JPH06264425A - 魚巣ブロック並びに魚巣付き護岸及び落差工 - Google Patents

魚巣ブロック並びに魚巣付き護岸及び落差工

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JPH06264425A
JPH06264425A JP5078703A JP7870393A JPH06264425A JP H06264425 A JPH06264425 A JP H06264425A JP 5078703 A JP5078703 A JP 5078703A JP 7870393 A JP7870393 A JP 7870393A JP H06264425 A JPH06264425 A JP H06264425A
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vertical wall
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fish
nest block
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春麿 野崎
Kunihiko Uchida
国彦 内田
Mitsuo Toyoda
光郎 豊田
Toshio Yokoyama
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 一つの魚巣ブロックの高さを必要以上に低く
しなくても、段差ピッチの小さい階段状の護岸又は落差
工を構築できるようにし、水路歩行の際の昇り降りを容
易にする。 【構成】 魚巣ブロック1は、その後部に左右方向に延
びる縦壁2を備え、該縦壁2の上部の左右部分には斜面
3が形成されている。縦壁2の上部の中央部には上ステ
ップ体4が一体形成され、該上ステップ体4は縦壁2の
高さと同一高さの上面を有している。上ステップ体4の
前部の下側には、左右に二分割形成された下ステップ体
6が一体形成され、該下ステップ体6の平面L字状に現
われる上面の高さは縦壁2の高さの半分である。縦壁2
と下ステップ体6との間には魚巣用空間7が形成され、
下ステップ体6間には逃げ道8が形成されている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、魚、貝、蟹等の水棲生
物の棲息に適した魚巣ブロック、並びにそれを使用して
構築した、河川、人工運河等の水路の魚巣付き護岸及び
落差工に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来の魚巣付き護岸としては、図17に
示すように、水路の法面96に沿った傾斜盤92と、そ
の後端に立設された縦壁93と、縦壁93の上端から前
方へ水平に突設された水平壁94と、それらの間の魚巣
用空間95とを備えた魚巣ブロック91を使用し、この
魚巣ブロック91の傾斜盤92の後端に次の魚巣ブロッ
ク91の傾斜盤92の前端が当接するようにして法面9
6に並べ上げることにより、前記水平壁94を階段状に
配置してなる護岸が知られている(実公昭60−421
03号公報)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】前記護岸によれば、人
が水路歩行する際に、前記水平壁94を階段として利用
し昇り降りすることができる。しかし、前記魚巣ブロッ
ク91は一つのブロックに一つの水平壁94があるだけ
なので、水路の法面勾配が急な程、上下の魚巣ブロック
91の水平壁94間の段差ピッチが大きくなり、その昇
り降りが容易ではなく、特に子供や老人には困難であっ
た。
【0004】なお、上下の水平壁94間の段差ピッチを
小さくするだけならば、一つの魚巣ブロック91の全高
を低くすればよいが、そうすると今度は、魚巣用空間9
5が狭くなり魚巣として機能しなくなるとか、より多数
の魚巣ブロックを施工しなければならないとかという問
題があり、実現は困難であった。
【0005】また、魚巣の底面すなわち傾斜盤92の上
面が傾斜しているため、この上面に魚等の水棲生物の棲
息に好ましい砂利、栗石又は玉石を敷設しにくいという
問題もあった。また、この傾斜盤92の傾斜角は施工す
る水路の法面勾配に合わせて専用に設計されるため、あ
