JPH06313132A - 防汚塗料組成物 - Google Patents

防汚塗料組成物

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Publication number
JPH06313132A
JPH06313132A JP5123578A JP12357893A JPH06313132A JP H06313132 A JPH06313132 A JP H06313132A JP 5123578 A JP5123578 A JP 5123578A JP 12357893 A JP12357893 A JP 12357893A JP H06313132 A JPH06313132 A JP H06313132A
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JP
Japan
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copper
copper complex
starch
coating composition
complex
Prior art date
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Application number
JP5123578A
Other languages
English (en)
Inventor
Miyuki Mitsuda
深雪 満田
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Suzuki Motor Corp
Original Assignee
Suzuki Motor Corp
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Publication date
Application filed by Suzuki Motor Corp filed Critical Suzuki Motor Corp
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Publication of JPH06313132A publication Critical patent/JPH06313132A/ja
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 水中生物の付着を忌避するにあたり、毒性が
少なく且つ環境汚染の少ない防汚塗料組成物を提供する
こと。 【構成】 水中生物付着忌避性を有する防汚塗料組成物
であり、デンプン・アクリル酸塩グラフト共重合体また
はポリアクリル酸ナトリウムを配位子とする高分子銅錯
体を成分として含む。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、防汚塗料組成物に係
り、特に、船舶の船底,漁網,発電所や工業用冷却水の
取水口、或いは通水路などの水中構造物に付着する有害
な水中生物を忌避し、かつ、環境破壊の少ない防汚塗料
組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、海洋等の水中に存在する生物に
は、水中に浮遊して生存するものと、特定の対象物に付
着して生存するものの二種類あり、特に、後者は船舶、
漁網、発電所の排水口等の水中構造物に付着固定して繁
殖するため、船舶の運航速度の低下、燃費の低下、漁網
の目詰まり、或いは構造物の腐食を促進させる大きな原
因となっている。
【0003】前記水中構造物に付着して生存する生物に
よる前述の弊害を防止するため、従来より、防汚剤とし
て有機錫化合物を有効成分として塗料中に配合した防汚
塗料が用いられてきた。この塗料は、塗膜中のビヒクル
あるいはポリマー骨格中に分散、結合した状態の有機錫
化合物が水中へ除々に溶出することによって、水中生物
に作用し、これを殺傷するものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記有
機錫化合物は、重金属をその組成中に含むため、長時間
の使用によって溶出に伴う周辺環境の汚染、魚貝類への
蓄積、残留等の問題が表面化し、更には有機水銀と同様
