JP7507991B1 - マグネトロンスパッタ法による成膜装置および成膜方法 - Google Patents

マグネトロンスパッタ法による成膜装置および成膜方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 マグネトロンスパッタ法による成膜装置および成膜方法において、絶縁性被膜を形成するための成膜処理を安定的に行うことで、均質な絶縁性被膜を形成する。【解決手段】 本発明に係るマグネトロンスパッタ装置10によれば、アースシールド26を陽極とし、マグネトロンスパッタカソード24を陰極として、これらにスパッタ電力Esが供給されることで、グロー放電が誘起される。併せて、カソードフィラメント30にカソード電力Ecが供給されるとともに、アースシールド26を陽極とし、カソードフィラメント30を陰極として、これらにアーク放電用電力Edが供給されることで、アーク放電が誘起される。さらに、アースシールド26の近傍に赤熱するアノードフィラメント70が設けられることで、グロー放電およびアーク放電によるプラズマ300が安定し、これにより、絶縁性被膜を形成するための成膜処理を安定的に行うことが可能となる。【選択図】 図1

Description

本発明は、マグネトロンスパッタ法による成膜装置および成膜方法に関し、特に、被処理物に絶縁性被膜を形成する、マグネトロンスパッタ法による成膜装置および成膜方法に関する。
マグネトロンスパッタ法による成膜技術の一例が、殊に、被処理物に反応膜(化合物膜)を形成する、いわゆる反応性マグネトロンスパッタ法による成膜技術の一例が、特許文献1に開示されている。この特許文献1に開示された言わば従来技術によれば、接地電位とされた真空槽内に、反応膜の材料となるターゲットを有するマグネトロンスパッタカソード(マグネトロンカソード)が設けられる。そして、真空槽内に、被処理物が設置され、詳しくはターゲットの概略矩形平面状の被スパッタ面と対向するように設置される。さらに、マグネトロンスパッタカソードのうちのターゲットの被スパッタ面(のみ)を露出させた状態で当該マグネトロンスパッタカソードの外周を囲むように、アースシールドが設けられる。このアースシールドもまた、接地電位とされる。そして、真空槽内が真空ポンプにより排気されるとともに、当該真空槽内に放電用ガスとしての不活性ガスが導入される。この状態で、真空槽を陽極とし、厳密にはアースシールドを陽極とし、マグネトロンスパッタカソードを陰極として、これら両者にスパッタ電力が供給される。これにより、不活性ガスの粒子が放電して、ターゲットの被スパッタ面に張り付くようにマグネトロンプラズマが発生する。このマグネトロンプラズマの放電態様は、高電圧小電流のグロー放電である。また、マグネトロンプラズマがターゲットの被スパッタ面に張り付くのは、マグネトロンスパッタカソードが備える磁界形成手段としての磁石により当該被スパッタ面の近傍に形成される磁界の作用による。
このマグネトロンプラズマ中の不活性ガスの粒子、とりわけイオンが、ターゲットの被スパッタ面に衝突することにより、当該被スパッタ面からターゲットを構成する粒子が叩き出され、つまりスパッタされる。このとき、スパッタの対象となる領域である被スパッタ領域は、ターゲットの被スパッタ面に限定され、つまりはそうなるように前述のアースシールドが設けられる。さらに、真空槽内に反応膜の材料となる反応性ガスが導入される。この反応性ガスの粒子は、マグネトロンプラズマによって分解される。そして、真空槽を陽極とし、被処理物を陰極として、これら両者にバイアス電力が供給される。これにより、不活性ガスの粒子と、反応性ガスの粒子と、ターゲットの被スパッタ面からスパッタされたスパッタ粒子とが、被処理物に向かって加速される。そして特に、反応性ガスの粒子とパッタ粒子とが被処理物の表面に付着して互いに反応することで、当該被処理物の表面に反応性ガスの粒子とスパッタ粒子とを成分とする反応膜が形成される。併せて、被処理物の表面に対する不活性ガスの粒子によるボンバードメント作用により、反応膜の密度の向上が図られる。
加えて、真空槽内におけるターゲットの被スパッタ面と被処理物との間において、当該被スパッタ面の長手方向に沿って延伸するように、線状のカソードフィラメント(フィラメント)が設けられる。このカソードフィラメントに加熱用電力(熱電子放出量電力)が供給されることで、当該カソードフィラメントが加熱されて、当該カソードフィラメントから熱電子が放出される。さらに、真空槽を陽極とし、厳密にはアースシールドを陽極とし、カソードフィラメントを陰極として、これら両者にアーク放電用電力(放電用電力)が供給される。すると、カソードフィラメントから放出された熱電子がアースシールドに向かって加速されて、この加速された熱電子が不活性ガスの粒子と、反応性ガスの粒子と、スパッタ粒子とに衝突する。カソードフィラメントの周囲には、前述の磁界が形成されているので、カソードフィラメントからアースシールドに向かって加速された電子は、当該磁界の作用により螺旋運動(サイクロイド運動またはトロコイド運動)する。これにより、熱電子が不活性ガスの粒子と、反応性ガスの粒子と、スパッタ粒子とに衝突する頻度が増大して、カソードフィラメントの周囲に低電圧大電流のアーク放電が誘起される。すなわち、グロー放電(マグネトロンスパッタ放電)によるマグネトロンプラズマに加えて、アーク放電による極めて高密度なプラズマが、カソードフィラメントの周囲に発生し、つまりはターゲットの被スパッタ面と被処理物との間に発生する。
したがって、ターゲットの被スパッタ面からスパッタされたスパッタ粒子は、被処理物に向かって飛翔する途中で、極めて高密度なプラズマの空間を通過する。これにより、スパッタ粒子は、活性化され、少なくとも基底状態よりも高いエネルギを持つようになり、とりわけ効率的にイオン化される。これと同様に、反応性ガスの粒子もまた、活性化され、効率的にイオン化される。併せて、不活性ガスの粒子もまた、活性化され、効率的にイオン化される。このイオン化率の向上により、被処理物の表面に入射されるイオンの量が増加し、当該被処理物の表面に形成される反応膜の高硬度化が図られる。また、スパッタ粒子と反応性ガスの粒子との相互の結合力が増大するので、反応膜の緻密化が図られる。加えて、被処理物の表面に対する不活性ガスの粒子によるボンバードメント作用が増強されるので、反応膜の密度のさらなる向上が図られる。
特開2017-66483号公報
ところで、前述の従来技術によれば、反応膜として絶縁性被膜を形成することもできるが、その場合、成膜処理を安定的に行うことができず、ゆえに、均質な絶縁性被膜を形成することができない、という問題がある。その理由は、次の通りである。
すなわち、前述のアースシールドは、グロー放電およびアーク放電という2種類の放電の陽極としての機能を担うが、絶縁性被膜を形成するための成膜処理が行われると、当該絶縁性被膜(厳密には絶縁性被膜の構成要素となる絶縁性物質)がアースシールドの表面に付着する。そして、この現象が続くと、アースシールドの表面が絶縁性被膜により覆われてしまい、当該アースシールドが陽極として機能し得なくなる。すると、アースシールドに代わって、真空槽の内壁が、陽極として機能するが、当該真空槽の内壁にも当然に、絶縁性被膜が付着し、これにより、当該真空槽の内壁の陽極としての機能が低下する。その一方で、真空槽の内壁の一部の部分、とりわけ排気口の周縁部や覗き窓の周縁部、各種部材の取付けフランジなどの凹状の部分には、絶縁性被膜が付着し難く、このような部分の存在により、かろうじて放電が維持される。ただし、この状態にあるときの真空槽内を観察すると、放電が不安定であり、当該放電を維持するために陽極として機能する部分の所々において、プラズマの塊であるプラズモイドの発生が確認されるとともに、当該プラズモイドが発生および消滅を繰り返すことが確認される。また、プラズモイドの発生が確認された部分においては、かなりの(水冷されているにも拘らず130℃以上の)温度上昇が見受けられ、極端には赤熱して、ステンレス鋼製の部材が溶けることもある。このような現象が原因となって、前述の如く絶縁性被膜を形成するための成膜処理を安定的に行うことができず、ゆえに、均質な絶縁性被膜を形成することができない、という問題が生ずる。この問題は特に、表面積(成膜対象領域)の大きい被処理物にとって、極めて重大である。
そこで、本発明は、マグネトロンスパッタ法による成膜装置および成膜方法において、絶縁性被膜を形成するための成膜処理を安定的に行うことができ、ひいては均質な絶縁性被膜を形成することができる、新規な技術を提供することを、目的とする。
この目的を達成するために、本発明は、マグネトロンスパッタ法による成膜装置に係る第1発明、および、マグネトロンスパッタ法による成膜方法に係る第2発明を含む。
このうちのマグネトロンスパッタ法による成膜装置に係る第1発明は、被処理物に絶縁性被膜を形成するのに好適であり、真空槽、マグネトロンスパッタカソード、アースシールド、排気手段、不活性ガス導入手段、スパッタ電力供給手段、反応性ガス導入手段、バイアス電力供給手段、カソードフィラメント、加熱用電力供給手段、アーク放電用電力供給手段、加熱用電力制御手段およびアノードフィラメントを備える。具体的には、真空槽は、接地され、つまり接地電位とされる。この真空槽内には、絶縁性反応膜の材料となるターゲットを有するマグネトロンスパッタカソードが設けられる。そして、真空槽内に、被処理物が設置され、詳しくはターゲットの概略矩形平面状の被スパッタ面と対向するように設置される。アースシールドは、マグネトロンスパッタカソードのうちのターゲットの被スパッタ面(のみ)を露出させた状態で、当該マグネトロンスパッタカソードの外周を囲むように設けられる。また、アースシールドは、接地され、つまり接地電位とされる。排気手段は、真空ポンプを有する。真空ポンプは、真空槽の排気口を介して当該真空槽内を排気する。不活性ガス導入手段は、真空槽内に放電用ガスとしての不活性ガスを導入する。スパッタ電力供給手段は、真空槽を陽極とし、厳密にはアースシールドを陽極とし、マグネトロンスパッタカソードを陰極として、これら両者にスパッタ電力を供給する。これにより、不活性ガスの粒子が放電して、ターゲットの被スパッタ面に張り付くようにマグネトロンプラズマが発生する。このマグネトロンプラズマの放電態様は、高電圧小電流のグロー放電である。また、マグネトロンプラズマがターゲットの被スパッタ面に張り付くのは、マグネトロンスパッタカソードが備える磁界形成手段により当該被スパッタ面の近傍に形成される磁界の作用による。
このマグネトロンプラズマ中の不活性ガスの粒子、とりわけイオンが、ターゲットの被スパッタ面に衝突することにより、当該被スパッタ面からターゲットを構成する粒子が叩き出され、つまりスパッタされる。このとき、スパッタの対象となる領域である被スパッタ領域は、ターゲットの被スパッタ面に限定され、つまりはそうなるように前述のアースシールドが設けられる。さらに、反応性ガス導入手段は、真空槽内に絶縁性被膜の材料となる反応性ガスを導入する。この反応性ガスの粒子は、マグネトロンプラズマによって分解される。そして、バイアス電力供給手段は、真空槽を陽極とし、被処理物を陰極として、これら両者に所定成分が一定のバイアス電力を供給する。これにより、不活性ガスの粒子と、反応性ガスの粒子と、ターゲットの被スパッタ面からスパッタされたスパッタ粒子とが、被処理物に向かって一定の加速度で加速される。そして特に、反応性ガスの粒子とスパッタ粒子とが被処理物の表面に付着して互いに反応することで、当該被処理物の表面に反応性ガスの粒子とスパッタ粒子とを成分とする反応膜である絶縁性被膜が形成される。併せて、被処理物の表面に対する不活性ガスの粒子によるボンバードメント作用により、絶縁性被膜の密度の向上が図られる。なお、バイアス電力の所定成分とは、たとえば当該バイアス電力の電圧成分であるバイアス電圧の平均値または実効値である。
加えて、カソードフィラメントは、線状の部材であり、真空槽内におけるターゲットの被スパッタ面と被処理物との間において、当該被スパッタ面の長手方向に沿って延伸するように設けられる。そして、加熱用電力供給手段は、カソードフィラメントに加熱用電力を供給することで、当該カソードフィラメントを加熱させて、当該カソードフィラメントから熱電子を放出させる。さらに、アーク放電用電力供給手段は、真空槽を陽極とし、厳密にはアースシールドを陽極とし、カソードフィラメントを陰極として、これら両者にアーク放電用電力を供給する。すると、カソードフィラメントから放出された熱電子がアースシールドに向かって加速されて、この加速された熱電子が不活性ガスの粒子と、反応性ガスの粒子と、スパッタ粒子とに衝突する。カソードフィラメントの周囲には、前述の磁界が形成されているので、カソードフィラメントからアースシールドに向かって加速された電子は、当該磁界の作用により螺旋運動する。これにより、熱電子が不活性ガスの粒子と、反応性ガスの粒子と、スパッタ粒子とに衝突する頻度が増大して、カソードフィラメントの周囲に低電圧大電流のアーク放電が誘起される。すなわち、グロー放電によるマグネトロンプラズマに加えて、アーク放電による極めて高密度なプラズマが、カソードフィラメントの周囲に発生し、つまりはターゲットの被スパッタ面と被処理物との間に発生する。
したがって、ターゲットの被スパッタ面からスパッタされたスパッタ粒子は、被処理物に向かって飛翔する途中で、極めて高密度なプラズマの空間を通過する。これにより、スパッタ粒子は、活性化され、効率的にイオン化される。これと同様に、反応性ガスの粒子もまた、活性化され、効率的にイオン化される。併せて、不活性ガスの粒子もまた、活性化され、効率的にイオン化される。このイオン化率の向上により、被処理物の表面に入射されるイオンの量が増加し、当該被処理物の表面に形成される絶縁性被膜の高硬度化が図られる。また、スパッタ粒子と反応性ガスの粒子との相互の結合力が増大するので、絶縁性被膜の緻密化が図られる。加えて、被処理物の表面に対する不活性ガスの粒子によるボンバードメント作用が増強されるので、反応膜の密度のさらなる向上が図られる。
