JPH0975705A - 分散媒置換方法及びその装置 - Google Patents

分散媒置換方法及びその装置

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JPH0975705A
JPH0975705A JP22979695A JP22979695A JPH0975705A JP H0975705 A JPH0975705 A JP H0975705A JP 22979695 A JP22979695 A JP 22979695A JP 22979695 A JP22979695 A JP 22979695A JP H0975705 A JPH0975705 A JP H0975705A
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雅人 稲荷
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二三夫 大越
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Abstract

(57)【要約】 【課題】重力を利用し、棚段は設けず、単一の分散媒置
換装置で、しかも効率的に分散媒を置換する方法及び、
そのための装置を見出すこと。 【解決手段】原スラリーを分散媒置換塔上部より、置換
用分散媒を同塔下部よりそれぞれ導入し、両者の液液接
触により分散媒を置換し、置換スラリーを抜き出す分散
媒置換方法において、同塔中間部内を複数の通路に分割
し、同塔下部内液を循環方法等により攪拌して均一なス
ラリー状態にするとともに、置換用分散媒供給流量及び
置換スラリーの抜き出し流量の調節により、同塔中間部
よりも高濃度のスラリー状態に維持しつつ行う分散媒置
換方法及びその装置。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、固体粒子の分散媒
を連続的に他の分散媒で置換する方法及びその装置に関
する。更に詳細には、固体粒子の重力沈降現象を利用
し、単一の装置で、固体粒子を含有する上層の原スラリ
ーから下層に供給された他の分散媒に該固体粒子を連続
的に且つ効率的に移行せしめる分散媒置換方法及び分散
媒置換装置に関する。
【0002】
【従来の技術】固体粒子の原分散媒を他の分散媒で置換
するという操作は通常は、原分散媒と固体粒子からなる
スラリーからその分散媒を分離し、しかる後に置換用分
散媒を加えてそのスラリーにする操作を単一の操作で表
現したもので、実際の化学工業のプロセスの中では頻繁
に登場する。この分散媒置換操作には、例えば、塩化ナ
トリウム、塩素酸カリウム、フェロシアン化カリウムな
どの反応生成物を精製するため、晶析後スラリーの母液
を新鮮な同一溶媒で置換し、再溶解、再結晶する方法の
他、硫酸スズ(II)の場合のごとく晶析後、スラリーの
母液を他の洗浄溶媒で置き換えてリスラリー化する方法
が採られる場合もある。
【0003】しかし、これらの操作は多工程であり、分
離操作の必要性から運転コストがかかり、スケールアッ
プを困難にしている。例えば遠心分離、スーパーデカン
ターなどの回転力を利用する場合、その回転動力に基づ
く運転コスト、複雑な構造に基づくメンテナンス労力は
大であり、装置の大型化には適さない。更に加圧高温下
での分離が要求される場合は、高速回転式分離機の利用
は多大な困難を伴う。
【0004】他の分離方法として、シックニングなど重
力を利用した沈降分離方法を採る場合は、装置構造は簡
単であるが、分離操作と言うよりは濃縮操作であり、当
初の分散媒除去能力は低いため、若し、揮発除去などに
より完全置換を行う場合には大きなエネルギ−を必要と
し、実用的でない。
【0005】上記重力を利用し、分散媒置換処理を単一
の装置、操作で一挙に行う装置については近年いくつか
