JPH0680907A - 防汚塗料組成物 - Google Patents
防汚塗料組成物Info
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- JPH0680907A JPH0680907A JP4137975A JP13797592A JPH0680907A JP H0680907 A JPH0680907 A JP H0680907A JP 4137975 A JP4137975 A JP 4137975A JP 13797592 A JP13797592 A JP 13797592A JP H0680907 A JPH0680907 A JP H0680907A
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- weight
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Abstract
(57)【要約】
【目的】 水中生物の付着を忌避し、かつ、環境汚染の
少ない防汚塗料組成物を提供すること。 【構成】 塗膜形成材に有機銅錯体,その誘導体及びそ
れらの組合せからなる有効成分を含有させたもの。
少ない防汚塗料組成物を提供すること。 【構成】 塗膜形成材に有機銅錯体,その誘導体及びそ
れらの組合せからなる有効成分を含有させたもの。
Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は防汚塗料組成物に係り、
とくに船舶の船底,漁網,発電所や工業用冷却水の取水
口や通水路などの水中構造物に有害な水中生物を忌避
し、かつ、環境破壊の少ない防汚塗料組成物に関する。
とくに船舶の船底,漁網,発電所や工業用冷却水の取水
口や通水路などの水中構造物に有害な水中生物を忌避
し、かつ、環境破壊の少ない防汚塗料組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、海洋等の水中に存在する生物に
は、水中に浮遊して生存するものと、特定の対象物に付
着して生存するものの二種類があり、特に後者は船舶,
漁網,発電所の排水口等の水中構造物に付着固定して繁
殖するため、船舶の運航速度,燃費の増大,漁網の目詰
まり、あるいは、構造物の腐食を促進させる大きな原因
となっている。
は、水中に浮遊して生存するものと、特定の対象物に付
着して生存するものの二種類があり、特に後者は船舶,
漁網,発電所の排水口等の水中構造物に付着固定して繁
殖するため、船舶の運航速度,燃費の増大,漁網の目詰
まり、あるいは、構造物の腐食を促進させる大きな原因
となっている。
【0003】前記特定対象物に付着して生存する生物に
よる前記弊害を防止するため、従来より防汚剤として有
機錫化合物等を有効成分として塗料中に配合した防汚塗
料が用いられてきた。この塗料は、塗膜中のビヒクルあ
るいはポリマー骨格中に分散,結合した状態の有機錫化
合物が水中へ徐々に溶出することによって水中生物に作
用し、当該水中生物を殺傷するものである。
よる前記弊害を防止するため、従来より防汚剤として有
機錫化合物等を有効成分として塗料中に配合した防汚塗
料が用いられてきた。この塗料は、塗膜中のビヒクルあ
るいはポリマー骨格中に分散,結合した状態の有機錫化
合物が水中へ徐々に溶出することによって水中生物に作
用し、当該水中生物を殺傷するものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記有
機錫化合物は、重金属をその組成中に含むため、長期間
の使用によって前記溶出に伴なう周辺の環境汚染,魚介
類への蓄積,残留等の問題が表面化し、更には有機水銀
と同様に人体への悪影響が懸念され、社会的に安全性が
問題されるに至っている。この点、既に有機錫化合物に
ついては、法的規制が実施されており、また、前記問題
を解決するために特開昭64−31702号公報に示さ
れるように、ビタミンK,特開平1−96101号公報
に示されるように、プラシル酸等を有効成分として用い
た無毒型防汚塗料が提案されているが、一般に、天然物
より抽出した成分は植物あるいは動物のいずれからも微
量しか採取できないため、現段階では防汚有効成分とし
て用いるには実用的でないという不都合がある。
機錫化合物は、重金属をその組成中に含むため、長期間
の使用によって前記溶出に伴なう周辺の環境汚染,魚介
類への蓄積,残留等の問題が表面化し、更には有機水銀
と同様に人体への悪影響が懸念され、社会的に安全性が
問題されるに至っている。この点、既に有機錫化合物に
ついては、法的規制が実施されており、また、前記問題
を解決するために特開昭64−31702号公報に示さ
れるように、ビタミンK,特開平1−96101号公報
に示されるように、プラシル酸等を有効成分として用い
た無毒型防汚塗料が提案されているが、一般に、天然物
より抽出した成分は植物あるいは動物のいずれからも微
量しか採取できないため、現段階では防汚有効成分とし
て用いるには実用的でないという不都合がある。
【0005】
【発明の目的】本発明は、前記従来例における不都合に
鑑みてなされたものであり、その目的は、水中生物忌避
特性に富み、かつ、環境汚染の少ない実用性ある防汚塗
料を提供することにある。
鑑みてなされたものであり、その目的は、水中生物忌避
特性に富み、かつ、環境汚染の少ない実用性ある防汚塗
料を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するた
め、本発明に係る防汚塗料組成物は、塗膜形成材中に少
なくとも一種以上の有機銅錯体、または、その誘導体お
よびそれらの組合わせからなる成分が含有されることに
よって構成されている。
め、本発明に係る防汚塗料組成物は、塗膜形成材中に少
なくとも一種以上の有機銅錯体、または、その誘導体お
よびそれらの組合わせからなる成分が含有されることに
よって構成されている。
【0007】
【作用】防汚剤としての有機銅錯体による水中生物の忌
避作用のメカニズムは、現段階では必ずしも明確ではな
いが、おおよそ以下の理由によるものとされている。
避作用のメカニズムは、現段階では必ずしも明確ではな
いが、おおよそ以下の理由によるものとされている。
【0008】有機銅錯体についての海水中における挙動
は“化1”の場合、ミクロ的にみると錯体中において銅
原子は、窒素や酸素といったフリーラジカルの存在によ
りδ+に荷電している。この活性化した銅は、例えば微
生物,藻類の胞子,大型生物の幼生,ムラサキイガイの
足に対しフリーの銅イオンと同じように、接触する細胞
に刺激を与える。
は“化1”の場合、ミクロ的にみると錯体中において銅
原子は、窒素や酸素といったフリーラジカルの存在によ
