JPH06321828A - オクタ−2,7−ジエン−1−オールの製造方法 - Google Patents

オクタ−2,7−ジエン−1−オールの製造方法

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JPH06321828A
JPH06321828A JP5139610A JP13961093A JPH06321828A JP H06321828 A JPH06321828 A JP H06321828A JP 5139610 A JP5139610 A JP 5139610A JP 13961093 A JP13961093 A JP 13961093A JP H06321828 A JPH06321828 A JP H06321828A
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dien
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sulfolane
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康雄 時任
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【構成】 第3級アミンの塩を含むスルホラン水溶液
中、パラジウム触媒の存在下でブタジエンと水とを反応
させるオクタ−2,7−ジエン−1−オールの合成工
程、その抽出分離工程、触媒成分を含む抽残液の反応工
程へのフィード工程、抽出液の洗浄工程、洗浄工程で得
るスルホラン水溶液の抽出工程へのフィード工程、およ
び洗浄された抽出液の蒸留工程からなるオクタ−2,7
−ジエン−1−オールの製造方法において、(a)オク
タ−2,7−ジエン−1−オールの蒸発又は蒸留をアル
カリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩もし
くは重炭酸塩の存在下に行い、(b)蒸留によるオクタ
−2,7−ジエン−1−オール以下の生成物留分を炭酸
ガスおよび水と接触させる方法。 【効果】 第3級アミンとパラジウム触媒の溶出量を少
なくし、触媒系組成を一定に保つことが容易になり、オ
クタ−2,7−ジエン−1−オール留分にロスした第3
級アミンおよびスルホランを炭酸塩および/または重炭
酸塩の水溶液として回収してロス量を極小にできる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用野】本発明はブタジエンと水とを反応さ
せてオクタ−2,7−ジエン−1−オールを製造するた
めの改良された方法に関するものである。
【0002】オクタ−2,7−ジエン−1−オールを水
素化して製造される1−オクタノールはジオクチルフタ
レート等の可塑剤の原料として有用であり、またオクタ
−2,7−ジエン−1−オールをオキソ反応に付し、得
られる生成物を水素化することにより製造される1,9
−ノナンジオールは耐加水分解性に優れたポリエステル
を製造するための原料として有用である。
【0003】
【従来の技術】ブタジエンと水をパラジウム触媒存在下
に反応させてオクタ−2,7−ジエン−1−オールを合
成する反応自体は公知である。周知のごとく、パラジウ
ム触媒は極めて高価な貴金属触媒であるので、工業的規
模でオクタ−2,7−ジエン−1−オールを安価に大量
生産するためには次の1)〜4)の技術的課題を解決す
ることが重要である。
【0004】1)工業的に許容できる範囲のパラジウム
触媒濃度(反応混合液1リットルあたりパラジウム原子
換算で数ミリグラム原子程度)において高い反応速度が
達成されること、 2)オクタ−2,7−ジエン−1−オールへの選択率が
十分に高いこと、 3)パラジウム触媒の活性が長期に亘って安定に保持さ
れること、 4)生成したオクタ−2,7−ジエン−1−オールがパ
ラジウム触媒の活性低下を伴うこと無く効率よく反応混
合液から分離されること。
【0005】通常、オクタ−2,7−ジエン−1−オー
ルはパラジウム触媒を含む反応混合液を蒸留することに
より分離されるが、本発明者らの詳細な検討によれば、
蒸留温度が約120℃を越える場合パラジウム触媒がメ
タル化して失活する傾向が認められた。
【0006】以上の技術的課題を解決する方法として下
記の如き製造方法がすでに提案されている(特公昭63
−37774号公報参照)。
【0007】(1)塩基性定数(pKa)が7以上の単
座配位性第3級アミンの炭酸塩および/または重炭酸塩
を含むスルホラン水溶液中、ブタジエンとオクタ−2,
7−ジエン−1−オールのモル比を0.6以上に維持
し、パラジウム化合物およびパラジウム1グラム原子あ
たり少なくとも6モルの親水性の単座配位性ホスフィン
の存在下でブタジエンと水とを反応させることによって
オクタ−2,7−ジエン−1−オールを合成し、(2)
工程(1)で得られる反応混合液の少なくとも一部を飽
和脂肪族炭化水素、モノオレフィン性炭化水素または脂
環式炭化水素で抽出することによってオクタ−2,7−
ジエン−1−オールを抽出分離し、(3)工程(2)に
おける触媒成分を含む抽残液の少なくとも一部を工程
(1)のオクタ−2,7−ジエン−1−オール合成工程
