JPH0860360A - 光学薄膜の製造方法およびその製造装置 - Google Patents

光学薄膜の製造方法およびその製造装置

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JPH0860360A
JPH0860360A JP6190623A JP19062394A JPH0860360A JP H0860360 A JPH0860360 A JP H0860360A JP 6190623 A JP6190623 A JP 6190623A JP 19062394 A JP19062394 A JP 19062394A JP H0860360 A JPH0860360 A JP H0860360A
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plasma
crucible
thin film
bias voltage
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JP6190623A
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Makiko Ooyamaguchi
まき子 大山口
Koichi Sasagawa
孝市 笹川
Kanemi Onizuka
兼美 鬼塚
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Original Assignee
Nikon Corp
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 基板の選択に制限されるようなことが無く、
所望の耐環境性、耐久性を有し、かつ膜損失量の少ない
光学薄膜を効率良く製造(成膜)することを目的とす
る。 【構成】 所定の圧力に設定された第1の真空空間中に
アーク放電によりプラズマを生成し、プラズマを第1の
真空空間よりも低い圧力に設定された第2の真空空間に
設置された蒸着物質に照射することにより第2の真空空
間中で基板に成膜を行うアーク放電型イオンプレーティ
ングによる光学薄膜の製造方法において、第2の真空空
間中に設置された蒸発物質の載置手段と前記基板との間
にバイアス電圧を印加し、蒸着対象物近傍の空間は前記
載置に対し負の電位を有し、前記バイアス電圧をEとす
るとき、0<|E|≦250(V)に設定した。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、アーク放電型イオンプ
レーティング装置で製造する光学薄膜の製造方法および
製造装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、反射防止膜や反射増加膜という光
学薄膜を製造(成膜)する際は、真空蒸着によって薄膜
を形成させ、製造していた。この真空蒸着とは、真空内
で蒸着源を加熱して蒸発した分子を基板上に吸着(堆
積)させることで成膜を行うものである。
【0003】近年、より高品質な(耐久性や光学特性が
良い等)光学薄膜を成膜するために、プラズマ雰囲気中
で蒸着による成膜を行うイオンプレーティング法が開発
されている。このイオンプレーティング法では、蒸発源
から蒸発した物質をプラズマ状態にしてその一部の原子
をイオン化するとともに、電界を与えてこのイオンを基
板に衝突させることで基板上に成膜を行うものである。
イオンプレーティング法は、プラズマの生成方法と蒸発
源の仕組みにより、更にいくつかの方法に分けることが
できる。
【0004】例えば、(イ)真空容器内に高周波励起電
圧を印加してグロー放電を起すことにより成膜が行われ
る空間(プラズマ雰囲気)を形成し、膜の基板に対する
密着性や、蒸着膜そのものの密度を向上させる高周波型
イオンプレーティング法。 (ロ)真空容器内にホローカソードを導入してアーク放
電を起こすホローカソード型イオンプレーティング法。
【0005】(ハ)プラズマ領域と成膜領域の間に電子
ビーム加速領域を設けた電子ビーム励起イオン源と蒸発
源を溶融するための電子ビームとを併用したイオンプレ
ーティング法(特開平5−295527号記載の技術) (ニ)低圧アーク放電でプラズマ雰囲気を形成し、電子
