、厚みが厚いほど値は高くなる。そのため、絶縁性の指標は、絶縁破壊電圧をサンプルの厚みで割った値である、絶縁破壊強さ(kV/mm)で表現することが一般的である。ここで、同一の素材をサンプルとした場合、厚みを増したサンプルで絶縁破壊強さを測定すると、理論的には同じ値となるはずであるが、実際には値が低下することが知られている。具体的には、比較例1の硬化物の厚みは2.0mmであるが、これを実施例1と同じ2.5mmの厚みとした場合、単位厚さ当たりの絶縁破壊強さは、22.2kV/mmよりも低くなると考えられる。
一般的には、樹脂とガラス繊維との複合材料の絶縁破壊強さは、樹脂とガラス繊維との界面接着不良などにより、その樹脂単独の値よりも劣る場合があることが知られている。これに対し、本発明の一実施形態に係る複合材料は、ガラス繊維と複合化させた場合にも、イミドオリゴマー単独の成形体よりも絶縁破壊強さに優れている(実施例1および比較例1を参照)。本発明におけるこのような知見は、従来知られていないものであると同時に、先行技術文献に記載の公知事柄からは容易に想到できないものである。
〔比較例2〕
ガラスとポリイミド樹脂(マレイミド樹脂)との複合材料として、日立化成(株)製、MCL−I−671を使用した。この複合材料の、厚みは1.6mmであり、ガラス転移温度は230〜245℃(DMA、カタログ値)であり、繊維体積含有率(Vf)は約50体積%であり、樹脂含有率は約35重量%であった。また、この複合材料の、体積抵抗率は1×1015〜1×1016Ω・cm(カタログ値)であった。
〔比較例3〕
ガラスとポリイミド樹脂(マレイミド樹脂)との複合材料として、利昌工業(株)製、CS−3666Zを使用した。この複合材料の、厚みは1.6mmであり、ガラス転移温度は300℃以上(DMA、カタログ値)であり、繊維体積含有率(Vf)は約50体積%であり、樹脂含有率は約35重量%であった。また、この複合材料の、体積抵抗率は4×1015Ω・cm(カタログ値)であった。
〔比較例4〕
ガラスとエポキシ樹脂との複合材料として、菱電化成(株)製、PGE−6635(G10)を使用した。この複合材料の、厚みは2.5mmであり、ガラス転移温度は160℃(カタログ値)であり、繊維体積含有率(Vf)は約50体積%であり、樹脂含有率は約35重量%であった。この複合材料の絶縁破壊強さは、20〜30kV/mm(カタログ値)であった。
〔比較例5〕
ガラスとエポキシとの複合材料として、菱電化成(株)製、PGE−6674(G11)を使用した。この複合材料の、厚みは2.5mmであり、ガラス転移温度は180℃(カタログ値)であり、繊維体積含有率(Vf)は約50体積%であり、樹脂含有率は約35重量%であった。この複合材料の絶縁破壊強さは、20〜28kV/mm(カタログ値)であった。
〔結果〕
測定結果を表1に示す。
Figure 2020164730
表1から判るように、本発明の一実施形態に係る複合材料は、他の複合材料と比較して、良好な電気絶縁性および耐熱性を示した。
本発明は、例えば、電気絶縁性が求められる広汎な産業分野に利用することができる。

Claims (9)

  1. 下記一般式(1)で表されるイミドオリゴマーおよび有機溶媒を含んでいるワニスであって、25℃における粘度が0.5〜50Pa・secであるワニスが含浸している状態のガラス繊維を乾燥させてなる、イミドプリプレグ。
    Figure 2020164730
    (一般式(1)中、
    およびRは、互いに同一または互いに異なっていてもよい、2価の芳香族ジアミン残基を表し、
    およびRは、互いに同一または互いに異なっていてもよい、4価の芳香族テトラカルボン酸残基を表し、
    およびRは、いずれか一方が水素原子であり、他方がフェニル基であり、
    mおよびnは、1≦m、0≦n、1≦m+n≦20および0.05≦m/(m+n)≦1の関係を満たし、
    繰り返し単位の配列は、ブロック、ランダムのいずれであってもよい)
  2. 上記ガラス繊維にはサイジング剤が付着している、請求項1に記載のイミドプリプレグ。
  3. 樹脂含有率が10〜60重量%である、請求項1または2に記載のイミドプリプレグ。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載のイミドプリプレグを硬化させてなる、複合材料。
  5. 下記(i)および/または(ii)を満たす、請求項4に記載の複合材料。
    (i)体積抵抗率が、1.0×1015Ω・cm以上
    (ii)厚みが2.5mmであるときの絶縁破壊強さが、10kV/mm以上
  6. 下記一般式(1)で表されるイミドオリゴマーと、ガラス繊維と、を含んでいるイミドプリプレグを硬化させてなる、複合材料であって、
    下記(i)および/または(ii)を満たす、複合材料。
    (i)体積抵抗率が、1.0×1015Ω・cm以上
    (ii)厚みが2.5mmであるときの絶縁破壊強さが、10kV/mm以上
    Figure 2020164730
    (一般式(1)中、
    およびRは、互いに同一または互いに異なっていてもよい、2価の芳香族ジアミン残基を表し、
    およびRは、互いに同一または互いに異なっていてもよい、4価の芳香族テトラカルボン酸残基を表し、
    およびRは、いずれか一方が水素原子であり、他方がフェニル基であり、
    mおよびnは、1≦m、0≦n、1≦m+n≦20および0.05≦m/(m+n)≦1の関係を満たし、
    繰り返し単位の配列は、ブロック、ランダムのいずれであってもよい)
  7. ガラス転移温度が300℃以上であり、かつ、下記(i)および/または(ii)を満たす、請求項4〜6のいずれか1項に記載の複合材料。
    (i)220℃に14日間静置した場合の重量減少率が、0.3%以下
    (ii)240℃に14日間静置した場合の重量減少率が、0.5%以下
  8. 厚みが0.5mm以上である、請求項4〜7のいずれか1項に記載の複合材料。
  9. 請求項4〜8のいずれか1項に記載の複合材料を含んでいる、耐熱性絶縁部品。
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