JPH06264226A - イオンプレーティング装置 - Google Patents

イオンプレーティング装置

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Publication number
JPH06264226A
JPH06264226A JP5053324A JP5332493A JPH06264226A JP H06264226 A JPH06264226 A JP H06264226A JP 5053324 A JP5053324 A JP 5053324A JP 5332493 A JP5332493 A JP 5332493A JP H06264226 A JPH06264226 A JP H06264226A
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JP
Japan
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crucible
plasma
cathode
ion plating
cover
Prior art date
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Application number
JP5053324A
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English (en)
Inventor
Makiko Ooyamaguchi
まき子 大山口
Koichi Sasagawa
孝市 笹川
Katsuhide Kawamata
克英 川又
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Nikon Corp
Original Assignee
Nikon Corp
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 成膜に用いる装置を複雑化させることなく、
高効率で質のよい膜を成膜する。 【構成】 蒸発物を支持する凹部1aを複数有する蒸発
物るつぼ10と、このるつぼの所定の凹部にのみ蒸発物
を蒸発させるプラズマが照射されるようにるつぼ上部に
配置された遮蔽手段4とを備えたイオンプレーティング
装置であって、遮蔽手段4と蒸発物るつぼ10とが電気
的に絶縁されている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、薄膜形成装置の一種で
あるイオンプレーティング装置に関するもので、特に、
プラズマ生成手段に圧力勾配型プラズマ生成手段と複合
陰極型プラズマ生成手段とを組み合わせた手段を用いた
イオンプレーティング装置に関する。
【0002】
【従来の技術】イオンプレーティング法は真空蒸着の一
種であり、蒸着物質の基板への付着(成膜)にイオン作
用を用いる薄膜形成方法である。この方法では蒸発物か
ら蒸発した原子をイオン化してプラズマを生成すると共
に、このイオンを基板に衝突させることで基板上に前記
蒸着物質からなる薄膜を形成する。イオンプレーティン
グ法は、真空蒸着に比べて耐食性、絶縁性、基板への付
着性が向上する他、堆積密度の高密度化が可能となると
いう利点を有している。イオンプレーティング法は、プ
ラズマの生成方法と蒸発源の構成によりさらにいくつか
の方法に分けられる。例えば、真空容器内で高周波励起
電圧を印加してグロー放電を起こすことでプラズマを生
成し、これにより薄膜の性質を操作するようにした高周
波型イオンプレーティング法や、真空容器内にホローカ
ソードを導入してアーク放電を起こし、これによりプラ
ズマを生成するホローカソード型イオンプレーティング
法などが知られている。
【0003】また、最近ではプラズマ生成手段として、
陰極と陽極の間に中間電極を設けて陰極が設置された領
域の圧力を1Torr程度、陽極が設置された領域の圧力を