りδ+に荷電している。この活性化した銅は、例えば微
生物,藻類の胞子,大型生物の幼生,ムラサキイガイの
足に対しフリーの銅イオンと同じように、接触する細胞
に刺激を与える。
【0009】
【化1】
【0010】また、R1,R2の炭素数あるいはフェニル
基といった違いによって、阻害の強さは変わるが、電子
吸引性の強いフェニル基を含む誘導体などを用いると一
層付着しにくくなる。従来の無機銅錯体では藻類に対す
る防汚効果が弱いが、有機胴錯体の配位子がフェニル基
で構成されていれば、無い場合に比べて藻類に対する防
汚効果は高いようである。一方、錯体の側鎖中に、エス
テル結合など加水分解性の部分があると溶出しやすくな
るため、塗膜の寿命命自体は疎水性のものに比べて短く
なるが、汚損は少ない。
基といった違いによって、阻害の強さは変わるが、電子
吸引性の強いフェニル基を含む誘導体などを用いると一
層付着しにくくなる。従来の無機銅錯体では藻類に対す
る防汚効果が弱いが、有機胴錯体の配位子がフェニル基
で構成されていれば、無い場合に比べて藻類に対する防
汚効果は高いようである。一方、錯体の側鎖中に、エス
テル結合など加水分解性の部分があると溶出しやすくな
るため、塗膜の寿命命自体は疎水性のものに比べて短く
なるが、汚損は少ない。
【0011】しかし、加水分解性があるものは、海水中
に溶け出してしまうため環境生物に取り込まれやすく、
環境に対し悪影響を引き起こす恐れがある。かかる有機
銅錯体は水に難溶であり、しかもほとんどの有機溶媒に
難溶、脂質に不溶であるため生物蓄積性がなく環境汚染
を引き起こす事が少ないと考えられる。
に溶け出してしまうため環境生物に取り込まれやすく、
環境に対し悪影響を引き起こす恐れがある。かかる有機
銅錯体は水に難溶であり、しかもほとんどの有機溶媒に
難溶、脂質に不溶であるため生物蓄積性がなく環境汚染
を引き起こす事が少ないと考えられる。
【0012】分子レベルの問題をマクロな現象に適応す
る場合、すべてが1対1対応ではないが、無機銅化合物
に比べると有機銅錯体の大型生物に対する付着忌避効果
は大腸菌や乳酸菌といった一般的な菌類に対する抗菌性
にある程度対応しているという見解もある。
る場合、すべてが1対1対応ではないが、無機銅化合物
に比べると有機銅錯体の大型生物に対する付着忌避効果
は大腸菌や乳酸菌といった一般的な菌類に対する抗菌性
にある程度対応しているという見解もある。
【0013】
【発明の実施例】以下、本発明の実施例につき、比較例
と対比しつつ説明する。試験対象物は、「ムラサキイガ
イ」の親Mを用い、その足糸mを出す場所と本数によっ
て効果の有無を調べた。該塗料を塗布した直径47mm
のろ紙Aをプラスチック製の試験板Sの上に耐水性の両
面テープで貼り付け、その周囲に貝Mを図1の如く半分
ろ紙Aに載るような位置に固定する。固定の際には貝M
の本体を直接板につけずに、ゴム片Gを介して接着剤で
固定するものとする。そして、プラスチック製の試験板
Sに対して約2リットルの天然海水を入れた水槽内へ浸
漬し、暗所で3時間浸漬後、イガイの足糸の本数および
付着の位置の比率を調べ、これによって忌避効果の有無
をチェックした。
と対比しつつ説明する。試験対象物は、「ムラサキイガ
イ」の親Mを用い、その足糸mを出す場所と本数によっ
て効果の有無を調べた。該塗料を塗布した直径47mm
のろ紙Aをプラスチック製の試験板Sの上に耐水性の両
面テープで貼り付け、その周囲に貝Mを図1の如く半分
ろ紙Aに載るような位置に固定する。固定の際には貝M
の本体を直接板につけずに、ゴム片Gを介して接着剤で
固定するものとする。そして、プラスチック製の試験板
Sに対して約2リットルの天然海水を入れた水槽内へ浸
漬し、暗所で3時間浸漬後、イガイの足糸の本数および
付着の位置の比率を調べ、これによって忌避効果の有無
をチェックした。
【0014】また、毒性試験については以下の方法で行
なった。ビーカーに、ろ過海水を採取し、一定量の防汚
剤を混合・溶解させる。海水単独で溶解しない場合は、
少量のジメチスルホキシドなどの半親水性半疎水性溶液
に溶かしておいたのち、海水に混合する。ビーカーに、
ムラサキイガイ20個体を上記海水中に投入する。2時
間放置後、貝を取り出し、ろ過海水で良く洗浄する。貝
を一個ずつ別にしてシャーレの中に置き、シャーレごと
水槽に入れて暗所に置く。約20時間放置後、足糸を分
泌しない貝と貝が殻を開いて死んでしまったものの数を
数え、それぞれ全個体数に対する生存率(%)を求め
た。
なった。ビーカーに、ろ過海水を採取し、一定量の防汚
剤を混合・溶解させる。海水単独で溶解しない場合は、
少量のジメチスルホキシドなどの半親水性半疎水性溶液
に溶かしておいたのち、海水に混合する。ビーカーに、
ムラサキイガイ20個体を上記海水中に投入する。2時
間放置後、貝を取り出し、ろ過海水で良く洗浄する。貝
を一個ずつ別にしてシャーレの中に置き、シャーレごと
水槽に入れて暗所に置く。約20時間放置後、足糸を分
泌しない貝と貝が殻を開いて死んでしまったものの数を
数え、それぞれ全個体数に対する生存率(%)を求め
た。
【0015】海水中への浸漬試験はJIS K5630
に準じて次の手順で行った。
に準じて次の手順で行った。
【0016】防汚塗料を作るにあたって、原料配合比は
実施例として有機銅錯体粉末を20重量%、パライト3
5.1重量%、ロジン5.5重量%、ポリ塩化ビニル共
重合体5.5重量%、燐酸トリクレシル2.1重量%、
MIBK19.0重量%、キシレン12.8重量%とし
た。また、比較例2として亜酸化銅55.1重量%、ロ
ジン5.5重量%、ポリ塩化ビニル共重合体5.5重量
%、燐酸トリクレシル2.1重量%、MIBK19.0
重量%、キシレン12.8重量%とし、比較例3として
パライト55.1重量%、ロジン5.5重量%、ポリ塩
化ビニル共重合体5.5重量%、燐酸トリクレシル2.
1重量%、MIBK19.0重量%、キシレン12.8
重量%とした。防汚塗料の作製は次のように行った。ま
ず、サンプルと顔料をポットにとりポールミルにて予備
分散を行った後別に調整した樹脂溶液を加え、一晩撹拌
した後にとりだし、防汚塗料を得た。
実施例として有機銅錯体粉末を20重量%、パライト3
5.1重量%、ロジン5.5重量%、ポリ塩化ビニル共
重合体5.5重量%、燐酸トリクレシル2.1重量%、
MIBK19.0重量%、キシレン12.8重量%とし
た。また、比較例2として亜酸化銅55.1重量%、ロ
ジン5.5重量%、ポリ塩化ビニル共重合体5.5重量
%、燐酸トリクレシル2.1重量%、MIBK19.0
重量%、キシレン12.8重量%とし、比較例3として
パライト55.1重量%、ロジン5.5重量%、ポリ塩
化ビニル共重合体5.5重量%、燐酸トリクレシル2.
