JPH06239780A - 環状オレフィンの水和反応方法 - Google Patents

環状オレフィンの水和反応方法

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JPH06239780A
JPH06239780A JP5122145A JP12214593A JPH06239780A JP H06239780 A JPH06239780 A JP H06239780A JP 5122145 A JP5122145 A JP 5122145A JP 12214593 A JP12214593 A JP 12214593A JP H06239780 A JPH06239780 A JP H06239780A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 工業規模で環状アルコールを有利に、かつ、
高選択率および高収率で生産できると共に、触媒活性を
長時間高レベルに安定して維持でき、また、生成した環
状アルコールを容易に分離することができる環状オレフ
ィンの水和反応方法を提供する。 【構成】 水に結晶性アルミノシリケートを懸濁してな
る連続水相と環状オレフィンを含む油相とを包含する反
応系を用い、かつ、油相を平均液滴径0.05〜30mm
の液滴として連続水相中に分散させて反応を行う環状オ
レフィンの水和反応方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、環状オレフィンを水と
反応させて環状アルコールを製造する方法に関するもの
である。さらに詳しくは、環状オレフィンを水と反応さ
せて環状アルコールを製造する環状オレフィンの水和反
応方法において、水に結晶性アルミノシリケートを懸濁
してなる連続水相と環状オレフィンを含む油相とを包含
する反応系を用い、かつ、油相を特定の液滴径を有する
液滴として連続水相中に分散させて反応を行うことを特
徴とする環状オレフィンの水和反応方法に関する。本発
明の方法により、環状アルコールを高選択率および高収
率で生産できるばかりでなく、触媒活性を長時間高レベ
ルに安定して維持することができ、また、生成した環状
アルコールを容易に分離することができる。
【0002】
【従来の技術】従来、環状オレフィンを水と反応させて
環状アルコールを製造する水和反応方法としては、鉱
酸、特に硫酸を用いる間接あるいは直接水和反応が知ら
れている。また、他の均一触媒として芳香族スルフォン
酸を使用する方法(特公昭43−16125号公報)等
が提案されている。その明細書中の実施例2によれば、
パラトルエンスルフォン酸を含む水溶液相160gに対
し、シクロヘキサンとシクロヘキセンの混合物の油相2
00gを90℃で12時間反応させる。反応終了後、油
水分離して、水溶液相にさらに水200gを加えて、加
熱下に水蒸気蒸留を行い、シクロヘキサノールを留出回
収するものである。しかし、これらの反応系は反応物、
特に水溶液相からの分離、回収が煩雑になり、多大のエ
ネルギーを消費するという欠点がある。これらの欠点を
改善する方法として固体触媒を使用する方法、例えば、
イオン交換樹脂を使用する方法が提案されている(特公
昭38−15619号公報、特公昭44−26656号
公報)。しかし、これらイオン交換樹脂は、機械的崩壊
による樹脂の微粉化、耐熱性が不十分であること等によ
る触媒活性の低下等の問題があり、長時間安定した活性
を維持することができないという欠点がある。
【0003】さらに、固体触媒を使用する方法として、
結晶性アルミノシリケートを使用する方法が提案されて
いる。結晶性アルミノシリケートは水に不溶性であり、
機械的強度、耐熱性が優れており、工業触媒としての活
用が期待される。特開昭60−104028号公報によ
れば、触媒として微粒化された結晶性アルミノシリケー
トを用いる実施例が記載されている。それによれば、攪
拌機付オートクレーブ中に水と触媒および環状オレフィ
ンとしてシクロヘキセンを仕込み、反応温度50〜25
0℃で、反応時間15分〜4時間反応させ、油相より環
状アルコールとしてシクロヘキサノールを取得する方法
である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本反応場は、主に環状
オレフィンを含む油相と主に水を含む水相と水相に懸濁
状態で存在する触媒の固相といった三相からなる不均一
系である。このような反応場では油・水の混合が不十分
な場合、著しく反応収率が低下し、触媒本来の性能を充
分に発揮できない現象があった。また、反応終了後、反
応生成物を静置して油水分離し、油相より環状アルコー
ルを取得するのであるが、反応場で油・水の混合があま
り強いと、油・水の分離時間が大幅に長くなり、過大な
静置部を必要とすることになる。特に触媒の物性や原料
中の不純物によっては、極端な場合、エマルジョン化し
て油水分離が難しくなり、反応生成物中に触媒がリーク
し、連続して安定した反応が維持できなかった。一旦発
生したエマルジョンを破壊するためには、触媒が混入し
た反応生成物を常時遠心分離機で処理する方法が考えら
れるが、この場合、遠心分離機は触媒固形物の付着によ
って故障したり、触媒の破損を起こして触媒分離が不十
分になる等の問題があって、実用上使用に耐えられない
ものであった。また、エマルジョン化した触媒はエマル
ジョン破壊後、再使用した場合、通常の静置分離した触
媒に比べて、活性低下が著しいといった問題もあった。
このようにエマルジョン化しない反応方法が望まれてい
た。
【0005】このように、従来公知の方法においては、
環状オレフィンから環状アルコールを製造する上で長期
安定した反応収率を維持することは、まだ充分満足する
ものではなく、特に油水分離を速やかに行うような実用
的な環状オレフィンの水和反応方法になっていなかっ
た。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記課題
を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、意外なことに、こ
の目的は水に結晶性アルミノシリケートを懸濁してなる
連続水相と環状オレフィンを含む疎水性の相または油相
とを包含する反応系を用い、かつ、油相を特定の液滴径
を有する液滴として連続水相中に分散させて反応を行う
方法により達成できることを知見した。本発明は、上記
の知見に基き完成したものである。すなわち、本発明
は、工業規模で環状アルコールを有利に、かつ、高選択
率および高収率で生産できるばかりでなく、触媒活性を
長時間高レベルに安定して維持することができ、また、
生成した環状アルコールを容易に分離することができる
環状オレフィンの水和反応の提供を目的とする。本発明
の上記および他の諸目的、諸特徴および諸利益は、添付
の図面を参照しながら述べる次の詳細な説明と添付の請
求範囲の記載から明らかになろう。
【0007】すなわち、本発明によれば、結晶性アルミ
ノシリケート触媒の存在下で環状オレフィンを水と反応
させて環状アルコールを製造する環状オレフィンの水和
反応方法にいて、水に該結晶性アルミノシリケートを懸
濁してなる連続水相と環状オレフィンを含む油相とを包
含する反応系を用い、かつ、油相を平均液滴径0.05
〜30mmの液滴として連続水相中に分散させて反応を行
うことを特徴とする環状オレフィンの水和反応方法が提
供される。
【0008】まず本反応の機構を環状オレフィンとして
シクロヘキセンを使用する場合について説明すると、反
応場において油相中のシクロヘキセンは、油水界面を通
じて水相へ拡散溶解する。その溶解したシクロヘキセン
は、該触媒上の活性点に達し吸着され、同時に吸着され
ている水と反応してシクロヘキサノールを生成する。こ
のシクロヘキサノールは、触媒より離脱して水相に溶解
拡散する。この水相中のシクロヘキサノールは、油水界
面を通して油相に移動する。この油相より例えば、蒸留
によってシクロヘキサノールを取得する。このように、
本発明の方法の反応系は、物質移動過程を含む反応系で
ある。
【0009】ここで、油相とは環状オレフィンを主成分
とし、環状アルコール、溶解した水等から構成されてい
る。また、水相とは結晶性アルミノシリケート触媒を水
に懸濁させたもので、溶解した環状オレフィン、環状ア
ルコール等から構成されている。ところで、シクロヘキ
センのような環状オレフィンの水和反応は、熱力学的に
平衡反応であり、通常の反応温度50〜250℃では、
本反応は次の(1)式に従って進行する。
【0010】
【数1】 Kp:熱力学的平衡定数 C1 :シクロヘキサノールのモル濃度 C2 :シクロヘキセンのモル濃度 C3 :水のモル濃度
【0011】ここで、熱力学平衡値Kpは10-3のオー
ダーであり、油相の存在しない水と触媒の二相系でシク
ロヘキセンを少量反応させた場合、シクロヘキサノール
の生成量は非常にわずかである。しかし、本発明で用い
た反応系では、油相を存在させることにより、例えば、
通常の反応液の水相中のシクロヘキサノール濃度は0.