10-3Torr程度に設定して放電を行なう圧力勾配型プラズ
マ生成手段が提案されている。この圧力勾配型プラズマ
生成手段は、(イ)イオンが陽極側から陰極側に逆流し
て陰極が損傷する恐れが少ない、(ロ)大電流で放電す
ることができる、という利点を有している。さらに、陰
極部を熱容量の小さい補助陰極とLaB6からなる主陰極と
で構成した複合陰極とした複合陰極型プラズマ生成手段
も提案されている。この生成手段では、補助陰極に初期
放電を集中させて主陰極を加熱し、最終的にこの主陰極
によってアーク放電が行われるように構成されたもの
で、これにより大電流の放出が可能となるものである。
さらに、これら圧力勾配型プラズマ生成手段と複合陰極
型プラズマ生成手段とを組み合わせたプラズマ生成手段
も提案されており、このプラズマ生成手段をイオンプレ
ーティング装置(以下、このような装置を「URイオン
プレーティング装置」という)に取り付けた例も提案さ
れている(特公平2−50577 )。
【0004】ところで、イオンプレーティング装置を用
いて複数種類の物質からなる層が積層された多層膜を形
成する場合がある。この場合、蒸発物として複数の種類
の物質を用意しなければならないが、多層膜の一層分が
形成される度に蒸発物を取り替えるのは面倒であった。
そこで、あらかじめ蒸発物るつぼに複数の蒸発物を用意
しておき、所望の蒸発物を選択的に蒸発させることで多
層膜を成膜する方法が提案されていた。その際に使用さ
れる蒸発物るつぼの一例を図4に示す。この蒸発物るつ
ぼ50は、蒸発物を設置する4ヶ所の凹部51aが設け
られた円板状の支持部51、支持部51の中心を回転中
心として回転させる回転軸52および回転駆動部53、
支持部51とを備えている。また、支持部51の上部に
は、所望の蒸発物以外の蒸発物にプラズマが照射されて
これが蒸発しないように蒸発源カバー54が配置されて
いる。この蒸発源カバー54は、切り欠け54aを有す
る円板状に形成されて所望の蒸発物が載置された凹部5
1aにのみプラズマが照射されるようにしてあり、図示
していない支持手段によって蒸発物るつぼに取り付けら
れていた。図3は、この蒸発物るつぼ50が組み込まれ
たURイオンプレーティング装置の一例を示す概略断面
図である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところが、前述のよう
なURイオンプレーティング装置においては、成膜を行
っている間に蒸発源カバー54が加熱され、最終的には
溶解してしまう場合があった。このような場合、成膜し
ていない蒸発物にもプラズマが照射されてしまうので、
この蒸発物がスパッタリングされて成膜中の膜に取り込
まれるという現象が生じる。また、溶解したカバーを形
成する物質が蒸発して膜に取り込まれるという現象も生
じる。こうした現象は成膜した膜質を低下させるため、
従来はこのような問題を避けるために、冷却手段を設け
たり成膜時間を短くしたりしてカバー54の溶解を防止
していた。しかし、冷却手段を設けることで装置の構成
が複雑になるという問題が生じていた。また、成膜時間
を短くすると成膜作業の効率が低下するという問題が生
じていた。本発明はこのような問題を解決することを目
的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的のために、本発
明では、プラズマを発生させるプラズマ生成手段、基板
を支持する基板支持手段、蒸発物を支持する凹部を複数
有する蒸発物るつぼ、該るつぼの所定の凹部にのみ前記
プラズマか照射されるように該るつぼ上部に設置された
遮蔽手段、前記蒸発物と基板との間に電圧を印加する電
圧印加手段、前記基板支持手段と蒸発物るつぼを所定の
真空空間に包含するための真空容器、該真空容器内を所
定の真空度に設定するための排気手段および前記蒸発物
るつぼの近傍に配置された磁界発生手段を有するイオン
プレーティング装置において、前記遮蔽手段が、前記蒸
発物るつぼから電気的に絶縁された状態で支持されるよ