1重量%、MIBK19.0重量%、キシレン12.8
重量%とした。防汚塗料の作製は次のように行った。ま
ず、サンプルと顔料をポットにとりポールミルにて予備
分散を行った後別に調整した樹脂溶液を加え、一晩撹拌
した後にとりだし、防汚塗料を得た。
【0017】浸漬試験例
【0018】各塗料を、300×300×3.2mmの
熱間圧軟鋼板に防錆塗装を施したものの上に塗装し、試
験板とした。海中浸漬試験は、静岡県浜名郡新居町周辺
の浜名湖で行った。上記試験板を水深1mの海中に垂下
し、最も生物汚損が激しいといわれる7〜9月の3ヶ月
間の付着生物の試験板に対する汚損の程度を比較した。
熱間圧軟鋼板に防錆塗装を施したものの上に塗装し、試
験板とした。海中浸漬試験は、静岡県浜名郡新居町周辺
の浜名湖で行った。上記試験板を水深1mの海中に垂下
し、最も生物汚損が激しいといわれる7〜9月の3ヶ月
間の付着生物の試験板に対する汚損の程度を比較した。
【0019】実施例は特許請求範囲の第2項に相当する
有機銅錯体であり、実施例1〜3は請求項3〜5のグル
ープにそれぞれ対応するものである。比較例1は有機錫
化合物のうち、トリプチル錫オキサイドの入ったもので
(株)中国塗料のマリンゴールド、比較例2は亜酸化銅
の入ったもの、比較例3は防汚剤無添加のものであり、
これらを並行しておこなった。
有機銅錯体であり、実施例1〜3は請求項3〜5のグル
ープにそれぞれ対応するものである。比較例1は有機錫
化合物のうち、トリプチル錫オキサイドの入ったもので
(株)中国塗料のマリンゴールド、比較例2は亜酸化銅
の入ったもの、比較例3は防汚剤無添加のものであり、
これらを並行しておこなった。
【0020】図2に試験結果を示す。この図2の図表に
おいて横線がはいっているものは足糸mを出さない、ま
たは足を出してもすぐ引っ込めてしまったことを意味し
ている。
おいて横線がはいっているものは足糸mを出さない、ま
たは足を出してもすぐ引っ込めてしまったことを意味し
ている。
【0021】
【発明の効果】以上のように、本発明によると、汚防塗
料組成物として、有機銅錯体を用いた場合のものは有機
錫を用いたものと同程度の価格で、かつ、毒性発現濃度
は1/1000以下なため、天然物を使う場合とまでは
ゆかないまでも、環境破壊の危険を少なくして水中付着
生物への忌避効果が得られ、従来にないより優れた防汚
塗料組成物を提供することができる。
料組成物として、有機銅錯体を用いた場合のものは有機
錫を用いたものと同程度の価格で、かつ、毒性発現濃度
は1/1000以下なため、天然物を使う場合とまでは
ゆかないまでも、環境破壊の危険を少なくして水中付着
生物への忌避効果が得られ、従来にないより優れた防汚
塗料組成物を提供することができる。
【図1】本発明の実施例に係る試験方法の一例を示す説
明図である。
明図である。
【図2】図1の付着忌避試験および毒性試験、海中浸漬
試験の実験結果を示す図表である。
試験の実験結果を示す図表である。
A ろ紙 M ムラサキガイ m 足糸 S 試験板
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成5年6月25日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】請求項4
【補正方法】変更
【補正内容】
【化6】
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】発明の詳細な説明
【補正方法】変更
【補正内容】
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は防汚塗料組成物に係り、
とくに船舶の船底,漁網,発電所や工業用冷却水の取水
口や通水路などの水中構造物に有害な水中生物を忌避
し、かつ、環境破壊の少ない防汚塗料組成物に関する。
とくに船舶の船底,漁網,発電所や工業用冷却水の取水
口や通水路などの水中構造物に有害な水中生物を忌避
し、かつ、環境破壊の少ない防汚塗料組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、海洋等の水中に存在する生物に
は、水中に浮遊して生存するものと、特定の対象物に付
着して生存するものの二種類があり、特に後者は船舶,
漁網,発電所の排水口等の水中構造物に付着固定して繁
殖するため、船舶の運航速度,燃費の低下,漁網の目詰
まり、あるいは、構造物の腐食を促進させる大きな原因
となっている。
は、水中に浮遊して生存するものと、特定の対象物に付
着して生存するものの二種類があり、特に後者は船舶,
漁網,発電所の排水口等の水中構造物に付着固定して繁
殖するため、船舶の運航速度,燃費の低下,漁網の目詰
まり、あるいは、構造物の腐食を促進させる大きな原因
となっている。
【0003】前記特定対象物に付着して生存する生物に
よる前記弊害を防止するため、従来より防汚剤として有
機錫化合物等を有効成分として塗料中に配合した防汚塗
料が用いられてきた。この塗料は、塗膜中のビヒクルあ
るいはポリマー骨格中に分散,結合した状態の有機錫化
合物が水中へ徐々に溶出することによって水中生物に作
用し、当該水中生物を殺傷するものである。
よる前記弊害を防止するため、従来より防汚剤として有
機錫化合物等を有効成分として塗料中に配合した防汚塗
料が用いられてきた。この塗料は、塗膜中のビヒクルあ
るいはポリマー骨格中に分散,結合した状態の有機錫化
合物が水中へ徐々に溶出することによって水中生物に作
用し、当該水中生物を殺傷するものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記有
機錫化合物は、重金属をその組成中に含むため、長期間
の使用によって前記溶出に伴なう周辺の環境汚染,魚介
類への蓄積,残留等の問題が表面化し、更には有機水銀
と同様に人体への悪影響が懸念され、社会的に安全性が
問題とされるに至っている。この点、既に有機錫化合物
については、法的規制が実施されており、また、前記問
題を解決するために特開昭64−31702号公報に示
されるように、ビタミンK,特開平1−96101号公
報に示されるように、ブラシル酸等を有効成分として用
いた無毒型防汚塗料が提案されているが、一般に、天然