の装置が提案されている。具体的には特開昭57−53
431号公報によると、分散媒置換装置内に複数孔を有
する棚段を横方法に設け、装置内流体のチャンネリング
またはバックミキシングを防止し、置換の効率の向上さ
せようとするものであり、また特開昭55−87744
号公報では傾斜した棚段を設けて置換性能の向上を図っ
ている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】重力沈降を利用した分
散媒置換装置は、上記のごとく単一の装置、操作で行い
得る利点がある一方、設置した棚段へのスラリーの固体
粒子の堆積や該固体粒子による開孔部の閉塞に基づくバ
ルキングが起こり易く、安定運転化には多大な労力を要
し、効率面で高度化された技術とは言い難い。従って、
本発明は重力を利用するが棚段を有しない単一の装置
で、しかも効率的に分散媒を置換する方法及び、そのた
めの装置を見出すことを課題とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】そこで本発明者らはこの
課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、従来分散媒置
換塔が無段の場合は、バックミキシングを避けるために
塔内部は可及的に静的状態に保たなければならないと考
えられてきたにも係わらず、驚くべきことに無段の分散
媒置換塔であっても、所定の要件を満たせば、置換用分
散媒が供給される塔下部の置換スラリーを攪拌すること
により解決することを見出し、本発明を完成した。
【0008】即ち、本発明の要旨は次の通りである。 (第1)原分散媒と固体粒子からなる原スラリーを分散
媒置換塔上部より、又置換用分散媒を同塔下部よりそれ
ぞれ導入して固体粒子の分散媒を置換し、得られた置換
用分散媒と固体粒子からなる置換スラリーを同塔下部よ
り抜き出し、同塔上部より原分散媒を抜き出す分散媒置
換方法において、同塔下部内液を攪拌して可及的に均一
なスラリー状態に、且つ置換用分散媒の供給流量及び置
換スラリーの抜き出し流量の調節により同塔中間部より
も高濃度のスラリー状態に維持しつつ行う分散媒置換方
法。 (第2)分散媒置換塔中間部の液体が平行な複数個の流
れに分断されて行われる前記第1記載の分散媒置換方
法。 (第3)分散媒置換塔は塔上部室、塔下部室及び塔中間
部室からなり、塔上部室は、原分散媒と固体粒子からな
る原スラリー導入部及び原分散媒抜き出し部を備え、塔
下部室は置換用分散媒導入部、置換用分散媒と固体粒子
とからなる置換スラリー抜き出し部、置換用分散媒導入
流量び及び置換スラリー抜き出し流量調節部並びに塔下
部室内液攪拌装置を備え、塔中間部室は塔上部室と塔下
部室を上下方向に連結する、複数の平行且つ稠密に配置
された通路で形成されてなる分散媒置換装置。
【発明の実施の形態】
【0009】以下、本発明の内容を詳細に説明する。第
1の発明に係る分散媒置換方法は、原分散媒と固体粒子
からなる原スラリーを無段の分散媒置換塔上部より導入
し、又原分散媒を置換しようとする他の分散媒である置
換用分散媒を同塔下部よりそれぞれ導入し、両液を液液
接触状態に置き、その状態で固体粒子を原分散媒から置
換用分散媒に重力沈降手段により移行させ、得られた置
換用分散媒と固体粒子からなる置換スラリーを同塔下部
より抜き出し、一方、同塔上部よりは原分散媒を抜き出
す分散媒置換方法である。
【0010】本発明に係る方法は重力沈降現象を利用す
るものであり、塔底部のスラリー密度が最も高くなる状
態になれば塔内密度勾配としては安定な状態を形成す
る。このような安定な状態の必要性について説明する。
分散媒置換を連続操作で行うことが作業効率上好ましい
ことは当然であるが、この連続操作を行う場合は、塔下
部では分散媒置換された高濃度スラリーの排出と、分散
媒置換のための置換用分散媒の供給を同時に行う必要が
あり、塔下部に部分的にスラリー濃度の希薄な場所が生