ビームで蒸発源を溶融蒸発したイオンプレーティング方
法(特開昭61−201769号記載の技術)。
【0006】(ホ)プラズマ生成装置の陰極を、LaB
6(六ホウ化ランタン)からなる主陰極とこのLaB6
り熱容量の小さい物質からなる補助陰極とで構成した複
合型陰極を用いて、プラズマ雰囲気を発生させる生成装
置により、プラズマを生成する方法(以下、アーク放電
型プラズマ生成法という)(特公平2−50577号記
載の技術)が提案されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の
方法では、所望の耐環境性(耐熱性、耐湿性)、耐久性
かつ膜損失量の低い薄膜が得られ難く、また、殊にイオ
ンプレーティング法での薄膜形成においては、真空蒸着
法に比べて低真空度中で薄膜形成が行われるため、薄膜
の膜密度が低くなるという問題があった。
【0008】また、この問題を解決しようとするため、
従来は基板を加熱することによって、薄膜と基板との密
着性を向上させ、薄膜の膜密度を低下させる要因となる
水蒸気等が薄膜に吸収されないようにし、所望の耐環境
性、耐久性、膜損失量の低い光学薄膜を得ようとした。
しかし、この方法では、基板を加熱するために耐熱性に
優れた材料の基板を選択しなければならなかった。ま
た、この方法でも十分な耐環境性、耐久性、膜損失量が
低い光学薄膜が得られなかった。
【0009】よって、本発明は、このような問題を鑑み
てなされたもので、基板を加熱しないことで基板の選択
に制限されるようなことが無く、所望の耐環境性、耐久
性を有し、かつ膜損失量の少ない光学薄膜を効率良く製
造(成膜)することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めに、所定の圧力に設定された第1の真空空間中にアー
ク放電によりプラズマを生成し、該プラズマを前記第1
の真空空間よりも低い圧力に設定された第2の真空空間
に設置された蒸着物質に照射することにより該第2の真
空空間中で基板に成膜を行うアーク放電型イオンプレー
ティングによる光学薄膜の製造方法において、前記第2
の真空空間中に設置された前記蒸発物質の載置手段と前
記基板との間にバイアス電圧を印加し、前記蒸着対象物
近傍の空間は前記載置に対し負の電位を有し、前記バイ
アス電圧をEとするとき、0<|E|≦250(V)に
設定した(請求項1の発明)。
【0011】また、上記目的を達成するための製造装置
として、プラズマを生成するプラズマ生成手段と、基板
を支持する基板支持手段と、蒸発物を支持する複数の凹
部を有する蒸発物るつぼと、該るつぼの所定の凹部にの
み前記プラズマが照射されるように該るつぼ上部に設置
された遮蔽手段と、前記基板支持手段と蒸発物るつぼを
所定の真空空間に包含するための真空容器と、該真空容
器内を所定の真空度に設定するための排気手段および前
記蒸発物るつぼの近傍に配置された磁界発生手段と、前
記蒸発物の近傍に反応ガスを放出する反応ガス放出手段
とを有するイオンプレーティング装置で、さらに、前記
蒸発物るつぼと前記基板との間にバイアス電圧を印加
し、該バイアス電圧をEとすると0<|E|≦250
(V)を満足し、かつ、前記基板が前記蒸発物るつぼに
対して負の電位を有するよう配向した電圧印加手段とで
構成した。
【0012】
【作用】本発明者らの研究によると、所定の圧力に設定
された第1の真空空間中でアーク放電によりプラズマを
生成し、このプラズマを前記第1の真空空間よりも低い
圧力に設定された第2の真空空間に導入する圧力勾配型
プラズマ生成手段を用いたアーク放電型イオンプレーテ
ィングによって光学薄膜を製造する際に、前記第2の真
空空間中に設置された蒸発物質を載置する載置手段と基
板との間にバイアス電圧Eを0<|E|≦250(V)
の範囲内で、かつ基板に負の電位を印加すると、基板を
加熱しなくとも良好な光学薄膜が製造できることを見い
だした。
【0013】この方法は、酸化チタン、酸化珪素の光学
薄膜、または酸化チタンと酸化珪素の多層膜について用
いる場合に特に効果を奏する。だが、本発明は、これら
の物質にだけ限定されるものではない。ちなみに、酸化
チタンと酸化珪素で形成した光学薄膜を例に挙げて、こ
