JP3774912B2 - 分散媒置換方法及びその装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、固体粒子の分散媒を連続的に他の分散媒で置換する方法及びその装置に関する。
更に詳細には、固体粒子の重力沈降現象を利用し、単一の装置で、固体粒子を含有する上層の原スラリーから下層に供給された他の分散媒に該固体粒子を連続的に且つ効率的に移行せしめる分散媒置換方法及び分散媒置換装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
固体粒子の原分散媒を他の分散媒で置換するという操作は通常は、原分散媒と固体粒子からなるスラリーからその分散媒を分離し、しかる後に置換用分散媒を加えてそのスラリーにする操作を単一の操作で表現したもので、実際の化学工業のプロセスの中では頻繁に登場する。
この分散媒置換操作には、例えば、塩化ナトリウム、塩素酸カリウム、フェロシアン化カリウムなどの反応生成物を精製するため、晶析後スラリーの母液を新鮮な同一溶媒で置換し、再溶解、再結晶する方法の他、硫酸スズ(II)の場合のごとく晶析後、スラリーの母液を他の洗浄溶媒で置き換えてリスラリー化する方法が採られる場合もある。
【0003】
しかし、これらの操作は多工程であり、分離操作の必要性から運転コストがかかり、スケールアップを困難にしている。例えば遠心分離、スーパーデカンターなどの回転力を利用する場合、その回転動力に基づく運転コスト、複雑な構造に基づくメンテナンス労力は大であり、装置の大型化には適さない。更に加圧高温下での分離が要求される場合は、高速回転式分離機の利用は多大な困難を伴う。
【0004】
他の分離方法として、シックニングなど重力を利用した沈降分離方法を採る場合は、装置構造は簡単であるが、分離操作と言うよりは濃縮操作であり、当初の分散媒除去能力は低いため、若し、揮発除去などにより完全置換を行う場合には大きなエネルギ−を必要とし、実用的でない。
【0005】
上記重力を利用し、分散媒置換処理を単一の装置、操作で一挙に行う装置については近年いくつかの装置が提案されている。具体的には特開昭57−53431号公報によると、分散媒置換装置内に複数孔を有する棚段を横方法に設け、装置内流体のチャンネリングまたはバックミキシングを防止し、置換の効率の向上させようとするものであり、また特開昭55−87744号公報では傾斜した棚段を設けて置換性能の向上を図っている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
重力沈降を利用した分散媒置換装置は、上記のごとく単一の装置、操作で行い得る利点がある一方、設置した棚段へのスラリーの固体粒子の堆積や該固体粒子による開孔部の閉塞に基づくバルキングが起こり易く、安定運転化には多大な労力を要し、効率面で高度化された技術とは言い難い。
従って、本発明は重力を利用するが棚段を有しない単一の装置で、しかも効率的に分散媒を置換する方法及び、そのための装置を見出すことを課題とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
そこで本発明者らはこの課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、従来分散媒置換塔が無段の場合は、バックミキシングを避けるために塔内部は可及的に静的状態に保たなければならないと考えられてきたにも係わらず、驚くべきことに無段の分散媒置換塔であっても、所定の要件を満たせば、置換用分散媒が供給される塔下部の置換スラリーを攪拌することにより解決することを見出し、本発明を完成した。
【0008】
即ち、本発明の要旨は次の通りである。
(第1)原分散媒と固体粒子からなる原スラリーを分散媒置換塔上部より、又置換用分散媒を同塔下部よりそれぞれ導入して固体粒子の分散媒を置換し、得られた置換用分散媒と固体粒子からなる置換スラリーを同塔下部より抜き出し、同塔上部より原分散媒を抜き出す分散媒置換方法において、同塔下部内液を攪拌して可及的に均一なスラリー状態に、且つ置換用分散媒の供給流量及び置換スラリーの抜き出し流量の調節により同塔中間部よりも高濃度のスラリー状態に維持しつつ行う分散媒置換方法。