うにした。
【0007】
【作用】従来の蒸発源カバーは、主として耐久性が良
く、高真空内に設置されてもガスを放出しない材質(例
えば、ステンレス鋼、モリブデン、タングステン等)を
用いていた。本発明者らが蒸発源カバーが加熱する原因
を調べたところ、このような材質を用いた蒸発源カバー
を使用すると、イオンプレーティングによる成膜過程で
生成するプラズマから蒸発物るつぼに移動した電子が、
さらにるつぼから該カバーに移動することが判明した。
そして、この電子の流入によってカバーが徐々に蓄熱
し、非常に高い温度となることが分かった。本発明で
は、蒸発源カバーと蒸発物るつぼとの間を電気的に絶縁
したので、該るつぼからカバーに電荷が移動することは
ない。そのため、カバーの蓄熱による高温化を防止する
ことができる。
【0008】蒸発源カバーと蒸発物るつぼとの間を電気
的に絶縁するには、カバー自体を絶縁体で構成してもよ
いし、カバーとるつぼとの間に絶縁物を設置してもよ
い。前者の場合は、材質としてセラミックスを用いる
と、耐久性が良く、高真空内に設置されてもガスを放出
しないので好ましい。また、後者の場合は、例えば、カ
バーをるつぼに取りつける際に、両者の間に絶縁物とし
てセラミックスを挿入すればよい。なお、セラミックス
に不純物が含まれたり内部に隙間等が形成されている
と、真空に排気した際にガスが放出される恐れがある。
そのため、使用するセラミックスはあらかじめ焼結や加
工の方法を適切に設定して、不純物が含まれたり内部に
隙間等が形成されないようにしておくとよい。
【0009】
【実施例】図1は、本発明のイオンプレーティング装置
で使用した蒸発源の構成を示す部分断面図で、図2は概
略平面図である。本実施例の蒸発源は、蒸発物るつぼ1
0と蒸発源カバー4により構成される。蒸発物るつぼ1
0は、蒸発物を設置する4ヶ所の凹部1aが設けられた
支持部1と、支持部1をその中心を回転中心として回転
させる回転軸およびモータ(共に図示せず)を内部に有
する本体2とを備えている。支持部1の内部には、支持
部1が過熱しないようにするために冷却水の流路8が設
けてある。また、支持部1の上部には、円板状の蒸発源
カバー4が設置されている。この蒸発源カバー4には、
凹部1aのうちの1つにのみプラズマが照射されるよう
に、この凹部の大きさに合わせた大きさの切り欠け4a
を設けてある。カバー4には支持軸4bが形成され、こ
の支持軸4bは前記回転軸と同一軸上に位置するよう
に、ベアリング5を介してセラミックスからなる絶縁体
6に取り付けられている。そして、この絶縁体6を支持
部1の上面に設置してある。さらに、カバー4にはカバ
ー支持体7の一端が取り付けられ、さらにこの支持体7
の他の一端は本体2に取り付けられている。なお、絶縁
体6およびカバー支持体7をそれぞれ取り外し可能に構
成して、蒸発物の取りかえやイオンプレーティング装置
の整備等を行い易いようにしておくとよい。以上のよう
な構成の蒸発源において、るつぼ本体2内のモータを駆
動して回転軸を回転させると、支持部1はこの回転軸を
回転中心として回転する。一方、蒸発源カバー4は、一
端を本体2に固定され他端はベアリング5を介して支持
部1に支持されているので回転しない。従って、支持部
1に形成された複数の凹部1aの各位置とカバー4に形
成された切り欠け4aの位置をもとに支持部1の回転量
を設定し、所望の蒸発物が載置された凹部1aがカバー
4の切り欠け4aの下部に位置するように支持部1を回
転させればこの蒸発物にだけプラズマを照射することが
できる。なお、本実施例では蒸発源カバー4を蒸発物る
つぼ10で支持するように構成してあるが、これはカバ
ー4と凹部1aに載置された蒸発物との間隔をできるだ
け狭く(本実施例では3mm程度)設定することと、装置
の作業性を考慮したためである。例えば、カバー4を真
空容器17に直接取り付けてるつぼ10と分離させる構
成も考えられるが、この場合、カバー4のたわみ等によ
って両者の間隔を狭く設定することが難しくなる。ま