そして、加熱用電力制御手段は、アーク放電用電力の電圧成分、言わばアーク放電電圧が、一定とされた状態で、当該アーク放電用電力の電流成分、言わばアーク放電電流が、一定となるように、加熱用電力を制御する。これにより、アーク放電によるプラズマの密度の安定化が図られる。
さらに、アノードフィラメントは、線状の部材であり、真空槽内におけるアースシールドの近傍において、カソードフィラメントと平行を成すように設けられる。併せて、アノードフィラメントは、接地電位または当該接地電位に対して正電位とされる。そして、アノードフィラメントは、不活性ガスの粒子と、反応性ガスの粒子と、スパッタ粒子とが、放電することにより発生するプラズマ中の電子の流入を受けて赤熱し、厳密には自身の表面に絶縁性被膜(より厳密には反応性ガスの粒子と反応する前のスパッタ粒子)が付着したとしても、それが蒸発し得る程度に加熱され、換言すればそうなるような位置に設けられる。このアノードフィラメントは、前述のグロー放電およびアーク放電という2つの放電の陽極として機能し、とりわけアースシールドの表面が絶縁性被膜により覆われてしまうことで、当該アースシールドが陽極として機能し得なくなったときに、当該アースシールドに代わって、陽極として機能する。すなわち、アノードフィラメントの表面に絶縁性被膜が付着したとしても、この絶縁性被膜は蒸発するので、当該アノードフィラメントの陽極としての機能が維持される。これにより、放電が安定的に維持され、絶縁性被膜を形成するための成膜処理が安定的に行われる。
なお、アノードフィラメントが接地電位に対して正電位とされる場合の当該正電位の値は、たとえば0V超かつ30V以下であるのが、望ましい。
また、カソードフィラメントおよびアノードフィラメントは、互いに同じ材料により形成されるのが、望ましい。
さらに、カソードフィラメントおよびアノードフィラメントのそれぞれは、鉛直方向に延伸するように設けられてもよい。この場合、ターゲットは、その被スパッタ面の長手方向が鉛直方向に沿うように設けられる。そして、アノードフィラメントの上方側端部は、固定端として支持部材に固定され、当該アノードフィラメントの下方側端部は、自由端として垂下した状態とされてもよい。
加えて、2本のアノードフィラメントが設けられてもよい。この場合、カソードフィラメントは、ターゲットの被スパッタ面の短手方向において、当該被スパッタ面の中央に対応する位置に設けられるのが、望ましい。そして、2本のアノードフィラメントは、仮想平面に関して互いに面対称を成すように設けられるのが、望ましい。ここで言う仮想平面とは、カソードフィラメントの軸線を含み、かつ、ターゲットの被スパッタ面と直交する、平面である。
ここで、アースシールドは、ターゲットの被スパッタ面と概略面一の平面部を有するものとする。この場合、2本のアノードフィラメントのそれぞれは、ターゲットの被スパッタ面の短手方向において、自身に近い側の当該被スパッタ面の端縁に対応する位置に設けられ、または、当該位置からターゲットの被スパッタ面の外方へ、換言すれば前述の仮想平面とは反対の方向へ、15mm以下の距離を置いた位置に設けられる。併せて、2本のアノードフィラメントのそれぞれは、アースシールドの平面部に垂直な方向において、換言すればターゲットの被スパッタ面に垂直な方向において、当該アースシールドの平面部からターゲットの被スパッタ面が向けられた方向へ5mm以上かつ30mm以下の距離を置いた位置に設けられるのが、望ましい。
さらに、前述の排気手段は、コンダクタンスバルブを有する場合がある。コンダクタンスバルブは、真空槽の排気口における実効排気速度を制御する。この場合さらに、反応性ガス流量制御手段が設けられるのが、望ましい。反応性ガス流量制御手段は、真空槽内に導入される不活性ガスの流量が一定とされるとともに、スパッタ電力が一定とされ、併せて、コンダクタンスバルブにより真空槽の排気口における実効排気速度が一定とされた状態で、当該真空槽内の圧力が一定となるように、当該真空槽内に導入される反応性ガスの流量を制御する。これにより、ターゲットの被スパッタ面のスパッタ速度(単位時間かつ単位面積当たりのスパッタ粒子の数であり、「スパッタ蒸発速度」と呼ばれることもあるが、これを直接的に測定することはできないため、常套的には、単位時間当たりにスパッタされた粒子の質量(g/min)で表される。)が一定に保たれる。このことは、絶縁性被膜の再現性を向上させるのに、極めて有益である。
また、本第1発明においては、複数のユニットが設けられてもよい。ここで言うユニットは、マグネトロンスパッタカソード、アースシールド、スパッタ電力供給手段、カソードフィラメント、加熱用電力供給手段、アーク放電用電力供給手段、加熱用電力制御手段およびアノードフィラメントを有する、言わばプラズマの発生源である。すなわち、プラズマの発生源であるユニットが複数設けられてもよい。
本発明のうちのマグネトロンスパッタ法による成膜方法に係る第2発明は、被処理物設置ステップ、排気ステップ、不活性ガス導入ステップ、スパッタ電力供給ステップ、反応性ガス導入ステップ、バイアス電力供給ステップ、加熱用電力供給ステップ、アーク放電用電力供給ステップ、加熱用電力制御ステップおよびアノード維持ステップを含む。被処理物設置ステップでは、絶縁性被膜の材料となるターゲットを有するマグネトロンスパッタカソードが設けられた真空槽内に、被処理物を、当該ターゲットの概略矩形平面状の被スパッタ面と対向するように設置する。ここで、真空槽は、接地され、つまり接地電位とされる。そして、マグネトロンスパッタカソードのうちのターゲットの被スパッタ面(のみ)を露出させた状態で当該マグネトロンスパッタカソードの外周を囲むように、アースシールドが設けられる。このアースシールドもまた、接地され、つまり接地電位とされる。排気ステップでは、真空槽の排気口を介して当該真空槽内が真空ポンプにより排気される。不活性ガス導入ステップでは、真空槽内に放電用ガスとしての不活性ガスが導入される。スパッタ電力供給ステップでは、真空槽を陽極とし、厳密にはアースシールドを陽極とし、マグネトロンスパッタカソードを陰極として、これら両者にスパッタ電力が供給される。これにより、不活性ガスの粒子が放電して、ターゲットの被スパッタ面に張り付くようにマグネトロンプラズマが発生する。このマグネトロンプラズマの放電態様は、高電圧小電流のグロー放電である。また、マグネトロンプラズマがターゲットの被スパッタ面に張り付くのは、マグネトロンスパッタカソードが備える磁界形成手段により当該被スパッタ面の近傍に形成される磁界の作用による。
このマグネトロンプラズマ中の不活性ガスの粒子、とりわけイオンが、ターゲットの被スパッタ面に衝突することにより、当該被スパッタ面からターゲットを構成する粒子が叩き出され、つまりスパッタされる。このとき、スパッタの対象となる領域である被スパッタ領域は、ターゲットの被スパッタ面に限定され、つまりはそうなるように前述のアースシールドが設けられる。さらに、反応性ガス導入ステップでは、真空槽内に絶縁性被膜の材料となる反応性ガスが導入される。この反応性ガスの粒子は、マグネトロンプラズマによって分解される。そして、バイアス電力供給ステップでは、真空槽を陽極とし、被処理物を陰極として、これら両者に所定成分が一定のバイアス電力が供給される。これにより、不活性ガスの粒子と、反応性ガスの粒子と、ターゲットの被スパッタ面からスパッタされたスパッタ粒子とが、被処理物に向かって一定の加速度で加速される。そして特に、反応性ガスの粒子とスパッタ粒子とが被処理物の表面に付着して互いに反応することで、当該被処理物の表面に反応性ガスの粒子とスパッタ粒子とを成分とする反応膜である絶縁性被膜が形成される。併せて、被処理物の表面に対する不活性ガスの粒子によるボンバードメント作用により、絶縁性被膜の密度の向上が図られる。なお、バイアス電力の所定成分とは、たとえば当該バイアス電力の電圧成分であるバイアス電圧の平均値または実効値である。
また、加熱用電力供給ステップでは、カソードフィラメントに加熱用電力が供給される。カソードフィラメントは、線状の部材であり、真空槽内におけるターゲットの被スパッタ面と被処理物との間において、当該被スパッタ面の長手方向に沿って延伸するように設けられる。このカソードフィラメントは、加熱用電力の供給を受けて加熱されて、熱電子を放出する。そして、アーク放電用電力供給ステップでは、真空槽を陽極とし、厳密にはアースシールドを陽極とし、カソードフィラメントを陰極として、これら両者にアーク放電用電力が供給される。すると、カソードフィラメントから放出された熱電子がアースシールドに向かって加速されて、この加速された熱電子が不活性ガスの粒子と、反応性ガスの粒子と、スパッタ粒子とに衝突する。カソードフィラメントの周囲には、前述の磁界が形成されているので、カソードフィラメントからアースシールドに向かって加速された電子は、当該磁界の作用により螺旋運動する。これにより、熱電子が不活性ガスの粒子と、反応性ガスの粒子と、スパッタ粒子とに衝突する頻度が増大して、フィラメントの周囲に低電圧大電流のアーク放電が誘起される。すなわち、グロー放電によるマグネトロンプラズマに加えて、アーク放電による極めて高密度なプラズマが、カソードフィラメントの周囲に発生し、つまりはターゲットの被スパッタ面と被処理物との間に発生する。
したがって、ターゲットの被スパッタ面からスパッタされたスパッタ粒子は、被処理物に向かって飛翔する途中で、極めて高密度なプラズマの空間を通過する。これにより、スパッタ粒子は、活性化され、効率的にイオン化される。これと同様に、反応性ガスの粒子もまた、活性化され、効率的にイオン化される。併せて、不活性ガスの粒子もまた、活性化され、効率的にイオン化される。このイオン化率の向上により、被処理物の表面に入射されるイオンの量が増加し、当該被処理物の表面に形成される絶縁性被膜の高硬度化が図られる。また、スパッタ粒子と反応性ガスの粒子との相互の結合力が増大するので、絶縁性被膜の緻密化が図られる。加えて、被処理物の表面に対する不活性ガスの粒子によるボンバードメント作用が増強されるので、反応膜の密度のさらなる向上が図られる。
そして、加熱用電力制御ステップでは、アーク放電用電力の電圧成分、つまりアーク放電電圧が、一定とされた状態で、当該アーク放電用電力の電流成分、つまりアーク放電電流が、一定となるように、加熱用電力が制御される。これにより、アーク放電によるプラズマの密度の安定化が図られる。
さらに、アノード維持ステップでは、不活性ガスの粒子と、反応性ガスの粒子と、スパッタ粒子とが、放電することにより発生するプラズマ中の電子をアノードフィラメントに流入させることで、当該アノードフィラメントを赤熱させ、厳密には当該アノードフィラメントの表面に絶縁性被膜が付着したとしても、それが蒸発し得る程度に当該アノードフィラメントを加熱させる。アノードフィラメントは、線状の部材であり、真空槽内におけるアースシールドの近傍において、カソードフィラメントと平行を成すように設けられる。併せて、アノードフィラメントは、接地電位または当該接地電位に対して正電位とされる。アノードフィラメントは、前述のグロー放電およびアーク放電という2つの放電の陽極として機能し、とりわけアースシールドの表面が絶縁性被膜により覆われてしまうことで、当該アースシールドが陽極として機能し得なくなったときに、当該アースシールドに代わって、陽極として機能する。すなわち、アノードフィラメントの表面に絶縁性被膜が付着したとしても、この絶縁性被膜は蒸発するので、当該アノードフィラメントの陽極としての機能が維持される。これにより、放電が安定的に維持され、絶縁性被膜を形成するための成膜処理が安定的に行われる。
本発明によれば、絶縁性被膜を形成するための成膜処理を安定的に行うことができ、ひいては均質な絶縁性被膜を形成することができる。
図1は、本発明の一実施例に係るマグネトロンスパッタ装置の概略構成を示す図である。 図2は、本発明の一実施例に係るマグネトロンスパッタ装置の内部を上方から見た図である。 図3は、本発明の一実施例におけるマグネトロンスパッタカソードの概略構成を示す図である。 図4は、本発明の一実施例におけるマグネトロンスパッタカソードを含む一部の要素の相互の位置関係を示す図である。 図5は、本発明の一実施例におけるマグネトロンスパッタカソードを含む一部の要素の相互の位置関係を拡大して示す図である。 図6は、本発明の一実施例におけるマグネトロンスパッタカソードを含む部分の撮影画像である。 図7は、本発明の一実施例における成膜処理時のマグネトロンスパッタカソードを含む部分の撮影画像である。 図8は、本発明の一実施例における実験結果を示す図である。 図9は、本発明の一実施例における別の実験結果を示す図である。 図10は、本発明の一実施例におけるさらに別の実験結果を従来技術における実験結果と比較して示す図である。 図11は、本発明の一実施例におけるさらに別の実験結果を従来技術における実験結果と比較して示す図である。 図12は、本発明の一実施例の一拡張例を示す図である。
本発明の一実施例について、図1~図11を参照して説明する。
図1および図2に示されるように、本実施例に係るマグネトロンスパッタ装置10は、両端が閉鎖された概略円筒形の真空槽12を備える。この真空槽12は、その概略円筒形の両端に当たる部分を上下に向けた状態で、つまり当該円筒形の中心軸Xaを鉛直方向に延伸させた状態で、設置される。なお、真空槽12の内径は、たとえば約1300mmであり、当該真空槽12内の高さ寸法は、たとえば約1100mmである。この真空槽12の形状および寸法は、飽くまでも一例であり、後述する被処理物100の大きさや形状、個数などの諸状況に応じて適宜に定められる。また、真空槽12自体は、耐食性および耐熱性の高い金属製、たとえばSUS304などのステンレス鋼製、であり、その壁部は、接地され、つまり当該壁部の電位は、基準電位である接地電位とされる。