1〜5重量%に対して、油相中のシクロヘキサノール濃
度は1〜30重量%と言ったように、油相と水相との間
のシクロヘキサノールの液液分配平衡が、油相に大幅に
片寄っているため、油相でのシクロヘキサノール濃度が
高められ、油相より高収率でシクロヘキサノールを取得
することが可能となっている。すなわち、油相の存在が
必須の条件であると考えられる。このような不均一系反
応では、反応物あるいは生成物の相界面への拡散、相界
面を通しての拡散などの物質移動過程が反応速度に影響
する。反応速度は総括反応速度定数と反応物濃度の積に
よって決まるが、その総括反応速度定数は、物質移動速
度定数と触媒上の反応速度定数から成り立っている。
【0012】本発明者らは、反応速度について、攪拌機
付オートクレーブでの実験データを解析したところ、触
媒上の反応速度は比較的大きいものであるが、シクロヘ
キセンの油相から水相への溶解速度と生成シクロヘキサ
ノールの水相から油相への抽出速度等の物質移動速度
が、反応系の条件によっては触媒上の反応速度より遅く
なり、総括反応速度を落としてしまうことがあることを
見いだした。特に、弱い混合では油相が水相の上に分離
して二層を形成するような現象が起こる。この場合、油
相と水相の界面積が不足し、物質移動律速となるため、
総括反応速度は非常に遅いものとなる。ところで、油相
と水相との界面における総括物質移動速度は、境膜物質
移動係数KLと単位容積当たりの界面積aとの積KLa
で表される。境膜物質移動係数は、油相と水相の物性
(拡散係数、粘度、密度)および液滴と連続相の相対速
度、それに液滴径等に依存している。一方、界面積aは
液滴の数と各液滴の比表面積の積である。細かい液滴を
多数存在させることによって、物質移動に必要な界面積
を作ることができる。このように、液滴径としては小さ
いほど好ましいが、あまり細かくすると反応終了後、油
・水を静置分離する場合、液滴の合一に長い時間を要す
るため静置領域の必要面積は過大になる。しかも、原料
環状オレフィン中に界面活性剤的な働きをする不純物等
が僅かに存在している場合では、液滴径が細かすぎると
合一しにくくなり、エマルジョン化して油水分離が難し
くなる。
【0013】静置領域における油水分離速度は、次のよ
うにして測定できる。覗き窓をじか付けした4リットル
のステンレス製オートクレーブに所定の反応液を仕込ん
でおき、攪拌混合後、攪拌を停止すると、水相中を油滴
が上昇していき、槽上部に到達して油滴が合一して連続
油相を形成する。この連続油相の下界面は、連続油相は
連続水相の間にある分散液滴層がなくなるまで下降して
いき、ついには両連続油水相界面として停止する。攪拌
の停止から連続油相下界面の下降が止まるまでの時間を
油水分離時間とする。本発明の方法においては、通常、
反応槽容積が4リットルの場合、2〜30秒で二層分離
する。反応器が大きくなると油滴の上昇時間が長くな
り、分離時間はその分長くなる。この連続油相界面の降
下速度V0 は、静置槽を設計する上で重要な因子であ
る。反応器に供給する油相の空塔速度Ve は、V0 より
小さくする必要がある。一般に、油水の分離で液滴の合
一が律速にならない場合、液滴のサイズと界面降下速度
との関係は、ストークスの法則の領域における液滴の終
末速度Um 式(2)により求めて、油滴の水相に対する
容積比εとの関係式(3)より界面の降下速度が得られ
る。
【0014】
【数2】 m :液滴の上昇速度 g :重力加速度 ρc :連続相密度 ρd :液滴の密度 dp :液滴径 μ :粘度
【0015】
【数3】V0 =ε・Um0 :連続油相界面降下速度 ε :液滴のホールドアップ率 Um :〔数2〕で定義したとおり
【0016】これらの式から判るように、油水分離時間
を短縮するには、液滴径を大きくするだけでなく、反応
液温度を高くして液滴の上昇速度を速めることにより達
成できる。一方、エマルジョンを形成したときは槽上部
に浮いてきた液滴の合一が妨げられて、連続油相になり
にくい状態であり、式(2)、(3)では表せないもの
である。
【0017】このように微細な液滴を作らずに適度に細
かい液滴状態で油水を接触させることが必要である。体
積平均液滴径(以下では単に平均液滴径と言う)として
は0.05〜30mmが好ましい。さらに好ましい平均液
滴径としては0.1〜10mmである。
【0018】ここで、水相中に分散した液滴径を測定す
る方法としては、光透過法、写真撮影法等があるが、本
発明者らは、反応系が不透明な水相を含むかめに写真撮
影法を採用した。反応槽からの混合液のサンプリング方
法としては、反応槽より僅かに低めの圧力(例えば0.
05〜0.2kg/cm2 の差圧)にした1000mlの
耐圧透明容器に、界面活性剤を0.2重量%含んだ水を
350ml張っておき、攪拌状態の反応槽よりサンプリン
グノズルを通して耐圧透明容器に、油相液滴を含むスラ
リー液を約10ml採取する。採取したスラリーは容器内
の水で希釈され、上層に油滴が浮いてきたところを写真
撮影する。その写真を2〜100倍に拡大して、通常の
物差しを使って150〜350個の液滴径を測定し、そ
れらの体積平均液滴径とした。なお、液滴径が大きい場
合は、サンプリング装置を大きくしてサンプリング途中
で液滴の合一を避けるようにした。また、簡易的には反
応器にじか付けしたガラス覗き窓より写真撮影すること
でも達成できる。
【0019】本発明者らは、油相と水相のどちらを連続
相にするかについて検討した結果、水相を連続相とし、
油相を分散相とした場合は、逆の場合に比べ触媒の経時
的な活性低下が著しく小さい結果を得た。これは、水吸
着量の少ない状態で触媒が多量のシクロヘキセンと接触
すると、触媒の活性点でシクロヘキセン自身が重合して
被毒するためであろうと推定される。反応液がエマルジ
ョンを形成したときに触媒活性が低下することも、同様
にエマルジョン部分では油相が多くなり、触媒活性点を
被毒するためであろうは考えられる。このため水相が連
続相であることが必要であり、上記の理由から、油相の
分散液滴数量をむやみに高めることは好ましくない。こ
のように、油状態の環状オレフィンを分散した油相から
連続水相中に溶解して触媒上に吸着させ、油相から触媒
に直接接触しないようにすることで、長時間安定して触
媒の活性低下がない状態を維持することができるもので
ある。
【0020】ところで、例えは、環状オレフィンとして
シクロヘキセンを用いてシクロヘキサノールを製造する
場合には、1−メチルシクロペンテン、3−メチルシク
ロペンテン、4−メチルシクロペンテン等のメチルシク
ロペンテン類への異性化があり、これらの異性化された
メチルシクロペンテン類は、さらに水和反応により副反
応生成物であるメチルシクロペンタノール等へ変化す
る。さらには、目的とするシクロヘキサノールがシクロ
ヘキセンと反応して別の副反応生成物であるジシクロヘ
キシルエーテル等を生成することもある。
【0021】これらの副反応生成物は、シクロヘキサノ
ールへの反応収率を落とすばかりでなく、反応生成物を
蒸留分離して、目的のシクロヘキサノールを高純度で取
得する場合、沸点がそれぞれ接近しているために分離に
多大のエネルギーを必要とする(例えば、シクロヘキサ
ノール、1−メチルシクロペンタノール、3−メチルシ
クロペンタノールの沸点は、それぞれ161℃、154
℃、163℃)。さらに、シクロヘキセンをそれらの異
性体から回収する場合も、沸点がそれぞれ接近している
ため困難である(例えば、シクロヘキセン、1−メチル
シクロペンテン、3−メチルシクロペンテンの沸点は、
それぞれ83.0℃、75.8℃、65.0℃)。
【0022】本発明者らは、これらの副反応生成物の生
成速度について解析したところ、シクロヘキセンからシ
クロヘキサノールへの主反応速度は、シクロヘキセン濃
度に一次であるのに対して、メチルシクロペンテン類の
生成速度およびジシクロヘキシルエーテルへの生成速度
は、シクロヘキセン濃度に対して0次である。また、メ
チルシクロペンテンからメチルシクロペンタノールへの
反応速度は、メチルシクロペンテン濃度は1次であるこ
とを解明した。ここで、油相と水相との界面のシクロヘ
キセンの物質移動速度が遅い場合、主反応のシクロヘキ
サノールの生成は大幅に抑制されるのに対し、メチルシ
クロペンテンやジシクロヘキシルエーテルの反応は量的
に少ないが、確実に進行するため、シクロヘキサノール
の選択率を低下させることになる。これは、連続水相中
での油滴の分散状態によるものであり、重要である。そ
のためには、反応系における水相に対する油相の比率は
容量比で0.001〜1.0が好ましく、さらに好まし
くは0.01/0.8である。
【0023】さらに、原料としては環状アルコール濃度
の低い環状オレフィンを使用した方が触媒当たりの生産
性は高くなるため好ましい。しかし、工業規模の連続反
応プロセスでは、反応後、静置領域の油相を取り出し
て、蒸留分離塔に掛けて、塔底より環状アルコールを取
り出して製品とし、塔頂より環状オレフィンを留出させ
て、回収環状オレフィンとし、回収環状オレフィンは原
料環状オレフィンと混合して反応器に再供給するもので
ある。このため、回収環状オレフィン中の環状アルコー
ルを実質的に0にするには、比較的大きなエネルギーと
なるために、多少(例えば約1〜2重量%)環状アルコ
ールを残留させてリサイクルを掛けることで、蒸留エネ
ルギーを極力削減することも考えうる。
【0024】また、すでに述べた如く、本反応は平衡反
応であり、反応温度が低い方が副反応物の生成は少な
く、かつ、環状アルコール平衡濃度が高められるが、反
応速度は逆に遅くなるため、環状アルコール濃度を無理
に高めようとして、反応温度を下げて、多量の触媒を使
用して反応することは得策でない。通常、反応は50〜
250℃、好ましくは70〜200℃、最も好ましくは
80〜150℃で行う。また、本発明において反応槽内