に人体への悪影響が懸念され、社会的に安全性が問題と
されるに至っている。この点、既に有機化合物について
は、法的規制が実施されており、また、前記問題を解決
するために特開昭64−31702号公報に示されるよ
うに、ビタミンK、特開平1−96101号公報に示さ
れるように、ブラシル酸等を有効成分として用いた無毒
型防汚塗料が提案されているが、一般に、天然物より抽
出した成分は植物或いは動物の何れからも微量しか採取
できないため、現段階では防汚有効成分として用いるに
は実用的でないという不都合がある。
【0005】
【発明の目的】本発明は、かかる従来例における不都合
に鑑みてなされたものであり、その目的は、水中生物の
忌避特性に富み、安価で且つ環境汚染の少ない実用性あ
る防汚塗料を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明に係る水中生物付
着忌避性の防汚塗料組成物は、デンプン・アクリル酸塩
グラフト共重合体、またはポリアクリル酸ナトリウムを
配位子とする高分子銅錯体を成分として含む、という構
成を採っている。これによって前述の目的を達成しよう
とするものである。ここで、前記デンプン・アクリル酸
塩グラフト共重合体の基本構造は、以下の式[1]に例
示され、また、ポリアクリル酸ナトリウムは以下の式
[2]に例示される。
【0007】
【化3】
【0008】
【化4】
【0009】
【作用】原料としてのデンプン・アクリル酸塩グラフト
共重合体及びポリアクリル酸ナトリウムは、衛生用品や
土壌改良剤としても普及しているので、その安全性は高
いとされている。この高分子は銅塩と安定な錯体を形成
するので、塗料ベースのポリマーとの親和性が良好であ
る。また、後述する高分子銅錯体の製法によれば、原料
とプロセスの双方から、工業的に安価に得ることができ
る。
【0010】防汚剤としてのデンプン・アクリル酸塩グ
ラフト共重合体−銅錯体及びポリアクリル酸ナトリウム
−銅錯体による水中生物の忌避作用のメカニズムは、現
段階では必ずしも明確ではないが、おおよそ以下の理由
によるものと考えられる。
【0011】デンプン・アクリル酸塩グラフト共重合体
−銅錯体及びポリアクリル酸ナトリウム−銅錯体は、デ
ンプン・アクリル酸塩共重合体と銅塩の水溶液、並びに
ポリアクリル酸ナトリウムと銅塩の水溶液とから得られ
る安定した銅の4配位錯体を形成している。この錯体の
構造はCuを中心として、高分子末端の−COOが立体
的に結合している状態であり、その立体構造としては、
それぞれ分子内配位及び分子間配位の両方がある。
【0012】この場合、中心の銅原子は電子吸引性基の
−O−に囲まれているので、+δ状態には強い刺激とな
る。特にムラサキイガイの足といったような生物の粘着
に対して有効である。また、銅は高分子の中で安定して
いるので、生物体内には吸収されず、触媒的な働き、す
なわち酸化還元酵素として作用する。
【0013】
【実施例】以下、本発明における防汚塗料組成物に含ま
れるデンプン・アクリル酸塩グラフト共重合体−銅錯体
並びにポリアクリル酸ナトリウム−銅錯体の製造方法
と、これによって得られたものによるムラサキイガイの
忌避活性試験と、毒性試験及び試験板浸漬試験の実験例
と効果について説明する。
【0014】初めに、デンプン・アクリル酸塩グラフト
共重合体及びポリアクリル酸ナトリウムについて説明す
ると、この原料としてのデンプン・アクリル酸塩グラフ
ト共重合体及びポリアクリル酸ナトリウムは、衛生用品
や土壌改良剤としても普及しているので、その安全性は
高いとされている。この高分子は銅塩と安定な錯体を形
成するので、塗料ベースのポリマーとの親和性が良好で
ある。また、後述する高分子銅錯体の製法によれば、原
料とプロセスの双方から、工業的に安価に得ることがで
きる。
【0015】防汚剤としてのデンプン・アクリル酸塩グ
ラフト共重合体−銅錯体及びポリアクリル酸ナトリウム
−銅錯体による水中生物の忌避作用のメカニズムは、現
段階では必ずしも明確ではないが、おおよそ以下の理由
によるものと考えられる。
【0016】デンプン・アクリル酸塩グラフト共重合体
−銅錯体及びポリアクリル酸ナトリウム−銅錯体は、デ
ンプン・アクリル酸塩共重合体と銅塩の水溶液、並びに
ポリアクリル酸ナトリウムと銅塩の水溶液とから得られ