の発明によって作用を説明する。
【0014】第1の真空空間内において生成されたプラ
ズマが第2の真空空間に導入されることにより、蒸発物
質として載置されたチタンや珪素が蒸発し、チタンイオ
ン(Ti4+やTi3+など)や珪素イオン(Si4+など)
に変化する。また、このときに、第2の真空空間にO2
等の反応ガスを導入する。蒸発したチタンや珪素は、蒸
発物を載置した載置手段と蒸着基板との間に印加された
バイアスによる電界により加速され、一部のイオンは反
応ガスと反応しながら、基板に衝突する。この時、高エ
ネルギーを有しているチタンイオンや珪素イオンは基板
上で既に堆積している酸化珪素もしくは酸化チタンに影
響を与える。バイアス電圧を印加せずに低温で成膜され
た薄膜は、非晶質になり易いが、本発明では、この高エ
ネルギーイオンの衝突により、低温成膜にもかかわら
ず、酸化チタンの結晶化が進んでいたと考えられ、本方
法で成膜した光学薄膜は、実際に密度の高いものが生成
されている。
【0015】また、本発明により製造した光学薄膜の基
板との密着性についても、バイアス電圧を印加しないも
のに比べ、バイアス電圧を印加したものが密着性がよい
ものが得られた。さらに、本発明により製造した酸化チ
タンと酸化珪素を交互に積層した多層膜では、バイアス
電圧の印加することにより界面の拡散が抑制されてい
た。このことは酸化チタンと酸化珪素との界面にある拡
散層において、チタンと珪素が結合したチタンシリサイ
ド(TiSi2 )か、または、組成比が異なる酸化チタ
ン(TiOx )や酸化珪素(SiOx )が生成されたた
めと考えられる。
【0016】ちなみに、バイアス電圧が上記の範囲以外
のところで行ったときは、良好な光学薄膜が得られなか
った。特にバイアス電圧を250Vより大きい電圧で印
加した場合、光学薄膜の表面が滑らかにならず、非常に
荒れた状態で成膜された。また、酸化チタンと酸化珪素
との多層膜は、酸化チタンと酸化珪素の界面が非常に荒
れたものとなった。この状態の光学薄膜については、膜
損失量の小さいものが得られなかった。
【0017】ところで、バイアス電圧を印加して製造し
た光学薄膜について、高温化において耐久試験を行った
結果、透過率または反射率のピークの波長の変化が少な
い薄膜が得られた。このように、基板を加熱しなくと
も、界面の均一性や基板との密着性が向上し、かつ光学
薄膜の膜密度が向上したため、膜損失量が少なく、耐環
境性の良い光学薄膜が製造(成膜)できたと考えられ
る。
【0018】ちなみに、本出願の膜損失量は、次の式
(1)より得た。
【0019】
【数1】 Af=1−(Tm×(1−Rm×R0)/(1−Rm−R0))・・・(1) Tm:片面コート後の透過率(実測値) Rm:片面コート後の反射率(実測値) R0:基板の反射率(実測値) この様にしてコート後の透過率、コートした面の反射
率、基板の反射率を測定し、膜損失量を計算した。
【0020】
【実施例】図1は、本発明を実施する際、薄膜製造に使
用した薄膜形成装置(アーク放電型イオンプレーティン
グ装置)の概略断面図の一例である。この薄膜形成装置
は、蒸着膜を形成するための所望の圧力に制御可能な真
空容器6内に、複数の蒸着物を別々に入れられるよう複
数の凹部の形状を有する蒸発物るつぼ19、一部分に切
り欠きを有した蒸発源カバー20、蒸発物るつぼ19を
載置し、かつ回転可能なるつぼ保持手段7、蒸発物るつ
ぼ19の真下でかつ蒸発源カバー20の切り欠きの真下
に設置されたプラズマ収束用永久磁石8、蒸発した蒸着
物が付着する基板12を支持する回転可能な基板ホルダ
18、基板12上に形成された蒸着薄膜の膜厚を測定す
る膜厚モニタ17、蒸発物るつぼ19の蒸着物から蒸発
した蒸着物が基板12に到達するのを防ぐシャッタ15
を有している。
【0021】また、真空容器6には、蒸発物るつぼ19
内の蒸着物を加熱するため、および真空容器6内にプラ
ズマ雰囲気を形成するプラズマを生成するプラズマ生成
手段(電子銃)50、プラズマ生成手段50により生成
されたプラズマ雰囲気の幅を制御する空芯コイル14、
プラズマ生成手段50と蒸発物るつぼ19間で電位を持
たしプラズマを発生させるための主放電電源5、基板1
2と蒸発物るつぼ19間で電位を持たすバイアス電源1