る規格品の魚巣ブロックを、法面勾配が異なる色々な水
路に対応させるようなことはできなかった。
【0006】そこで、本発明の目的は、一つの魚巣ブロ
ックの全高を必要以上に低くしなくても、段差ピッチの
小さい階段状の護岸又は落差工を構築することができ、
従って、広い魚巣を確保しながらも、水路歩行の際の昇
り降りを容易にすることができ、また魚、貝、蟹等の水
棲生物の棲息に適した自然に近い魚巣を形成することが
できる新規な魚巣ブロック並びに魚巣付き護岸及び落差
工を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明の魚巣ブロックは、縦壁と、縦壁の高さと略
同一高さの上面を有し、縦壁の上部に一体化されて前方
へ延びる上ステップ体と、縦壁の高さの略半分の高さの
上面を有し、上ステップ体の前部の下側に一体化された
下ステップ体と、縦壁と下ステップ体との間に形成され
た魚巣用空間とを備えた構成とした(請求項1)。
【0008】下ステップ体の一部又は側方に、魚巣用空
間から下ステップ体の前方へ通じる水棲生物の逃げ道を
形成することが好ましい(請求項2)。
【0009】また、縦壁の上部の一部分に上ステップ体
を一体化し、縦壁のうち上ステップ体の付根を除く部分
に該縦壁の上端から前方へ斜めに下がる斜面を形成する
ことが好ましい(請求項3)。
【0010】また、上ステップ体の上面又は下ステップ
体の上面に、例えば次のような凹又は凸を付けることが
好ましい(請求項4)。 これらの上面に一体形成した自然石状又は幾何学的
な凹又は凸。 これらの上面に間隔をおいて設けた複数の凹(孔、
溝等)又は凸(突起、凸条等)。さらに、上ステップ体
の上面に凹又は凸を付け、下ステップ体の下面に前記凹
又は凸と嵌合する凸又は凹を付けることもできる(請求
項5)。 上ステップ体又は下ステップ体を凹凸のある透水性
コンクリートで形成する(請求項6)。
【0011】また、縦壁、上ステップ体又は下ステップ
体を、微生物の栄養素を含むコンクリートで形成するこ
とも好ましい(請求項7)。
【0012】そして、本発明の魚巣付き護岸は、前記魚
巣ブロックを使用し、水路の法面に魚巣ブロックをその
縦壁の後面が法面に向くように列設して下段を形成し、
下段の魚巣ブロックの上ステップ体の上面の一部に次の
魚巣ブロックの下ステップ体を載せるとともに、該魚巣
ブロックの縦壁の後面が法面に向くように列設して上段
を形成することにより構築した(請求項8)。
【0013】また、本発明の魚巣付き落差工は、前記魚
巣ブロックを使用し、水路の横断方向に魚巣ブロックを
その縦壁の後面が上流側に向くように列設して下段を形
成し、下段の魚巣ブロックの上ステップ体の上面の一部
に次の魚巣ブロックの下ステップ体を載せるとともに、
該魚巣ブロックの縦壁の後面が上流側に向くように列設
して上段を形成することにより構築した(請求項1
0)。
【0014】さらに、底盤と、底盤の後縁部に立設され
た左右方向に延びる縦壁と、底盤の前縁部に立設された
左右方向に延びる受止め壁と、縦壁の上端から前方に突
設された支持壁とを備えた魚巣ブロックを、前記魚巣付
き護岸又は魚巣付き落差工の一部に組み合わせることも
できる(請求項9又は11)。
【0015】
【作用】本発明の魚巣ブロック又は魚巣付き護岸若しく
は落差工(請求項1,8又は10)によれば、一つの魚
巣ブロックに高さの異なる上下二つのステップ体がある
ので、一つの魚巣ブロックの全高を必要以上に低くしな
くても、段差ピッチの小さい階段状の護岸又は落差工を
構築することができる。従って、広い魚巣を確保しなが
らも、水路歩行の際の昇り降りを容易にすることができ
る。
【0016】また、前記魚巣用空間は略水平であり、そ
の下方に砂利、栗石又は玉石を単独で又は組み合わせて
設けることができるので、魚、貝、蟹等の水棲生物の棲
息に適した自然に近い魚巣を形成することができる。
【0017】また、短期に護岸又は落差工を構築するこ
とができ、下段の魚巣ブロックと上段の魚巣ブロックと
の前後方向の相対位置を変えれば、ある規格品の魚巣ブ
ロックを、勾配の異なる色々な護岸又は落差工に対応さ
せることができる。また、前記前後方向の相対位置を部
分的に変化させることにより、変化に富んだ護岸又は落
差工を構築することもできる。
【0018】さらに、魚巣ブロックの下ステップ体の一