この真空槽12の壁部の適宜の位置、たとえば側面を成す壁部の適宜の位置には、排気口14が設けられる。そして、排気口14は、真空槽12の外部において、排気配管16を介して真空ポンプ18に結合され、厳密には当該真空ポンプ18の不図示の吸気口に結合される。なお、真空ポンプ18としては、たとえば拡散ポンプ、ターボ分子ポンプ、クライオポンプなどが採用されるが、これに限定されない。また、図2においては、その見易さを考慮して、排気口14を含む一部の要素の図示を省略してある。
排気配管16の途中には、当該排気配管16内を開閉するための開閉手段としての主弁、いわゆる開閉バルブ20が、設けられる。併せて、排気配管16の途中には、真空ポンプ18による真空槽12の排気口14における実効排気速度を制御するためのコンダクタンスバルブ22が設けられる。このコンダクタンスバルブ22は、真空ポンプ18と協働して、排気手段を構成する。なお、詳しい図示は省略するが、コンダクタンスバルブ22は、ブラインドの如く平行に並べられた複数の細長い板状の羽根部材を備え、この羽根部材の角度θによって、真空槽12の排気口14における実効排気速度を制御する。たとえば、コンダクタンスバルブ22(羽根部材)の角度θが小さいほど、コンダクタンスが大きくなり、当該角度θが0度である場合に、全開となる。これとは反対に、コンダクタンスバルブ22の角度θが大きいほど、コンダクタンスが小さくなり、当該角度θが90度である場合に、コンダクタンスバルブ22は全閉となる。このようなコンダクタンスバルブ22の構成は、一例であり、これに限定されない。
さらに、真空槽12の側面を成す壁部の内側の適宜の位置(図1および図2における右側の位置)に、当該真空槽12の壁部とは電気的に絶縁された状態で、マグネトロンスパッタカソード24が設けられる。図3を併せて参照して、マグネトロンスパッタカソード24は、被膜の材料となる概略矩形平板状のターゲット242と、このターゲット242の一方主面である背面側に設けられる磁石ユニット244と、を有する。磁石ユニット244は、磁界形成手段の一例としての永久磁石246と、この永久磁石246を収容する筐体248と、を有する。永久磁石246は、ターゲット242の背面に密着しつつ当該ターゲット242の周縁に沿うように設けられた概略矩形枠状の一方磁極としてのたとえばS極246aと、このS極246aの内側においてターゲット242の背面に密着しつつ当該ターゲット242の長手方向に沿って延伸するように設けられた細長い概略突条状(概略直方体状)の他方磁極としてのN極246bと、を有する。なお、ターゲット242の寸法は、たとえばその長手方向(長さ寸法)が690mmであり、短手方向(幅寸法)が127mmであり、厚さ方向(厚さ寸法)が8mmである。また、永久磁石246のS極246aとN極246bとの間には、概略矩形溝状の間隙246cが設けられる。そして、筐体248には、当該筐体248を含むマグネトロンスパッタカソード24全体を冷却するための不図示の冷却手段としての適当な水冷機構が設けられる。
マグネトロンスパッタカソード24は、ターゲット242の他方主面(前面)である概略矩形平面状の被スパッタ面を真空槽12の中心軸Xaに向け、かつ、当該ターゲット242の長手方向が真空槽12の中心軸Xaの延伸方向に沿うように、つまり鉛直方向に沿うように、設けられる。併せて、マグネトロンスパッタカソード24は、とりわけ図2に示されるように、ターゲット242の被スパッタ面の短手方向における中央が真空槽12の中心軸Xaと正対するように設けられる。
このマグネトロンスパッタカソード24は、ターゲット242の被スパッタ面(のみ)を除いて、アースシールド26によって覆われた状態にある。言い換えれば、アースシールド26は、マグネトロンスパッタカソード24のうちのターゲット242の被スパッタ面(のみ)を露出させた状態で、当該マグネトロンスパッタカソード24の外周を囲むように設けられる。なお、アースシールド26は、耐食性および耐熱性の高い金属製であり、たとえばSUS304などのステンレス鋼製である。そして、アースシールド26は、マグネトロンスパッタカソード24とは電気的に絶縁される一方、真空槽12の壁部と電気的かつ機械的に結合され、とりわけ自身の電位がより確実に接地電位となるように、図1に示される如く直接的に(真空槽12とは別に)接地される。
図4を併せて参照して、より詳しく説明すると、アースシールド26は、マグネトロンスパッタカソード24の外周を囲む概略角筒状の角筒部262と、当該角筒部262の一方端縁(ターゲット242の被スパッタ面側の端縁)から外方へ広がるように設けられた概略鍔状の鍔状部264と、を有する。そして、鍔状部264は、ターゲット242の被スパッタ面と概ね面一の平面部264aを有する。この鍔状部264の広がり寸法、換言すれば平面部264aの広がり寸法Dsは、たとえば30mmである。また、角筒部262の内周面(内側面)とマグネトロンスパッタカソード24の外周面(外側面)との間には、適当な間隙266が設けられる。この間隙266は、「ダークスペース」と呼ばれ、その寸法Ddは、たとえば約2mmである。
改めて図2を参照して、真空槽12の壁部のうちのマグネトロンスパッタカソード24およびアースシールド26が設けられる部分12aは、当該マグネトロンスパッタカソード24およびアースシールド26が設けられるのに適当な構造とされる。この部分12aについては、ターゲット242の交換を含むマグネトロンスパッタカソード24のメンテナンス時の作業性などを考慮して、引き戸や開き戸の如く開閉可能とされるのが、望ましい。
改めて図1を参照して、マグネトロンスパッタカソード24は、真空槽12の外部において、スパッタ電力供給手段の一例としてのスパッタ電源装置28に接続される。このスパッタ電源装置28は、真空槽12を陽極とし、厳密にはアースシールド26を陽極とし、マグネトロンスパッタカソード24を陰極として、これら両者にスパッタ電力Esを供給する。スパッタ電力Esは、その電圧成分であるスパッタ電圧(または「ターゲット電圧」とも言う。)Vsが、接地電位を基準とする0V以上のハイレベル値と、当該接地電位を基準とする負電位のローレベル値と、に交互に遷移する、いわゆる非対称バイポーラパルス電力である。すなわち、スパッタ電源装置28は、スパッタ電力Esとして非対称バイポーラパルス電力を生成するパルス電源装置である。スパッタ電圧Vsのハイレベル値は、所定の範囲内で任意に設定可能であり、ここでは、たとえば接地電位を基準として+100とされる。一方、スパッタ電圧Vsのローレベル値もまた、所定の範囲内で任意に設定可能であり、このローレベル値によって、当該スパッタ電圧Vsの平均値(直流換算値)が規定される。そして、スパッタ電圧Vsの周波数もまた、所定の範囲内で任意に設定可能であり、ここでは、たとえば100kHzとされる。さらに、スパッタ電圧Vsのデューティ比(スパッタ電圧Vsの1周期のうち当該スパッタ電圧Vsの値がハイレベル値となる期間の比率)もまた、所定の範囲内で任意に設定可能であり、ここでは、たとえば20%とされる。
加えて、マグネトロンスパッタカソード24の前方、詳しくはターゲット242の被スパッタ面の前方に、熱電子放出手段としてのカソードフィラメント30が設けられる。このカソードフィラメント30は、たとえば直径が約1mmのタングステン(W)製の線状部材である。なお、カソードフィラメント30は、タングステン製に限らず、モリブデン(Mo)やタンタル(Ta)、炭素(C)などの他の高融点金属製であってもよい。
改めて図4を参照して、とりわけ図4(a)を参照して、カソードフィラメント30は、これを水平方向におけるマグネトロンスパッタカソード24が配置された方向とは反対側から、たとえば真空槽12の中心軸Xa側から、見たときに、ターゲット242の被スパッタ面の短手方向における中央を鉛直方向に沿って、つまりターゲット242の長手方向に沿って、換言すればターゲット242の被スパッタ面と平行を成して、直線状に延伸するように設けられる。また、図4(b)および図4(c)に示されるように、カソードフィラメント30は、ターゲット242の被スパッタ面との間に適当な距離Dcvを置いて設けられる。この距離Dcvは、たとえばこれが過度に小さいと、カソードフィラメント30が振動などによりターゲット242の被スパッタ面またはアースシールド26と接触する虞があり、甚だ不都合である。一方、距離Dcvが過度に大きいと、カソードフィラメント30の周囲における前述の磁石ユニット244(永久磁石246)による磁界の作用が弱くなり、後述するアーク放電の誘起に不都合である。これらのことから、距離Dcvは、5mm~50mm程度が適当であり、たとえば25mmとされる。なお、カソードフィラメント30の長さ寸法は、ターゲット242の長さ寸法と同等かそれ以上であり、厳密には当該ターゲット242の後述するエロージョン領域242aの長さ寸法と同等かそれ以上であり、たとえば750mmである。
改めて図1を参照して、カソードフィラメント30の両端部は、真空槽12の外部において、加熱用電力供給手段の一例としての加熱用電源装置32に接続される。そして、カソードフィラメント30には、加熱用電源装置32から加熱用電力としての交流のカソード電力Ecが供給される。これにより、カソードフィラメント30が2000℃以上に加熱されて、当該カソードフィラメント30から熱電子が放出される。なお、カソード電力Ecは、交流電力に限らず、直流電力であってもよい。
さらに、カソードフィラメント30の一方端部、たとえば上方側の端部は、真空槽12の外部において、アーク放電用電力供給手段の一例としてのアーク放電用電源装置34に接続される。そして、カソードフィラメント30には、アーク放電用電源装置34から接地電位を基準とする負電位の直流電力であるアーク放電用電力Edが供給される。言い換えれば、真空槽12を陽極とし、厳密にはアースシールド26を陽極とし、カソードフィラメント30を陰極として、これら両者にアーク放電用電力Edが供給される。なお、アーク放電用電源装置34は、たとえば定電圧電源装置であり、その最大出力電圧、つまりアーク放電用電力Edの電圧成分であるアーク放電電圧Vdの最大値は、たとえば100Vである。
また、アーク放電用電源装置34と接地との間に、アーク放電電流検出手段としての電流検出器36が設けられる。この電流検出器36は、アーク放電用電力Edの電流成分であるアーク放電電流Idを検出する。そして、電流検出器36によるアーク放電電流Idの検出値は、加熱用電力制御手段の一例としての加熱制御器38に与えられる。
加熱制御器38は、電流検出器36によるアーク放電電流Idの検出値が一定となるように、つまり当該アーク放電電流Idが一定となるように、加熱用電源装置32を制御し、詳しくは当該加熱用電源装置32を介してカソード電力Ecを制御する。これにより、カソードフィラメント30の加熱温度が、つまりは当該カソードフィラメント30による熱電子の放出量が、適宜に調整される。すなわち、アーク放電電流Idをパラメータとして、カソードフィラメント30による熱電子の放出量が自動制御(フィードバック制御)される。
そして、真空槽12内のカソードフィラメント30が設けられた位置よりも内側に注目すると、当該真空槽12内には、複数の被処理物100,100,…が配置される。具体的には、各被処理物100,100,…は、真空槽12の中心軸Xaを中心とする円の円周方向に沿って等間隔に配置される。それぞれの被処理物100は、たとえば細長い概略円柱状あるいは概略円筒状のものであり、垂直方向に沿って延伸するように、つまり真空槽12の中心軸Xaに沿う方向に延伸するように、保持手段としてのホルダ40によって保持される。それぞれのホルダ40は、ギア機構42を介して、円盤状の公転台44の周縁近傍に結合される。この公転台44の中心は、真空槽12の中心軸Xa上に位置し、当該公転台44の中心には、真空槽12の中心軸Xaに沿って延伸する回転軸46の一方端が固定される。そして、回転軸46の他方端は、真空槽12の外部において、回転駆動手段としてのモータ48のシャフト48aに結合される。
すなわち、モータ48が駆動して、当該モータ48のシャフト48aがたとえば図1に矢印200で示される方向に回転すると、公転台44が同じ方向に回転し、つまり図2においても矢印200で示される方向に回転する。これに伴って、それぞれの被処理物100が真空槽12の中心軸Xaを中心として回転し、言わば公転する。併せて、それぞれのギア機構42による回転駆動力伝達作用によって、それぞれのホルダ40が自身を通る鉛直線Xbを中心としてたとえば図1および図2のそれぞれに矢印202で示される方向に回転する。そして、ホルダ40自身の回転に伴って、被処理物100もまた、同じ方向に回転し、言わば自転する。なお、被処理物100の公転経路の直径(PCD)は、たとえば約600mmである。そして、被処理物100の公転速度(公転台44の回転速度)は、たとえば0.5rpm~1rpmである。これに対して、被処理物100の自転速度(ホルダ40自身の回転速度)は、たとえば30rpm~60rpmであり、つまり公転速度の60倍である。なお、図1および図2は、被処理物100(ホルダ40およびギア機構42)の数が12である例を示すが、当該被処理物100の数はこれに限らない。また、被処理物100の形状も、前述の細長い概略円柱状あるいは概略円筒状に限らない。