1、真空容器6内の気体を排気する排気口9、真空容器
6内に反応ガスを供給する反応ガス供給口10を設けて
いる。
【0022】排気口9の排気先には、トラップを備えた
油拡散ポンプと油回転ポンプ、補助ポンプ、粗引きバル
ブ(図示せず)およびメインバルブ16等の排気手段を
備えている。本実施例での真空容器6は、ステンレス製
(SUS304)でできている。蒸発物るつぼ19は、
導電物質でできている。この蒸発物るつぼ19は、主放
電電源5によりプラズマ生成手段50に対して高い電位
を有しており、プラズマ生成手段50の陽極を兼ねてい
る。プラズマ生成手段50で生成したプラズマが蒸発る
つぼ19に到達して、そのプラズマのエネルギーによっ
て蒸着物を溶融する。この蒸発物るつぼ19は、2つの
凹部19a、19bを有し、2種類の物質を混入せず別
々の入れられるようになっている。また、蒸発物るつぼ
19と基板12とは、バイアス電源11によりバイアス
電圧が印加されており、蒸発物るつぼ19は、基板12
に対して正の電位を持っている。
【0023】るつぼ保持手段7は、蒸発物るつぼ19と
機械的に一体になっている。るつぼ保持手段7は、モー
タ等の回転駆動手段(図示せず)により回転する。るつ
ぼ保持手段7が回転することにより蒸発物るつぼ19も
一緒に回転する。このるつぼ保持手段7はテフロン等の
絶縁物でできている。このるつぼ保持手段7の内部構造
は、蒸発物るつぼ19と主放電電源5およびバイアス電
源11とが導通するよう導線等によってに電気的に導通
させている。しかし、電気的に導通していても、プラズ
マ生成手段50から発生するプラズマに対し、影響を与
えない構造をとっている。また、るつぼ保持手段7は水
冷機構を有しており、これによってるつぼ保持手段7を
冷却している(図示せず)。
【0024】プラズマ生成手段50は、「真空第25号
第10巻」に記載されているような、複合陰極を用いた
圧力勾配型プラズマ生成装置を使用した。このプラズマ
生成手段50は主に、ガス導入口1と、一端に配置され
た陰極部2、環状の永久磁石を内蔵した第1の中間電極
3、第2の空芯コイルを内蔵した第2の中間電極4等で
構成されている。この陰極部2と陰極部2に対し陽極の
特性を持つ蒸発物るつぼ7との間に中間電極3、4を配
置することで、空間的にプラズマ生成手段50の空間を
陰極側、真空容器6内の空間を陽極側とに分けると共
に、陰極側の圧力を陽極側よりも高い圧力に維持した状
態でプラズマを生成するようにしている。このプラズマ
生成手段50によるプラズマの発生の機構は次の通りで
ある。ガス導入口1よりガス(本実施例では、Arガス
を使用している。)をプラズマ生成手段50に導入し、
それによりプラズマ生成室51の圧力は1Torr程度
となる。一方、このプラズマ生成手段50に対する陽極
である蒸発物るつぼ19とるつぼ保持手段7の近傍は、
排気口9にある排気手段により10-1〜10-4Torr
程度の希望する圧力に設定する。このように陰極側の圧
力を陽極側の圧力より高い圧力にする。この状態で、主
放電電源5によって直流電圧を印加する。プラズマ生成
手段50と蒸発るつぼ19との間に放電が起こる。この
放電によって電子を含むプラズマがプラズマ生成室51
で生成され、中間電極3、中間電極4およびプラズマ生
成手段50に対して陽極である蒸発物るつぼ19により
真空容器6内にそのプラズマが引き出される。そして、
プラズマ収束用永久磁石8によって、プラズマが収束さ
れ蒸発物るつぼ19に到達し、真空容器6内に図1の点
線のようにプラズマ雰囲気13が形成される。
【0025】この様に、成膜が行われる真空容器6内を
高真空(低圧力)に保ちながら、プラズマを生成する箇
所は低真空(高圧力)にできるため、プラズマ生成のた
めに安定な放電を行うことができる。また、真空容器6
とプラズマ生成室51との圧力差により、陰極部2に対
するイオンの逆流が無いため、イオンの衝突による陰極
の損傷を防止できる。また、このプラズマ生成手段50
の特徴としては他に、陰極からの熱電子放出が低下し難
い、陰極の寿命が長い、大電流放電が可能などの利点を
有する。さらに、真空容器6内に反応ガスを導入しても
このガスがプラズマ生成室51に入り込む恐れがないと
いう特徴がある。