る安定した銅の4配位錯体を形成している。この錯体の
構造はCuを中心として、高分子末端の−COOが立体
的に結合している状態であり、その立体構造には、図
3,図4に示すように、それぞれ分子内配位及び分子間
配位の両方がある。
【0017】中心の銅原子は電子吸引性基の−O−に囲
まれているので、+δ状態には強い刺激となる。特にム
ラサキイガイの足といったような生物の粘着に対して有
効である。また、銅は高分子の中で安定しているので、
生物体内には吸収されず、触媒的な働き、すなわち酸化
還元酵素として作用する。
【0018】デンプン・アクリル酸塩グラフト共重合体
−銅錯体並びにポリアクリル酸ナトリウム−銅錯体は、
一度形成されてしまうと水に難溶であり、殆どの有機触
媒にも難溶であり、脂質にも不溶であるため、生物備蓄
性がなく、環境汚染を引き起こすことが少ない。但し、
デンプン・アクリル酸塩グラフト共重合体−銅錯体とポ
リアクリル酸ナトリウム−銅錯体の銅の配位率を比較す
ると、グルコースを側鎖に含むデンプン・アクリル酸塩
グラフト共重合体−銅錯体の方が若干低いので、分子間
配位或いは分子内配位といった銅錯体を形成する際に、
グルコースが立体障害になっていることが考えられる。
実施上の効果を見ると、忌避効果並びに毒性試験ともに
違いがないので、大きな違いは見られないが、塗料にし
た場合の塗膜の強さはグルコースの入っていないものの
方が良いようであり、配位量と併せて考えると、ポリア
クリル酸ナトリウムの方が経済的である。
【0019】次に、その製造方法について説明する。
【0020】.硫酸銅5水和物(CuSO4・5H2O)50
[g]を500[ml]のビーカに採取する。ここで用い
る銅塩類は他の塩化銅や酢酸銅を用いてもよい。
【0021】.100[ml]程度の蒸留水を注入し
て、加熱攪拌しながら上記の硫酸銅塩を溶解させる。
【0022】.完全に溶解したら、予め計量した高分
子100[g]をスパーテルで少量づつ加え塊ができな
いように注意しつつ分散させる。
【0023】.上記の高分子が膨潤し、その大きさ
が増えてくるとスターラーが回らなくなってくるので、
スパーテルおよびビーカの壁を最小限の水で洗いながら
適宜調整する。そして、加え終わったら時計皿で蓋をし
て1時間ほど加熱攪拌し、生成した凝集物を熟成させ
る。
【0024】.熟成後、できるだけ水分を蒸発させて
おいて凝集物を分離する。なお、かさばるときは、水分
を蒸発させる前に、メタノールを若干加えておくと固液
分離は速い。
【0025】.得られた凝集物を乾燥し、所定の粒度
に粉砕する。
【0026】この方法で得られた高分子銅錯体の収率は
約90%である。
【0027】次に、このようにして得られた銅錯体によ
る忌避活性試験について、図1に基づいて説明する。
【0028】図1に示すように、試験対象物としては、
ムラサキイガイMの親を用い、その足糸mを出す場所と
本数によって効果の有無を調べた。1−4ジオキサンで
溶解させたポリメタクリル酸メチル(PMMA)の10
%樹脂溶液にサンプル20重量%分散させた樹脂溶液
を、直径47[mm]のろ紙Aに塗布し、プラスチック製
の試験板Sの上に耐水性の両面テープで貼り付け、その
周囲にムラサキイガイMを図1の如く半分ろ紙Aに載る
ように位置を固定する。固定の際には、ムラサキイガイ
Mの胴体を直接試験板に接着せずに、ゴム片Gを介して
接着剤で固定するものとする。ムラサキイガイMは表面
のゴミ等を奇麗に削り洗って乾かしておく。そして、試
験板1枚につき2リットルの天然海水を入れた水槽内へ
浸漬し、暗所で4時間及び16時間浸漬後、ムラサキイ
ガイMの足糸の本数及び付着の位置の比率を調べ、これ
によって忌避効果の有無を確認した。
【0029】また、毒性試験については、以下の方法で
行った。
【0030】先ず、ビーカに、ろ過海水を採取し、一定
量の防汚剤を分散させる。奇麗に洗ったムラサキイガイ
M20個を前記ビーカの海水中に投入する。この投入の
際、ムラサキイガイMが足糸を出した場合にガラス壁に
固着してしまうので、ガラス壁を薬包紙などで覆ってお
くものとする。
【0031】2時間経過後、ムラサキイガイMを取り出
し、ろ過海水でよく洗浄する。そして一個づつ別にして
シャーレの中に置き、シャーレ毎に水槽に入れて暗所に