の圧力に特に限定はないが、水と環状オレフィンの両方
が液状を保ちうる圧力下で行うのが好ましい。通常の反
応では、環状アルコール平衡濃度に対して30〜80%
の環状アルコール濃度で運転される。このため反応器内
の環状アルコール濃度には限界がある。したがって、該
液滴は環状オレフィンと環状アルコールを、それぞれ好
ましくは50〜100重量%と0〜50重量%、さらに
好ましくは60〜99.9重量%と0.1〜40重量%
の割合で構成することが好ましい。
【0025】本発明で使用する環状オレフィンとは、シ
クロペンテン、メチルシクロペンテン、シクロヘキセ
ン、メチルシクロヘキセン、シクロオクテン、シクロド
デセン等である。また、本発明は、たの有機溶媒を共存
させてもよい。この場合、有機溶媒とは、ハロゲン化炭
化水素、アルコール類、エーテル類、ケトン類、フェノ
ール類である。ハロゲン化炭化水素としては、塩化メチ
レン、クロロホルム、テトラクロロメタン、トリクロロ
エタン、テトラクロロエタンおよび対応する臭化物、ヨ
ウ化物、フッ化物である。アルコール類としては、メタ
ノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノ
ール、イソブタノール、n−ブタノール等のC1 〜C10
のアルコール類である。
【0026】エーテル類としては、ジオキサン、テトラ
ヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエー
テル、ジアミルエーテル、エチレングリコール、ジエチ
レングリコールのジメチルエーテルあるいはスルフォ
ン、例えば、ジプロピルスルフォン、スルフォラン、ス
ルホキシド、例えば、ジメチルスルホキシド等の単エー
テルおよび複エーテル等である。ケトン類としては、ア
セトン、メチルエチルケトン等である。フェノール類と
しては、フェノール、クレゾール等がある。上記いずれ
の有機溶媒とも、2種以上からなる混合物があってもよ
く、用いる溶媒の特性によって、油相、水相またはその
両方に含まれる。
【0027】また、原料組成としては環状オレフィン純
度の高いものが望ましいが、不純物として炭化水素化合
物、例えは、ベンゼン、トルエン等の芳香族、シクロヘ
キサン、シクロペンタン等のナフテン類、ペンタン、ヘ
キサン等のパラフィン類を含有していてもよい。これら
の不純物の濃度は30重量%以下が好ましい。また、無
機物としては、例えば、水、窒素、アルゴン、炭酸ガ
ス、一酸化炭素等を含んでいてもよい。ただし、酸素は
触媒の活性低下をきたす恐れがあり、できるだけ共存し
ない方が好ましい。
【0028】本発明で使用する結晶性アルミノシリケー
トは、一次粒子径が0.5μm以下のものであり、好ま
しくは0.1μm以下のものである。粒子径は微細なも
のほど本発明の効果が明確になるが、その下限は「結晶
性」と言う言葉で規定される。結晶性とは原子がある対
称にしたがって規則正しく周期的に配列しているもので
あり、X線による回折現象が認められるものである(共
立出版株式会社、化学大辞典、1963年出版、第3
巻、第349頁“結晶”の項に記載)。したがって、一
定の周期が起こり、X線回折現象が認められるために
は、結晶構造に基づくある限界の大きさが存在する。よ
って、本発明で使用する結晶性アルミノシリケートは、
X線回折現象が認められ、かつ、一次粒子径が0.5μ
m以下のものということができる。なお、一次粒子径の
測定は走査型電子顕微鏡写真(倍率20000〜100
000倍)を用いて行う。
【0029】本発明で使用する一次粒子径が0.5μm
以下の結晶性アルミノシリケートは、シリカとアルミナ
のモル比を特に規定するものではないが、シリカとアル
ミナのモル比が10以上であるもの、特にシリカとアル
ミナのモル比が20以上であるものが好ましい。シリカ
とアルミナのモル比が10以上と高いと、水和反応の活
性点である酸点の酸強度は増加するが、一方、酸点の量
は著しく減少する。環状オレフィンを原料とする場合、
その性質、反応性等より、そのままでは必ずしも水和反
応の活性、選択性を向上させるものではないが、微粒化
することにより、反応の活性点の増加およびその他の作
用によって、著しい活性、選択性の向上がみられ、実用
的な意味は大きい。
【0030】ところで、一次粒子の粒径が小さければ、
それらの凝集等によりできる二次粒子の径が大きくなっ
たものでも有効である。二次粒子径は50μm以下が好
ましい。これ以上になると、触媒粒子のマクロ細孔内で
の環状オレフィンや環状アルコールの物質移動が抑えら
れて、反応速度が低下するものである。ここで言う粒径
とは、その示された数値以下のものが少なくとも50重
量%以上であるものを言う。
【0031】本発明で使用する結晶性アルミノシリケー
トは、例えば、モルデナイト、ホウシャサイト、クリノ
プチロライト、L型ゼオライト、モービル社が発表して
いるZSM系ゼオライト(ZSM−5,ZSM−11
等)、チャバサイト、エリオナイト等が挙げられる。こ
れらの混合物も有用である。また、金属元素を含有する
結晶性アルミノシリケートとして、トリウム元素を含有
するもの(特開昭60−248632)、銅および/ま
たは銀を含有するもの(特開昭60−248633)、
クロム、モリブデン、タングステンの少なくとも一種を
含有するもの(特開昭60−248634)、チタン、
ジルコニウム、ハフニウムの少なくとも一種を含有する
(特開昭60−248635)ものでもよい。また、合
成方法として尿素化合物共存下(特開昭61−6831
9)、(特開昭61−180735)、シアノアルケン
共存下(特開昭62−36017)、(特開昭63−1
54633)、(特開昭63−315512)、(特開
昭61−221141)で合成したものでもよい。無機
物のみで合成されたもの(特開平1−180835)、
(特開平1−190644)、アミン共存下での合成
(特開平1−192717)のものでもよい。特に、微
粒化された結晶性アルミノシリケートが効果的である。
【0032】反応液中の水相中の触媒は少ない場合、反
応速度が遅く反応器が大きくなり、工業的に成り立ちに
くいし、多いと水相の粘度が高くなりすぎて流動性がな
くなり、水相での環状オレフィンの拡散速度が阻害され
反応速度を落としてしまう。したがって、水に対する触
媒の重量比は0.01〜2.0の範囲が好ましく、さら
に好ましくは0.1〜1.0の範囲である。反応温度は
通常50〜250℃の範囲で行われるが、好ましくは7
0〜200℃、特に80〜150℃の範囲が好ましい。
また、反応圧力は特に制限はないが、水および環状オレ
フィンの両方が液状を保ちうる圧力にすることが好まし
い。
【0033】本発明において、油相は平均液滴径0.0
5〜30mmの液滴として連続水相中に分散していること
が必要である。ところで、水の連続相に油相の細かい液
滴を分散する方法としては、多数の孔を持つ分散器から
油相の噴出させる方法と、攪拌機などで流体に剪断力を
与えて機械的に分散させる方法がある。この場合、細か
い液滴を作るには、界面圧や粘性応力に打ち勝つに充分
な外力をある時間以上に液滴に加えて分裂する必要があ
る。このため、分散器を用いる場合には、孔径を細かく
したり噴出速度を高めたりすることで達成できる。ま
た、攪拌機を用いる場合には、剪断速度を高めればよ
く、一般的には流体に投入する攪拌動力を大きくすれば
よい。
【0034】以下図1〜9を参照して、本発明の環状オ
レフィンの水和反応法の態様について説明するが、本発
明は、これらの態様に限定されるものではない。図1は
本発明の方法の1つの態様(第1の態様)を実施するた
めの反応槽の内部断面を示す概略図である。反応槽4は
原料供給管3に連結した分散器6を槽内下部に有し、さ
らに、温度計を入れた温度計サヤ管(共に図示せず)お
よび圧力計(図示せず)を取り付けてある。反応槽4の
上部には、生成した環状アルコールと未反応環状オレフ
ィンを含む油相の抜出管5に接続した油相出口が付けて
ある。上記したパイプ3は環状オレフィン供給管1およ
び水供給管2に接続しており、上記の油相抜出管5から
分岐した循環パイプにも接続していて、抜き出した油相
の一部をポンプ8を用いて反応相4にリサイクルして分
散器6から噴出するようにしている。また、反応槽4の
外面には電気ヒーター(図示せず)が取り付けてあり、
上記したパイプの全てにはそれぞれ流量計(図示せず)
が付いている。反応槽4の側壁には、油滴が分散した連
続水相と油相の分離状態を観察し、油水界面を見るため
のガラス製の覗き窓(図示せず)が取り付けてある。す
なわち、本発明の第1の態様によれば、反応槽内下部に
原料供給管に連結され多数の細孔を持つ少なくとも一つ
の分散器を有し、反応槽内上部に生成環状アルコールと
未反応環状オレフィンを含む反応により得られた油相を
抜出すための抜出手段に連結した油相出口を有する反応
槽において反応を行い、油相を原料供給管を通して供給
して分散器の細孔から反応系中に噴出させることによ
り、油相を平均液滴径0.05〜30mmの液滴として連
続水相中に分散および流通させることを特徴とする環状
オレフィンの水和反応方法が提供される。反応により得
られた油滴の合一により反応槽内上部に形成した油相の
連続層は、出口および抜出手段から抜出し、その一部を
抜出し手段から分岐し原料供給管に連結した導管により
反応槽に循環し、循環した油層を分散器の細孔から噴出
させる。反応槽の形状には特に限定はなく、竪型、横
型、角型、円筒型等であればよいが、スラリ−の堆積や
液淀み部分ができるだけ存在しない方がよく、竪型円筒
槽が最も望ましい。
【0035】ところで、本発明の場合は、循環せずに原
料環状オレフィン油相を流した場合、油滴の水相に対す
る容量比が充分ではないため、総括反応速度が物質移動
律速になりやすい。そこで、油相液滴ホールドアップを
高めるため、反応器上部にて合一し、連続相となった油