【0026】膜厚モニタ17は、水晶振動子からなって
おり、常時、成膜レートや膜厚を監視できる。真空容器
6には、容器6内を所望の圧力に設定するための排気手
段を有する排気口9と、反応ガス供給口10とが設けら
れている。この反応ガス供給口10には、反応ガスを容
器6内に導入するための反応ガス供給手段(図示せず)
が接続されている。
【0027】次に、この薄膜形成装置(アーク放電型イ
オンプレーティング装置)を用いて酸化チタン(TiO
2)と酸化珪素(SiO2)の多層膜を製造(成膜)する
過程について説明する。まず、基板12として光学研磨
した所望の円形の石英ガラスを用意し、この基板12を
基板ホルダ18に取り付ける。そして、蒸発物るつぼ1
9の一つの凹部19aにチタン(Ti)を、他のシリコ
ン(Si)を載置する。その後、メインバルブ16の開
度を調整しながら排気口9にある排気手段によって、真
空容器6内の圧力が1×10-6Torrになるように設
定する。そして、るつぼ保持手段7の回転駆動手段であ
るモータを駆動して、チタンが載置された蒸発るつぼ1
9の凹部19aが蒸発源カバー20の切り欠きの下部に
位置するように所定量回転させる。
【0028】その後、プラズマ生成手段50において
は、ガス導入口1からの放電ガスであるArガスを導入
する。その結果、プラズマ生成室51の圧力(ガス圧)
は約1Torr程度に維持される。また、排気口9にあ
る排気手段により、真空容器6内の蒸発るつぼ19の近
傍領域の圧力が約2×10-3Torrとなるように設定
する。その後に、主放電電源5によりプラズマ生成室5
1とるつぼ保持手段7との間に約600Vの直流電圧を
印加する。この時、プラズマ生成手段50のプラズマ生
成室51付近でアーク放電が生じ、このアーク放電によ
り放電ガスがプラズマ化される。
【0029】生成されたプラズマは、第1の中間電極3
および第2の中間電極4によりプラズマ生成室51から
真空容器6内に引き出される。このプラズマは、これら
中間電極3、4や空芯コイル14によって円柱状に収束
され、プラズマ雰囲気13として真空容器6内に導かれ
る。真空容器6内に導かれたプラズマ雰囲気13は、る
つぼ保持手段7近傍に設置されたプラズマ収束用磁石8
の磁場によって進路を変えられ、蒸発源カバー20の切
り欠きを通り抜けて、蒸発物るつぼ19の一つの凹部1
9aに達する。そして、この凹部19aに載置された蒸
着物(チタン)を溶融・蒸発させる。
【0030】本実施例では、蒸発源カバー20の切り欠
きと蒸発物るつぼ19のほぼ真下にプラズマ集束用磁石
8が位置しているので、プラズマ生成手段50により生
成されたプラズマは、蒸発源カバー20の切り欠きの真
下にある蒸着物に集中して照射される。よって、例え蒸
発物るつぼ19に2種類以上の物質が載置されていても
蒸発源カバー20の切り欠きの真下にある蒸着物のみを
選択的に蒸発することが出来る。
【0031】蒸発物るつぼ19の蒸着物が蒸発した時
は、真空容器6内の圧力が5×10-4Torrとなるよ
うに排気口9の排気手段やメインバルブ16の開口度を
制御しておく。一方、反応ガス供給手段によって、反応
ガス供給口10から酸素ガス(O2 )を所望の流量(本
実施例では、85cc/min)で容器6内に導入す
る。
【0032】なお、この時、反応ガスの導入後も容器6
内の圧力が5×10-4Torrに維持されるようにメイ
ンバルブ16の開口度や排気手段を調整しておく。蒸発
した物質(チタン)および反応ガス(酸素ガス)はプラ
ズマ雰囲気13中を通ることによりイオン化される。そ
の後、シャッタ15を開き、バイアス電源11により蒸
発物るつぼ19と基板12との間に直流の電圧(バイア
ス)を印加する。この時、基板12は負の電位を印加す
る。このときのバイアス電圧は0〜250V(0Vは含
まない)までの範囲内でバイアス電圧を印加する。イオ
ン化された蒸発した蒸着物および反応ガスは、負の電位
に保たれた基板12上に到達する。その結果、この基板
12表面には薄膜状の酸化チタン(TiO2)が形成さ
れる。
【0033】なお、薄膜の形成中は、膜厚モニタ17に
よって薄膜の膜厚と成膜レート(蒸発速度)を測定でき
るので、所定の膜厚となったら、シャッター15を閉じ
