JPH06270699A - エンジンマウントメンバの振動低減用ダンパ構造 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】振幅低減効果を最大に発揮し，エンジンルーム
内のレイアウトに支障の少ないエンジンマウントメンバ
の振幅低減用ダンパ構造を提供する。 【構成】エンジン１をマウントするセンタメンバ２のう
ち，エンジン起振力による振幅の大きい中央部上面に，
対向するブラケット５を突設し、このブラケット５の下
方でセンタメンバ上面からやや離れた箇所間にマスダン
パ３を架設して，センタメンバの共振を低減すると共
に、前記ブラケット５の上方にゴム部材６を介してダイ
ナミックダンパ４を架設して，両ブラケット５間に発生
するセンタメンバ２の位相差を吸収して当該センタメン
バの振動伝達力を低減し、両ダンパ部材を同一のブラケ
ット５でセンタメンバに取付けることで突出容積を小さ
くする構成とした。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、車両のエンジンがマウ
ントされるメンバの振動を低減するために使用されるダ
ンパの構造に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】エンジンとトランスミッションとを組合
わせたパワーユニットは車両の車体側に連結される必要
がある。こうした連結点，或いは連結すること自体をマ
ウントと称しているが、主としてエンジンからの起振力
は両者の連結点から車体側に入力される。従来の代表的
なエンジンマウント構造を図４に示す。同図は，車両の
幅方向中央部にて車両前後方向に向けて配設されるセン
タメンバ１にエンジン２をマウントし、このセンタメン
バ１のうち，車両後方端部を図示されない車両のサブフ
レームにマウントし、且つ車両前方端部を図示されない
車両のフロントメンバにマウントするものである。

【０００３】そして、このセンタメンバ１から突設され
たマウント部材９及び適宜インシュレータ等の減衰部材
１０を介してエンジン２がマウントされる構成としてあ
る。この減衰部材１０によってエンジン２から伝達され
る振動は少なからず低減されるものの，エンジン２から
の起振力によってセンタメンバ１の共振も発生する。こ
のセンタメンバ１の共振は車体側に伝達され、これが振
動若しくは振動音として感知される。特に車体側との共
振があると，この振動若しくは振動音が増幅されて大き
くなる。

【０００４】そこで従来は、前記センタメンバ１のう
ち，サブフレームに連結される後方端部寄りに，副振動
系を構成するダイナミックダンパＡを取付け、このダイ
ナミックダンパＡによってセンタメンバ１の振動伝達力
を低減して，車体側を通じて感知される振動若しくは振
動音を小さくするようにしている。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記セ
ンタメンバ１のうち，センタメンバ１自体の共振による
振動の最も大きいのは、その中央部である。然るに、前
記従来の振動低減用ダンパ構造では，センタメンバ１の
後方端部寄りにダイナミックダンパＡを取付けてあるた
めに、当該ダイナミックダンパＡの振動伝達低減力が十
分に発揮されず、振動低減効果が少ない。

【０００６】そこで、このような問題を解決するため
に，例えば実開昭５５−１２７１４２号公報に記載され
るように、メンバの中央部に重錘を吊下げ，これを副振
動系として最も大きい振動に対して有効な振動低減効果
を発揮するという提案がなされている。しかし、この副
振動系を構成する重錘は，所謂マスダンパである。この
ようなマスダンパは、メンバの共振を低減することはで
きるが，前記ダイナミックダンパのように共振に伴う振
動伝達力を積極的に低減する効果はない。

【０００７】本発明はこれらの諸問題に鑑みて開発され
たものであり、前記マスダンパとダイナミックダンパと
の振動低減効果を最大に発揮し，しかもコンパクトでエ
ンジンルーム内のレイアウトに支障の少ないエンジンマ
ウントメンバの振動低減用ダンパ構造を提供することを
目的とするものである。

【０００８】

【課題を解決するための手段】本発明のエンジンマウン
トメンバの振動低減用ダンパ構造は、車両のエンジンが
マウントされるメンバの振動を低減するために使用され
るダンパの構造において、前記メンバのうち振動の大き
い中央部の同一位置に、自己の質量でメンバの共振を低
減するマスダンパと，自己の減衰力でメンバの振動伝達
力を低減するダイナミックダンパとを、互いに重合し
て，同一の取付具で一体的に取付けてなることを特徴と
するものである。