じるなど不均一な状態になり易い。この状態では、スラ
リー濃度の低い(低比重)部分が不均一に存在する塔下
部の上方に、スラリー濃度の高い(高比重)塔中間部が
位置し、非常に不安定な系を形成することになり、結局
塔中間部と塔下部との間でスラリーの大きい移動が起こ
り、その際、原スラリーをも塔中間部に巻き込む現象を
誘発し易くなり、分散媒置換機能は正常に発揮されない
ことになる。
【0011】本発明者らはこのような塔下部における問
題を先ず解決する方法として、塔下部の置換スラリーと
置換用分散媒とを速やかに、かつ可及的に均一な状態に
する混合攪拌操作を付加したが、この付加は、分散媒置
換され、沈静化し始めた濃厚スラリーの攪乱を起こすも
のであり、前述のごとく重力沈降現象を利用する分散媒
置換操作では従来考えられなかった方法である。
【0012】この分散媒置換塔下部における攪拌方法と
しては、特に限定された手段をとる必要はないが、分散
媒置換塔内部攪拌方法としては攪拌翼による攪拌があ
り、同塔外部攪拌方法としては該塔下部外部に循環パイ
プを設置し、置換スラリー及び置換用分散媒を共に抽き
出し、また同じ塔下部に戻す方法がある。この循環パイ
プを使用する場合は、循環の途中に更に攪拌翼による攪
拌装置を介在させる方法も好ましく採られる方法であ
る。もっとも、攪拌の影響が塔中間部のスラリーの安定
性に影響しないようにすることは重要であり、そのため
塔中間部工程を長くする方法の他、置換用分散媒供給と
か前記循環パイプの戻りを塔下部の可及的に低い位置に
おいて行う方法などが簡単な手段として採られるが、本
発明にかかる方法はこれらに限定されるものではない。
【0013】前記バックミキシングを抑制するため本発
明においては、塔下部における置換用分散媒の供給流量
と置換スラリーの排出流量の調節をして、塔中間部にお
けるスラリー比重を塔下部のスラリー比重よりも絶えず
低く保持することを要件としている。置換用分散媒の供
給流量と置換スラリーの液状成分の排出流量は安定操作
時にはほぼ同じであるが、これらの流量が高くなり過ぎ
ると、排出する結晶流量に比べ、液流入量が増大するこ
とから塔下部の比重は低下し、塔中間部の比重より低く
なる可能性があり、逆に流量が低くなり過ぎると塔下部
の置換スラリー濃度が非常に高くなり、スラリーの取扱
いが困難になり、しかも生産性を低下せしめるので、好
ましくない。この流量調節は重要であるが、具体的数値
の範囲として特定できるものではなくて、塔中間部の比
重よりも塔下部の比重を高く保つ流量調節であればよ
い。
【0014】第2の発明は、この第1の発明をさらに効
率的に行わせるための方法であり、第1の発明における
分散媒置換塔中間部のスラリーが、上下方向に平行な複
数個に分断されて行われるようにした分散媒置換方法で
ある。この分断は主に、後述するバックミキシング現象
を極力抑えることにあるが、更には塔下部における前記
攪拌の影響が塔中間部及び塔上部に可及的に及ばないよ
うにするためのものであり、例えば塔中間部を縦方向に
間仕切る方法を取りうるが、より好ましくは断面形状、
断面積がほぼ同じになるように間仕切る方法が取られ、
更に稠密に集合した通路を形成することによりなし得
る。
【0015】この塔中間部のスラリーの縦方向分断は、
終極的には原スラリーからの固体粒子の沈降を可及的に
整流化された定常状態で行わしめようとするものである
が、原理的には各操作を行う上で、避けることのできな
い逆混合流れを、小空間内に制約することにより、バッ
クミキシング現象を極力抑えつつ分散媒置換を連続的に
行わしめようとするものである。逆に、上記分断をする
ことなく塔中間部を広面積の状態で分散媒置換をしよう
とすれば、逆混合流れは塔中間部のほぼ全体を通じて生
じやすい。
【0016】第1及び第2の発明において使用される原
分散媒は、使用時に液状であれば水などの無機化合物で
