JPH06238384A - 高精度板厚の圧延金属板の製造装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 薄い金属板の長さ方向及び幅方向の板厚精度
を損なわずにエッジドロップを防止でき、更に圧延金属
板の異方性を改善できる製造装置を提供する 【構成】 長尺の金属板１を、テーパ状の加工面４と平
坦部の加工面５を有し且つこれら加工面の両側に間隙規
制縁６を備えた金型２と、該加工面に沿って転動するロ
ール３の間に介在させ、該ロールの転動終了毎に該金属
板を長さ方向に間歇的に移動させて圧延する装置に於い
て、該テーパ状の加工面を、２段階にせり上がったテー
パ状の長さ方向加工面４ａ、４ｂに形成し且つ該長さ方
向加工面と平坦部の加工面に幅方向の両端部へ延びる幅
方向テーパ部７ａ、７ｂを形成した 【効果】 エッジドロップを防止でき、幅方向、長さ方
向に板厚が均一の金属板が一工程で得られ、両端を除去
することの無駄がなく迅速に超高精度でしかも金属板材
料の異方性が改善された圧延材を製造できる

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、電子機器、精密機械等
に使用される板厚精度が高精度でさらに力学的異方性も
改善され、しかも極めて薄い帯鋼等の金属板を製造する
のに適した装置に関する。

【０００２】

【従来の技術】従来、板厚精度の高い平坦で薄い金属板
を製造する方法として、本願出願人の出願に係わる特公
平２−５１６９５号公報に記載された方法が知られてい
る。この方法は、図１及び図２に示すように、長尺の金
属板ａを、テーパ状の加工面ｂとこれに続く平坦部の加
工面ｃを備えた金型ｄ及び該加工面に沿って転動するロ
ールｅの間に介在させ、該ロールｅの前記転動の終了毎
に該金属板ａを長さ方向に間歇的に移動させて圧延する
方法が知られている。この方法によれば、例えば厚さ
１．２ｍｍで板厚精度が±３／１０００ｍｍのステンレ
ス板を製造することができる。また、一般的なロール圧
延方法では、圧延された板がエッジドロップ即ち板の両
端部の板厚が中央部よりも薄くなってしまう現象があ
り、板の両端部は所定の板厚がないので取り除いて使用
されることになって材料の無駄が生じるので、これを圧
延するロールにクラウンを付けておき、図３に誇大して
示したように金属板ｆを一対のロールｇ，ｇで圧延する
ことも行なわれている。エッジドロップは図１、図２に
示した圧延方法の場合にも発生しており、圧延後に金属
板の両端部分を切除して製品としている。

【０００３】更に、従来の一般的なロール圧延法では、
金属板は圧延方向（長さ方向）に結晶が引き伸ばされる
ことにより力学的な異方性を生じ、その金属板の方向す
なわち長さ方向、幅方向、斜め方向などの方向によって
機械的性質や物理的性質が異方性となり、材料の使用方
向が限定される不都合もあった。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】図１、図２の上記金型
圧延方法で使用されるロールｅを図３のようなクラウン
形に形成すれば、金型圧延方法でも幅方向の板厚の制御
は可能でエッジドロップを解消できるが、ロールクラウ
ンの管理が困難であるうえ、材料の不均一な伸びのため
長さ方向の高精度な板厚制御が十分にできない。また、
ロール圧延により圧延された金属板の異方性を抑制また
は防止するには、通常、熱処理する以外になく、かかる
処理は面倒である。

【０００５】本発明は、薄い金属板の長さ方向の板厚精
度を高精度とし、その幅方向には板厚精度を損なわずに
エッジドロップを防止できると共に圧延による力学的異
方性を緩和できる製造装置を提供することを目的とする
ものである。

【０００６】

【課題を解決するための手段】本発明では、長尺の金属
板を、テーパ状の加工面とこれに続く平坦部の加工面を
有すると共にこれらの加工面の両側に該平坦部の加工面
からの立上がり高さが所望板厚に等しい段差を有する間
隙規制縁を備えた金型と、該加工面に沿って転動するロ
ールとの間に介在させ、該ロールの前記転動の終了毎に
該金属板を長さ方向に間歇的に移動させて圧延する装置
に於いて、該金型のテーパ状の加工面を、該金属板の長
さ方向に２段階にせり上がったテーパ状の長さ方向加工
面に形成すると共に、該長さ方向加工面とこれに続く平
坦部の加工面に幅方向の両端部へ延びる幅方向テーパ部
を形成することにより、上記の目的を達成するようにし
た。