部又は側方に逃げ道を形成すれば(請求項2)、水路の
流水量が減少したときに、水棲生物はその逃げ道を通っ
て魚巣から容易に逃げ出すことができる。また、この逃
げ道は、例えば大きい水棲生物に攻撃されやすい小さい
水棲生物の避難場所ともなり、水棲生物の棲み分けにも
寄与する。
【0019】また、魚巣ブロックの縦壁に斜面を形成す
れば(請求項3)、該魚巣ブロックを使用して落差工を
構築したときに、魚がこの斜面上を通って容易に溯上で
きるようになる。一方、魚巣内は水の流速が遅くなるの
で、溯上する魚の休憩場所となる。
【0020】また、魚巣ブロックの上ステップ体の上面
又は下ステップ体の上面に凹又は凸を付ければ(請求項
4)、水路歩行の際に滑り止め作用を発揮する。
【0021】さらに、魚巣ブロックの上ステップ体の上
面に凹又は凸を付け、下ステップ体の下面に前記上ステ
ップ体の凹又は凸とは反対の凸又は凹を付ければ(請求
項5)、上段側の下ステップ体の凹又は凸が下段側の上
ステップ体の凸又は凹溝に嵌合するので、上下段の魚巣
ブロック同志のずれが防止される。
【0022】また、魚巣ブロックの上ステップ体又は下
ステップ体を凹凸のある透水性コンクリートで形成すれ
ば(請求項6)、前記滑り止め作用に加え、該透水性コ
ンクリートの多孔質性により酸素や栄養の供給が向上す
る。
【0023】また、魚巣ブロックの縦壁、上ステップ体
又は下ステップ体を、微生物の栄養素を含むコンクリー
トで形成すれば(請求項7)、この栄養素が次第に溶出
して微生物の繁殖に好適な環境ができ、この微生物を求
めて水棲生物が集まる。
【0024】さらに、底盤とその後縁部、前縁部及び上
端にそれぞれ設けられた縦壁、受止め壁及び支持壁とを
備えた魚巣ブロックを、前記魚巣付き護岸又は魚巣付き
落差工の一部に組み合わせれば、より変化に富み、水棲
生物の活動に適した魚巣が形成され、水棲生物のすみ分
けにも寄与する(請求項9又は11)。
【0025】
【実施例】以下、本発明を具体化した第一実施例及び第
二実施例の魚巣ブロックについて、図1〜図8を参照し
て説明する。これらの魚巣ブロック1,21は、補強筋
(図示略。鉄筋が一般的であるが、樹脂被覆鉄筋、メッ
キ鉄筋、カーボンファイバー、その他が使用されること
もある。)が埋設されたコンクリートによりそれぞれ図
1及び図2に示すような形状に成形されている。なお、
以下で挙げる各部の寸法は例示であり、適宜変更するこ
とができる。
【0026】まず、図1に示す第一実施例の魚巣ブロッ
ク1は全高が500mmであり、後部に左右方向に延び
る縦壁2を備え、その左右幅は1980mm、底面から
の高さは500mm、前後厚さは上端及び下端において
150mm・中間高さにおいて200mmである。従っ
て、縦壁2の上部のうち次に述べる上ステップ体4の付
根部を除く左右部分には、該縦壁2の上端から前方へ斜
めに下がる斜面3が形成され、その水平に対する傾斜角
は約80度である。
【0027】前記縦壁2の上部の左右方向中央部には前
方へ延びる平面四角板状の上ステップ体4が一体形成さ
れ、該上ステップ体4は縦壁2の高さと同一高さ(50
0mm)の上面を有している。この上面の前端から縦壁
2への付根までの前後奥行は750mmである。上ステ
ップ体4の上下厚さは250mmであるが、成形後の型
抜きを容易にするため正面からみて下広がり形状に形成
され、その左右幅は下面において1000mm・上面に
おいて900mmである。
【0028】前記上ステップ体4の前部の下側には、左
右に二分割形成された平面四角板状の下ステップ体6が
一体形成されている。左右の各下ステップ体6は後側か
つ内側の角部のみが上ステップ体4の前側の角部と重な
るように一体化されているため、その重なりを除く部分
には平面L字状の上面が現われており、該上面の高さは
縦壁2の高さの半分(250mm)である。下ステップ
体6の前端面は上ステップ体4の前端面より250mm
だけ前方に位置している。下ステップ体6の上下厚さは
250mmであるが、成形後の型抜きを容易にするため
正面及び側方からみて上広がり形状に形成され、各下ス
テップ体6の左右幅は上面において800mm・下面に
おいて700mm、前後奥行は上面において550mm
・下面において450mmである。
【0029】また、上ステップ体4及び下ステップ体6