(第2)分散媒置換塔中間部の液体が平行な複数個の流れに分断されて行われる前記第1記載の分散媒置換方法。
(第3)分散媒置換塔は塔上部室、塔下部室及び塔中間部室からなり、塔上部室は、原分散媒と固体粒子からなる原スラリー導入部及び原分散媒抜き出し部を備え、塔下部室は置換用分散媒導入部、置換用分散媒と固体粒子とからなる置換スラリー抜き出し部、置換用分散媒導入流量び及び置換スラリー抜き出し流量調節部並びに塔下部室内液攪拌装置を備え、塔中間部室は塔上部室と塔下部室を上下方向に連結する、複数の平行且つ稠密に配置された通路で形成されてなる分散媒置換装置。
【発明の実施の形態】
【0009】
以下、本発明の内容を詳細に説明する。
第1の発明に係る分散媒置換方法は、原分散媒と固体粒子からなる原スラリーを無段の分散媒置換塔上部より導入し、又原分散媒を置換しようとする他の分散媒である置換用分散媒を同塔下部よりそれぞれ導入し、両液を液液接触状態に置き、その状態で固体粒子を原分散媒から置換用分散媒に重力沈降手段により移行させ、得られた置換用分散媒と固体粒子からなる置換スラリーを同塔下部より抜き出し、一方、同塔上部よりは原分散媒を抜き出す分散媒置換方法である。
【0010】
本発明に係る方法は重力沈降現象を利用するものであり、塔底部のスラリー密度が最も高くなる状態になれば塔内密度勾配としては安定な状態を形成する。このような安定な状態の必要性について説明する。
分散媒置換を連続操作で行うことが作業効率上好ましいことは当然であるが、この連続操作を行う場合は、塔下部では分散媒置換された高濃度スラリーの排出と、分散媒置換のための置換用分散媒の供給を同時に行う必要があり、塔下部に部分的にスラリー濃度の希薄な場所が生じるなど不均一な状態になり易い。この状態では、スラリー濃度の低い(低比重)部分が不均一に存在する塔下部の上方に、スラリー濃度の高い(高比重)塔中間部が位置し、非常に不安定な系を形成することになり、結局塔中間部と塔下部との間でスラリーの大きい移動が起こり、その際、原スラリーをも塔中間部に巻き込む現象を誘発し易くなり、分散媒置換機能は正常に発揮されないことになる。
【0011】
本発明者らはこのような塔下部における問題を先ず解決する方法として、塔下部の置換スラリーと置換用分散媒とを速やかに、かつ可及的に均一な状態にする混合攪拌操作を付加したが、この付加は、分散媒置換され、沈静化し始めた濃厚スラリーの攪乱を起こすものであり、前述のごとく重力沈降現象を利用する分散媒置換操作では従来考えられなかった方法である。
【0012】
この分散媒置換塔下部における攪拌方法としては、特に限定された手段をとる必要はないが、分散媒置換塔内部攪拌方法としては攪拌翼による攪拌があり、同塔外部攪拌方法としては該塔下部外部に循環パイプを設置し、置換スラリー及び置換用分散媒を共に抽き出し、また同じ塔下部に戻す方法がある。この循環パイプを使用する場合は、循環の途中に更に攪拌翼による攪拌装置を介在させる方法も好ましく採られる方法である。
もっとも、攪拌の影響が塔中間部のスラリーの安定性に影響しないようにすることは重要であり、そのため塔中間部工程を長くする方法の他、置換用分散媒供給とか前記循環パイプの戻りを塔下部の可及的に低い位置において行う方法などが簡単な手段として採られるが、本発明にかかる方法はこれらに限定されるものではない。
【0013】
前記バックミキシングを抑制するため本発明においては、塔下部における置換用分散媒の供給流量と置換スラリーの排出流量の調節をして、塔中間部におけるスラリー比重を塔下部のスラリー比重よりも絶えず低く保持することを要件としている。
置換用分散媒の供給流量と置換スラリーの液状成分の排出流量は安定操作時にはほぼ同じであるが、これらの流量が高くなり過ぎると、排出する結晶流量に比べ、液流入量が増大することから塔下部の比重は低下し、塔中間部の比重より低くなる可能性があり、逆に流量が低くなり過ぎると塔下部の置換スラリー濃度が非常に高くなり、スラリーの取扱いが困難になり、しかも生産性を低下せしめるので、好ましくない。
