JPH0625556A - Ｆｅ−Ｃｏ系磁気シールド用塗料およびその製造方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 磁気シールド層を薄くしても外部からの強い
磁場から磁気記録のシールドができ、コスト的にも有利
な磁気シールド用塗料およびその製造法を提供する。 【構成】 化学組成が重量%で、Ｃo 45%以上55%以下、
Ｃ 0.1%以下、残部Ｆeおよび不可避不純物からなり、飽
和磁束密度(Ｂs)が1.9T(テスラ)以上で、厚さ 2μm以
下、アスペクト比5以上の扁平状合金粉末、または化学
組成が重量%で、Ｃo45%以上55%以下、Ｖ,Ｍo,Ｔi,Ｃr,
Ｍnのうちの１種または２種以上を単独または複合で0.5
%以上3%以下、Ｃ 0.1%以下、残部Ｆeおよび不可避不純
物からなり、飽和磁束密度(Ｂs)が1.9T(テスラ)以上
で、厚さ 2μm以下、アスペクト比5以上の扁平状合金粉
末と有機結合剤と有機溶剤からなるＦe-Ｃo系磁気シー
ルド用塗料である。そして上記の組成の原料粉末を機械
的に粉砕して上記形状の扁平状合金粉末とした後、有機
結合剤と有機溶剤とを均一に混合するＦe-Ｃo系磁気シ
ールド用塗料の製造方法である。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、主として、磁気カード
等に使用される磁気シールド用塗料およびその製造方法
に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】近年、クレジットカード、プリベイドカ
ード等で代表される磁気カードの分野では、偽造，変造
防止を目的として、カードの表面に高透磁率合金の微粉
末からなる塗布膜被覆を施すニーズが増大してきた。こ
の磁気シールド用塗料としては、従来は特開昭58-59268
号公報に開示されているように、Ｆe-Ｎi系合金、Ｆe-
Ｎi-Ｃo系合金、Ｆe-Ｓi-Ａl系合金、およびＦe-Ｎi-Ｍ
o系合金等の高透磁率合金微粉末を高分子化合物からな
る結合材中に混合したものが使用されている。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、外部か
らの強い磁場をシールドするためには、上記の特開昭58
-59268号公報に開示されている合金微粉末は、いずれも
飽和磁束密度が低いため磁気シールド層を厚くする必要
がある。すなわち、上記の合金微粉末を用いた磁気シー
ルド用塗料を厚く塗らなければならず、これは塗布性の
面で非常に不利となる。その上磁気カードの記録または
再生は、例えば特開昭55-93514号公報に開示されている
ように、磁気記録層の上に磁気シールド層があり、その
上から磁気ヘッドにより、記録または再生を行なうもの
であるから、磁気シールド層が厚くなると、当然、磁気
記録層と磁気ヘッドとの隙間が大きくなるため、データ
の記録または再生がしにくくなり、また磁気記録の高密
度化にも悪影響を及ぼすという問題点もある。

【０００４】本発明の目的は、磁気シールド層を薄くで
きる磁気シールド用塗料およびその製造方法を提供する
ことである。

【０００５】

【課題を解決するための手段】磁気シールド層を薄くす
るためには、磁気シールド層を形成する合金粉末の飽和
磁束密度を高くしなければならない。なぜならば、磁気
シールド層を薄くすると当然磁気シールド層内を通過で
きる磁束量が少なくなる。その磁束量の減少分を補うた
めには、合金粉末の飽和磁束密度を高くする必要がある
からである。そこで本発明においては、ＦeとＣoを主要
成分とする合金で飽和磁束密度の高い合金を用いる。さ
らに、必要に応じてＶ,Ｍo,Ｔi,Ｃr,Ｍn等の１種または
２種以上を添加する合金であって、いずれも1.9T(テス
ラ)以上の高い飽和磁束密度を有するものである。本発
明において、上記の合金を使用する理由として、上述し
たように第一に高い飽和磁束密度を有するからであり、
特にＦｅ50%，Ｃｏ50%の組成のものは現存する合金中で
は最高の飽和磁束密度を有しており、本発明の目的に適
する合金であるといえる。第二に粉砕効率がよい点があ
げられる。これは、本発明の合金は脆性が高く、粉末を
扁平化する粉砕工程において扁平化と分断が同時に進行
し目的の扁平状粉末を得るための粉砕時間が短くて済む
からである。