併せて、それぞれの被処理物100には、ホルダ40,ギア機構42,公転台44および回転軸46を介して、真空槽12の外部にあるバイアス電力供給手段の一例としてのバイアス電源装置50から基板バイアス電力Ebが供給される。言い換えれば、真空槽12を陽極とし、それぞれの被処理物100を陰極として、これら両者に基板バイアス電力Ebが供給される。基板バイアス電力Ebは、その電圧成分である基板バイアス電圧Vbが、接地電位を基準とする正電位のハイレベル値と、当該接地電位を基準とする負電位のローレベル値と、に交互に遷移する、非対称バイポーラパルス電力である。すなわち、バイアス電源装置50は、基板バイアス電力Ebとして非対称バイポーラパルス電力を生成するパルス電源装置である。基板バイアス電圧Vbのハイレベル値は、一定であり、たとえば接地電位を基準として+37Vである。一方、基板バイアス電圧Vbのローレベル値は、所定の範囲内で任意に設定可能であり、このローレベル値によって、当該基板バイアス電圧Vbの平均値(直流換算値)が規定される。さらに、基板バイアス電力Ebの周波数もまた、たとえば50kHz~250kHzの範囲内で任意に設定可能である。そして、基板バイアス電力Ebのデューティ比(基板バイアス電圧Vbの1周期のうち当該基板バイアス電圧Vbの値がハイレベル値となる期間の比率)もまた、所定の範囲内で任意に設定可能である。ここでは、基板バイアス電力Ebの周波数については、たとえば100kHzとされ、デューティ比については、たとえば20%とされる。なお、バイアス電源装置50は、基板バイアス電圧Vbの平均値ではなく、基板バイアス電圧Vbの実効値が、規定される構成のものであってもよい。
さらに、真空槽12の側面を成す壁部の内側の適宜の位置であって、各被処理物100,100,…の公転経路よりも外方の適当な位置、たとえば真空槽12の中心軸Xaを挟んでマグネトロンスパッタカソード24が設けられている位置とは反対側の位置(図1および図2において左側の位置)に、温度制御手段としてのたとえばカーボンヒータ52が設けられる。このカーボンヒータ52は、真空槽12の外部において、不図示のヒータ加熱用電源装置に接続される。そして、カーボンヒータ52は、ヒータ加熱用電源装置から直流または交流のヒータ加熱用電力の供給を受けて発熱することで、真空槽12内を加熱し、とりわけ各被処理物100,100,…を加熱する。なお、図2に示されるように、真空槽12の壁部のうちカーボンヒータ52が設けられた部分12bについても、前述のマグネトロンスパッタカソード24およびアースシールド26が設けられた部分12aと同様、当該カーボンヒータ52が設けられるのに適当な構造とされる。
また、図1に示されるように、真空槽12内の適宜位置、好ましくはカソードフィラメント30の近傍の位置に、不活性ガスなどの各種ガスを当該真空槽12内に導入するためのガス導入口54が設けられる。このガス導入口54には、真空槽12の外部において、ガス導入管56が結合され、さらに、ガス導入管56には、複数の、ここでは2本の、枝管58および60が結合される。
一方の枝管58は、真空槽12内に放電用ガスとしての不活性ガスを導入するための配管であり、当該不活性ガスの不図示の供給源に結合される。この不活性ガス導入用の枝管58には、当該枝管58内を開閉するための開閉手段としての開閉バルブ58a、および、当該枝管58内を流通する不活性ガスの流量Qdを制御するための流量制御手段としてのマスフローコントローラ58bが、設けられる。これらの開閉バルブ58aおよびマスフローコントローラ58bを含む枝管58は、ガス導入管56と協働して、不活性ガス導入手段の一例を構成する。また、不活性ガスとしては、たとえばアルゴン(Ar)ガスが採用される。
そして、他方の枝管60は、真空槽12内に被膜の材料となる、とりわけ当該被膜としての反応膜の材料となる、反応性ガスを導入するための配管であり、当該反応性ガスの不図示の供給源に供給される。この反応性ガス導入用の枝管60にも、当該枝管60内を開閉するための開閉手段としての開閉バルブ60a、および、当該枝管60内を流通する反応性ガスの流量Qrを制御するための流量制御手段としてのマスフローコントローラ60bが、設けられる。これらの開閉バルブ60aおよびマスフローコントローラ60bを含む枝管60は、ガス導入管56と協働して、反応性ガス導入手段の一例を構成する。なお、反応性ガスとしては、形成しようとする反応膜の種類に応じて適宜のガスが採用される。たとえば、反応膜として窒化膜が形成される場合には、反応性ガスとして窒素(N)ガスが採用され、反応膜として炭化膜が形成される場合には、反応性ガスとしてアセチレン(C)などの炭化水素系ガスが採用される。そして、反応膜として酸化膜が形成される場合には、反応性ガスとして酸素(O)ガスが採用される。
加えて、真空槽12内の適宜の位置に、たとえば真空槽12内の上部の適当な位置に、圧力計62のゲージ部(測定部)62aが配置されるように、当該圧力計62が設けられる。この圧力計62は、真空槽12内の圧力、厳密にはゲージ部62aの配置位置における圧力Pを、測定するための圧力測定手段である。そして、圧力計62による圧力Pの測定値は、真空槽12の外部にある反応ガス流量制御手段の一例としてのガス流量制御器64に与えられる。なお、圧力計62としては、たとえば絶対圧力を比較的に高い精度かつ高い分解能で測定可能な隔膜真空計が採用される。また、ゲージ部62aの配置位置は、真空槽12内の上部に限らず、後述するプラズマ300による影響が少ない位置であればよい。圧力計62の本体は、真空槽12の外部に設けられる。
ガス流量制御器64は、後述する如く圧力計62による圧力Pの測定値が一定となるように、つまり当該圧力Pが一定となるように、反応性ガス導入用のマスフローコントローラ60bを制御し、詳しくは当該マスフローコントローラ60bを介して真空槽12内へ導入される反応性ガスの流量Qrを制御する。すなわち、真空槽12内の圧力Pをパラメータとして、反応性ガスの流量Qrが自動制御(フィードバック制御)される
また、図示を含む詳しい説明は省略するが、カソードフィラメント30と当該カソードフィラメント30に最も近い位置にある被処理物100(つまり被処理物100の公転経路におけるカソードフィラメント30に最も近い部分)との間に、シャッタが設けられる。このシャッタは、マグネトロンスパッタカソード24のターゲット242の被スパッタ面を、被処理物100が置かれた空間に向けて露出させる開状態と、当該空間から遮蔽する閉状態と、に適宜に遷移する。
さらに加えて、アースシールド26の近傍、詳しくは平面部264aの近傍に、アノード維持手段としての2本のアノードフィラメント70および70が設けられる。これら各アノードフィラメント70および70のそれぞれは、たとえばカソードフィラメント30と同じ材料により形成されたものであり、つまりたとえば直径が約1mmのタングステン製の線状部材である。なお、それぞれのアノードフィラメント70は、カソードフィラメント30とは異なる材料により形成されてもよいが、コスト面や管理面など観点から、当該カソードフィラメント30と同じ素材により形成されるのが、望ましい。
改めて図4を参照して、とりわけ図4(a)を参照して、各アノードフィラメント70および70は、これらをたとえば真空槽12の中心軸Xa側から見たときに、カソードフィラメント30を間に挟んで当該カソードフィラメント30の左右両側に設けられ、詳しくはアースシールド26の平面部264aのうちの左右両側の部分の手前側に設けられる。また、図4(b)および図4(c)を併せて参照して、各アノードフィラメント70および70のそれぞれは、カソードフィラメント30と平行を成して、つまり鉛直方向に、直線状に延伸するように設けられる。そして、各アノードフィラメント70および70は、カソードフィラメント30の軸線を含み、かつ、ターゲット242の被スパッタ面と直交する、不図示の仮想平面に関して互いに面対称を成すように設けられる。
さらに図5を併せて参照して、それぞれのアノードフィラメント70は、ターゲット242の被スパッタ面の短手方向において、自身に近い側の当該被スパッタ面の端縁に対応する位置から当該被スパッタ面の外方へ、換言すれば前述の仮想平面とは反対の方向へ、所定の距離Dapを置いた位置に設けられる。そして、ターゲット242の被スパッタ面に垂直な方向において、換言すればアースシールド26の平面部264aに垂直な方向において、それぞれのアノードフィラメント70は、当該平面部264aからターゲット242の被スパッタ面が向けられた方向へ、つまりたとえば図5においては上方へ、所定の距離Davを置いた位置に設けられる。
後述するように、それぞれのアノードフィラメント70は、グロー放電およびアーク放電という2種類の放電の陽極としての機能を担い、この陽極としての機能を確実に果たし得るようにするために、ここで言う各距離DapおよびDavが適宜に設定され、言わば最適化される。たとえば、ターゲット242の被スパッタ面の短手方向における距離Dapは、0mm~15mm程度が適当である。すなわち、距離Dapは、0mmであってもよく、この場合、それぞれのアノードフィラメント70は、ターゲット242の被スパッタ面の短手方向における当該被スパッタ面の端縁に対応する位置に設けられ、つまり図5における当該被スパッタ面の端縁の真上に設けられる。極端に言えば、それぞれのアノードフィラメント70は、ターゲット242の被スパッタ面の短手方向における当該被スパッタ面の端縁よりも内側に対応する位置に設けられてもよく、つまり当該被スパッタ面の前方に設けられてもよいのであるが、そうすると、ターゲット242の被スパッタ面の清掃時(ターゲット242の被スパッタ面は、一般に、成膜処理が行われるたびに、言わばバッチごとに、清掃される。)やターゲット242の交換時などのメンテナンス時に、それぞれのアノードフィラメント70が邪魔となり、当該メンテナンス時の作業性が阻害される。また、距離Dapが過度に大きいと、それぞれのアノードフィラメント70の周囲における前述の磁石ユニット244(永久磁石246)による磁界の作用が弱くなり、陽極としての機能を果し得なくなる。これらのことから、距離Dapは、0mm~15mm程度が適当であり、たとえば5mmとされる。
一方、ターゲット242の被スパッタ面に垂直な方向における距離Davは、5mm~30mm程度とされる。たとえば、この距離Davが過度に小さいと、それぞれのアノードフィラメント70が振動などによりアースシールド26の平面部264aと接触する虞があり、甚だ不都合である。また、距離Davが過度に大きいと、それぞれのアノードフィラメント70の周囲における磁石ユニット244(永久磁石246)による磁界の作用が弱くなり、陽極としての機能を果し得なくなる。これらのことから、距離Davは、5mm~30mm程度が適当であり、たとえば10mmとされる。なお前述したように、ターゲット242の被スパッタ面に垂直な方向における当該被スパッタ面からカソードフィラメント30までの距離Dcvは、5mm~50mm程度が適当であることを鑑みると、当該距離Dcvに比べて、同方向におけるアースシールド26の平面部264aからそれぞれのアノードフィラメント70までの距離Davの方が、大きい場合があり得る。すなわちたとえば、図5において、カソードフィラメント30よりも、それぞれのアノードフィラメント70の方が、上方に位置する場合があり得る。このような位置関係にあっても、ターゲット242の被スパッタ面に垂直な方向における距離Davが5mm~30mmという所定の範囲内にあれば、特段な不都合はない。
また、改めてカソードフィラメント30に言及すると、カソードフィラメント30は、ターゲット242の被スパッタ面の短手方向において、当該被スパッタ面の中央に対応する位置に設けられる。したがって、図5に示されるように、ターゲット242の被スパッタ面の短手方向において、当該被スパッタ面の両端のそれぞれからカソードフィラメント30までの距離Dcpは、互いに同じである。加えて前述したように、ダークスペース266の寸法Ddは、たとえば約2mmであるが、このような小さな値とされるのは、当該ダークスペース266に後述するプラズマ300が入り込むのを防止するためである。
図6は、マグネトロンスパッタカソード24を含む部分をターゲット242の被スパッタ面の斜め前方から撮影した画像を示す。この図6に示されるように、カソードフィラメント30の両端部は、適当な支持部材30aおよび30bに固定される。また、図6からは分かり難いが、下方側の支持部材30bには、カソードフィラメント30に適当な張力を付与して、当該カソードフィラメント30の直線状の状態を維持するための、張力付与手段としての張力付与機構が設けられ、詳しくは適当な錘が設けられる。
これに対して、それぞれのアノードフィラメント70の上方側端部は、固定端として適当な支持部材70aに固定される一方、下方側端部は、自由端として垂下した状態にある。したがって、それぞれのアノードフィラメント70は、自重により直線状に延伸した状態を維持する。併せて、それぞれのアノードフィラメント70は、その揺れを規制するために、適当な箇所において、たとえば当該アノードフィラメント70の延伸方向における略中央の箇所と下方側端部の近傍の箇所との2箇所において、中継部材70bにより緩やかに拘束される。図6からは分かり難いが、それぞれの中継部材70bは、アノードフィラメント70の直径よりも少し大きめの直径、たとえば約1.5mmの直径の、挿通孔を有し、この挿通孔にアノードフィラメント70を挿通させることで、当該アノードフィラメント70の緩やかに拘束し、つまりアノードフィラメント70の揺れを規制する。なお、それぞれの中継部材70bは、電気的には真空槽12などの他の要素とは絶縁され、いわゆる浮遊電位とされる。また、それぞれのアノードフィラメント70の長さ寸法は、ターゲット242の長さ寸法と同程度であり、たとえば700mmである。
改めて図1を参照して、それぞれのアノードフィラメント70の上方側端部は、真空槽12の外部において、ノイズ低減手段としてのリアクトル72を介してアノードフィラメント電力供給手段としてのアノードフィラメント用電源装置74に接続される。アノードフィラメント用電源装置74は、真空槽12を陰極とし、厳密にはアースシールド26を陰極とし、アノードフィラメント70を陽極として、これら両者にアノードフィラメント電力Eafを供給する。アノードフィラメント電力Eafは、接地電位を基準とする正電圧の直流電力であり、その電圧成分であるアノードフィラメント電圧Vafは、0V以上の所定の範囲内で任意に設定可能である。また、リアクトル72は、スパッタ電源装置28から出力される非対称バイポーラパルス電力であるスパッタ電力Esに起因するパルス状ノイズの影響を低減するために設けられる。