置く。この場合、ムラサキイガイMは固定する必要はな
い。約20時間放置後、足糸を分泌しないムラサキイガ
イMと殻を開いて死滅したムラサキイガイMの数を数
え、それぞれ全個体に対する生存率(%)を求めた。
【0032】海水中への浸漬試験は、JIS K563
0に準じて次の手順で行った。
【0033】防汚塗料を作るにあたって、原料配合比は
実施例として当該高分子の粉末を75メッシュ以下に粉
砕したものを20重量%、バライト35.1重量%、ロ
ジン5.5重量%、ポリ塩化ビニル共重合体5.5重量
%、燐酸トリクレジル2.1重量%、MIBK19.0
重量%、キシレン12.8重量%とした。
【0034】また、比較例2として亜酸化銅55.1重
量%、ロジン5.5重量%、ポリ塩化ビニル共重合体
5.5重量%、燐酸トリクレジル2.1重量%、MIB
K19.0重量%、キシレン12.8重量%とした。
【0035】防汚塗料の作製は次のように行った。
【0036】先ず、サンプルと顔料すなわち粉末のみを
ポットに取り、ボールミルにて予備分散を行った後、別
に調整しておいた樹脂溶液を加え、一晩攪拌した後に取
り出して防汚塗料を得た。
【0037】浸漬試験例においては、各塗料を300×
300×3.2[mm]の熱間圧軟鋼板に防錆塗装を施し
たものの上に塗装し、試験板とした。海中浸漬試験は、
静岡県浜名郡新居町周辺の浜名湖で行った。上記試験板
を水深1[m]の海中に垂下し、最も生物汚損が激しい
とされる7〜9月の3ケ月間の付着生物の試験板に対す
る汚損の程度を比較した。
【0038】実施例1及び2は、デンプン・アクリル酸
グラフト共重合体−銅錯体を粉砕したものを添加したも
のであり、実施例3は、ポリアクリル酸銅鎖体を粉砕し
たものを添加したものである。
【0039】比較例1は、有機錫化合物のうち、トリブ
チルスズオキサイドの入ったもので、(株)中国塗料の
マリンゴールド、比較例2は亜酸化銅の入ったもの、比
較例3は防汚剤無添加のものであり、これらを平行して
行った。
【0040】図2に以上の試験結果を示す。この図2に
おいて、横線(−−−)が入っているものは足糸mを出
さないもの、或いは足を出してもすぐに引っ込めてしま
ったことを意味する。また、比較例3における毒性試験
は海水ブランクである。更に、浸漬試験の評価は目視に
より行い、Aは付着生物なしを示すとともに、Bは付着
生物が若干あるが連続使用が可能であることを示し、C
は付着生物がはっきり認められる場合をそれぞれ示した
ものである。
【0041】
【発明の効果】以上のように、本発明における防汚塗料
組成物として、デンプン・アクリル酸グラフト共重合体
−銅錯体並びにポリアクリル酸ナトリウムを用いた場合
のものは、毒性発現の程度はブランクである天然海水と
全く変らない程に安全性が高く、環境破壊の危険を伴わ
ずに水中付着生物の忌避効果が得られ、且つコスト低廉
を図ることができる、という従来にない優れた効果を奏
する防汚塗料組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例における忌避試験方法の一例を
示す説明図である。
【図2】図1の付着忌避試験及び毒性試験、海中浸漬試
験の実験結果を示す図表である。
【図3】銅の4配位錯体の立体構造である分子内配位を
示す説明図である。
【図4】銅の4配位錯体の立体構造である分子間配位を
示す説明図である。
【符号の説明】
A ろ紙 M ムラサキイガイ m 足糸 S 試験板 G ゴム片
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成6年5月13日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】発明の詳細な説明
【補正方法】変更
【補正内容】
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、防汚塗料組成物に係
り、特に、船舶の船底,漁網,発電所や工業用冷却水の
取水口、或いは通水路などの水中構造物に付着する有害
な水中生物を忌避し、かつ、環境破壊の少ない防汚塗料
組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、海洋等の水中に存在する生物に
は、水中に浮遊して生存するものと、特定の対象物に付