に循環して使用することからなるオクタ−2,7−ジエ
ン−1−オールの製造方法。
【0008】この方法に従えば、オクタ−2,7−ジエ
ン−1−オールを低濃度のパラジウム触媒の存在下でも
高い反応速度と高い選択率で生成させることができ、し
かもパラジウム触媒の活性を低下させること無く反応混
合液から分離することができ、パラジウム触媒は循環し
て使用することができる。しかしながら、この方法にお
いてもなお工業的な規模で長期に亘って連続運転を行っ
た場合には解決すべき課題が存在することが明らかとな
った。すなわち、反応混合液からオクタ−2,7−ジエ
ン−1−オールを分離する際に得られる抽出液中には極
めて微量ではあるが、パラジウム触媒、リン化合物、第
3級アミンおよびスルホラン等の触媒成分が溶出してく
る。溶出成分の内、特に高価なパラジウム触媒について
は、混合液を水溶性ホスフィンの存在下にスルホラン水
溶性で洗浄することにより、効率的に回収する方法がす
でに提案されている。(特開平3−232831号、U
SP5,118,885号参照)。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】上記の特開平3−23
2831号公報に記載された方法に従えば、溶出したパ
ラジウム触媒成分は効果的に回収される。しかしなが
ら、経済的かつ運転安定性を高めてオクタ−2,7−ジ
エン−1−オールを連続的に製造しようとする場合に
は、反応に必要な各種成分の工程ロスをできる限り微小
化する必要がある。溶出によりロスした成分は、すべて
外部から補給する必要があり、補給量が増大すると、経
済的でなくなるばかりか、反応混合液組成を一定に維持
する操作が繁雑となり、運転安定性が悪くなるという問
題が生じることが明らかとなった。
【0010】公知の方法に従えば、溶出したスルホラン
は、オクタ−2,7−ジエン−1−オール蒸留缶液を蒸
発して、スルホラン以上の高い沸点を有する副生成物な
どを除去することにより回収される。スルホランは比較
的高価な溶剤であるため、回収率を高めるように条件設
定されなければならない。スルホランの回収率を高めた
場合には、ラクトンなどの沸点の近似した成分の混入量
が多くなることが避け難い。これを、このまま循環使用
した場合には、抽出混合液中への第3級アミンおよびパ
ラジウム触媒の溶出量が増大する傾向が認められた。こ
れを回避する方法として、上記の蒸発により得られたス
ルホランを水で抽出処理することにより水に難溶のラク
トンなどの成分を除去する方法も提案されている。この
方法により大部分の不純物は除去されるが、抽出率を高
めようとした場合には、水の使用量が多くなるため、水
の蒸発工程が必要となるのみならず、少量のラクトンな
どの不純物の混入は避け難い。このため、回収したスル
ホラン水溶液を循環させ長期に運転した場合、なお第3
級アミンの抽出液中への溶出ロスが増加するという傾向
が認められた。第3級アミンの濃度は、反応速度を支配
するため、これを一定に維持しなければ、反応混合液の
組成が変動する。連続的な抽出プロセスでは、反応混合
液の組成変動が起これば、各種成分の抽出率が変化し、
すべての成分のバランスが変動してくるため運転安定性
を維持する上で大きな問題となることが判った。連続反
応に於いては、組成変化は小さい程、運転安定性が高ま
ることは言うまでもない。さらに、当然、外部から追加
すべきロス分が少ない程、運転安定性が高まることは言
うまでもない。さらに、当然、外部から追加すべきロス
分が少ない程、経済的である。本発明の目的は、上記の
問題点を解決したオクタ−2,7−ジエン−1−オール
の製造方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明者らは上記の問題
点のないオクタ−2,7−ジエン−1−オールの製造方
法を開発するために鋭意検討を重ねた結果、本発明を完
成するに至った。
【0012】本発明によれば、上記の目的は、(1)塩
基性定数(pKa)が7以上の単座配位性第3級アミン
の炭酸塩および/または重炭酸塩を含むスルホラン水溶
液中、ブタジエンとオクタ−2,7−ジエン−1−オー
ルのモル比を0.6以上に維持し、パラジウム化合物お
よびホスホニウム塩の存在下でブタジエンと水とを反応
させることによってオクタ−2,7−ジエン−1−オー
ルを合成し、(2)工程(1)で得られる反応混合液の
少なくとも一部を飽和脂肪族炭化水素、モノオレフィン
性炭化水素または脂環式炭化水素で抽出することによっ
てオクタ−2,7−ジエン−1−オールを分離し、
(3)工程(2)で得られる触媒成分を含む抽残液の少
なくとも一部を工程(1)のオクタ−2,7−ジエン−
1−オール合成工程にフィードし、(4)工程(2)で
得られるオクタ−2,7−ジエン−1−オールを含む抽
出液を水溶性ホスフィンの存在下にスルホラン水溶液で
洗浄し、スルホラン水溶液層と洗浄された抽出液層に分
離し、(5)工程(4)で得られるスルホラン水溶液層
の少なくとも一部を抽出工程(2)にフィードし、
(6)工程(4)で得られる洗浄された抽出液層を蒸留
するオクタ−2,7−ジエン−1−オールの製造方法に
おいて、 a)オクタ−2,7−ジエン−1−オールの蒸発もしく
