JPH063044A - 保存庫 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 本発明は、野菜・果物を保存する容器を備え
た保存庫に関し、容器内雰囲気および圧力の調整によ
り、野菜・果物の長期保鮮することを目的とする。 【構成】 野菜室８ａに収納される野菜容器１１ａを密
閉できる蓋体１２に装着させた透湿膜１４と酸素富化膜
モジュール２１と、これら連結させ野菜容器内の雰囲気
を吸引するポンプ２８と、吸引したガスを野菜室外周に
設けられた冷気対流通路１９中に排出する排出口２９
と、冷却器２４から野菜室へ冷気を直接導き、吐出する
吐出ダクト２６と冷気吐出口１８ａに冷気対流通路内を
循環し、ポンプからの排出ガスを含有した冷気を吸込む
冷気吸込口２０ａと、吸込まれた冷気を冷却器へ導く吸
込ダクト３０とから構成されている。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は収納される野菜，果物を
より良好に、長期間保存するための条件を備えた野菜容
器を有する保存庫に関するものであり、前記容器内の酸
素量を一定の低濃度に保持することのできるものであ
り、余分な水分を除去することのできるものである。

【０００２】

【従来の技術】減圧貯蔵は低温・低圧の環境下で農産物
を貯蔵する方法で、ＣＡ貯蔵やフィルム包装貯蔵などと
同様の気体調節貯蔵法の一つとして、生鮮食品の収穫後
の流通分野での品質保持に関わる技術として、利用され
ている。減圧貯蔵のシステムは青果物等の置かれている
貯蔵環境の空気組成を人為的に変えて生理作用を強く抑
制しようとする貯蔵法である。

【０００３】一般的な効果としては、減圧に伴い酸素分
圧も低下し容易に低酸素濃度の環境が得られ、次いで酸
素濃度の低下に伴い、青果物等では呼吸作用が抑制さ
れ、微生物や酸素等の活性を抑制でき、食肉等では酸化
抑制も期待できる。特に青果物では同時に、貯蔵品から
発生するエチレンを積極的に除去でき、さらに減圧条件
での酸素分圧低下に伴う、エチレン生成の抑制が成され
る。

【０００４】近年の家庭用冷蔵庫では、野菜や果物は専
用の野菜室に保存され、その環境条件は、概ね温度５℃
〜７℃・湿度８０〜９５％Ｒ．Ｈ．に設定されている。
この条件は、温度に関しては、低温障害を起こす一部の
野菜・果物の保存を配慮してやや高めに、また湿度に関
しては、大部分の野菜・果物は高湿条件にすることによ
り蒸散作用が抑えられて良好に保存できることから設定
されている。

【０００５】このような従来技術については、例えば特
開昭６２−２６４１６８号公報に示されており、その一
例を図４および図５に示す。以下、図面を参照しながら
説明を行う。１は冷蔵庫本体で外箱２，内箱３およびこ
れら両箱２，３間に充填された断熱材４によって構成さ
れている。５は区画壁で、丈夫に冷凍室６、下部に冷蔵
室７を区画形成している。８は冷蔵室７７の下部に設け
た野菜室で仕切板９によって冷蔵室７と仕切られてい
る。１０は野菜室８に対向して設けられた扉である。

【０００６】１１は前記扉１０に着脱自在に保持される
上面を開口した野菜容器であり、前記扉１０を引き出す
ことによって同時に庫外へ引き出され野菜の出し入れを
行わせるものである。１２は野菜容器１１の開口部に密
接して配設された蓋体であり、多数の貫通穴を有する樹
脂製の平板１３と、前記平板１３の片面に溶着された透
湿膜１４と、平板１３の外周辺に配設された塩化ビニル
などのパッキン１５により構成されている。

【０００７】ここで、前記透湿膜１４について説明する
と、透湿膜１４は、膜厚１０〜５０μｍのシリコン薄膜
１６と親水性ナイロン繊維１７を積層したもので、シリ
コン薄膜１６により液体の透過を防止し、かつ適度な気
体透過性を持たせ、親水性ナイロン繊維１７により結露
を防止する。

【０００８】１８は冷蔵室７よりの冷気を取り入れる冷
気取入口で、仕切板９の奥端面と内箱３との間隙で形成
される。また、１９は冷気取入口１８に連通して野菜容
器１１の外周に冷気を対流させる冷気対流通路で、２０
はこの冷気対流通路９に連通して仕切板９の前面に設け
られた冷気戻り口である。