相、すなわち、未反応環状オレフィンと環状アルコール
生成物の一部を、例えば、ポンプなどを使って循環し、
反応槽底部に配置した分散器を通して噴出させ、反応の
場における水相に対する主に環状オレフィンを含む油相
の比率を上げることができ、物質移動律速を回避するこ
とができる。循環流量については、多いほど効果的であ
るが、本発明において水相が連続相であることは、先に
述べたとおりである。通常は、原料環状オレフィンの供
給流量に対する反応生成物循環流量は1〜150重量比
が好ましい。
【0036】環状オレフィンを反応液中に分散する分散
器としては、内径0.3〜10.0mmの穴を多数開けた
ものを用いる。用いる環状オレフィンが油滴の合一の速
いものであれば、上記の分散器で充分効果的であるが、
エマルジョンを形成し易い反応液の場合は、微細な液滴
を作らないようにするため、該穴の部分に穴径の2〜5
倍の内径で、10〜200mm長さのパイプを立てた分散
器を用いるとさらに好ましい。また、反応槽断面積の大
きさにより、その分散器配管の本数は増やすことで均一
分散を達成できる。
【0037】本発明の他の態様(第2の態様)によれ
ば、複数の攪拌翼を備えた攪拌機を有する少なくとも一
つの反応槽において反応を行い、反応系全体を攪拌して
剪断力を生じさせるように攪拌機を操作することによ
り、連続水相中に懸濁した触媒の沈降を防止するととも
に、攪拌翼から離れたところで合一した油滴を再分散し
て連続水相中の油相を液滴状に維持することを特徴とす
る方法が提供される。図2は反応槽内に攪拌機を設置す
る本発明の方法の第2の態様の概略図である。前記した
本発明の第1の態様では、反応槽4は原料供給管3に接
続した分散器6および反応により得られる環状アルコー
ルと未反応環状オレフィンを含む反応生成物抜出管5に
接続した反応生成物出口を有しており、上記の原料供給
管3は、環状オレフィン供給管1と水供給管2に接続し
ている。第2の態様では、この第1の態様に用いる反応
槽4とは異なり、反応槽4は複数の攪拌翼9を備えた攪
拌機を有しており、反応系全体を攪拌して剪断力を生じ
させるように攪拌機を操作することにより、連続水相中
に懸濁した触媒の沈降を防止するとともに、攪拌翼9か
ら離れたところで合一した油滴を再分散して連続水相中
の油相を液滴状に維持することができる。また、反応槽
4は油相である反応生成物の出口を上部に有しており、
反応生成物出口付近には堰7を配置して静置領域が設け
られているので、得られる反応混合液を環状アルコール
を含む上層としての油相と触媒を含む下層としての水相
とへ容易に分離できる。
【0038】攪拌翼9の型式はタービン、プロペラ、パ
ドル等の翼構造がよい。特に、プロペラ翼は小さい動力
で上下の循環流を発生できるため、必要以上に微細な液
滴を作らないので好ましい。攪拌機の軸は反応槽中心で
ある必要はないし、攪拌機の取り付け基数も一基である
必要はない。また、攪拌機に取り付ける翼は一段以上で
多段翼構造でもよい。さらに、多段翼の各段の翼型式は
異なっていてもよい。
【0039】本発明の方法では、攪拌機により、下向き
の流動成分を持たせて環状オレフィンを含む油相を水相
との混合物として循環することが好ましい。具体的に
は、水相の比重に比し軽い油相を水相に混合するには、
浮き上がった油相を巻き込むような下向きの流動成分が
存在することが好ましい。流動の方向は、図2のように
中心で下向きであろうが、外側で下向きであろうがいず
れでもよい。
【0040】原料環状オレフィンを噴出する分散器は、
上記第1の態様で用いた多数の穴を有する配管を用いて
もよいが、攪拌軸に小型で羽根枚数の多いタービン翼を
取り付けておき、その翼の上または下に原料供給パイプ
を配置した構造にすると、適度な粗い液滴を作り、攪拌
流に乗ることができるため、原料を供給した途端に原料
が大きな油相の塊となって、静置領域へショートパスす
ることを防ぐことができる。この方法を用いた場合、原
料供給口を大きくできるため、触媒によるスケーリング
や詰まりなどが回避できる。
【0041】図3に示す反応槽は、攪拌の効果をさらに
高めるものであり、図2の装置に中空円筒10を付加し
たものである。具体的には、内外壁を有し上端と下端が
開いている中空円筒10を攪拌機を囲むように反応槽内
に配置して、反応槽4において反応系内の攪拌機と中空
円筒10の内壁との間に第1の空間を、中空円筒10の
外壁と反応槽4の内壁との間に第2の空間を設け、中空
円筒10は、上記の第1と第2の空間を反応系が十分に
循環するような断面積を有していて、ドラフトチューブ
として機能している。中空円筒10は通常攪拌機を囲む
ように配置するが、攪拌翼9が多少外にはみ出ていても
効果はさほど損なわれない。中空円筒10は通常反応槽
内壁に固定するか、固定方法については、固定する手段
が反応系の循環により生じる圧力に耐え反応系の循環流
がスムーズである限り特に限定はない。固定する手段と
しては、例えば、金属板を使用できる。中空円筒を配置
することで環状オレフィン油相の液滴を含む水相を循環
することにより、下向きの循環流を強化することがで
き、弱い攪拌動力でも油相と水相を攪拌混合することが
できるため、十分な反応速度を得ることができる。さら
に、強攪拌をしないため微細な液滴を生じることがな
く、反応後の静置領域での油・水の分離も非常に容易に
なる。また、強い攪拌により触媒の破損を起こしたり、
触媒の再生時に反応器より抜き出して濾過する場合触媒
ロスとなったり、あるいはフィルターを用いるとき目詰
まりを起こす等の問題もあったが、弱い攪拌で反応に充
分な混合ができることで、その問題が解決できたことも
効果の一つである。
【0042】中空円筒付の反応器の攪拌動力は、それが
ない場合に比較して1/5から1/10で同一の反応収
率を得ることができるものである。また、攪拌型反応槽
の場合、バッフルプレートを入れるとさらに効果的にな
る。すなわち、反応槽が、反応槽内壁から実質的に中心
方向に向かって内壁の近くに張り出している少なくとも
一つの垂直方向に伸びるバッフルプレートを有してお
り、バッフルプレートはその上下に反応系内にいて空間
が残るように配設されているもので、バッフルプレート
の長さは長ければ長いほど上下の循環流が強まり効果的
である。また、バッフルプレートは一般に反応槽内壁に
固定するが、固定方法については反応槽内壁に対しバッ
フルプレートが垂直である限り特に限定はない。
【0043】バッフルプレートの枚数は、一般的には反
応器攪拌領域の大きさによって決まり、攪拌領域の大き
さに応じてバッフルプレートの枚数を多くするのが効果
的である。バッフルプレートは図3に示す中空円筒10
と組み合わせて用いると、下方向への循環流を強める効
果が高まるので好ましいが、バッフルプレートのみでも
その効果は達成できる。
【0044】油水分離し生成した環状アルコールを含む
油相のみを取り出すためには、図2と図3に示すよう
に、反応生成物出口(反応生成物抜出管5に接続してい
る)付近に堰7を配置して静置領域を設け、相分離を容
易にすることにより達成できる。すなわち、静置領域内
では反応混合液中の油滴は上昇し、上層に連続油相を、
下層に連続水相を形成する。連続油相は反応生成物抜出
管5より抜出し、これにより環状アルコールを単離す
る。一方、連続油相は比重が反応混合液よりも高いため
下降し、反応混合液と入れ換わる。反応混合液の油水分
離は、上記のようにして行われる。
【0045】図4は、本発明の方法において油水分離を
行う場合の他の態様を示しており、反応により得られた
油相と水相を含む反応混合液を、パイプ12を通して反
応槽外に設けた油水分離槽11に導入して、生成した環
状アルコールを含む上層としての油相と触媒を含む下層
としての水相とに分離するものである。油相は本発明の
方法の第1の態様と同様に、パイプ5より抜出すと共
に、その一部を反応槽4に循環し、水相はパイプ13に
より反応槽4にポンプ8により循環する。パイプ12を
通しての反応槽4から油水分離槽11への反応混合液の
移動、およびパイプ13を通しての油水分離槽11から
反応槽4への移動は、重力または上記のようにポンプに
よって行う。静置領域のある反応槽に較べ、上記のよう
に油水分離槽11において油水分離を行う反応槽4で
は、適切な液滴径の油滴を生じやすいため、油水分離を
効果的に行うことができる。
【0046】なお、大量の反応混合液の油水分離は、上
記の油水分離槽11を用いる代わりに、反応槽内に邪魔
板を設置することによっても達成でき、静置領域をコン
パクトにすることができる。図5に示すように、反応槽
4を邪魔板7Aを用いて仕切ることにより、槽内下部領
域としての攪拌領域および槽内上部領域としての静置領
域5Aを設け、反応系を攪拌領域内で攪拌して剪断力を
生じさせることにより、油相が液滴となって連続水相中
に分散すると共に、邪魔板7Aを通って油滴は攪拌領域
から静置領域5Aへ移動し、静置領域5A内で油滴が合
一して連続油相を形成している。邪魔板としては、多孔
円板(その外周において反応槽内壁に直接取り付けられ
ている);無多孔円板(反応槽内壁とはその間に隙間を
設け、サポートにより反応槽内壁に固定されている);
グリッドデッキ(その外周において反応槽内壁に直接取
り付けられている);平らなドーナツ板(その外周にお
いて反応槽内壁に直接取り付けられている);頂点が下
向きの中空な円錐の先端を切り取った形のドーナツ板
(開口した上記円錐の底面外周において反応槽内壁に直
接取り付けられている);頂点が上向きの中空な円錐の
先端を切り取った形のドーナツ板(反応槽内壁とはその
間に隙間を設け、開口した上記円錐の底面外周において
反応槽内壁に直接固定されている);および頂点が下向
きの中空な円錐と頂点が上向きの中空な円錐について、
それぞれの先端を切り取って得られたものを切り取った
部分で結合した形のドーナツ板(開口した円錐底面がそ