は蒸留をアルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化
物、炭酸塩もしくは重炭酸塩の存在下に行い、 b)蒸留により得られるオクタ−2,7−ジエン−1−
オール以下の生成物留分を、炭酸ガスおよび水と接触さ
せることを特徴とするオクタ−2,7−ジエン−1−オ
ールの製造方法を提供することによって達成される。
【0013】本発明により、スルホラン中に混在してこ
れまで問題を引き起こしていたラクトンやラクトンが加
水分解した酸がほとんど混在しなくなるため、得られた
スルホランを水で抽出することなく循環使用することが
できることが明らかとなった。この結果、第3級アミン
およびパラジウム触媒の溶出量が低減し、溶出したアミ
ンおよびパラジウム回収の負荷が著しく低下するなどの
効果が得られる。また、抽出プロセスに於いては、反応
混合液中のスルホラン、水および第3級アミン濃度を一
定に維持することが重要である。濃度管理に必要なスル
ホランおよび水は、あらゆる変動に対応できるように、
それぞれ単独にフィードできるようにしておくことが運
転管理上好ましい。これに必要な回収スルホランを水の
蒸発を伴うことなく確保できるため経済性および操作性
は著しく向上した。
【0014】さらに、反応で消費され補給する必要のあ
る水の一部を、スルホラン回収に使用することなく、こ
れをオクタ−2,7−ジエン−1−オールの洗浄に炭酸
ガスと共に使用することにより、抽剤回収工程で回収で
きずに微小量ロスする第3級アミンを効果的に水層に除
去できることが見い出された。これにより、第3級アミ
ンのロスがさらに低減される。
【0015】本発明においては、通常、抽出混合液から
炭酸ガスおよび未反応ブタジエンが回収され、次いで、
抽剤および第3級アミン(トリエチルアミン)が蒸留操
作により回収される。第3級アミンはこの工程で大部
分、炭酸塩から遊離のアミンと成って回収されるが、微
少量は次の蒸留工程に持ち込まれる。抽剤および第3級
アミンを蒸留した残液から、オクタトリエンやオクタ−
1,7−ジエン−3−オールなどの低沸点生成物を分離
した後、オクタ−2,7−ジエン−1−オールが蒸留分
離される。しかし、オクタ−2,7−ジエン−1−オー
ル単品が必要でない場合、低沸点生成物との混合物とし
て蒸留分離し、たとえば水素還元に供することもでき
る。
【0016】本発明において、オクタ−2,7−ジエン
−1−オールの蒸留は、アルカリ金属またはアルカリ土
類金属の水酸化物、炭酸塩もしくは重炭酸塩の存在下に
実施される。アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水
酸化物、炭酸塩もしくは重炭酸塩の使用量に特に制限は
ないが、抽剤および第3級アミンを蒸留した残液中に存
在するラクトンおよびラクトンが加水分解して生成した
酸と当量以上が好ましい。特に、当量ないしは5倍量で
使用するのが望ましい。アルカリ金属またはアルカリ土
類金属の水酸化物、炭酸塩もしくは重炭酸塩は、固体の
まま、あるいは水溶液として添加することができる。
【0017】本発明において、蒸留されたオクタ−2,
7−ジエン−1−オールを含む生成物は、炭酸ガス雰囲
気下に、水で洗浄される。
【0018】使用する水の量に特に制限はないが、反応
で水が消費されるため、反応消費水の0.5〜当量程度
が好ましい。炭酸ガスは専用のものを使用してもよい
が、プラント内で一部パージされているオフガスを使用
するのが好ましい。炭酸ガスは常圧でも加圧でもよい
が、20気圧以下の加圧系がより好ましい。洗浄温度は
加圧の程度により異なるが、通常、第3級アミンの炭酸
塩が分解し難い50℃以下が望ましい。洗浄水は工程
(4)にフィードされ、工程(2)を経て触媒液に仕込
まれる。
【0019】スルホランは、オクタ−2,7−ジエン−
1−オールを蒸留分離した残りの缶液から蒸発により純
度の高い状態で回収されるため、そのまま循環再使用で
きる。
【0020】本発明における工程(4)において、工程
(2)で得られるオクタ−2,7−ジエン−1−オール
を含む抽出液をスルホラン水溶液で洗浄する際に存在さ
せる水溶性ホスフィンとしては、下記一般式(I)
【0021】
【化1】 (式中、Mはアルカリ金属を表す)で示されるホスフィ
ンが好ましい。一般式(I)におけるMが表すアルカリ
金属としては、具体的にはリチウム、ナトリウムおよび
カリウムが挙げられる。水溶性ホスフィンの量は工程
(2)で得られる抽出液中に含まれるパラジウム原子に
対して1当量以上が適当である。水溶性ホスフィンが存
在しない場合には、工程(2)で得られる抽出液中に含
まれるパラジウム触媒の30〜40%程度しかスルホラ
ン水溶液中に回収することはできない。工程(2)で得
られる抽出液中に含まれるパラジウム触媒の90〜10
0%がスルホラン水溶液中に回収される。しかも、その
際にオクタ−2,7−ジエン−1−オールを含む抽出液
中へのリン化合物の溶出量は増加することはない。水溶
性ホスフィンの使用上の上限は無いが、その使用量は工
程(4)で得られる洗浄された抽出液中に含まれる量に
相当する量、すなわち、反応系外に溶出するリン化合物
のモル相当の量が好ましい。工程(4)で用いられる水