の前端面の下部には、左右方向に延びる奥行50mmの
抉り部5が形成され、これらのステップ体4,6を階段
として使用する場合のステップ奥行を大きくしている。
【0030】縦壁2と下ステップ体6との間には左右方
向に延びる魚巣用空間7が形成され、その前後奥行は下
端において500mm・上端において400mである。
左右の両下ステップ体6間に形成された間隙は、魚巣用
空間7から下ステップ体6の前方へ通じる水棲生物の逃
げ道8であり、その左右開口幅は下端において200m
m・上端において100mmである。また、下ステップ
体6の外側端面の上端は縦壁2の外側端面より140m
mだけ内側に位置するため、後述するように護岸を構築
したとき、左右方向に隣り合う両魚巣ブロック1の下ス
テップ体6間に水棲生物の逃げ道9が形成され、その左
右開口幅は下端において380mm以上・上端において
280mm以上(魚巣ブロック1間の隙間分が加算され
る。)である。
【0031】図4、図5等に示すように、上ステップ体
4の両側端面と下ステップ体6の下面の所定位置には所
定数の雌ねじ部材10が埋設され、魚巣ブロック1を上
下段に積上げたときに、これらを連結するためのボルト
11を螺着できるようになっている。
【0032】次に、図2に示す第二実施例の魚巣ブロッ
ク21は、第一実施例の魚巣ブロック1に対して次の部
分の寸法形状のみを変更したものである。すなわち、縦
壁2の前後厚さは上端において150mm・中間高さに
おいて400mm・下端において350mmである。従
って、斜面3の水平に対する傾斜角は45度と緩くなっ
ている。また、上ステップ体4の上面の前端から縦壁2
への付根までの前後奥行は1600mm、各下ステップ
体6の前後奥行はその上面において1000mm・下面
において900mmと、いずれも長くなっている。
【0033】さて、これらの魚巣ブロック1,21を使
用して、図3〜図7に示すような魚巣付き護岸を構築す
ることができる。すなわち、水路の法面12下の河床面
に玉石13及び栗石14を敷設し、該栗石14上に水路
方向に沿って捨コンクリート15を打設する。縦壁2の
後面を法面12に向け、前記捨コンクリート15上に下
ステップ体6及び縦壁2を載せるようにして、複数の魚
巣ブロック1,21を水路方向に列設することにより、
護岸の一段目を形成する。
【0034】前記一段目の縦壁2と法面12との間に玉
石13及び栗石14を詰め、該栗石14上に捨コンクリ
ート15を打設する。一段目の上ステップ体4の上面に
下ステップ体6を載せ、前記捨コンクリート15上に縦
壁2を載せるようにして、次の複数の魚巣ブロック1,
21を水路方向に列設することにより、護岸の二段目を
形成する。従って、二段目の魚巣ブロック1,21は一
段目の魚巣ブロック1,21に対して後方(法面側)へ
シフトさせ、且つ千鳥状に積上げる訳である。同様にし
て、二段目の魚巣ブロック1,21の上方に次の魚巣ブ
ロック1,21を列設することにより、護岸の三段目を
形成する。
【0035】各段の魚巣ブロック1,21は自重により
十分に安定するため、上記のように単に載置するだけで
もよい。但し、上段側の下ステップ体6の下面と下段側
の上ステップ体4の側端面とにL形金具16を当て、一
対のボルト11をそのL形金具16に通して前記雌ねじ
部材10に螺着し、これらのステップ体4,6を連結す
れば、魚巣ブロック1,21同志のずれをさらに確実に
防止することができる。また、河床穿掘、地盤沈下等が
発生したときに、魚巣ブロック1,21同志の連結を柔
構造的に保つこともできる。
【0036】また、上段側及び下段側の魚巣ブロック
1,21の前後方向の相対位置を、例えば次のように変
えることにより、法面勾配の異なる種々の水路に適応し
た護岸を容易に構築することができる。
【0037】 図3〜図5に示すように、第一実施例
の魚巣ブロック1を使用し、上段側の下ステップ体6の
後端を下段側の上ステップ体4の後端に合わせるように
すれば、法面勾配(イギリス式に従い、高さを1とした
場合の水平距離で表わす。以下、同じ。)が1割(1:
1)の場合に適応する。
【0038】 図6に示すように、第一実施例の魚巣
ブロック1を使用し、上段側の下ステップ体6の前端を
下段側の上ステップ体4の前端に合わせるようにすれ
ば、法面勾配が例えば5分(1:0.5)のように急な