【０００６】より具体的には、本発明の第１発明は、化
学組成が重量%で、Ｃo 45%以上55%以下、Ｃ 0.1%以下、
残部Ｆeおよび不可避不純物からなり、飽和磁束密度が
(Ｂs)が1.9T(テスラ)以上で、厚さ 2μm以下、アスペク
ト比5以上である扁平状合金粉末と、有機結合剤と、有
機溶剤からなることを特徴とするＦe-Ｃo系磁気シール
ド用塗料であり、第２発明は第１発明の化学組成にさら
に重量%で、Ｖ,Ｍo,Ｔi,Ｃr,Ｍnのうちの１種または２
種以上を単独または複合で0.5%以上3%以下、Ｃ0.1%以
下、残部Ｆeおよび不可避不純物とし、飽和磁束密度が
(Ｂs)が1.9T(テスラ)以上とする磁気シールド用塗料で
ある。そして第３発明は、化学組成が重量%で、Ｃo 45%
以上55%以下、Ｃ 0.1%以下、残部Ｆeおよび不可避不純
物からなり、飽和磁束密度が(Ｂs)が1.9T(テスラ)以上
である原料粉末、または化学組成が重量%で、Ｃo 45%以
上55%以下、Ｖ,Ｍo,Ｔi,Ｃr,Ｍnのうちの１種または２
種以上を単独または複合で0.5%以上3%以下、Ｃ 0.1%以
下、残部Ｆeおよび不可避不純物からなり、飽和磁束密
度が(Ｂs)が1.9T(テスラ)以上である原料粉末を機械的
粉砕によって、厚さ 2μm以下、アスペクト比5以上であ
る扁平状合金粉末とした後、有機結合剤および有機溶剤
と均一に混合することを特徴とするＦe-Ｃo系磁気シー
ルド用塗料の製造方法であり、機械的粉砕をアトライタ
を用いて行なうことを特徴とするのが第４発明である。

【０００７】

【作用】次に本発明において、磁気シールド用塗料とし
て用いる合金粉末の化学組成の限定理由を説明する。Ｃ
oは45%に満たない場合や55%を越える場合には、高い飽
和磁束密度を有するという本発明合金の特徴を損なうの
で45%以上55%以下とした。Ｃは0.1%を越えると磁気特性
に悪影響を及ぼすので0.1%以下とする。Ｖ,Ｍo,Ｔi,Ｃ
r,Ｍnはいずれも加工性を向上させるのに効果がある。
Ｖがなくても、粉砕により、粉末を扁平化できるが、
Ｖ,Ｍo,Ｔi,Ｃr,Ｍn等を添加した方が扁平化の効率が良
いので必要に応じて添加する。0.5%に満たない場合は、
加工性が上がらないため、添加の効果が見られず、3%を
越えると磁気特性に悪影響を与えるから0.5%以上3%以下
を単独または複合で添加する。このような合金組成とす
ることによって、1.9T(テスラ)以上の高い飽和磁束密度
が得られるのである。以下に磁気シールド用塗料に用い
る扁平状合金粉末の厚さおよびアスペクト比を規定した
理由を述べる。扁平状合金粉末の厚さが2μmより大きい
と、粉末の塗布性が悪くなるから厚さを2μm以下とす
る。また、アスペクト比が5より小さいと粉末の塗布
時、粉末が面内配向しにくくなり、十分な磁気シールド
効果が得られないから5以上とする。上記扁平状合金粉
末を有機結合剤および有機溶剤を混合して、磁気シール
ド用塗料とする。有機結合剤には、ブチラール樹脂、エ
ポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂等を用
いることができる。また溶剤としては、酢酸セロソル
ブ、ブチルセロソルブ、トルエン等が使用できる。

【０００８】次に磁気シールド用扁平状合金粉末の製造
方法について説明する。原料粉末としては、アトマイズ
法等で製造されたプレアロイ粉末が使用できる。原料粉
末を機械的粉砕により扁平状粉末を得る。原料粉末を粉
砕しながら、扁平化するには機械的な方法によるのが一
般的であり、安価に能率よく扁平化できる。機械的粉砕
は、スタンプミル、振動ミル、アトライター等が適用で
きるが、上記粉砕機のうち最も投入エネルギーが高いア
トライターが有利である。また機械的粉砕時の粉砕助剤
は、固体助剤として、ステアリン酸、オレイン酸、ラウ
リン酸、およびパルミチン酸等の高級脂肪酸と、ステア
リン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸亜鉛
およびラウリン酸アルミニウム等の金属石鹸と、ステア
リルアルコール等の高級脂肪酸アルコール類と、エタノ
ールアミンおよびステアリルアミン等の高級脂肪酸アミ
ンと、さらにポリエチレンワックス等が使用できるが、
これらは単独ばかりではなく２種類以上加えてもよい。
一方液体の助剤には、アルコール、グリコールおよびエ
ステル等の有機溶剤等も使用できる。粉砕後の粉末は磁
気特性に劣るので必要に応じて熱処理を施すとよい。得
られた扁平状合金粉末を、前に述べた有機結合剤および
有機溶剤と混合する。混合の方法としては、ボールミル
法、振動ミル法、アトライター法等が適用できる。