れぞれ上向き、下向きになるようにして、各円錐底面の
外周において反応槽内壁に直接取り付けられている)を
用いることができる。
【0047】例えば、図6に示す反応槽4は、ドーナツ
板7A−1を槽内に配置して、槽内上部領域としての静
置領域5A−1、および槽内下部領域としての攪拌領域
を設けている。ドーナツ板7A−1は、頂点が下向きの
中空な円錐と頂点が上向きの中空な円錐について、それ
ぞれの先端を切り取って得られたものを切り取った部分
で結合したものであり、開口した円錐底面がそれぞれ上
向き、下向きになるようにして、各円錐底面の外周にお
いて反応槽内壁に直接取り付けられている。また、図7
に示す反応槽4は、多孔円板7A−2を槽内に配置し
て、槽内上部領域としての静置領域5A−2、および槽
内下部領域としての攪拌領域を設けている。
【0048】また、該邪魔板としては、後述する本発明
の方法の第4の態様に関連して述べる図10〜15に示
すような障害物を用いることもできる。
【0049】本発明のさらに他の態様(第3の態様)に
よれば、第1の反応槽と少なくとも一つの補足反応槽か
らなる、直列に連結した複数の反応槽を用いて反応を行
い、上記の少なくとも一つの各補足反応槽に先行する第
1の反応槽または補足反応槽で得た環状アルコールと未
反応環状オレフィンとを含む反応混合液を、各先行反応
槽の次の補足反応槽に供給して、そこで未反応環状オレ
フィンを水和する方法が提供される。
【0050】図8は本発明の方法のさらに他の態様(第
3の態様)を実施するための直列に連結した二つの反応
槽の内部断面を示す概略図である。第1の反応槽4−1
には、攪拌翼9を有する攪拌機、環状オレフィンを含む
油相の供給管1と水供給管2に接続している原料供給管
3、静置領域を設けるための堰7、および入口14と出
口15を有する水蒸気流通コイルが設置してある。第1
の反応槽4−1の静置領域内で分離した油相は、パイプ
5−1から抜き出し、補足反応槽4−2の下部に供給す
る。補足反応槽4−2は第1の反応槽4−1と実質的に
同じ構造であるが、水蒸気流通コイルの代わりに、入口
16と出口17を有する水蒸気または冷却水流通コイル
を取り付ける。補足反応槽4−2に供給した油相は、水
和反応の後、静置領域内で分離し、パイプ5−2から抜
き出し、抜き出した油相は、全て蒸留して生成環状アル
コールを単離する。第1の反応槽4−1および補足反応
槽4−2は、均圧管18を通して繋がっており、不活性
ガス供給管19に均圧管18から不活性ガスを供給する
ことによって、各槽内気相部圧力が均等になるように調
節している。図8に示すような本発明の方法の第3の態
様では、図1及び図4に示すように、反応槽4−1と4
−2のそれぞれの油相抜出パイプ5−1と5−2から循
環用のパイプをそれぞれ分岐させて、抜出した油相の一
部をポンプにより各反応槽にリサイクルして、原料と共
に分散器から噴出させてもよい。
【0051】前に述べたごとく、環状オレフィンから環
状アルコールへの平衡転化率は、温度が低いほど高くな
っている。一方、反応速度は温度が高いほど速くなる。
したがって、環状オレフィンから環状アルコール単流当
たりの反応収率を高めるには、低温で長時間、触媒と接
触させる必要がある。しかし、温度が低いため反応速度
が遅く、多量の触媒を必要とし、しかも、反応槽が大き
くなってしまうと言ったように生産性が悪いことにな
る。
【0052】本発明者らは、前記課題を解決すべく本反
応のメカニズムを注意深く検討した結果、図8に示すよ
うに直列に連結した複数の反応槽の温度を、反応系の流
れ方向に従って逐次的に低くなるように制御することに
よって、前述した方法に比較して環状アルコールの単流
当たりの反応収率をさらに増大する条件を見いだした。
【0053】さらに、本発明の方法の第3の態様におい
ては、直列に連結した複数の反応槽内で反応系の流れが
ピストンフローに近ずくため、油相中の環状アルコール
濃度が平衡濃度である10〜40重量%に近ずき、単流
当たりの反応収率を上げることができる。
【0054】上記した本発明の方法の第3の態様の効果
は、図9に示すような、障害物によって複数の小室に仕
切られており、各室が少なくとも一つの攪拌翼セットを
有する反応槽を用いても達成できる。すなわち、本発明
のさらに他の態様(第3の態様)によれば、図9に示す
ように、反応槽4が複数の攪拌翼9を備えた攪拌機を有
し、該複数の攪拌翼9は多段式に配列された複数の攪拌
翼セットよりなり、反応槽4は障害物20によって多段
式に配列する複数の小室に分けられ、各室が少なくとも
一つの攪拌翼セットを含むようにして、それぞれに反応
系の攪拌領域を設け、上記攪拌機を作動して各室内の反
応系全体を攪拌して連続水相中に油相を分散させると共
に、連続水相中に懸濁した触媒の沈降を防止し、各室内
で攪拌翼9から離れたところで合一した油滴を再分散
し、障害物20により分けられた互いに隣り合う二つの
小室の間において、あらかじめ定められた方向に従って
第1の小室から第2の小室に向かって反応系が流れるこ
とを可能にすると同時に、反応系が上記の方向に対して
逆流するのを妨げて第2の小室の反応系が第2の小室の
反応系と逆混合することを防ぐようにした方法が提供さ
れる。このようにして、障害物20により仕切られてで
きた各小室は、攪拌機を有する個々の反応槽として機能
する。
【0055】また、図9に示す反応槽では、最上部の障
害物により該障害物下方領域としての攪拌領域および該
障害物上方領域としての静置領域を設け、反応系を攪拌
領域内で攪拌して剪断力を生じさせることにより油相が
液滴となって連続水相中に分散すると共に、障害物を通
って油滴は攪拌領域から静置領域へ移動し、静置領域内
で該油滴が合一して連続油相を形成するようにしてい
る。
【0056】障害物20については特に限定はなく、例
えば、多孔板、金網、ドーナツ板、半月板、グリッドデ
ッキ、円錐型アングルデッキ、反応槽内壁にサポートで
固定された円板(その外周と反応槽内壁との間には隙間
がある)等があり、これらを組み合わせて使ってもよ
い。
【0057】図10〜12に3種類の障害物を示す。図
10は障害物の一例である多孔板20A;図11は障害
物の他の一例である円板20B;図12は障害物のさら
に他の一例である平らなドーナツ板20C(その外周に
おいて反応槽内壁に直接取り付けられている)。図1
0、13〜15に図12のドーナツ板の例をさらに示
す。図13は障害物としてのドーナツ板のさらに他の一
例である頂点が下向きの中空な円錐の先端を切り取った
形のドーナツ板20C−1(開口した上記円錐の底面外
周において反応槽内壁に直接取り付けられている);図
14は障害物としてのドーナツ板のさらに他の一例であ
る頂点が上向きの中空な円錐の先端を切り取った形のド
ーナツ板20C−2(反応槽内壁とはその間に隙間を設
け、開口した上記円錐の底面外周において反応槽内壁に
直接固定されている);および図15は障害物としての
ドーナツ板のさらに他の一例である頂点が下向きの中空
な円錐と頂点が上向きの中空な円錐について、それぞれ
の先端を切り取って得られたものを切り取った部分で結
合した形のドーナツ板20C−3(開口した円錐底面が
それぞれ上向き、下向きになるようにして、各円錐底面
の外周において反応槽内壁に直接取り付けられている)
を示している。上記の反応槽において、反応系はそれぞ
れの図に示した矢印の向きに流れる。
【0058】反応槽内径に対する各小室(すなわち、攪
拌領域)の高さの比は0.2〜2であることが好まし
い。また、攪拌翼9の形状は、各攪拌領域毎に同じでも
違っていてもよく、各攪拌領域の攪拌翼セットの位置に
ついては、十分な攪拌が行われていれば特に限定はな
い。
【0059】図9に戻って説明するが、反応槽4には反
応系の温度調節のため、さらに加熱用の水蒸気ジャケッ
ト21と冷却用の冷却水ジャケット22を反応槽外面に
取り付けてある。
【0060】このような多段式反応槽において、原料供
給管出口近くの反応系では油相中のシクロヘキサノール
濃度が低く、平衡濃度には達していないので、反応温度
を高めてシクロヘキセンからシクロヘキサノールへの反
応速度を速くすることで、触媒当たりの生産性を上げる
ことができる。一方、後段になるにしたがってシクロヘ
キサノール濃度が高まり、平衡濃度に近ずくため、反応
温度を低めに抑えることによって、反応速度は多少落と
しても平衡値を高くすることになり、最終の単流反応収
率が向上する。したがって、障害物によって反応槽を複
数の小室に分ける場合は、上記の複数の小室の温度を、
反応系の流れ方向にしたがって逐次的に低くなるように
制御することが好ましい。
【0061】ただ、本反応は発熱反応であり、断熱で多
段反応を行うと、後段に行くにしたがって反応系の温度
が上昇することになり、逆に単流反応収率を下げること
になるので、一般に最下部小室中の反応系を加熱すると
共に、それに続く各段の反応域を適当に冷却していく。
具体的な反応温度としては、初反応域を110〜170
℃とし、後段に行くにしたがい反応温度を下げていき、
最終段温度を初反応温度より1〜30℃下げてやること
が好ましい。また、反応域の温度制御手段としては、冷
却水または水蒸気を流すパイプをコイル状にして容器内
に配置してもよいし、容器そのものをジャケット構造と
して冷却水または水蒸気を流してもよい。各段の冷却水
または水蒸気量は、各ミキサーセトラーごとに独立して
制御できるようにしておくとよい。
【0062】反応生成物を得るためには、小室のうち最
上部の小室は反応生成物出口を有しており、反応生成物
出口付近には堰を配置して静置領域を設け、得られる反
応混合液を生成した環状オレフィンを含む上層としての
油相と、触媒を含む下層としての連続水相とへの分離を
容易にするのが好ましい。もしくは図4に示すように、
得られる反応混合液を反応槽外に設けた油水分離槽に導
入して、生成した環状アルコールを含む上層としての油