あっても、或いはアルコール、アセトン、ベンゼン、ピ
リジンなどの有機化合物であっても、更にはこれらの混
合物であってもよい。また原分散媒としては不純物が多
少混入していても置換の目的に即してさえいれば問題は
ない。
【0017】本発明が対象とする固体粒子は、任意の形
状を有するものであって、有機物、無機物、天然物、合
成物、化学組成を問わない。ただし、本発明では重力沈
降を利用しているため、原分散媒及び置換用分散媒より
も比重の軽い固体粒子については取り扱う事が出来な
い。本発明の装置では沈降する固体粒子と向流して、つ
まり装置下部から上部に向かって置換用分散媒又は置換
スラリーの微弱な流れを設けることが好適に行われる。
これは、原分散媒が装置下方に拡散することを防ぐため
の措置である。本装置の運転温度は、本発明の装置の構
造が簡単であり閉鎖系の装置であることから加圧での運
転が容易であるため運転圧力下での各分散媒の沸点以下
の温度であれば好適に使用できる。
【0018】第3の発明は、第1または第2の方法を実
施し得る装置を提供するものであり、分散媒置換塔は大
きく分けて塔上部室、塔下部室及び塔中間部室からな
り、塔上部室は先ず、原分散媒と固体粒子からなる原ス
ラリーの導入部を有するが、この導入部は塔上部室内壁
に開口していてもよいが、塔上部室内に延びて開口する
筒状導入部である方が原分散媒の抜き出しがし易い点で
好ましい。さらにこの開口先端部は下向きに設置されて
いる方が、原スラリーと置換スラリーとの均一な接触を
させやすいので好ましい。なお、開口先端部には液流分
散用邪魔板(又は遮蔽板)を設置すれば、原スラリーが
塔内に広く均一に供給されることになり、分散媒置換操
作がより順調に進められる。塔上部室には更に、原分散
媒抜き出し部を備え、固形粒子を殆ど含まない、低比重
の原分散媒が抜き出され、所定の処理室に導かれる。
【0019】塔下部室には置換用分散媒導入部と、該置
換用分散媒で置換されてなる置換スラリーの抜き出し
部、置換用分散媒導入流量及び置換スラリー抜き出し流
量調節部並びに塔下部室内液攪拌装置を備えている。置
換用分散媒導入部は、置換操作により新たな分散媒とな
る液の導入部であり、固体粒子は含まず低比重であるた
め、置換スラリーとの混合をよくするため塔下部室の下
方に開口することが好ましい。又、置換用分散媒で置換
されてなる置換スラリーの抜き出し部は、置換スラリー
が高比重であるため、位置的には上記同様塔下部室の下
方に近い方が好ましい。
【0020】塔下部室には更に、置換用分散媒導入流量
及び置換スラリー抜き出し流量調節部が設置されて塔下
部室内の置換スラリーの比重コントロールができるよう
になっている。これら両者の流量を調節する調節部の設
置は安定した置換操作上重要であり、両流量のコントロ
ールールが悪いと塔内のスラリーの安定状態が得られな
い恐れが生じたり、分散媒置換効率とか置換スラリーの
生産性の低下を招くことがあり、好ましくないことは前
述の通りである。
【0021】又、塔下部室には、該室内スラリー攪拌装
置を備えている。この攪拌装置は塔下部室内スラリーの
分散状態を可及的に均一化させようとするものである。
この均一化の目的は塔下部室内の比重の不均一化の防止
とか塔中間部と塔下部室との間の密度勾配上の安定性化
にあることは既に述べた。
【0022】この攪拌装置としては特に限定された装置
を必要とはしないが、分散媒置換塔の下部室内に攪拌翼
を有する通常の攪拌機を設置してもよいが、同塔外部攪
拌の手段として該塔下部室外部に循環パイプを設置し、
塔下部室内液を抽き出し、また塔下部内に戻す手段も好
適に使用し得る。この循環パイプを使用する場合は、循
環の途中に更に攪拌翼による攪拌装置を介在させること
も好ましく採られる手段である。もっとも、攪拌の影響
が塔中間部のスラリーの安定性に影響しないようにする
ことは重要であり、そのため置換用分散媒供給口とか前