【０００９】

【実施例】次に実施例に基づいて本発明をさらに詳細に
説明する。 （実施例１）水アトマイズ法によって製造された表１に
示す平均粒径が6.90μm、化学組成がＣo 49.7wt%、残部
Ｆeおよび不可避不純物からなる合金粉末をアトライタ
ーを使用して10時間粉砕した。粉砕助剤として、イソプ
ロピルアルコールを用いた。得られた扁平状合金粉末の
特性を測定した結果、厚さ 1.7μm、アスペクト比12で
あった。この扁平状合金粉末20gに、有機結合剤である
ポリビニールブチラールを2g、有機溶剤である酢酸セロ
ソルブを20g、ブチルセロソルブを15gの割合で加え、ボ
ールミルにより72時間混合し、磁気シールド用塗料を得
た。この塗料をコータを用いて厚さを変化させ、ポリエ
ステルフィルムに塗布し、10mm×10mmのフィルム状試料
を製作した。このポリエステルフィルムに塗布された磁
気シールド層の磁気特性を測定し、結果を表２に示す。

【００１０】

【表１】

【００１１】

【表２】

【００１２】（実施例２）水アトマイズ法によって製造
された平均粒径が7.10μmで化学組成がＣo 48.1wt%、Ｖ
2.1wt%、残部Ｆeおよび不可避不純物からなる合金粉末
を実施例１と同じ条件で処理した。フィルムに塗布し磁
気シールド層の磁気特性を測定して同じように表２に示
す。

【００１３】（実施例３）水アトマイズ法によって製造
された平均粒径が6.81μmで化学組成がＣo 50.1wt%、Ｍ
o 1.2wt%、残部Ｆeおよび不可避不純物からなる合金粉
末を実施例１と同じ条件で処理した。フィルムに塗布し
磁気シールド層の磁気特性を測定して同じように表２に
示す。

【００１４】（実施例４）水アトマイズ法によって製造
された平均粒径が7.04μmで化学組成がＣo 49.6wt%、Ｖ
1.2wt%、Ｔi 1.5w%、残部Ｆeおよび不可避不純物から
なる合金粉末を実施例１と同じ条件で処理した。フィル
ムに塗布し磁気シールド層の磁気特性を測定して同じよ
うに表２に示す。

【００１５】（実施例５）水アトマイズ法によって製造
された平均粒径が6.86μmで化学組成がＣo 49.1wt%、Ｃ
r 0.2wt%、Ｍn 1.4wt%、残部Ｆeおよび不可避不純物か
らなる合金粉末を実施例１と同じ条件で処理した。フィ
ルムに塗布し磁気シールド層の磁気特性を測定して同じ
ように表２に示す。

【００１６】（従来例１）水アトマイズ法によって製造
された平均粒径が7.87μmで化学組成がＮi 78.7wt%、Ｍ
o 4.43wt%、残部Ｆeおよび不可避不純物からなる合金粉
末を実施例１と同じ条件で処理した後、フィルムに塗布
し磁気シールド層の磁気特性を測定して結果を表２に併
記する。

【００１７】表１によれば、本発明の磁気シールド用塗
料は、磁気シールド層の厚さを従来品の約1/2の厚さに
塗布しても従来例と同等の最大磁束量を有しており、磁
気シールド特性も良好であることがわかる。

【００１８】

【発明の効果】本発明によれば、1.9テスラ以上の高い
飽和磁束密度を有し、塗料として有効な厚さ 2μm以
下、アスペクト比 5以上を有する合金粉末と、有機結合
剤と有機溶剤からなる磁気シールド用塗料が効率良く得
られる。そして、本発明の塗料を磁気シールド層として
塗布した時、高い飽和磁束密度を有しているから従来品
の半分程度にシールド層を薄くしても外部からの強い磁
場から磁気記録をシールドすることができるので、コス
ト的に有利なシールド層を得ることが可能であり、工業
的に非常に有効な発明である。