相と触媒を含む下層としての水相とに分離した後、油相
を抜出しその一部を反応槽に循環すると共に、水相を反
応槽に循環するようにしてもよい。
【0063】本発明の方法の第4の態様においては、多
段式に配列した複数の小室内で反応系の流れがピストン
フローに近ずくため、上記した第3の態様と同様に、油
相中の環状アルコール濃度が平衡濃度である10〜40
重量%に近ずき、単流当たりの反応収率を上げることが
できる。
【0064】さらに、本発明の方法の第4の態様におい
ては、上記した第3の態様と同様に、複数の反応槽を直
列に連結することにより、反応収率をさらち上げること
もできる。
【0065】
【実施例】以下に実施例および比較例を挙げて本発明を
さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例に
限定されるものではない。 (実施例1)平均一次粒子径0.04μmで、SiO2
/Al2 3 比が28であるH型のZSM−5の触媒を
用いて、シクロヘキセンの水和反応を以下の条件にて行
った。シクロヘキセンの水和反応器として、図1に示す
ような、24リットルのステンレス製円筒型耐圧反応槽
4の内部に、温度計およびサヤ管(図示せず)・原料供
給管3・油相抜出し管5に連結した反応生成物(油相)
出口・圧力計(図示せず)を取り付け、反応槽4内下部
に、多数の細孔を有する配管からなる分散器6を原料供
給管3に接続した。さらに、反応槽4外面に温調用電気
ヒーター(図示せず)を取り付け、油相抜出し管5より
分岐し、循環ポンプ8を介して原料供給管3に接続し、
油の循環配管を設けた。また、原料供給管3にはシクロ
ヘキセン供給管1と水供給管2を接続した。それぞれの
配管には全て流量計(図示せず)を取り付けた。反応生
成物出口は反応槽4の上方に設けた。なお、油水分離状
態を観察し界面位置を測定するために、反応槽4の側面
の一部にじか付けのガラス製の覗き窓(図示せず)を設
けた。
【0066】水和反応は、はじめに反応槽内を窒素パー
ジした後、30重量%の触媒濃度の水スラリー19.7
kgを反応槽内に仕込み、パイプ1,3および分散器6
を通じて直ちにシクロヘキセン液を導入して、反応槽内
や循環ポンプおよび配管内に液張りを行った。循環ポン
プ8を起動して、循環流量は600リットル/hr一定
になるよう調整し、反応槽内にシクロヘキセン油滴を分
散状態にした。電気ヒーターにて昇温して、反応槽内温
を120℃一定となるように制御した。反応槽内圧は6
kg/cm2 ゲージ一定になるように窒素ガスにて常時
加圧した。原料シクロヘキセン液を定常時約6.1kg
/hr(:kg/時間:以下同じ)で供給を開始し、反
応槽内油水界面レベルは反応生成物出口より少し下方で
一定に位置するように、消費水量に見合った分の水を原
料供給管を通じて供給した。気液界面は反応生成物出口
より上方に位置するように、反応生成物抜出し量を制御
した。全系安定化後、反応槽出の反応生成物中のシクロ
ヘキサノール濃度は11.0重量%であり、シクロヘキ
サノールへの選択率は99.5%であった。この値は反
応律速状態の反応成績であり、満足な値である。反応槽
中の油相の平均液滴径は2mmであった。抜出した反応生
成物中には全く触媒はなく、良好な油水分離状態であっ
た。引き続き、油水分離時間を評価するため、一時的に
原料供給および循環を同時に停止した。原料供給および
循環停止後26秒で上部に連続油相、下部に連続水相を
形成し、その両相の中間に存在する油の液滴は完全に消
滅していた。なお、攪拌中の液滴のホールドアップ率は
10.5容量%であった。
【0067】(実施例2〜4)実施例1の水和反応装置
を用い、反応条件は実施例1と同様にして、循環流量の
みを表1に示すように変えて反応成績をみた。結果は表
1のとおりであった。抜出した反応生成物中には全く触
媒はなく、良好な油水分離状態であった。
【0068】(比較例1)実施例1の水和反応装置を用
い、反応条件は実施例1と同様であるが、分散器6を取
り除き、原料供給管3より直接噴出させるようにして、
循環を200リットル/hrとして反応させた。その結
果、反応槽抜き出し反応生成物中のシクロヘキサノール
濃度は1〜3%であり、その濃度も変動していた。シク
ロヘキサノールへの選択率は98.5%であった。この
ときの反応槽内の油相の平均液滴径は40mmであった。
比較例1の結果を実施例1から4の結果とともに表1に
示す。
【0069】
【表1】
【0070】(実施例5)図2に示すような、内部の状
態が観察できるようにガラスの覗き窓(図示せず)をじ
か付けした4リットルのステンレス製攪拌機付オートク
レーブ4を用いて、内部に温度計およびサヤ管(図示せ
ず)・原料供給管3・油相抜出管5に連結した反応生成
物(油相)出口・圧力計(図示せず)を取り付け、攪拌
機9の攪拌翼はプロペラ翼一段として、その翼下直近く
に、実施例1と同様の分散器6を原料供給管3に接続し
て設け、反応生成物出口の付近の気液界面を貫いた堰7
を設けて、油水分離する静置領域とした。さらに、オー
トクレーブ外面に温調用電気ヒーター(図示せず)を取
り付け、原料供給管3にはシクロヘキセン供給管1と水
供給管2を接続した。それぞれの配管には全て流量計
(図示せず)を取り付けた。反応生成物出口はオートク
レーブの上方に設けた。攪拌部内壁面に中心方向に向っ
て内壁の近くに張り出しているバッフルプレート(図示
せず)を4枚装着した。
【0071】水和反応は、はじめに、水和反応槽4内を
窒素パージした後、実施例1と同一の新触媒で、30重
量%の触媒濃度の水スラリー2.68kgを反応槽内に
仕込み、攪拌機を530rpmで回転し、電気ヒーター
にて昇温して反応槽内温を120℃一定になるように制
御した。原料シクロヘキセン液を徐々に供給していき、
定常時約0.85kg/hrとした。反応槽内圧は6k
g/cm2 ゲージ一定になるように窒素にて常時加圧し
た。反応槽内静置領域の油水界面レベルは、パイプ5に
連結した反応生成物出口より下方に位置するように、消
費水量に見合った分の水を原料供給管3を通じて供給し
た。気液界面は油相抜出管5をオーバーフロー型式にす
ることで一定に保つことにした。全系安定後、反応槽出
の反応生成物中のシクロヘキサノール濃度は11.1重
量%であり、シクロヘキサノールへの選択率は99.5
%であった。この値は反応律速状態の反応成績であり、
満足な値である。また、このときの攪拌動力は約0.5
Kw/m3 (容積は全反応系の容積)であった。反応槽
中の油相の平均液滴径は0.22mmであった。抜出した
反応生成物中には全く触媒はなく、良好な油水分離状態
であった。
【0072】引き続き、一時的に攪拌と原料供給を同時
に停止して、油水分離時間をバッチで評価した。結果
は、攪拌および原料供給停止後12秒で上部に連続油
相、下部に連続水相が形成し、中間の油の液滴の分散相
は完全に消滅していた。このときの液滴のホールドアッ
プ率は30容積%であった。上記の反応条件で50時間
運転した結果、反応生成物中のシクロヘキサノール濃度
は10.8重量%でシクロヘキサノールへの選択率は9
9.5%であった。ほとんど触媒の活性低下はなく、し
かも、抜出した反応生成物中には触媒の混入はなかっ
た。また、50時間経過後の油水の分離状態を反応開始
時と同様な方法で評価したところ、攪拌および原料供給
停止後13秒で液滴の分散相は完全に消滅していた。こ
のように長期安定した反応が維持できることが分かっ
た。
【0073】(実施例6〜8)実施例5の水和反応装置
を用い、反応条件は実施例5と同様にして、攪拌の回転
数のみを表2に示すように変えて反応成績をみた。結果
は表2のとおりである。抜出した反応生成物中には全く
触媒はなく良好な油水分離状態であった。
【0074】(比較例2)実施例5の水和反応装置を用
い、反応条件は実施例5と同様であるが、攪拌機回転数
を310rpmで反応させたところ、反応器抜出し反応
生成物中のシクロヘキサノール濃度は1〜2%であり、
シクロヘキサノールへの選択率は98.0%であった。
攪拌状態は、反応器上部に油連続相が存在し、二層分離
しており、ほとんど油の分散相が見られない状態であっ
た。比較例2の結果を実施例5から8の結果と共に表2
に示す。
【0075】
【表2】
【0076】(実施例9)実施例5の反応槽4の内部
に、中空円筒10(ドラフトチューブ)を攪拌翼9を囲
うように、かつ、反応槽底面より多少離して設置した。
攪拌翼9等他の設備は全て実施例5と同一とした。反応
生成物抜出口の位置を実施例5より多少上げて配置し
た。なお、触媒は実施例1と同一の新触媒にした。反応
条件も、実施例5と同様にした。全系安定後、反応槽出
の反応生成物中のシクロヘキサノール濃度は11.2重
量%であり、シクロヘキセンの選択率は99.5%であ
った。抜出した反応生成物中には全く触媒はなく、良好
な油水分離状態であった。実施例5と同様にして、バッ
チにて油水分離時間を測定した。油水分離時間は攪拌お
よび原料供給停止後11秒であった。この時の油滴のホ
ールドアップ率は40容積%であった。
【0077】(実施例10〜12)実施例9の反応装置
を用い、反応条件は回転数を表3に示すように変えた以
外、全て実施例9と同一条件で実施した。結果は表3の
とおりである。抜出した反応生成物中には全く触媒はな
く、良好な油水分離状態であった。ドラフトチューブを
付けることにより、攪拌回転数を下げた割には、反応槽
出の反応生成物中のシクロヘキサノール濃度は高く保た
れていることが分かる。
【0078】(比較例3)実施例9の反応装置を用い、
反応条件は回転数を50rpmに下げた以外、全て同一
条件で実施した。反応生成物中のシクロヘキサノール濃
度は1〜2重量%であり、シクロヘキセンの選択率は9
7.8%であった。攪拌状態は、反応器上部に油連続相
が存在し、二層分離しており、ほとんど油の分散相が見