【０００９】かかる構成において、冷蔵室７より冷気取
入口１８を介して取り入れられた冷気は野菜容器１１内
に直接流入することなく、冷気対流通路を対流する際に
外周より野菜容器１１の内部を間接的に冷却した後冷気
戻り口２０より冷蔵室７内に戻される。また、野菜容器
１１内に貯蔵した野菜から蒸散した水分により野菜容器
１１内が高湿状態になるが飽和湿度以上の水分は蓋体１
２の透湿膜１４を介して容器外へ徐々に透湿され、野菜
容器１１内は湿度８０〜９５％Ｒ．Ｈ．に保たれる。

【００１０】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、透湿膜
を利用し野菜室を高湿に保持することは野菜の蒸散・乾
燥抑制上効果がある反面、高湿度供給源として野菜自体
からの蒸散水分に依存しているため、野菜室内の収納量
により湿度が変動し、常に安定した高湿度環境を提供す
ることが困難であった。また、高湿度下では野菜の呼吸
作用は二次的に抑制されるに過ぎず、絶対的効果は望め
ない。さらに高湿度を提供するには密閉性が要求され、
過剰の高湿度下では結露発生により水腐れの危険性があ
る。

【００１１】また、野菜・果物の一部にはエチレンを発
生するものがあり、上記の構成では発生したエチレンが
容器内に蓄積し、自身および回りの野菜・果物の老化・
成熟を促進するという問題点を抱えていた。

【００１２】近年の冷蔵庫の大型化は著しく、この傾向
は今後も継続すると見込まれる。これに伴う野菜室の増
大により、多量の野菜が収納可能となると同時に、保存
期間の長期化が要求されてくる。上記の透湿膜による高
湿保持機構の保存期間の延長は望めない。ＣＡおよび減
圧貯蔵はこれらのエチレン制御および、呼吸抑制に特に
有効であり長期保存が可能である。

【００１３】しかしながら、現存するＣＡ貯蔵装置およ
び減圧貯蔵装置は流通分野の貯蔵庫を前提としており、
扉の開閉が頻繁で庫内空気の入れ替わりが生じやすく、
特性および保存形態の異なる種々の食品が雑多に収納さ
れる家庭用冷蔵庫への搭載はガス補給面あるいは減圧制
御の点で困難であった。さらに、減圧貯蔵においては、
減圧により保存食品の蒸散、乾燥促進される作用がある
ため、加湿機能が必要とされる。

【００１４】また、上記構成では野菜容器外周を対流し
た冷気は冷気戻り口より冷蔵室内に戻されていた。かか
る構成では酸素が吸引・排出された冷気は冷蔵室内の保
存食品の酸化促進など劣化作用を及ぼす。

【００１５】本発明は上記問題点に鑑み、従来流通分野
で用いられているＣＡ貯蔵や減圧貯蔵の理論に基づき、
扉開閉が頻繁で単独の最適保存条件を設定困難な家庭用
冷蔵庫への展開を簡略な方法で実現し、主に野菜・果物
を長期保存するための野菜容器を有する冷蔵庫を提供す
るものである。

【００１６】

【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に本発明の冷蔵庫は、野菜・果物を保存する目的で構成
された冷蔵庫の野菜室を他の室と独立して設け、扉閉時
に密閉可能な野菜容器の構造とし、野菜容器本体に過飽
和水分を透過する透湿膜と過飽和水分と酸素を選択的に
透過せしめる酸素分離膜を装着し、野菜容器内の空気を
強制的に膜通過せしめるポンプを野菜容器外に連結させ
て設置したものである。また、野菜室外周に冷気対流通
路と、冷却器からの専用ダクトを設けて冷気を野菜容器
外周に吐出，対流させて野菜室を間接冷却し、ポンプか
ら排出された野菜容器内ガスを専用ダクトで吸込みダク
ト内で拡散させ、野菜容器内を低酸素濃度，微減圧およ
び結露発生しない程度の高湿度を保持するものである。

【００１７】

【作用】本発明は上記した構成により、野菜室外周の冷
気対流通路に設置したポンプを作動させて野菜・果物を
収納した野菜容器内のガスを酸素富化膜を通じて吸引す
ることにより、野菜容器内の酸素は選択的に野菜容器外
に排出される。野菜容器は密閉構造のため、酸素を排出
された後は酸素相当分だけ減圧状態となる。この場合、
減圧量は−５mmＨｇ程度の微減圧だが、酸素の低濃度化
により野菜の呼吸作用は抑制され、エチレン生成も抑制
され、また、既に発生したエチレンも除去される。