物より抽出した成分は植物あるいは動物のいずれからも
微量しか採取できないため、現段階では防汚有効成分と
して用いるには実用的でないという不都合がある。
機錫化合物は、重金属をその組成中に含むため、長期間
の使用によって前記溶出に伴なう周辺の環境汚染,魚介
類への蓄積,残留等の問題が表面化し、更には有機水銀
と同様に人体への悪影響が懸念され、社会的に安全性が
問題とされるに至っている。この点、既に有機錫化合物
については、法的規制が実施されており、また、前記問
題を解決するために特開昭64−31702号公報に示
されるように、ビタミンK,特開平1−96101号公
報に示されるように、ブラシル酸等を有効成分として用
いた無毒型防汚塗料が提案されているが、一般に、天然
物より抽出した成分は植物あるいは動物のいずれからも
微量しか採取できないため、現段階では防汚有効成分と
して用いるには実用的でないという不都合がある。
【0005】
【発明の目的】本発明は、前記従来例における不都合に
鑑みてなされたものであり、その目的は、水中生物忌避
特性に富み、かつ、環境汚染の少ない実用性ある防汚塗
料を提供することにある。
鑑みてなされたものであり、その目的は、水中生物忌避
特性に富み、かつ、環境汚染の少ない実用性ある防汚塗
料を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するた
め、本発明に係る防汚塗料組成物は、塗膜形成材中に少
なくとも一種以上の有機銅錯体、または、その誘導体お
よびそれらの組合わせからなる成分が含有されることに
よって構成されている。
め、本発明に係る防汚塗料組成物は、塗膜形成材中に少
なくとも一種以上の有機銅錯体、または、その誘導体お
よびそれらの組合わせからなる成分が含有されることに
よって構成されている。
【0007】
【作用】防汚剤としての有機銅錯体による水中生物の忌
避作用のメカニズムは、現段階では必ずしも明確ではな
いが、おおよそ以下の理由によるものとされている。
避作用のメカニズムは、現段階では必ずしも明確ではな
いが、おおよそ以下の理由によるものとされている。
【0008】有機銅錯体についての海水中における挙動
は“化1”の場合、ミクロ的にみると錯体中において銅
原子は、窒素や酸素といったフリーラジカルの存在によ
りδ+に荷電している。この活性化した銅は、例えば微
生物,藻類の胞子,大型生物の幼生,ムラサキイガイの
足に対しフリーの銅イオンと同じように、接触する細胞
に刺激を与える。
は“化1”の場合、ミクロ的にみると錯体中において銅
原子は、窒素や酸素といったフリーラジカルの存在によ
りδ+に荷電している。この活性化した銅は、例えば微
生物,藻類の胞子,大型生物の幼生,ムラサキイガイの
足に対しフリーの銅イオンと同じように、接触する細胞
に刺激を与える。
【0009】
【化1】
【0010】また、R1,R2の炭素数あるいはフェニル
基といった違いによって、阻害の強さは変わるが、電子
吸引性の強いフェニル基を含む誘導体などを用いると一
層付着しにくくなる。従来の無機銅錯体では藻類に対す
る防汚効果が弱いが、有機胴錯体の配位子がフェニル基
で構成されていれば、無い場合に比べて藻類に対する防
汚効果は高いようである。一方、錯体の側鎖中に、エス
テル結合など加水分解性の部分があると溶出しやすくな
るため、塗膜の寿命自体は疎水性のものに比べて短くな
るが、汚損は少ない。
基といった違いによって、阻害の強さは変わるが、電子
吸引性の強いフェニル基を含む誘導体などを用いると一
層付着しにくくなる。従来の無機銅錯体では藻類に対す
る防汚効果が弱いが、有機胴錯体の配位子がフェニル基
で構成されていれば、無い場合に比べて藻類に対する防
汚効果は高いようである。一方、錯体の側鎖中に、エス
テル結合など加水分解性の部分があると溶出しやすくな
るため、塗膜の寿命自体は疎水性のものに比べて短くな
るが、汚損は少ない。
【0011】しかし、加水分解性があるものは、海水中
に溶け出してしまうため環境生物に取り込まれやすく、
環境に対し悪影響を引き起こす恐れがある。かかる有機
銅錯体は水に難溶であり、しかもほとんどの有機溶媒に
難溶、脂質に不溶であるため生物蓄積性がなく環境汚染
を引き起こす事が少ないと考えられる。
に溶け出してしまうため環境生物に取り込まれやすく、
環境に対し悪影響を引き起こす恐れがある。かかる有機
銅錯体は水に難溶であり、しかもほとんどの有機溶媒に
難溶、脂質に不溶であるため生物蓄積性がなく環境汚染
を引き起こす事が少ないと考えられる。
【0012】分子レベルの問題をマクロな現象に適応す
る場合、すべてが1対1対応ではないが、無機銅化合物
に比べると有機銅錯体の大型生物に対する付着忌避効果
は大腸菌や乳酸菌といった一般的な菌類に対する抗菌性
にある程度対応しているという見解もある。
る場合、すべてが1対1対応ではないが、無機銅化合物
に比べると有機銅錯体の大型生物に対する付着忌避効果
は大腸菌や乳酸菌といった一般的な菌類に対する抗菌性
にある程度対応しているという見解もある。
【0013】
【発明の実施例】以下、本発明の実施例につき、比較例
と対比しつつ説明する。試験対象物は、「ムラサキイガ
イ」の親Mを用い、その足糸mを出す場所と本数によっ
て効果の有無を調べた。該塗料を塗布した直径47mm
のろ紙Aをプラスチック製の試験板Sの上に耐水性の両
面テープで貼り付け、その周囲に貝Mを図1の如く半分
ろ紙Aに載るような位置に固定する。固定の際には貝M
の本体を直接板につけずに、ゴム片Gを介して接着剤で
固定するものとする。そして、プラスチック製の試験板
Sに対して約2リットルの天然海水を入れた水槽内へ浸
漬し、暗所で3時間浸漬後、イガイの足糸の本数および
付着の位置の比率を調べ、これによって忌避効果の有無
をチェックした。
と対比しつつ説明する。試験対象物は、「ムラサキイガ
イ」の親Mを用い、その足糸mを出す場所と本数によっ
て効果の有無を調べた。該塗料を塗布した直径47mm
のろ紙Aをプラスチック製の試験板Sの上に耐水性の両
面テープで貼り付け、その周囲に貝Mを図1の如く半分
ろ紙Aに載るような位置に固定する。固定の際には貝M
の本体を直接板につけずに、ゴム片Gを介して接着剤で