この流量調節は重要であるが、具体的数値の範囲として特定できるものではなくて、塔中間部の比重よりも塔下部の比重を高く保つ流量調節であればよい。
【0014】
第2の発明は、この第1の発明をさらに効率的に行わせるための方法であり、第1の発明における分散媒置換塔中間部のスラリーが、上下方向に平行な複数個に分断されて行われるようにした分散媒置換方法である。
この分断は主に、後述するバックミキシング現象を極力抑えることにあるが、更には塔下部における前記攪拌の影響が塔中間部及び塔上部に可及的に及ばないようにするためのものであり、例えば塔中間部を縦方向に間仕切る方法を取りうるが、より好ましくは断面形状、断面積がほぼ同じになるように間仕切る方法が取られ、更に稠密に集合した通路を形成することによりなし得る。
【0015】
この塔中間部のスラリーの縦方向分断は、終極的には原スラリーからの固体粒子の沈降を可及的に整流化された定常状態で行わしめようとするものであるが、原理的には各操作を行う上で、避けることのできない逆混合流れを、小空間内に制約することにより、バックミキシング現象を極力抑えつつ分散媒置換を連続的に行わしめようとするものである。逆に、上記分断をすることなく塔中間部を広面積の状態で分散媒置換をしようとすれば、逆混合流れは塔中間部のほぼ全体を通じて生じやすい。
【0016】
第1及び第2の発明において使用される原分散媒は、使用時に液状であれば水などの無機化合物であっても、或いはアルコール、アセトン、ベンゼン、ピリジンなどの有機化合物であっても、更にはこれらの混合物であってもよい。また原分散媒としては不純物が多少混入していても置換の目的に即してさえいれば問題はない。
【0017】
本発明が対象とする固体粒子は、任意の形状を有するものであって、有機物、無機物、天然物、合成物、化学組成を問わない。ただし、本発明では重力沈降を利用しているため、原分散媒及び置換用分散媒よりも比重の軽い固体粒子については取り扱う事が出来ない。
本発明の装置では沈降する固体粒子と向流して、つまり装置下部から上部に向かって置換用分散媒又は置換スラリーの微弱な流れを設けることが好適に行われる。これは、原分散媒が装置下方に拡散することを防ぐための措置である。本装置の運転温度は、本発明の装置の構造が簡単であり閉鎖系の装置であることから加圧での運転が容易であるため運転圧力下での各分散媒の沸点以下の温度であれば好適に使用できる。
【0018】
第3の発明は、第1または第2の方法を実施し得る装置を提供するものであり、分散媒置換塔は大きく分けて塔上部室、塔下部室及び塔中間部室からなり、塔上部室は先ず、原分散媒と固体粒子からなる原スラリーの導入部を有するが、この導入部は塔上部室内壁に開口していてもよいが、塔上部室内に延びて開口する筒状導入部である方が原分散媒の抜き出しがし易い点で好ましい。さらにこの開口先端部は下向きに設置されている方が、原スラリーと置換スラリーとの均一な接触をさせやすいので好ましい。
なお、開口先端部には液流分散用邪魔板(又は遮蔽板)を設置すれば、原スラリーが塔内に広く均一に供給されることになり、分散媒置換操作がより順調に進められる。
塔上部室には更に、原分散媒抜き出し部を備え、固形粒子を殆ど含まない、低比重の原分散媒が抜き出され、所定の処理室に導かれる。
【0019】
塔下部室には置換用分散媒導入部と、該置換用分散媒で置換されてなる置換スラリーの抜き出し部、置換用分散媒導入流量及び置換スラリー抜き出し流量調節部並びに塔下部室内液攪拌装置を備えている。
置換用分散媒導入部は、置換操作により新たな分散媒となる液の導入部であり、固体粒子は含まず低比重であるため、置換スラリーとの混合をよくするため塔下部室の下方に開口することが好ましい。
又、置換用分散媒で置換されてなる置換スラリーの抜き出し部は、置換スラリーが高比重であるため、位置的には上記同様塔下部室の下方に近い方が好ましい。
【0020】