た、作業性も悪化する。これに対し本実施例のような構
成とすると、カバー4と蒸発物との間隔を狭くし易くな
り、その結果、蒸発させる以外の蒸発物にプラズマが照
射され難くなる。また、カバー4をるつぼの支持部1で
支持すると、蒸発物を取り替える際は簡単にカバー4を
取り外すことができ作業が楽になる。なお、カバー4と
凹部1aとの間はできるだけ小さい方が好ましく、可能
であれば1mm程度に設定するとよい。
【0010】図3は、この蒸発物るつぼ10および蒸発
源カバー4が組み込まれたイオンプレーティング装置の
一例を示す概略断面図であり、圧力勾配型プラズマ生成
手段と複合陰極型プラズマ生成手段とを組み合わせたプ
ラズマ生成手段を備えた「URイオンプレーティング装
置」と呼ばれる装置である。なお、図1、2の構成用件
と同一機能を有する構成用件については同一符号を付し
てその説明を適宜省略する。以下、図3に従って本発明
のイオンプレーティング装置を説明する。
【0011】このイオンプレーティング装置は、蒸発物
るつぼ10と蒸発源カバー4からなる蒸発源11、プラ
ズマ収束用磁石12、基板13を支持する回転可能な基
板ホルダ14、基板13上に形成された薄膜の膜厚を測
定する水晶振動子からなる膜厚モニタ15、蒸発源11
からの蒸発粒子が基板13に到達するのを防ぐシャッタ
16およびこれら各構成要件が設置された空間を所定の
真空度に維持するステンレス(SUS304)製の真空容器1
7とを備えている。さらに、真空容器17に取り付けら
れた前記蒸発物を過熱する電子を含むプラズマを生成す
るプラズマ生成手段(電子銃)30と、この生成手段3
0と真空容器17との接続部に配置されたプラズマに外
部から磁場を与えるための空芯コイル18と、基板ホル
ダ14およびこれに載置される基板13の電位が蒸発物
るつぼ10の電位に対して負の電位となるように設定す
るバイアス電源19と、を備えている。蒸発物るつぼ1
0は、プラズマ生成手段30の陽極も兼ねており、ま
た、バイアス電源19によって基板ホルダ14より高電
位となるように電圧を印加される。真空容器17には、
容器17内を所望の圧力に設定するための排気手段と、
反応ガス供給口20とが設けられている。この反応ガス
供給口20には、反応ガスを容器17内に導入するため
の反応ガス供給手段(図示せず)が接続されている。ま
た、容器17の壁面にはプラズマ生成手段30が設置さ
れ、この生成手段30によって生成されたプラズマ流が
容器17内の空間に導入されるようになっている。
【0012】前記排気手段は、真空容器17に設けられ
た排気口21とこの排気口21に接続されたトラップを
備えた油拡散ポンプと油回転ポンプ、補助バルブ、粗引
きバルブ(共に図示せず)およびメインバルブ22等か
ら構成される。プラズマ集束用磁石12は、蒸発源11
の蒸発源カバー4に形成された切り欠け4aに対してる
つぼ10の支持部1を介して対向する位置に配置してあ
り、これにより支持部1の凹部1aに載置された蒸発物
にプラズマが集中して照射されるようにしている(図1
参照)。この磁石12は永久磁石でも電磁石でも構わな
い。
【0013】本実施例のプラズマ生成手段30は、前述
のように複合陰極を用いた圧力勾配型プラズマ生成装置
を使用した。この圧力勾配型プラズマ生成装置について
は「真空第25号第10巻」に記載されている。このプラズ
マ生成手段30は、一端に配置された陰極部31、石英
管32、第1の中間電極33、第2の中間電極34、前
記蒸発物るつぼを兼ねる陽極10、および主放電電源3
5とを有している。両中間電極33、34はリング状に
形成されており、この両中間電極33、34と石英管3
2とによって、真空容器17に接続する空間が形成され
る。この空間のうち、特に陰極部31に接する石英管3
2内の空間がプラズマ生成室となり、密閉状態を維持で
きるようになっている。プラズマ生成手段30と真空容
器17とは、図示していない絶縁被覆を介して接続され
ている。陰極部31は、熱容量の小さいTa(タンタル)