固定するものとする。そして、プラスチック製の試験板
Sに対して約2リットルの天然海水を入れた水槽内へ浸
漬し、暗所で3時間浸漬後、イガイの足糸の本数および
付着の位置の比率を調べ、これによって忌避効果の有無
をチェックした。
【0014】また、毒性試験については以下の方法で行
なった。ビーカーに、ろ過海水を採取し、一定量の防汚
剤を混合・溶解させる。海水単独で溶解しない場合は、
少量のジメチルスルホキシドなどの半親水性半疎水性溶
液に溶かしておいたのち、海水に混合する。ビーカー
に、ムラサキイガイ20個体を上記海水中に投入する。
2時間放置後、貝を取り出し、ろ過海水で良く洗浄す
る。貝を一個ずつ別にしてシャーレの中に置き、シャー
レごと水槽に入れて暗所に置く。約20時間放置後、足
糸を分泌しない貝と貝が殻を開いて死んでしまったもの
の数を数え、それぞれ全個体数に対する生存率(%)を
求めた。
なった。ビーカーに、ろ過海水を採取し、一定量の防汚
剤を混合・溶解させる。海水単独で溶解しない場合は、
少量のジメチルスルホキシドなどの半親水性半疎水性溶
液に溶かしておいたのち、海水に混合する。ビーカー
に、ムラサキイガイ20個体を上記海水中に投入する。
2時間放置後、貝を取り出し、ろ過海水で良く洗浄す
る。貝を一個ずつ別にしてシャーレの中に置き、シャー
レごと水槽に入れて暗所に置く。約20時間放置後、足
糸を分泌しない貝と貝が殻を開いて死んでしまったもの
の数を数え、それぞれ全個体数に対する生存率(%)を
求めた。
【0015】海水中への浸漬試験はJIS K5630
に準じて次の手順で行った。
に準じて次の手順で行った。
【0016】防汚塗料を作るにあたって、原料配合比は
実施例として有機銅錯体粉末を20重量%、バライト3
5.1重量%、ロジン5.5重量%、ポリ塩化ビニル共
重合体5.5重量%、燐酸トリクレシル2.1重量%、
MIBK19.0重量%、キシレン12.8重量%とし
た。また、比較例2として亜酸化銅55.1重量%、ロ
ジン5.5重量%、ポリ塩化ビニル共重合体5.5重量
%、燐酸トリクレシル2.1重量%、MIBK19.0
重量%、キシレン12.8重量%とし、比較例3として
バライト55.1重量%、ロジン5.5重量%、ポリ塩
化ビニル共重合体5.5重量%、燐酸トリクレシル2.
1重量%、MIBK19.0重量%、キシレン12.8
重量%とした。防汚塗料の作製は次のように行った。ま
ず、サンプルと顔料をポットにとりボールミルにて予備
分散を行った後別に調整した樹脂溶液を加え、一晩撹拌
した後にとりだし、防汚塗料を得た。
実施例として有機銅錯体粉末を20重量%、バライト3
5.1重量%、ロジン5.5重量%、ポリ塩化ビニル共
重合体5.5重量%、燐酸トリクレシル2.1重量%、
MIBK19.0重量%、キシレン12.8重量%とし
た。また、比較例2として亜酸化銅55.1重量%、ロ
ジン5.5重量%、ポリ塩化ビニル共重合体5.5重量
%、燐酸トリクレシル2.1重量%、MIBK19.0
重量%、キシレン12.8重量%とし、比較例3として
バライト55.1重量%、ロジン5.5重量%、ポリ塩
化ビニル共重合体5.5重量%、燐酸トリクレシル2.
1重量%、MIBK19.0重量%、キシレン12.8
重量%とした。防汚塗料の作製は次のように行った。ま
ず、サンプルと顔料をポットにとりボールミルにて予備
分散を行った後別に調整した樹脂溶液を加え、一晩撹拌
した後にとりだし、防汚塗料を得た。
【0017】浸漬試験例
【0018】各塗料を、300×300×3.2mmの
熱間圧軟鋼板に防錆塗装を施したものの上に塗装し、試
験板とした。海中浸漬試験は、静岡県浜名郡新居町周辺
の浜名湖で行った。上記試験板を水深1mの海中に垂下
し、最も生物汚損が激しいといわれる7〜9月の3ヶ月
間の付着生物の試験板に対する汚損の程度を比較した。
熱間圧軟鋼板に防錆塗装を施したものの上に塗装し、試
験板とした。海中浸漬試験は、静岡県浜名郡新居町周辺
の浜名湖で行った。上記試験板を水深1mの海中に垂下
し、最も生物汚損が激しいといわれる7〜9月の3ヶ月
間の付着生物の試験板に対する汚損の程度を比較した。
【0019】実施例は特許請求範囲の第2項に相当する
有機銅錯体であり、実施例1〜3は請求項3〜5のグル
ープにそれぞれ対応するものである。比較例1は有機錫
化合物のうち、トリブチル錫オキサイドの入ったもので
(株)中国塗料のマリンゴールド、比較例2は亜酸化銅
の入ったもの、比較例3は防汚剤無添加のものであり、
これらを並行しておこなった。
有機銅錯体であり、実施例1〜3は請求項3〜5のグル
ープにそれぞれ対応するものである。比較例1は有機錫
化合物のうち、トリブチル錫オキサイドの入ったもので
(株)中国塗料のマリンゴールド、比較例2は亜酸化銅
の入ったもの、比較例3は防汚剤無添加のものであり、
これらを並行しておこなった。
【0020】図2に試験結果を示す。この図2の図表に
おいて横線がはいっているものは足糸mを出さない、ま
たは足を出してもすぐ引っ込めてしまったことを意味し
ている。
おいて横線がはいっているものは足糸mを出さない、ま
たは足を出してもすぐ引っ込めてしまったことを意味し
ている。
【0021】
【発明の効果】以上のように、本発明によると、汚防塗
料組成物として、有機銅錯体を用いた場合のものは有機
錫を用いたものと同程度の価格で、かつ、毒性発現濃度
は1/1000以下なため、天然物を使う場合とまでは
ゆかないまでも、環境破壊の危険を少なくして水中付着
生物への忌避効果が得られ、従来にないより優れた防汚
塗料組成物を提供することができる。
料組成物として、有機銅錯体を用いた場合のものは有機
錫を用いたものと同程度の価格で、かつ、毒性発現濃度
は1/1000以下なため、天然物を使う場合とまでは
ゆかないまでも、環境破壊の危険を少なくして水中付着
生物への忌避効果が得られ、従来にないより優れた防汚
塗料組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例に係る試験方法の一例を示す説
明図である。
明図である。
【図2】図1の付着忌避試験および毒性試験、海中浸漬
試験の実験結果を示す図表である。
試験の実験結果を示す図表である。