なお、リアクトル72は、各アノードフィラメント70および70に共通のものであり、アノードフィラメント用電源装置74もまた、各アノードフィラメント70および70に共通のものである。すなわち、各アノードフィラメント70および70は、当該各アノードフィラメント70および70に共通の(つまり1つの)リアクトル72を介して当該各アノードフィラメント70および70に共通の(つまり1つの)アノードフィラメント用電源装置74に接続される。また、アノードフィラメント電圧Vafが0Vとされた場合、つまりはそうなるようにアノードフィラメント用電源装置74により当該アノードフィラメント電圧Vafが設定された場合、各アノードフィラメント70および70は、接地電位となる。
このような構成のマグネトロンスパッタ装置10によれば、被処理物100の表面に種々の反応膜を形成することができ、とりわけ絶縁性被膜を形成するための成膜処理を安定的に行うことができる。たとえば、絶縁性被膜として窒化アルミニウム(AlN)膜を形成する場合について、説明する。この場合、ターゲット242としてたとえば純度が4N以上のアルミニウムが採用される。併せて、反応性ガスとしてたとえば純度が5N以上の窒素ガスが採用される。
その上で、まず、真空槽12内に被処理物100が設置され、つまりホルダ40に取り付けられる。そして、真空槽12内が真空ポンプ18により2×10-3Pa程度の圧力Pになるまで排気され、いわゆる真空引きが行われる。その後、モータ48が駆動されて、被処理物100の自公転が開始される。併せて、カーボンヒータ52にヒータ加熱用電力が供給されて、被処理物100が150℃程度にまで加熱される。これにより、被処理物100に含まれている不純物ガスが排出され、いわゆる脱ガス処理が行われる。
この脱ガス処理が所定時間(たとえば30分間~1時間程度)にわたって行われた後、カーボンヒータ52へのヒータ加熱用電力の供給が停止され、続いて、放電洗浄処理が行われる。この放電洗浄処理においては、カソードフィラメント30にカソード電力Ecが供給される。これを受けて、カソードフィラメント30が加熱されて、当該カソードフィラメント30から熱電子が放出される。併せて、カソードフィラメント30にアーク放電用電力Edが供給される。すなわち、アースシールド26を陽極とし、カソードフィラメント30を陰極として、これら両者にアーク放電用電力Edが供給される。これにより、陰極であるカソードフィラメント30から放出された熱電子が、陽極であるアースシールド26に向かって、とりわけ当該アースシールド26の平面部264aに向かって、加速される。この状態で、真空槽12内にアルゴンガスが導入される。すると、加速された熱電子がアルゴンガスの粒子に衝突して、その衝撃により、当該アルゴンガスの粒子が電離して、プラズマ300が発生する。
ここで、カソードフィラメント30の周囲を含むターゲット242の被スパッタ面の近傍には、前述の永久磁石246による磁界が形成されているので、カソードフィラメント30からアースシールド26に向かって加速された熱電子は、当該磁界の作用により螺旋運動する。その結果、熱電子がアルゴンガスの粒子と衝突する頻度が増大して、プラズマ300が高密度化される。このようなプラズマ300の放電態様は、低電圧大電流のアーク放電である。
なお、アーク放電は、たとえば真空槽12内の圧力Pが0.01Pa~1Paの範囲で、つまり当該圧力Pが比較的に低い状況下であっても、誘起される。また、アーク放電用電力Edは、一定とされ、詳しくは当該アーク放電用電力Edの電圧成分であるアーク放電電圧Vdが一定とされた状態で、当該アーク放電用電力Edの電流成分であるアーク放電電流Idが一定となるように、カソード電力Ecが制御され、つまりカソードフィラメント30からの熱電子の放出量が制御される。これにより、アーク放電によるプラズマの密度の安定化が図られる。
このアーク放電によるプラズマ300が発生している状態で、被処理物100に基板バイアス電力Ebが供給される。すなわち、真空槽12を陽極とし、被処理物100を陰極として、これら両者に基板バイアス電力Ebが供給される。すると、プラズマ300中のアルゴン粒子、とりわけアルゴンイオンが、被処理物100の表面に積極的に入射される。その衝撃により、被処理物100の表面から不純物が取り除かれ、いわゆる放電洗浄処理が行われる。なお、被処理物100は、前述の如く自公転しているので、この自公転の過程でプラズマ300に晒される状態にあるときに放電洗浄処理を施される。言い換えれば、被処理物100は、簡潔的に放電洗浄処理を施される。
この放電洗浄処理が所定時間(たとえば約30分間)にわたって行われた後、窒化アルミニウム膜を形成するための成膜処理が行われる。そのために、マグネトロンスパッタカソード24にスパッタ電力Esが供給される。すなわち、アースシールド26を陽極とし、マグネトロンスパッタカソード24を陰極として、これら両者にスパッタ電力Esが供給される。すると、プラズマ300中のアルゴンイオンがマグネトロンスパッタカソード24のターゲット242の被スパッタ面に衝突して、当該ターゲット242の被スパッタ面からアルミニウム粒子が叩き出され、つまりスパッタされる。このとき、スパッタの対象となる領域である被スパッタ領域は、ターゲット242の被スパッタ面に限定され、つまりはそうなるようにアースシールド26が設けられる。さらに、真空槽12内に反応性ガスとしての窒素ガスが導入される。この窒素ガスの粒子は、プラズマ300によって分解される。
ターゲット242の被スパッタ面からスパッタされたスパッタ粒子としてのアルミニウム粒子は、基板バイアス電力Ebが供給された被処理物100に向かって加速される。併せて、プラズマ300により分解された窒素ガスの粒子もまた、被処理物100に向かって加速される。これらのアルミニウム粒子と窒素粒子とが被処理物100の表面に付着して互いに反応することで、当該被処理物100の表面にアルミニウム粒子と窒素粒子とを成分とする絶縁性被膜である窒化アルミニウム膜が形成される。さらに、プラズマ300中のアルゴンイオンもまた、被処理物100に向かって加速される。このアルゴンイオンによる被処理物100の表面に対するボンバードメント作用により、当該被処理物100の表面に形成された窒化アルミニウム膜の密度の向上が図られる。
この成膜処理においては、スパッタ電力Esの供給によっても、アルゴンガス粒子が放電して、高電圧小電流のグロー放電によるマグネトロンプラズマが誘起される。すなわち、プラズマ300は、前述のアーク放電に加えて、グロー放電によるマグネトロンプラズマを含んだ(合わせた)態様となる。このグロー放電によるマグネトロンプラズマは、前述の永久磁石246による磁界の作用により、ターゲット242の被スパッタ面に張り付くように発生する。
そして、アルミニウム粒子、窒素粒子およびアルゴン粒子は、被処理物100に向かって飛翔する途中で、極めて高密度なプラズマ300の空間を通過する。これにより、アルミニウム粒子、窒素粒子およびアルゴン粒子は、より活性化され、より効率的にイオン化される。このイオン化率の向上によって、被処理物100の表面に入射されるイオンの量が増加し、当該被処理物100の表面に形成される窒化アルミニウム膜の高硬度化が図られる。併せて、アルミニウム粒子と窒素粒子との相互の結合力が増大するので、窒化アルミニウム膜の緻密化が図られる。加えて、被処理物の表面に対するアルゴンイオンによるボンバードメント作用が増強されるので、反応膜の密度のさらなる向上が図られる。
この成膜処理においても、前述の放電洗浄処理と同様、被処理物100は、自公転する過程でプラズマ300に晒される状態にあるときに、当該成膜処理を施される。すなわち、被処理物100は、簡潔的に成膜処理を施される。また、成膜処理時の真空槽12内の圧力Pは、たとえば0.1Pa~1Paの範囲で制御される。
ここで特に、図4を参照して、ターゲット242の被スパッタ面に注目すると、プラズマ300が発生する当該被スパッタ面の近傍のうち、前述の永久磁石246の間隙246cに倣う領域において、当該プラズマ300の密度がより高くなる。したがって、ターゲット242の被スパッタ面のうち、プラズマ300の密度がより高い領域が、つまり永久磁石246の間隙246cに倣う領域が、より効率的(集中的)にスパッタされる。その結果、ターゲット242の被スパッタ面に永久磁石246の間隙246cに倣うような概略矩形ループ状(または長円ループ状)のスパッタ痕が現れ、いわゆるエロージョン領域242aが形成される。
この成膜処理が所定時間(所定の膜厚の窒化アルミニウム膜が形成されるのに必要な時間)にわたって行われた後、真空槽12内へのアルゴンガスおよび窒素ガスの導入が停止される。併せて、マグネトロンスパッタカソード24へのスパッタ電力Esの供給が停止されるとともに、カソードフィラメント30へのカソード電力Ecおよびアーク放電用電力Edの供給が停止される。これにより、プラズマ300が消失する。さらに、被処理物100への基板バイアス電力Ebの供給が停止される。そして、真空槽12内が真空ポンプ18により高真空に維持された状態で、当該真空槽12内が所定の温度(たとえば150℃)に低下するまで待機され、つまり適当な冷却期間が置かれる。その後、モータ48の駆動が停止されて、被処理物100の自公転が停止される。その上で、真空槽12内が外部に開放されて、当該真空槽12内から被処理物100が外部に取り出される。これをもって、窒化アルミニウム膜を形成するための成膜処理を含む一連の処理が終了する。
この一連の処理に係る説明において、とりわけ成膜処理に係る説明において、ガス流量制御器64については、特段に言及しなかったが、前述したように、ガス流量制御器64は、真空槽12内の圧力Pが一定となるように、反応性ガス導入用のマスフローコントローラ60bを制御し、詳しくは当該マスフローコントローラ60bを介して真空槽12内へ導入される反応性ガスの流量Qrを制御する。一方、不活性ガスの流量Qdについては、一定とされる。併せて、コンダクタンスバルブ22の(羽根部材の)角度θが一定とされることで、真空槽12の排気口14における実効排気速度が一定とされる。このような要領により成膜処理が行われることによって、絶縁性被膜を含む反応膜を良好な再現性で形成することができ、とりわけ当該反応膜の可視光透過性(透明性)および膜厚について良好な再現性を得ることができる。
このことについて、前述の特許文献1に開示された従来技術と比較して、詳しく説明すると、当該従来技術においても(特許文献1には明記されていないが)、本実施例におけるのと同様のコンダクタンスバルブが設けられる。その一方で、従来技術においては、不活性ガスの流量Qdが一定とされるとともに、反応性ガスの流量Qrもまた一定とされ、この状態で、真空槽内の圧力Pが一定となるように、コンダクタンスバルブの角度θが制御され、つまり真空槽の排気口における実効排気速度が制御される。すなわち、真空槽12内の圧力Pをパラメータとして、コンダクタンスバルブの角度θが自動制御(フィードバック制御)される。要するに、真空槽12内の圧力Pをパラメータとして、反応性ガスの流量Qrが自動制御される、という本実施例とは異なる要領により成膜処理が行われる。
ところが、従来技術では、反応膜の再現性が得られない、とりわけ当該反応膜の可視光透過性および膜厚の再現性が得られない、という不都合がある。これは、成膜処理が行われるたびに、つまりバッチごとに、また、当該バッチが繰り返されるに連れて、ターゲットの被スパッタ面のスパッタ速度が変化することに起因するものと推測される。
ここで、反応膜の可視光透過性は、当該反応膜の組成の影響を受ける。前述したように、真空槽内においては、ターゲットの被スパッタ面に張り付くようにマグネトロンプラズマが発生しており、これに加えて、アーク放電による極めて高密度なプラズマが発生しており、ゆえに、当該被スパッタ面が晒された空間は、化学的に極めて活性である。したがってたとえば、窒化アルミニウム膜などの窒化膜を形成するための成膜処理が行われると、ターゲットの被スパッタ面のエロージョン領域と非エロージョン領域との境界付近に窒素が侵入し、つまり当該境界付近が窒化される(または窒化に似たような現象が生じる)ものと考えられる。そして、この窒化の度合いがバッチごとに異なることで、当該バッチごとに、換言すれば比較的に短い期間(短期スパン)であっても、スパッタ速度が変化し、これにより、窒化膜の組成比が変わり、ひいては窒化膜の可視光透過性の再現性が得られなくなるものと推測される。なお、炭化膜や酸化膜などの窒化膜以外の反応膜を形成するための成膜処理が行われる場合も、これと同様の現象が生ずる。
また、スパッタ速度が変化すると、反応膜の形成速度(成膜速度)が変化し、その結果、当該反応膜の膜厚が変わる。特に、バッチが繰り返されるに連れて(長期スパン)、スパッタ速度が低下し、これに伴って、反応膜の形成速度が低下して、当該反応膜の膜厚が小さくなる傾向にある。たとえば、初期(新品)のターゲットの厚さ寸法が8mmであり、エロージョン領域の深さ寸法が7mmになるまで当該ターゲットが使用される、とすると、使用末期のターゲットのエロージョン領域の表面積は、使用初期のターゲットのエロージョン領域の表面積に比べて、1.1倍程度の大きさとなる。このため、スパッタ電力が一定である場合に、使用初期のターゲットに作用する当該スパッタ電力のパワー密度に比べて、使用末期のターゲットに作用する当該スパッタ電力のパワー密度が、10%程度低下する。これにより、バッチが繰り返されるに連れて、スパッタ速度が低下し、これに伴って、反応膜の形成速度が低下して、当該反応膜の膜厚が小さくなるものと推測される。