からなるパイプ状の補助陰極と、LaB6(六ホウ化ランタ
ン)からなる円板状の主陰極(共に図示せず)を有し、
補助陰極はガス導入口36に接続されている。
【0014】ここで、プラズマ生成手段30による放電
過程を説明する。陰極部31のガス導入口36から放電
ガス(キャリアガス)としてArガスを導入し、陰極部3
1の近傍領域のガス圧を1Torr程度に維持する。一方、
前記排気手段により、真空容器17内の陽極(蒸発物る
つぼ)10の近傍領域の圧力が2×10-3Torr程度となる
ように設定する。そして、この状態で主放電電源35に
より陰極部31と陽極10との間に600 V前後の直流電
圧を印加する。これにより、まず、前記補助陰極の先端
にグロー放電(1A以下)を発生させる。このグロー放
電(初期放電)によって、補助陰極の先端がArガスの電
離による逆流イオンの衝突によって加熱される。その結
果、補助陰極先端は熱電子を放出するようになり、放電
電圧が徐々に低下して放電電流が増加する。補助陰極の
先端が2000℃以上に加熱されると、放電電圧は70V前
後、放電電流は30A以上に達することが可能になる。こ
の状態で2〜3分すると、補助陰極先端の放射熱により
主陰極が1700℃程度に間接的に加熱される。加熱された
主陰極からは大電流の熱電子放出が発生するため、この
主陰極が放電を生じさせる陰極として機能するようにな
る。この時点で、放電はアーク放電(最大 250A程度)
となり、補助陰極の温度は低下する。そのため、この補
助陰極の熱による損傷(消耗)は回避される。
【0015】始めから主陰極をグロー放電のAr逆流イオ
ンによって直接加熱しない理由は、主陰極を構成するLa
B6が低密度物質(比重4.6 )で、高速逆流イオンによっ
てスパッタリングされてしまう恐れがあるからである。
しかし、LaB6は熱電子放射特性が極めて良く、融点より
著しく低い温度でも大電流密度の熱電子放出ができるた
め、大電流放電でも熱的消耗が小さく、長寿命であると
いう利点を有する。これに対し補助陰極を構成するTa
は、高密度物質(比重16.7)で前記初期放電によって生
じるスパッタリング作用に対する耐久性を有するが、最
終的な大電流密度の熱電子放射による温度上昇には極め
て弱く、熱的消耗が激しいため短寿命であるという欠点
を有する。本実施例で用いたプラズマ生成手段30は、
陰極部31を初期放電時のスパッタリング作用に強いTa
からなる補助陰極と、最終の熱電子放射温度に強いLaB6
からなる主陰極とを組合わせた複合型LaB6陰極としたこ
とで両者の欠点を補い合い、イオンの集積効率が高めて
いる。
【0016】また、本実施例のプラズマ生成手段30
は、陰極部31と陽極10との間に中間電極33、34
を配置することでこれら陰極と陽極間の空間を陰極側と
陽極側とに分けると共に、陰極側の圧力を陽極側よりも
高い圧力に維持した状態でプラズマを生成するように構
成されている。そのため、例えば、陰極側の圧力を1To
rr程度、陽極側の圧力を10-1〜10-4Torr程度の希望する
値に設定してプラズマを生成することが可能である。こ
れにより、成膜が行われる真空容器17内を高真空に保
ちながらプラズマ生成のために安定な放電を行なうこと
ができる。また、圧力差により前記主陰極に対するイオ
ンの逆流がほとんど無いため、イオンの衝突による陰極
の損傷を防止できる。また、陰極からの熱電子放出が低
下し難い、陰極の寿命が長くなる、大電流放電が可能と
なる等の利点を有する。さらに、反応性イオンプレーテ
ィングを行なう際に反応ガスを真空容器17内に導入し
ても反応ガスが前記プラズマ生成室に入り込む恐れがな
い。
【0017】ここで、URイオンプレーティング装置を
用いて多層膜を製造(成膜)する過程について説明す
る。まず、基板13として光学研磨した直径30mmの円形
の石英ガラスを用意し、この基板13を基板ホルダ14
に取り付ける。そして、蒸発物るつぼ10(プラズマ生
成手段30の陽極を兼ねる)の凹部1aの1つにチタン