【符号の説明】 A ろ紙 M ムラサキイガイ m 足糸 S 試験板G ゴム片 ─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成5年10月27日
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】発明の詳細な説明
【補正方法】変更
【補正内容】
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は防汚塗料組成物に係り、
とくに船舶の船底,漁網,発電所や工業用冷却水の取水
口や通水路などの水中構造物に有害な水中生物を忌避
し、かつ、環境破壊の少ない防汚塗料組成物に関する。
とくに船舶の船底,漁網,発電所や工業用冷却水の取水
口や通水路などの水中構造物に有害な水中生物を忌避
し、かつ、環境破壊の少ない防汚塗料組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、海洋等の水中に存在する生物に
は、水中に浮遊して生存するものと、特定の対象物に付
着して生存するものの二種類があり、特に後者は船舶,
漁網,発電所の排水口等の水中構造物に付着固定して繁
殖するため、船舶の運航速度,燃費の低下,漁網の目詰
まり、あるいは、構造物の腐食を促進させる大きな原因
となっている。
は、水中に浮遊して生存するものと、特定の対象物に付
着して生存するものの二種類があり、特に後者は船舶,
漁網,発電所の排水口等の水中構造物に付着固定して繁
殖するため、船舶の運航速度,燃費の低下,漁網の目詰
まり、あるいは、構造物の腐食を促進させる大きな原因
となっている。
【0003】前記特定対象物に付着して生存する生物に
よる前記弊害を防止するため、従来より防汚剤として有
機錫化合物等を有効成分として塗料中に配合した防汚塗
料が用いられてきた。この塗料は、塗膜中のビヒクルあ
るいはポリマー骨格中に分散,結合した状態の有機錫化
合物が水中へ徐々に溶出することによって水中生物に作
用し、当該水中生物を殺傷するものである。
よる前記弊害を防止するため、従来より防汚剤として有
機錫化合物等を有効成分として塗料中に配合した防汚塗
料が用いられてきた。この塗料は、塗膜中のビヒクルあ
るいはポリマー骨格中に分散,結合した状態の有機錫化
合物が水中へ徐々に溶出することによって水中生物に作
用し、当該水中生物を殺傷するものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記有
機錫化合物は、重金属をその組成中に含むため、長期間
の使用によって前記溶出に伴なう周辺の環境汚染,魚介
類への蓄積,残留等の問題が表面化し、更には有機水銀
と同様に人体への悪影響が懸念され、社会的に安全性が
問題とされるに至っている。この点、既に有機錫化合物
については、法的規制が実施されており、また、前記問
題を解決するために特開昭64−31702号公報に示
されるように、ビタミンK,特開平1−96101号公
報に示されるように、ブラシル酸等を有効成分として用
いた無毒型防汚塗料が提案されているが、一般に、天然
物より抽出した成分は植物あるいは動物のいずれからも
微量しか採取できないため、現段階では防汚有効成分と
して用いるには実用的でないという不都合がある。
機錫化合物は、重金属をその組成中に含むため、長期間
の使用によって前記溶出に伴なう周辺の環境汚染,魚介
類への蓄積,残留等の問題が表面化し、更には有機水銀
と同様に人体への悪影響が懸念され、社会的に安全性が
問題とされるに至っている。この点、既に有機錫化合物
については、法的規制が実施されており、また、前記問
題を解決するために特開昭64−31702号公報に示
されるように、ビタミンK,特開平1−96101号公
報に示されるように、ブラシル酸等を有効成分として用
いた無毒型防汚塗料が提案されているが、一般に、天然
物より抽出した成分は植物あるいは動物のいずれからも
微量しか採取できないため、現段階では防汚有効成分と
して用いるには実用的でないという不都合がある。
【0005】
【発明の目的】本発明は、前記従来例における不都合に
鑑みてなされたものであり、その目的は、水中生物忌避
特性に富み、かつ、環境汚染の少ない実用性ある防汚塗
料を提供することにある。
鑑みてなされたものであり、その目的は、水中生物忌避
特性に富み、かつ、環境汚染の少ない実用性ある防汚塗
料を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するた
め、本発明に係る防汚塗料組成物は、塗膜形成材中に少
なくとも一種以上の有機銅錯体、または、その誘導体お
よびそれらの組合わせからなる成分が含有されることに
よって構成されている。
め、本発明に係る防汚塗料組成物は、塗膜形成材中に少
なくとも一種以上の有機銅錯体、または、その誘導体お
よびそれらの組合わせからなる成分が含有されることに
よって構成されている。
【0007】
【作用】防汚剤としての有機銅錯体による水中生物の忌
避作用のメカニズムは、現段階では必ずしも明確ではな
いが、おおよそ以下の理由によるものとされている。
避作用のメカニズムは、現段階では必ずしも明確ではな
いが、おおよそ以下の理由によるものとされている。
【0008】有機銅錯体についての海水中における挙動
は“化1”の場合、ミクロ的にみると錯体中において銅
原子は、窒素や酸素といったフリーラジカルの存在によ
りδ+に荷電している。この活性化した銅は、例えば微
生物,藻類の胞子,大型生物の幼生,ムラサキイガイの
足に対しフリーの銅イオンと同じように、接触する細胞
に刺激を与える。
は“化1”の場合、ミクロ的にみると錯体中において銅
原子は、窒素や酸素といったフリーラジカルの存在によ
りδ+に荷電している。この活性化した銅は、例えば微
生物,藻類の胞子,大型生物の幼生,ムラサキイガイの
足に対しフリーの銅イオンと同じように、接触する細胞
に刺激を与える。
【0009】
【化1】
【0010】また、R1,R2の炭素数あるいはフェニル
基といった違いによって、阻害の強さは変わるが、電子
吸引性の強いフェニル基を含む誘導体などを用いると一
層付着しにくくなる。従来の無機銅錯体では藻類に対す
る防汚効果が弱いが、有機胴錯体の配位子がフェニル基