塔下部室には更に、置換用分散媒導入流量及び置換スラリー抜き出し流量調節部が設置されて塔下部室内の置換スラリーの比重コントロールができるようになっている。これら両者の流量を調節する調節部の設置は安定した置換操作上重要であり、両流量のコントロールールが悪いと塔内のスラリーの安定状態が得られない恐れが生じたり、分散媒置換効率とか置換スラリーの生産性の低下を招くことがあり、好ましくないことは前述の通りである。
【0021】
又、塔下部室には、該室内スラリー攪拌装置を備えている。この攪拌装置は塔下部室内スラリーの分散状態を可及的に均一化させようとするものである。この均一化の目的は塔下部室内の比重の不均一化の防止とか塔中間部と塔下部室との間の密度勾配上の安定性化にあることは既に述べた。
【0022】
この攪拌装置としては特に限定された装置を必要とはしないが、分散媒置換塔の下部室内に攪拌翼を有する通常の攪拌機を設置してもよいが、同塔外部攪拌の手段として該塔下部室外部に循環パイプを設置し、塔下部室内液を抽き出し、また塔下部内に戻す手段も好適に使用し得る。この循環パイプを使用する場合は、循環の途中に更に攪拌翼による攪拌装置を介在させることも好ましく採られる手段である。
もっとも、攪拌の影響が塔中間部のスラリーの安定性に影響しないようにすることは重要であり、そのため置換用分散媒供給口とか前記循環パイプの戻り口を塔下部の可及的に低い位置設けることが好ましい。
【0023】
次に、塔中間部室は塔上部室と塔下部室を上下方向に連結する、複数の平行且つ稠密に配置された通路で形成されてなるものであり、長尺であるほど好ましい。縦方向の長尺通路は、通常は塔中間部内を格子状又は蜂の巣状に分割する間仕切りを設けることにより、又は管束状塔中間部を設けることにより達成されるが、形成態様はこれらにより制限されるものではない。
上記細い通路を設けることにより置換率が向上させる原因は定かではないが、広域にわたるバックミキシングが一体的に発生することを抑え、且つ塔中間部内の液の整流作用を持つためと考えられる。
なお、ここで縦方向の長尺通路は棚段などのない垂直方向の管状構造であることから、棚段設置の場合のごとく固体粒子の堆積や閉塞を気遣う必要が無いメリットを有する。
【0024】
【実施例】
以下、実施例によって本発明の有効性を説明する。
(実施例1)
図1は分散媒置換装置の工程図であり、分散媒置換塔Aを中心とし、この塔への供給用原料を充填した原スラリー槽8及び置換用分散媒を入れた置換用分散媒槽11、置換され、排出される原分散媒を受ける溢流分散媒槽9、抜き出された置換スラリーを受ける置換スラリー槽10が接続されている。
分散媒置換塔Aは垂直方向に長い構造をしている内径が100mmのガラス製筒状塔である。
塔上部及び塔下部には、それぞれ上部側中空室2及び下部側中空室3が構成され、両者ともに塔外からの導入室であり且つ塔外への排出室となっている。
上部側中空室2は内径200mmの円筒であり、その内部に原スラリー導入部4が挿入固定されているが、原スラリー槽8に接続する原スラリー受け入れ口4aと上部側中空室下方に延びる原スラリー導入口4bとからなり、4bの先端にはスラリーの分散を助ける遮蔽板4cが設置されている。原分散媒と固体粒子からなる原スラリーは原スラリー槽8から原スラリー輸送ポンプ12を経て原スラリー導入部4に達し、原スラリー導入口4bから上部側中空室2に散布される。
散布されたスラリーの内、固体結晶等の固体粒子は、概ね筒状塔1を下方に沈降して行くが、原分散媒と固体粒子の内の一部で特に微細なものについては上部側中空室2の側面上部のスラリー分散媒溢流部5より溢流分散媒槽9に溢流する。下部側中空室3には攪拌用のポンプ13が接続されており、置換スラリー抜き出し部7aから攪拌用ポンプ13を通してリサイクル戻り口7bに至る循環流により下部側中空室3内のスラリーを攪拌する。下部側中空室3からの置換を終えたスラリーの抜き出しは攪拌用ポンプ13の吐出口を通じて分岐したラインから行い、抜き出したスラリーは置換スラリー槽10に貯められる。置換用分散媒は置換用分散媒槽11より置換用分散媒輸送ポンプ14を経由して下部側中空室3の側面の置換用分散媒供給口6より供給される。