は、オクタ−2,7−ジエン−1−オールの炭酸水によ
る洗浄で用いられた水溶液を用いるのが好ましい。抽出
液中のスルホランはパラジウムと共に水層に回収されス
ルホラン水溶液を形成する。洗浄操作は二酸化炭素の雰
囲気下で行うのが適当である。二酸化炭素の分圧は3絶
対圧力より大きく、20絶対圧力より小さい圧力である
のが好ましく、4〜16絶対圧力であるのが好ましい。
二酸化炭素の圧力によってパラジウム触媒およびリン化
合物のスルホラン水溶液中への回収率はほとんど変化し
ない。二酸化炭素の圧力は第3級アミンの回収率に大き
な影響を与え、二酸化炭素の圧力が高いほど第3級アミ
ンの回収率は高くなり、二酸化炭素の分圧が20絶対圧
力以上になると第3級アミンは100%回収される。第
3級アミンは後工程における蒸留操作によっても抽剤と
共に効率良く回収されることから、工程(4)において
二酸化炭素の分圧をあえて高圧にする必要はない。
【0022】洗浄操作における温度としてはパラジウム
触媒をその活性を保ったままで回収する上で、0〜80
℃の範囲の温度を採用することが好ましく、5〜30℃
の範囲の温度で採用することがより好ましい。洗浄操作
を80℃より高い温度で行う場合、回収されるパラジウ
ム触媒の活性が低下するばかりか、第3級アミンの回収
率も低下し、また0℃より低い温度で洗浄を行う場合、
洗浄界面の分離性が悪くなることから、いずれの場合も
好ましくない。洗浄操作はバッチでも連続的にも実施す
ることが可能であり、通常良く用いられる抽出・洗浄装
置を用いて実施される。
【0023】本発明における工程(6)において、工程
(4)で得られる洗浄された抽出液を蒸留操作に付する
際に、該抽出液に予めジメチルグリオキシムを添加する
のが好ましい。ジメチルグリオキシムは蒸留塔缶液での
パラジウム触媒のメタル化を抑制するのに効果がある。
ジメチルグリオキシムの添加量は、該洗浄された抽出液
中に溶存するパラジウム原子に対するモル比で10以上
であるのが好ましい。工程(4)においてパラジウム触
媒の回収が効果的に実施されていれば、洗浄された抽出
液を蒸留する際に該抽出液にジメチルグリオキシムをあ
えて加える必要はない。工程(4)におけるパラジウム
触媒の回収により、また蒸留操作中におけるパラジウム
触媒のジメチルグリオキシムによる安定化効果により、
蒸留塔缶液でのパラジウム触媒のメタル化を抑制するこ
とができ、安定な蒸留運転が保証される。
【0024】本発明における工程(1)において、オク
タ−2,7−ジエン−1−オールは、塩基性定数(pK
a)が7以上の単座配位性第3級アミンの炭酸塩および
/または重炭酸塩を含むスルホラン水溶液中、ブタジエ
ンとオクタ−2,7−ジエン−1−オールのモル比を
0.6以上に維持し、パラジウム化合物およびホスホニ
ウム塩の存在下でブタジエンと水とを反応させることに
よって得ることができる。ブタジエンとオクタ−2,7
−ジエン−1−オールのモル比は0.6以上に維持させ
ることが必要であり、0.8〜1.6の範囲に維持する
ことが好ましい。ブタジエンとオクタ−2,7−ジエン
−1−オールのモル比が0.6よりも小さい場合には、
反応混合液中への不溶性重合物の蓄積、パラジウム触媒
の失活、反応速度および反応の選択率の低下、さらにオ
クタ−2,7−ジエン−1−オールを分離する際に、抽
出液中へのパラジウム触媒の溶出量が多くなる。また、
そのモル比の上限についてはとくに制限はないが、通常
20以下であることが好ましい。モル比が2.0より大
きい場合には、ブタジエンの回収量が多くなるうえに、
反応混合液が不均一系となり、オクタ−2,7−ジエン
−1−オール合成反応に続いて実施される抽出操作にお
いて抽出液中へのスルホランなどの溶出量が増加し、ま
た大きな反応装置が必要になるなど経済的に不利にな
る。
【0025】ブタジエンとしては工業的に入手可能な重
合グレード品、化学反応用グレード品および石油化学に
おいて通常C4留分と言われている炭化水素混合物のい
ずれをも使用することができる。しかし、反応速度の大
きさおよび未反応ブタジエンの回収の容易さを考慮する
と、重合グレード品および化学反応用グレード品を使用
するのが好ましい。
【0026】本発明の工程(1)で用いられる塩基性定
数(pKa)が7以上の単座配位性第3級アミンの炭酸
塩および/または重炭酸塩は、オクタ−2,7−ジエン
−1−オールへの選択率を高い水準に維持したまま反応
速度を著しく向上させ、パラジウム触媒の活性を安定化
し、また反応工程(1)に続く抽出工程(2)において
オクタ−2,7−ジエン−1−オールの抽出率を増大さ
せる作用を有する。この様な単座配位性第3級アミンと
しては、例えば、トルメチルアミン、トリエチルアミ
ン、トリn−ブチルアミン、1−N,N−ジメチルアミ
ノ−2−プロパノール、N,N−ジメチル−2−メトキ
シエチルアミン、N−メチルモルホリン、N,N,
N′,N′−テトラメチルヘキサメチレンジアミンなど
が挙げられる。これらのうちでも反応成績、沸点、溶解
性、価格などの諸点を考慮すると、トリメチルアミンま
たはトリエチルアミンが好ましい。単座配位性第3級ア
ミンの炭酸塩および/または重炭酸塩の添加による上述
の優れた効果は、例えばピリジン、ジピリジルなどのp