て成膜を止める。この様にして多層膜の一層分が基板1
2上に形成される。この酸化チタンからなる層が十分に
形成できたら、次に、酸化ケイ素(SiO 2 )の層を形
成する作業を行う。
【0034】まず、シャッタ15を閉じると共に、るつ
ぼ保持手段7の回転駆動手段であるモータを駆動して、
シリコン(Si)が載置された凹部19bを蒸発源カバ
ー20の切り欠きの下部に位置するように所定量回転さ
せる。その後の工程は、酸化チタンを成膜した時と同じ
工程を行う。以上のようにして、蒸発物るつぼ19に載
置したチタンとシリコンを交互に溶融・蒸発させて、基
板12上に酸化チタンからなる層と酸化珪素からなる層
の多層膜を作製することができる。
【0035】次に本実施例の薄膜形成装置(アーク放電
型イオンプレーティング装置)を用いて前記製造方法に
より作製した多層膜についての実施例を示す。この多層
膜は、酸化チタンと酸化珪素の薄膜を交互に12層づつ
積層し製造(成膜)させたものである。各層の膜厚は、
使用する光の波長をλとした時、λ/4となるように設
定した。この多層膜の成膜条件を以下に示す。
【0036】 真空容器内の到達圧力(真空度) :1×10-6Torr 成膜時の真空容器内の圧力(真空度):5×10-4Torr 反応ガス(O2 )流量 :85cc/min 蒸着源 :チタン(Ti)、シリコン(Si) 成膜速度 :0.2〜0.3nm/sec 基板温度 :120℃以下 バイアス値 :75V また、比較例として、同じ装置で、且つバイアス値以外
は同じ条件で製造した酸化チタンと酸化珪素の多層膜を
挙げた。比較例では、バイアス電圧を印加せずに酸化チ
タンと酸化珪素の多層膜を製造したバイアスを印加した
製造した多層膜とバイアスを印加しないで製造した多層
膜それぞれについて、光を照射し、その時の透過率と反
射率を分光光度計を用いて測定した。測定光は、波長4
00〜750nmである。そして、透過率と反射率の値
より膜損失量を前述の(1)の式より計算し、その結果
を図2に記した。バイアスを印加して製造した多層膜に
ついては、黒丸(●)で示し、バイアスを印加しないで
製造した多層膜については、白丸(○)で示した。図2
については、横軸は光の波長を、縦軸は各波長における
膜損失量を示している。
【0037】図2で示しているように、バイアス電圧を
印加して製造した多層膜の方が格段に膜損失量が少ない
ことが分かる。400nm〜750nmの波長域では、
バイアス電圧を印加していない状態で製造した多層膜の
膜損失量は、だいたい4%より大きい値を示している。
また、バイアス電圧を印加して製造した多層膜は、1%
未満の値を示す。
【0038】この時の、バイアス電圧を印加して製造し
た酸化チタンと酸化珪素の光学薄膜の酸化チタンと酸化
珪素の界面は、酸化チタンと酸化珪素の拡散層が10n
m以下であった。ちなみに、バイアス電圧を印加せずに
製造した酸化チタンと酸化珪素の光学薄膜は、20nm
〜30nmの拡散層が存在していた。要するに、本実施
例で挙げた薄膜製造装置で、250V以下にバイアス電
圧を印加して且つ本実施例で挙げた蒸着条件で行うと、
酸化チタンと酸化珪素の多層膜の界面の拡散層は、小さ
いものができ、膜損失量の小さいものができた。
【0039】また、基板と蒸着した薄膜の密着性につい
ても、バイアス電圧を印加せずに製造した光学薄膜に比
べて、バイアス電圧を印加した光学薄膜は、基板との密
着性が良いものが得られた。次に、バイアスを掛けて製
造した多層膜とバイアスを掛けないで製造した多層膜と
で、耐熱試験(300℃高温槽中に24時間放置:室温
にて1時間放置後に分光光度計で測定)前後での反射率
がピークである波長の変化を調べた。その結果、バイア
スを掛けて製造した多層膜の反射率の波長の変化量は1
nm以下であるのに対し、バイアスを掛けないで製造し
た多層膜の反射率の波長の変化量は、4〜5nmであっ
た。ちなみに、EB蒸着で蒸着した場合は、耐熱試験後
の反射率の波長の変化量は、3〜5nmである。この様
にバイアスを掛けて製造した多層膜は、耐環境性に対し
ても優れた性質を持っていることがわかる。
【0040】
【発明の効果】以上のように、本発明によれば、膜損失
量はほとんど無く、耐久性、耐環境性に優れた光学薄膜
を得ることができ、成膜時に基板を加熱する必要がない