【００１８】また、−５mmＨｇ程度の微減圧のため、食
品の細胞の内圧と雰囲気圧の差がわずかであり、蒸散促
進には至らないため、加湿機能も不要である。

【００１９】また、透湿膜を装着させたことにより、野
菜室内で過飽和の水分は透湿膜を透過し、さらに酸素富
化膜を通じて、容器外へ排除され結露を生じない。

【００２０】また、密閉構造をとることにより湿度およ
び温度の変動が発生しにくく、野菜の劣化スピードが抑
制される。さらに酸素富化膜通過後の容器外排出ガスは
他の室内へ排出されず、冷気対流通路内にポンプの排出
口より排出され、酸素富化膜通過後の酸素高濃度ガスは
冷気対流通路内および専用ダクト内で拡散され、他の室
への冷気流入時には、通常の酸素濃度の空気となってお
り、保存中の食品への影響は生じない。

【００２１】

【実施例】以下、本発明の一実施例の保存庫について図
１から図３に従い、図面を参照しながら説明する。な
お、従来と同一構成については同一符号を付し、その詳
細な説明を略し、異なる部分についてのみ述べる。

【００２２】図１は本発明の第１の実施例による保存庫
の断面図である。図２は本発明の第２の実施例による保
存庫の断面図である。

【００２３】図１，図２において、８ａは本体に扉１０
を有して区画形成した野菜室であり、内部に野菜容器１
１ａを備えている。図１において酸素富化膜モジュール
２１（Ｐａｎａ Ｏ₂，松下電器産業株式会社精密キャ
パシタ事業部製）は支持平板２２に固定され、前期の野
菜容器１１ａの上面開口部に重合する蓋体１２の一部に
取りつけられている。支持平板２２と透湿膜１４を装着
した蓋体１２によって作られる空間２３は常に密閉状態
である。蓋体１２は、本体に固定され、扉１０を奥方向
へ移動し、容器を本体内へ収納したときには、蓋体１２
が下がり容器上面設置され容器内は密閉状態となる。

【００２４】なお、ここで、前記野菜容器１１ａは前記
扉１０を引き出すことにより密閉状態が解除され同時に
庫外に引き出されて収納物の出し入れが行われるもので
ある。また、１９は前記野菜容器１１ａの外周に冷気を
対流させて間接的に冷却を行なわせる冷気対流通路であ
り、冷気吐出口１８ａは冷却器２４より強制対流用冷却
ファン２５が送風する冷気を直接導く吐出ダクト２６に
連結した野菜室８ａ専用のダンパである。

【００２５】次に、図１において前記酸素富化膜モジュ
ール２１は、膜本体をケースで保持し、上部に富化空気
取出口２７を有し、前記野菜容器１１ａの外周すなわち
前記冷気対流通路１９内に設置したポンプ２８に連結さ
れる構造を有しており、選択的な酸素透過性を有する。

【００２６】かかる構成において野菜室８ａ中の過飽和
水分は透湿膜１３を透過し、蓋体１２の前記上部空間２
３に放出される。また、野菜容器１１ａが密閉状態のと
き、すなわち扉１０が閉じられているとき、ドアスイッ
チで感知して前記ポンプ２６が一定時間作動し、前記野
菜容器内の雰囲気は蓋体１２の透湿膜を経て、酸素富化
膜モジュール２１に吸引される。

【００２７】この際、酸素が溶解，拡散，脱離しやすい
酸素富化膜の特性より、雰囲気成分中の酸素が選択的に
前記富化空気取出口２７より吸引され、前記ポンプ２８
の排出口２９より冷気対流通路１９に排出される。排出
されたガスは、酸素が成分の大部分を占め、冷気対流通
路１９中を冷気吐出口１８ａより吐出された冷気中に拡
散しながら野菜容器１１ａ外周を循環し冷気吸入口２０
ａより吸入ダクト３０を通り冷却器２４へ導かれる。

【００２８】また、酸素富化膜は同分圧下において水分
の分離係数が酸素より大きく、酸素富化膜の分離係数は
気体組成分子の分圧比に左右される。密閉構造により野
菜室８ａ中は従来の野菜室８より過湿状態に陥り易い
が、透湿膜を通じ空間２３中に移動した過飽和水分の分
圧は野菜室８ａより高まっているため、前述のポンプ作
動時には空間２３中の水分も、酸素とともに酸素富化膜
に溶解し、野菜容器外へ放出される。