Kaが7未満の単座または二座配位性第3級アミンの炭
酸塩および/または重炭酸塩、またたとえpKaが7以
上であってもN,N,N′,N′−テトラメチルジアミ
ノエタン、N,N−ジメチル−2−アミノプロピオノニ
トリルなどの二座配位能の強い第3級アミンの炭酸塩お
よび/または重炭酸塩を用いたのでは十分に発現しな
い。
【0027】pKaが7以上の単座配位性第3級アミン
の炭酸塩および/または重炭酸塩は反応系中において炭
酸イオンおよび/または重炭酸イオンおよび単座配位性
第3級アミンとの平行混合物として存在し(下記平衡式
参照)、反応条件下における第3級アミンの炭酸塩およ
び/または重炭酸塩の存在比率は反応系での温度および
二酸化炭素の分圧に依存する。
【0028】
【化2】 したがって、反応は通常、二酸化炭素の分圧が約1〜1
0気圧(絶対圧力)となるような状態で行われる。反応
成績、抽出効率、第3級アミンの抽出層への溶出量を考
慮すると第3級アミンの炭酸塩および/または重炭酸塩
を反応混合液に対して5〜10重量%の範囲となるよう
な量で用いるのが好ましい。
【0029】水はスルホラン水溶液として反応系内に存
在する。スルホラン水溶液は長期の連続使用に悪影響を
及ぼさないのみならず、反応混合液からの抽出による生
成物の分離を可能にする。また、反応速度を高め、オク
タ−2,7−ジエン−1−オールへの選択率を高める効
果がある。スルホラン水溶液中の水の濃度はブタジエン
の溶解度ならびにオクタ−2,7−ジエン−1−オール
の抽出効率を考慮すると、水とスルホランの重量比で7
0対30〜30対70、好ましくは60対40〜40対
60に保つことが望ましい。水の量が多くなると反応速
度が低下する傾向にあり、逆に水の量が少なくなるとオ
クタ−2,7−ジエン−1−オールの抽出率が低下し、
かつスルホランおよび触媒成分の抽出液中への溶出量が
大きくなる傾向がある。
【0030】本発明における工程(1)において、反応
系に存在させるパラジウム化合物はとくに限定されるも
のではない。パラジウム触媒としては例えばこれまでに
オクタ−2,7−ジエン−1−オールの合成反応に用い
ることが提案されているパラジウム化合物が使用可能で
ある。これらのパラジウム化合物の具体例として、パラ
ジウムアセチルアセトナート、π−アリルパラジウムア
セテート、π−アリルパラジウムクロリド、酢酸パラジ
ウム、炭酸パラジウム、硝酸パラジウム、塩化パラジウ
ム、ナトリウムクロロパラデート、ビスベンゾニトリル
パラジウムクロリド、ビストリフェニルホスフィンパラ
ジウムクロリド、ビストリフェニルホスフィンパラジウ
ムアセテート、ビス(1,5−シクロオクタジエン)パ
ラジウム、ビス−π−アリルパラジウムなどを挙げるこ
とができる。オクタ−2,7−ジエン−1−オールの合
成反応における真のパラジウム触媒の活性種は低原子価
パラジウム錯体であるので、二価のパラジウム化合物を
触媒として用いる場合には、それを反応系中に存在する
ブタジエンで還元することによってパラジウム触媒の活
性種を形成させることもできるが、同一反応系内または
別の反応容器内で該二価のパラジウム化合物に還元剤を
作用させることによってパラジウム触媒の活性種を形成
させ、それを使用することもできる。この目的に用いら
れる還元剤としてはアルカリ金属水酸化物、アルカリ金
属カルボン酸塩、水素化硼素ナトリウム、亜鉛末、マグ
ネシウム、ヒドラジンなどを挙げることができる。反応
系中に存在させるパラジウム化合物の量については特別
な制限はないが、工業的には反応混合液1リットルあた
りパラジウム原子として好ましくは0.5〜50ミリグ
ラム原子、より好ましくは0.5〜5ミリグラム原子の
濃度となるような量で存在させるのが望ましい。
【0031】本発明における工程(1)において、反応
系に存在させるホスホニウム塩としては下記一般式(I
I)
【0032】
【化3】 (式中、R1 およびR2 はそれぞれ水素原子または置換
基を有していてもよい炭素数1〜12の炭化水素基を表
し、R3 は水素原子または置換基を有していてもよい炭
素数1〜5の炭化水素基を表し、Mはアルカリ金属を表
し、Xは水酸基またはヒドロカルボニルオキシ基を表
す)で示されるホスホニウム塩が好ましい。一般式(I
I)において、R1 およびR2 が表す炭素数1〜12の
炭化水素基としては、メチル、エチル、n−プロピル、
n−ブチル、n−ペンチル、n−オクチルなどのアルキ
ル基、2−プロペニル、3−ブテニル、1−ペンテニル
などのアルケニル基などの脂肪族炭化水素基;シクロヘ
キシルで代表されるシクロアルキル基などの脂環式炭化
水素基;およびフェニル、トリルなどのアリール基、ベ
ンジルなどのアラルキル基などの芳香族炭化水素基を例
示することができる。R3が表す炭素数1〜5の炭化水
素基としては、メチル、エチル、プロピルなどのアルキ
ル基;アリル、4−ペンテニルなどのアルケニル基など
の脂肪族炭化水素基などを例示することができる。上記
の置換基としては、例えば、ジメチルアミノ基などのジ
(低級アルキル)アミノ基;シアノ基;式−SO3 Mま
たは−COOM(式中、Mはリチウム、ナトリウム、カ
リウムなどのアルカリ金属を表す)で示される基などが
挙げられる。また、Mが表すアルカリ金属としては、具