ため、熱に弱い材料からなる基板上にも光学薄膜を形成
することができる。さらに、基板加熱するための装置が
不要となるため成膜に用いる薄膜形成装置の構成が簡単
になるという利点も有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】は、本発明にかかる一実施例である薄膜形成装
置(アーク放電型イオンプレーティング装置)の概略断
面図である。
【図2】は、バイアス電圧をを印加して生成した場合と
バイアス電圧を印加せずに生成した場合により得られた
酸化チタンと酸化珪素の多層膜について、各波長毎に膜
損失量を計測した結果について示した図である。
【符号の説明】
1 ガス導入口 2 陰極部 3 第1の中間電極 4 第2の中間電極 5 主放電電源 6 真空容器 7 るつぼ保持手段 8 プラズマ収束用永久磁石 9 排気口 10 反応ガス供給口 11 バイアス電源 12 基板 14 空芯コイル 15 シャッタ 16 メインバルブ 17 膜厚モニタ 18 基板ホルダ 19 蒸発物るつぼ 20 絶縁カバー 50 プラズマ生成手段 51 プラズマ生成室 以上

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 所定の圧力に設定された第1の真空空間
    中にアーク放電によりプラズマを生成し、 該プラズマを前記第1の真空空間よりも低い圧力に設定
    された第2の真空空間に設置された蒸着物質に照射する
    ことにより、該第2の真空空間中で基板に成膜を行うア
    ーク放電型イオンプレーティングによる光学薄膜の製造
    方法において、 前記第2の真空空間中に設置された前記蒸発物質の載置
    手段と前記基板との間にバイアス電圧を印加し、前記基
    板近傍の空間は前記載置に対し負の電位を有し、前記バ
    イアス電圧をEとするとき、 0<|E|≦250(V) を満足することを特徴する光学薄膜の製造方法。
  2. 【請求項2】 プラズマを生成するプラズマ生成手段
    と、基板を支持する基板支持手段と、蒸発物を支持する
    複数の凹部を有する蒸発物るつぼと、該るつぼの所定の
    凹部にのみ前記プラズマが照射されるように該るつぼ上
    部に設置された遮蔽手段と、前記基板支持手段と蒸発物
    るつぼを所定の真空空間に包含するための真空容器と、
    該真空容器内を所定の真空度に設定するための排気手段
    および前記蒸発物るつぼの近傍に配置された磁界発生手
    段と、前記蒸発物の近傍に反応ガスを放出する反応ガス
    放出手段とを有するイオンプレーティング装置におい
    て、 前記蒸発物るつぼと前記基板との間にバイアス電圧を印
    加し、該バイアス電圧をEとすると、 0<|E|≦250(V) を満足し、 かつ、前記基板が前記蒸発物るつぼに対して負の電位を
    有するよう配向した電圧印加手段を有することを特徴す
    る光学薄膜の製造装置。
JP6190623A 1994-08-12 1994-08-12 光学薄膜の製造方法およびその製造装置 Pending JPH0860360A (ja)

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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN116988020A (zh) * 2023-09-25 2023-11-03 巨玻固能(苏州)薄膜材料有限公司 用于电子束蒸发源的气氛控制装置、镀膜设备及镀膜工艺

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN116988020A (zh) * 2023-09-25 2023-11-03 巨玻固能(苏州)薄膜材料有限公司 用于电子束蒸发源的气氛控制装置、镀膜设备及镀膜工艺
CN116988020B (zh) * 2023-09-25 2023-12-22 巨玻固能(苏州)薄膜材料有限公司 用于电子束蒸发源的气氛控制装置、镀膜设备及镀膜工艺

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