着して生存するものの二種類あり、特に、後者は船舶、
漁網、発電所の排水口等の水中構造物に付着固定して繁
殖するため、船舶の運航速度の低下、燃費の低下、漁網
の目詰まり、或いは構造物の腐食を促進させる大きな原
因となっている。
【0003】前記水中構造物に付着して生存する生物に
よる前述の弊害を防止するため、従来より、防汚剤とし
て有機錫化合物を有効成分として塗料中に配合した防汚
塗料が用いられてきた。この塗料は、塗膜中のビヒクル
あるいはポリマー骨格中に分散、結合した状態の有機錫
化合物が水中へ除々に溶出することによって、水中生物
に作用し、これを殺傷するものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記有
機錫化合物は、重金属をその組成中に含むため、長時間
の使用によって溶出に伴う周辺環境の汚染、魚貝類への
蓄積、残留等の問題が表面化し、更には有機水銀と同様
に人体への悪影響が懸念され、社会的に安全性が問題と
されるに至っている。この点、既に有機化合物について
は、法的規制が実施されており、また、前記問題を解決
するために特開昭64−31702号公報に示されるよ
うに、ビタミンK、特開平1−96101号公報に示さ
れるように、プラシル酸等を有効成分として用いた無毒
型防汚塗料が提案されているが、一般に、天然物より抽
出した成分は植物或いは動物の何れからも微量しか採取
できないため、現段階では防汚有効成分として用いるに
は実用的でないという不都合がある。
【0005】
【発明の目的】本発明は、かかる従来例における不都合
に鑑みてなされたものであり、その目的は、水中生物の
忌避特性に富み、安価で且つ環境汚染の少ない実用性あ
る防汚塗料を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明に係る水中生物付
着忌避性の防汚塗料組成物は、デンプン・アクリル酸塩
グラフト共重合体、またはポリアクリル酸ナトリウムを
配位子とする高分子銅錯体を成分として含む、という構
成を採っている。これによって前述の目的を達成しよう
とするものである。ここで、前記デンプン・アクリル酸
塩グラフト共重合体の基本構造は、以下の式[1]に例
示され、また、ポリアクリル酸ナトリウムは以下の式
[2]に例示される。
【0007】
【化3】
【0008】
【化4】
【0009】
【作用】原料としてのデンプン・アクリル酸塩グラフト
共重合体及びポリアクリル酸ナトリウムは、衛生用品や
土壌改良剤としても普及しているので、その安全性は高
いとされている。この高分子は銅塩と安定な錯体を形成
するので、塗料ベースのポリマーとの親和性が良好であ
る。また、後述する高分子銅錯体の製法によれば、原料
とプロセスの双方から、工業的に安価に得ることができ
る。
【0010】防汚剤としてのデンプン・アクリル酸塩グ
ラフト共重合体−銅錯体及びポリアクリル酸ナトリウム
−銅錯体による水中生物の忌避作用のメカニズムは、現
段階では必ずしも明確ではないが、おおよそ以下の理由
によるものと考えられる。
【0011】デンプン・アクリル酸塩グラフト共重合体
−銅錯体及びポリアクリル酸ナトリウム−銅錯体は、デ
ンプン・アクリル酸塩共重合体と銅塩の水溶液、並びに
ポリアクリル酸ナトリウムと銅塩の水溶液とから得られ
る安定した銅の4配位錯体を形成している。この錯体の
構造はCuを中心として、高分子末端の−COOが立体
的に4つ結合している状態であり、その立体構造として
は、それぞれ分子内配位及び分子間配位の両方がある。
それら分子内配位及び分子内配位の状態図を図3、図4
に示した。
【0012】この場合、中心の銅原子は電子吸引性基の
−O−に囲まれているので、錯全体としては+δに荷電
しており、生物表面の−δ状態には強い刺激となる。
にムラサキイガイの足といったような生物の粘膜に対し
て有効である。また、銅は高分子の中で安定に配位して
いるので、生物体内には吸収されず、触媒的な働き、す
なわち酸化還元酵素として作用する。
【0013】
【実施例】以下、本発明における防汚塗料組成物に含ま
れるデンプン・アクリル酸塩グラフト共重合体−銅錯体
並びにポリアクリル酸ナトリウム−銅錯体の製造方法
と、これによって得られたものによるムラサキイガイの