【０００９】

【作用】本発明のエンジンマウントメンバの振動低減与
ダンパ構造では、メンバの中央部の同一位置に，マスダ
ンパとダイナミックダンパとを重合して取付けたため
に、当該メンバの中央部に発生する大きな振動に対し
て，マスダンパはその共振低減作用を，ダイナミックダ
ンパはその振動伝達低減作用を最大限に発揮し、車体側
に伝達される振動若しくは振動音をより小さくすること
ができる。

【００１０】また、メンバの同一位置にマスダンパとダ
イナミックダンパとを重合して取付ける場合，特にエン
ジンルーム内に占める容積が問題となり、これが大きく
なると当該エンジンルーム内のレイアウト，ひいては車
室容積の確保にも影響を及ぼす。しかし前記マスダンパ
とダイナミックダンパとを，同一の取付具で一体的にメ
ンバに取付ける構成としたために、両ダンパ並びに取付
具のエンジンルーム内に占める容積を可及的に小さくす
ることができ、当該エンジンルーム内のレイアウトに与
える影響を小さくすることができる。

【００１１】

【実施例】図１は本発明のエンジンマウントメンバの振
動低減用ダンパ構造の一実施例を示すものである。この
実施例で振動低減用ダンパが取付けられるエンジンマウ
ントメンバは前述したセンタメンバ１と同様のものであ
る。なお、このセンタメンバ１は中空パイプ状に形成さ
れている。

【００１２】このセンタメンバ１は車両の幅方向中央部
にて車両前後方向に向けて配設され、このセンタメンバ
１のうち，車両後方端部を図示されない車両のサブフレ
ームにマウントし、且つ車両前方端部を図示されない車
両のフロントメンバにマウントする。このセンタメンバ
１から突設されたマウント部材９及び適宜インシュレー
タ等の減衰部材１０を介してエンジン２がマウントされ
る。この減衰部材１０によってエンジン２からセンタメ
ンバ１に伝達される振動は少なからず低減される。

【００１３】そして本実施例では、センタメンバ１の車
両前後方向中央部，即ちエンジン２からの起振力によっ
て振動の最も大きい同一位置に、マスダンパ３とダイナ
ミックダンパ４とが重合して取付けられている。この実
施例では図２に明示するように、方形のパイプ状に形成
されたセンタメンバ１の中央部上面に，対向する断面コ
字状のブラケット５を溶接により突設し、このブラケッ
ト５のうち，センタメンバ１の中央部上面からやや離れ
た箇所間にマスダンパ３を貫通状に架設し、更にその上
方にダイナミックダンパ４を架設した。

【００１４】前記マスダンパ３は、自己の質量によって
センタメンバ１の共振を低減するものであり、具体的に
は共振周波数を低減することに貢献する。当然，このマ
スダンパ３は副振動系を形成するために，センタメンバ
１からはやや離して連結する必要があり、前述のように
センタメンバ１の上面から離れた箇所で前記両ブラケッ
ト５間を貫通状態に溶接して架設してなる。

【００１５】また前記ダイナミックダンパ４は、自己の
減衰力によってセンタメンバ１の振動伝達力を低減する
ものであり、具体的には振動減衰力に貢献する。このダ
イナミックダンパ４には流体中にオリフィスを介装し
た，所謂ハイドロリックダンパ等が使用される。本実施
例では、前記マスダンパ３の上方において，前記両ブラ
ケット５の夫々との間にゴム部材６を介装して当該ダイ
ナミックダンパ４の両端部に形成されているネジ部７を
各ブラケット５の貫通孔に貫通し、その貫通突出部にナ
ット８を螺合して締付け、これにより両ブラケット５間
にダイナミックダンパ４が架設されるようにして固定す
る。従って、センタメンバ１に溶接固着された各ブラケ
ット５がダイナミックダンパ４の入力端となり、両ブラ
ケット５間に生じる位相差を吸収して振動を減衰し、結
果としてセンタメンバ１の振動伝達力を低減する。

【００１６】次に本実施例におけるセンタメンバ１の振
動低減用ダンパ構造の作用について説明する。前述のよ
うに前記マウント部材９及び減衰部材１０を介してセン
タメンバ１にマウントされたエンジン２の起振力によっ
て，センタメンバ１の共振も発生する。このセンタメン
バ１の共振は車体側に伝達され、これが車体側との共振
によって増幅されると振動若しくは振動音として感知さ
れる。図３に二点鎖線で示す本実施例のサブフレームの
共振点と，同図に破線で示すセンタメンバ１の共振点と
は共に９０Ｈｚ前後であり、両者の共振による振動の増
幅を抑制するために，センタメンバ１の共振点を変え、
同時に振動伝達力を低減することが有効である。