(Ti)を他の1つにシリコン(Si)を載置する。その
後、メインバルブ20の開度を調整しながら前記排気手
段によって真空容器17内の圧力が1×10-6Torrになる
ように設定する。そして、蒸発源11のるつぼ本体2内
のモータを駆動して支持部1のチタンが載置された凹部
1が蒸発源カバー4の切り欠け4aの下部に位置するよ
うに回転軸を介して支持部1を所定量回転させる。この
状態で、主放電電極35により陰極部31と陽極(るつ
ぼ)10との間に約600 Vの直流電圧を印加してプラズ
マを生成する。この時、前述のようにプラズマ生成手段
30においては、陰極部31のガス導入口36からの放
電ガス(Ar)の導入により、陰極部31の近傍領域(前
記第1の真空空間)のガス圧は約1Torr程度に維持され
る。また、前記排気手段によって真空容器17内の陽極
(るつぼ)10の近傍領域の圧力が約2×10-3Torrとな
るように設定する。これにより、プラズマ生成手段30
の陰極部31付近でアーク放電が生じ、前記放電ガスが
プラズマ化される。生成されたプラズマは、第1の中間
電極33および第2の中間電極34により前記プラズマ
生成室から陽極10側(真空容器17内部側)に引き出
される。このプラズマは、中間電極や空芯コイル18に
よって円柱状に収束され、プラズマ流23として真空容
器17内に導かれる。そして、陽極(るつぼ)10近傍
に設置されたプラズマ収束用磁石12の磁場によって進
路を変えられ、蒸発物カバー4に形成された切り欠け4
aを通って蒸発物るつぼ10の支持部1に形成された凹
部1aに達する。そして、この凹部1aに載置された蒸
発物(チタン)を蒸発させる。本実施例の場合、チタン
(凹部1a)のほぼ真下にプラズマ集束用磁石12が位
置しているので、プラズマはチタンに集中して照射され
る。この時、メインバルブ22の開度を調整して真空容
器17の圧力が5×10-4Torrとなるように前記排気手段
を制御しておく。一方、前記反応ガス供給手段により反
応ガス供給口20から酸素ガス(O2)を所望の流量(85
CC/分)で容器17内に導入し、蒸発物から蒸発した物
質(チタン)と反応させる。なお、反応ガスの導入後も
容器17内の圧力が5×10-4Torrに維持されるようにメ
インバルブ22の開度を調整しておく。その後、シャッ
タ16を開くと、蒸発した物質(チタン)および反応ガ
ス(酸素ガス)はプラズマ中を通ることによりイオン化
されて、バイアス電源19により負の電位に保たれた基
板13上に到達する。その結果、この基板13表面には
薄膜状の酸化チタン(TiO2)が形成される。なお、薄膜
の形成中は、膜厚モニタ15によって薄膜の膜厚と成膜
レート(蒸発速度)を測定できるので、所定の膜厚とな
った時点で成膜を止めればよい。こうして、多層膜の一
層分が基板13上に形成される。
【0018】次に、この酸化チタンからなる層の上に酸
化ケイ素(SiO2)の層を形成する。まず、シャッタ16
を閉じると共に、蒸発源11のるつぼ本体2内のモータ
を駆動して支持部1のシリコンが載置された凹部1が蒸
発源カバー4の切り欠け4aの下部に位置するように回
転軸を介して支持部1を所定量回転させる。以下の過程
は酸化チタンを成膜する時と同様であるので説明を省略
する。
【0019】以上のようにして、蒸発物るつぼ10に載
置したチタンとシリコンに交互にプラズマを照射してい
くことで、基板13上に酸化チタンからなる層と酸化ケ
イ素からなる層が交互に15層ずつ積層された多層膜を製
造(成膜)した。また、各層の膜厚は、使用する光の波
長をλとした時、λ/4となるように設定した。本実施
例の成膜条件を以下に示す。
【0020】 真空容器内の到達圧力(真空度) :1×10-6Torr 成膜時の真空容器内の圧力(真空度):5×10-4Torr 反応ガス(O2)流量 :85 CC/分 蒸着源 :チタン(Ti)、
シリコン(Si) 成膜速度 :0.2 〜0.3 nm/
sec 基板温度 :150 ℃以下 本実施例では、成膜中に蒸発源11の蒸発源カバー4が