体的にはリチウム、ナトリウムおよびカリウムが挙げら
れる。ホスホニウム塩の使用量は、反応速度およびオク
タ−2,7−ジエン−1−オールへの選択率の高さ、パ
ラジウム触媒の活性の長期安定化、次の抽出工程(2)
における抽出液中へのパラジウム触媒の溶出抑制効果な
どを考慮して通常パラジウム1グラム原子あたり6モル
以上、好ましくは10モル以上である。ホスホニウム塩
の使用量について厳密な意味での上限はないが、ホスホ
ニウム塩は一般的にはパラジウム1グラム原子あたり1
50モル以下となるような量で使用され、好ましくは8
0モル以下となるような量で用いられる。
【0033】一般式(II)で示されるホスホニウム塩
は、パラジウム化合物の存在下、かつ炭酸イオンおよび
/または重炭酸イオンを含有する水の存在下において前
記一般式(I)で示されるホスフィンを該ホスフィンに
対して等モル以上の一般式(III)
【0034】
【化4】 (式中、R1 、R2 およびR3 は前記定義のとおりであ
る)で示されるアリルアルコールと反応させることによ
って容易に得ることができる。
【0035】オクタ−2,7−ジエン−1−オールの合
成反応は通常50〜110℃の温度で実施される。反応
装置としては撹拌型反応槽、気泡塔型反応槽などそれ自
体公知の気液接触型の装置を用いることができる。
【0036】前述のように、本発明における工程(2)
において、オクタ−2,7−ジエン−1−オールは、反
応混合液の少なくとも一部を抽剤で抽出することによっ
て分離されるが、抽剤として使用可能なものは、オクタ
−2,7−ジエン−1−オールよりも低い沸点を有する
飽和脂肪族炭化水素、モノオレフィン性炭化水素および
脂環式炭化水素である。これらの具体例としては、n−
ブタン、イソブタン、n−ペンタン、n−ヘキサン、n
−ヘプタン、n−オクタン、イソオクタンなどの飽和脂
肪族炭化水素;ブテン、イソブテンなどのモノオレフィ
ン性炭化水素;シクロヘキサン、シキロヘキセン、メチ
ルシクロヘキサンなどの脂環式炭化水素が挙げられ、ま
たブタジエン源としてのC4留分中に含まれるブタン、
ブテン、イソブテンなどの炭化水素の混合物を挙げるこ
とができる。この中でもとくに好ましく用いることがで
きるものはn−ペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサ
ンおよびメチルシクロヘキサンである。これらの抽剤は
単独で使用しても混合して使用してもよい。抽剤はオク
タ−2,7−ジエン−1−オールの抽出効率、抽出液中
への触媒成分およびスルホランの溶出量を考慮して、オ
クタ−2,7−ジエン−1−オールの合成反応によって
得られる反応混合液に対する容量比で0.3〜3の範囲
内の量で用いられる。
【0037】抽出操作は二酸化炭素の雰囲気下で行うの
が適当である。二酸化炭素の分圧は3絶対圧力より大き
く20絶対圧力より小さい圧力であるのが好ましく、4
〜16絶対圧力であるのがより好ましい。二酸化炭素の
分圧が3絶対圧力以下では第3級アミンの溶出量が多く
なるばかりでなく、パラジウム触媒の溶出量の経時的増
加が認められる。また、抽出液および触媒液からなる抽
出界面の安定性も悪い。一方、二酸化炭素の分圧を20
絶対圧力以上にすることはパラジウム触媒の溶出抑制効
果以上の不必要な二酸化炭素を使用することになるので
経済的ではない。抽出操作における温度としてはパラジ
ウム触媒および第3級アミンの溶出を抑えるうえで、0
〜40℃の範囲の温度を採用することが好ましく、5〜
30℃の範囲の温度を採用することがより好ましい。抽
出操作を40℃より高い温度で行う場合、第3級アミン
の溶出量が増加するのみならず、生成したオクタ−2,
7−ジエン−1−オールが同一触媒系で分解反応を受け
て選択率の低下を招く。さらには、オクタ−2,7−ジ
エン−1−オールの分解に伴ってパラジウム触媒の溶出
量の経時的増加が認められる。抽出温度の低下とともに
パラジウム触媒の溶出量および第3級アミンの溶出量は
減少する傾向にあるが、0℃より低い温度で抽出を行う
場合には抽出界面の分離性が悪くなる。工程(2)で使
用される抽出装置としては、工業的に汎用な撹拌型抽出
器、RDC型抽出器、多孔板塔などが適用可能である。
工業的には相分離するのに十分な静置槽を備えることに
より連続方式によって抽出操作が行われる。
【0038】このようにして得られた触媒成分を含む抽
残液(スルホラン水溶液)の少なくとも一部は工程
(1)のオクタ−2,7−ジエン−1−オール合成反応
工程にフィードし再使用される。工程(4)で用いられ
る水溶性ホスフィンは該工程(4)における洗浄工程な
いしは工程(5)でスルホラン水溶液層に含まれた状態
でフィードされる抽出工程(2)において完全にホスホ
ニウム塩に転化されることから、工程(3)で工程
(1)のオクタ−2,7−ジエン−1−オール合成反応
工程にフィードされる抽残液中には水溶性ホスフィンが
含まれることはない。抽残液は所望によりその一部を取
り出し、触媒賦活処理を施した後、上記合成反応工程に
循環してもよい。
【0039】本発明の方法において、工程(2)におけ
る抽出操作により触媒系外から溶出した触媒成分は工程
(4)において、パラジウム触媒、リン化合物、第3級