【０００７】

【作用】該金属板の一側面を金型のテーパ状の加工面と
平坦部の加工面とに載せ、該金型の間隙規制面に接触さ
せながらロールを転動させると、該金属板の肉厚が該金
型のテーパの分だけ減少する。該ロールの転動後に該金
属板をその長さ方向に多少移動させて再びロールを転動
させることを繰返すことにより、該金属板は次第に板厚
を減少し、加工面の平坦部にて高精度の所望板厚に加工
される。こうした作用は従来の加工面にテーパを形成し
たものと略同様であるが、本発明に於いては、該金型の
テーパ状の加工面を、該金属板の長さ方向に２段階にせ
り上がったテーパ状の長さ方向加工面に形成すると共
に、該長さ方向加工面とこれに続く平坦部の加工面に幅
方向の両端部へ延びる幅方向テーパ部を形成したので、
該金属板はテーパ状加工面の第１段階で板厚が減少さ
れ、更に第２段階により板厚が減少するときに同時に幅
方向のテーパによりわずかに材料が移動されるのでエッ
ジドロップが防止される。加工の終えた金属板はエッジ
ドロップがないので、その両端部を切除する必要がな
く、材料の無駄と切除のための工程を省略できる。

【０００８】更に、本発明の装置により加工された金属
板は、変形挙動が幅方向に流れる割合が高く、通常、長
さ方向に結晶方位が揃うロール圧延材に比べて結晶方位
の揃う現象が抑制され、材料の力学的異方性が緩和され
る。

【０００９】

【実施例】本発明の実施例を図４に基づき説明すると、
同図に於いて符号１はステンレス鋼、銅合金等の長尺の
金属板、２は金型、３はロールを示す。該金型２は図５
に示すように、テーパ状の加工面４とこれに続く平坦部
の加工面５を備え、更にこれらの加工面４、５の両側に
該平坦部の加工面５からの立上がり高さが所望板厚に等
しい段差を有する間隙規制縁６、６を設けるようにし
た。該ロール３は該間隙規制縁６、６に接しながら金属
板１の長さ方向に往復転動し、ロール３の往復転動の終
了毎に金型２とロール３の圧接を解除して該金属板１を
長さ方向に間歇的に移動させることを繰返すと、次第に
該金属板１が圧延され、該平坦部の加工面５からの立上
がり高さに設定した板厚に圧延されることは従来のもの
と略同様であるが、本発明では、圧延された金属板１の
エッジドロップを防ぐために、該テーパ状の加工面４
を、図５のように、該金属板１の長さ方向に第１段と第
２段で２段階にせり上がった長さ方向加工面４ａ、４ｂ
とし、更に図６のように、これらの加工面４と平坦部の
加工面５に幅方向の両端部へ延びる幅方向テーパ部７
ａ，７ｂを形成するようにした。

【００１０】該金属板１は金型２に接して転動するロー
ル３により圧延されるが、その圧延が進行して所定の板
厚になる前に幅方向テーパ部７ａ，７ｂにより金属板１
の材料がその両端部へ多少移動され、圧延された金属板
１のエッジドロップがなくなる。

【００１１】本発明の具体的な実施例を、寸法（厚さ×
幅×長さ）が1.4×60×50000mmのJIS SPCE-SDの帯状鋼
帯の金属板に加工率10.7％の圧延を施して板厚1.25mmの
長尺帯鋼を製造する場合につき説明すると、次の通りで
ある。金型２として図２に示すように、目的寸法（段
差）Ｄを1.25mm、第１段の長さ方向加工面４ａのテーパ
を1/800、第２段の長さ方向加工面４ｂのテーパを1/500
0、幅方向テーパ部７ａ，７ｂのテーパを1/600、平坦部
の加工面５の縦×横の寸法を40×30mmに加工・研磨した
ものを用意し、ロール３として、直径90mm、長さ120mm
の圧延ロールを用意する。そして、該ロール３を従来と
同様に金型２の間隙規制縁６、６に接触させながら押圧
転動させ、その転動の完了毎に金属板１を５mmずつ矢印
方向に移動させて所望板厚の圧延金属板を製造した。製
造された金属板１の板厚の長さ方向の板厚変動は図７の
曲線Ａの如であり、素材のJIS SPCE-SDの帯状鋼帯の板
厚変動は同図の曲線Ｂのようであったので、長さ方向に
は板厚が数ミクロンのオーダーで均一化されていること
が分る。また、製造された金属板１は、その幅方向には
素材が図８の曲線Ｃで示すようにエッジドロップのある
ものであったが、本発明の装置を使用すると同図の曲線
Ｄのようにエッジドロップはなくなり、通常のロール圧
延のみで圧延加工したとき（曲線Ｅ）よりも良好な結果
が得られた。曲線Ｄの場合は両端部が多少厚くなるが、
圧延された該金属板を更にロール圧延するか金型の幅方
向のテーパを緩やかにすれば、その厚みも修正すること
ができる。