この不都合を解消するために、本実施例においては、前述の如く不活性ガスの流量Qdが一定とされるとともに、コンダクタンスバルブ22の角度θが一定とされ、この状態で、真空槽12内の圧力Pが一定となるように、反応性ガスの流量Qrが自動制御される。なお、スパッタ電力Esは、一定とされ、アーク放電用電力Edもまた、一定とされ、さらに、基板バイアス電圧Vb(平均値)もまた、一定とされる。特に、アーク放電用電力Edは、その電圧成分であるアーク放電電圧Vdが一定とされた状態で、当該アーク放電用電力Edの電流成分であるアーク放電電流Idが一定となるように、カソード電力Ecが自動制御されることで、一定とされる。これにより、ターゲット242の被スパッタ面のスパッタ速度の安定化が図られ、ひいては反応膜の再現性の向上が図られ、とりわけ当該反応膜の可視光透過性および膜厚の再現性の向上が図られる。
このことを検証するために、本実施例において、窒化アルミニウム膜を形成するための成膜処理が行われているときに、真空槽12内の圧力Pと反応性ガスとしての窒素ガスの流量Qrとがどのように遷移するのかを確認する実験を行った。その結果、次のようなことが判明した。
図示は省略するが、真空槽12内の圧力Pを観察したところ、当該真空槽12内の圧力Pは、多少(微妙に)変動しつつ、時折、瞬間的に上昇することが、つまりそのように遷移することが、分かった。そして、窒素ガスの流量Qrを観測したところ、当該窒素ガスの流量Qrは、真空槽12内の圧力Pの遷移に応じて、言わば同期して、多少変動しつつ、時折、詳しくは真空槽12内の圧力Pが瞬間的に上昇したときに、瞬間的に減少することが分かった。なお、真空槽12内の圧力Pが瞬間的に上昇する周期、換言すれば窒素ガスの流量Qrが瞬間的に減少する周期は、一定ではなく、数分間~十数分間であり、不定である。また、真空槽12内の圧力Pが瞬間的に上昇した状態にある時間、換言すれば窒素ガスの流量Qrが瞬間的に減少した状態にある時間は、数秒間であり、詳しくは2~3秒間である。
このような真空槽12内の圧力Pと窒素ガスの流量Qrとの遷移から、窒化アルミニウム膜を形成するための成膜処理においては、次のような現象が生じているものと推測される。
すなわち、窒化アルミニウム膜を含む窒化膜を形成するための成膜処理においては、前述の如くターゲット242の被スパッタ面のエロージョン領域242aと非エロージョン領域との境界付近が窒化されるものと考えられる。この窒化によって、ターゲット242の被スパッタ面からスパッタされるアルミニウム粒子の量が減少し、これに伴い、当該アルミニウム粒子(スパッタ粒子)と反応する窒素ガスの粒子の量が減少し、つまり当該アルミニウム粒子と反応することで消費される窒素ガス粒子の量が減少する。その結果、真空槽12内の圧力Pが上昇するものと推測される。
ここで、本実施例においては、前述の如く真空槽12内の圧力Pが一定となるように、窒素ガスの流量Qrが自動制御される。すなわち、上昇した真空槽12内の圧力を下げる方向へ窒素ガスの流量Qrが自動制御され、つまり当該窒素ガスの流量Qrが減らされる。すると、真空槽12内における窒素ガス粒子の量に対するアルゴンガス粒子の量の比率が高くなり、これにより、アルゴンガス粒子、とりわけアルゴンイオンが、ターゲット242の被スパッタ面に衝突する頻度(回数)が高くなる。その結果、窒化によりターゲット242の被スパッタ面に形成された窒化層がアルゴンイオンによって削り取られ、当該ターゲット242の被スパッタ面からスパッタされるアルミニウム粒子の量が増加する。すると今度は、増加したアルミニウム粒子と反応することで消費される窒素ガス粒子の量が増加し、その分、真空槽12内の圧力Pが低下する。これに応答して、真空槽12内の圧力Pの低下を補うべく、換言すれば増加したアルミニウム粒子と反応するのに必要な窒素ガス粒子を補充するべく、窒素ガスの流量Qrが増やされ、元の状態に復帰する。
このような現象が繰り返されることで、本実施例によれば、前述の如く時折、真空槽12内の圧力Pが瞬間的に上昇するとともに、窒素ガスの流量Qrが瞬間的に減少しつつ、ターゲット242の被スパッタ面に形成された窒化層が適宜に削り取られ、言わば当該被スパッタ面がリフレッシュされる。これにより、ターゲット242の被スパッタ面のスパッタ速度の安定化が図られ、ひいては窒化アルミニウム膜の再現性の向上が図られ、とりわけ当該窒化アルミニウム膜の可視光透過性および膜厚の再現性の向上が図られるものと推測される。
図示を含む詳しい説明は省略するが、本実施例において、実際に窒化アルミニウム膜を形成して、その再現性が得られるかどうかの、とりわけ可視光透過性および膜厚の再現性が得られるかどうかの、実験を行ったところ、良好な再現性が得られることが確認された。ただし、それには当然に、成膜処理が安定的に行われることが前提であり、とりわけ窒化アルミニウム膜などの絶縁性被膜を形成するための成膜処理が安定的に行われるには、アノードフィラメント70および70が重要な役割を果たす。
すなわち前述したように、アノードフィラメント70および70は、グロー放電およびアーク放電という2種類の放電の陽極としての機能を担う。このようなアノードフィラメント70および70が設けられることで、窒化アルミニウム膜などの絶縁性被膜を形成するための成膜処理を安定的に行うことが可能となる。
具体的に説明すると、本実施例においては、本来的にはアースシールド26がグロー放電およびアーク放電という2種類の放電の陽極としての機能を担う。ところが、窒化アルミニウム膜などの絶縁性被膜を形成するための成膜処理が行われると、当該絶縁性被膜(厳密には絶縁性被膜の構成要素となる絶縁性物質)がアースシールド26の表面に付着し、とりわけ当該アースシールド26の平面部264aに付着する。そして、この現象が続くと、アースシールド26の表面が、厳密には平面部264aを含む陽極として機能し得る部分が、絶縁性被膜により覆われてしまい、当該アースシールド26が陽極として機能し得なくなる。
その一方で、本実施例においては、アースシールド26の近傍に、詳しくは平面部264aの近傍に、アノードフィラメント70および70が設けられる。そして、それぞれのアノードフィラメント70は、接地電位(0V)またはそれ以上の所定の電位とされる。したがって、プラズマ300中の電子は、アースシールド26のみならず、それぞれのアノードフィラメント70にも流れ込む。すなわち、それぞれのアノードフィラメント70もまた、グロー放電およびアーク放電という2種類の放電の陽極として機能する。
しかも、それぞれのアノードフィラメント70は、直径が約1mmというタングステン製の細長い線状部材であるので、自身にプラズマ300中の電子が流れ込むことで、ジュール熱より加熱され、とりわけ1500℃以上に加熱されることで、赤熱する。このようにしてアノードフィラメント70が赤熱すると、当該アノードフィラメント70の表面に絶縁性被膜(厳密には反応性ガスの粒子と反応する前のスパッタ粒子)が付着したとしても、この付着した絶縁性被膜は再蒸発する。したがって、アノードフィラメント70の表面は、常に導電性を維持し、これにより、当該アノードフィラメント70の陽極としての機能が維持され、言わば陽極の消失が防止される。併せて、プラズモイドの発生も防止される。その結果、放電(プラズマ300)が維持され、ひいては窒化アルミニウム膜などの絶縁性被膜を形成するための成膜処理を安定的に行うことが可能となる。
なお、スパッタ電力Es(言わばスパッタ出力)およびアーク放電用電力Ed(言わばアーク出力)が比較的に大きい場合は、アノードフィラメント70が接地電位であっても、つまりアノードフィラメント電圧Vafが0Vであっても、当該アノードフィラメント70は十分に赤熱し、厳密には自身の表面に絶縁性被膜が付着したとしても、それが蒸発し得る程度に加熱され、陽極としての機能を維持する。一方、スパッタ電力Esおよびアーク放電用電力Edが比較的に小さい場合は、アノードフィラメント70が接地電位であると、つまりアノードフィラメント電圧Vafが0Vであると、当該アノードフィラメント70が赤熱し得ないことがあり、つまり陽極としての機能を維持し得ないことがある。そのような場合は、アノードフィラメント電圧Vafが0Vよりも大きい適当な値とされることによって、アノードフィラメント70への電子の流入が促進され、当該アノードフィラメント70が赤熱するようになり、つまり陽極としての機能を維持し得るようになる。ただし、アノードフィラメント電圧Vafは、後述する理由により30V以下とされ、つまり0V~30Vの範囲内で適宜に設定される。
図7は、窒化アルミニウム膜を形成するための成膜処理が行われているときのマグネトロンスパッタカソード24を含む部分の撮影画像を示す。この図7から分かるように、それぞれのアノードフィラメント70は、赤熱しており、このことから、当該アノードフィラメント70は、1500℃以上に加熱されているものと推測される。なお、カソードフィラメント30は、赤色よりも白に近い色を呈しており、このことから、当該カソードフィラメント30は、2000℃以上に加熱されているものと推測される。また、ターゲット242の前方は、少し紫がかった白っぽい色を呈しているが、これは、プラズマ300である。この図7に示される状態による成膜処理が行われた後、それぞれのアノードフィラメント70の表面を検査したところ、当該アノードフィラメント70の表面への窒化アルミニウム膜の付着は見られず、また、導電性が維持されていることが確認された。
ちなみに、図7に示される撮影画像が得られたときの成膜条件は、次の通りである。
アルゴンガス流量Qd 150mL/min
窒素ガス流量Qr 140~130mL/min(自動制御)
真空槽内圧力P 0.220Pa
コンダクタンスバルブ角度θ 40度
スパッタ電力Qs 15kW(395V×47.4A×0.8)
アーク放電用電力Ed 250W(50V×5A)
アノードフィラメント電圧Vaf 0V(接地電位)
アノードフィラメント電流Iaf 13.7A
なお前述したように、本実施例においては、真空槽12内の圧力Pが一定となるように、窒素ガスの流量Qrが自動制御されることから、ここでは、当該窒素ガスの流量Qrが140mL/min~130mL/minという範囲で変動する。また、15kWというスパッタ電力Qsの詳細は、スパッタ電圧Vs(平均値)が-395V、当該スパッタ電力Qsの電流成分であるスパッタ電流Isが47.4A、デューティ比が20%である。そして、250Wというアーク放電用電力Edの詳細は、アーク放電電圧Vdが50V、アーク放電電流Idが5Aである。さらに、アノードフィラメント電流Iafは、2本のアノードフィラメント70および70にプラズマ300中の電子が流れ込むことで、当該2本のアノードフィラメント70および70に流れる電流(電子電流)の総和である。
ここでたとえば、スパッタ電力Qsが5kWと比較的に小さい場合、アノードフィラメント電圧Vafが0Vであると、つまりアノードフィラメント70が接地電位であると、当該アノードフィラメント70が赤熱し得ない。また、この状態にあるときのアノードフィラメント電流Iafは、8.7Aと比較的に小さい。この場合、アノードフィラメント電圧Vafが15Vとされることで、アノードフィラメント電流Iafが13.1Aに増大し、これにより、スパッタ電力Qsが15kWであるとき同様に、それぞれのアノードフィラメント70が赤熱するとともに、当該それぞれのアノードフィラメント70の表面の導電性が維持されることが確認された。これはすなわち、窒化アルミニウム膜の形成速度が1/3とされる成膜条件であっても、アノードフィラメント電圧Vafが適宜に設定されることで、それぞれのアノードフィラメント70の陽極としての機能が維持され、ひいては窒化アルミニウム膜などの絶縁性被膜を形成するための成膜処理が安定的に行われることを、意味する。
加えて、窒化アルミニウム膜を形成するための成膜処理が行われているときに、時間の経過に対して、換言すればアースシールド26の状態に応じて、アノードフィラメント電流Iafがどのように遷移するのかを確認する実験を行った。その結果を、図8に示す。なお、図8において、●印が付された太実線は、アノードフィラメント電圧Vafが0Vであるときの、つまりそれぞれのアノードフィラメント70が接地電位とされたときの、アノードフィラメント電流Iafの遷移を示す。そして、■印が付された太実線は、アノードフィラメント電圧Vafが15Vであるときのアノードフィラメント電流Iafの遷移を示す。
また、この実験における成膜条件は、次の通りである。特に、窒素ガスの流量Qrについては、自動制御されず、一定とされた。そして、この実験は、アースシールド26が十分に洗浄(ブラスト処理)されることで、当該アースシールド26が陽極として十分に機能し得る状態とされた上で、行われた。
アルゴンガス流量Qd 150mL/min
窒素ガス流量Qr 100mL/min
真空槽内圧力P 0.220Pa
コンダクタンスバルブ角度θ 40度
スパッタ電力Qs 15kW(395V×47.4A×0.8)
アーク放電用電力Ed 250W(50V×5A)
この実験によれば、図8に示されるように、アノードフィラメント電圧Vafが0Vである場合も、15Vである場合も、時間の経過に伴って、アノードフィラメント電流Iafが増大する。そして、アノードフィラメント電流Iafは、約60分間という時間が経過した時点以降で飽和する。このようなアノードフィラメント電流Iafの推移から、次のようなことが推測される。