溶解することはなく、連続して各層を成膜して多層膜を
製造することができた。そのため、従来よりも短時間で
製造することが可能であった。
【0021】また、得られた多層膜の一層ごとの膜厚を
調べたところ、所望の膜厚に対する変位量(誤差)はそ
れぞれ1〜2%であった。さらに、本実施例で製造(成
膜)された多層膜に光を照射し、その時の透過率を分光
光度計を用いて測定した。測定光には測定波長 340〜70
0nm の光を用いた。この結果を図5に示す。図5におい
て、横軸は光の波長を、縦軸は各波長における透過率を
示す。図5から判るように、本実施例で得られた多層膜
は計算値とほぼ同等な特性が得られた。
【0022】
【発明の効果】以上のように、本発明では、蒸発源を構
成する蒸発源カバーと蒸発物るつぼとの間を電気的に絶
縁したので、該るつぼからカバーへ電荷が移動すること
で生じる該カバーの高温化を防止できる。そのため、カ
バーが溶解する恐れがないので長時間成膜を行なうこと
が可能となり、成膜作業の効率が向上する。
【0023】また、冷却手段を設ける必要がないので装
置の構成が複雑化することがない。
【図面の簡単な説明】
【図1】は、本発明のイオンプレーティング装置で使用
した蒸発源の構成を示す部分断面図である。
【図2】は、図1の蒸発源の概略平面図である。
【図3】は、本発明のイオンプレーティング装置の概略
断面図である。
【図4】は、従来のイオンプレーティング装置で使用し
た蒸発源の概略を示す斜視図である。
【図5】は、実施例で製造(成膜)した多層膜の光学特
性の一例を示すグラフである。
【主要部分の符号の説明】
1 支持部 2 るつぼ本体 4 蒸発源カバー(遮蔽手段) 5 ベアリング 6 絶縁体 7 カバー支持体 8 流路 10 蒸発物るつぼ(プラズマ生成手段の陽極を兼ね
る) 11 蒸発源 12 プラズマ収束用磁石 13 基板 14 基板ホルダ 17 真空容器 30 プラズマ生成手段 31 陰極部

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 プラズマを発生させるプラズマ生成手
    段、基板を支持する基板支持手段、蒸発物を支持する凹
    部を複数有する蒸発物るつぼ、該るつぼの所定の凹部に
    のみ前記プラズマか照射されるように該るつぼ上部に設
    置された遮蔽手段、前記蒸発物と基板との間に電圧を印
    加する電圧印加手段、前記基板支持手段と蒸発物るつぼ
    を所定の真空空間に包含するための真空容器、該真空容
    器内を所定の真空度に設定するための排気手段および前
    記蒸発物るつぼの近傍に配置された磁界発生手段を有す
    るイオンプレーティング装置において、 前記遮蔽手段が、前記蒸発物るつぼから電気的に絶縁さ
    れた状態で支持されていることを特徴とするイオンプレ
    ーティング装置。
JP5053324A 1993-03-15 1993-03-15 イオンプレーティング装置 Pending JPH06264226A (ja)

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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2010037627A (ja) * 2008-08-07 2010-02-18 Showa Shinku:Kk 成膜装置及び膜厚測定方法
JP2011195925A (ja) * 2010-03-23 2011-10-06 Stanley Electric Co Ltd イオンプレーティング法を用いた成膜方法およびそれに用いられる装置
CN111501001A (zh) * 2020-05-22 2020-08-07 无锡奥夫特光学技术有限公司 一种用于不规则多面体一炉法镀膜的镀膜装置

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