忌避活性試験と、毒性試験及び試験板浸漬試験の実験例
と効果について説明する。
【0014】デンプン・アクリル酸塩グラフト共重合体
−銅錯体並びにポリアクリル酸ナトリウム−銅錯体は、
一度形成されてしまうと水に難溶であり、殆どの有機溶
にも難溶であり、脂質にも不溶であるため、生物蓄積
がなく、環境汚染を引き起こすことが少ない。但し、
デンプン・アクリル酸塩グラフト共重合体−銅錯体とポ
リアクリル酸ナトリウム−銅錯体の銅の配位率を比較す
ると、グルコースを側鎖に含むデンプン・アクリル酸塩
グラフト共重合体−銅錯体の方が若干低いので、分子間
配位或いは分子内配位といった銅錯体を形成する際に、
グルコースが立体障害になっていることが考えられる。
実施上の効果を見ると、忌避効果並びに毒性試験ともに
違いがないので、大きな違いは見られないが、塗料にし
た場合の塗膜の強さはグルコースの入っていないものの
方が良いようであり、配位量と併せて考えると、ポリア
クリル酸ナトリウムの方が経済的である。
【0015】次に、その製造方法について説明する。
【0016】.硫酸銅5水和物(CuSO4・5H2O)50
[g]を500[ml]のビーカに採取する。ここで用い
る銅塩類は他の塩化銅や酢酸銅を用いてもよい。
【0017】.100[ml]程度の蒸留水を注入し
て、加熱攪拌しながら上記の硫酸銅塩を溶解させる。
【0018】.完全に溶解したら、予め計量した高分
子100[g]をスパーテルで少量づつ加え塊ができな
いように注意しつつ分散させる。
【0019】.上記の高分子が膨潤し、そのかさが
増えてくるとスターラーが回らなくなってくるので、ス
パーテルおよびビーカの壁を最小限の水で洗いながら適
宜調整する。そして、加え終わったら時計皿で蓋をして
1時間ほど加熱攪拌し、生成した凝集物を熟成させる。
【0020】.熟成後、できるだけ水分を蒸発させて
おいて凝集物を分離する。なお、かさばるときは、水分
を蒸発させる前に、メタノールを若干加えておくと固液
分離は速い。
【0021】.得られた凝集物を乾燥し、所定の粒度
に粉砕する。
【0022】この方法で得られた高分子銅錯体の収率は
約90%である。
【0023】次に、このようにして得られた銅錯体によ
る忌避活性試験について、図1に基づいて説明する。
【0024】図1に示すように、試験対象物としては、
ムラサキイガイMの親を用い、その足糸mを出す場所と
本数によって効果の有無を調べた。1−4ジオキサンで
溶解させたポリメタクリル酸メチル(PMMA)の10
%樹脂溶液にサンプル20重量%分散させた樹脂溶液
を、直径47[mm]のろ紙Aに塗布し、プラスチック製
の試験板Sの上に耐水性の両面テープで貼り付け、その
周囲にムラサキイガイMを図1の如く半分ろ紙Aに載る
ように位置を固定する。固定の際には、ムラサキイガイ
Mの胴体を直接試験板に接着せずに、ゴム片Gを介して
接着剤で固定するものとする。ムラサキイガイMは表面
のゴミ等を奇麗に削り洗って乾かしておく。そして、試
験板1枚につき2リットルの天然海水を入れた水槽内へ
浸漬し、暗所で4時間及び16時間浸漬後、ムラサキイ
ガイMの足糸の本数及び付着の位置の比率を調べ、これ
によって忌避効果の有無を確認した。
【0025】また、毒性試験については、以下の方法で
行った。
【0026】先ず、ビーカに、ろ過海水を採取し、一定
量の防汚剤を分散させる。奇麗に洗ったムラサキイガイ
M20個を前記ビーカの海水中に投入する。この投入の
際、ムラサキイガイMが足糸を出した場合にガラス壁に
固着してしまうので、ガラス壁を薬包紙などで覆ってお
くものとする。
【0027】2時間経過後、ムラサキイガイMを取り出
し、ろ過海水でよく洗浄する。そして一個づつ別にして
シャーレの中に置き、シャーレ毎に水槽に入れて暗所に
置く。この場合、ムラサキイガイMは固定する必要はな
い。約20時間放置後、足糸を分泌しないムラサキイガ
イMと殻を開いて死滅したムラサキイガイMの数を数
え、それぞれ全個体に対する生存率(%)を求めた。
【0028】海水中への浸漬試験は、JIS K563
0に準じて次の手順で行った。
【0029】防汚塗料を作るにあたって、原料配合比は
実施例として当該高分子の粉末を75メッシュ以下に粉
砕したものを20重量%、バライト35.1重量%、ロ
ジン5.5重量%、ポリ塩化ビニル共重合体5.5重量