すなわち、成膜処理が開始された当初は、アースシールド26とそれぞれのアノードフィラメント70との両方が陽極として機能するので、プラズマ300中の電子がアースシールド26に流れ込む分だけ、それぞれのアノードフィラメント70に流れ込む電子の量が少なく、つまりアノードフィラメント電流Iafが小さい。そして、時間の経過に伴って、つまり成膜処理が進むに連れて、アースシールド26の平面部264aを含む当該アースシールド26の表面に窒化アルミニウム膜が付着することで、プラズマ300中からアースシールド26に流れ込む電子の量が減少する。その一方で、プラズマ300は、自身(放電)を維持するために、アースシールド26に代わる陽極を探し、その結果、当該プラズマ300中からそれぞれのアノードフィラメント70に流れ込む電子の量が増大し、これにより、アノードフィラメント電流Iafが増大する。そして、約60分間という時間が経過した時点以降は、アースシールド26が殆ど陽極として機能し得ず、主にそれぞれのアノードフィラメント70が陽極として機能することになり、結果的に、アノードフィラメント電流Iafが飽和するものと推測される。
なお、アノードフィラメント電圧Vafが0Vである場合のアノードフィラメント電流Iafに注目すると、当該アノードフィラメント電流Iafは、約13.5Aという値で飽和する。この約13.5Aという値は、プラズマ300が安定的に維持されるのに必要なアノードフィラメント電流Iafの最小値であるものと考えられる。また、図8に示される実験結果においては、アノードフィラメント電圧Vafが0Vである場合も、15Vである場合も、成膜処理が開始されてから約5分間という時間が経過するまでの間は、アノードフィラメント電流Iafが減少する傾向にあるが、その理由については、不明である。いずれにしても、この実験によれば、アノードフィラメント電圧Vafが0Vである場合も、15Vである場合も、時間の経過に伴って、アノードフィラメント電流Iafが増大し、約60分間という時間が経過した時点以降で、当該アノードフィラメント電流Iafが飽和することが判明した。
さらに、窒化アルミニウム膜を形成するための成膜処理が行われるときのアノードフィラメント電圧Vafとアノードフィラメント電流Iafとの関係を確認する実験を行った。その結果を、図9に示す。なお、図8において、●印が付された太実線は、スパッタ電力Qsが0kWである場合の、つまりグロー放電が誘起されず、アーク放電のみが誘起されている状態にある場合の、アノードフィラメント電圧Vafとアノードフィラメント電流Iafとの関係を示す。そして、■印が付された太実線、○印が付された太実線、および、□印が付された太実線は、それぞれスパッタ電力Qsが5kW、10kWおよび15kWである場合のアノードフィラメント電圧Vafとアノードフィラメント電流Iafとの関係を示す。
また、この実験における成膜条件は、次の通りである。特に、窒素ガスの流量Qrについては、自動制御されず、一定とされた。そして、この実験は、アースシールド26の表面が窒化アルミニウム膜により十分に覆われた状態とされた上で、つまりアースシールド26が陽極として殆ど機能し得ない状態とされた上で、行われた。
アルゴンガス流量Qd 150mL/min
窒素ガス流量Qr 100mL/min
真空槽内圧力P 0.220Pa
コンダクタンスバルブ角度θ 40度
アーク放電用電力Ed 250W(50V×5A)
この実験によれば、図9に示されるように、スパッタ電力Qsが0kWである場合の、つまりアーク放電のみが誘起されている状態にある場合の、アノードフィラメント電圧Vafとアノードフィラメント電流Iafとの関係に注目すると、アノードフィラメント電圧Vafが0Vであるときのアノードフィラメント電流Iafは、約0.4Aである。これはすなわち、5Aというスパッタ電流Isのうちの0.4Aのみが、アノードフィラメント70および70に流れ、それ以外の4.6Aは、真空槽12内の壁部の適当な箇所に流れ、これによって、アーク放電が維持されることを意味する。そして、アノードフィラメント電圧Vafが増大されるに従って、アノードフィラメント電流Iaが増大し、アノードフィラメント電圧Vafが概ね15V以上となるあたりで、アノードフィラメント電流Iafが飽和する傾向にある。
これに対して、スパッタ電力Qsが5kW、10kWまたは15kWである場合は、アノードフィラメント電圧Vafが増大しても、アノードフィラメント電流Iafは大きく変化せず、単調に微増する傾向にあり、言わば概ね飽和した状態にある。なお、アノードフィラメント電圧Vafが0Vであるときのアノードフィラメント電流Iafは、10A前後であり、スパッタ電力Qsが0kWである場合の約0.4Aというアノードフィラメント電流Iafの値と比較すると、アノードフィラメント70および70に流れ込む電子の大部分は、グロー放電の電子であるものと推測される。因みに、アノードフィラメント電流Iafとグロー放電を誘起させるためのスパッタ電流Isとを比較したところ、スパッタ電流Isの30%~40%がアノードフィラメント70および70に電子電流として流れることが判明した。
また、図9に示される実験結果によれば、スパッタ電力Qsが5kW、10kWまたは15kWである場合は、アノードフィラメント電圧Vafの増大に従って、アノードフィラメント電流Iafが微増する傾向にあることから、アノードフィラメント電圧Vafが大きいほど、アノードフィラメント電流Iafが大きくなり、それぞれのアノードフィラメント70が確実に赤熱し得ることになる。しかしながら、アノードフィラメント電圧Vafが過度に大きいと、詳しくは40V以上となると、プラズマ300の空間電位が過度に高くなり、真空槽12内に放電痕(アーク痕)が発生し、不都合である。この不都合を回避するために、アノードフィラメント電圧Vafは、40V未満であるのが望ましく、適当な余裕を考慮して30V以下とされ、つまり0V~30Vの範囲内とされる。また、この範囲内であれば、とりわけアノードフィラメント電圧Vafが30Vであれば、概ね確実にアノードフィラメント70および70が赤熱する。これらのことから、アノードフィラメント電圧Vafは、確実にアノードフィラメント70および70が赤熱するのに最小限必要な値とされる。
さらに加えて、窒化アルミニウム膜を形成するための成膜処理が行われているときに、時間の経過に対して、換言すればアースシールド26の状態に応じて、基板バイアス電力Ebの電流成分である基板電流Ibが、つまり被処理物100に流れる電流である当該基板電流Ibが、どのように遷移するのかを確認する実験を行った。併せて、本実施例の比較対象として、アノードフィラメント70および70を取り外すことで、疑似的に従来技術を構成し、この疑似的な従来技術についても、基板電流Ibがどのように遷移するのかの実験を行った。これらの結果を、詳しくは基板電流Ibを時系列で記録したログデータの一例、図10に示す。
なお、図10(a)が、疑似的な従来技術についての実験結果を示し、図10(b)が、本実施例についての実験結果を示す。これら図10(a)および図10(b)のそれぞれにおいては、基板バイアス電圧Vb(平均値)のログデータについても、参考用として示してある。また、図10(a)および図10(b)のそれぞれにおける横軸は、時間を表し、当該横軸の1目盛は、約80分間に相当する。そして、横軸における時点t0は、成膜処理が開始された時点を示す。
この実験における成膜条件は、次の通りである。特に、本実施例についての実験においては、アノードフィラメント電圧Vafが0Vされ、つまりそれぞれのアノードフィラメント70が接地電位とされた。
アルゴンガス流量Qd 150mL/min
窒素ガス流量Qr 140~130mL/min(自動制御)
真空槽内圧力P 0.220Pa
コンダクタンスバルブ角度θ 40度
スパッタ電力Qs 15kW(395V×47.4A×0.8)
アーク放電用電力Ed 250W(50V×5A)
基板バイアス電圧Vb(平均値) -150V
成膜時間 360分
まず、図10(a)に示される従来技術についての実験結果に注目すると、当該従来技術についての実験においては、成膜処理が開始された時点t0から10分間が経過するまでの間は、基板バイアス電圧Vbが0Vとされ、つまり基板バイアス電力Ebが非供給とされる。そして、時点t0から10分間が経過した時点で、基板バイアス電圧Vbが-50Vとされ、この状態が5分間にわたって継続される。さらに、時点t0から15分間が経過した時点で、基板バイアス電圧Vbが-100Vとされ、この状態が5分間にわたって継続される。そして、時点t0から20分が経過した時点で、基板バイアス電圧Vbがその所期値である-150Vとされ、成膜処理が終了するまでこの状態が継続される。このように、成膜処理の開始直後の初期の期間において、基板バイアス電圧Vbの絶対値が段階的に増大されることで、被処理物100の表面に対する窒化アルミニウム膜の密着力の向上が図られる。すなわち、基板バイアス電圧Vbの絶対値が小さいほど、軟らかい窒化アルミニウム膜が形成されるが、成膜処理の開始直後の初期の期間において、当該基板バイアス電圧Vbの絶対値が段階的に増大されることで、段階的に硬い窒化アルミニウム膜が形成され、その結果、被処理物100の表面に対する窒化アルミニウム膜全体としての密着力の向上が図られる。
基板バイアス電圧Vbがその所期値である-150Vとされる期間は、トップコート処理期間と呼ばれ、このトップコート処理期間において、つまり成膜処理が開始された時点t0から20分間が経過した時点以降の期間において、基板電流Ibは、徐々に増加し、トップコート処理期間における最初の約50分間という時間が経過した時点以降で概ね飽和する。この基板電流Ibは、或る範囲で変動(増減)するが、これは、被処理物100が自公転することによる。すなわち前述したように、被処理物100は、自公転する過程でプラズマ300に晒される状態にあるときに、成膜処理を施されるので、当該成膜処理を施される対象となる被処理物100の数(表面積)が時間の経過とともに変化する。このため、被処理物100に流れる基板電流Ibは、時間の経過とともに変化し、つまり或る範囲で変動する。そして、この基板電流Ibの変動幅は、プラズマ300が不安定であるほど大きく、従来技術についての実験においては、約2Aという大きい値となることが確認された。また、この状態にあるときの真空槽12内を観察すると、プラズマ300が不安定であり、所々でプラズモイドが発生するとともに、当該プラズモイドが発生および消滅を繰り返すことが確認された。
これに対して、図10(b)に示される本実施例についての実験結果に注目すると、本実施例についての実験においても、従来技術についての実験と同様に、成膜処理の開始直後の初期の期間において、基板バイアス電圧Vbの絶対値が段階的に増大される。その一方で、本実施例についての実験結果によれば、従来技術についての実験結果とは異なり、トップコート処理期間において、基板電流Ibは、安定しており、その変動幅は、約0.8Aである。すなわち、本実施例によれば、従来技術に比べて、基板電流Ibの変動幅が40%程度に抑制されていることが確認された。また、この状態にあるときの真空槽12内を観察すると、プラズモイドの発生が認められず、プラズマ300が安定していることが確認された。
さらに、本実施例において、実際に窒化アルミニウム膜を形成して、その内部応力およびヌープ硬度を確認する実験を行った。併せて、先述の疑似的な従来技術においても、実際に窒化アルミニウム膜を形成して、その内部応力およびヌープ硬度を確認した。その結果を、図11に示す。
なお、図11(a)が、内部応力についての実験結果を示し、図11(b)が、ヌープ硬度についての実験結果を示す。いずれにおいても、■印が付された太実線が、本実施例による実験結果を示し、●印が付された太実線が、従来技術による実験結果を示す。また、図示は省略するが、この実験においては、直径が140mm、長さ寸法が600mmの概略円柱状の基板台をホルダ40に装着するともに、当該基板台の長さ方向におけるホルダ40から60mm、180mm、300mm、420mmおよび540mmという距離を置いた5つの位置に実験用の試料を取り付けて、これらの試料に形成された窒化アルミニウム膜の内部応力およびヌープ硬度を測定した。内部応力測定用の試料としては、一辺が20mm、厚さ寸法が630μmのシリコン(Si)を用い、ヌープ硬度測定用の試料としては、長手方向の寸法が25mm、短手方向の寸法が15mm、厚さ寸法が5mmの鏡面加工された高速度鋼材(SKH4)を用いた。
図11(a)に示される内部応力についての実験結果に注目すると、従来技術により形成された窒化アルミニウム膜の内部応力に関しては、その最大値と最小値との相互差が約4.24GPaであり、つまり当該約4.24Gpaという大きなバラツキがある。このような内部応力のバラツキが大きい窒化アルミニウム膜は、実用不可能である。これに対して、本実施例により形成された窒化アルミニウム膜の内部応力に関しては、その最大値と最小値との相互差が約0.015GPaであり、つまり当該約0.015Gpaという極めて小さいバラツキに抑えられる。すなわち、本実施例により形成された窒化アルミニウム膜によれば、従来技術により形成された窒化アルミニウム膜に比べて、内部応力のバラツキが0.4%以下に抑えられる。このような内部応力のバラツキが極めて小さい窒化アルミニウム膜は、実用に十分に応えられる。
また、図11(b)に示されるヌープ硬度についての実験結果に注目すると、従来技術により形成された窒化アルミニウム膜のヌープ硬度に関しては、その最大値と最小値との相互差が約670HKであり、つまり当該約670HKという大きなバラツキがある。このようなヌープ硬度のバラツキが大きい窒化アルミニウム膜は、実用不可能である。これに対して、本実施例により形成された窒化アルミニウム膜のヌープ硬度に関しては、その最大値と最小値との相互差が約70HKであり、つまり当該約70HKという極めて小さいバラツキに抑えられる。すなわち、本実施例により形成された窒化アルミニウム膜によれば、従来技術により形成された窒化アルミニウム膜に比べて、ヌープ硬度のバラツキが10%以下に抑えられる。このようなヌープ硬度のバラツキが極めて小さい窒化アルミニウム膜は、実用に十分に応えられる。なお、従来技術により形成された窒化アルミニウム膜のヌープ硬度に比べて、本実施例により形成されたヌープ硬度の方が、全体的に低いが、本実施例により形成されたヌープ硬度は、概ね2000HKであり、この2000HKというヌープ硬度であれば、実用に十分に応えられる。