られない状態であった。比較例3の結果を実施例9〜1
2の結果と共に表3に示す。
【0079】
【表3】
【0080】(実施例13)図4に示すように、実施例
9の反応装置で、ドラフトチューブと油水分離するため
反応槽内の堰7を取り除き、油水分離槽11として下部
が円錐形の1リットル容器に、反応液導入管12、反応
生成物抜出管5、水スラリー抜出管13を設け、反応液
導入管12および水スラリー抜出管13は、攪拌機付オ
ートクレーブの側面にそれぞれ取り付けている。また、
油水分離槽11にはガラス製の覗き窓をじか付けして、
油水界面を測定できるようにした。油水分離槽11から
の反応生成物の抜出しは、反応槽4と油水分離槽11の
気液界面をほぼ同一に、かつ、一定に保つように調節し
た。
【0081】油水分離槽11出の反応生成物(油相)の
一部は、循環ポンプ8を介して原料供給管3に循環する
ようにした。循環流量は20リットル/hrとした。攪
拌機の回転数は100rpmで、投入攪拌動力は0.0
1Kw/m3 であった。水和反応は、実施例9と同様に
して実施した結果、全系安定化後の反応槽出の反応生成
物中のシクロヘキサノール濃度は11.2重量%であ
り、選択率は99.5%と実施例9と同一結果を得た。
抜出した反応生成物中には全く触媒はなく、良好な油水
分離状態であった。引き続き、一時的に原料供給および
攪拌およびポンプによる循環を同時に停止して、バッチ
での油水分離時間を測定した結果、油水分離時間は4秒
であった。
【0082】(実施例14)実施例5の水和反応装置を
用い、反応条件は実施例5と同様にして、原料をシクロ
ペンテンに変えて反応成績をみた結果、全系安定化後の
反応槽出の反応生成物中のシクロペンタノール濃度は
7.1重量%であり、シクロペンタノールの選択率は9
9.5%と良好な反応成績を得た。抜出した反応生成物
中には全く触媒はなく、良好な油水分離状態であった。
引き続き、実施例5と同様にして原料供給および攪拌を
停止し、油水分離時間を測定した結果、油水分離時間は
13秒であった。
【0083】(実施例15)実施例5の反応槽内部に、
図5に示すような攪拌領域と静置領域を区分するための
邪魔板7Aを設け、攪拌翼等他の設備は全て実施例5と
同一とした。なお、触媒は実施例1と同一の新触媒にし
た。反応条件も、実施例5と同様にした。反応安定化
後、反応槽出の反応生成物中のシクロヘキサノール濃度
は11.0重量%であり、シクロヘキセンの選択率は9
9.5%であった。抜出した反応生成物中には全く触媒
はなく、良好な油水分離状態であった。実施例5と同様
にして、バッチにて油水分離時間を測定した。油水分離
時間は攪拌機停止後11秒であった。
【0084】(比較例4)実施例5の水和反応装置を用
い、反応条件は実施例5と同様であるが、攪拌機の回転
数を1000rpmで反応させたところ、反応槽より抜
出した反応生成物中に触媒が一部混入しており、油水の
分離が不十分であった。このときの反応生成物中のシク
ロヘキサノール濃度は10.9重量%で、シクロヘキサ
ノール選択率は99.5%であった。この時の反応槽内
の油相の平均液滴径は0.03mmであった。
【0085】引き続き、一時的に攪拌と原料供給を同時
に停止して油水分離時間をバッチで評価した結果、攪拌
停止後、74秒たっても一部エマルジョン層が残ってい
た。上記の反応条件で、連続して50時間運転した結
果、反応生成物中のシクロヘキサノール濃度は8.5重
量%に低下していた。なお、反応槽4から流出した触媒
は、遠心分離器で油水分離処理して回収した。その回収
した触媒は、反応槽4に予備ノズル(図示せず)より投
入して、反応槽4内の触媒量を初期充填量と同一になる
ようにした。比較例4の結果を実施例13〜15の結果
と共に表4に示す。
【0086】
【表4】
【0087】(実施例16)シクロヘキセンの水和反応
槽として、図8に示すような、実施例5の4リットルの
ステンレス製攪拌機付耐圧容器オートクレーブ4を2槽
直列に連結して用いた。第2段反応槽4−2を第1段反
応槽4−1より位置を下げて設置し、第1段反応槽4−
1の反応液抜出管5−1は第2段反応槽4−2の原料供
給管3に接続した。第1段反応槽4−1と第2段反応槽
4−2の気相部は同一圧力になるように均圧管12を設
けている。この均圧管には加圧用不活性ガス供給管13
を接続している。第1段反応槽4−1には、入口14お
よび出口15を有する水蒸気流通コイルを組み込み、第
2段反応槽4−2には入口16および出口17を有する
水蒸気または冷却水流通コイルを組み込んで、温度制御
できるようにした。水和反応は、はじめに、それぞれの
装置内を窒素パージした後、30重量%の触媒濃度の水
スラリー5.36kgをそれぞれの反応器内に仕込み、
攪拌機を530rpmで回転し、上記したコイルのそれ
ぞれに水蒸気を導入して、第1段反応槽4−1および第
2段反応槽4−2内の温度を昇温し、それぞれ120℃
一定になるようにした。フレッシュなシクロヘキセン液
を徐々に供給していき、定常時約1.7kg/hrとし
た。反応器内圧は7kg/cm2 ゲージ一定になるよう
に窒素にて常時加圧した。各反応槽内静置領域の油水界
面レベルは反応生成物(油相)抜出管より下方に位置す
るように、消費水量に見合った分の水を原料導入管を通
じてそれぞれの反応槽に供給した。気液界面は反応生成
物(油相)抜出管をそれぞれオーバーフロー型式にする
ことで一定に保つことにした。なお、第2段反応槽4−
2に組み込んだ、入口16と出口17を有するコイルに
ついては、水蒸気から冷却水に切り換えて、第2段反応
槽4−2内温度を120℃一定に制御した。全系安定化
後、反応槽出の生成物中のシクロヘキサノール濃度は1
2.2重量%であり、シクロヘキサノールへの選択率は
99.5%であった。また、このときの攪拌動力は約
0.5Kw/m3 (容積は反応系の容積)であった。実
施例5と同一触媒量当たりのシクロヘキセン供給量であ
るが、シクロヘキサノール濃度が実施例5で得られたシ
クロヘキサノール濃度に比べると、比率として約10%
高くなったことが判る。抜き出した反応生成物中には全
く触媒はなく、良好な油水分離状態であった。
【0088】(実施例17,18)実施例16の水和反
応装置を用い、反応条件は実施例16と同様にして、反
応温度のみを表5に示すように変えて反応成績をみた。
結果は表5のとおりである。
【0089】(比較例5)実施例16の水和反応装置を
用い、反応条件は実施例16と同様であるが、第1段目
の反応槽温度を120℃とし、第2段目の反応槽温度を
130℃として反応させたところ、反応槽4−2から抜
出した反応生成物(油相)中のシクロヘキサノール濃度
は9.2%であり、シクロヘキサノールの選択率は9
9.3%であった。すなわち、120℃一定温度で反応
を行う実施例16に比べ反応槽より抜出した反応生成物
中のシクロヘキサノール濃度は比率として約25%低か
った。比較例5の結果を実施例13〜15の結果と共に
表5に示す。
【0090】
【表5】
【0091】(実施例19)シクロヘキセンの水和反応
器として、図9に示すような、32リットルのステンレ
ス製攪拌機付円筒型耐圧反応槽4の内部に、温度計およ
びサヤ管(図示せず)、原料供給管3、反応生成物抜出
し管5および気液面計・液液界面計・圧力計(これらは
図示せず)を取り付け、反応槽内下部に、多数の細孔を
有する配管からなる分散器6を原料供給管3に接続し
た。攪拌翼9はディスクタービン翼10段として反応槽
内を仕切ることにより複数の小室を設け、その最下段翼
直近下に、分散器6を配置した。各攪拌翼9の間に開孔
率14%の多孔板(図10の20Aに示すものと同じも
の)を障害物20として設けた。反応生成物抜出管5は
最上段攪拌翼の上方に設け、反応生成物抜出管5付近の
液相を油・水分離する静置領域とした。さらに、最下段
の小室の周りには温度制御できる水蒸気ジャケット21
を取り付けた。また、下から第2段目の小室から第10
段目の小室の周りには冷却ジャケット22を設けて温度
調整に使用した。この冷却ジャケットには冷却水量をそ
れぞれ制御できるバルブを設けた。原料供給管3にはシ
クロヘキセン供給管1と水供給管2を接続した。それぞ
れの配管は全て流量計を取り付けた。水和反応は、はじ
めに反応槽内を窒素パージした後、実施例1と同一の新
触媒で、30重量%の触媒濃度の水スラリー19.7k
gを反応槽内に仕込み、攪拌機を350rpmで回転し
た。水蒸気をジャケット21に流通して昇温し反応槽内
温度を120℃一定となるようにし、反応槽内圧は7k
g/cm2 ゲージ一定になるよう窒素ガスにて常時加圧
した。フレッシュなシクロヘキセン液を定常時約6.1
kg/hrで供給を開始し、冷却水をジャケット22に
流通して温度120℃一定になるように冷却した。反応
槽内油水界面レベルは反応生成物出口より少し下方で一
定に位置するように、消費水量に見合った分の水を原料
供給管3を通じて供給した。気液界面は反応生成物抜出
口より上方に位置するように反応液抜出し量を制御し
た。全系安定化後、反応槽での反応生成物中のシクロヘ
キサノール濃度は13.0重量%であり、シクロヘキサ
ノールへの選択率は99.5%であった。上記の結果か
ら、実施例5と同一の触媒量当たりのシクロヘキセン供
給量であるが、反応生成物中のシクロヘキサノール濃度
は、多段化することで向上していることが判る。抜き出
した反応生成物中には全く触媒はなく、良好な油水分離
状態であった。
【0092】(実施例20)実施例19の水和反応装置
を用い、反応条件は実施例19と同様にして、反応温度
のみを表6に示すように変えて反応成績をみた。反応槽
内温度を最下段小室内の反応系温度を120℃一定とな
るようにし、最上段小室内の反応系温度を105℃一定
になるようにし、その間の温度分布はほぼ直線的に変わ
るように冷却水流量にて制御した。全系安定化後、反応
槽出の反応生成物中のシクロヘキサノール濃度は15.