記循環パイプの戻り口を塔下部の可及的に低い位置設け
ることが好ましい。
【0023】次に、塔中間部室は塔上部室と塔下部室を
上下方向に連結する、複数の平行且つ稠密に配置された
通路で形成されてなるものであり、長尺であるほど好ま
しい。縦方向の長尺通路は、通常は塔中間部内を格子状
又は蜂の巣状に分割する間仕切りを設けることにより、
又は管束状塔中間部を設けることにより達成されるが、
形成態様はこれらにより制限されるものではない。上記
細い通路を設けることにより置換率が向上させる原因は
定かではないが、広域にわたるバックミキシングが一体
的に発生することを抑え、且つ塔中間部内の液の整流作
用を持つためと考えられる。なお、ここで縦方向の長尺
通路は棚段などのない垂直方向の管状構造であることか
ら、棚段設置の場合のごとく固体粒子の堆積や閉塞を気
遣う必要が無いメリットを有する。
【0024】
【実施例】以下、実施例によって本発明の有効性を説明
する。 (実施例1)図1は分散媒置換装置の工程図であり、分
散媒置換塔Aを中心とし、この塔への供給用原料を充填
した原スラリー槽8及び置換用分散媒を入れた置換用分
散媒槽11、置換され、排出される原分散媒を受ける溢
流分散媒槽9、抜き出された置換スラリーを受ける置換
スラリー槽10が接続されている。分散媒置換塔Aは垂
直方向に長い構造をしている内径が100mmのガラス
製筒状塔である。塔上部及び塔下部には、それぞれ上部
側中空室2及び下部側中空室3が構成され、両者ともに
塔外からの導入室であり且つ塔外への排出室となってい
る。上部側中空室2は内径200mmの円筒であり、そ
の内部に原スラリー導入部4が挿入固定されているが、
原スラリー槽8に接続する原スラリー受け入れ口4aと
上部側中空室下方に延びる原スラリー導入口4bとから
なり、4bの先端にはスラリーの分散を助ける遮蔽板4
cが設置されている。原分散媒と固体粒子からなる原ス
ラリーは原スラリー槽8から原スラリー輸送ポンプ12
を経て原スラリー導入部4に達し、原スラリー導入口4
bから上部側中空室2に散布される。散布されたスラリ
ーの内、固体結晶等の固体粒子は、概ね筒状塔1を下方
に沈降して行くが、原分散媒と固体粒子の内の一部で特
に微細なものについては上部側中空室2の側面上部のス
ラリー分散媒溢流部5より溢流分散媒槽9に溢流する。
下部側中空室3には攪拌用のポンプ13が接続されてお
り、置換スラリー抜き出し部7aから攪拌用ポンプ13
を通してリサイクル戻り口7bに至る循環流により下部
側中空室3内のスラリーを攪拌する。下部側中空室3か
らの置換を終えたスラリーの抜き出しは攪拌用ポンプ1
3の吐出口を通じて分岐したラインから行い、抜き出し
たスラリーは置換スラリー槽10に貯められる。置換用
分散媒は置換用分散媒槽11より置換用分散媒輸送ポン
プ14を経由して下部側中空室3の側面の置換用分散媒
供給口6より供給される。このような装置を用いて、分
散媒の置換実験を行った。原スラリー中の固体粒子であ
る結晶は焼結させた粒状アルミナで、48から200メ
ッシュ、平均粒径200μmのものを用いた。原スラリ
ーを構成する原分散媒にはアセトンを使用し、固体粒子
の重量濃度が30重量%になるように原スラリーを調合
した。置換用分散媒には水を用いた。まず下部側中空部
3に粒状アルミナを30重量%分散させた水を張ると同
時に攪拌用ポンプ13を起動して攪拌を開始し、しかる
後に水を置換用分散媒輸送ポンプ14より供給した。ス
ラリー分散媒溢流部5まで液面が達したところで原スラ
リー輸送ポンプ12を起動し、原スラリーの供給を開始
すると同時に抜き出し置換スラリー槽10への抜き出し
を開始した。各供給量及び抜き出し量は以下の通りとし
た。 原スラリー供給量 10.0Kg/h 置換用分散媒供給量 13.7Kg/h 溢流分散媒抜き出し量 13.9Kg/h 置換スラリー抜き出し量 9.8Kg/h 数時間運転を継続して系内の液流れが充分に定常状態に