【００１２】次に異方性改善の実施例として、寸法（厚
さ×幅×長さ）が0.5×60×50000mmのJISパーマロイＢ
級の磁性材料鋼帯の金属板に加工率20％の圧延を本発明
の装置により施して板厚0.4mmの長尺帯鋼を製造する場
合につき説明すると次の通りである。

【００１３】金型として図２に示すように、目的寸法Ｄ
を0.4mm、第１段の長さ方向加工面４ａのテーパを1/150
0、第２段の加工面４ｂのテーパを1/3333、幅方向テー
パ部７ａ、７ｂのテーパを1/500、平坦部の加工面５の
縦×横の寸法を40×30mmに加工・研磨したものを用意
し、前記実施例と同様に圧延金属板を製造した。製造さ
れた磁性材料金属板の材料方向に対するヤング率と、同
一材料を通常のロール圧延により製造した金属板のヤン
グ率を比較測定した結果を図９に示す。この結果によれ
ば、本発明の装置により製造した金属板のヤング率の曲
線Ｆは、従来のロール圧延による金属板のヤング率の曲
線Ｇよりも異方性が緩和されていることが分かる。

【００１４】

【発明の効果】以上のように本発明によるときは、高精
度の板厚の薄い金属板を製造するための金型のテーパ状
の加工面を、該金属板の長さ方向に２段階にせり上がっ
たテーパ状の長さ方向加工面とし、この長さ方向加工面
と平坦部の加工面に幅方向の両端部へ延びる幅方向テー
パ部を形成したので、次第に薄く圧延される過程に於い
て幅方向に金属板の材料を移動させ得てエッジドロップ
が防止され、幅方向、長さ方向に板厚が均一の金属板が
一工程で得られ、圧延された金属板の両端を除去するこ
との無駄がなくなり経済的で迅速に超高精度の圧延材を
製造でき、さらに、力学的異方性を改善した圧延材を製
造できる等の効果がある。

【図面の簡単な説明】

【図１】 従来例の側面図

【図２】 図１の金型の斜視図

【図３】 従来のエッジドロップを防止する圧延方法の
説明図

【図４】 本発明の実施例の斜視図

【図５】 図４の金型の製作過程の斜視図

【図６】 図４の金型の斜視図

【図７】 本発明の装置により圧延された金属板の長さ
方向の板厚変動の測定図

【図８】 本発明の装置により圧延された金属板の幅方
向の板厚変動の測定図

【図９】 本発明の装置により圧延された金属板の方向
性に対するヤング率の測定図

【符号の説明】

１ 金属板 ２ 金型 ３
ロール ４、４ａ、４ｂ テーパ状の長さ方向加工面 ５ 平坦部の加工面 ６、６
間隙規制縁 ７ａ、７ｂ 幅方向テーパ部

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 長尺の金属板を、テーパ状の加工面とこ
   れに続く平坦部の加工面を有すると共にこれらの加工面
   の両側に該平坦部の加工面からの立上がり高さが所望板
   厚に等しい段差を有する間隙規制縁を備えた金型と、該
   加工面に沿って転動するロールとの間に介在させ、該ロ
   ールの前記転動の終了毎に該金属板を長さ方向に間歇的
   に移動させて圧延する装置に於いて、該金型のテーパ状
   の加工面を、該金属板の長さ方向に２段階にせり上がっ
   たテーパ状の長さ方向加工面に形成すると共に、該長さ
   方向加工面とこれに続く平坦部の加工面に幅方向の両端
   部へ延びる幅方向テーパ部を形成したことを特徴とする
   高精度板厚の金属板の製造装置。
2. 【請求項２】 上記金型の長さ方向加工面に於ける第１
   段階の加工面及び幅方向加工面の勾配は、長さ方向加工
   面の第２段階の加工面の勾配よりも大きいことを特徴と
   する請求項１に記載の高精度板厚の金属板の製造装置。