1重量%であり、シクロヘキサノールへの選択率は9
9.6%であった。これより、実施例19の一定温度の
場合に比べて、反応生成物中のシクロヘキサノール濃度
が高められていることが明らかになった。実施例19と
20の結果を表6に示す。
【0093】
【表6】
【0094】
【発明の効果】本発明によると、反応系において、水相
を連続相とし、該水相中に触媒を懸濁させ、環状オレフ
ィン油相を細かい液滴として水と反応させるため、反応
律速下の反応系を提供でき、実質的に収率よく環状アル
コールが得られる。さらに、触媒の経時滴活性低下を著
しく抑制し、結果として、長時間高活性と高選択性を維
持することができるようになった。しかも、反応終了
後、油水分離が非常に容易にでき、静置領域をコンパク
トにできるとともに、反応生成物中にはリーク触媒もな
く、長期安定した反応が維持できるようになった。ま
た、ドラフトチューブ付反応槽を用いた場合、触媒の破
損をさらに少なくすることが可能となり、攪拌のエネル
ギーも少なくてすむことになった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の方法の第1の態様を実施するための原
料供給管に連結した分散器を有する反応槽の内部断面の
概略図である。
【図2】本発明の方法の第2の態様を実施するための攪
拌機を有する堰を設けた反応槽の内部断面の概略図であ
る。
【図3】本発明の方法の第2の態様において、さらに中
空円筒(ドラフトチューブ)を設置した反応槽の内部断
面の概略図である。
【図4】本発明の方法の第2の態様において、堰を取り
除き代わりに反応槽外に油水分離槽を設けた反応装置の
内部断面の概略図である。
【図5】本発明の方法の第2の態様において、図2に示
すような堰の代わりに邪魔板を配置した反応槽の内部断
面の概略図である。
【図6】邪魔板としてドーナツ板を配置した反応槽の斜
視図である。
【図7】邪魔板として多孔円板を配置した反応槽の斜視
図である。
【図8】本発明の方法の第3の態様を実施するための、
直列に連結した二つの反応槽の内部断面の概略図であ
る。
【図9】本発明の方法の第4の態様を実施するための、
多段式の攪拌槽の内部断面の概略図である。
【図10】図9の障害物の例を示すもので、多孔円板を
用いた反応槽下部の斜視図である。
【図11】図9の障害物の例を示すもので、円板を用い
た反応槽下部の斜視図である。
【図12】図9の障害物の例を示すもので、ドーナツ板
を用いた反応槽下部の斜視図である。
【図13】図12において、別のドーナツ板を用いた反
応槽下部の斜視図である。
【図14】図12において、さらに別のドーナツ板を用
いた反応槽下部の斜視図である。
【図15】図12において、上記とは別のドーナツ板を
用いた反応槽下部の斜視図である。
【符号の説明】
1 シクロヘキセン供給管 2 水供給管 3 原料供給管 4 水和反応槽 5 反応生成物抜出管 5A 連続油相 6 分散器 7 油水分離堰 8 循環ポンプ 9 攪拌翼 10 中空円筒(ドラフトチューブ) 11 油水分離槽 12 反応液導入管 13 水スラリー戻し管 14 水蒸気入口 15 水蒸気ドレン出口 16 冷却水入口 17 冷却水出口 18 均圧管 19 不活性ガス供給管 20 障害物 21 水蒸気ジャケット 22 冷却水ジャケット 23 障害物固定ラブ

Claims (25)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 結晶性アルミノシリケート触媒の存在下
    で環状オレフィンを水と反応させて環状アルコールを製
    造する環状オレフィンの水和反応方法において、水に結
    晶性アルミノシリケートを懸濁してなる連続水相と環状
    オレフィンを含む油相とを包含する反応系を用い、か
    つ、油相を平均液滴径0.05〜30mmの液滴として連
    続水相中に分散させて反応を行うことを特徴とする環状
    オレフィンの水和反応方法。
  2. 【請求項2】 結晶性アルミノシリケート触媒の一次粒
    子径が0.5μm以下であることを特徴とする請求項1
    に記載の方法。
  3. 【請求項3】 連続水相に対する油相の容量比が0.0
    01〜1.0であることを特徴とする請求項1または2
    に記載の方法。
  4. 【請求項4】 水に対する触媒の重量比が0.01〜
    2.0であることを特徴とする請求項1ないし3のいず
    れかに記載の方法。
  5. 【請求項5】 油相が環状オレフィンを50〜100重
    量%、および環状オレフィンに対応する環状アルコール
    を0〜50重量%含有していることを特徴とする請求項
    1ないし4のいずれかに記載の方法。
  6. 【請求項6】 反応を、50〜250℃で、水と環状オ
    レフィンの両方が液状を保ちうる圧力下で行うことを特
    徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の方法。
  7. 【請求項7】 反応を少なくとも一つの反応槽において
    行い、反応槽はその内下部に、原料供給管に連結され多
    数の細孔を持つ少なくとも一つの分散器を有し、油相を
    原料供給管を通して供給して分散器の細孔から反応系中
    に噴出させることにより、油相を液滴として連続水相中
    に分散および流通させることを特徴とする請求項1ない
    し6のいずれかに記載の方法。
  8. 【請求項8】 反応槽がその内上部に、生成環状アルコ
    ールと未反応環状オレフィンを含む反応により得られた
    油相を抜出すための抜出手段に連結した油相出口を有
    し、反応により得られた油滴の合一により反応槽内上部
    に形成した油相の連続層を出口および抜出手段から抜出
    し、その一部を抜出し手段から分岐し原料供給管に連結
    した導管により反応槽に循環し、循環した油層を分散器
    の細孔から噴出させることを特徴とする請求項7に記載
    の方法。
  9. 【請求項9】 原料環状オレフィンの供給流量に対する
    上記の循環する油相の流量が重量比で1〜150である
    ことを特徴とする請求項8に記載の方法。
  10. 【請求項10】 複数の攪拌翼を備えた攪拌機を有する
    少なくとも一つの反応槽において反応を行い、反応系全
    体を攪拌して剪断力を生じさせるように攪拌機を操作す
    ることにより、連続水相中に懸濁した触媒の沈降を防止
    するとともに、攪拌翼から離れたところで合一した油滴
    を再分散して連続水相中の油相を液滴状に維持すること
    を特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の方
    法。
  11. 【請求項11】 反応槽が複数の攪拌翼を備えた攪拌機
    を有しており、反応系全体を攪拌して剪断力を生じさせ
    るように攪拌機を操作することにより、連続水相中に懸
    濁した触媒の沈降を防止するとともに、攪拌翼から離れ
    たところで合一した油滴を再分散して連続水相中の油相
    を液滴状に維持することを特徴とする請求項7に記載の
    方法。
  12. 【請求項12】 第1の反応槽と少なくとも一つの補足
    反応槽からなる、直列に連結した複数の反応槽を用いて
    反応を行い、上記の少なくとも一つの各補足反応槽に先
    行する第1の反応槽または補足反応槽で得た環状アルコ
    ールと未反応環状オレフィンとを含む反応混合液を、各
    先行反応槽の次の補足反応槽に供給して、そこで該未反
    応環状オレフィンを水和することを特徴とする請求項
    7、10または11に記載の方法。
  13. 【請求項13】 反応槽が油相である反応生成物の出口
    を上部に有しており、反応生成物出口付近には堰を配置
    して静置領域を設け、得られる反応混合液を環状アルコ
    ールを含む上層としての油相と、触媒を含む下層として
    の水相とへ分離するのを容易にすることを特徴とする請
    求項10ないし12のいずれかに記載の方法。
  14. 【請求項14】 反応槽を邪魔板を用いて仕切ることに
    より槽内下部領域としての攪拌領域および槽内上部領域
    としての静置領域を設け、反応系を攪拌領域内で攪拌し
    て剪断力を生じさせることにより油相が液滴となって連
    続水相中に分散すると共に、邪魔板を通って油滴は攪拌
    領域から静置領域へ移動し、静置領域内で油滴が合一し
    て連続油相を形成するようにしたことを特徴とする請求
    項10ないし12のいずれかに記載の方法。
  15. 【請求項15】 邪魔板が多孔円板、無多孔円板、ドー
    ナツ板およびグリッドデッキからなる群から選ばれるこ
    とを特徴とする請求項14に記載の方法。
  16. 【請求項16】 内外壁を有し上端と下端が開いている
    中空円筒を攪拌機を囲むように反応槽内に配置して、反
    応槽において反応系内の攪拌機と円筒内壁との間に第1
    の空間を、円筒外壁と反応槽内壁との間に第2の空間を
    設け、円筒は、上記の第1と第2の空間を反応系が十分
    に循環するような断面積を有していて、ドラフトチュー
    ブとして機能することを特徴とする請求項10ないし1
    5のいずれかに記載の方法。
  17. 【請求項17】 反応槽が、反応槽内壁から実質的に中
    心方向に向かって内壁の近くに張り出している少なくと
    も一つの垂直方向に伸びるバッフルプレートを有してお
    り、バッフルプレートはその上下に反応系内にいて空間
    が残るように配設されていることを特徴とする請求項1
    0ないし16のいずれかに記載の方法。
  18. 【請求項18】 複数の攪拌翼は多段式に配列された複
    数の攪拌翼セットよりなり、反応槽は障害物によって多
    段式に配列する複数の小室に分けられ、各室が少なくと
    も一つの攪拌翼セットを含むようにしてそれぞれに反応
    系の攪拌領域を設け、 上記攪拌機を作動して各室内の反応系全体を攪拌して連
    続水相中に油相を分散させると共に、該連続水相中に懸
    濁した触媒の沈降を防止し各室内で攪拌翼から離れたと
    ころで合一した油滴を再分散し、 障害物により分けられた互いに隣り合う二つの小室の間
    において、あらかじめ定められた方向に従って第1の小
    室から第2の小室に向かって反応系が流れることを可能
    にすると同時に、反応系が上記の方向に対して逆流する
    のを妨げて第2の小室の反応系が第2の小室の反応系と
    逆混合することを防ぐようにすることを特徴とする請求
    項10ないし12および16ないし17のいずれかに記
    載の方法。
  19. 【請求項19】 最上部の障害物により該障害物下方領
    域としての攪拌領域および該障害物上方領域としての静
    置領域を設け、反応系を攪拌領域内で攪拌して剪断力を
    生じさせることにより油相が液滴となって連続水相中に
    分散すると共に、障害物を通って油滴は攪拌領域から静
    置領域へ移動し、静置領域内で油滴が合一して連続油相
    を形成するようにしたことを特徴とする請求項18に記
    載の方法。
  20. 【請求項20】 小室のうち最上部の小室が反応生成物
    出口を有しており、反応生成物出口付近には堰を配置し
    て静置領域を設け、得られる反応混合液を生成した環状
    オレフィンを含む上層としての油相と触媒を含む下層と
    しての連続水相とへの分離を容易にすることを特徴とす
    る請求項18または19に記載の方法。
  21. 【請求項21】 反応により得られた油相と水相を含む
    反応混合液を反応槽外に設けた油水分離槽に導入して、
    生成した環状アルコールを含む上層としての油相と触媒
    を含む下層としての水相とに分離した後、油相を抜出し
    その一部を反応槽に循環すると共に、水相を反応槽に循
    環することを特徴とする請求項1または7に記載の方
    法。
  22. 【請求項22】 反応により得られた油相と水相を含む
    反応混合液を反応槽外に設けた油水分離槽に導入して、
    生成した環状アルコールを含む上層としての油相と触媒
    を含む下層としての水相とに分離した後、油相を抜出し
    その一部を反応槽に循環すると共に、水相を反応槽に循
    環することを特徴とする請求項10ないし12のいずれ
    かに記載の方法。
  23. 【請求項23】 反応により得られた油相と水相を含む
    反応混合液を反応槽外に設けた油水分離槽に導入して、
    生成した環状アルコールを含む上層としての油相と触媒
    を含む下層としての水相とに分離した後、油相を抜出し
    その一部を反応槽に循環すると共に、水相を反応槽に循
    環することを特徴とする請求項18に記載の方法。
  24. 【請求項24】 複数の反応槽の温度を、反応系の流れ
    方向に従って逐次的に低くなるように制御することを特
    徴とする請求項12に記載の方法。
  25. 【請求項25】 複数の小室の温度を、反応系の流れ方
    向に従って逐次的に低くなるように制御することを特徴
    とする請求項18に記載の方法。
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