このような装置を用いて、分散媒の置換実験を行った。原スラリー中の固体粒子である結晶は焼結させた粒状アルミナで、48から200メッシュ、平均粒径200μmのものを用いた。原スラリーを構成する原分散媒にはアセトンを使用し、固体粒子の重量濃度が30重量%になるように原スラリーを調合した。置換用分散媒には水を用いた。まず下部側中空部3に粒状アルミナを30重量%分散させた水を張ると同時に攪拌用ポンプ13を起動して攪拌を開始し、しかる後に水を置換用分散媒輸送ポンプ14より供給した。スラリー分散媒溢流部5まで液面が達したところで原スラリー輸送ポンプ12を起動し、原スラリーの供給を開始すると同時に抜き出し置換スラリー槽10への抜き出しを開始した。各供給量及び抜き出し量は以下の通りとした。
原スラリー供給量 10.0Kg/h
置換用分散媒供給量 13.7Kg/h
溢流分散媒抜き出し量 13.9Kg/h
置換スラリー抜き出し量 9.8Kg/h
数時間運転を継続して系内の液流れが充分に定常状態に達してから、置換スラリー槽へ抜き出されているスラリーの分散媒中のアセトン濃度を測定すると8重量%であった。つまり分散媒の92%が置換されたことになる。この時、筒状塔(塔中間部)内のスラリー濃度は11重量%、下部側中空室3内のスラリー濃度は30重量%であった。
【0025】
(比較例1)
図2の如く、置換スラリー抜き出し部7aから抜き出したスラリーの全量を置換スラリー槽10に抜き出し、ポンプ循環によっての攪拌を行わない以外は実施例1と同じ条件で実験したところ分散媒置換率は70%であった。この時筒状塔1内のスラリー濃度は10重量%、下部側中空部3のスラリー濃度は3重量%であった。
【0026】
(実施例2)
実施例1の装置を用い、不純物としてカリウムを321ppm含んだ水を原分散媒とし、この不純物を含む水を、置換用分散媒の純粋な水で置換する実験を行った。運転手順は実施例1と同様にし、塔の出入り液量を以下のようにした。
原スラリー供給量 10.0Kg/h
置換用分散媒供給量 13.7Kg/h
溢流分散媒抜き出し量 13.9Kg/h
置換スラリー抜き出し量 9.8Kg/h
数時間運転を継続して系内の液流れが充分に定常状態に達してから、置換スラリー槽へ抜き出されているスラリーの分散媒中のカリウム濃度を測定したところ29ppmであった。分散媒の置換度合を分散媒置換率として、原スラリーの分散媒中のカリウム量に対する抜き出された置換スラリーの分散媒中のカリウム量を百分率で表した値と定義すると、本実施例での分散媒置換率は次式で計算した結果、約91%であった。
分散媒置換率=(321−29)/321×100=91%
このときの、筒状塔1内のスラリー濃度は10重量%、下部側中空部3のスラリー濃度は30重量%であった。
【0027】
(比較例2)
比較例1の装置を用いた以外は実施例2と同じ条件で実験を行ったところ分散媒置換率は73%となった。このとき、筒状塔1内のスラリー濃度は10%、下部側中空部3内のスラリー濃度は3重量%であった。
【0028】
(実施例3)
図3の如く下部側中空部3のスラリー濃度をより高めることが出来るように、置換スラリー抜き出し部7aより抜き出したスラリーを攪拌用ポンプ13より液体サイクロン15に導入し、濃縮液をリサイククル戻り口7bより下部側中空部3に戻し、この液流によって攪拌を行い、希薄な液を置換スラリー槽10に抜き出した。
実験手順、実験液の作成、使用固体粒子内容ともに実施例1と同じとしたが、供給原スラリー濃度は6重量%、流量条件は以下の通りであった。
原スラリー供給量 50.0Kg/h
置換用分散媒供給量 52.9Kg/h
溢流分散媒抜き出し量 53.9Kg/h
サイクロン希薄液抜き出し量 49.0Kg/h
この結果、筒状塔1内のスラリー濃度は10重量%、サイクロン希薄液のスラリー濃度は4重量%であったが、下部側中空部3内のスラリー濃度は15重量%であった。このとき分散媒置換率は91%であった。
【0029】
(実施例4)
図4のごとく、図1の装置の筒状塔内にテフロン製の板を組み合わせた十字型の縦方向仕切り板16を組み込み、4個の平行な、稠密に配置された通路16aを構成した装置(図5はその横断面図)を用い、実験手順、実験条件ともに実施例1の場合と同様にして実験を行なったところ、分散媒置換率は97%であった。このときの筒状塔内のスラリー濃度は11重量%、下部側中空部3内のスラリー濃度は30重量%であった。