場合に適応する。
【0039】 図7に示すように、第二実施例の魚巣
ブロック21を使用し、上段側の下ステップ体6の後端
を下段側の上ステップ体4の後端付近に合わせるように
すれば、法面勾配が例えば2割(1:2)のように緩い
場合に適応する。
【0040】次に、本実施例の魚巣ブロック21(1も
使用可能)を使用して、図8に示すような魚巣付き落差
工を構築することができる。すなわち、河床の落差部に
階段状のコンクリート基盤17を河川の横断方向に延び
るように打設する。このコンクリート基盤17に玉石1
3及び栗石14を敷設し、該栗石14上に捨コンクリー
ト15及びずれ止めコンクリート18を打設する。縦壁
2の後面を上流側に向け、前記捨コンクリート15上に
下ステップ体6を載せるようにして、複数の魚巣ブロッ
ク21を前記横断方向に列設することにより、落差工の
一段目を形成する。なお、同図に示した魚巣ブロック2
1は、図2に示したものに対して、斜面3がより下方へ
延長されている。
【0041】前記一段目の縦壁2とコンクリート基盤1
7との間に玉石13及び栗石14を詰め、一段目の上ス
テップ体4の上面に下ステップ体6を載せるようにし
て、次の複数の魚巣ブロック21を前記横断方向に列設
することにより、落差工の二段目を形成する。従って、
二段目の魚巣ブロック21は一段目の魚巣ブロック21
に対して上流側へシフトさせ、且つ千鳥状に積上げる訳
である。同様にして、二段目の魚巣ブロック21の上方
に次の魚巣ブロック21を列設することにより、落差工
の三段目を形成する。この落差工では、前記L形金具1
6及びボルト11により、上段側の下ステップ体6と下
段側の上ステップ体4とを連結することが好ましい。
【0042】また、この落差工においても、上段側及び
下段側の魚巣ブロック21の前後方向の相対位置を変え
ることにより、落差勾配の異なる種々の水路に適応した
落差工を容易に構築することができる。
【0043】以上のように構成した本実施例の魚巣ブロ
ック1,21並びにそれを使用して構築した魚巣付き護
岸及び落差工は、前記構成中で説明した作用及び効果に
加え、次のような作用及び効果を奏する。
【0044】(1) 一つの魚巣ブロック1,21に高さ2
50mmの上面を備えた下ステップ体6と、高さ500
mmの上面を備えた上ステップ体4とがあるので、一つ
の魚巣ブロック1,21の全高が500mmと大きくて
も、段差ピッチが250mmと小さい階段状の護岸又は
落差工を構築することができる。従って、広い魚巣を確
保しながらも、水路歩行の際の昇り降りを容易にするこ
とができる。
【0045】(2) 前記魚巣用空間7は略水平であり、そ
の下方に玉石13、栗石14又砂利を単独で又は組み合
わせて設けることができるので、魚、貝、蟹等の水棲生
物の棲息に適した自然に近い魚巣を形成することができ
る。また、上ステップ体4の下方に日陰が適度に形成さ
れるので、水棲生物の休息等に良い環境が形成される。
また、左右方向に隣接する両魚巣ブロック1,21の上
ステップ体4の間から、前記魚巣に直射日光が適度に当
たるので、水温が適度に上昇し、水草、藻等の水中植物
の生育に良い環境を形成する。しかも、この魚巣は水の
循環が非常に良く、酸素と栄養に富んだ環境を形成す
る。
【0046】(3) 前記下ステップ体6の一部又は側方に
逃げ道8,9を形成したので、水路の流水量が減少した
ときに、水棲生物はその逃げ道8,9を通って魚巣から
容易に逃げ出すことができ、魚巣に閉じ込められる心配
がない。また、この逃げ道8,9は、例えば大きい水棲
生物に攻撃されやすい小さい水棲生物の避難場所ともな
り、水棲生物のすみ分けにも寄与する。
【0047】(4) 前記縦壁2に斜面3を形成したので、
図8に示すように落差工を構築したときに、魚がこの斜
面3上を通って容易に溯上できるようになり、溯上率が
高くなる。特に、第二実施例の魚巣ブロック21では斜
面3の傾斜角を45度としたので、溯上率が著しく高く
なる。
【0048】次に、図9に示す第三実施例の魚巣ブロッ
ク31は、縦壁2、上ステップ体4及び下ステップ体6
を凹凸のある透水性コンクリートで形成した点と、その
透水性コンクリートに微生物の栄養素(窒素、燐、カリ
ウム等)を添加した点と、下ステップ体6を分割しない
で一体物として形成し、その左右方向中央部にトンネル