【００２９】また他の実施例について図２に従い説明す
る。酸素富化膜モジュール３１は膜本体と透湿膜１４ａ
を同一ケースで保持され、野菜容器１１ａ上面開口部に
重合した蓋体１２の一部に直接装着されている。上部に
富化空気取出口２５ａを有し、前記野菜容器１１ａの外
周すなわち前記冷気対流通路１９内に設置したポンプ２
６に連結される構造を有しており、選択的な酸素透過性
と過飽和水分の透過性を有する。

【００３０】かかる構成において野菜容器１１ａが密閉
状態のとき、すなわち扉１０が閉じられているとき、ド
アスイッチで感知して前記ポンプ２８が一定時間作動
し、前記野菜室８ａ中の過飽和水分および雰囲気は透湿
膜１４ａを透過し、次いで酸素富化膜に吸引される。こ
の際、前述機能により、過飽和水分と雰囲気中の酸素が
選択的に富化空気取出口２７ａに吸引され、排出口２９
より冷気対流通路１９に排出される。野菜容器内の雰囲
気は、第１の実施例と同様の高湿度，低酸素状態を保持
し結露発生も防止される。

【００３１】以上のように本実施例の酸素富化膜モジュ
ール３１と透湿膜１４ａは同一ケースで保持され、蓋体
１２の一部に直接装着されるため、小型化が図れるた
め、コストの低減化と製造時の取り付けの容易化が可能
となり、使用上においても容器内の有効容積が増し、収
納性が向上する。

【００３２】このようにして、過湿機能も不要であり、
結露発生しない高湿度域に保持され、簡便で低コストで
それぞれの青果物が適正な条件で保存されることによ
り、従来１週間保存程度が限界だったものに対して、２
週間以上新鮮に保存することが可能となる。

【００３３】

【発明の効果】以上のように本発明の保存庫によると、
野菜容器は密閉構造をとり容器内は高湿保持され、容器
内に設置された透湿膜により過飽和水分を除去され、さ
らに酸素富化膜による微減圧で、各野菜・果物の蒸散，
乾燥あるいは水腐れを防ぎ、保存に最適な低酸素環境で
保存され、エチレンによる老化，委稠，低温障害が抑制
されて長期保鮮が可能となる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一実施例を示す冷蔵庫の要部断面図

【図２】本発明の一実施例を示す冷蔵庫の要部断面図

【図３】従来例を示す冷蔵庫の要部断面図

【符号の説明】

８ａ 野菜室 ９ａ 仕切板 １０ 扉 １１ａ 野菜容器 １２ 蓋体 １３ 樹脂平板 １４，１４ａ 透湿膜 １８ａ 冷気吐出口 １９ 冷気対流通路 ２０ａ 冷気吸入口 ２１，３１ 酸素富化膜モジュール ２２ 支持平板 ２３ 空間 ２４ 冷却器 ２５ 強制対流用冷却ファン ２６ 吐出ダクト ２７，２７ａ 富化空気取出口 ２８ ポンプ ２９ 排出口 ３０ 吸込ダクト

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 冷却器と、前記冷却器で冷却した冷気を
   強制対流させる冷却ファンと、本体内の一画に専用のダ
   ンパを設け、内部に密閉可能な容器を備えた独立した野
   菜室と、前記密閉容器内の雰囲気を吸引するため前記野
   菜室外に配置したポンプと、前記密閉容器内の過飽和水
   分を透過させる透湿膜を装着し、前記ポンプにより吸引
   された雰囲気成分中の酸素を選択的に前記野菜室外の循
   環風路に設けられた排出経路へ通過排出する酸素富化膜
   と、酸素富化膜を介して排出された高酸素濃度の雰囲気
   成分を風路循環中に拡散させ酸素濃度を低下させる冷気
   対流通路とからなる保存庫。
2. 【請求項２】 冷却器と、前記冷却器で冷却した冷気を
   強制対流させる冷却ファンと、本体内の一画に専用のダ
   ンパを設け、内部に密閉可能な容器を備えた独立した野
   菜室と、前記密閉容器内の雰囲気を吸引するため前記野
   菜室外に配置したポンプと、容器内の雰囲気中の酸素を
   選択的に排出する酸素富化膜と容器内の過飽和水分を透
   過させる透湿膜とを一体化して装着し、前記ポンプによ
   り吸引された雰囲気成分中の酸素と過飽和水分を前記野
   菜室外の循環風路に設けられた排出経路へ通過排出する
   酸素富化膜と、酸素富化膜を介して排出された高酸素濃
   度の雰囲気成分を風路循環中に拡散させ酸素濃度を低下
   させる冷気対流通路とからなる保存庫。