以上の結果をまとめると第1表の通りである。
【0030】
【表1】
Figure 0003774912
【0031】
実施例及び比較例の実験の結果から次のようなことが言える。
(1)下部側中空部内のスラリーを攪拌し、又流量調節により下部側中空部内スラリー濃度を筒状塔(塔中間部)内濃度よりも高くすることができ、それによって分散媒置換率は向上している(実施例1と比較例1、実施例2及び3と比較例2)。
(2)下部側中空部内のスラリーを攪拌し、又流量調節により下部側中空部内スラリー濃度を筒状塔(塔中間部)内濃度よりも高くした上で更に、筒状塔(塔中間部)内部に仕切り板を設置することにより、分散媒置換率は一層向上した(比較例1と実施例1、実施例4と比較例1)。
【0032】
【発明の効果】
上述のごとく、長尺塔状の分散媒置換装置の筒状塔上部に分散媒の置換の必要なスラリー導入口を設け、筒状塔下部には所望の分散媒供給部を形成し、当該分散媒の供給された筒状塔下部内のスラリーを均一分散状態にし、そのスラリー濃度を筒状塔中間部のスラリー濃度より高くし、更に好ましくは筒状塔中間部は区画された複数の通路を形成するように分割することにより、分散媒の置換能力を極めて高くすることができ、分散媒を一旦分離するような操作を行う必要のない分散媒置換に好適な方法及び装置と言える。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る分散媒置換方法、該方法を実施するための装置およびそのフローの一例を示す。
【図2】筒状塔下部室の液を攪拌しない方法、該方法を実施するための装置およびそのフローの一例を示す。
【図3】本発明に係る分散媒置換方法、該方法を実施するための装置およびそのフローの一例を示す。
【図4】本発明に係る分散媒置換方法、該方法を実施するための装置およびそのフローの一例を示す。
【図5】本発明に係る分散媒置換装置を構成する分散媒置換塔の筒状塔の上下方向中央部を区画した場合の断面図を示す。
【符号の説明】
A・・・・分散媒置換塔
1・・・・筒状塔
2・・・・上部側中空室
3・・・・下部側中空室
4・・・・原スラリー導入部
4a・・・原スラリー受け入れ口
4b・・・原スラリー導入口
4c・・・遮蔽板
5・・・・スラリー分散媒溢流部
6・・・・置換用分散媒供給口
7a・・・置換スラリー抜き出し部
7b・・・リサイクル戻り口
8・・・・原スラリー槽
9・・・・溢流分散媒槽
10・・・置換スラリー槽
11・・・置換用分散媒槽
12・・・原スラリー輸送ポンプ
13・・・攪拌用ポンプ
14・・・置換用分散媒輸送ポンプ
15・・・液体サイクロン
16・・・仕切板
16a・・通路口

Claims (3)

  1. 原分散媒と固体粒子からなる原スラリーを分散媒置換塔上部より、又置換用分散媒を同塔下部よりそれぞれ導入して固体粒子の原分散媒を置換し、得られた置換用分散媒と固体粒子からなる置換スラリーを同塔下部より抜き出し、同塔上部より原分散媒を抜き出す分散媒置換方法において、同塔下部内液を攪拌して可及的に均一なスラリー状態に、且つ置換用分散媒供給流量及び置換スラリーの抜き出し流量の調節により同塔中間部よりも高濃度のスラリー状態に維持しつつ行うことを特徴とする分散媒置換方法。
  2. 分散媒置換塔中間部の液体が平行な複数個の流れに分断されて行われる請求項1記載の分散媒置換方法。
  3. 分散媒置換塔は塔上部室、塔下部室及び塔中間部室からなり、塔上部室は、原分散媒と固体粒子からなる原スラリー導入部及び原分散媒抜き出し部を備え、塔下部室は置換用分散媒導入部、置換用分散媒と固体粒子とからなる置換スラリー抜き出し部、置換用分散媒導入流量及び置換スラリー抜き出し流量調節部並びに塔下部室内液攪拌装置を備え、塔中間部室は塔上部室と塔下部室を上下方向に連結する、複数の平行且つ稠密に配置された通路で形成されてなることを特徴とする分散媒置換装置。
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