で構成されていれば、無い場合に比べて藻類に対する防
汚効果は高いようである。一方、錯体の側鎖中に、エス
テル結合など加水分解性の部分があると溶出しやすくな
るため、塗膜の寿命自体は疎水性のものに比べて短くな
るが、汚損は少ない。
基といった違いによって、阻害の強さは変わるが、電子
吸引性の強いフェニル基を含む誘導体などを用いると一
層付着しにくくなる。従来の無機銅錯体では藻類に対す
る防汚効果が弱いが、有機胴錯体の配位子がフェニル基
で構成されていれば、無い場合に比べて藻類に対する防
汚効果は高いようである。一方、錯体の側鎖中に、エス
テル結合など加水分解性の部分があると溶出しやすくな
るため、塗膜の寿命自体は疎水性のものに比べて短くな
るが、汚損は少ない。
【0011】しかし、加水分解性があるものは、海水中
に溶け出してしまうため環境生物に取り込まれやすく、
環境に対し悪影響を引き起こす恐れがある。かかる有機
銅錯体は水に難溶であり、しかもほとんどの有機溶媒に
難溶、脂質に不溶であるため生物蓄積性がなく環境汚染
を引き起こす事が少ないと考えられる。
に溶け出してしまうため環境生物に取り込まれやすく、
環境に対し悪影響を引き起こす恐れがある。かかる有機
銅錯体は水に難溶であり、しかもほとんどの有機溶媒に
難溶、脂質に不溶であるため生物蓄積性がなく環境汚染
を引き起こす事が少ないと考えられる。
【0012】分子レベルの問題をマクロな現象に適応す
る場合、すべてが1対1対応ではないが、無機銅化合物
に比べると有機銅錯体の大型生物に対する付着忌避効果
は大腸菌や乳酸菌といった一般的な菌類に対する抗菌性
にある程度対応しているという見解もある。
る場合、すべてが1対1対応ではないが、無機銅化合物
に比べると有機銅錯体の大型生物に対する付着忌避効果
は大腸菌や乳酸菌といった一般的な菌類に対する抗菌性
にある程度対応しているという見解もある。
【0013】
【発明の実施例】以下、本発明の実施例につき、比較例
と対比しつつ説明する。試験対象物は、「ムラサキイガ
イ」の親Mを用い、その足糸mを出す場所と本数によっ
て効果の有無を調べた。該塗料を塗布した直径47mm
のろ紙Aをプラスチック製の試験板Sの上に耐水性の両
面テープで貼り付け、その周囲に貝Mを図1の如く半分
ろ紙Aに載るような位置に固定する。固定の際には貝M
の本体を直接板につけずに、ゴム片Gを介して接着剤で
固定するものとする。そして、プラスチック製の試験板
Sに対して約2リットルの天然海水を入れた水槽内へ浸
漬し、暗所で3時間浸漬後、イガイの足糸の本数および
付着の位置の比率を調べ、これによって忌避効果の有無
をチェックした。
と対比しつつ説明する。試験対象物は、「ムラサキイガ
イ」の親Mを用い、その足糸mを出す場所と本数によっ
て効果の有無を調べた。該塗料を塗布した直径47mm
のろ紙Aをプラスチック製の試験板Sの上に耐水性の両
面テープで貼り付け、その周囲に貝Mを図1の如く半分
ろ紙Aに載るような位置に固定する。固定の際には貝M
の本体を直接板につけずに、ゴム片Gを介して接着剤で
固定するものとする。そして、プラスチック製の試験板
Sに対して約2リットルの天然海水を入れた水槽内へ浸
漬し、暗所で3時間浸漬後、イガイの足糸の本数および
付着の位置の比率を調べ、これによって忌避効果の有無
をチェックした。
【0014】また、毒性試験については以下の方法で行
なった。ビーカーに、ろ過海水を採取し、一定量の防汚
剤を混合・溶解させる。海水単独で溶解しない場合は、
少量のジメチルスルホキシドなどの半親水性半疎水性溶
液に溶かしておいたのち、海水に混合する。ビーカー
に、ムラサキイガイ20個体を上記海水中に投入する。
2時間放置後、貝を取り出し、ろ過海水で良く洗浄す
る。貝を一個ずつ別にしてシャーレの中に置き、シャー
レごと水槽に入れて暗所に置く。約20時間放置後、足
糸を分泌しない貝と貝が殻を開いて死んでしまったもの
の数を数え、それぞれ全個体数に対する生存率(%)を
求めた。
なった。ビーカーに、ろ過海水を採取し、一定量の防汚
剤を混合・溶解させる。海水単独で溶解しない場合は、
少量のジメチルスルホキシドなどの半親水性半疎水性溶
液に溶かしておいたのち、海水に混合する。ビーカー
に、ムラサキイガイ20個体を上記海水中に投入する。
2時間放置後、貝を取り出し、ろ過海水で良く洗浄す
る。貝を一個ずつ別にしてシャーレの中に置き、シャー
レごと水槽に入れて暗所に置く。約20時間放置後、足
糸を分泌しない貝と貝が殻を開いて死んでしまったもの
の数を数え、それぞれ全個体数に対する生存率(%)を
求めた。
【0015】海水中への浸漬試験はJIS K5630
に準じて次の手順で行った。
に準じて次の手順で行った。
【0016】防汚塗料を作るにあたって、原料配合比は
実施例として有機銅錯体粉末を20重量%、バライト3
5.1重量%、ロジン5.5重量%、ポリ塩化ビニル共
重合体5.5重量%、燐酸トリクレシル2.1重量%、
MIBK19.0重量%、キシレン12.8重量%とし
た。また、比較例2として亜酸化銅55.1重量%、ロ
ジン5.5重量%、ポリ塩化ビニル共重合体5.5重量
%、燐酸トリクレシル2.1重量%、MIBK19.0
重量%、キシレン12.8重量%とし、比較例3として
バライト55.1重量%、ロジン5.5重量%、ポリ塩
化ビニル共重合体5.5重量%、燐酸トリクレシル2.
1重量%、MIBK19.0重量%、キシレン12.8
重量%とした。防汚塗料の作製は次のように行った。ま
ず、サンプルと顔料をポットにとりボールミルにて予備
分散を行った後別に調整した樹脂溶液を加え、一晩撹拌
した後にとりだし、防汚塗料を得た。
実施例として有機銅錯体粉末を20重量%、バライト3
5.1重量%、ロジン5.5重量%、ポリ塩化ビニル共
重合体5.5重量%、燐酸トリクレシル2.1重量%、
MIBK19.0重量%、キシレン12.8重量%とし
た。また、比較例2として亜酸化銅55.1重量%、ロ
ジン5.5重量%、ポリ塩化ビニル共重合体5.5重量
%、燐酸トリクレシル2.1重量%、MIBK19.0
重量%、キシレン12.8重量%とし、比較例3として
バライト55.1重量%、ロジン5.5重量%、ポリ塩
化ビニル共重合体5.5重量%、燐酸トリクレシル2.