状の逃げ道8を形成した点とにおいて、第一実施例と相
違するものである。
【0049】本実施例は、第一実施例と同様の効果に加
え、透水性コンクリートの多孔質性により酸素や栄養の
供給が向上するとか、水路歩行の際に上ステップ体4及
び下ステップ体6の上面で滑りにくくなり転倒事故を防
止できるとか、下ステップ体6の上面面積が大きいので
歩行しやすいとかという効果を奏する。また、魚巣ブロ
ックから前記栄養素が次第に溶出して微生物の繁殖に好
適な環境ができるので、この微生物を求めて水棲生物が
集まる。
【0050】次に、図10に示す第四実施例の魚巣ブロ
ック41は、上ステップ体4及び下ステップ体6の上面
に自然石状の凸部42をコンクリートで一体形成した点
において、第一実施例と相違するものである。本実施例
は、第一実施例と同様の効果に加え、水路歩行の際に上
ステップ体4及び下ステップ体6の上面で滑りにくくな
り転倒事故を防止できるとか、外観が向上し水路の景観
に合うという効果を奏する。
【0051】次に、図11及び図12に示す第五実施例
の魚巣ブロック51は、上ステップ体4及び下ステップ
体6の上面に左右方向に延びる複数本の溝52を形成
し、下ステップ体6の下面に左右方向に延びる複数本の
凸条53を一体形成した点において、第一実施例と相違
するものである。溝52の断面形状としてはV字形、台
形、U字形、半円形等を例示でき、これらに合うように
凸条53の断面形状を決定できる。また、溝52及び凸
条53は前後方向に延びるものでもよいし、格子状に設
けてもよい。
【0052】本実施例にも転倒事故の防止効果があり、
また、図12に示すように上段側の下ステップ体6の凸
条53が下段側の上ステップ体4の溝52に嵌合するの
で、前記ボルト11等を使用しなくても、魚巣ブロック
51同志のずれを防止できる。また、凸条53の高さを
溝52の深さより高くすることにより、上段側の下ステ
ップ体6と下段側の上ステップ体4との間に隙間54を
形成し、この隙間54を小さい水棲生物の避難場所とす
ることもできる。
【0053】次に、図13に示す第六実施例の魚巣ブロ
ック61は、上ステップ体4を左右に二分割形成し、縦
壁2の左右部分の上部に一体化した点において、第三実
施例と相違するものである。本実施例も、第三実施例と
同様の効果を奏する。
【0054】次に、図14〜図16は、第二実施例によ
る魚巣付き護岸又は魚巣付き落差工の変更例を示す。図
14に示す魚巣ブロック71は底盤72を備え、その左
右方向の長さは1980mm、前後方向の幅は2000
mmである。底盤72の後縁部には左右方向に延びる縦
壁73が一体的に立設され、その底盤下面からの高さは
1000mmである。縦壁73の上端には前方へ水平に
突出した支持壁74が一体的に形成され、その縦壁後面
からの突出幅は1000mmである。
【0055】底盤72の前縁部には左右方向に延びる受
止め壁75が一体的に立設され、その左右方向の長さは
1830mm、底盤上面からの高さは300mmであ
る。従って、この前縁部において受止め壁75の右方に
は前後方向の逃げ道76が形成され、その開口幅は15
0mmである。
【0056】底盤72の左縁部の中程には前後方向に延
びる塞止め壁77が一体的に立設され、その前後方向の
幅は1100mm、底盤上面からの高さは150mmで
ある。従って、この左縁部において塞止め壁77の両端
と縦壁73及び受止め壁75との間には左右方向の逃げ
道78が形成され、その開口幅は250mmである。
【0057】支持壁74と受止め壁75の前面には格子
溝が形成され、景観と魚巣の自然感を向上させている。
底盤72の上面には、縦壁73と受止め壁75と塞止め
壁77とで囲まれた浅く広い窪みができ、この窪みが自
然に近い魚巣を形成する。この魚巣に敷設される栗石等
(図示略)は、受止め壁75により前方へのこぼれ落ち
が防止され、塞止め壁77により左右方向の押し流しが
防止される。
【0058】図15及び図16に示すように、この魚巣
ブロック71は、第二実施例の魚巣ブロック21による
魚巣付き護岸又は魚巣付き落差工の一部に組み合わせて
使用される。魚巣ブロック21と魚巣ブロック71と
は、図16に示すように勾配を合わせてもよいし、前後
にずらしても変化させてもよい。
【0059】この第二実施例の変形例によれば、より変
化に富み、水棲生物の活動に適した魚巣が形成される。