【００１７】そこで自己の質量によって共振周波数を低
減することのできるマスダンパ３を副振動系としてセン
タメンバ１に取付けた場合には，図３に一点鎖線で示す
ようにセンタメンバ１の共振周波数が低くなり、これに
よりサブフレームとの共振による振動の増幅はある程度
小さくすることができる。しかしながら，このマスダン
パ３だけでは振動伝達力を低減することができないか
ら、車体側に伝達される振動若しくは振動音はそれほど
小さくはならない。

【００１８】一方、本実施例のようにセンタメンバ１に
対して，前記マスダンパ３と、自己の減衰力によって振
動伝達力を低減することのできるダイナミックダンパ４
とを取付けた場合には、図３に実線で示すように共振周
波数を低減すると共に振動伝達力を低減することができ
るために，センタメンバ１自体の振動を低減しながらサ
ブフレームとの共振による振動の増幅を回避することが
できる。

【００１９】しかも本実施例のダンパ構造では，前記マ
スダンパ３とダイナミックダンパ４とを振動の最も大き
い，センタメンバ１の中央部に重合して取付けたため
に、夫々が効率よく作用して振動若しくは振動音を小さ
くすることができる。このことは、同じ振動低減作用を
求める場合に，各ダンパ部材の容量を小さくすることを
可能とするから、各ダンパ部材をコンパクトなものにす
ることができる。

【００２０】ここで本実施例では前記重合された両ダン
パ部材を共通のブラケット５を介してセンタメンバ１に
取付けたこともあり、前記のようにダンパ部材のコンパ
クト化が可能なことから、これらが特にエンジンルーム
内に突出する容積を小さくでき、当該エンジンルーム内
のレイアウトに与える影響を最小限にすることができ
る。

【００２１】なお、本実施例では前記マスダンパが下方
に，ダイナミックダンパが上方になるようにして両ダン
パ部材を重合し，これをセンタメンバの上面に取付ける
構造について詳述したが、両ダンパ部材の配設順序は逆
になってもよい。また、センタメンバに対しては，当該
センタメンバの振動が大きい中央部であれば、どの面に
取付けてもよい。更に，マスダンパは一体のものでなく
ともよく、これを複数のパーツに分割して，例えば前記
ブラケットの夫々に溶接固着するようにしてもよい。

【００２２】また、本発明の振動低減用ダンパ構造は，
特にセンタメンバに限定されず、エンジンをマウントす
るあらゆるエンジンマウントメンバに対して展開可能で
ある。

【００２３】

【発明の効果】以上説明したように本発明のエンジンマ
ウントメンバの振動低減用ダンパ構造によれば、振動の
大きいエンジンマウントメンバの中央部において，前記
マスダンパが当該メンバの共振を，ダイナミックダンパ
が振動伝達力を、夫々効率よく低減するために、特に車
体側との共振による振動や振動音を大幅に小さくするこ
とができ、しかもこれらを同一の取付具によって一体的
にメンバに取付けてエンジンルーム内のレイアウトに及
ぼす影響を最小限に抑制することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明のエンジンマウントメンバの振動低減用
ダンパ構造の一実施例を示す斜視図である。

【図２】図１の振動低減用ダンパ構造の詳細を示すもの
であり、（ａ）は平面図，（ｂ）は側面図である。

【図３】図１の振動低減用ダンパ構造並びに従来のダン
パ構造の振動低減作用の説明図である。

【図４】従来のエンジンマウントメンバの振動低減用ダ
ンパ構造の一例を示す斜視図である。

【符号の説明】

１はエンジン ２はセンタメンバ ３はマスダンパ ４はダイナミックダンパ ５はブラケット ６はゴム部材 ７はネジ部 ８はナット ９はマウント部材 １０はインシュレータ

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 車両のエンジンがマウントされるメンバ
   の振動を低減するために使用されるダンパの構造におい
   て、前記メンバのうち振動の大きい中央部の同一位置
   に、自己の質量でメンバの共振を低減するマスダンパ
   と，自己の減衰力でメンバの振動伝達力を低減するダイ
   ナミックダンパとを、互いに重合して，同一の取付具で
   一体的に取付けてなることを特徴とするエンジンマウン
   トメンバの振動低減用ダンパ構造。