%、燐酸トリクレジル2.1重量%、MIBK19.0
重量%、キシレン12.8重量%とした。
【0030】また、比較例2として亜酸化銅55.1重
量%、ロジン5.5重量%、ポリ塩化ビニル共重合体
5.5重量%、燐酸トリクレジル2.1重量%、MIB
K19.0重量%、キシレン12.8重量%とした。
【0031】防汚塗料の作製は次のように行った。
【0032】先ず、サンプルと顔料すなわち粉末のみを
ポットに取り、ボールミルにて予備分散を行った後、別
に調整しておいた樹脂溶液を加え、一晩攪拌した後に取
り出して防汚塗料を得た。
【0033】浸漬試験例においては、各塗料を300×
300×3.2[mm]の熱間圧軟鋼板に防錆塗装を施し
たものの上に塗装し、試験板とした。海中浸漬試験は、
静岡県浜名郡新居町周辺の浜名湖で行った。上記試験板
を水深1[m]の海中に垂下し、最も生物汚損が激しい
とされる7〜9月の3ケ月間の付着生物の試験板に対す
る汚損の程度を比較した。
【0034】実施例1及び2は、デンプン・アクリル酸
グラフト共重合体−銅錯体を粉砕したものを添加したも
のであり、実施例3は、ポリアクリル酸銅錯体を粉砕し
たものを添加したものである。
【0035】比較例1は、有機錫化合物のうち、トリブ
チルスズオキサイドの入ったもので、(株)中国塗料の
マリンゴールド、比較例2は亜酸化銅の入ったもの、比
較例3は防汚剤無添加のものであり、これらを平行して
行った。
【0036】図2に以上の試験結果を示す。この図2に
おいて、横線(−−−)が入っているものは足糸mを出
さないもの、或いは足を出してもすぐに引っ込めてしま
ったことを意味する。また、比較例3における毒性試験
は海水ブランクである。更に、浸漬試験の評価は目視に
より行い、Aは付着生物なしを示すとともに、Bは付着
生物が若干あるが連続使用が可能であることを示し、C
は付着生物がはっきり認められる場合をそれぞれ示した
ものである。
【0037】
【発明の効果】以上のように、本発明における防汚塗料
組成物として、デンプン・アクリル酸グラフト共重合体
−銅錯体並びにポリアクリル酸ナトリウムを用いた場合
のものは、毒性発現の程度はブランクである天然海水と
全く変らない程に安全性が高く、環境破壊の危険を伴わ
ずに水中付着生物の忌避効果が得られ、且つコスト低廉
を図ることができる、という従来にない優れた効果を奏
する防汚塗料組成物を提供することができる。
【手続補正2】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図2
【補正方法】変更
【補正内容】
【図2】

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 次式[1]に示されるデンプン・アクリ
    ル酸塩グラフト共重合体を配位子とする高分子銅錯体を
    成分として含むことを特徴とする防汚塗料組成物。 【化1】
  2. 【請求項2】 次式[2]に示されるポリアクリル酸ナ
    トリウムを配位子とする高分子銅錯体を成分として含む
    ことを特徴とする防汚塗料組成物。 【化2】
  3. 【請求項3】 前記高分子銅錯体を少なくとも一種類以
    上用いたことを特徴とする前記請求項1または2記載の
    水中生物付着忌避性の防汚塗料組成物。
JP5123578A 1993-04-27 1993-04-27 防汚塗料組成物 Pending JPH06313132A (ja)

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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2005298507A (ja) * 2004-04-08 2005-10-27 Rohm & Haas Co 抗菌組成物ならびにその製造および使用方法

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JP2005298507A (ja) * 2004-04-08 2005-10-27 Rohm & Haas Co 抗菌組成物ならびにその製造および使用方法

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