達してから、置換スラリー槽へ抜き出されているスラリ
ーの分散媒中のアセトン濃度を測定すると8重量%であ
った。つまり分散媒の92%が置換されたことになる。
この時、筒状塔(塔中間部)内のスラリー濃度は11重
量%、下部側中空室3内のスラリー濃度は30重量%で
あった。
【0025】(比較例1)図2の如く、置換スラリー抜
き出し部7aから抜き出したスラリーの全量を置換スラ
リー槽10に抜き出し、ポンプ循環によっての攪拌を行
わない以外は実施例1と同じ条件で実験したところ分散
媒置換率は70%であった。この時筒状塔1内のスラリ
ー濃度は10重量%、下部側中空部3のスラリー濃度は
3重量%であった。
【0026】(実施例2)実施例1の装置を用い、不純
物としてカリウムを321ppm含んだ水を原分散媒と
し、この不純物を含む水を、置換用分散媒の純粋な水で
置換する実験を行った。運転手順は実施例1と同様に
し、塔の出入り液量を以下のようにした。 原スラリー供給量 10.0Kg/h 置換用分散媒供給量 13.7Kg/h 溢流分散媒抜き出し量 13.9Kg/h 置換スラリー抜き出し量 9.8Kg/h 数時間運転を継続して系内の液流れが充分に定常状態に
達してから、置換スラリー槽へ抜き出されているスラリ
ーの分散媒中のカリウム濃度を測定したところ29pp
mであった。分散媒の置換度合を分散媒置換率として、
原スラリーの分散媒中のカリウム量に対する抜き出され
た置換スラリーの分散媒中のカリウム量を百分率で表し
た値と定義すると、本実施例での分散媒置換率は次式で
計算した結果、約91%であった。 分散媒置換率=(321−29)/321×100=91% このときの、筒状塔1内のスラリー濃度は10重量%、
下部側中空部3のスラリー濃度は30重量%であった。
【0027】(比較例2)比較例1の装置を用いた以外
は実施例2と同じ条件で実験を行ったところ分散媒置換
率は73%となった。このとき、筒状塔1内のスラリー
濃度は10%、下部側中空部3内のスラリー濃度は3重
量%であった。
【0028】(実施例3)図3の如く下部側中空部3の
スラリー濃度をより高めることが出来るように、置換ス
ラリー抜き出し部7aより抜き出したスラリーを攪拌用
ポンプ13より液体サイクロン15に導入し、濃縮液を
リサイククル戻り口7bより下部側中空部3に戻し、こ
の液流によって攪拌を行い、希薄な液を置換スラリー槽
10に抜き出した。実験手順、実験液の作成、使用固体
粒子内容ともに実施例1と同じとしたが、供給原スラリ
ー濃度は6重量%、流量条件は以下の通りであった。 原スラリー供給量 50.0Kg/h 置換用分散媒供給量 52.9Kg/h 溢流分散媒抜き出し量 53.9Kg/h サイクロン希薄液抜き出し量 49.0Kg/h この結果、筒状塔1内のスラリー濃度は10重量%、サ
イクロン希薄液のスラリー濃度は4重量%であったが、
下部側中空部3内のスラリー濃度は15重量%であっ
た。このとき分散媒置換率は91%であった。
【0029】(実施例4)図4のごとく、図1の装置の
筒状塔内にテフロン製の板を組み合わせた十字型の縦方
向仕切り板16を組み込み、4個の平行な、稠密に配置
された通路16aを構成した装置(図5はその横断面
図)を用い、実験手順、実験条件ともに実施例1の場合
と同様にして実験を行なったところ、分散媒置換率は9
7%であった。このときの筒状塔内のスラリー濃度は1
1重量%、下部側中空部3内のスラリー濃度は30重量
%であった。以上の結果をまとめると第1表の通りであ
る。
【0030】
【表1】
【0031】実施例及び比較例の実験の結果から次のよ
うなことが言える。 (1)下部側中空部内のスラリーを攪拌し、又流量調節
により下部側中空部内スラリー濃度を筒状塔(塔中間
部)内濃度よりも高くすることができ、それによって分
散媒置換率は向上している(実施例1と比較例1、実施