1重量%、MIBK19.0重量%、キシレン12.8
重量%とした。防汚塗料の作製は次のように行った。ま
ず、サンプルと顔料をポットにとりボールミルにて予備
分散を行った後別に調整した樹脂溶液を加え、一晩撹拌
した後にとりだし、防汚塗料を得た。
【0017】浸漬試験例
【0018】各塗料を、300×300×3.2mmの
熱間圧軟鋼板に防錆塗装を施したものの上に塗装し、試
験板とした。海中浸漬試験は、静岡県浜名郡新居町周辺
の浜名湖で行った。上記試験板を水深1mの海中に垂下
し、最も生物汚損が激しいといわれる7〜9月の3ヶ月
間の付着生物の試験板に対する汚損の程度を比較した。
熱間圧軟鋼板に防錆塗装を施したものの上に塗装し、試
験板とした。海中浸漬試験は、静岡県浜名郡新居町周辺
の浜名湖で行った。上記試験板を水深1mの海中に垂下
し、最も生物汚損が激しいといわれる7〜9月の3ヶ月
間の付着生物の試験板に対する汚損の程度を比較した。
【0019】実施例は特許請求範囲の第2項に相当する
有機銅錯体であり、実施例1〜3は請求項3〜5のグル
ープにそれぞれ対応するものである。比較例1は有機錫
化合物のうち、トリブチル錫オキサイドの入ったもので
(株)中国塗料のマリンゴールド、比較例2は亜酸化銅
の入ったもの、比較例3は防汚剤無添加のものであり、
これらを並行しておこなった。
有機銅錯体であり、実施例1〜3は請求項3〜5のグル
ープにそれぞれ対応するものである。比較例1は有機錫
化合物のうち、トリブチル錫オキサイドの入ったもので
(株)中国塗料のマリンゴールド、比較例2は亜酸化銅
の入ったもの、比較例3は防汚剤無添加のものであり、
これらを並行しておこなった。
【0020】図2に試験結果を示す。この図2の図表に
おいて横線がはいっているものは足糸mを出さない、ま
たは足を出してもすぐ引っ込めてしまったことを意味し
ている。
おいて横線がはいっているものは足糸mを出さない、ま
たは足を出してもすぐ引っ込めてしまったことを意味し
ている。
【0021】
【発明の効果】以上のように、本発明によると、汚防塗
料組成物として、有機銅錯体を用いた場合のものは有機
錫を用いたものと同程度の価格で、かつ、毒性発現濃度
は1/1000以下なため、天然物を使う場合とまでは
ゆかないまでも、環境破壊の危険を少なくして水中付着
生物への忌避効果が得られ、従来にないより優れた防汚
塗料組成物を提供することができる。
料組成物として、有機銅錯体を用いた場合のものは有機
錫を用いたものと同程度の価格で、かつ、毒性発現濃度
は1/1000以下なため、天然物を使う場合とまでは
ゆかないまでも、環境破壊の危険を少なくして水中付着
生物への忌避効果が得られ、従来にないより優れた防汚
塗料組成物を提供することができる。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】図面の簡単な説明
【補正方法】変更
【補正内容】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例に係る試験方法の一例を示す説
明図である。
明図である。
【図2】図1の付着忌避試験および毒性試験、海中浸漬
試験の実験結果を示す図表である。
試験の実験結果を示す図表である。
【符号の説明】 A ろ紙 M ムラサキイガイ m 足糸 S 試験板G ゴム片
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 丸谷 慎一朗 神奈川県横浜市緑区桜並木2番1号 スズ キ株式会社技術研究所内 (72)発明者 宮田 崇 神奈川県横浜市緑区桜並木2番1号 スズ キ株式会社技術研究所内 (72)発明者 赤瀬 真一郎 東京都千代田区丸の内一丁目8番2号 同 和鉱業株式会社内 (72)発明者 田▲崎▼ 雄三 東京都千代田区丸の内一丁目8番2号 同 和鉱業株式会社内 (72)発明者 鈴木 雅之 東京都千代田区丸の内一丁目8番2号 同 和鉱業株式会社内
Claims (5)
- 【請求項1】 膜形成材中に、少なくとも一種以上の有
機銅錯体、または、その誘導体およびそれらの組み合わ
せからなる成分を有効成分として含有することを特徴と
した防汚塗料組成物。 - 【請求項2】 請求項1において、前記有機銅錯体が
“化1”“化2”で表わされる4配位子あるいは6配位
子を有し、かつ、“化1”“化2”中XはOあるいは
N,Yは4つの配座に配位している以外の配位子である
ことを特徴とする防汚塗料組成物。 【化1】 【化2】 - 【請求項3】 請求項2において、配位子の基本骨格が
マルトール“化3”に代表される“化5”の分子構造を
有するものであって、“化5”中X1 からX3 はそれぞ
れH,CH3,CH2CH3,C6H5,,COOCH3,COOC
2H5,OCOCH3,OCOC2H5 あるいはCl,Br,
Iなどのハロゲンのうちいずれかの組み合わせであっ
て、かつ、銅の4配位状態を維持可能なものであること
を特徴とする防汚塗料組成物。 【化3】 【化5】 - 【請求項4】 請求項2において、配位子の基本骨格が
サリチルアルデヒドHOC6H4CHOに代表される化2
の分子構造を有するものであって、“化6”中XからX
5 は、それぞれH,CH3,CH2CH3,C6H5,COOC
H3,COOC2H5,OCOCH3,OCOC2H5 あるいは
Cl,Br,Iなどのハロゲンのうちいずれかの組み合
わせであって、かつ、銅の4配位状態を維持可能なもの
であることを特徴とする防汚塗料組成物。 【化6】 - 【請求項5】 請求項2において、配位子の基本骨格が
8−キノリノール“化4”に代表される“化7”の分子
構造を有するものであって、“化7”中X1からX
5 は、それぞれH,CH3,CH2CH3,C6H5,COOC
H3,COOC2H5,OCOCH3,OCOC2H5 あるいは
Cl,Br,Iなどのハロゲンのうちいずれかの組 み
合わせであり、無水状態で銅の4配位、水が配位して6
配位の状態を維持可能なものであることを特徴とする防
汚塗料組成物。 【化4】 【化7】
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP4137975A JPH0680907A (ja) | 1992-04-30 | 1992-04-30 | 防汚塗料組成物 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP4137975A JPH0680907A (ja) | 1992-04-30 | 1992-04-30 | 防汚塗料組成物 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH0680907A true JPH0680907A (ja) | 1994-03-22 |
Family
ID=15211121
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP4137975A Withdrawn JPH0680907A (ja) | 1992-04-30 | 1992-04-30 | 防汚塗料組成物 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH0680907A (ja) |
-
1992
- 1992-04-30 JP JP4137975A patent/JPH0680907A/ja not_active Withdrawn
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Legal Events
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