すなわち、本実施例によれば、内部応力およびヌープ硬度のいずれについてもバラツキが小さい均質な窒化アルミニウム膜を形成することができる。なお、図示を含む詳しい説明は省略するが、本実施例においても、疑似的な従来技術においても、窒化アルミニウム膜の膜厚に関しては、そのバラツキが十分に抑えられることが、つまり均等な膜厚の窒化アルミニウム膜が形成されることが、確認された。
以上のように、本実施例によれば、窒化アルミニウム膜などの絶縁性被膜を形成するための成膜処理を安定的に行うことができ、ひいては均質な絶縁性被膜を形成することができる。このことは特に、表面積の大きい被処理物100を成膜対象とする用途において、極めて有益である。
また、本実施例によれば、スパッタ速度の安定化が図られ、これにより、窒化アルミニウム膜などの絶縁性被膜を含む反応膜の再現性が向上し、とりわけ可視光透過性および膜厚の再現性が向上する。このことは、可視光透過性および膜厚の再現性が要求される用途において、極めて有益である。
なお、本実施例は、本発明の一具体例であり、本発明の技術的範囲を限定するものではない。本実施例以外の局面にも、本発明を適用することができる。
たとえば、図12に示されるように、複数の、ここでは4つの、マグネトロンスパッタカソード24,24,…が設けられてもよく、厳密には当該マグネトロンスパッタカソード24を含むユニット400が複数、つまり4つ、設けられてもよい。具体的には、それぞれのユニット400は、マグネトロンスパッタカソード24、アースシールド26、カソードフィラメント30ならびに2本のアノードフィラメント70および70を含む。また、図12には示されないが、それぞれのユニット400は、スパッタ電源装置28、加熱用電源装置32、アーク放電用電源装置34、電流検出器36、加熱制御器38、リアクトル72およびアノードフィラメント用電源装置74を含む。すなわち、それぞれのユニット400は、言わばプラズマ300の発生源であり、このプラズマ300の発生源であるユニット400が複数、つまり4つ、設けられてもよい。これら各ユニット400,400,…は、真空槽12の中心軸Xaを中心とする円の円周方向に沿って等間隔に設けられ、つまりここでは90度間隔で設けられる。併せて、各ユニット400,400,…は、真空槽12の中心軸Xaから同じ距離を置いて設けられる。
この図12に示される構成によれば、反応膜の成膜速度の向上(高速化)が図られる。そして、この図12に示される構成においても、真空槽12内の圧力Pが一定となるように、窒素ガスの流量Qrが自動制御されることで、反応膜の再現性の向上が図られる。また、当該自動制御を担う要素、つまり圧力計62、ガス流量制御器64および反応性ガス導入用のマスフローコントローラ60bについては、複数設けられる必要はなく、各ユニット400,400,…に共通の1つのみで足りる。
なお、ユニット400の数は、4つに限らない。いずれにしても、各ユニット400,400,…は、真空槽12の中心軸Xaを中心とする円の円周方向に沿って等間隔に設けられるとともに、当該真空槽12の中心軸Xaから同じ距離を置いて設けられることが、肝要である。
また、図10(a)および図10(b)に示される実験結果は、いずれも実際には、2つのユニット400および400が設けられた構成のものである。したがって、図10(a)および図10(b)に示される実験結果が得られたときのスパッタ電力Qsの合計は、2つのユニット400および400分の30kW(=15kW×2)であり、アーク放電用電力Edの合計もまた、2つのユニット400および400分の500W(=250W×2)である。
そして、本実施例においては、絶縁性被膜として窒化アルミニウム膜を形成する場合について、説明したが、当該窒化アルミニウム膜以外の窒化膜や炭化膜、酸化膜などの種々の絶縁性被膜を形成する場合にも、本発明を適当することができる。ここで言う種々の絶縁性被膜としては、反応膜としては、窒化珪素(SiN)膜、炭化珪素(SiC)膜、酸化珪素(SiO)膜、酸化アルミニウム(Al)膜、酸化イットリウム(Y)膜、酸化ジルコニウム(Z)膜などがある。この場合、反応膜の種類に応じた素材製のターゲット242が用いられる。
加えて、本実施例においては、リアクトル72が設けられたが、スパッタ電力Esに起因するノイズの影響が小さい場合には、当該リアクトル72は設けられなくてもよい。また、アノードフィラメント70および70が接地電位で足りる場合は、アノードフィラメント用電源装置74は設けられなくてもよい。
さらに、本実施例では、バイアス電源装置50として、パルス電源装置が採用されたが 、これに限らない。たとえば、被処理物100が絶縁性物質である場合は、当該被処理物100の大きさや形状、物性などの性状に応じて、バイアス電源装置50として、高周波電源装置が採用されてもよい。
そして、本発明は、マグネトロンスパッタ装置10という装置への適用に限らず、マグネトロンスパッタ法による成膜方法という方法についても、適用することができる。
10 … マグネトロンスパッタ装置
12 … 真空槽
18 … 真空ポンプ
20 … 開閉バルブ
22 … コンダクタンスバルブ
24 … マグネトロンカソード
26 … アースシールド
28 … スパッタ電源装置
30 … カソードフィラメント
32 … フィラメント加熱用電源装置
34 … アーク放電用電源装置
36 … 電流検出器
38 … 加熱制御器
50 … バイアス電源装置
56 … ガス導入管
58,60 … 枝管
58a,60a … 開閉バルブ
58b,60b … マスフローコントローラ
62 … 真空計
64 … ガス流量制御器
70 … アノードフィラメント
72 … リアクトル
74 … アノードフィラメント用電源装置
100 … 被処理物
242 … ターゲット
300 … プラズマ
400 … ユニット

Claims (9)

  1. マグネトロンスパッタ法により被処理物に絶縁性被膜を形成する成膜装置であって、
    接地電位とされるとともに、内部に前記被処理物が収容される真空槽、
    前記絶縁性被膜の材料となるターゲットを有し、当該ターゲットの概略矩形平面状の被スパッタ面が前記被処理物と対向するように前記真空槽の内部に設けられるマグネトロンスパッタカソード、
    接地電位とされるとともに、前記マグネトロンスパッタカソードの被スパッタ領域を前記被スパッタ面に限定するために当該被スパッタ面を露出させた状態で当該マグネトロンスパッタカソードの外周を囲むように設けられるアースシールド、
    前記真空槽の排気口を介して当該真空槽の内部を排気する真空ポンプを有する排気手段、
    前記真空槽の内部に不活性ガスを導入する不活性ガス導入手段、
    前記アースシールドを陽極とし、前記マグネトロンスパッタカソードを陰極として、前記不活性ガスの粒子を放電させるためのスパッタ電力を当該アースシールドと当該マグネトロンスパッタカソードとに供給するスパッタ電力供給手段、
    前記真空槽の内部に前記絶縁性被膜の材料となる反応性ガスを導入する反応性ガス導入手段、
    前記真空槽を陽極とし、前記被処理物を陰極として、前記不活性ガスの粒子と前記反応性ガスの粒子と前記被スパッタ面からスパッタされたスパッタ粒子とを当該被処理物へ向けて加速させるための所定成分が一定のバイアス電力を当該真空槽と当該被処理物とに供給するバイアス電力供給手段、
    前記被スパッタ面と前記被処理物との間において当該被スパッタ面の長手方向に沿って延伸するように設けられる線状のカソードフィラメント、
    前記カソードフィラメントを加熱して当該カソードフィラメントから熱電子を放出させるための加熱用電力を当該カソードフィラメントに供給する加熱用電力供給手段、
    前記アースシールドを陽極とし、前記カソードフィラメントを陰極として、前記熱電子を当該アースシールドへ向けて加速させるためのアーク放電用電力を当該アースシールドと当該カソードフィラメントとに供給するアーク放電用電力供給手段、
    前記アーク放電用電力の電圧成分が一定とされた状態で、当該アーク放電用電力の電流成分が一定となるように前記加熱用電力を制御する加熱用電力制御手段、および、
    前記アースシールドの近傍において前記カソードフィラメントと平行を成すように設けられるとともに、接地電位または当該接地電位に対して正電位とされ、前記不活性ガスの粒子と前記反応性ガスの粒子と前記スパッタ粒子とが放電することにより発生するプラズマ中の電子の流入を受けて赤熱する線状のアノードフィラメントを備える、成膜装置。
  2. 前記正電位の値は、0V超かつ30V以下である、請求項1に記載の成膜装置。
  3. 前記カソードフィラメントおよび前記アノードフィラメントは、互いに同じ材料により形成される、請求項1に記載の成膜装置。
  4. 前記カソードフィラメントおよび前記アノードフィラメントのそれぞれは、鉛直方向に延伸するように設けられ、
    前記アノードフィラメントの上方側端部は、固定端として支持部材に固定され、当該アノードフィラメントの下方側端部は、自由端として垂下した状態とされる、請求項1に記載の成膜装置。
  5. 2本の前記アノードフィラメントを備え、
    前記カソードフィラメントは、前記被スパッタ面の短手方向における当該被スパッタ面の中央に対応する位置に設けられ、
    前記2本のアノードフィラメントは、前記カソードフィラメントの軸線を含み、かつ、前記被スパッタ面と直交する、仮想平面に関して互いに面対称を成すように設けられる、請求項1に記載の成膜装置。
  6. 前記アースシールドは、前記被スパッタ面と概略面一の平面部を有し、
    前記2本のアノードフィラメントのそれぞれは、前記被スパッタ面の短手方向において自身に近い側の当該被スパッタ面の端縁に対応する位置または当該位置から当該被スパッタ面の外方へ15mm以下の距離を置いた位置に設けられるとともに、前記アースシールドの前記平面部に垂直な方向において当該平面部から当該被スパッタ面が向けられた方向へ5mm以上かつ30mm以下の距離を置いた位置に設けられる、請求項5に記載の成膜装置。
  7. 前記排気手段は、前記排気口における実効排気速度を制御するコンダクタンスバルブをさらに有し、
    前記真空槽の内部に導入される前記不活性ガスの流量が一定とされるとともに、前記スパッタ電力が一定とされ、併せて、前記コンダクタンスバルブにより前記実効排気速度が一定とされた状態で、前記真空槽の内部の圧力が一定となるように、当該真空槽の内部に導入される前記反応性ガスの流量を制御する反応性ガス流量制御手段をさらに備える、請求項1に記載の成膜装置。
  8. 前記マグネトロンスパッタカソード、前記アースシールド、前記スパッタ電力供給手段、前記カソードフィラメント、前記加熱用電力供給手段、前記アーク放電用電力供給手段、加熱用電力制御手段および前記アノードフィラメントを有するユニットを複数備える、請求項1に記載の成膜装置。
  9. マグネトロンスパッタ法により被処理物に絶縁性被膜を形成する成膜方法であって、
    接地電位とされるとともに、前記絶縁性被膜の材料となるターゲットを有するマグネトロンスパッタカソードが設けられた、真空槽の内部に、前記被処理物を当該ターゲットの概略矩形平面状の被スパッタ面と対向するように設置する被処理物設置ステップ、
    前記真空槽の排気口を介して当該真空槽の内部を真空ポンプにより排気する排気ステップ、
    前記真空槽の内部に不活性ガスを導入する不活性ガス導入ステップ、
    接地電位とされるとともに、前記マグネトロンスパッタカソードの被スパッタ領域を前記被スパッタ面に限定するために当該被スパッタ面を露出させた状態で当該マグネトロンスパッタカソードの外周を囲むように設けられた、アースシールドを陽極とし、前記マグネトロンスパッタカソードを陰極として、前記不活性ガスの粒子を放電させるためのスパッタ電力を当該アースシールドと当該マグネトロンスパッタカソードとに供給するスパッタ電力供給ステップ、
    前記真空槽の内部に前記絶縁性被膜の材料となる反応性ガスを導入する反応性ガス導入ステップ、
    前記真空槽を陽極とし、前記被処理物を陰極として、前記不活性ガスの粒子と前記反応性ガスの粒子と前記被スパッタ面からスパッタされたスパッタ粒子とを当該被処理物へ向けて加速させるための所定成分が一定のバイアス電力を当該真空槽と当該被処理物とに供給するバイアス電力供給ステップ、
    前記被スパッタ面と前記被処理物との間において当該被スパッタ面の長手方向に沿って延伸するように設けられた線状のカソードフィラメントを加熱して当該カソードフィラメントから熱電子を放出させるための加熱用電力を当該カソードフィラメントに供給する加熱用電力供給ステップ、
    前記アースシールドを陽極とし、前記カソードフィラメントを陰極として、前記熱電子を当該アースシールドへ向けて加速させるためのアーク放電用電力を当該アースシールドと当該カソードフィラメントとに供給するアーク放電用電力供給ステップ、
    前記アーク放電用電力の電圧成分が一定とされた状態で、当該アーク放電用電力の電流成分が一定となるように前記加熱用電力を制御する加熱用電力制御ステップ、および、
    前記アースシールドの近傍において前記カソードフィラメントと平行を成すように設けられるとともに、接地電位または当該接地電位に対して正電位とされた、線状のアノードフィラメントに、前記不活性ガスの粒子と前記反応性ガスの粒子と前記スパッタ粒子とが放電することにより発生するプラズマ中の電子を流入させることで、当該アノードフィラメントを赤熱させるアノード維持ステップを含む、成膜方法。
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