例2及び3と比較例2)。 (2)下部側中空部内のスラリーを攪拌し、又流量調節
により下部側中空部内スラリー濃度を筒状塔(塔中間
部)内濃度よりも高くした上で更に、筒状塔(塔中間
部)内部に仕切り板を設置することにより、分散媒置換
率は一層向上した(比較例1と実施例1、実施例4と比
較例1)。
【0032】
【発明の効果】上述のごとく、長尺塔状の分散媒置換装
置の筒状塔上部に分散媒の置換の必要なスラリー導入口
を設け、筒状塔下部には所望の分散媒供給部を形成し、
当該分散媒の供給された筒状塔下部内のスラリーを均一
分散状態にし、そのスラリー濃度を筒状塔中間部のスラ
リー濃度より高くし、更に好ましくは筒状塔中間部は区
画された複数の通路を形成するように分割することによ
り、分散媒の置換能力を極めて高くすることができ、分
散媒を一旦分離するような操作を行う必要のない分散媒
置換に好適な方法及び装置と言える。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る分散媒置換方法、該方法を実施す
るための装置およびそのフローの一例を示す。
【図2】筒状塔下部室の液を攪拌しない方法、該方法を
実施するための装置およびそのフローの一例を示す。
【図3】本発明に係る分散媒置換方法、該方法を実施す
るための装置およびそのフローの一例を示す。
【図4】本発明に係る分散媒置換方法、該方法を実施す
るための装置およびそのフローの一例を示す。
【図5】本発明に係る分散媒置換装置を構成する分散媒
置換塔の筒状塔の上下方向中央部を区画した場合の断面
図を示す。
【符号の説明】
A・・・・分散媒置換塔 1・・・・筒状塔 2・・・・上部側中空室 3・・・・下部側中空室 4・・・・原スラリー導入部 4a・・・原スラリー受け入れ口 4b・・・原スラリー導入口 4c・・・遮蔽板 5・・・・スラリー分散媒溢流部 6・・・・置換用分散媒供給口 7a・・・置換スラリー抜き出し部 7b・・・リサイクル戻り口 8・・・・原スラリー槽 9・・・・溢流分散媒槽 10・・・置換スラリー槽 11・・・置換用分散媒槽 12・・・原スラリー輸送ポンプ 13・・・攪拌用ポンプ 14・・・置換用分散媒輸送ポンプ 15・・・液体サイクロン 16・・・仕切板 16a・・通路口

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】原分散媒と固体粒子からなる原スラリーを
    分散媒置換塔上部より、又置換用分散媒を同塔下部より
    それぞれ導入して固体粒子の原分散媒を置換し、得られ
    た置換用分散媒と固体粒子からなる置換スラリーを同塔
    下部より抜き出し、同塔上部より原分散媒を抜き出す分
    散媒置換方法において、同塔下部内液を攪拌して可及的
    に均一なスラリー状態に、且つ置換用分散媒供給流量及
    び置換スラリーの抜き出し流量の調節により同塔中間部
    よりも高濃度のスラリー状態に維持しつつ行うことを特
    徴とする分散媒置換方法。
  2. 【請求項2】分散媒置換塔中間部の液体が平行な複数個
    の流れに分断されて行われる請求項1記載の分散媒置換
    方法。
  3. 【請求項3】分散媒置換塔は塔上部室、塔下部室及び塔
    中間部室からなり、塔上部室は、原分散媒と固体粒子か
    らなる原スラリー導入部及び原分散媒抜き出し部を備
    え、塔下部室は置換用分散媒導入部、置換用分散媒と固
    体粒子とからなる置換スラリー抜き出し部、置換用分散
    媒導入流量及び置換スラリー抜き出し流量調節部並びに
    塔下部室内液攪拌装置を備え、塔中間部室は塔上部室と
    塔下部室を上下方向に連結する、複数の平行且つ稠密に
    配置された通路で形成されてなることを特徴とする分散
    媒置換装置。
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