アミンおよびスルホランの一部が回収され、工程(6)
において、炭酸ガス、抽剤、第3級アミン、スルホラン
が回収される。回収されない極微量の触媒成分は、パラ
ジウム触媒、リン化合物およびスルホランについては蒸
留缶液から高沸物とともに、第3級アミンについては低
沸留分として、それぞれ系外へロスする。従って、ロス
した量の触媒成分は追加触媒液として新たに触媒系へ添
加される。追加すべき触媒成分は、それぞれの追加すべ
き量に応じた薬液を一括または目的に応じた組み合わせ
で分割して調製し、断続的または連続的に追加される
が、第3級アミンについては、予め二酸化炭素および水
の存在下に炭酸塩および/または重炭酸塩に変換した
後、水溶液として供給するのが望ましい。かかる炭酸塩
の水溶液中にパラジウム触媒、ホスホニウム塩およびス
ルホランを存在させても差支えないが、第3級アミンの
炭酸塩および/または重炭酸塩の水溶液、パラジウム触
媒、ホスホニウム塩を含むスルホラン水溶液、およびス
ルホラン水溶液の3分割でそれぞれ単独に触媒系に追加
する方法が、反応液組成を一定の組成に保つことがで
き、安定運転が達成できるので好ましい。
【0040】
【実施例】以下、実施例により本発明を具体的に説明す
るが、本発明はこれらによって何ら制限されるものでは
ない。 [実施例1]次の装置を用いて後述の運転条件下で連続
反応を行い、定常状態における反応成績を調べた。
【0041】反応装置 温度制御装置、撹拌装置、ブタジエンフィードポンプ、
触媒液循環ポンプ、二酸化炭素導入口、圧力調整弁およ
び液面計を備えたステンレス製耐圧反応装置。反応混合
液は減圧弁を経て抽出装置に送られる。
【0042】抽出装置 減圧弁、圧力調整弁、温度計、撹拌装置、抽剤フィード
ポンプ、液面計および界面計を備えたミキサーセトラー
型抽出器。抽残触媒液は触媒貯槽を経て反応装置に触媒
フィードポンプで定量的にフィードされる。抽出液は抽
出液フィードポンプで抽出液のスルホラン水溶液洗浄装
置にフィードされる。
【0043】抽出液のスルホラン水溶液洗浄装置 抽出液フィードポンプ、水フィードポンプ、スタティッ
クミキサーおよび静置槽を備えた洗浄装置、下層のスル
ホラン水溶液層は追加液フィードポンプで触媒調整槽お
よび抽出装置にフィードされる。上層の洗浄された抽出
液層は減圧弁を経てブタジエン回収塔にフィードされ
る。
【0044】蒸留装置 ブタジエン回収塔(ブタジエンおよび二酸化炭素の回
収)、抽剤回収塔(抽剤および第3級アミンの回収)、
薄膜蒸発器(溶出パラジウム触媒、溶出リン化合物の分
離および高沸カット)、精製塔(オクタ−2,7−ジエ
ン−1−オールの精製)を備えた蒸留装置。
【0045】スルホラン回収装置 流下膜式蒸発装置、アルカリ水溶液フィードポンプ。流
下膜式蒸発器で蒸発された液は静置後、スルホランリッ
チな下層は抽出液のスルホラン水溶液洗浄装置に、上層
の高沸液は薄膜蒸発器にフィードされる。
【0046】オクタ−2,7−ジエン−1−オール洗浄装置 炭酸ガスフィード口を備えた混合撹拌装置、静置槽。付帯装置 各種タンク類、触媒調製槽運転条件および運転成績 定常状態における反応槽中の反応混合液(均一溶液)の
組成はスルホラン34重量%、水30重量%、トルエチ
ルアミン9.8重量%、パラジウム触媒(酢酸パラジウ
ムから形成された触媒)1.7mg原子/リットル(パ
ラジウム原子換算)、式
【0047】
【化5】 で表されるホスホニウム塩60ミリモル/リットル、ブ
タジエン1.1モル/リットル、オクタ−2,7−ジエ
ン−1−オール0.9モル/リットルに維持され、反応
温度70℃、反応圧力14.5kg/cm2 G(二酸化
炭素により加圧)、反応液滞留時間1.0時間の条件で
運転した。
【0048】上記混合液を連続的に反応混合液と抽剤
(微量のトリエチルアミンを含むn−ヘキサン溶液)と
の容量比0.66で4絶対圧力の炭酸ガス加圧下、20
℃で抽出した。55日後の抽出液中の生成物、ブタジエ
ン、トリエチルアミンおよびスルホランをガスクロマト
グラフィーで、パラジウム触媒を原子吸光分析で、リン
化合物を比色定量法でそれぞれ分析した結果、抽出液中
のオクタ−2,7−ジエン−1−オール濃度は11.2
重量%であり、抽剤中への溶媒および触媒の溶出量はパ
ラジウム触媒(原子換算)2.0ppm、リン化合物
(リン原子換算)5.6ppm、スルホラン1.2重量
%、トルエチルアミン0.5重量%、水0.15重量%
であった。
【0049】抽出液1000重量部にスルホラン回収装
置より回収されたスルホラン溶液14重量部(スルホラ
ン12重量部を含む)、オクタ−2,7−ジエン−1−
オールの洗浄装置から回収された水溶液17重量部、お
よびジフェニルホスフィノベンゼン−m−スルホネート
のリチウム塩31重量%を含む水溶液0.032重量部
の割合で連続添加し、温度20℃、4絶対圧力の炭酸ガ
ス加圧下にスタティックミキサーで混合し、静置槽で分
液した。上層液の分析結果、オクタ−2,7−ジエン−
1−オール濃度は11重量%で、溶媒および触媒の溶出
量はパラジウム触媒(原子換算)0.2ppm、リン化
合物(リン原子換算)1.1ppm、スルホラン1.2
5重量%、トリエチルアミン0.17重量%、水0.1
5重量%であった。この結果、パラジウム触媒の92.