また、魚巣ブロック21と魚巣ブロック71に異なる種
類の水棲生物が棲息し、水棲生物のすみ分けにも寄与す
る。
【0060】なお、本発明は前記実施例の構成に限定さ
れるものではなく、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適
宜変更して具体化することもできる。
【0061】
【発明の効果】以上詳述した通り、本発明に係る請求項
1記載の魚巣ブロック、請求項8記載の魚巣付き護岸、
又は請求項10記載の魚巣付き落差工によれば、一つの
魚巣ブロックの全高を必要以上に低くしなくても、段差
ピッチの小さい階段状の護岸又は落差工を構築すること
ができ、従って、広い魚巣を確保しながらも、水路歩行
の際の昇り降りを容易にすることができ、また魚、貝、
蟹等の水棲生物の棲息に適した自然に近い魚巣を形成す
ることができる。また、短期に護岸又は落差工を構築で
き、勾配の異なる色々な護岸又は落差工を構築でき、変
化に富んだ護岸又は落差工を構築できる。
【0062】上記効果に加え、請求項2記載の魚巣ブロ
ックによれば、水路の流水量が減少したときに、水棲生
物はその逃げ道を通って魚巣から容易に逃げ出すことが
でき、魚巣に閉じ込められる心配がなくなる。
【0063】また、請求項3記載の魚巣ブロックによれ
ば、該魚巣ブロックを使用して落差工を構築したとき
に、魚がこの斜面上を通って容易に溯上できるようにな
り、溯上率が高くなる。また、魚巣内は水の流速が遅く
なるので、溯上する魚の休憩場所となる。
【0064】また、請求項4記載の魚巣ブロックによれ
ば、水路歩行の際に滑りにくく、転倒事故を防止でき
る。
【0065】また、請求項5記載の魚巣ブロックによれ
ば、前記転倒事故の防止に加えて、上下段の魚巣ブロッ
ク同志のずれを防止できる。
【0066】また、請求項6記載の魚巣ブロックによれ
ば、前記転倒事故の防止に加えて、魚巣における酸素や
栄養の供給が向上する。
【0067】また、請求項7記載の魚巣ブロックによれ
ば、微生物の繁殖に好適な環境を形成でき、水棲生物を
集めることができる。
【0068】また、請求項9記載の魚巣付き護岸又は請
求項11記載の魚巣付き落差工によれば、より変化に富
み、水棲生物の活動に適した魚巣が形成され、水棲生物
のすみ分けにも寄与する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を具体化した第一実施例の魚巣ブロック
の斜視図である。
【図2】同じく第二実施例の魚巣ブロックの斜視図であ
る。
【図3】第一実施例の魚巣ブロックにより構築した魚巣
付き護岸の斜視図である。
【図4】同魚巣付き護岸の正面図である。
【図5】同魚巣付き護岸の側断面図である。
【図6】法面勾配の急な同魚巣付き護岸の側断面図であ
る。
【図7】第二実施例の魚巣ブロックにより構築した法面
勾配の緩い魚巣付き護岸の側断面図である。
【図8】第二実施例の魚巣ブロックにより構築した魚巣
付き落差工の側断面図である。
【図9】第三実施例の魚巣ブロックの斜視図である。
【図10】第四実施例の魚巣ブロックの斜視図である。
【図11】第五実施例の魚巣ブロックの斜視図である。
【図12】同魚巣ブロックを積上げた状態の側面図であ
る。
【図13】第六実施例の魚巣ブロックの斜視図である。
【図14】第二実施例の変形例に使用する魚巣ブロック
の斜視図である。
【図15】同変形例の正面図である。
【図16】同変形例の側面図である。
【図17】従来例の魚巣付き護岸の側断面図である。
【符号の説明】
1 魚巣ブロック 2 縦壁 3 斜面 4 上ステップ
体 6 下ステップ体 7 魚巣用空間 8 逃げ道 9 逃げ道 12 法面 21 魚巣ブロ
ック 31 魚巣ブロック 41 魚巣ブロ
ック 42 凸部 51 魚巣ブロ
ック 52 溝 53 凸条 61 魚巣ブロック 71 魚巣ブロ
ック 72 底盤 73 縦壁 74 支持壁 75 受止め壁
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 横山 寿夫 岐阜県岐阜市明徳町10番地 昭和コンクリ ート工業株式会社内

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 縦壁と、前記縦壁の高さと略同一高さの