─────────────────────────────────────────────────────

【手続補正書】

【提出日】平成４年７月２２日

【手続補正１】

【補正対象書類名】明細書

【補正対象項目名】特許請求の範囲

【補正方法】変更

【補正内容】

【特許請求の範囲】

【手続補正２】

【補正対象書類名】明細書

【補正対象項目名】０００６

【補正方法】変更

【補正内容】

【０００６】より具体的には、本発明の第１発明は、化
学組成が重量%で、Ｃo 45%以上55%以下、Ｃ 0.1%以下、
残部Ｆeおよび不可避不純物からなり、飽和磁束密度(Ｂ
s)が1.9T(テスラ)以上で、厚さ 2μm以下、アスペクト
比5以上である扁平状合金粉末と、有機結合剤と、有機
溶剤からなることを特徴とするＦe-Ｃo系磁気シールド
用塗料であり、第２発明は第１発明の化学組成にさらに
重量%で、Ｖ,Ｍo,Ｔi,Ｃr,Ｍnのうちの１種または２種
以上を単独または複合で0.5%以上3%以下、Ｃ 0.1%以
下、残部Ｆeおよび不可避不純物とし、飽和磁束密度(Ｂ
s)が1.9T(テスラ)以上とする磁気シールド用塗料であ
る。そして第３発明は、化学組成が重量%で、Ｃo 45%以
上55%以下、Ｃ 0.1%以下、残部Ｆeおよび不可避不純物
からなり、飽和磁束密度(Ｂs)が1.9T(テスラ)以上であ
る原料粉末、または化学組成が重量%で、Ｃo 45%以上55
%以下、Ｖ,Ｍo,Ｔi,Ｃr,Ｍnのうちの１種または２種以
上を単独または複合で0.5%以上3%以下、Ｃ 0.1%以下、
残部Ｆeおよび不可避不純物からなり、飽和磁束密度(Ｂ
s)が1.9T(テスラ)以上である原料粉末を機械的粉砕によ
って、厚さ 2μm以下、アスペクト比5以上である扁平状
合金粉末とした後、有機結合剤および有機溶剤と均一に
混合することを特徴とするＦe-Ｃo系磁気シールド用塗
料の製造方法であり、機械的粉砕をアトライタを用いて
行なうことを特徴とするのが第４発明である。

【手続補正３】

【補正対象書類名】明細書

【補正対象項目名】００１１

【補正方法】変更

【補正内容】

【００１１】

【表２】

Claims (4)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 化学組成が重量%で、Ｃo 45%以上55%以
   下、Ｃ 0.1%以下、残部Ｆeおよび不可避不純物からな
   り、飽和磁束密度が(Ｂs)が1.9T(テスラ)以上で、厚さ
   2μm以下、アスペクト比5以上である扁平状合金粉末
   と、有機結合剤と、有機溶剤からなることを特徴とする
   Ｆe-Ｃo系磁気シールド用塗料。
2. 【請求項２】 化学組成が重量%で、Ｃo 45%以上55%以
   下、Ｖ,Ｍo,Ｔi,Ｃr,Ｍnのうちの１種または２種以上を
   単独または複合で0.5%以上3%以下、Ｃ 0.1%以下、残部
   Ｆeおよび不可避不純物からなり、飽和磁束密度が(Ｂs)
   が1.9T(テスラ)以上で、厚さ 2μm以下、アスペクト比5
   以上である扁平状合金粉末と、有機結合剤と、有機溶剤
   からなることを特徴とするＦe-Ｃo系磁気シールド用塗
   料。
3. 【請求項３】 化学組成が重量%で、Ｃo 45%以上55%以
   下、Ｃ 0.1%以下、残部Ｆeおよび不可避不純物からな
   り、飽和磁束密度が(Ｂs)が1.9T(テスラ)以上である原
   料粉末、または化学組成が重量%で、Ｃo 45%以上55%以
   下、Ｖ,Ｍo,Ｔi,Ｃr,Ｍnのうちの１種または２種以上を
   単独または複合で0.5%以上3%以下、Ｃ 0.1%以下、残部
   Ｆeおよび不可避不純物からなり、飽和磁束密度が(Ｂs)
   が1.9T(テスラ)以上である原料粉末を機械的粉砕によっ
   て、厚さ 2μm以下、アスペクト比5以上である扁平状合
   金粉末とした後、有機結合剤および有機溶剤と均一に混
   合することを特徴とするＦe-Ｃo系磁気シールド用塗料
   の製造方法。
4. 【請求項４】 機械的粉砕をアトライタを用いて行なう
   ことを特徴とする請求項３に記載のＦe-Ｃo系磁気シー
   ルド用塗料の製造方法。