5%、リン化合物の80%、トリエチルアミンの66%
が下層に回収されたことがわかる。この下層液を連続的
に抽出装置にフィードした。
【0050】上層液を蒸留工程にフィードした。ブタジ
エン回収塔において4kg/cm2Gの加圧下に蒸留
し、未反応ブタジエンおよび炭酸ガスを回収した。次に
抽剤回収工程において、常圧条件下、塔頂温度60℃で
ヘキサンをトリエチルアミンとともに回収し、抽出装置
に連続フィードした。抽剤回収塔の缶液を連続的に薄膜
蒸発器にフィードした。ここではスルホラン以下の沸点
の化合物が蒸発され、抽出工程で溶出したパラジウム触
媒、リン化合物および高沸物をカットした。缶液中には
5重量%のスルホランが含まれていた。蒸発液は精製塔
にフィードし、オクタ−2,7−ジエン−1−オールを
主留分とする留出液は、抽出系の炭酸ガスを含むオフガ
スおよび水17重量部と撹拌下に接触させた。さらに低
沸カットをした後得られたオクタ−2,7−ジエン−1
−オールのGC純度は99.8%であった。
【0051】精製塔の缶液はスルホランおよび高沸物を
含んでおり、0.6重量部の水酸化ナトリウムを含む4
0重量%の水溶液を添加し、流下膜式の蒸発器で蒸発し
た後、静置し、下層を抽出液のスルホラン水溶液による
洗浄装置にフィードした。上層液は薄膜蒸発器にフィー
ドし、流下膜式の缶液は薄膜蒸発器の缶液に戻した。
【0052】触媒調製槽では、反応系外にロスした量に
相当するパラジウム触媒およびホスホニウム塩をスルホ
ラン水溶液に溶解させてフィードしたが、反応液中のパ
ラジウム触媒濃度およびホスホニウム塩の濃度はほぼ一
定に保たれた。また、反応液中のスルホラン濃度および
水濃度を微調整するため、フレッシュなスルホランおよ
び水を適宜抽出装置にフィードした。反応液中のトリエ
チルアミン濃度を一定に保つために、トリエチルアミン
換算で35重量%に相当するトリエチルアミンの炭酸塩
および/または重炭酸塩の水溶液をフィードした。1t
のオクタ−2,7−ジエン−1−オールを製造するに当
り0.5kgのトリエチルアミンの追加量で反応液中の
トリエチルアミン濃度は一定に保たれた。このことか
ら、トリエチルアミンの回収率は約97%であることが
わかる。
【0053】かかる操作により60日間連続運転を実施
したところ、運転は極めて安定であり、一定の反応成績
を示した。
【0054】[比較例1]実施例1において、水酸化ナ
トリウムを添加せず、直接高沸物を含んだスルホラン溶
液を水とは独立に抽出液の洗浄工程にフィードし、オク
タ−2,7−ジエン−1−オールの炭酸水による洗浄も
実施せずに同様な反応条件、抽出条件および蒸留条件
で、25日間連続運転を実施した。
【0055】7日目までは比較的安定な運転が実施でき
たが、次第に抽出液中のパラジウム濃度が高くなり、抽
出液を洗浄した後も溶出パラジウム濃度が高く、反応系
外へのロス量が大きくなった。18日後の洗浄された抽
出液の分析結果、オクタ−2,7−ジエン−1−オール
濃度は9.8重量%で、溶媒および触媒の溶出量はパラ
ジウム触媒(原子換算)1.3ppm、リン化合物(リ
ン原子換算)2.3ppm、スルホラン1.2重量%、
トリエチルアミン0.42重量%、水0.15重量%で
あった。その結果、反応液中のパラジウム濃度を一定に
保つために加えるべきパラジウム触媒量は多くなった。
反応液中のトリエチルアミン濃度を一定に保つために、
1tのオクタ−2,7−ジエン−1−オールを製造する
に当り15kgのトリエチルアミンの追加量が必要であ
った。
【0056】
【発明の効果】本発明によれば、上記の実施例から明ら
かなとおり、高沸物を含むスルホラン溶液を蒸発する際
に水酸化ナトリウムを添加することにより、直接触媒系
にフィード可能なスルホランを得ることができるため、
第3級アミンおよびパラジウム触媒の溶出量を長期に亘
って少なくすることができ、触媒系の組成を一定に保つ
ことが容易となった。さらにオクタ−2,7−ジエン−
1−オール留分にロスした第3級アミンおよびスルホラ
ンを炭酸塩および/または重炭酸塩の水溶液として回収
できるため、第3級アミンおよびスルホランのロス量を
極小にすることができる。
フロントページの続き (51)Int.Cl.5 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C07C 29/80 29/86 // C07B 61/00 300

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 (1)塩基性定数(pKa)が7以上の
    単座配位性第3級アミンの炭酸塩および/または重炭酸
    塩を含むスルホラン水溶液中、ブタジエンとオクタ−
    2,7−ジエン−1−オールのモル比を0.6以上に維
    持し、パラジウム化合物およびホスホニウム塩の存在下
    でブタジエンと水とを反応させることによってオクタ−
    2,7−ジエン−1−オールを合成し、 (2)工程(1)で得られる反応混合液の少なくとも一
    部を飽和脂肪族炭化水素、モノオレフィン性炭化水素ま
    たは脂環式炭化水素で抽出することによってオクタ−
    2,7−ジエン−1−オールを分離し、 (3)工程(2)で得られる触媒成分を含む抽残液の少
    なくとも一部を工程(1)のオクタ−2,7−ジエン−
    1−オール合成工程にフィードし、 (4)工程(2)で得られるオクタ−2,7−ジエン−
    1−オールを含む抽出液を水溶性ホスフィンの存在下に
    スルホラン水溶液で洗浄し、スルホラン水溶液層と洗浄
    された抽出液層に分離し、 (5)工程(4)で得られるスルホラン水溶液層の少な
    くとも一部を抽出工程(2)にフィードし、 (6)工程(4)で得られる洗浄された抽出液層を蒸留
    するオクタ−2,7−ジエン−1−オールの製造方法に
    おいて、 a)オクタ−2,7−ジエン−1−オールの蒸発もしく
    は蒸留をアルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化
    物、炭酸塩もしくは重炭酸塩の存在下に行い、 b)蒸留により得られるオクタ−2,7−ジエン−1−
    オール以下の生成物留分を、炭酸ガスおよび水と接触さ
    せることを特徴とするオクタ−2,7−ジエン−1−オ
    ールの製造方法。
  2. 【請求項2】 第3級アミンがトリメチルアミンまたは
    トリエチルアミンである請求項1記載の製造方法。
  3. 【請求項3】 ホスホニウム塩がパラジウム1グラム原
    子あたり少なくとも6モルの量である請求項1または2
    記載の製造方法。
  4. 【請求項4】 水溶性ホスフィンの量がオクタ−2,7
    −ジエン−1−オールを含む抽出液中に含まれるパラジ
    ウム原子に対して1当量以上である請求項1〜3のいず
    れか1つに記載の製造方法。
  5. 【請求項5】 工程(4)で得られる洗浄された抽出液
    層中に、該抽出液層中のパラジウム原子に対するモル比
    で10倍以上のジメチルグリオキシムを添加する請求項
    1〜4のいずれか1つに記載の製造方法。
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