    上面を有し、前記縦壁の上部に一体化されて前方へ延び
    る上ステップ体と、前記縦壁の高さの略半分の高さの上
    面を有し、前記上ステップ体の前部の下側に一体化され
    た下ステップ体と、前記縦壁と前記下ステップ体との間
    に形成された魚巣用空間とを備えた魚巣ブロック。
  2. 【請求項2】 下ステップ体の一部又は側方に、魚巣用
    空間から前記下ステップ体の前方へ通じる水棲生物の逃
    げ道が形成された請求項1記載の魚巣ブロック。
  3. 【請求項3】 縦壁の上部の一部分に上ステップ体が一
    体化され、前記縦壁のうち上ステップ体の付根を除く部
    分に該縦壁の上端から前方へ斜めに下がる斜面が形成さ
    れた請求項1記載の魚巣ブロック。
  4. 【請求項4】 上ステップ体の上面又は下ステップ体の
    上面に凹又は凸が付けられた請求項1記載の魚巣ブロッ
    ク。
  5. 【請求項5】 上ステップ体の上面に凹又は凸が付けら
    れ、下ステップ体の下面に前記凹又は凸と嵌合する凸又
    は凹が付けられた請求項1記載の魚巣ブロック。
  6. 【請求項6】 上ステップ体又は下ステップ体が、凹凸
    のある透水性コンクリートで形成された請求項1記載の
    魚巣ブロック。
  7. 【請求項7】 縦壁、上ステップ体又は下ステップ体
    が、微生物の栄養素を含むコンクリートで形成された請
    求項1記載の魚巣ブロック。
  8. 【請求項8】 縦壁と、前記縦壁の高さと略同一高さの
    上面を有し、前記縦壁の上部に一体化されて前方へ延び
    る上ステップ体と、前記縦壁の高さの略半分の高さの上
    面を有し、前記上ステップ体の前部の下側に一体化され
    た下ステップ体と、前記縦壁と前記下ステップ体との間
    に形成された魚巣用空間とを備えた魚巣ブロックを使用
    し、 水路の法面に前記魚巣ブロックをその縦壁の後面が法面
    に向くように列設して下段を形成し、 前記下段の魚巣ブロックの上ステップ体の上面の一部に
    次の魚巣ブロックの下ステップ体を載せるとともに、該
    魚巣ブロックの縦壁の後面が法面に向くように列設して
    上段を形成してなる魚巣付き護岸。
  9. 【請求項9】 底盤と、前記底盤の後縁部に立設された
    左右方向に延びる縦壁と、前記底盤の前縁部に立設され
    た左右方向に延びる受止め壁と、前記縦壁の上端から前
    方に突設された支持壁とを備えた魚巣ブロックを、前記
    魚巣付き護岸の一部に組み合わせてなる請求項8記載の
    魚巣付き護岸。
  10. 【請求項10】 縦壁と、前記縦壁の高さと略同一高さ
    の上面を有し、前記縦壁の上部に一体化されて前方へ延
    びる上ステップ体と、前記縦壁の高さの略半分の高さの
    上面を有し、前記上ステップ体の前部の下側に一体化さ
    れた下ステップ体と、前記縦壁と前記下ステップ体との
    間に形成された魚巣用空間とを備えた魚巣ブロックを使
    用し、 水路の横断方向に前記魚巣ブロックをその縦壁の後面が
    上流側に向くように列設して下段を形成し、 前記下段の魚巣ブロックの上ステップ体の上面の一部に
    次の魚巣ブロックの下ステップ体を載せるとともに、該
    魚巣ブロックの縦壁の後面が上流側に向くように列設し
    て上段を形成してなる魚巣付き落差工。
  11. 【請求項11】 底盤と、前記底盤の後縁部に立設され
    た左右方向に延びる縦壁と、前記底盤の前縁部に立設さ
    れた左右方向に延びる受止め壁と、前記縦壁の上端から
    前方に突設された支持壁とを備えた魚巣ブロックを、前
    記魚巣付き落差工の一部に組み合わせてなる請求項10
    記載の魚巣付き落差工。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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KR101028451B1 (ko) * 2007-02-28 2011-04-14 토아 도보쿠 가부시키가이샤 호안블록

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